予算特別委員会速記録第五号

○東村副委員長 吉田信夫委員の発言を許します。
   〔東村副委員長退席、松村副委員長着席〕

○吉田委員 日本共産党都議団を代表して、締めくくり質疑をいたします。
 質問に先立って、今の発言に関して一言いわせていただきます。
 多分、「しんぶん赤旗」の報道について言及されたものだというふうに思います。ただ、借換債というものは、借金を返済するために新たな借金を行うということは明確な事実であり、それをもって、うそだなどということは通用しないことではないでしょうか。
 私も、予算特別委員会でも決算特別委員会でも、この問題を取り上げたことがありますけれども、繰り返し、こうした借換債によって回転させるというやり方をとり、ただ、例えば、私が質問して驚いたんですけれども、この利子分だけでも、十年間で百億もの負担が加算されるという大変な負担が伴うものなんですよ。ということについても指摘をしておきたいというふうに思います。
 さて、初めに……(発言する者多し)

○松村副委員長 ご静粛にお願いします。

○吉田委員 高齢者介護について質問いたします。
 我が党の清水議員の質問で、介護基盤整備のおくれをただしましたけれども、整備のおくれによって深刻な事態が起きています。その一つが、宿泊機能がなく、プライバシーも確保できないデイサービス施設での宿泊サービス、いわゆるお泊まりデイサービスを、特養ホームやショートステイなどに入れない高齢者が長期間にわたって利用せざるを得ないという事態が広がっていることです。
 我が党は、二〇一〇年、施設内でけがをして、家族の方からの通報を受けて、この宿泊サービスの劣悪な実態を知り、直ちに都に実態把握と調査を要求しました。しかし、その時点では、都は、区市町村の役割だということで、調査に踏み出そうとしませんでした。
 したがって、我が党は独自に、都内の全通所介護事業所にアンケート調査を行いました。その結果、一年から何と二年も連泊をしているという本当に深刻な実態が明らかになりました。そして、都に対して、独自の基準の設定や届け出制度ということも求めてまいりました。
 こうした中で、都は、二〇一一年に全国で初めて独自の設置基準を設定し、そして事業者に届け出を求め、さらに国に対し、強制力を持った指導を行えるよう、法令上のサービスとして位置づけることを要望いたしました。
 一定の努力はありますけれども、しかし、現状を見ると、施設数も利用者数も急増しています。事業所で見ますと、二〇一〇年十二月時点で百九十四施設でしたけれども、都のホームページで公開されていますが、最新のことし三月一日時点で三百七十五施設、一部廃止、中止もありますけれども、私が数えた限りでは三百三十四施設、何とこの短い期間に一・七倍増加をしています。杉並区だけでも何と十八カ所あります。
 私は、毎年、そういう状況を把握するために訪問していますけれども、率直にいって、一部屋で雑魚寝に近い状況でずっと暮らさざるを得ないと。しかも、訪問するたびごとに、もう本当に衰弱がひどくなって、もう話もできないということに、私は胸が痛みます。
 そこで、改めて現状を明らかにしていただきたいと思いますけれども、宿泊部屋が男女別々となっていない施設数、また、パーティションがないなどプライバシー確保策がとられていない施設数、一人当たり七・四三平米という基準面積以下の施設数、さらに、三十日以上宿泊サービスを行っている、ないしは三十日以下の規定のない施設数、そして、消防機関へ通報する火災報知器がない施設数、それぞれについて現状をお答えください。

○川澄福祉保健局長 都は、平成二十四年十二月に、宿泊サービスを提供している事業者に対しアンケート調査を実施いたしました。回答のあった三百五十六の事業所のうち、宿泊部屋が男女別になっていない事業所は九十一カ所、宿泊サービスの連続利用の制限を三十日以下とする規定をみずから設けていない事業所は百六十七カ所、消防機関へ通報する火災報知設備のない事業所は二十九カ所でございました。
 また、都の届け出、公表制度により、平成二十六年三月一日現在、福祉保健局ホームページで公表している三百七十五事業所のうち、パーティション等がないとしている事業所は二十カ所、宿泊サービスに利用されている部屋が、一つでも一人当たり七・四三平方メートルの基準を満たしていない事業所は百八十六カ所でございます。

○吉田委員 今の答弁で実態が明らかになりました。いまだに宿泊部屋が男女別々になっていない施設が九十一施設、調査対象の二五・六%、四施設に一カ所です。連続宿泊三十日以下という規定のない施設も百六十七施設、ほぼ半分ですね。広さが基準以下も、これも半分です。火災報知器がない施設が、何といまだに二十九施設です。
 実態が把握できたこと自身は、私は、努力だと思います。しかし、その調査によって、これだけの深刻な実態が明らかになったわけですから、改善、解決のために都として努力をすることが求められていると思います。
 知事に伺いますけれども、こうした実態をご存じだったでしょうか。老人福祉法は基本的理念で、老人は、多年にわたって社会の進展に寄与してきた者として、生きがいを持てる健全で安らかな生活を保障されるものとするとしています。そして、知事自身、最近出版された著書の中で、世界一に盛り込んだ思いとして、ここで老後を過ごせてよかったなと思ってもらえる都市にする、東京にするということだと思いますけれども、書かれています。
 しかし、今、首都東京で、男女が同じ部屋で、プライバシーが保護されないなど、劣悪な状態で宿泊を続けている高齢者がいることが浮き彫りになりました。こうした高齢者の尊厳を傷つけるような事態は、一刻も放置できないと思いますけれども、知事、いかがでしょうか。

○舛添知事 今ご指摘の通所介護事業所における宿泊サービスは、法令に位置づけられていない自主事業として、利用者と事業者との間での契約関係に基づいて実施されておりまして、特に最近、都市部でご指摘のように増加しております。
 そのため、都は、利用者の尊厳の保持と安全の確保を図るために、これもご指摘のように平成二十三年五月に、全国で初めて、人員、設備及び運営に関する独自の基準を定めております。
 この基準に基づきまして、現在、都は、区市町村と連携しながら事業者に対して指導を行っております。
 その結果、多くの事業者が基準に沿った運営を行うようになってきておりますが、事業自体がまさに民間と民間、民民の契約であって、法令上の根拠が行政の指導にないという状況であります。
 私が厚生労働大臣のときには、この問題はそれほど大きくなっていない。しかも、国全体を見ますから、地方からの声がそこまで上がってこない。しかし、今のような状況であれば、これは基準を当然国が法令で定めるべきでありまして、都は、繰り返し、国に提案要求をしております。
 今後とも、国に対して、法整備を強く求めるとともに、都独自の指導、これをさらに引き続き行っていきたいと思っております。

○吉田委員 いわれたとおり、一定の努力はされておりますし、国の責任が問われているということは承知しています。しかし、現実に、あなたが知事のこの東京で、答弁にあるような深刻な事態が現実に起きている。
 先ほど指摘したように、男女別々でない施設が九十一。しかも、実は、何年か前に、こうした施設で火災も発生しましたけれども、火災報知器がついていない施設が二十九。まさに、私は、高齢者の尊厳ということをいうからには、一刻も放置してはいけないと思うんですよ。
 そういう意味で、これまでの延長線上ではない、やはり取り組みというものを知事の決意で進めていただきたいと思うんですが、一刻も放置してはならないという点での知事のご決意を、もう一度確認させていただけませんか。
   〔川澄福祉保健局長発言を求む〕
   〔吉田委員「知事、お願いします」と呼ぶ〕

○川澄福祉保健局長 こうした事態を放置できないということで、都独自の基準を制定し、区市町村と密接に連携をしながら現場調査に入り、それから運営指導、それから現地確認をして、指導してきている、そういうことでございます。

○吉田委員 県によっては、きちんと基準の中に男女別々というふうに書いてある県もあるんですよね。しかし、東京都の基準には書かれていません。そういう改善を含めて、やはり一刻も放置できない問題について、取り組みを強化していただきたいということを強く述べておきます。
 さらに、事故の問題もあります。私たちは、宿泊サービス提供時間帯の事故件数と概要について、実は区市町村に調査を行いました。その結果、例えば大田区と世田谷区の二区だけで、四年間で転倒二十件、転倒以外のけが五件、さらに死亡が九件あったことが明らかになりました。
 このように事故の内容について把握していることは重要なことです。しかし、率直にいって、自治体によってばらつきがあり、残念ながら、把握していないというふうに答えた自治体もありました。
 事故の実態を把握することは、再発を防ぐ対策をとる上で極めて重要です。都は、介護保険内の事業と同様に事故報告を行うよう求め、区市町村にも報告をするように通知していますけれども、それでも、私たちが調べた結果、把握していないという自治体が少なからず存在しているのが実態なんです。
 したがって、都として、区市町村に対し、お泊まりデイでの事故について、詳細に把握するよう働きかけを強めるべきではありませんか。
 また、都としても事故の状況の全体像をつかみ、再発防止のための施策に反映させるべきではないかと思いますが、いかがでしょうか。

○川澄福祉保健局長 都はこれまでも、独自に宿泊サービスに関する実態調査を区市町村と連携を図りながら実施してきております。
 事故報告につきましても、事業者に対しては、指定通所介護事業所等の事故発生時の取り扱いに準じて区市町村に報告するよう都独自の基準の中で定めております。
 区市町村に対しては、事業者から事故報告を求める場合の範囲等を例示した事故報告取り扱いの標準例を示し、各区市町村における規定の整備を促しております。
 また、区市町村が事業者から受けた事故報告のうち、死亡事故などの重大な事故については、都に報告するよう周知しており、引き続き区市町村と連携して現地調査による状況確認を実施するなど、事業者に対して必要な指導を行ってまいります。

○吉田委員 しかし、現状としては、把握していない区市が少なからず存在をしているわけですから、ぜひこの点での踏み込んだ対応を改めて求めていきたいと思います。
 同時に、根本的解決のために施設の整備が必要です。一昨日も、私が訪問した施設で、昨年の十二月から三カ月余にわたって連泊を続けているという高齢の女性の方がいらっしゃいました。聞きましたら、やはり特養ホームの入所を待っているんだという職員の方の説明でした。こういう方がたくさんいます。それだけに、特養ホーム、ショートステイの整備は急務だと思います。
 厚生労働省は、実は調査をしております。厚生労働省は、二年前にデイサービス利用者の宿泊ニーズ等に関する調査を行いました。自治体からは、本来的にはショートステイを整備すべき、ケアマネジャーからは、ショートステイの受け入れ施設がふえるならばそれが一番いいという声が寄せられたと、厚生労働省の報告書に書かれていました。
 しかし、都は、高齢者人口当たりのショートステイ定員数は全国最低なんです。介護施設整備とともに、住みなれた地域で在宅介護を重視するなら、ショートステイの大幅増床が求められています。今後、一体どれだけ増床を進めていくのでしょうか。また、特別区長会は、ショートステイの整備費について、補助継続等、地域の実情に応じた都独自の施設整備費補助制度を充実することを要望していますけれども、これをどう受けとめ、対策をとるのですか。
 単独ショートステイへの補助は今後も継続すべきだと思いますけれども、いかがでしょうか。

○川澄福祉保健局長 高齢化が進展し、医療や介護を必要とする要介護高齢者がさらに増加することを踏まえますと、ショートステイを初めとする介護サービス基盤の整備を進めていく必要があると認識をしております。
 都はこれまで、ショートステイの整備を促進するため、特別養護老人ホームの整備に当たりましては、原則として定員の一割以上のショートステイを併設することとしており、来年度は整備費補助の単価を増額いたします。また、ショートステイを単独で整備する場合や有料老人ホームなどに併設する場合の補助も行っており、来年度予算にも盛り込んでいるところでございます。

○吉田委員 最後のところで、単独施設への整備費補助は来年度も盛り込んでいるという答弁でした。
 しかし、これは皆さん方が事業者の説明会に配ったものですけれども、(資料を示す)三月四日に行われた説明会の資料では、注意、ショートステイ整備費補助事業は平成二十六年度までの時限事業ですというふうに書かれ、しかも、来年度は受け付けは一回だけですということを書かれています。これだと、平成二十六年度で補助は終了するというふうに思わざるを得ませんけれども、継続すべきだと思いますが、いかがでしょうか。

○川澄福祉保健局長 整備費補助につきましては、来年度予算に盛り込んでおります。

○吉田委員 それはわかっているんですよ。しかし、今後、ショートステイをふやそうと思えば、やはり事業者の方々の積極的な意欲を引き出す必要があるわけですよ。来年度は補助がありますが、その次は答えることができません、これでどうやって事業者の方々に意欲的に事業参加を促すことができるでしょうか。
 私は、そういう点では、知事としての決断が求められているというふうに思います。
 知事は、在宅介護の充実といい、著書では、デイケアやショートステイなどのサービスをうまく組み合わせて、家族は介護の負担から自分を解放するというふうにしなければならないと述べています。また、二〇〇九年三月二十六日の厚生労働委員会でも、ショートステイが余裕を持って設置されるようにすべきだということまで、あえて発言をされているんです。
 しかし、東京都社会福祉協議会の調査では、ショートステイの利用率は一〇〇%を超え、ショートステイを希望する利用者の四割が希望の日程で利用できなかった、あきがなくて断られたというふうに回答しているんです。介護の苦難から解放するどころの事態にはなっていないんです。
 知事、区市町村や事業者の要望を聞いて、施設整備費の増額、運営費の補助を検討すべきですし、ましてや、補助については来年度限りということではなく、継続を知事として決断していただきたいと思いますが、知事、ご答弁をお願いいたします。
   〔川澄福祉保健局長発言を求む〕
   〔吉田委員「知事、知事が答弁してくださいよ」と呼ぶ〕

○松村副委員長 知事、いかがですか。(発言する者多し)お静かにしてください。ご静粛に。

○川澄福祉保健局長 先ほども答弁したとおり、高齢化が進展し、医療や介護を必要とする要介護高齢者がさらに増加することを踏まえますと、ショートステイを初めとする介護サービス基盤の整備を進めていく必要があるというふうに認識しております。

○吉田委員 知事は繰り返し、在宅介護が基本であるという発言だとか、家族負担の軽減ということを発言されてきました。ショートステイの大幅増床は、私はそのかなめともいえる課題だと思います。知事として明確な増床目標を定め、そのためのイニシアチブを発揮されることを強く求めて、次の質問に移ります。
 次に、防災対策、とりわけ切迫している首都直下地震対策について伺います。
 災害対策基本法は、第四条、都道府県の責務として、当該都道府県の地域並びに当該都道府県の住民の生命、身体、財産を災害から保護するために、計画を立て、実施することとしています。知事も、都民の生命と財産を守ることは知事の最大の使命だと強調されています。
 そこで、初めに、防災対策についての知事の基本的理念、都の責務についての認識を伺いたいと思います。
 率直にいって、防災対策について、東京都の歴代知事は、震災による被害を最小限に抑えるという予防対策を強調した方、専ら地震発生後の都民の自己責任を強調された方、立場が随分違いました。知事は、防災対策の基本理念、都の責務をどう認識しているのか、まずご答弁をお願いいたします。

○舛添知事 都民の生命と財産を守るために、首都直下地震への備えに万全を期すなど、首都東京の防災力を強化することは、都としての当然の責務であると考えております。
 東京の防災力を高めるためには、災害時の救援活動に欠かせない主要道路の橋梁の耐震化、さらに延焼遮断帯の形成等による木造住宅密集地域の改善など、行政が主体となって取り組むことに加えまして、民間事業者との協働、ともに働くことによって、帰宅困難者対策の推進や、食料や飲料水の家庭での備蓄の促進など、都民や企業の取り組みも不可欠であると考えております。
 都民、企業、行政の力を結集しまして、世界一安全・安心な都市の実現に取り組んでまいります。

○吉田委員 知事は、最近の著作で、首都直下地震の被害想定と対策についての中央防災会議ワーキンググループの最終報告を紹介し、どの数字も戦慄を禁じ得ないと述べるとともに、首都東京に住む都民にとって、これらの数値は圧倒的なリアリティーを持って迫ってくる。そして、中央防災会議から首都の防災力向上への対策と強化を求めているのは、都知事である私にほかならないというふうに書かれていました。極めて重要だというふうに思います。
 この中央防災会議の報告では、首都直下地震が今後三十年以内に七〇%の確率で発生すると報告するとともに、被害想定では倒壊と焼失する建物は都内全体で約三十三万棟、倒壊や火災による死者は最悪で一万三千人というふうにしています。そして、対策としては、建物の被害は死者発生の主要因であり、あらゆる対策の大前提と。そして、建築物の耐震化の取り組みを推進する必要があるというふうに強調しています。
 同時に、オリンピック等の開催までに首都直下地震が発生した場合における、人的、物的被害を大幅に軽減させる即効性のある取り組みとして、火災対策も挙げていることに注目を要さなければならないと思います。
 それで、知事にお伺いいたしますが、知事は我が党の代表質問への答弁で、中央防災会議最終報告について、改めて、都民の皆さんの生命と財産を守るため、大地震への備えを万全にしていくことが重要であると認識したと答弁されました。それなら、都内で五十万戸がいまだに耐震化されていない木造住宅の耐震化促進は、最優先課題として推進することが求められていると思いますが、いかがでしょうか。

○舛添知事 先ほど吉田信夫委員にお答えしましたように、都民の生命と財産を守る、これが知事としての最大の使命であると考えておりますし、特に首都直下地震などの災害に対しては、総合的に、あらゆる観点から備えることが必要であると考えております。そのためには、自助、共助、公助の原則のもとに、さまざまな施策を複合的、重層的に講じていくことが必要であります。
 今、ご質問の住宅の耐震化につきましては、まず、所有者みずからがその必要性を認識して、主体的に取り組むことが不可欠であります。そして、都は、意識啓発を行うなどして、まず所有者による耐震化を促している状況でございますが、その上で、防災都市づくり推進計画に定めます、整備地域の木造住宅や合意形成が困難な分譲マンションなど、公共的な観点から必要がある場合には、財政的な支援も行っております。
 いずれにしましても、首都東京の防災性を高めるため住宅の耐震化に取り組み、災害への備えに万全を期してまいりたいと思っております。

○吉田委員 所有者の責任は当然のことですけれども、しかし同時に、公的支援の責任が問われています。国も、全国の自治体も、所有者の負担軽減でいかに耐震化を促進するかという努力を積み重ねています。
 しかし、率直にいって、都が実施してきた木造住宅耐震改修助成の実績は、これが東京全体の数値なのかというふうに目を疑うほど低いものです。二〇一〇年度から一二年度の最近の三年間で、パネルと資料を用意いたしましたけれども、ごらんになっていただければわかりますが、五百二十一件です。同時に、その時期に静岡県の実績はどうかというと、五千三百九十件ですから、結果的に都は静岡県のわずか十分の一にすぎません。また、前年度の決算で比較をしても、執行額で見ても、東京都の執行額は静岡県の一五%という状況となっています。
 都の計画では、住宅の耐震化を二〇一五年度までに九〇%、オリンピック・パラリンピック開催の年度までに九五%以上にするというふうにしていますけれども、これまでのやり方では到底、私は耐震化が進むとは考えられません。
 耐震改修が進まない原因の一つは、助成を受けることができる地域が二重に狭く限定されていることです。都の助成要件は、旧耐震基準の住宅で、木造密集地域の中でも整備地域に指定された地域の住宅に限定し、さらにその中でも、幅員六メートル以下の道路に面する住宅でなければ助成しないということになっています。
 したがって、パネルを用意いたしましたけれども、整備地域はこの青いところです。整備地域以外の木造密集地域は、この赤いところなんです。木造密集地域であったとしても、これだけ赤いところが東京都の助成制度の対象から外されているということなんです。
 面積で見れば、木造密集地域は全体で一万六千ヘクタールというふうに東京都は発表していますが、そのうちの九千ヘクタールがそもそも木造密集地域でありながら、対象から外されているという驚くべき実態なんです。
 そこでお伺いいたしますけれども、なぜ東京都は、地域をこんなに狭く限定しているんですか。これまでは財源を効率的、効果的に活用する観点からという答弁を繰り返しされましたけれども、具体的にどういう趣旨なのか改めてお聞きいたします。

○藤井東京都技監 木造住宅の耐震化につきましては、建物所有者みずからが主体的に取り組む必要があることから、木密地域を抱える全ての区市では、都と連携いたしまして意識啓発などを行うとともに、地域の実情を踏まえた耐震化助成制度を設けております。
 その上で、広域自治体である都は、木密地域の中でも特に建物倒壊危険度や火災危険度が高い整備地域に的を絞りまして、住宅の倒壊による道路閉塞や大規模な市街地火災を防止するという公共性の観点から、耐震化助成に財源を投入しております。

○吉田委員 道路閉塞に的を絞ってやるんだというご答弁でした。道路閉塞を防ぐために特別の対策をとることは当然のことです。しかし、それ以外の木造住宅に住む人の生命、財産について、東京都は啓発などを行うだけで手を差し伸べる必要はない、公共性がないというふうにいうんでしょうか。
 資料でもお配りしましたけれども、改めて私は、各県の要綱などで耐震改修助成制度の目的をどのように位置づけているかを比べてみました。都は、危険性の高い地域の耐震性向上のためであるということを目的に明記しています。しかし、例えば京都府はどうでしょうか。知事は、地震による建築物の倒壊等から府民の生命、身体及び財産を保護するためというふうにしています。
 同じ府民なら、あるいは都民なら、地域の違いがあったとしても、生命、財産を守るために助成を受けることができる、あるいは行政は助成をする、これは当然のことではありませんか。他の、危険な地域以外、定めた以外は助成する必要はないというんですか。それで命が守れるんですか。

○藤井東京都技監 先ほどもお話ししたとおり、都としては、広域自治体としての役割を踏まえまして、緊急輸送道路沿道建築物の耐震化や木密地域の不燃化などの施策を重点的、集中的に講じていくことが東京全体の防災力を強化する上で重要であるというふうに認識してございます。
 このような認識のもと、都における住宅の耐震化助成は、震災時に住宅が倒壊した場合の道路閉塞や大規模な市街地火災を防止するという公共性の観点から、震災時に大きな被害が想定される整備地域において、区と連携し、公的助成を行っているものでございます。
 なお、お話のような他の自治体が実施している助成制度は、各地域の実情を踏まえて、それぞれの自治体が主体的に進めているものと理解してございます。

○吉田委員 人命を守る、都民の生命、財産を守るといいながら、整備地域以外は助成しないということは許されないことだと思います。(発言する者多し)
 そもそも、しかも他の県だけではなく、今、国もこうした考え方はとっていないと思うんですよ。平成十七年、二〇〇五年の九月に中央防災会議から発表された建築物の耐震化緊急対策方針では、建築物の耐震化については、とりわけ人命に密接に関連し、全国的に展開すべき対策だと。そして、社会全体の国家的な緊急課題とまで中央防災会議は位置づけているんですよ。(発言する者多し)
 さらに、財政運営という観点からいっても……

○松村副委員長 ご静粛に願います。

○吉田委員 地震で倒れる前に、倒れない家にするために助成することこそ、私は、効率的、効果的だという事実に目を向けるべきだと思うんです。
 例えば、静岡県では助成について検討した委員会報告で次のように述べています。人命を守ることが地方公共団体としての基本的な責務であるからというばかりではない、多数の人が住宅を失えば、仮設住宅、復興住宅の建設などに多額の財政負担が生じ、重大な影響があるからだと強調しているんです。
 実は、東京都防災会議、さらに中央防災会議のメンバーでもある中林一樹氏も著書で、倒れてからの支援よりも、倒れる前の補強への支援こそが大切だと述べ、被災した場合には、応急仮設住宅と生活支援の諸費用の全体で、少なくとも一世帯一千万円を超える計算を示しています。
 さらに、兵庫県における阪神・淡路大震災による復興住宅などの経費は、一戸当たり土地代を含めて三千万円を超えるという専門家の分析も示されているんです。
 中林氏は、耐震化を進めて、被災後にも自宅の修繕で住み続けられるような程度まで耐震補強が進めば、諸費用の有効利用となるとともに、被災者の生活の維持確保が進み、それは高齢者などの震災関連死の低減になると提起をしています。実に的を射た指摘だと思うんです。こうした指摘をどう受けとめますか。財政的にも、都民の財産を守り、命を守るためにも、事前の耐震化こそ、私は、二重、三重に効果的だというふうに思いますが、いかがですか。

○藤井東京都技監 お話の中央防災会議の最終報告でございますけれども、建築物の被害は、死者発生の主要因であるとともに、火災の延焼、救助活動の妨げなど、被害拡大の要因でもあることから、あらゆる対策の大前提として、建築物の耐震化の取り組みを推進する必要があるというご指摘だと思います。
 それに続けまして、指摘としては、特に重点的に取り組むべきものとして、木造住宅密集市街地や緊急輸送道路沿いの建築物を挙げてございます。
 都としては、広域自治体としての役割を踏まえ、東京全体の防災力を強化する観点から、木密の整備地域や緊急輸送道路沿道建築物などを対象に、公共性の高い施策を重点的、集中的に実施しているところでございます。

○吉田委員 私の質問には答えていなかったですね、結局。私は、事前の耐震強化の方が二重に三重に効果的だということをいっているんですよ。中林氏はわざわざ、この東京都議会の防災対策特別委員会でも同趣旨のことを述べ、それについて本会議で質問したら、当時の総務局長もこれを肯定する発言までしているんですよ。
 次に、耐震改修促進の最大のネックは、いわば整備改修費用の負担の重さであることはいうまでもありません。現在、都の助成制度は工事費の上限を百五十万とし、最大でその半分、七十五万を国の交付金と都、区で負担する仕組みをとっています。
 そこで伺いますけれども、都が交付を受けている国の社会資本総合交付金の効果促進事業では、工事費、補助額の上限規定はなく、また助成額と自己負担額の比率についても規定がないのではありませんか。さらに、地域指定についても交付金は定めていないんじゃありませんか。

○藤井東京都技監 社会資本整備総合交付金の効果促進事業では、助成額と自己負担額との比率の規定はございませんが、各自治体が事業の趣旨や実情などを踏まえまして、総合的に判断することとなります。
 なお、住宅の耐震化につきましては、まず所有者みずからが主体的に取り組むことが不可欠でございまして、木造住宅の耐震改修助成につきましては、補助対象事業費のうち二分の一を所有者が、残りの二分の一を国と都、区が負担することとしております。地域についても同様に定めはございません。

○吉田委員 ですから、そもそも国の総合交付金は、東京都のような地域を定める要件は一切ないんですよ。したがって、全国はそうしていると思うんですよ。しかも、金額についても上限はありません。そして、あくまでもこの制度を使えば四五%は国が持ちますという制度になっているんですよ。
 しかも、もちろんそれぞれの自治体が決めることですけれども、東京都の全体を合わせて助成額七十五万に対して、兵庫県は県市合わせて百十万、横浜市は百五十万なんですよ。都の財政力からすれば、私は増額が可能だし、増額すべきだというふうに思います。
 例えば、都が一戸当たり五十万円、区が二十五万円負担すれば、国から四五%、六十一万円の交付金を受けることができ、合計して助成額は百三十六万円になります。年間五千戸助成すると、単純計算で都負担二十五億、公共負担六十八億。一万戸で都が五十億、公共負担百三十六億。将来的に十万戸に助成しても、五百億、千三百六十億です。
 中央防災会議の被害想定では、東京の全壊戸数は十万五千棟とされており、世帯数は明らかにされていませんけれども、応急仮設住宅、復興住宅、土地代などの費用を含めれば、阪神・淡路大震災によるコスト分析で推計すれば、一兆、二兆という巨額な公的な負担がかかってくるんです。
 俗に、損して得とれといういい方がありますけれども、耐震改修助成への財政投入の方がはるかに負担軽減であることは明らかでありませんか。しかも、そのことが都民の生命及び財産を守ることができる、これが明らかでありませんか。いかがですか。もう一度、財政的に答えてください。

○藤井東京都技監 整備地域は、震災時に住宅の倒壊による道路閉塞や大規模な市街地火災が発生する危険性が高い地域であることから、防災対策上の優先度を考慮して、施策を重点的、集中的に講じることが大規模な市街地火災を防止し、災害発生時の被害を軽減する上で最も効果的でございます。
 都の耐震化助成は、このような施策の目的や考え方に基づき実施しているもので、引き続き整備地域に的を絞り実施してまいります。

○吉田委員 私は、皆さん方が、今の方が財政的にも効果的、効率的であるかのようなことを強調したから、財政の効率性、効果性ということならば、倒れる前の助成の方がはるかに、被害が起きてからの公的負担を考えれば効果的ではないですかということを繰り返し聞いているんですが、残念ながら、二回繰り返して聞きましたけれども、ご答弁ができなかったということが現実としてあるということを強調しておきたいというふうに思います。
 それで、それともう一つ、先ほど、区市町村との関係ですけれども、東京都は、危険が高いところはやりますよ、ほかは区市町村でやってください、支援はしませんと。これは、広域自治体としての本来の区市町村支援としての役割から見たら反対なんじゃないですか。
 しかも、私たちは調査いたしましたけれども、多くの区が、東京都が地域指定をもっと広げてください、そうすれば私たちが行っている全地域に対する助成額を上げることができるんです、こういうふうにいっているんですよ。ですから、そうした声に応えて、ぜひ努力をすべきだということを述べておきたいというふうに思います。
 次にお伺いいたしますが、そもそも木造住宅耐震改修助成制度を実施している道府県の中で、道府県は一部の危険地域以外は公共性がないということで支援しない、広域的自治体の仕事ではないから区市町村に任せると、こういうふうな対応をとっている他の道府県はあるのでしょうか。お答えください。

○藤井東京都技監 都を除く四十六の道府県のうち、木造住宅の耐震化助成を実施しているのは四十一の道府県と把握しておりますが、その詳細については承知しておりません。
 都は、首都東京の特性や役割を踏まえまして、緊急輸送道路沿道建築物や分譲マンションの耐震化、木密地域の不燃化などの施策を重点的、集中的に講じていくことにより、東京の防災性の強化に取り組んでおります。

○吉田委員 東京都のように、極めて狭い地域に限定しているような助成制度を行っている道府県がほかにあるのですかとお聞きしましたけれども、詳細は把握していないということで、ほかにもあるということは、結局いえませんでした。
 私は、政令市を持つ道府県を調査しました。対象地域を限定しているかどうか聞きましたけれども、パネルと資料を用意しましたが、助成を実施している道府県で地域指定をしているところはありません。助成地域を限定している地域はないんです。見てください。地域を問わずに、自治体だったら住民の生命を守るために努力をするというのは当たり前のことではありませんか。
 それで、知事にお伺いしたいと思いますけれども、今まで話を聞いてきてどのように思ったでしょうか。国も、交付金については地域指定はしておりません。他の、少なくとも私が調べた政令市を持つ道府県でも、地域指定をしている県はありませんでした。
 静岡県は、「TOUKAI―0」というスローガンを掲げています。これは東海地震の東海と、建物の倒壊をゼロにするという意味から、「TOUKAI―0」というスローガンを掲げているんです。そして、なぜそうした理由を掲げているのかホームページに記載しています。紹介しますが、阪神・淡路大震災では八割以上の方が建物の倒壊等による圧死、窒息死等が原因で亡くなりました、切迫性が指摘されている東海地震における住宅の倒壊から一人でも多くの県民の生命を守るために、平成十三年度に木造住宅の耐震化プロジェクト「TOUKAI―0」を立ち上げたと説明しているんです。
 一人でも多くの都民の命を守る、死亡者をゼロにしたい、東京でいえばそういうことになると思います。知事は、施政方針でも、知事の最大の使命は、都民の生命と財産を守ることといいました。都民の生命と財産がかかっているのです。地域限定はやめて、耐震化助成の大幅拡充の検討を直ちに行うべきでありませんか。これは知事の公約、発言が問われる問題だと思いますが、知事、ご答弁ください。
   〔発言する者多し〕

○松村副委員長 ご静粛にお願いします。

○舛添知事 まず、住宅というのは私有財産であります。住宅の耐震化を促進するためには、まず所有者みずからがその必要性を認識して、主体的に取り組むということが不可欠だというのは、まず第一の前提であります。その上で、都は耐震キャンペーンによる意識啓発をしたり、安い価格で信頼できる耐震改修工法を紹介するなど、既に耐震化に向けてさまざまな支援を実施しております。
 今後とも、自助、共助、公助の原則のもとに、区市町村と連携して施策を着実に実施し、住宅の耐震化を促進してまいります。
 一番問題なのは、財源をどうするかということと、タックスペイヤーについての公平な議論ができるかということ、これは毎回申し上げて--お金が天から降ってくれば誰も苦労しません、何でもできます。しかし、私有財産ですから、で、自分で私有財産を持っていない人だって税金を払っています。そういう人たちに対してきちんと公平な議論をやった上で財源を効率的にやる。
 それは、まさに政治は優先順位をつけてやる。私は、都民の生命と財産を守るためにそういうことをきちんと考えて、日々額に汗をして働いた方々が払ってくださる税金をいかに有効に、公平に使うか。しかし、その使い道は、選挙で洗礼を受けて当選をした私、都知事が決める、こういうことであります。

○吉田委員 まさに私は、知事としてどこに優先的にお金を使うのかということが問われていると思うんですよ。(発言する者多し)東京都はわずか四千七百万円ですよ。静岡県は……

○松村副委員長 ご静粛にお願いします。

○吉田委員 三億を超えてお金を投入しているんですよ。やりくりできないわけないじゃありませんか。
 知事の公約がかかっているんですよ。そのことを重ねて強く要望して質問を終わります。(拍手)

○松村副委員長 吉田委員の発言は終わりました。
 この際、議事の都合により、おおむね三十分間休憩いたします。
   午後五時三十二分休憩

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