予算特別委員会速記録第五号

   午後六時五分開議

○中屋副委員長 休憩前に引き続き委員会を開きます。
 質疑を続行いたします。
 小山くにひこ委員の発言を許します。

○小山委員 都議会民主党を代表して、締めくくり総括質疑を行います。
 平成二十六年度予算は、世界一の都市東京の実現に向けて新たな一歩を踏み出す予算と位置づけられ、一般会計は、平成二十五年度比六・四%増の六兆六千六百六十七億円、特別会計四兆二千六百九十四億円、そして、公営企業会計二兆四千三十三億円の総計十三兆三千三百九十四億円と編成をされました。
 また、将来の財政負担を見据え、都債については、起債依存度、平成二十五年度比マイナス〇・六%の六・六%とする一方、東京オリンピック・パラリンピック開催準備基金を除いた基金残高を平成二十六年度末で七千八百二十三億円とするなど、健全財政を維持する予算となっています。
 一方、舛添知事が所信表明でも述べられましたとおり、都の財政構造は、不況時に著しい税収減となり、財政を直撃することに鑑みれば、都財政における税収確保と将来を見据えた財政運営、そして、施策の効率性、実効性を高める自己改革を不断に行って、効果的な予算執行を常に図らなければなりません。
 そこで、都財政の基盤をより一層強固にすべきと考えますが、都の取り組みについてお伺いいたします。

○中井財務局長 景気の変動により税収が大きく増減するという都財政の構造的特徴を前提に、都政に課された使命を安定的、継続的に果たしていくためには、自己改革の取り組みを継続し、財政基盤の強化に不断に取り組んでいかなければなりません。
 このため、平成二十六年度予算編成においても、事業評価などの取り組みを通じ、一つ一つの施策を厳しく検証し、効率性や実効性を向上させるとともに、基金残高の確保や都債の計画的な活用を図っております。
 今後とも、中長期的な視点に立った堅実な財政運営に努め、施策展開を支え得る強固な財政基盤を堅持してまいります。

○小山委員 暫定措置によります影響額が、平成二十六年度は二千億円となる一方で、高齢化等による福祉経費が増大し、今後も、社会資本の更新、整備経費など、必要を迫られる支出は増加の一途をたどることが予想されます。
 平成二十六年度の税制改正において、法人事業税の暫定措置の規模は、縮小はされましたが、その規模は三分の一にとどまるとともに、新たに法人住民税の一部が国税化され、交付税の原資とすることとされました。この決定は、都や市区町村財政に影響を与えるばかりでなく、国家の衰退につながるものと厳しく断ぜざるを得ません。
 そこで、この法人住民税の一部国税化について、市区町村はどのように受けとめておられるのか。また、こうした国の動きに対して、都と市区町村が連携をして対応していくことが重要と考えますが、都の見解を求めます。

○中西総務局長 法人住民税については、市町村民税法人税割の税率が一二・三%から九・七%となり、切り下げられました二・六%分が国税化され、地方交付税の原資となります。
 この改正について、都内市区町村からは、地方分権の進展に逆行するものであり、限られた地方税源の中で財源調整を行うのではなく、地方の財源拡充という本質的な問題に取り組むべきとの主張がなされております。
 今回の税制改正に当たり、都は都内市区町村に対して、国や全国知事会における議論の動向などを適宜情報提供するなど連携を図ってきており、今後とも適切に対応してまいります。

○小山委員 このような不合理な法人事業税の暫定措置、法人住民税の一部国税化は、地方分権と、その権限に見合う税財源が確保される税財政制度の構築に向けたこれまでの我々の取り組みを逆行させるものであると考えます。
 地方自治体が、みずからの判断と責任で行財政運営を行う真の地方自治を確立するためには、権限とともに、その裏づけとなる財源を確保することが不可欠であります。
 不合理な法人課税の是正を決して容認することなく、粘り強く国への働きかけを続けていくべきと考えますが、舛添知事の見解と今後の取り組みについてお伺いいたします。

○舛添知事 地方分権を進めていく上では、地方がみずからの権限と責任で地域の課題に主体的に取り組めるよう、自主性の高い財源を確保していく必要がございます。その際には、都市と地方の財源の奪い合いではなく、まさに委員がおっしゃったように、日本全体の活力をいかに高めていくかという視点に立った議論が重要だと思います。
 委員ご指摘の地方分権に逆行する不合理な動きに対しましては、今後とも、都議会の皆様、区市町村の皆様とも力を合わせて、徹底して対抗していく所存でございます。

○小山委員 ただいま知事から大変心強いご答弁をいただきましたので、私ども都議会民主党としても、しっかり努めてまいりたいと思っております。
 次に、二〇二〇年東京オリンピック・パラリンピックに向けた取り組みについてお伺いをいたします。
 昨年九月に、二〇二〇年の東京オリンピック・パラリンピック大会の開催が決まり、本予算は決定後初の予算となります。
 三度目のオリンピックを開催した成熟都市ロンドンは、大都市問題の解決策を見事に提示をし、魅力あるまちづくりを実現いたしました。近年のオリンピックでは、持続可能な社会づくりを目指した文化的で調和的な都市づくりも希求をしております。
 私たち都議会民主党は、二〇一二年の一月に、東京オリンピック・パラリンピックに向けた第一次提言で、大江戸ルネッサンスという考え方などを都に示しました。今日も世界において高く評価されております江戸時代の町や人、さらには、文化、芸術を再興すること、再び興すことが東京の新たな発展につながっていくものと提言をさせていただきました。
 一九六四年の東京オリンピックにおきましても、日本古美術展のほか、歌舞伎や人形浄瑠璃、雅楽や能楽、民俗芸能など、多彩なものが東京の各所で開催をされました。
 そこでまず、この東京オリンピック・パラリンピックの文化プログラムにおいて、江戸文化を初めとした日本文化や芸術に直接触れる機会を多く設けていくべきと考えますが、都の見解を求めます。

○小林生活文化局長 東京には、江戸以来受け継がれている歌舞伎や伝統工芸など、豊かな伝統文化が集積しております。
 都はこれまでも、江戸東京博物館におきまして、火消しの象徴であるまといの操作や歌舞伎の化粧体験など、体験型の展示や行事も加えながら、国内外から訪れる多くの人に、江戸時代の文化に触れ、親しむ機会を創出してまいりました。
 また、伝統文化の魅力を広く発信するため、東京大茶会や子供たちの伝統芸能体験などの事業を展開しております。
 二〇二〇年の東京大会を成功に導くため、こうした取り組みを展開する中で、伝統文化も生かした多彩で魅力的な文化プログラムを策定してまいります。

○小山委員 江戸期に開花をいたしました和の食文化、日本人の長寿の源とも認知をされまして、健康志向が広がる世界において高い評価を得ております。
 昨年、和食、日本人の伝統的な食文化が、ユネスコの世界無形文化遺産に登録をされました。古来から続く日本の食文化は、食材のうまみを引き出しているだけでなく、漆塗りなどの美をきわめた器による盛りつけの芸術によって、世界の称賛を得ております。
 一九六四年の東京オリンピックでは、各国の選手に三百人もの料理人が腕を振るいました。二〇二〇年東京オリンピック・パラリンピック大会においても、和食を初めとした料理を多くの料理人でもてなすこととなると思います。
 また現在、東京では、特色ある農林水産物が生産をされ、直売所での販売や学校給食への導入が進んでおりまして、このように地産地消が進んでいることから、東京オリンピック・パラリンピックに向けて、ぜひ、計画の改定による食育の推進を求めておきたいと思います。
 そこで、東京オリンピック・パラリンピックにおいても、都内農林水産物を活用するとともに、和食及び和食産業を世界へ発信していくべきと考えますが、都の見解を求めます。

○塚田産業労働局長 都は、地産地消を進めるため、都内産農林水産物を積極的に使用する飲食店について、とうきょう特産食材使用店として登録する制度を実施しております。これまで、二百二十三店を登録し、ガイドブックやホームページ等でPRをしております。
 来年度からは、島しょ地域を対象とした新たな登録制度を構築し、島の地産地消の推進にも取り組んでまいります。今後、二〇二〇年東京オリンピック・パラリンピック大会も見据え、こうした取り組みをさらに進めてまいります。
 また、和食は、国際的にも人気が高いことから、関連する都内中小企業の海外への事業展開などに向けた取り組みを支援していくことにより、和食の魅力発信と産業としての育成発展を図ってまいります。

○小山委員 食文化に加えまして、日本には、漫画やアニメといった世界に誇れる文化があります。東京では、これまでにも、アニメフェアやゲームショー、映画祭、ファッションショーなど、多くの若者を引きつけるイベントを開催し、注目を集めてまいりました。
 これは(資料を示す)昨年のスポーツ祭東京二〇一三におけます府中市におけるオフィシャルガイドブックでございますが、「刃牙」という、若者に有名な漫画家の方が府中市に在住されておりまして、板垣恵介さんという方なんですが、この方の、ゆりーとの挿絵でございます。この挿絵というか、この絵が大変好評でして、市内には、このガイドブックがなくなったほどでございます。
 これはあくまで一例でございますが、このように二〇二〇年の東京オリンピック・パラリンピックの大会の開催ということを、ぜひ、こういった世界の注目がさらに集まるこの機会を生かして、日本の漫画、アニメ、ファッションなど、クールジャパンといわれる魅力ある産業をさらに盛り上げていくべきと考えますが、都の見解を求めます。

○塚田産業労働局長 我が国におけるアニメを初めとするコンテンツやファッションなどは、世界で高い評価を得ており、注目も高まる中で、ビジネスとしてさらなる国際展開を図ることにより、産業として大きく成長する可能性がございます。
 このため、都は来年度より、この分野における都内中小企業等の海外展示会への出展によるプロモーション活動や、商談会を通じた販路開拓、世界に通用する人材育成などの取り組みへの支援を開始いたします。
 このような取り組みを着実に進めていくことにより、東京ならではの産業としての基盤を強化し、海外への浸透を図ってまいります。

○小山委員 江戸時代の東京は、世界で最も美しい水の都の一つであったといわれ、東洋のベニスとまでいわれた江戸の風景は、水路を開き、水辺を生かしたものでありました。近代化の中で江戸の美しい風景は失われ、一九六四年オリンピックでは、日本で最も優美な橋といわれた日本橋が首都高に覆われてしまいました。
 二〇二〇年の東京オリンピックを開催するに当たって、景観や水辺の復活に取り組むことが極めて重要だと思います。
 東京都は、隅田川ルネサンスや運河ルネサンス、舟運を基軸とした観光振興に取り組んできました。
 そこで、水辺空間の活用も含め、東京の多様性を生かした観光まちづくりに積極的に取り組んでいくべきと考えますが、都の見解を求めます。

○塚田産業労働局長 水辺周辺の観光資源を結びつけ、新たな人の流れやにぎわいを創出し、水辺空間の魅力を向上させることは、地域の観光振興にとって重要であります。
 都はこれまで、舟運を活用した新たな観光ルートの開発や、周辺のマップの作成など、旅行者の回遊性を高める地域の主体的な取り組みを促進してまいりました。
 来年度は、旅行者の趣味等を反映した多様化するニーズに応えるため、食、スポーツなども新たに対象として支援をいたします。
 これらの事業を幅広く展開する中で、引き続き水辺空間を初めとする地域のさまざまな資源を活用した観光まちづくりの取り組みをサポートしてまいります。

○小山委員 水辺空間の活用を図るためには、水辺空間の景観を整えることも必要であります。現在、東京を代表する隅田川を中心に新たな水辺整備のあり方が検討され、その検討会報告でも、東京の顔となる風格ある河川景観を形成するための取り組みや、河川と沿川の町並みの総合的な景観を形成していくための取り組みを掲げておられます。
 江戸、明治から残る歴史的、文化的な景観をさらに保全、復活させることが、まさに私たちが提唱してまいりました大江戸ルネッサンスとなり、一九六四年オリンピックで失われた景観を取り戻すことが、二〇二〇年オリンピックの大きな意義になると考えます。
 そこで、隅田川を初めとする魅力ある河川と調和した沿川の町並み景観の誘導に積極的に取り組むべきと考えますが、都の見解を求めます。

○藤井東京都技監 隅田川や神田川は、江戸時代からの記憶を色濃く受け継ぐ東京の象徴ともいうべき貴重な空間でございまして、現在も独自の景観を形成しております。このため、都は東京都景観条例に基づき、隅田川や神田川を景観基本軸に指定いたしまして、地元の区とも連携しながら、良好な景観形成に取り組んでおります。
 具体的には、水辺に面する側に顔を向けた建物配置や、河川と一体となったオープンスペースの創出など、建築物の形態や意匠、色彩などに関する基準を定め、河川と調和した町並み形成を誘導しております。
 今後とも、地元自治体と連携いたしまして、東京の顔となる河川を生かし、歴史や文化を次代へ継承するような魅力ある景観形成に向けて、積極的に取り組んでまいります。

○小山委員 ロンドンでも、かつてテムズ川やリー川の水運は、重要な輸送手段でありました。二〇一二年のロンドン・オリンピック前のオリンピックパーク内のリー川は大変汚れておりましたけれども、オリンピック開催にあわせて水質浄化と水辺空間の整備に取り組んだとのことでございます。
 第十八回オリンピック競技大会、一九六四年のオリンピックの東京都報告書には、環境整備の都市美化の一環として、都内河川、特に隅田川の流域のしゅんせつを行うなど水質保全を図ったとの記述がございます。
 先日、井の頭公園の百周年にあわせたかい掘りが話題となりましたけれども、オリンピック開催も視野に入れて、都内河川の水質浄化を図るために、隅田川を初めとして河川のしゅんせつなどをさらに進めるべきと考えますが、都の今後の取り組みについて伺います。

○横溝建設局長 都はこれまで、河川のしゅんせつや下水道の整備などによりまして水質を大幅に改善してまいりました。例えば、隅田川の両国付近におきまして、水質の一般的な指標でありますBODで見ますと、水質汚濁防止法が施行された昭和四十六年度には一リットル当たり十四ミリグラムであったものが、平成二十四年度には三ミリグラムまで改善されておりまして、アユの遡上も確認できる状況となってございます。
 このような中で、都は、現在、潮の満ち引きによりまして汚泥などが堆積しやすい区間において、大規模なしゅんせつを計画的に行ってございまして、平成二十六年度は、隅田川など三河川で実施する予定でございます。
 今後とも積極的に関係局と連携し、河川の水質環境の改善に努めてまいります。

○小山委員 一九六四年の東京開催が決定をした年に、吉田茂元首相が、当時の東龍太郎都知事に宛てました文書の中でこういうことをおっしゃられております。
 オリンピックを機に、新東京建設、日本観光事業を大々的に計画ご提唱を要望いたし候、すなわち、東京湾上に一大埋立地をなし、近代文明の粋を集めたる理想的新都を出現せしめ、これを中心に日本全国を観光地帯とする構想と提言をされております。
 一九六四年の理想的新都と、今回の二〇二〇年の理想的新都は、おのずと異なると考えますが、一九六四年オリンピックで喪失しました景観を二〇二〇年オリンピックで取り戻すとともに、都市の進化を大胆に図るべきと考えます。
 そこで、二〇二〇年東京オリンピック・パラリンピックを通じた東京の新たな都市像について、知事はどのような理想的新都市像と未来を展望されているのか、ご所見を伺います。

○舛添知事 二〇二〇年大会は、東京をさらなる進化に導くための絶好の機会であると考えております。これを機会に、都市としての景観の重要性、これを一層認識しつつ、隅田川の水辺空間の整備、それから無電柱化の推進、河川と調和した町並みの形成など必要な取り組みを行ってまいります。
 同時に、この大会を機に、大災害に備えた強固な都市づくり、再生可能なエネルギーの普及や低公害車などの活用、バリアフリー化の徹底に取り組むことで、東京を安心と希望に満ちた都市にしてまいりたいと思っております。
 さらに、ベビーカーで階段を上りおりするのに困っている人がいれば、周りの人が自然と手をかすと、そういう光景が普通に見られるような東京にしたいと思っております。
 これからの社会のありようを展望しつつ、二〇二〇年大会が東京にとりまして大きく飛躍する転機となるように、全力で取り組んでまいります。

○小山委員 ただいま知事からご答弁いただきました、後段の、そういったすばらしい心を育まれる都市像、まさしく私どもも共感をいたしますし、そういったところに向けて取り組みをぜひお願いをしたいと思います。
 次に、都市外交についてお伺いをいたします。
 一九六四年の東京オリンピック大会に際しまして、代々木の米軍施設でありますワシントンハイツが日本に返還されたことが、その後の東京の都市計画に大いに寄与したことは、もう周知のとおりでございます。その返還は、アメリカ・ホワイトハウス、ワシントンDCにおける大方針のもとに決定をされました。都市外交において、東京とワシントンDCの友好交流は非常に重要だと考えます。
 昨年、私は、日米友好交流プログラムでワシントンDCを訪れまして、米国の元次席補佐官ですとか、あるいはヘリテージ財団の専門研究員などと意見交換をさせていただきました。このワシントンDC訪問で、日米関係の実態ですとか、あるいはアメリカでの中国や韓国の影響力が増していることを非常に痛感をし、大きな危惧を抱いて帰国をいたしました。
 東京とワシントンDCの関係構築と友好交流は、横田基地を初めとする諸課題の解決に大きな意味を持つと考えます。知事も記者会見で、東京とワシントンDCについて述べられておりましたけれども、ワシントンDCを初め、アメリカの都市との交流を積極的に推進していくべきと考えますが、知事のご所見をお伺いいたします。

○舛添知事 小山委員ご承知のように、都は姉妹友好都市やアジア大都市ネットワーク21の会員都市を初めとする世界の都市と、都市に共通する課題の解決に向かって共同で取り組もうということで、スポーツ、文化など幅広い分野で交流を行ってまいりました。
 ワシントンDCのお話がありましたけれども、ご承知のように、アメリカにおきましては、世界を代表する都市の一つでありますニューヨークと、我々は姉妹友好都市の関係を結んでおります。
 その国の主要な都市同士が交流を通じて相互理解を深めるというのは、国家間の良好な関係にも資するわけでありますから、ワシントンDCを含め、世界有数の都市ならではの東京ということで、都市外交を積極的に展開していきたいと思っております。

○小山委員 ただいま知事から、本当にすばらしいご答弁というか、ありがたいご答弁をいただきました。ワシントンDCとの友好関係というのは、やはり知事でなければなかなか進めることの難しい問題だと思います。ぜひともお願いをしたいと思います。
 次に、福祉施策についてお伺いいたします。
 まず、格差の拡大と貧困の問題についてでございます。
 知事は、ご著書の中で、金持ちはますます富み、一般庶民は日を追うごとに生活が苦しくなっていく、我々日本人の間に見えないくさびを打ち込み、その連帯感を断ち切っていくと述べられております。
 都内における生活保護世帯の増加により、都内の基礎自治体においては、扶助費の増額に窮し、格差の拡大と貧困は憂慮すべき事態となっております。ジニ係数は年々高くなっており、このことは調査時点での所得格差のみならず、高所得または低所得が親から子に受け継がれることを示唆するといわれております。
 さきの米国経済諮問委員会委員長でありますアラン・クルーガー氏が、子供が親の所得よりも一%多く所得を得る可能性が高いほど社会の流動性が高いとされ、そのグラフにグレート・ギャツビー・カーブと名づけられました。氏は貧富が定着し、社会的流動性が失われることは、生産性やビジネスにおける利益率、そして経済成長を脅かすことになると指摘もされております。
 歴史を見れば明らかなように、生まれながらに将来の可能性が固定化される不平等な階級固定社会は必ず衰退し、崩壊をしております。そこで、こうしたジニ係数等にあらわれている都内の所得格差や貧困の状況を改善しなければなりませんが、所得改善のため、雇用の面から都としてどのように取り組んでいるのか、お伺いをいたします。

○塚田産業労働局長 国の調査によりますと、正社員としての就業を希望する非正規労働者の七割以上は、その理由として収入の増加と雇用の安定を挙げております。こうした方々の正規雇用での就業を後押しすることは、生活基盤の安定を図る観点からも重要であります。
 このため、しごとセンターにおけるカウンセリングやセミナー、職業紹介等により、きめ細かい支援を実施してまいりました。さらに来年度は、実践的な職場実習により正社員としての就職を促す若者就職応援基金事業を開始いたします。今後とも、非正規雇用を余儀なくされている方々の安定的な就業を支援してまいります。

○小山委員 東京には多くの低所得者の方が生活をされております。また、東京のひとり親家庭は十七万七千百二十世帯と推計をされまして、そのほとんどを占める母子家庭の約四割の世帯収入は二百万円以下となっております。働く世代である稼働年齢層では、失業で生活が困窮し、その過程で自信喪失や疾病、家庭の不和、孤立化など、自立を妨げる問題を抱えている人がふえております。
 東京都内の保護率は、全国を上回る二一・八パーミルでふえる傾向にございまして、生活困窮者の割合が高まると考えられます。そこで、生活に困窮する人に対応する自治体を支える取り組みが必要と考えますが、都の見解をお伺いいたします。

○川澄福祉保健局長 都は、国に先んじて、生活困窮者の生活安定を支援する事業を区市町村と連携しながら実施してまいりました。こうした都の取り組みを受け、国は住宅手当や職業訓練などの第二のセーフティーネットを整備し、さらに、昨年末には生活困窮者自立支援法を制定し、区市を実施主体とする生活相談や就労支援等の事業を恒久化いたしました。
 現在、国では、平成二十七年度からの法の円滑な施行に向け、法に位置づけた事業を検証するためのモデル事業を実施しており、都は、これらの先駆的な取り組み事例について情報提供を行うなど、区市の体制整備を支援するとともに、今後国から示される政省令の内容を踏まえ、区市に対する支援のあり方を検討してまいります。

○小山委員 生活保護世帯への都の自立促進事業としましては、就労支援や社会参加活動支援、地域生活移行支援、健康増進支援と、そして子供たちへの支援として次世代育成支援がございます。国の補助事業を活用しました健全育成支援への取り組みとしては、家庭支援相談員の配置ですとか、訪問学習支援教室などが行われております。
 生活保護世帯の子供たちの中には、不登校やひきこもりとなったり、さまざまな学習障害を抱えている実態がございます。そのような子供たちに対し、ある自治体の学習支援教室の効果として、不登校の子供が学校に通うようになったり、学習習慣や基礎学力が身につくことにより、成績が上がって全日制高校に合格することができたという報告がされてもいます。
 また、学習支援教室は、勉強だけではなくて、相談会やゲームなどを行う子供たちの居場所にもなっております。このような学習支援教室や塾費用助成、先ほどありましたけれども、こういった子供たちの健全育成への支援は、すぐれた取り組みと考えておりますが、この件に関する都の見解をお聞きします。

○川澄福祉保健局長 生活保護世帯の子供が将来自立した生活を営めるよう、その健全な育成を支援することは重要でございます。このため、区市では、国の健全育成支援に対する補助を活用して、高校進学に向けた学習会の実施や、ひきこもり、不登校の子供に対する居場所の提供等、地域の実情に応じた取り組みを行っております。
 また、都におきましても、これら区市の先駆的事例を福祉事務所職員等を対象とした研修で紹介するとともに、都独自に子供が学習塾に通う費用や学習・相談ボランティアを家庭に派遣する費用などを助成する区市を支援しております。

○小山委員 この学習支援教室の現場では、この春の高校入試合格というすばらしい結果を受けまして、子供たちが、私の将来の夢を語ってくれました。その中でもいろいろあるんですけれども、特に、高校受験で不安に押し潰されそうになり、投げ出しそうになったけれども、この教室があったおかげで、よい結果が出せましたということや、あるいは仕事をして育ててくれる母のようになりたい、こういう率直な子供たちの思い思いの言葉を聞かせていただきました。
 しかしながら、この子供たちの健全育成支援に対する国の補助事業が、国の生活困窮者自立支援法の施行によって法内化をされまして、補助率も二分の一に減ってしまうという厳しい事実がございます。
 今年度、事業を実施しております都内五区五市からは困惑した声も聞かれております。子供たちの健全育成へのすぐれた取り組みがこれからも続くように都の支援が必要と思いますが、見解を求めます。

○川澄福祉保健局長 国の生活保護世帯の子供の健全育成支援は、現在、補助事業として実施され、全額が国費により賄われております。今回、国は、この事業が安定的、継続的に実施可能となるよう生活困窮者自立支援法の中に位置づけ、国と地方の費用負担による恒久的な財源支出の枠組みを設けました。
 生活保護受給者の自立支援に向けた取り組みは、本来、国の責任で実施すべきものであり、都はこれまでも、自治体の負担なしに実施できるよう国に要望しており、今後も区市の意見を踏まえながら働きかけてまいります。

○小山委員 二分の一に補助額が減ってしまうということは平成二十七年度からということでございますので、ぜひそれまでの期間、まだ時間があります。国への働きかけ、そして東京都の取り組みもあわせて求めておきたいと思います。
 舛添知事は、教育の機会が失われたりすることは、ずっと貧困の連鎖が続いていく、格差が世代間で継承されないことがいいと思うと述べられております。今まで、東京の低所得者に関する対策の議論を続けてまいりましたが、東京のセーフティーネットを充実させて貧困の連鎖を食いとめるべきと考えますが、知事のご所見をお伺いいたします。

○舛添知事 子供の貧困の原因が親の貧困であるというようなこの貧困の連鎖を、私は断ち切らないといけないと思っております。それは労働の分野でも教育の分野でも、機会の平等を保障することが必要であります。
 子供は親を選べません。どの親の子供に生まれるかというのは、子供の責任ではありません。親の経済状態にかかわらず、将来子供がみずからの生き方を選択し、自立できるよう機会の平等を保障するという、そのためのセーフティーネットを構築することは、まずは国家の責務であると思います。
 国は、昨年末、生活困窮者に対する生活支援や就労支援を目的とする生活困窮者自立支援法を制定いたしました。その中では、子供に対する学習支援も制度化されましたが、これはまず第一歩でございます。
 都は、こうした国の動きに先駆け、これまでも、住宅、就労のほか、子供の健全育成を支援するために塾代を助成するなど、さまざまな低所得者対策を実施してまいりました。今後、これまでの取り組みの成果も踏まえながら、低所得者への施策を進めるとともに、国に対して、子供たちの機会の平等が図られるよう、さらなる支援の充実強化を強く求めてまいりたいと思っております。

○小山委員 それでは次に、防犯、防災についてお伺いをさせていただきます。
 都内には七十五万戸の空き家が存在し、そのうち長期にわたって利用されていないものが十九万戸あります。空き家の数がふえるにつれ、東京でも深刻な問題となっております。
 そこで、都における空き家対策について何点かお伺いをさせていただきたいと思います。
 空き家である期間が長ければ長いほど手入れや管理が行き届かなくなり、活用もしづらくなっていきます。結果、荒れ放題となって近隣への影響も大きくなっております。都として空き家対策を一層積極的に行うことが必要と考えますが、都の見解を求めます。

○藤井東京都技監 長期間利用されていない空き家の中には、活用可能な戸建て住宅など比較的面積が大きいものも多く、これらが市場に流通することによりまして、ファミリー向けの賃貸住宅がふえるなど、都民の選択肢が広がる可能性がございます。
 都は、空き家の利活用方策の可能性を検証するため、昨年度からモデル事業を実施しております。引き続き、事業実施や成果検証等によりまして、利活用方策を検討してまいります。
 一方、老朽化した空き家は、地域の居住環境の悪化や防災機能の低下を招くことも懸念されます。こうした空き家は、地域の実情を把握している区市町村で対応することが重要でございまして、現在、一部の区市におきましては、条例などを定め、適正な維持管理についての勧告や除却に対する助成などを実施しております。

○小山委員 都では、空き家活用モデル事業といった、活用に向けた取り組みを行っているとのことでございますが、築年数が古く、老朽化が進んで活用できないものも多く存在をいたしております。
 こうした空き家がふえてくる中で、ご答弁にもありましたように、防犯、防災、景観などの点で地域の問題となっております。都内の基礎自治体では、九自治体が空き家条例を定めて、管理や撤去、解体の促進に乗り出しております。実際、私も、老朽化した管理されていない空き家から火災が発生をし、延焼した事例を見聞きいたしておりまして、空き家対策の早急な必要性とともに、この問題への取り組みの難しさも実感をいたしております。
 課題としては、相続による権利の細分化、土地と建物権利者間の調整困難、所有者不明、地価低迷などがございますが、税制も大きく関係をしております。具体的には、不燃化特区でクリアをされました、更地にするとはね上がる固定資産税の問題でございます。長年放置をされまして劣化が著しい廃屋は、震災時の倒壊の危険などに鑑みますと、もはや住宅として扱う社会的必然性があるかどうか疑問でございます。特区内に限らず同様の取り扱いをする、あるいは住宅用地特例の解除などにより、放置し続けることの不経済性を持たせ、撤去、活用が進むようにする必要があると考えます。
 そこで、空き家、廃屋に係る税制上の課題について、都の見解を求めます。

○影山主税局長 住宅用地に係る固定資産税及び都市計画税については、課税標準を価格の六分の一または三分の一とする特例が設けられておりまして、空き家等の敷地についても、原則としてこの特例が適用されます。
 一方、空き家を除却し、空き地となった場合には、この特例が適用されず、税負担が上昇するため、このことが除却を妨げる一因であるとの指摘があることは承知しております。
 空き家等については、相続の発生や所有者の所在不明などにより、課税実務上問題が発生するケースもありますが、空き家等の除却促進策として税制を活用する場合、税の公平性や政策効果、税収への影響等を慎重に検討する必要がございます。さらに、対象とする空き家の認定基準や手続をどうするかなど、解決すべき課題があると考えております。

○小山委員 東京都火災予防条例第二十五条の二では、空き家についての定めがありまして、第二項で、空き家の所有者または管理者は、当該空き家への侵入の防止、周囲の燃焼のおそれのある物件の除去、その他火災予防上必要な措置を講じなければならないと規定をしております。
 東京消防庁のある消防署では、管内全域の空き家調査を実施するとともに、所有者に対し、署長名で文書により指導を徹底したということもあったと聞いております。空き家を含めました放火、火災予防対策について積極的に取り組むべきと考えますが、東京消防庁の見解を伺います。

○大江消防総監 東京消防庁では、消防署ごとに町会、自治会、自主防災組織、消防団、関係行政機関等が参画した住宅防火推進協議会を設置しまして、地域の実態に即して、防火予防対策を含めた住宅防火対策を推進しております。
 放火予防対策としましては、住宅防火対策用のリーフレット等を活用し、広く都民に放火に対する注意喚起を図るとともに、必要に応じて、空き家の所有者等に対して、管理の徹底、周囲の可燃物の整理等を指導しております。
 今後とも、区市町村など関係行政機関や地域との連携のもと、放火予防対策を推進してまいります。

○小山委員 空き家問題は、人口減少の一方で、都市づくり施策の方向性がコンパクトな市街地への集約へと動いている中であらわれてまいりました少子高齢化社会、まさしく人口減少社会における象徴的問題だともいえます。多摩地域でも、駅近くにマンションが供給されます一方、周辺部には空き家が発生をし、地域の課題となってきております。
 都では、先ほど述べました基礎自治体の取り組みをしっかり支援していただきまして、知事がおっしゃられておりますような俯瞰した視点でこの現象を捉えていただきまして、対症療法だけでない対策を考える必要があると思います。
 住宅政策、まちづくり、さらには防災、租税、消防など、各分野にまたがる取り組みが不可欠でございますので、ぜひとも東京都は局横断的な検討と対応を図っていただくよう強く求めておきたいと思います。
 次に、スマートフォンによるネット依存対策について伺います。
 本委員会の尾崎政調会長の代表総括では、Wi-Fi環境の整備に向けた知事の力強い答弁をいただきました。
 携帯端末でインターネット通信ができるスマートフォン等は、非常に有用な機器でございます。以下、スマホといわせていただきますが、大変利便性の高い反面、私が委員を務めております東京都青少年問題協議会からは緊急メッセージが出されますほど、陰の面も急速に大きくなってきております。
 厚生労働省研究班の調査によれば、中高生の病的なネット使用は約八%、全国では五十一万八千人と推計をされております。子供たちのスマホ、ネットの利用や依存の実態についてどのように捉えているのか、お伺いをいたします。

○河合青少年・治安対策本部長 都では、東京都青少年問題協議会のもとに専門部会を設置し、青少年とネット依存についての調査研究を行っているところであります。
 先日、開催されました同協議会総会において、ネット依存の問題が青少年に広がっており、スマートフォンの急速な普及により、今後ますます深刻化するおそれがあるとの専門部会報告がなされまして、これを受けて、同協議会より都に対して、早急にネット依存対策の取り組みを求める提言等を含む緊急メッセージが発信されました。
 都は、同協議会からの提言等を踏まえ、都内の青少年のネット依存の実態把握のための調査を行うなど、青少年のネット依存対策に取り組んでまいります。

○小山委員 そこで、引き続き、青少年・治安対策本部としての来年度の取り組みについてもお伺いをいたします。

○河合青少年・治安対策本部長 都は、青少年のネット依存対策として、子供のネットトラブルの相談窓口における相談対応力を向上するため、ネット依存の専門家を講師として研修を実施することとしております。
 また、ネット依存の予防には、家庭でのルールづくりが重要でありまして、そのための啓発資料を、子供が使用する携帯電話の購入時に保護者に配布いたしますとともに、保護者向けのルールづくり支援講座の内容充実を図ってまいります。
 また、中学生、高校生については、生徒同士が話し合って自主的にルールをつくる過程を通じて、生徒の意識を高めることが有効であると考えることから、講師を中学校や高校へ派遣し、生徒の自主ルールづくりの支援につきまして、教育庁等と連携して取り組んでまいります。

○小山委員 私は、一人でも多くの小学生、中高生が、スマホによるネット利用についてしっかり学び、みずから考えることで、ネット依存に陥ることのないようにしなければならないと思っております。
 教育長も協議会の委員としてメッセージの内容を熟知され、賛同されていると思います。今回の青少年問題協議会からのメッセージを学校へしっかりと周知していくべきと考えますが、具体的にどのように周知していくのかお伺いをいたします。あわせて、このメッセージに実効性を持たせるよう取り組むべきと考えますが、今後の東京都教育委員会の取り組みについてもお伺いさせていただきます。

○比留間教育長 学校への周知についてでありますが、都教育委員会はこれまで、毎年四月初めに情報モラルに関する指導資料等を各学校に配布し、年度当初から児童生徒に対してインターネット等の適正な利用について各学校が指導できるようにしております。
 青少年問題協議会からのメッセージは、既に区市町村教育委員会と都立学校に送付をいたしましたが、今後これらを活用し、入学や進学の時期を捉え、ネット依存の危険性や、みずからルールをつくることの重要性について、児童生徒一人一人が理解できるようにしてまいります。
 また、保護者会やPTAの会合など、多くの保護者が集まる機会に、各学校がネット依存に関する啓発を行うことができるよう、区市町村教育委員会とも連携し、学校を支援してまいります。
 次に、メッセージに実効性を持たせる取り組みでありますが、都教育委員会は、情報教育の専門家を学校に派遣し、児童生徒を対象に実施している訪問講座に、夜は使わない、使わない時間を友達同士で決めるなどのルールを子供自身がつくる活動を今後新たに取り入れて、児童生徒がこのメッセージの趣旨を理解し、行動の変容へ結びつける取り組みを推進してまいります。
 また、児童生徒、保護者向けのリーフレットに、スマートフォンを使えないと不安になるなどのネット依存の傾向をチェックするためのリストを掲載し、学校での指導を通して、子供が保護者とともにインターネット等の使い方について話し合うことができるようにいたします。
 さらに、保護者会などの機会にメッセージを活用して、保護者のネット依存に関する認識を深め、家庭でのルールづくりにつなげられるよう取り組んでまいります。

○中屋副委員長 小山くにひこ委員の発言は終わりました。(拍手)

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