予算特別委員会速記録第五号

○中屋副委員長 野上ゆきえ委員の発言を許します。
   〔中屋副委員長退席、委員長着席〕

○野上委員 都議会結いと維新を代表して、締めくくり総括質疑を行います。
 まず初めに、二〇二〇年オリンピック・パラリンピック競技大会開催に向けて、大会に関連する事項について幾つかお尋ねをさせていただきます。
 古来から続く木の文化。神社仏閣は全て木でつくられ、伊勢神宮の式年遷宮を見ても、諏訪大社の御柱祭の木落としを見ても、そもそも日本人の信仰は木というものに根差しているといえます。お箸もおわんも木、食生活も木に囲まれております。日本の伝統的住まいの形も木造家屋であり、白川郷の合掌づくりの集落を見れば、豪雪地帯における住まいも、近くの山と木を生かし、自然と共生するものでした。
 しかし、私たちこの東京に暮らし働く者にとっては、日常生活において木に触れる機会というものは年々と少なくなっているように思われます。
 そこで、日本の顔である首都東京において、日本古来の伝統である木の文化を維持し、発展させていく必要性をどのように考えているか所見を伺います。

○塚田産業労働局長 木と触れ合い、そのよさを知っていただく機会を都民に提供することは、木材利用の促進につながるもので、伐採、利用、植栽、保育という森林の循環を維持するためにも重要な取り組みであります。
 そこで都は、多摩産材の利用拡大に向けて、子供たちが利用する施設の内装木質化や、民間のアイデアを活用した製品開発等を支援しております。
 また、木とゆかりの深い木場で開催される木と暮しのふれあい展などのイベントにおいて、木のよさやすぐれた機能を広く都民にPRしております。

○野上委員 都においては、木造住宅の比率は三七・二%で沖縄県に次いで低い部類に入ります。沖縄県は台風もありますし、また、文化や風土の違いもありますから、一律には語れません。事実上、東京都が、木造住宅の比率が一番低いことになります。他の県では、青森県八九・七%、富山県七九%となっております。
 そこで、都の木造住宅の比率が低い理由について見解を伺います。

○藤井東京都技監 平成二十年の住宅・土地統計調査から試算した結果によれば、全住宅に占める三階建て以上の共同住宅の割合が、全国では約三割であるのに対しまして、東京都では五割以上であるなど、中高層住宅の比率が高くなっております。
 これらの住宅は、そのほとんどが鉄筋コンクリート造などの非木造となっております。
 これは建て主が、建設コストの比較や耐火性能などの安全性確保のための法規制などを踏まえまして、建物の構造を選択した結果でございまして、こうしたことが木造比率が低いことの主な要因と考えられます。

○野上委員 ただいま答弁にもありましたように、この背景には、東京は集合住宅の多さがやはりあるとは思います。東京圏の住宅は、マンション等の共同住宅が過半数であり、やはり東京の中心の、ど真ん中で木造一戸建てを建てて暮らすのがいかにコストパフォーマンスが悪いかというのは誰でもわかることです。
 問題は、集合住宅を木造で建てられないことです。例えば、中央区は、ほぼ全域が防火地域となっており、防火地域では原則として木造の建物は建てられません。準防火地域についても、三階以上の建物は原則として木造で建てられません。
 これまで、関東大震災、東京大空襲の二度の焼け野原を経験し、木は燃えるからだめという強い固定観念が続いてきたと思います。
 一方、二〇二〇年東京オリンピック・パラリンピックの競技施設において、木造の施設をつくろうとの機運が高まっております。競技施設もそうでありますが、一万二千人が住む中層マンション群として大会後に分譲されることになる選手村も同様です。
 大規模な建築物や不特定多数の人が利用する建築物では、火災が発生した場合、人命の危険性や周囲への被害が広がる可能性が高いことから、なかなか難しいとされています。
 しかし、現在、欧州では、直交集成材、CLTを活用した施工により中高層建物を木造で建てるのが急速に広まっております。このCLTは断熱性にすぐれており、この建築の一室で人為的に火災を発生させたところ、六十分たっても、火は隣の部屋に燃え広がらないどころか、少し室温が上がったか否かという程度だったというふうに伺っております。
 耐火構造、耐火壁の条件を十分満たしているところでありますが、現状、日本国内では、建築基準法による耐火性能や防火地域による木造制限をクリアできていない状況です。
 特に、超高層建物での木材活用のメリットとしては、軽量化による耐震性や室内環境性の向上等があります。もっと重要な点は、こうした新しい技術開発を伴いつつ、国内産業の活性化が図られるということです。
 耐震技術やRC造の高層建築も、当初は、各種データがそろっていても信頼を得るまでにかなり時間がかかりました。木材利用も同様で、しっかりと検証が進めば必ず需要は広がるだろうというふうに考えております。
 これを、まさに、国家戦略特区における規制緩和、つまりオリンピック特区によって地域限定の先進的な規制緩和を行い、選手村を含めたオリンピック・パラリンピックの会場施設の立地地域において、合理的な用途地域の見直しなど、現状の建築基準法の規制では、なかなかできない木造の中高層建築を可能にすることで、東京を初めとした大都市圏において、中高層建物に木材利用が広がる大きなきっかけとすることができるのではないかと考えます。
 オリンピック特区の構想は、五輪は日本の岩盤規制にメスを入れる絶好の機会でもあるとして、産業競争力会議のメンバーで、国家戦略特区の選定を行う諮問委員でもある竹中平蔵氏も提唱しており、実現可能性はあるものと思われます。
 そこで、このオリンピック特区の構想に、東京都が手を挙げる可能性について知事の見解を伺います。

○舛添知事 国家戦略特区の取り組みは、二〇二〇年のオリンピック・パラリンピックの成功にも大きくかかわってくるものであります。
 このため、東京と日本の経済の活性化に向けまして、国家戦略特区の指定を確実なものとして、成長が期待できる分野で新しいビジネスが生まれるように、必要な規制緩和などを進めたいと思っております。
 ただ、もちろん全ての規制を緩和すればよいといったものではなくて、安全に関する規制など、守っていくべきものはしっかり守っていくという立場でございます。

○野上委員 ぜひともオリンピックの施設の中に、木造の高層の建物が、この東京でつくられることを、夢を、希望しております。
 木造の競技施設をつくって木材利用のショーケースというふうにするのも、もちろん大切でありますが、このような木造建築物に関する規制緩和により、木は燃えるからだめという固定観念から脱却して、木材利用を進めていくきっかけをつくることの方がより大切であるというふうに考えております。
 太平洋戦争中、米軍における空爆によって壊滅的なダメージを受けた日本。木の家の町並みがすっかりと焼け野原になったことは、戦後間もないころの人たちにとって拭い去れない記憶となり、都市防火の観点から、家屋は燃えない、燃えにくい材料でつくるべきという木造不要論になる考えまで出てきております。
 しかしながら、こうした新しい技術を使って耐火性の高い集成材等を利用して、ウッドファースト、つまり建物を建てるときに、まずは木材を考えるという欧米と同じような発想を持つことも必要であるというふうに考えております。
 さて、江戸のまちづくりにも、構造は木でつくりながら、外壁を土やしっくいで塗り上げた防火に対する技術を生かした建築がありました。その代表格が城郭であります。
 二〇二〇年オリンピック・パラリンピック大会の開催は、国内外から多くの来訪者に東京の魅力を知っていただく、またとない機会であります。一人でも多くの方に、感動とともに都内各地の魅力を満喫してもらい、大会後もまた訪れてもらうことにつなげていくことも重要と考えます。
 私が住む江東区には、例えば、富岡八幡宮や亀戸天神、清澄庭園などがあるように、都内には個性豊かな観光資源が点在し、数多くあります。
 こうした資源を効果的に生かしていくため、周辺地域も含めた特色ある、また統一された町並みの形成を進めていくことが必要と考えますが、都の所見を伺います。

○藤井東京都技監 地域の景観資源を生かした町並みづくりを進めていくことは、東京の魅力を高めていくためにも重要でございます。
 このため、都は、歴史的、文化的な個性を継承いたしまして、特徴ある町並み景観を備えている地区などを、条例に基づく町並み重点地区に指定いたしまして、きめ細かな基準を適用できるようにするなど、地域の主体的な景観形成を促しております。
 例えば、葛飾区の柴又帝釈天周辺地区では、参道に面する看板や塀を昔ながらの雰囲気に戻すなど、下町情緒あふれるまちづくりを進め、多くの観光客を集めております。
 都といたしましては、こうした事例を広く紹介するとともに、区市町村とも連携いたしまして、地域の個性を生かした景観づくりを積極的に進めてまいります。

○野上委員 ぜひとも、この東京で開催するオリンピックを契機に、都市景観という観点からも、きちんとデザインをしていただきたいと思っております。
 次に、風疹及び感染症対策について伺います。
 昨年六月、アメリカの疾病予防管理センターは、風疹に罹患していない、あるいは予防接種を打っていない妊婦が、日本、特に東京へ渡航するのを延期するように勧告をしております。日本は、風疹の流行国扱いを受けているという状況です。
 なぜ、アラートが今になっても解除をされていないのかというふうに問い合わせをいたしましたところ、抜本的な解決がされていないという理由からだとのことです。
 日本では、風疹というと珍しくない病気の印象がありますが、先進国では、まれな疾患であり、ほとんどの国ではワクチン接種によって風疹を抑え込んでいます。感染力がインフルエンザの五倍と強い風疹の流行が一回起こると、その後に、耳や目、心臓に先天性の異常が起きる先天性風疹症候群の子供がふえるためです。これを防ぐためには、女性にワクチンを打つだけでは不十分で、風疹の流行そのものを抑える必要があるということが疫学データによって既に証明されているところであります。
 風疹ワクチンの接種は、個人の感染の予防の見地からはなく、集団免疫による社会防衛の観点からの対策が必要であります。患者発生数で特徴的なのは、性別と年齢で、七〇%以上の患者は男性であり、そのうち二十代から四十代が八割以上を占めています。
 これまで、国の予防接種政策の切りかえのはざまで、予防接種を受ける機会がなかったか、あるいはなかなかその機会がなかったとされている年代です。同じ感染症でも、インフルエンザやノロウイルスは、学校で感染するため、子供の患者は多いですが、風疹の場合は、職場が主な感染場となり、大人の患者が中心です。
 この二十代から四十代、男性をターゲットとし、ワクチン接種率を高める施策が、東京では最も必要なことであると考えます。
 そこで、都では、これまでワクチン接種率向上のため、パンフレットを作成し、啓発活動をしていたというふうに伺っておりますが、このターゲット層のワクチン接種率がどのように推移していったのか、これまでの接種率の推移とその効果について伺います。

○川澄福祉保健局長 都はこれまで、風疹に関する情報を報道発表やホームページ、ポスターやパンフレット等により広く都民に周知をし、注意喚起を図ってまいりました。
 また、企業や健康保険組合等に対しましても、職場や学校、家庭等における感染予防、周囲への感染に注意する期間の考慮、予防接種を受けていない方への接種の推奨、先天性風疹症候群への注意喚起等について、従業員への情報提供を働きかけてまいりました。
 この間、全国で任意接種として行われた予防接種の回数は、二十三年度が約二十六万回、二十四年度が約四十七万回となっておりますが、企業が主体となり予防接種が行われた回数や、今回流行の中心となった三十代から四十代の男性で、任意の予防接種を受けた人の人数等については把握をしておりません。

○野上委員 ちょっと改めて確認いたしますが、東京都がしてきた取り組みについての結果というか、啓発活動の結果のデータがないということですね。

○川澄福祉保健局長 データとしては持っておりません。

○野上委員 現状の都の対策によって風疹の流行の抑え込みというのが成功するとお考えでしょうか、所見を伺います。

○川澄福祉保健局長 風疹の流行を防止するためには、統一的な方針のもとに、全国的な対策を国が講じていくことが必要でございます。現在、国は、早期に先天性風疹症候群の発生をなくすことと、平成三十二年度までに風疹の排除を達成することを目標としておりますけれども、工程表はいまだ明らかではなく、予防接種についても推奨にとどまっております。
 このため、都は一日も早く先天性風疹症候群の発生をなくすことを現時点の最優先の課題と捉え、そのための重点的な取り組みを行っていくこととしております。
 また、国に対しては、風疹の流行を防ぎ、先天性風疹症候群の発生を防止するために、妊娠を予定または希望している女性に対する予防接種の機会の提供など必要な対策を早急に実施するとともに、中長期的な取り組みの方向性を示し、財源措置も含め、必要な措置を講じるよう引き続き提案要求をしてまいります。

○野上委員 前回、風疹が流行したときに、既に国立感染症研究所感染症情報センターでその分析をしております。端的に申し上げますと、啓発活動、啓蒙活動では接種率は上がらないということが既にレポートに書かれております。
 風疹の流行は、二、三年の周期を有し、しかも十年ごとに大流行が見られています。特に、二〇二〇年、世界のアスリートや観客が訪れるオリンピック・パラリンピック東京開催時に重なるおそれもあるということです。
 そのときに、風疹が大流行していて海外から渡航自粛勧告などとなったら一体どうするのでしょうか。人口密度からいっても、大流行のリスクが最も高い東京都は、厚労省にいわれたとおりに対策をやっていればよいというものではなく、万が一にも大流行を起こさないよう、現状においても風疹の流行国とされている恥ずべき現状を脱却するよう、風疹の抑え込みに結果責任を負っているはずだというふうに考えます。
 また、風疹は大人が患者の中心を占めるだけに、やはり東京は、昼間人口が多く企業が集中しているということで、風疹の発症及び感染防止対策では、企業の役割は非常に大きいというふうに考えております。
 しかし、職場における集団接種には大変困難を伴うというふうに現場より聞いております。医療法に規定された巡回診療の基準を満たさなければなりませんし、またこれは、法律を守ることはもちろんきちんとしなくてはいけませんが、保健所によっては、巡回診療は無医地区のための制度であり使ってはいけない、あるいは、風疹ワクチンの集団接種は前例がないなどとの理由で実現しなかったケースもあるというふうに聞いています。
 さらには、都内の保健所の裁量行政によって、区によって指定医療機関しか予防接種費用の補助をしない契約のところと、あるいは償還払いにして、どの医療機関でもオーケーをしたというところがあるなど、保健所の対応がばらばらであるというふうに伺っています。
 このような自治体や保健所によってばらばらの運用を統一し、少なくとも職場における集団接種を推進し、環境を整えること、あるいはワクチン接種向上のためのインセンティブをつくるべきであるというふうに考えます。
 企業の構成員が何%予防接種を受けているか、これは、産業界においても、健康経営を行っている企業を表彰するなど、あらゆる手段を用いてターゲット層の接種率を、目に見える形で上げる必要があるというふうに考えますが、都の所見を伺います。

○川澄福祉保健局長 国の風疹に関する特定感染症予防指針案では、感染力が強い風疹の対策として最も有効なのは発生の予防であることから、予防接種により風疹への免疫を獲得することが最も有効な対策であるとしております。
 一方で、感染しても無症状や軽症のものも一定程度存在し、国民の八割から九割程度は既に抗体を保有していることから、必要に応じ、抗体検査を実施することが効果的かつ効率的であり、風疹の罹患歴や予防接種歴を確認できない者に対し、幅広く風疹の性質等を伝え、風疹の抗体検査や予防接種を行うよう働きかけることが必要であるとしております。
 こうしたことを踏まえ、都は今後、企業や健康保険組合等と連携しながら、働き盛りの世代をターゲットとした風疹予防のための普及啓発を進めてまいります。

○野上委員 これまで風疹の対策について伺ってまいりましたが、東京都としては、既に、感染症情報センターで出されている報告書にあるワクチン接種率を上げるための啓発活動に終始をするということでございますが、しかし、この啓発活動を行っても接種率は上がらないということは、もう既に証明をされているわけですね。ほかの方策を考えなくてはいけない、そして二年、三年後、風疹は流行するということは、もう準備をしなくてはいけないというふうに考えております。
 私たちが、数十年あるいはそれ以上の期間を置いて、大きな地震が起こる可能性を想定し、常日ごろからそれに対して備えを築き上げていくように、インフルエンザパンデミックに対しても、風疹に対してもそうですが、近い将来、最悪の事態を想定して、社会全体で、今から可能な準備を始めることが必要であるといえます。
 特に新型インフルエンザが起きた場合は、集団接種を行わなくてはいけない事態が起こると思います。その意味でも、今回の風疹の都内の企業におけるワクチン集団接種は、その手順も含めて、新型インフルエンザが来たときに、きちんと訓練ができている状況ができるというふうに考えております。
 最後に、知事に、感染症における公衆衛生対策について伺いまして、質問を終わります。

○舛添知事 今、風疹の例を出されましたけど、妊婦が妊娠初期に感染したら、その子供が先天性の症候群にかかるということが一番怖いわけです。そのために、都は、平成二十四年から始まりました全国的な風疹の流行状況を受けて、全国に先駆けまして、昨年三月からは、緊急対策として、予防接種を行う区市町村への補助を行っております。また、来年度からは、新たに、風疹抗体検査と予防接種を一体的な取り組みとして実施してまいります。
 問題は、都だけやってもだめなんで、感染症ですから、国が全体的にやる必要がありますので、そういう意味で、国が策定を予定している指針でも、早期に先天性風疹症候群をなくすこととともに、平成三十二年度までに風疹の排除を達成するということを目標に掲げておりますので、そういう目標に沿いまして、都としても全力を挙げて感染症の予防対策をやってまいりたいと思っております。

○宇田川委員長 野上ゆきえ委員の発言は終わりました。(拍手)

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