予算特別委員会速記録第五号

○宇田川委員長 ただいまから予算特別委員会を開会いたします。
 これより付託議案の審査を行います。
 第一号議案から第二十七号議案まで及び第百二十九号議案を一括して議題といたします。
 この際、部局別質疑について申し上げます。
 去る三月十四日に、議長を通じ各常任委員長に依頼してありました部局別質疑につきましては、お手元配布のとおり報告がありました。ご了承を願います。
 これより締めくくり総括質疑を行います。
 順次発言を許します。
 鈴木章浩理事の発言を許します。

○鈴木委員 都議会自由民主党を代表いたしまして、締めくくり総括質疑をさせていただきます。
 舛添知事におかれましては、知事就任以来この一カ月半、都政及びさまざまな引き継ぎ、そして予算編成、またソチ冬季オリンピック訪問、そして本会議、予算委員会と大変多忙な日々を送られているとご推察いたします。この予算委員会の質疑も本日が最後でございますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。
 私は数カ月前に今とは違う気持ちでこの場所に立たせていただきましたが、理事者の皆様から伝わってまいります雰囲気が、そのときとは全く違うようであります。特に知事就任直後の、どのような知事なのだろうかという不安が、この人なら一緒にやれるという期待に明らかに変わったのだろうと思えるほど、やる気と緊張感の中にも明るさが感じられます。トップがかわるとこうも変わるのかなとつくづくと感じております。
 知事が敬愛してやまない儒学者、佐藤一斎は、佐久間象山、横井小楠、渡辺崋山、山田方谷、後には吉田松陰、勝海舟、坂本竜馬、小林虎三郎など幕末維新により新しい日本をつくっていった指導者に影響を与えたといわれております。
 特に西郷隆盛は、知事と同じように「言志四録」を座右に置いていたといわれております。今でも、亡き安岡正篤先生を慕う会などでは「言志四録」が学ばれていると伺いますが、その中に、森羅万象これ皆神なり、森羅万象これ皆師なり、森羅万象これ皆友なりという教えがあるそうです。
 知事は、万機公論に決すべしと、意見の異なる人の意見も拝聴いたしますと先日の高木委員の質問にご答弁されておりました。まさにその教えを実践されようとしていると思われますが、ぜひ、職員のやる気を最大限引き出していただきたいと思います。
 私たち都議会自由民主党は改めて、東京を世界で一番の都市にするために、知事は世界一の東京でありますが、思いは一つでありますので、その実現に向けて決して努力は惜しみませんので、ともに頑張っていきたいと思います。
 先日、知事が上梓されました「東京を変える、日本が変わる」を読ませていただきました。そこには、国家百年の計を見据え、フランスのパリ改造を行ったジョルジュ・オスマンや帝都復興に取り組んだ後藤新平の話が出てきました。全く同感です。
 さて、私は、東京を世界で一番の都市にしていくためには、そこに先を見据えた確固たる国家観がなくてはならないと思っております。エドマンド・バークは、国家とは先祖たちと現在の私たち、そして子孫たちの三者による共同事業であると述べております。
 保守主義は、生命の連続性、世代の継承、国家の連続性の重要性を自覚する思想といわれておりますが、特に都市や文化は縦軸の連続性の中で存在するものとして、この思想なしには東京を世界で一番の都市にすることも、発展させることもできないと思っております。
 そして、現憲法に欠けているこの国家の縦軸の思想なしには、今日の私たちが抱える安全保障、社会保障、さらには東日本の震災復興、防災対策など、山積した課題を解決へと導くことはできません。ましてや、二〇二〇年オリンピック・パラリンピック競技大会の成功もあり得ないわけであります。
 積み重ねてきた歴史があり、その上に立脚して、私たちの未来への営みがレガシーとなって将来に受け継がれていく。それが二〇二〇年オリンピック・パラリンピック競技大会の意味するものであり、そのことを私たちが再確認することが東京を世界で一番の都市への実現へつながっていくものと思います。
 そこで、このたび上梓されました「東京を変える、日本が変わる」に込められた思い、世界一の東京実現への考えを改めてお伺いいたします。

○舛添知事 鈴木理事から過分のお言葉をいただきましてありがとうございました。一生懸命頑張って都政、これは都議会の皆さん方、それから都の職員の皆さん方と力を合わせて前に進めていきたいと思っております。
 今、非常に含蓄に富む国家観の話をいただきましたけれども、私は、やっぱり歴史を学ぶ、古典をしっかり学ぶというのは、これは政治家としても絶対必要だというふうに思っております。
 先ほどエドマンド・バークの話が出ました。例えばウォルター・バジョットというような方々を含めて、保守とは何か、フランス革命に反対して保守がいいんだということをいったときに、私はいろんなものを改革しないといけないと思います、変えないといけないと。
 だけど、何のために変えるんですかといったときに、それはよき伝統を守るためにこそ変えると、これが保守主義の原点だというふうに思っておりますので、そういう意味で、今おっしゃったように、きちんとした縦軸、過去をしっかり見据えて、現在を見据えて、そして将来の私たちの子供たち、孫たちのためにいい国、いい東京をつくっていく、こういう覚悟でございます。
 そういう意味で、二〇二〇年の東京オリンピック・パラリンピック、この絶好のチャンスであるし、日本がいかにすばらしいか、東京がいかにすばらしいかということを、私たち自身が歴史の軸において再認識する機会だと思っていますし、諸外国から来る外国人にも、それを諸外国に向かって発信するということは私たちの責務だと思っておりますので、皆様方と協力して史上最高のオリンピック・パラリンピックに向けて頑張っていきたいと思っております。

○鈴木委員 ありがとうございました。同感でございますので、ともに頑張っていきたいと思っております。
 私は生まれたばかりで記憶にはありませんが、昭和三十九年の東京オリンピックは、国際社会に復帰し、戦後復興をなし遂げた姿を世界に示すことができた大会でありました。短時間での急な日本の発展に世界の誰もが驚いたといわれておりますが、そのことを早くから予言された方が、大正から昭和にかけて駐日フランス大使を務めたポール・クローデルであります。
 彼は大東亜戦争の末期、日本の敗色濃厚な一九四三年の秋に、次のように述べております。私がどうしても滅びてほしくない一つの民族がある。それは日本人だ。あれほど古い文明をそのままに今に伝えている民族はほかにない。日本の近代における発展、それは大変目覚ましいけれども、私にとっては不思議ではない。日本は太古から文明を積み重ねてきたからこそ、明治になって急に欧米の文化を輸入しても発展したのだ。どの民族もこれだけの急な発展をするだけの資格はない。しかし、日本にはその資格がある。古くから文明を積み上げてきたからこそ資格があるのだ。
 そして、この言葉を最後に、ぽつんと次のようにつけ加えたのです。彼らは貧しい。しかし、高貴であると。
 まさにそのとおりになったのが、さきのオリンピックでした。私たちは、日本人ではない海外の方が示唆したこの言葉の思いを、いま一度かみしめていかなくてはならないと思います。ぜひ、個人の生命、自由、財産を守ることに終始するのではない高貴な日本、そして百年先を見据えた東京を目指していっていただきたいと思っております。
 ところで、ことしはあの昭和のオリンピックからちょうど五十年の節目に当たる記念すべき年です。二〇二〇年の東京大会開催を盛り上げ、再び元気な日本を取り戻していくために、いま一度私たちが一九六四年大会を思い出し、ともにその意義を再確認し、次の東京大会につなげていけるよう、この五十年を記念する事業を展開していくべきと考えております。知事のご見解をお伺いいたします。

○舛添知事 昭和三十九年の東京オリンピックのときは、私は高校一年生でありまして、仲間が聖火ランナーとして走ったのを今でも非常によく覚えております。
 大変格調高く--今のご質問でクローデルの話が出ました。私も非常に尊敬するフランスの大使でありました。やはり、すばらしい日本、これをさらに進めるために、ことしは東京大会から五十年の節目に当たりますけれども、ぜひ、ことしをスプリングボードとして、第一歩としてぐっとさらに東京オリンピック・パラリンピックに向けて伸びていきたいというふうに思っております。
 そして、やっぱり二〇二〇年に向けて夢がある、そして希望をつなぐ、そういうことを体育の日を中心に全都民で、多摩地域、二十三区全部あわせてやりたいというふうに思っております。
 都民の思いを一つにして、すばらしい東京オリンピック・パラリンピックへ向けて努力をしてまいりたいと思っております。

○鈴木委員 昨年のスポーツ祭東京二〇一三により芽生えた都民のスポーツへの熱い思いを、これをことしの五十年事業によりさらに大きくし、二〇二〇年に花開かせていただきたいと思います。
 それでは、次に財政運営についてお伺いいたします。
 都は平成十八年度より、全国の自治体に先駆けて本格的な複式簿記・発生主義の考え方に基づく新公会計制度を導入し、行財政運営の効率化に役立ててまいりました。この新公会計制度の導入により、現金の収支のみを記録する従来の官庁会計ではわからなかった土地や建物などの資産と、都債などの負債というストック情報が明らかになり、長期的な視点での行財政運営に役立つ情報を手に入れることができました。
 また、減価償却費や金利等を含め、行財政運営に係る真のコスト情報が明らかになり、行政コスト計算書を通じて税収を含む収入と費用のバランスがとれているのかが一見してわかるようになったのです。こうした取り組みなどにより、一向に改善の見通しの見えない国を尻目に、都は、財政健全化と今日の強固な財政基盤の確立を実現してまいりました。
 さらに、大阪府や町田市など東京都方式を採用する自治体が着実に広がってきたことで、企業会計をベースとした全国標準的な会計基準策定への機運が高まり、この四月には、総務省の研究会は最終報告を取りまとめることになったと聞いております。
 このように、この間の都の取り組みは、全国自治体をリードしつつ国をも動かすものであり、それだけを見ても非常に意義のあるものだと考えます。
 そこで改めて、都の新公会計制度について、導入による成果を確認するとともに、今後の公会計制度に臨むに当たっての都の基本的な考えをお伺いいたします。

○松田会計管理局長 都は、新公会計制度を導入することによりまして、従来の官庁会計では明らかにできなかったストック情報やコスト情報を企業会計に準じた財務諸表を通じて一覧で示し、説明責任の充実を図ってまいりました。
 また、取引の都度、仕訳を行うシステムを導入することで、迅速かつ正確に局別、事業別の財務諸表を作成し、それらを活用するなどして行政運営のPDCAサイクルの確立と財政基盤の強化に努めてまいりました。
 さらに、金利や減価償却費などを含む真のコスト感覚の醸成など、職員の意識改革も促進されてまいりました。
 今後とも、都は先行自治体と連携しつつ、制度の改善や活用内容の充実に取り組むとともに、先駆者としてみずから実践しているからこそ持ち得る経験や成果を積極的に発信いたしまして、我が国の公会計制度の発展に貢献してまいります。

○鈴木委員 局長、何で私があえて決意をお伺いしたかといいますと、かつての出納長の役割を果たしている皆様方が大変重要であると考えているからであります。その取り組みは試行錯誤の連続であったと思われますが、皆様の努力が確実に都の財政健全化と今日の強固な財政基盤の確立をもたらしたものと思っております。
 今後とも、厳格な決算があって力強い予算があるという、財政運営の大きな役割を果たしている自覚を持って、説明責任の充実はもとより、行財政運営のマネジメント強化のためにも、さらには、公会計制度の伝道師として、都庁内はもとより全国に普及促進していただきたいと願っております。
 都がなし遂げた財政再建の意義は、単に財源不足を解消したことにとどまらず、税収の変動が激しいという都財政の構造的な特徴を乗り越え、いかなる財政状況にあっても政策課題を着実に実行し得る強固で弾力的な財政体質の確立へと道筋をつけた点にあります。
 また、財政再建を達成した後も、手綱を緩めることなく財政の質的転換に取り組んできたことが、リーマンショックという激震の中でも都民サービスに影響を及ぼすこともなく、財政運営を行うことを可能にしたと考えております。しかしながら、知事が公約した三つの世界一を実現するためにも一層の努力が求められます。
 そこで、これまでの公会計制度改革の成果を踏まえつつ、財政運営における自己改革の取り組みをしっかりと継続すべきと考えますが、局長の見解をお伺いいたします。

○中井財務局長 財政再建期においては、巨額の財源不足に対処するため、いかに歳出総額を切り詰めるかが財政運営上の至上命題であったことから、都議会の皆様のご協力をいただきながら、無駄を排し、最少のコストで目的を達成できるよう、徹底した施策の見直しに取り組んでまいりました。
 理事からもお話があったように、こうした見直し努力は財政再建後も継続して組織的に実施していく必要がございますことから、これを事業評価制度として再構築し、現在では現場の視点に基づく自主的、自発的なマネジメントサイクルとして都庁全体に根づいております。
 事業評価においては、新公会計制度の考え方なども踏まえつつ、事業効果やコスト等を検証し、効率性と実効性の両面で施策の質を高める工夫を毎年重ねてきております。
 今後とも、自己改革の取り組みを継続することにより強固な財政基盤を堅持し、必要な都民サービスの水準の確保はもとより、新しいビジョンの実現を財政面からしっかりと支えてまいります。

○鈴木委員 今後しばらく物価上昇が続くといわれる中で、物価上昇分プラス経済成長分で、名目GDPはさらに上昇し、税収弾性値も上がり、税収も伸びていくと思われます。
 私は、見通しが明るい今だからこそ、今こそ先を見据えた都政運営、財政マネジメントがより大切であると思っております。ぜひ今後とも、財政運営の実務担当として、決算や監査、事業評価などの取り組みをしっかりと財政運営に生かしていただき、東京を世界で一番の都市にするために一層の取り組みをお願いいたします。
 次に、財政運営でも都民サービスの質の確保が大事ですが、実際の執行段階における品質確保の取り組みという視点で幾つか質問をいたします。
 公共調達は税金を使う以上、技術力を兼ね備えたすぐれた事業者による履行を担保していくことが大切です。それを踏まえ、まずは業務委託の品質確保への取り組みについてお伺いいたします。
 委託は工事と異なり、履行状況を確認することによって、不備があれば必要に応じてやり直すことが可能であることから、委託内容の日々の履行確認のみを重視し、さらなる業務改善への取り組みについて議論がなかったのではないかと思われます。
 一般的に業務委託は年間を通して日々同じ作業の繰り返しが求められており、履行確認についてもその都度の対応で事が足りるとされてきました。しかし、必ずしも毎日が同じことの繰り返しばかりとはいえません。
 災害や事故など日常とは異なる事態となったとき、受託者が迅速で適切な対応を行えるかどうかが業務の質を大きく左右するからです。このような非常時での対応がまさに重要です。
 全ての業務委託がそうだとはいいませんが、少なくとも都民の安心・安全にかかわるような業務については、単に価格だけでなく、技術力にすぐれた事業者に発注する必要があります。
 委託業務の内容と委託金額を適切なものとした上で、しっかりと業務に取り組んでいただける企業を評価していくことによって、行政サービスの質が継続的に向上していく好循環を生むことができるのです。
 そのような視点から、価格に加え委託先の技術力や、その他の取り組みを評価する総合評価方式などが有効です。行政サービスの質の向上のために、ぜひ総合評価方式を拡大していただきたいと思います。
 さらに、例えば、建物維持管理等の業務は、建物のメンテナンスと耐用年数は極めて相関関係があるといわれており、ライフサイクルコストを考えますと、いわゆる予防保全型のメンテナンスが求められます。
 そこで、建物の維持管理等の業務委託については、その適用を拡大すべきと考えますが、今後の取り組みについてお伺いいたします。

○中井財務局長 ただいまお話をいただきました委託契約につきましては、私どももこの間、その実情の調査を行ってまいりましたが、その結果、履行の質の低下が課題となっている案件などがありましたことから、その原因を分析した上で、こうした状況を克服するために総合評価の拡大を図ることとし、庁内各局での総合評価導入を促進するための手続等を定めた手引の作成を行ってまいることにいたしました。
 この中では、仕様書作成上の留意点などを示した上で、非常時対応において、都民の安全・安心という観点から特に質の高い履行が求められる警備や設備保守などの建物管理業務について総合評価の適用拡大を図ることといたします。
 さらに今後は、この手引を活用して、各局において総合評価導入が図られるよう強力に支援を行ってまいります。

○鈴木委員 私は、そのような総合評価方式においては、特に価格以外の取り組みをしっかり評価すべきであると思っております。
 例えば、障害者の安定雇用に努めている企業や、ワックス剥離剤のような見過ごされがちな産廃について適正に処理をしている企業などの取り組みは、価格のみの選定では受注機会の拡大につながることはなく、広く業界全体の質の向上は望めなくなってしまいます。
 また、都の契約の相手方としてふさわしい事業者、例えば先ほど例示した社会的意義の高い取り組みを行っている企業が、技術力と並んで、その取り組みについても適正に評価されるべきであると考えます。
 価格以外の要素を評価することになじまない業種や業務もありますが、どのような業務について、どのような技術力を評価すれば、より価格とのバランスがとれた入札とすることが可能であるか、検討を直ちに行うべきです。
 そこで、業務委託の総合評価方式において、技術力を適切に評価するために現実にどのような項目を設定するのかをお伺いいたします。

○中井財務局長 総合評価を活用することで、より質の高い履行を確保していくためには、発注する業務内容に最適な技術力を適切に評価することが重要であります。
 手引では、配置予定責任者の資格、実績の評価、履行体制、研修体制に関する評価について、継続的な質の確保の観点から重点評価項目とするとともに、契約の原則である透明性、競争性、品質の確保を損なわない範囲で、障害者雇用や環境配慮への取り組み等についても要件として設定をしてまいります。
 実施に当たっては、これらの評価項目に基づく各局の取り組みについて、その履行状況の確認や検証もあわせて行ってまいります。

○鈴木委員 本当に質の高い都民サービス、行政サービスを提供するには、入札段階での技術力評価などの工夫にとどまらず、業務改善につながるような取り組みが必要であり、委託業務の履行確認の方法についても検討すべきときに来ていると思います。その意味でも、成績評価などは一つのやり方です。
 例えば、業務委託において複数年の契約を結んでいるものがあります。技術力にすぐれた事業者が安定的にその力を発揮できる仕組みですが、中には複数年での契約がかえって中だるみを生み、品質の低下につながっているケースもあると聞きます。まずは、それら業務委託における成績評価をしっかりと行い、一定の緊張感の中で履行の確保を図ることが求められていると考えます。
 さらにその先には、例えば第三者による評価を含めた履行確認を徹底することで、本来その業務に求められる品質を念頭に置いた確認が可能となり、委託内容に不足があれば、それも含めた業務改善の検討が可能となるであろうと思います。そのような議論を今後も深めていただくことを要望して、次に、工事における入札契約制度についての質問に移ります。
 二十六年度予算案では、投資的経費が前年度比で六%増額して計上されており、これを最大限に生かして都民サービスに必要なインフラ整備を着実に進めていく必要があります。
 さらに、アベノミクスでよくなってきた景気を循環させるためにも、公共工事が着実に執行されなければなりません。公共事業を不調にすることなく、着実に契約し執行するためには、都と受注産業である建設事業者との間に強力な信頼関係が不可欠です。
 公共事業を取り巻く環境は、不調が増加するなど大きく変化しており、今後はこれまで以上に広い視野での改革が必要です。特に、私が大切に考えるのは受注産業の振興です。
 例えば、工事の発注量が年間のいっときに集中することは、都の事業を積極的に担っていこうという事業者の意欲を妨げております。受注産業である建設事業者からは、発注が集中する時期には各企業が抱える技術者の数では請け切れず、発注が少ない時期にはせっかくの技術者が余剰となってしまうという声が聞こえます。
 そこで、各事業における年間の工事発注について、事業者が安定的な受注計画を立てられるよう一年を通して受注量を平準化していくべきと考えますが、所見をお伺いいたします。

○中井財務局長 都の工事への入札参加意欲を高めるためには、理事ご指摘のとおり、繁閑の差がなく安定的に工事を発注することが重要であります。
 このため、発注件数を年間で平準化するよう、今後は工期が十二カ月未満の工事についても、工事所管局と協力しながら債務負担行為を効果的に活用するなど、具体的な取り組みをさらに強化してまいります。
 また、工事の年間発注予定についても、事業者が入札に参加しやすくなるよう、公表内容や発注予定の詳細化など情報提供のさらなる充実を図り、計画的な発注に向けた取り組みを強化してまいります。

○鈴木委員 局長、不調が続くから改善するのではなくて、相手の立場を理解して仕事を出す、信頼関係の構築はこうしたことの積み重ねでありますので、早速取り組んでいただきたいと思います。
 不調の発生は、工事の発注時期を工夫するだけで解決するものではありません。その原因の一つである予定価格と実勢価格の乖離は、現在のように建設コストが急激に上昇する局面では短期間でも拡大してしまい、特に大規模な工事では入札契約手続期間がより長くなることから、乖離がますます大きくなる傾向があります。
 市場の変化に対応して、より迅速に入札契約手続を進めるべきですが、所見をお伺いいたします。

○中井財務局長 市場の変化に機動的に対応するため、入札契約手続をより迅速に進めていくことは極めて重要でございます。
 このため、今後は、議会付議案件等につきまして、公表から入札までの入札契約手続期間を、これまでの約七十日から最大で二十日程度短縮するよう取り組んでまいります。
 また、議会付議案件等で公表期間中に単価改定等があった場合などは、予定価格を修正し、実勢価格に近づけた価格で入札を実施する方向で取り組みを進めてまいります。

○鈴木委員 局長、ぜひよろしくお願いいたします。
 この予算特別委員会の中で、都からは、今後も入札契約制度改革を進め、建設市場の変化や、その時々の課題への機動的な対応もより重視し、入札に参加しやすい環境の整備に取り組んでいくという答弁があり、具体的に新たな取り組みが幾つか示されました。今回の手続期間も、より実勢価格に近づくということから、一歩前進したと思っております。
 今後とも、事業者の視点で入札契約制度改革をこれまで以上に進めていただきたいと思います。
 しかし、いかに制度を改善しようとも、現場が改善されなければ何の意味もないわけであります。その事業の現場から見えてくるのは、やはり旧態依然として事業者を無視した発注を繰り返す高圧的な都の姿であり、信頼関係以前の、まさに受注者が請け負けされているという姿であります。
 中でも、地方自治体の公共工事においては、設計変更に伴う契約金額の変更は当初契約の落札率を乗じた額で行われており、最終的に赤字を強いることにもなっております。
 建設市場が変化した今、求められるのは、事業の現場も入札契約制度の一部を担っているという意識や、公共工事のような受注産業は受発注者の信頼関係があって初めて成り立つものであるという基本的な考え方ではないでしょうか。
 入札契約制度改革の取り組みや考え方を契約後の現場にまでしっかりと浸透させていくべきであると考えますが、局長の見解をお伺いいたします。

○中井財務局長 これまで、入札契約制度改革においては、受発注者間の信頼関係の醸成に向け、電子調達システムを活用した情報提供や工事成績評定制度の信頼性の向上、業界団体との意見交換の場の設置などに取り組んでまいりました。
 今後は、職員がこれまでの取り組みの趣旨を理解し適切に活用することによって、最大限の効果が発揮されるよう、事業所の実務研修等の場で趣旨やその内容をこれまで以上に十分に説明するなど、工事所管局とも連携し、全庁一丸となって、その定着を図ってまいります。

○鈴木委員 局長、やってくださいよ、期待しておりますから。
 国では、インフラ自体の品質確保と、その担い手の中長期的な確保を目的として、いわゆる品確法の改正を準備しています。
 これまで都議会自由民主党は、入札・契約制度改革プロジェクトチームを通じて、国がこの改正で示そうとしている方向性を先取りして俎上にのせ、都と議論を深めてまいりました。これまでの議論をもとに、我々は入札に参加しやすい環境の整備に向けての取り組みをさらに進めているところであります。
 これらの取り組みは、大都市東京における新たな入札契約制度として、実効性及び持続性の高いものとなるはずです。このような自治体独自の取り組みを、法の画一的な運用によって損なうことなく、最大限の効果を発揮されるよう、国に財源上の保障と実務上の支援を行っていくことを強く求めておきます。
 次に、防災対策について伺います。
 まず、東日本大震災、そして昨年の台風による大島の土砂災害で犠牲になられた方々のご冥福を衷心よりお祈り申し上げます。また、被害に遭われた方々に心からお見舞いを申し上げます。
 震災発災後、復興に向けたスタートがおくれ、東北の被災地は厳しい現実にさらされております。あくまで仮設のはずのプレハブ住宅が、今なお多くの方々がそこで不自由な生活を余儀なくされており、政治家として心痛にたえません。
 都は、我が党の要望を踏まえ、現地事務所の設置や震災瓦れきの受け入れなど、被災地が真に必要とする施策を震災直後より実施してまいりました。特に二年前のこの場で、我が党は、被災自治体における技術職員の不足が深刻化しているとして、行政OBや民間経験者の派遣を提案しました。これを受けて、都が全国に先駆けて実施した任期つき職員の採用は、その後、被災県や他県も導入するなど全国に波及し、大きな成果を上げております。
 震災から三年が経過し、ことしも多くの犠牲者に哀悼の意がささげられました。その無念に応えるためにも、被災地の早期復興を一刻も早くなし遂げなければなりません。
 現在、被災地では住居を安全な高台に移転する防災集団移転促進事業の着工率が約七八%となっておりますが、いまだ本格的な移転には至っていないなど、復興は道半ばであります。
 都は、このような被災地の状況を見きわめ、復興を的確に後押ししていくべきと考えますが、今後の東北の復興支援について知事の決意をお伺いいたします。

○舛添知事 震災直後から、私は福島県や宮城県の被災地を訪ねました。そして、その惨状を目の当たりにしまして、これはやっぱり、この甚大な被害からの復興には政治の力がどうしても必要だと、そう感じた次第であります。
 都はこれまで、被災地の一日も早い復旧、復興をなし遂げるために、全国の先頭に立って取り組みました延べ三万人を超える職員派遣や、先陣を切って進めた震災瓦れきの都内受け入れなど、支援を続けてまいりました。
 四年目に入りまして、被災地では災害公営住宅の建設が進むなど、復興への取り組みは本格化しつつあります。こうした動きに弾みをつけるため、東京は地方自治体のリーダーとして継続して支援に力を注いでまいります。
 また、東京オリンピック・パラリンピックの開催に向けた取り組みを原動力にして、日本経済全体に力を与え、復興への足取りを確かなものにしていきたいと思っております。
 今後、世界一の都市東京の実現に向けて着実に取り組むとともに、引き続き被災地のニーズを的確に把握しながら全力で支援を行い、東北の復興を力強く後押ししてまいります。

○鈴木委員 知事、期待しております。ともに頑張ってまいりましょう。
 私の田舎、福島県を初め、現地ではいまだ風評被害も深刻な問題になっております。これは早急に解決すべきであり、他に責任を求めることなく、国を挙げて風評の払拭に取り組まなくてはなりません。
 来年度の予算執行に当たっては、我が党が昨年の第四回定例会で指摘した被災地応援ツアーについても着実に実施し、そうした風評の改善に取り組むとともに、懸念が伝えられる震災記憶の風化防止にも積極的に取り組むよう強く要望いたしておきます。
 次に、災害情報発信機能の強化についてお伺いいたします。
 昨年十月の大島の土砂災害では、まさに言葉を失うほどの被害が生じました。我が党は発災直後、直ちに現地に議員を派遣するとともに、知事に対して緊急要望を行うなど、大島の復旧、復興に向けて全力で取り組んでまいりました。
 こうした災害を二度と繰り返さないためにも、さまざまな角度から検証が必要ですが、とりわけ災害時の情報発信は都民の安全・安心を確保する上で重要です。
 都では、今回の大島の土砂災害における情報確認のおくれといった課題も踏まえ、警報、注意報等の気象情報をより確実かつ即時に区市町村に対し伝達するため、気象庁から都に配信される警報情報等を区市町村の防災担当者へ自動でメール送信するシステムを構築するなど、さまざまな災害に的確に対応できる危機管理体制を構築していくとしております。
 一方、台風等に伴う被害を抑制するには、こうした都や区市町村による行政の危機管理体制の強化に加え、住民一人一人が迅速的確な避難行動をとることが重要です。このため、注意報、警報等の気象情報や、区市町村の避難勧告や避難指示などの災害関連情報を正確かつ即時に都民に伝達することが不可欠となります。
 現在、区市町村は防災行政無線を通じて住民に対し避難勧告等の情報を伝えておりますが、都としても、迅速な住民避難が可能となるよう、区市町村と連携し、多様な情報伝達手段を活用する仕組みを構築すべきだと考えますが、見解をお伺いいたします。

○中西総務局長 住民に対する情報提供や避難誘導につきましては、理事からお話がありましたとおり、区市町村が防災行政無線による放送等を通じて行っております。
 都といたしましても、気象情報や行政が発信いたします災害関連情報について、報道発表によりマスコミ等を通じた情報発信を行うほか、防災ホームページやツイッターなどを活用し、都民に対して注意喚起等を行っております。
 さらに、この六月から、総務省の公共情報コモンズを活用して、区市町村が発する避難勧告等の情報を即時にマスコミ各社へ直接提供できるシステムの運用を開始する予定でございます。
 今後とも、区市町村と密接に連携し、都民に対する適切な災害情報の発信に努めてまいります。

○鈴木委員 災害関連情報を正確かつ即時に伝達することは、身の安全を確保するだけでなく、減災にも大きく影響いたします。今回の災害を二度と繰り返さないためにも、災害情報の伝達手段の適切な発信に努めていただきたいと思います。
 次に、下水道機能の確保について伺います。
 近年、首都直下型地震の発生が危惧されております。我が党は、防災の視点からも世界一の都市東京を実現するため、さまざまな施策に取り組んでおります。その実現には、都市活動や都民の日常生活を地下で支える下水道が担う役割は大きく、万が一、機能が停止した場合には、都市環境や衛生面などに大きな影響を与えることになります。
 実際に、阪神・淡路大震災の際、神戸市の東灘下水処理場が被災し、下水処理の機能が停止したため、緊急的な措置として、一時的に運河の一部を締め切って簡易な処理を行ったとの話を伺いました。日本の首都であり最大の都市である東京がこうした状態になった場合、はかり知れない混乱が生じるのではないかと懸念しております。
 このようなことのないよう、既に下水道局は、水再生センターの施設などの耐震化を進めるとともに、万が一、水再生センターの施設に甚大な被害が発生した場合にも、他の水再生センターで処理機能をバックアップできるよう、センター間を結ぶ連絡管の整備も進めていることは、我が党のこれまでの質疑で承知しております。
 また、震災等で汚泥処理施設が損傷すると、汚泥だけでなく水処理の運転もできなくなり、下水道機能全体が停止すると聞いております。
 区部では、下水を処理する過程で発生する汚泥を五カ所の汚泥処理施設で集約処理し、効率化を図っておりますが、万が一に備え、汚泥処理のネットワークを構築し、汚泥処理施設間でのバックアップ機能を確保していくことが重要であると考えますが、見解をお伺いいたします。

○松浦下水道局長 区部では、危機管理対応の観点から、汚泥を送る送泥管のネットワークを構築し、汚泥処理の信頼性を高める取り組みを進めております。
 現在の送泥管は地中に直接埋設されているため、老朽化の状況が把握しにくく、損傷が生じても速やかな補修が困難といった維持管理上の課題があります。
 そこで、水再生センター間にトンネル方式のネットワーク管を設置し、内部に送泥管を二本配管することで、送泥のバックアップ機能の確保や維持管理の信頼性向上を図ってまいります。
 今年度、落合、みやぎ水再生センター間の工事に着手し、今後、他のセンターにも取り組みを拡大いたします。さらに、みやぎ水再生センターに汚泥処理キーステーションを整備し、緊急時に施設間で送泥先を切りかえられるようにすることで、バックアップ機能を強化してまいります。
 こうした取り組みにより、災害時にも下水道機能を維持し、高度防災都市づくりに貢献してまいります。

○鈴木委員 あえて、この汚泥処理施設間のバックアップ機能の確保の話をさせていただいたのかといいますと、震災時の都民生活を確保し、混乱を抑えるためにも、本当に下水道機能の万全な備えが重要であるからです。大規模な事業となるため、早期に計画的にしっかりと取り組んでいただきたいと要望しておきます。
 次に、国家戦略特区についてお伺いいたします。
 我が党の総括質疑でも触れさせていただきましたが、東京は豊かな潜在力を有しており、海外の人、情報、資本などを引き寄せれば、日本経済の活性化、GDPの増大に直結します。そのため東京都は、国際的なビジネス拠点づくりに向けて、国家戦略特区の指定を目指しております。
 現在、前田副知事をトップとするタスクフォースを立ち上げ、国にさらなる提案を検討していると聞いております。国家戦略特区は、安倍政権の成長戦略の柱であり、政権と連携し、都市機能や産業集積といった東京が持つ特徴を前面に押し出した魅力ある提案を期待しております。
 そこで、国家戦略特区にかける知事の意気込みについてお伺いいたします。

○舛添知事 先日、安倍総理と国家戦略特区についてお話をする機会がございまして、そこで総理からは、東京都の提案に対して大変強い期待が示されました。同時に、さらに充実した内容の提案をお願いしたいとのお話がございましたので、この要請に応えまして、理事がおっしゃったように、現在、庁内にタスクフォースを設けまして、精力的に検討を進めているところであります。
 会議には私も出席し、議論をしておりまして、外部の方を呼んでのヒアリングもやっております。そこで、例えば、東京で薬をつくる創薬の拠点を形成できないか、それから、東京の街路でパリのシャンゼリゼ大通りのようなにぎわいを実現できないかというようなことを、今議論をしております。
 今月中には、国家戦略特区のプランをお示ししたいと思っております。東京が目指す国家戦略特区は、まず国際的なビジネス環境を整備する、それから、今申し上げました医療とか創薬イノベーションの拠点を形成する、それから、何といってもおもてなしをやることのできる国際都市を目指す、この三つを柱に設定しまして、取り組むプロジェクトと、これに必要な規制緩和などの提案を、今盛り込もうとしております。
 国家戦略特区の成否は、二〇二〇年のオリンピック・パラリンピックの成否に大きくかかわってくるという明確な認識の上で、必要な規制緩和、必要な改革を東京が先んじて行っていきたいと思っております。これを実現するために、みずから先頭に立ちまして、国に対してもしっかり提案し、また必要な場合には物を申していきたいと思っております。

○鈴木委員 よろしくお願いいたします。
 代表総括でも触れさせていただきましたが、なぜ締めくくりでも触れさせていただいたかと申しますと、国家戦略特区は、東京が国際的な都市間競争に勝ち抜き、日本経済を牽引するための重要な取り組みであるからです。地域指定の後は、国、地方公共団体、民間事業者の三者から成る区域会議において具体的な計画が作成され、実施に移されることになりますが、しっかりと目に見える成果を期待しております。
 また、東京が目指す国家戦略特区では、今、知事がお話しになりましたように、医療や創薬イノベーションの拠点形成だけでなく、国際ビジネス環境の整備を視野にして、産学公金といった幅広い連携を図るなど、あらゆる機会を活用し、成長戦略へつなげていただきたいと強く要望しておきます。
 また、国家戦略特区の指定を受け、さらにオリンピック・パラリンピックの開催を契機に、今後、各国要人が来日する機会が増加していくものと思われます。
 こうした要人を首都東京の長として単にお迎えするのではなく、日本の歴史や伝統、文化に触れてもらうことが重要であると思います。これにより、日本への理解を深めていただき、その魅力を広めていくことは、国際戦略として不可欠ではないでしょうか。そのためには、真の日本人の心が伝わるような舞台が必要です。
 かつて明治初期の浜離宮には、延遼館という外国の賓客をおもてなしする建物がありました。ドイツの皇孫ハインリッヒ殿下がこの延遼館に滞在したときの様子を記した文献には、晩さん後、浜離宮内のお茶屋へ色とりどりのちょうちん四百ばかりを軒端に下げて、これに火を点じた火影が小波の立つ池の水面に落ちて砕けるそのみやびな趣は、日本の初夏の情景にいかにもふさわしいものであったと記されております。こうした海外の方々を魅了する舞台を整えるべきと考えますが、知事の所見をお伺いいたします。

○舛添知事 ただいま鈴木理事から大変すばらしい提案をいただきました。
 これから二〇二〇年に向けて、IOC委員を初め多くの要人が東京に来られます。四月早々、ジョン・コーツ副会長、調整委員長ですね、東京オリンピック・パラリンピックの担当の方もお見えになります。こういう要人が世界各国から東京を訪れる機会がふえるわけでありますので、どういうおもてなしをするかと。
 冒頭の鈴木理事のご質問にありましたように、やはり日本の伝統を世界に発信するというためには、そういう伝統や文化の重みを持ったもてなしの仕方があるのではないかというふうに思っております。
 先ほど浜離宮のお話がございましたけれども、ああいう都立公園の中には歴史的、文化的な価値のある建造物がございます。今お話しになりました浜離宮の中のこの迎賓館、アメリカのグラント大統領は一カ月滞在されて、明治天皇とあのお茶屋で謁見もなさっております。
 そういう伝統ある場所がございますので、ただいまご提案いただいたばかりでございますけれども、そのことも含めまして、ぜひこれは具体化に向けて検討したいと思っております。

○鈴木委員 期待しております。
 東京には国の赤坂迎賓館がございます。しかし、ネオバロック様式の西洋化した宮殿建築に日本の意匠が深く装飾になっているという状況で、和魂洋才の建物でなく、真の日本のおもてなしの象徴として、和の舞台をぜひつくっていただきたいと思っております。
 次に、国道三五七号の整備促進について伺います。
 皆さんに資料をお配りしております。国道三五七号は、千葉県千葉市と神奈川県横須賀市をつなぐ延長九十二キロの一般道路であり、羽田空港への円滑なアクセスを確保し、発着枠が拡大し、国際化が進む羽田空港の高いポテンシャルを最大限に引き出すということで、大変重要な路線であります。また、国が国際コンテナ戦略港湾に位置づけている京浜港の円滑な物資の流動を確保し、三港連携を深めていく上でも重要な道路であります。
 しかし、平成二十一年度に東京港トンネルが着工されたものの、全体で見ると、多摩川トンネルなどいまだつながっていない区間があるほか、主要道路との交差点付近などで渋滞が発生しております。
 京浜臨海部に沿って計画している国道三五七号は、埋立地と埋立地をつなぐような路線であるため、地域によって交通の需要がそれぞれ異なることから、整備の進捗についても地域によって違うという状況にあります。
 しかし、ネットワークは道路がつながっていて初めて機能を発揮するわけであり、臨海部の渋滞の解消や羽田空港の機能強化、そして、年間四十万TEUのコンテナ移動が陸上輸送で行われている状況において、戦略港湾としての三港の機能強化に、今こそ全力で対応していかなければならないと思います。
 またさらに、資料を見ていただくとよくわかると思いますが、この道路は、災害時への対応として、防災拠点とのアクセス強化を図るとともに、交通の寸断に備え、代替の手段をあらかじめ確保するリダンダンシー機能を確保するためにも大変重要です。
 今、隣を走っている国道一五号は、川崎市内では大変な慢性的な渋滞で、緊急輸送道路確保のためにも大変重要です。
 そこで国は、東京港トンネルや多摩川トンネルなど、国道三五七号の整備を最優先で進めるべきと考えますが、この重要な国道の整備促進に向けた都の取り組みについてお伺いいたします。

○藤井東京都技監 国道三五七号は、理事お話しのとおり、東京臨海部における広域的なネットワーク形成のみならず、国際化が進む羽田空港へのアクセス向上や物流の円滑化にも寄与する重要な路線でございます。
 このうち都内の区間では、東京港トンネル部及び川崎市につながる多摩川トンネル部などが未整備でございまして、道路交通上の隘路となっていることから、都はこれまでさまざまな機会を捉えまして、整備推進を国に要請してまいりました。
 現在、東京港トンネル部につきましては工事が進められておりまして、また、新木場立体と大井環七立体が本年三月までに開通しております。
 都といたしましては、引き続き、東京港トンネル部の早期完成とともに、多摩川トンネル部やその他未整備区間の早期事業化につきまして、関係自治体と連携を図り、強力に国に働きかけてまいります。

○鈴木委員 技監、期待しております。
 道路、空港、港湾等の連携による交通、物流ネットワークの構築を推進し、海外からの人と物の流れをスムーズにしていかなければ、東京は国際的な都市間競争に勝てません。さらに、災害時への対応は、万全を期しておかなければなりません。
 こうしたことからも国道三五七号は絶対必要であり、特に多摩川トンネルの整備を急ぐ必要があります。
 多摩川トンネルの向こう側の川崎市においても、昨年三月に策定した総合都市交通計画の中で、多摩川トンネルの整備を十年以内に着手を目指す事業に位置づけております。関係自治体とも連携して、知事にはこの道路の必要性を強く訴えていただきたい。そして、一日も早い国道三五七号の整備に向けて取り組んでいただくことを強く要望して、次の質問に移ります。
 次に、東京港の国際競争力の強化について伺います。
 日本経済は、今まさに再生の緒についたところであり、この流れを本格的な経済成長につなげていくためには、今が大変重要であります。
 中でも物流の円滑化は喫緊の課題であり、日本を代表するメーンポートである東京港の果たす役割は大きく、今後の成長戦略の実現に欠かすことのできない重要な物流インフラであります。
 この大事な時期に国は、国策として港湾運営会社への出資により、みずからの権限拡大ばかりを図ろうとしているとしか見えません。社会経済状況を鑑みるに、今はそんなことをやっている場合ではないはずです。
 それどころか、国際コンテナ戦略港湾として指定されているのですから、選択と集中として、より集中的に財源を投入すべきであるわけです。そして、上海港、釜山港など躍進するアジア諸港と対峙していくために、東京港の貿易構造や特性を踏まえた、実のある国際競争力強化策を直ちに展開していくべきであります。
 そのためにも都は、単に貨物の絶対量を増加させることを目的とする貨物量至上主義ではなくて、荷主などの利用ニーズに的確に対応していくべきであると思います。
 都は現場に責任を持つ港湾管理者として、東京港の真の国際競争力強化にどのように取り組んでいくのかお伺いいたします。

○多羅尾港湾局長 東京港が国際競争を勝ち抜いていくためには、貨物量の確保のみならず、アジア地域でビジネスを拡大している利用者のニーズに的確に応えることも必要であります。
 そのため、欧米と日本を結ぶ国際基幹航路はもとより、東京港の輸出入の大宗を占めるアジア地域とを結ぶ航路の拡充を図ってまいります。
 また、荷主が求める迅速、安定を重視した国際海上輸送を実現するため、ゲートオープン時間の柔軟化などの物流効率化策を一層進め、東京港ならではの高水準のサービス提供に、今後とも港湾関係者と一体となって取り組んでまいります。
 さらに、都が積み上げてきたノウハウを生かし、営業を継続させながらふ頭の再編や、東京の道路網と一体となった交通ネットワークの充実強化に努めてまいります。
 こうした取り組みを通じ国際競争力の強化を図り、今後さらに首都圏とアジアとのかけ橋としての責務を担ってまいります。

○鈴木委員 国際競争力の強化でございますので、競争ですので、アジア諸港に打ち勝つような取り組みをぜひ期待しております。
 次に、国際化に向けた交通局の取り組みについてお伺いいたします。
 東京都は、国際観光都市として多様な魅力を発信し、平成二十九年までに年間一千万人の外国人旅行者が訪れることを目標として、さまざまな取り組みをしております。都営交通においても、東京メトロと共同での地下鉄の駅ナンバリングや、各種案内パンフレットの作成などに取り組んできたと伺っております。
 しかし、今後、東京オリンピック・パラリンピックの開催も見据えるならば、競技場への移動のメーンはまさに地下鉄であります。
 さらに、今後の国際都市東京を目指す視点からも、海外からの旅行者を初め、外国人がより利用しやすくなるよう、都営交通のさらなるサービス向上を図るべきと考えますが、見解をお伺いいたします。

○新田交通局長 交通局ではこれまで、地下鉄駅や停留所へ案内サインの四カ国語表記を導入しましたほか、地下鉄駅に英語対応が可能なコンシェルジュを配置するなど、外国人に向けたサービスの向上に取り組んでまいりました。
 今後、まずは職員の英会話能力の強化や外国人対応マニュアルの充実、タブレット端末を活用した案内を速やかに実施いたします。
 さらに、二〇二〇年大会の開催に向け、昨年局内に設置いたしました推進本部内に外国人サービス向上策を検討するチームを立ち上げ、旅行代理店はもとより、新設いたします外国人モニターなどから実態に合ったニーズを的確に把握し、実効性のある対応策を練り上げてまいります。
 こうした取り組みを東京メトロとも連携しつつ着実に進め、誰もが利用しやすい都営交通として、おもてなし最前線の役割を果たしてまいります。

○鈴木委員 現場主義の知事、ぜひ一度、外国人の方々と地下鉄を体験してみてください。特に外国人旅行者への対応を、東京メトロと一体となり早期に改善していただきたいと要望いたします。
 次に、首都大学東京の教育研究の取り組みについて伺います。
 学問には原理と応用の二分野があるといわれる中で、首都大学東京は、東京都が設立した公立総合大学として、大都市が抱えるさまざまな課題の解決に向け、教育研究活動に取り組むことを目標としており、東京都との連携事業や都内企業との共同研究を推進するなど、産学公連携センターを中心として特徴ある取り組みを行っております。
 一方、海外の主要な大学では、各大学の特徴を生かし、世界に目を向けた教育研究を行っております。日本の大学は、とかく内向き志向になりがちですが、首都大学東京には視野の広い教育研究を先頭を切って取り組んでいっていただきたいと考えております。
 こうした観点から、首都大学東京においても、これまでの取り組みをより積極的に展開し、国内にとどまらず海外の大学などとも連携を図っていくべきであり、それは都政への貢献をさらに強めていくことにもなります。
 そこで、首都大学東京の教育研究の取り組みを、将来像にも示されている海外の研究機関等とも連携をして積極的に展開していく必要があると考えますが、所見をお伺いいたします。

○中西総務局長 首都大学東京が教育研究活動の成果を生かし、海外を含め広く社会に貢献していくことは重要であります。
 現在、海外の大学とは都のアジア人材育成基金を活用した水問題など大都市共通の課題についての研究や、学生交換協定等による留学生の受け入れを進めています。
 今後はこれに加え、アジア諸国から留学生を受け入れて理学療法や作業療法等に関する高度な技術を修得させる事業を開始することといたしました。
 この事業は、アジア諸国の医療人材育成等に寄与するとともに、大学間でのより幅広い研究や学生交流の実現につながるものです。
 今後も首都大学東京が積極的に国際貢献を進め、東京のプレゼンスの向上に寄与できるよう、都として一層の支援を行ってまいります。

○鈴木委員 ぜひ、東大のような国立大学とはまた一味違ったさまざまな現場との連携を生かして、より積極的に努力してほしいと期待をしております。
 次に、海外留学支援についてお伺いいたします。
 初めに、私立高校生の留学支援について伺います。
 二〇二〇年東京オリンピック・パラリンピックでは、世界各国から多くの外国人を迎えることになります。世界から集まる外国人に対し、おもてなしの心を行動であらわすためには、多様な文化を理解した上で円滑に意思の疎通を図る能力が必要であり、英語教育の重要性は一層高まります。
 先日の新聞に、海外のシンポジウムに参加した都内の私立高校生が、海外の生徒の質問に打ちのめされたという記事が掲載されておりました。自分たちの発表は事実の羅列で説得力のある主張に欠けていた、日本人が説得力に欠けるといわれるのは、こういうことなんだとわかったと振り返っております。こうした経験こそが、厳しさを増す国際社会を生き抜く力を身につけるきっかけとなります。
 東京の私立学校は、これまでも積極的に生徒を海外に送り出すなどグローバル教育に取り組んでまいりました。こうした取り組みを支援するため、都は我が党の要望に応え、今年度から私立高校生に対する留学支援策を開始しましたが、ここで改めて、この支援策の意義と今年度の補助実績についてお伺いいたします。

○小林生活文化局長 都が今年度から開始した私立高校生に対する留学支援事業は、効果が高いとされる長期留学を対象としており、生徒、保護者の負担軽減を図るとともに、各学校が蓄積したノウハウや教育方針を生かしながら、留学制度の新設や拡充に取り組みやすい環境を整えることを狙いとしております。
 具体的には、経済的理由によってなかなか取り組みが進まなかった三カ月以上の長期的な留学に対して支援を行うものでありまして、今年度は四十校から百七十七人が本制度を活用して留学し、補助金額は約一億三千五百万円となっております。
 このうち、新たに長期留学制度を創設した学校は九校で、五十四人の高校生が留学をしております。

○鈴木委員 答弁にありましたように、この支援策を契機として長期留学の制度を新設した学校もあるとのことで、狙いどおりの効果が出ていると思います。
 しかし、来年度においても四億円の予算が計上されていることを考えれば、事業のポイントである、学校独自のすぐれた取り組みを生かしつつ、生徒、保護者の負担軽減を図るという目的に沿って、さらに普及拡大させ、派遣人数をふやしていく必要があると考えます。
 今後も学校関係者の意見をよく聞いて、一人でも多くの私立高校生が世界で活躍するグローバル人材として成長できるよう努めていくべきと考えますが、今後の展開についてお伺いいたします。

○小林生活文化局長 留学した生徒の保護者からは、諦めていた長期の留学に行かせることができたといった声が寄せられております。
 また、学校現場の先生方からは、来年度はさらに人数をふやしたいとか、より長期の留学プログラムをつくりたいといった積極的な声とあわせまして、現地の語学学校での事前研修を留学プログラムに組み込ませてほしいなど、さまざまなご意見やご提案をいただいているところでございます。
 今後も、お話にございましたように、私学団体や学校現場のご意見をよく伺いながら、制度の趣旨を踏まえ、さらに使いやすく効果が上がるよう工夫するとともに、一層の普及を図り、一人でも多くの私立高校生が国際感覚豊かな人材に成長できるよう全力で支援を行ってまいります。

○鈴木委員 人を育てるとは、まさにこういうことだと思います。志ある人の能力を、最大限にこれからも伸ばしていっていただきたいと思います。
 次に、都立高校の次世代リーダー育成道場についてお伺いいたします。
 我が党はこれまで、高校生の留学の必要性を訴え、平成二十四年度に、都独自の留学制度である次世代リーダー育成道場の開設を実現させてきました。
 第一期の高校生は、国内での事前研修を終えた後、留学に出発し、オーストラリアに留学するコースの生徒たちは昨年末に帰国したと聞いております。帰国後、それを広く還元していくための取り組みが重要になると考えます。
 次世代リーダー育成道場の一期生の成果と今後の取り組みをお伺いいたします。

○比留間教育長 次世代リーダー育成道場の一期生百五十人のうち、これまで百人がオーストラリアでの一年間、またはアメリカでの一カ月間の留学を修了して帰国しており、現在、五十人がアメリカで一年間、留学を行っております。
 この留学を通して、全員が海外での高校生活に支障のない英語力を身につけ、うち七割の生徒は海外大学への入学要件とされる英検準一級程度に達しております。
 また、環境や医療、教育などの課題をグローバルな視点から認識するなど、大きな影響を受けているところでございます。
 今後、こうした成果を広く発信し、中学、高校生の留学機運を高めてまいります。
 また、意欲ある中学、高校の生徒が外国人観光ボランティアを体験する機会などを充実し、オリンピック・パラリンピック開催に向け、英語力を発揮して社会に貢献できる人材を育成してまいります。

○鈴木委員 次に、英語教育重点校についてお伺いいたします。
 都教育委員会は来年度、高校における英語教育を一層充実させていくための取り組みの一つとして、英語教育重点校を指定し、志ある若者の英語力を高めていくと聞いております。
 今後、重点校をどのように選び、どのような教育を行っていくのかお伺いいたします。

○比留間教育長 都教育委員会は、特色ある英語授業の実施、大学などとの連携、留学生の受け入れなどの実績がある学校の中から英語教育重点校を十校選定をいたします。
 重点校には、JET青年や在京外国人の指導者を複数配置し、生徒が三年間を通して外国人からの語学授業を受けられるようにいたします。
 また、海外語学研修や在京留学生との交流を支援するなど、生徒がコミュニケーションツールとしての英語を確実に身につけ、異文化理解を深めるための環境を整備してまいります。
 さらに、重点校の取り組み内容や成果を積極的に区市町村教育委員会や中学生等に発信をして意欲のある生徒の入学を促し、三年間の多様な取り組みを通じて、高い英語力を持ち国際社会に貢献する人材を育成してまいります。

○鈴木委員 オリンピック大会だけでなく、国際社会で核となる人材を育成するという視点を持って、日本の将来を担う志ある子供たちを育てていってほしいと思います。
 次に、都市政策について伺います。
 まず、本予算特別委員会でのこれまでの質疑を踏まえ、建築物の耐震化についてお伺いいたします。
 東京都は、国に先行し平成二十三年に条例を制定し、特定緊急輸送道路沿道建築物五千棟に対し、耐震診断の義務化及び耐震改修の努力義務を課しました。耐震診断については、約七五%を超える建物所有者が診断を実施し、その後の補強設計や改修工事に進む建築物も大幅に増加していると聞いております。
 一方で、昭和五十六年以前の旧耐震基準による建築物は、既に建築から三十年以上が経過しているため、管理状況によっては老朽化が進行し、この機会に建てかえを検討する建物所有者もいると聞いております。
 こうしたニーズを捉え、建てかえについても支援していくべきと考えますが、都の見解をお伺いいたします。

○藤井東京都技監 旧耐震基準の建築物につきましては、建設からかなりの年月が経過していることから、建物所有者の意向を踏まえまして建てかえを支援していくことも重要でございます。
 しかしながら、耐震化推進条例制定当初、建てかえにつきまして助成対象としている区市町村は少ない状況でございました。
 このため、都は、建てかえも新たに助成対象とするよう積極的に働きかけてまいりました結果、今年度から、全ての区市町村で改修工事への助成と同額を、建てかえにつきましても助成できるようになりました。
 これに加えまして、都といたしましては、建てかえを検討する建物所有者に対しまして専門家による適切なアドバイスを実施するなどして、特定沿道建築物の耐震化を加速してまいります。

○鈴木委員 建てかえ助成は画期的であり、建てかえにも助成金があることは、所有者の選択肢がふえ、耐震化がより進むものと期待できます。
 一方で、建設後に都市計画変更がされたことなどにより現行の建築規制に適合していない、いわゆる既存不適格の特定沿道建築物が存在しております。
 これらは、建てかえ時に現行の建築規制に適合させる必要がありますが、とりわけ分譲マンションについては、建てかえによって建物規模が今よりも小さくなることから、区分所有者間の合意形成が困難な状況となっております。
 そのような中、国において、マンション建替え円滑化法の改正案を今通常国会に提出し、現在審議中と聞いておりますが、法改正の狙いと主な内容についてお伺いいたします。

○藤井東京都技監 現在、国会に提出されている改正案では、分譲マンションの建てかえなどのさらなる円滑化を図るため、特定行政庁による耐震性不足の認定を受けたマンションを対象に、敷地売却制度や容積率の緩和特例制度を創設することなどが主な内容となっております。
 敷地売却制度は、従来の全員同意ではなく、区分所有者の五分の四以上の賛成によりまして、マンション及びその敷地を開発事業者などに一括で売却できるようにするものでございます。
 また、容積率の緩和特例制度は、マンションの建てかえにより、地域の防災性や景観など市街地環境の整備改善に貢献するものにつきまして、容積率を緩和し建てかえの促進を図るものでございます。

○鈴木委員 本法案が成立すれば、既存不適格を含む耐震性に問題のある分譲マンションの再生に弾みがつくと期待されております。
 都は、今回のマンションに関する国の法改正の動きを追い風にして、特定緊急輸送道路沿道の耐震性不足の既存不適格建築物を少しでも解消できるよう、耐震化事業の計画期間はあと二年でございますので、先取りをして、個々の課題解決に向け前向きな検討を進めてもらいたいと要望いたしておきます。
 次に、不燃化特区についてお伺いいたします。
 都は、不燃化十年プロジェクトを立ち上げ、昨年十二地区で始めた不燃化特区は、年度途中にさらに六地区前倒しして実施するなど、取り組みの拡大を図っております。
 私の地元大田区の西糀谷、東蒲田、大森中のような事業中の地区では、特区制度を活用した老朽家屋の取り壊しや建てかえが徐々に始まり、来年度はいよいよ取り組みが本格化してまいります。
 一方で、このプロジェクトは二〇二〇年まで実施されるもので、あとわずか六年しか事業期間がなく、まさに正念場であるといえます。
 不燃化特区で特に重要なことは、生活道路や公園整備などに必要な用地を取得するための人材確保です。
 用地取得には知識と経験に基づくノウハウを持った人材が必要ですが、現場を動かす区には、そうした人材も人員も少ない状況であると聞いております。
 そこで、用地の取得に際し、必要な人員確保に向けて都はどのように区を支援しているのかお伺いいたします。

○藤井東京都技監 不燃化特区におきまして、用地の取得を円滑に行い、生活道路や公園などを整備することは、地域の安全性を確保するための重要な取り組みの一つでございます。
 用地取得に積極的に取り組む区では、理事お話しのとおり、担当する職員の数が不足することもございます。そうした場合、区が民間に委託し人材を活用する際に、都がその費用を補助することで区による用地取得の体制強化を支援しております。
 また、都の有するこれまでの沿道まちづくりの経験を生かしまして、道路整備にあわせた建物の共同化を区に提案するなど、まちづくりを通じた不燃化の促進も図っております。

○鈴木委員 さまざまな工夫を行い人員体制を整えることとともに、いかに早く、建てかえに向けた住民の理解を得て不燃化を実現することも極めて重要なことです。
 安全・安心な東京の実現に向け、不燃化特区について、都はどのように今後取り組んでいくのか、改めてお伺いいたします。

○藤井東京都技監 不燃化特区では、老朽家屋への戸別訪問などを通じて住民とのコミュニケーションを深めるなど、建てかえに向けた理解を得ていくことが重要でございます。
 既に事業中の十八地区と来年度から追加で実施する二十一の地区では、こうした取り組みを着実に進めるため、都は、各地区の進捗状況を踏まえた技術的、財政的支援を区に対して行ってまいります。
 また、さらに不燃化特区を拡大していくため、今後新たに募集する地区につきましても、住民の方が置かれている状況や地区の課題に対応するきめ細かな整備計画が作成されるよう、区に働きかけを行ってまいります。
 都は、こうした取り組みを進めるとともに、組織体制を強化いたしまして、安全・安心な町東京の実現に向け全力で取り組んでまいります。

○鈴木委員 私は、この事業は、防災という観点で公共という概念を前面に出して、あえて事業期間を明確にして取り組んでいる画期的な事業であると思っております。だからこそ、ぜひ結果を出していただきたいと思います。
 その上で一言加えさせていただきますと、このプロジェクトをしてなお、木密地域にはいまだ対策がおくれている課題があるのではないかと思っております。
 例えば、狭くて入り組んだ道路に面した小さな宅地では、道路整備に協力したくても、残る敷地では再建が難しいことから、なかなか建てかえに踏み切れない住民も多いと聞いております。
 また、道路に接していない敷地に住む住民の方々への対策も、早期に検討すべき課題だと思っております。
 今後、事業を進めるに当たり、幅広い観点から制度や規制の見直しを行い、安心・安全な町の実現を一日も早く実現していただきたいことを強く要望しておきます。
 次に、東京の魅力ある景観形成に向けた取り組みについてお伺いいたします。
 私は、戦後失われた日本を取り戻すためには、私たちがかつての誇り高い日本人の精神を取り戻すことが大切であると思っております。そして、その象徴となるものが、まちづくりにおける景観形成です。
 鹿鳴館を建てたイギリスのジョサイア・コンドルや、帝国ホテルを建てたアメリカのフランク・ロイド・ライトは、ともに東京の町を見て感嘆したといわれております。それほどかつての東京の町は美しく、洗練されていたかであり、イギリスの写真家が撮った愛宕山からの写真にそれが残されております。
 徳川家康により江戸に幕府が置かれ、さらには各大名の藩邸ができ、多くの英知により、巨大都市江戸は世界に冠たる大都市として引き継がれてきたのです。
 かつての江戸の町は、堀や石垣で囲まれた江戸城の城下町として、灰色の瓦屋根と白壁のモノトーンの美しい町並みが整然と続き、豊かな水と緑に包まれた美しい景観が広がっていました。
 また、江戸の名所を描いた浮世絵に、水辺に集う人々の情景が数多く登場しているように、江戸の水辺空間は江戸の人々の暮らしを支え、潤いを与えていました。
 明治以降は、近代西洋的な建築物が建設され、国会議事堂や迎賓館など、近代国家の建設を意識した建築物が整備され、一方、かつての水戸藩上屋敷であった小石川植物園、佐賀藩邸などであった日比谷公園などの大名屋敷が公園や庭園に転用されるなど、江戸からの歴史を引き継ぎました。
 このように、東京は江戸から明治、大正時代にかけて、世界から称賛される美しい都市景観が形成されてまいりましたが、震災や戦争により大きな打撃を受け、また、高度経済成長の過程では景観への配慮が十分されず、調和を欠いた町並みが多く見られるようになってしまいました。
 先人たちの努力と英知により築かれた世界有数の美しい都市の歴史をさらに未来につないでいくことは、これからの世代に対する私たちの責任であると考えます。
 都においては、成熟期を迎えた東京の魅力を高めるため、これまでも美しい都市景観の形成に取り組んできたと思いますが、今後、より多くの方々が国内外から集うことになることから、歴史や文化が感じられ、水と緑が豊かな、東京ならではの都市景観をつくっていく必要があると考えます。
 都のこれまでの取り組みと今後の景観形成に向けた見解をお伺いいたします。

○藤井東京都技監 東京は、江戸の面影を残す水辺や皇居の緑、近代的な首都を象徴する建造物などを貴重な景観資源として受け継ぎ、現在に至っております。
 東京の魅力をさらに高めていくには、こうした都市の歴史や自然を十分に生かした景観形成が重要でございます。
 このため都は、東京駅丸の内駅舎の復元、皇居のお堀に面する歴史的な百尺の軒線の誘導など、都市の記憶を再生いたしまして、次代へ継承していく取り組みを進めております。
 また、丘陵地や水辺など、自然景観に恵まれた地域におきまして、建築行為の届け出制度などを活用いたしまして、水と緑を生かした景観形成を図っております。
 今後とも、オリンピック・パラリンピック開催都市にふさわしい、美しく風格のある都市の実現に向け、積極的に取り組んでまいります。

○鈴木委員 技監、ぜひ一緒に頑張ってまいりましょう。よろしくお願いいたします。
 次に、エネルギー施策、特に官民連携再生可能エネルギーファンドについてお伺いいたします。
 東日本大震災後、首都圏のエネルギー需給は大変厳しい状況に陥りました。都民、事業者の皆様の努力により、大震災から三年が経過した現在も省エネ、節電は定着していますが、東電管内では火力発電所の約四割が老朽化しており、故障や停止リスクを抱えながら電力を供給しているのが現状であります。
 こうした厳しい状況の中では、東京都も自治体としてエネルギー施策の一翼を担っていかなければなりません。
 そこで、東京都のエネルギー施策は震災前後でどのように変わったのか、まずお伺いいたします。

○長谷川環境局長 エネルギーの需給面について、まず需要面についてでございますけれども、東京都はこれまで、エネルギーの大消費地として、キャップ・アンド・トレード制度など、先駆的な省エネルギー、気候変動対策を推進してまいりました。こうしたノウハウを生かして、震災後は都民や事業者の皆さんのご協力を得ながら無理のない節電につなげ、さらにエネルギー利用の一層の効率化に向けた取り組みを推進しております。
 一方、供給面では、震災前から太陽光、太陽熱など再生可能エネルギーの普及を進めており、震災後には防災力向上の観点を強化して、家庭への燃料電池やオフィスビル等へのコージェネレーションシステムの導入促進など、分散型電源の普及に向けた取り組みも進めております。
 さらに、民間の資金やノウハウの活用、電力安定供給への貢献、再生可能エネルギー投資の早期実証のため、官民連携インフラファンドの創設にも取り組んできたところでございます。

○鈴木委員 大震災後の新たなエネルギー施策の一つとして、実証実験的な官民連携インフラファンド事業を進めてきたとの答弁が今ありました。
 この事業は、官民の資金を集め、投資を行い、リターンを得るという、これまで国や地方自治体にはなかった手法であります。基金や第三セクター方式とも異なり、国のインフラファンドにも先駆けた斬新な事業だと思います。
 しかし一方、私がこれまで議会質疑で具体的な投資先の公表の重要性について指摘し、その後の公表内容の充実につながったように、事業開始当初は課題もありました。
 そこで、官民連携インフラファンド事業では具体的にどのような成果があったのか、また、これまでの制度では実現できなかったことは何か、お伺いいたします。

○長谷川環境局長 都の官民連携インフラファンドは、これまで、都からの投資額十二億円を含むファンドの投資額九十億円により、総額三百億円規模の事業に結びつけ、千葉県でのガス火力発電所や神奈川県でのメガソーラー発電所など、発電所十件、二十七万キロワットの電源確保に貢献しております。
 しかし一方、一般に広い敷地が必要とされる再生可能エネルギーへの投資につきましては、都内では高い土地価格などの理由により実現しておりません。
 また、東京に直接電力を供給する東京電力管内と、被災地を含む東北電力管内においても、これまでのところ、メガソーラー三件の投資にとどまっているところでございます。

○鈴木委員 官民連携インフラファンドは、答弁にあったように、都の十二億円の投資が三百億円のエネルギー事業費につながる等、極めて高いレバレッジ効果を持ち、費用対効果が高い事業であることは承知しております。
 一方で、東京のように地価の高い地域では、大規模な再生可能エネルギーの導入が困難であることも厳然たる事実であります。
 知事は就任後すぐに、このファンド手法を活用して再生可能エネルギーに特化した、新たな官民連携再生可能エネルギーファンドの創設を指示されました。一石二鳥、三鳥を目指すとのご発言もあり、これまでにない新しい試みと期待しております。
 過日、このファンドの概要が示されましたが、今後、詳細な制度設計を行う際に、こうした課題を十分に踏まえる必要があると思います。
 そこで、新たなファンドの具体的なスキームについてお伺いいたします。

○長谷川環境局長 新たな官民連携再生可能エネルギーファンドにつきましては、再生可能エネルギーの広域的な普及拡大と都内での導入を図るため、その仕組みの構築に取り組んでまいります。
 具体的には、再生可能エネルギーのポテンシャルが高く電力系統間の連系容量が比較的大きい東北電力と東京電力管内を投資対象とする広域型ファンドと、都内投資の実現を図る都内投資促進型ファンドとを組み合わせた運営を検討しております。
 都は、広域型に十億円、都内投資促進型に二億円を出資し、民間資金を合わせたファンド総額は四十億円規模を目指してまいります。
 また、都内投資実現のため、都として、例えば、大規模施設の駐車場の活用など、都市における太陽光発電の新たな促進手法などを調査し、ファンド投資を後押ししてまいります。

○鈴木委員 今の答弁にあったように、新たなファンドは、東日本エリアにおける再生可能エネルギーの普及拡大や都内への投資を目指す挑戦的な試みであり、官民連携のメリットを生かした新しい仕組みになると思います。
 再生可能エネルギーの拡大は、固定価格買い取り制度のもとでは電気料金への賦課金の上乗せという痛みも伴いますが、経済成長にもつながるものであり、低炭素電源の拡大と投資先の地域振興にも普及すると思っております。
 また、私は、東日本大震災以前の東京が、福島の原子力発電所からの電力供給に支えられていたことを考えますと、東京こそがどこよりも率先して省エネをして再生可能エネルギーの普及に取り組んでいくことが重要であると考えております。
 私は常々、大規模な再生可能エネルギーの導入に際し、都内や被災地の住民や中小企業も参加しメリットを享受する方法はないか思案してまいりました。こうした工夫ができれば、再生可能エネルギー普及拡大への理解も大きく弾むはずです。
 官民連携再生可能エネルギーファンドの制度構築では、こうした点も勘案したものであればと思っておりますが、所見をお伺いいたします。

○長谷川環境局長 都内や被災地などにおいて再生可能エネルギーの普及を拡大していくためには、理事お話しのとおり、都民や地域の住民、企業が主体的に参加できることが望ましいものと考えます。
 こうした地域参加を具体化することは、経済的メリットだけでなく、地域貢献にもつながることから、各地域における再生可能エネルギーの一層の普及に寄与することが期待できます。
 そこで、このファンドの創設に当たって、専門家の意見を聞きながら、住民や中小企業が地域の発電所プロジェクトに参加できるような新しい投資の仕組みについて検討してまいります。

○鈴木委員 中小企業や個人も参加する道が開けるならば、中長期の安定的な投資が定着するかもしれません。ぜひ実現できるよう、鋭意努力をお願いいたします。
 最後に、知事にお伺いいたします。
 知事は、都内の電力に占める再生可能エネルギーの利用割合を二〇%に高めるという目標を掲げ、その第一歩として新たなファンドの創設を指示されたわけでございますが、この目標に向けて、ファンドを初めエネルギー施策に取り組む決意をお伺いいたします。

○舛添知事 東京は、電力、エネルギーの供給を他県に大きく依存しており、実効性あるエネルギー対策を推進することは、大消費地としての責務であると考えております。
 私が再生可能エネルギーの利用割合を二〇%程度まで高めていくという目標を掲げましたのはそのためでありまして、今後、長期的な展望にも立って、研究開発の促進などを含めあらゆる手だてを講じてまいりたいと思っております。
 その第一歩として、今ご議論ありましたような官民連携再生可能エネルギーファンドを創設することといたしました。このファンドの投資を通じて、東京へ電力を供給していただいている東北地方等での再生可能エネルギーの拡大や地域振興にも貢献し、あわせて、都内での普及拡大の機運を高めてまいりたいと思っております。
 ただいまいただきましたご提言も踏まえまして、今後、再生可能エネルギーなど分散型エネルギー源の拡大に向けた具体的な取り組みを進めたいと思っております。
 加えて、都民、事業者の皆さんとともに、震災後の高い意識を維持しながら、より一層の省エネ、節電にも努めてまいります。
 こうしたエネルギーの需給両面にわたる施策に加え、次世代のエネルギーとして期待される水素の活用などにも取り組み、環境先進都市として我が国をリードしてまいりたいと思っております。

○鈴木委員 エネルギー施策は決して平たんではありません。次世代エネルギーとして有望な水素についても、その普及に向けては、コスト削減やインフラ整備など多くの解決すべき課題があります。知事と議会が車の両輪となり、知恵を出し合って、世界一の環境先進都市に向けて全力を尽くしていかなければなりません。
 今後の取り組みに期待し、次の質問に移ります。
 次に、産業振興について伺います。
 まず、東京ビッグサイトの規模のあり方についてです。
 昨年の十一月に都議会の海外調査において、我が党の議員が、オリンピック・パラリンピックの開催や産業振興に役立てるため、欧州の数カ国を視察してまいりました。その中で、世界的な規模を誇る見本市会場の現状を直接見聞きする機会に恵まれ、改めてそうした会場が中小企業の販路拡大に果たす役割の重要性を実感しました。
 この東京にも、我が国最大規模の見本市会場である東京ビッグサイトがありますが、現在の床面積のままで将来の需要に十分応えられるかとの指摘は出ております。
 その一方、ビッグサイトは、オリンピック・パラリンピック大会で報道機関が利用するメディアセンターや競技会場として活用するため、面積の拡張が予定されているとも聞いております。
 東京ビッグサイトは、オリンピック等が終了した後は、本来の見本市会場として利用するわけですから、やはりその面積の拡張に当たっては、産業振興の観点を初め、建設工事や維持管理に要するコストに見合う収益の確保に加え、臨海副都心のMICE構想や交通輸送の能力等のさまざまな面からの検討が必要です。
 このため、東京ビッグサイトの規模について、他の会派からの議論のように、国際的に小さいからという単純な理屈ではなく、産業政策のあり方を基礎に、まちづくりとの整合性なども十分に踏まえた総合的で責任ある議論の中で拡張のあり方を考えるべきであると思っております。
 東京都として、東京ビッグサイトの拡張についての考え方をお伺いいたします。

○塚田産業労働局長 都は、二〇二〇年オリンピック・パラリンピック競技大会のため、東京ビッグサイトにメーンプレスセンターとなる建物を増築し、大会終了後は展示施設等として利用する予定であります。
 増築に当たっては、メーンプレスセンターとして必要な条件を満たしつつ、大会終了後の利用ニーズや地域のまちづくりを十分に踏まえ、適切な機能、規模を見きわめていくことが重要であります。
 そのため、都は現在、東京ビッグサイトでの新規開催や規模拡大が見込まれる展示会の数などをもとに、将来の展示会開催需要の見通しを立てる調査を行っております。また、臨海副都心におけるMICE、国際観光拠点化の取り組みとの効果的な連携のあり方や、増築が周辺の交通に及ぼす影響についても調査を行っております。
 来年度は、調査結果を踏まえ、本施設の規模や機能等を定めた基本計画を策定し、拡張に向けた具体的作業を着実に進めてまいります。

○鈴木委員 都内では、見本市会場の確保に向けたさまざまな動きも出ております。私の地元大田区では、羽田空港跡地に産業振興に役立つ見本市会場を整備すべきとの要望が出ておりますし、港区の竹芝地域では、地域再開発を行うステップアップ・プロジェクトの中でも展示場を確保する計画となっております。
 こうした施設と東京ビッグサイトのすみ分けをどうするのかは今後のテーマになろうかと考えております。
 こうした中で、オリンピック・パラリンピックで必要となる施設の計画は来年の二月までに取りまとめなければならず、さまざまな課題の解決に向けた速やかな検討が必要と考えます。東京ビッグサイトの拡張を含めた各種の施設のあり方に関し、この都議会でも引き続き十分に議論を尽くしていくことの大切さを述べておきます。
 次に、海外展開支援について伺います。
 アジアの拡大する需要を求めて、海外市場に進出する中小企業がふえております。その一方で、中小企業の多くは、海外業務を担う人材の不足に悩んでおります。海外で取引を始めるには、外国語の能力に加え、輸出入の規制や代金の決済方法などさまざまなルールへの十分な理解が必要です。中小企業がこうした能力、知識を持つ人材を単独で育成することは難しいのが現実です。
 海外展開を目指す中小企業を支援するため、都はどのような対応を図るお考えかお伺いいたします。

○塚田産業労働局長 海外市場を目指す中小企業に対し、グローバルな視野を持ち、海外ビジネスに精通した人材の育成を支援することは重要であります。
 そのため、都では、中小企業の実務担当者を対象に、貿易に関する基礎知識や、契約書作成等の実務を習得するセミナーを開催しております。
 来年度はこれに加え、新たに中小企業の経営者や幹部を対象とした、国際化対応リーダー養成講座を実施いたします。年十回の講義や事例検討を通じて、アジア各国の経済情勢とビジネス環境に関する最新情報や海外市場における知財戦略など、実践的な知識とノウハウを幅広く提供いたします。
 こうした取り組みにより、海外展開に取り組む中小企業の戦略的な人材育成を支援してまいります。

○鈴木委員 局長、海外展開支援には、生産拠点が移転してしまうような産業の空洞化につながらないよう、販路開拓支援に十分に力を入れていただきたいと思います。
 次に、中小企業への金融支援についてお伺いいたします。
 私は、父亡き後、クリーニングの会社を経営してまいりましたが、中小企業にとって、資金繰りは生命線であり、大変苦労いたしました。国の金融安定化法以降、さまざまな制度融資にどれだけ助けられたか思い出されます。
 私以外にも、実際、都内企業の約半分の中小企業がこの制度を利用しております。企業にとっての資金は、人体に流れる血液のようなものであり、金融支援の役割は極めて重要です。
 商品や材料の仕入れなど、日々の事業運営に必要な資金や、成長を目指した新たな事業展開を図るための資金、あるいは厳しい環境を乗り切る経営改善の資金など、事業者の資金ニーズは実にさまざまであり、また景気動向により刻々と変化しております。
 都は、こうしたニーズや状況の変化に対応して、これまでも多様な融資メニューを提供してきましたし、今年度も中小企業の前向きな事業展開を後押しするため、金融機関がそれぞれの強みを生かし、資金供給にあわせて経営サポートを提供する政策特別融資という新たな取り組みも始まっております。こうした支援をさらに進めていただきたいと思います。
 経営者の皆様のニーズに素早く応えていくには、企業の実情をよく知り、常に利用者の立場や目線に立って使いやすい制度を考える、そして、わかりやすい形で示していく、こういった姿勢が何よりも大切だと私は思っております。
 こうした観点から、都は来年度、中小企業の金融支援にどのように取り組んでいくのかお伺いいたします。

○塚田産業労働局長 中小企業の金融支援では、事業者の経営状況や将来展望などに応じたさまざまな資金ニーズに応えるため、利用者の目線に立ったきめ細かな対応を行う必要がございます。
 このため、来年度の制度融資では、利用者の求めに応じて最適な融資メニューを案内できるよう、制度全般を見直し、わかりやすく体系的に整理することといたしました。
 また、個別の融資メニューについては、日々の事業運営資金として小口のつなぎ融資を、成長を目指した前向きな事業資金として設備投資促進融資を、経営安定のための資金として特別借りかえ融資を、それぞれ新設または拡充いたします。
 加えて、都独自の新保証つき融資や、新たな動産・債権担保融資により資金調達の多様化を図るなど重層的に取り組み、中小企業の資金繰り支援に万全を期してまいります。

○鈴木委員 制度融資のメニュー、これが昔のパンフレットですけれども、(資料を示す)私も何度も見ましたけれども、こんなパンフレットで、経営者が、どのメニューがどういうふうに対応できるのかというのがなかなかわからないのが私は現実だと思っております。
 また今回、新たにきょう、ご案内されたと思うんですけれども、できたメニューでございますけれども、このように、(資料を示す)まず何の融資のジャンルかよくわかりやすい、そして、相談窓口が一目でわかる、このことがまさに一番、事業者の目線ではないかなというふうに思っております。
 今後とも、事業主の声をしっかりと取り入れて、中小企業支援をしっかりとしていただきたいと思います。
 近年、金融機関が保証協会に頼り過ぎているような感じも私は持っております。そもそも金融機関の目きき、経営者を育てていく、そうした取り組みをしっかりと行っていく、それが金融機関の使命ではないでしょうか。ぜひそうしたことも踏まえて取り組んでいただきたいと思います。
 次に、国境離島振興についてお伺いいたします。
 我が国の領土面積は三十七万平方キロメートルで世界第六十一位である一方、経済的な権益を有する排他的経済水域と領海を足した面積は、そのおよそ十二倍の四百四十八万平方キロメートルにも達し、世界第六位に位置しております。
 海洋資源は我が国の活力や富の源泉ですが、近年、水産資源や鉱物資源等の海洋権益に関する国際的な関心は極めて高くなっております。
 例えば、我が国の国土面積を上回る約四十万平方キロメートルに及ぶ排他的経済水域を有する沖ノ鳥島です。これまで都は、沖ノ鳥島周辺における漁業支援などに取り組んできました。このこともあり、平成二十二年の低潮線保全法の制定と同法に基づく特定離島の指定、さらには、約七百五十億円を投じた国直轄の港湾施設整備事業に発展しました。また、二十四年に、国連大陸棚限界委員会により、沖ノ鳥島等を基点とする三十一万平方キロメートルの大陸棚の延長が認められたことは記憶に新しいものです。
 あわせて、東京による尖閣諸島の購入は実現しなかったことは痛恨でしたが、国境離島の適切な維持保全の重要性に関する問題提起を国民に投げかけたことの意義は極めて大きいと私は思っております。
 さらに、昨年四月、現政権により策定された新たな海洋基本計画において、海洋立国日本の目指すべき姿の一つとして、海に守られた国から海を守る国へとされたことは、都のこれまでのさまざまな取り組みが結実したものといっても過言ではないと思います。
 今後、地球温暖化による水位の上昇が懸念される中、都の有する島々として、しっかりと保全管理、活用が重要です。
 知事は、施政方針の中で、空を飛ぶ鳥の目で東京全体を、さらに日本全体を俯瞰すると述べられましたが、その視野の中に国境離島を含めていただきたいと考えるものですが、知事の認識をお伺いいたします。

○舛添知事 今、鈴木理事ご指摘のように、我が国は世界有数の海洋国家であります。この地位を堅持するためにも、排他的経済水域の根拠となる、いわゆる国境離島の維持保全が重要であります。
 伊豆諸島や小笠原諸島を有する都は、我が国の領海と排他的経済水域の約四割を占める水域を有しております。このため、有人の離島はもとより、無人離島を含めた島々の維持保全を行うことによって、この水域を保持していくことは国益にもつながると考えております。
 今後とも、国に対しまして、国境離島の維持保全に向けた提案を行うなど、必要な協力をしてまいります。

○鈴木委員 ぜひよろしくお願いいたします。
 また、都は三百三十の島しょを有しており、全国でいえば沖縄県に次いで六位で、海洋国家を支える中核の自治体であります。都の姿勢は、他県にも大きく影響し注目されております。
 実際、尖閣諸島をめぐる取り組みにより、前政権時代に切られた島しょ振興交付金の復活にもつながり、長崎県や佐賀県の議長さんから大変感謝されました。首都東京の取り組みの影響の大きさをつくづくと感じました。
 今後も、ぜひそのことを受けとめ、取り組んでいただきたいと思います。
 次に、拉致問題についてお伺いいたします。
 日本人として決して忘れてはならない問題に、北朝鮮による拉致被害があります。平成十四年に北朝鮮が拉致を認め、五人の被害者が帰国してから十一年もの月日が流れてしまいました。被害者ご家族もご高齢となり、残された時間は本当にありません。一刻も早い解決が望まれます。
 東京都はこれまで、拉致問題の解決に向け、厳格な法執行の面で全国の自治体に先駆けてまいりました。平成十五年には、拉致を実行した北朝鮮と一体関係にある朝鮮総連の関係施設に対し固定資産税の課税に踏み切り、これをきっかけに全国で見直しの動きが広がりました。
 また、朝鮮総連と密接な関係にあり、同一敷地内に総連関係施設が存在し、北朝鮮の現体制を賛美した教科書を使用している朝鮮学校に対し、平成二十二年度以降、運営費補助を停止しております。国も朝鮮学校に対する就学支援金を支給しておりません。
 これと並行して、拉致問題に関する世論の啓発にも力を入れてまいりました。写真パネル展を毎年継続して開催しているほか、平成十九年には東京都関連の拉致被害者だけでなく、拉致の可能性を排除できない特定失踪者の顔写真も入れたポスターを作成しております。
 先日、拉致被害者である横田めぐみさんの娘さんに、めぐみさんのご両親が面会するという新たな動きもありました。長年にわたって拉致問題に積極的に取り組んだ安倍総理のもとで、解決に向けた進展が期待されておりますが、知事に拉致問題に関する認識をお伺いいたします。

○舛添知事 北朝鮮による拉致は、国家主権の侵害であると同時に、国民の生命と安全を脅かす重大な人権侵害でもあります。
 拉致被害者の方々が置かれている状況や、ご高齢となったご家族の肉親との再会を待ち望む切なる思いを察しますと、もはや一刻の猶予もございません。
 拉致問題の解決は、我が国の外交上の重要課題であり、安倍政権には全力でこれに当たってもらいたいと思っております。
 東京にも四人の拉致被害者と、拉致の可能性を排除できない四十五人の特定失踪者の方がおります。都はこれまで、国と連携を図りつつ、法令に基づく方策などさまざまな取り組みを重ねてまいりました。
 今後も、一日も早い解決に向け、国を後押しして全力で努力してまいります。

○鈴木委員 今知事にご答弁いただきましたように、都内に、拉致可能性も含め四十五人の特定失踪者がおります。まさに、決して国の問題ではないんです。このような国の国民性、民族性を涵養することを目的とする機関へ、公金投入を初め支援をする意義が全くないわけであり、一刻も早い解決に向け、国民全体で国を後押しするよう取り組みを継続していただくことを強く要望いたします。
 次に、福祉の充実について伺います。
 まず、医師の確保対策について伺います。
 高齢化の進展に加え、医療の高度化、専門化など、患者を取り巻く社会環境の変化が著しく、今後、医療需要のより一層の増加が見られます。
 昨年、我が党が掲げた、都民の命と健康を守る安心都市東京を実現するためには、適切な医療体制の確保が必要であり、中でも、都の地域特性を生かした医療を担う医師の確保が重要課題であります。
 平成十九年ごろ、全国的に医師不足が社会問題となり、国は、医学部定員増など緊急医師確保対策を打ち出し、都としてもこれまでさまざまな施策を実施してまいりました。
 そこで改めて、都におけるこれまでの医師確保対策の取り組みについてお伺いいたします。

○川澄福祉保健局長 都は、平成二十一年度に医師奨学金制度を設け、周産期、小児、救急医療等の分野で勤務する意欲を持つ医学生を支援しており、今年度から卒業生が臨床研修を終え、勤務を開始しているところでございます。
 また、平成二十二年度から、医師確保が特に困難な多摩・島しょの公立病院等に対し、都が採用した医師を地域医療支援ドクターとして派遣しております。さらに、病院の勤務医の勤務環境を改善するため、救命救急センター等を有する医療機関を対象に、交代制勤務や短時間勤務の導入、復職支援研修の実施等の取り組みを支援しているところでございます。
 今年度設置しました東京都地域医療支援センターにおきましては、現在、都内病院における医師確保の実態把握や効果的な支援策等の検討を行っており、今後とも、都の特性に合った総合的な医師確保対策を推進してまいります。

○鈴木委員 これまで減少を続けてきた都内の産科、小児科医師が増加に転じるなど、都のこれまでの取り組みについては評価できます。今後の人口減少社会を見据え、安心して子供を産み育てることができる環境づくりを推進するためには、妊産婦や新生児に対する専門的な医療を効果的に提供する周産期医療体制を整備することがますます重要であると思います。
 都は、平成二十二年に周産期医療体制整備計画を策定し、NICUの整備を進めていますが、NICUの整備に当たっては、一般の小児科医師ではなく、新生児の医療を専門とする医師の確保、育成が課題となっていると伺っております。
 そこで、新生児医療を担う医師を確保、育成するために、都の取り組みについてお伺いいたします。

○川澄福祉保健局長 都はこれまで、新生児医療を担う医師を確保するため、奨学金制度を設けるほか、NICU勤務医師に手当を支給する医療機関への支援を行ってまいりました。
 また、周産期連携病院等の医師を対象に、新生児に対する高度医療を内容とした研修事業を実施し、新生児医療を担う医師の育成に努めているところでございます。
 さらに来年度は、NICUを新たに設置する予定の医療機関に対して、医師確保経費を支援するとともに、新生児医療の調査研究を行う大学に研究講座を設置し、医療機関への医師の派遣を支援することとしております。
 こうした取り組みにより、今後とも、都内で新生児医療に従事する医師の確保、育成に努めてまいります。

○鈴木委員 ぜひ、いろいろ困難な課題があると思いますけれども、本当に大切なことでございますので、よろしくお願い申し上げます。
 次に、病児、病後児保育について伺います。
 子供が急に発熱し、家で看病したいけれども、どうしても仕事を休めない、働く親にとってこれほどつらいことはありません。都内でも共働き家庭がふえており、発病や治りかけで保育所に子供を預けられないという問題は、保育サービスを利用する児童がふえればふえるほど顕在化してきます。
 そうしたときの保護者の強い味方が病児、病後児保育であり、とりわけ急性期から対応する病児保育は、保護者のニーズが非常に高いと聞いております。しかし、施設数はまだまだ不足しており、自治体による取り組みの差も大きいのが現状です。
 また、運営面でも、クリニックに併設するタイプの病児、病後児保育は、保護者も安心して子供を預けられると伺っていますが、施設を運営する医師からは、赤字で運営が厳しいという声も聞いております。ある医師は、要望があるのでやりたいけれども、小児科医の負担が大きいので、なかなか踏み出せないという声もあります。
 私の姉夫婦もクリニック併設型の病児、病後児保育を宇都宮市で開業しておりますが、急性期型は併設型でなくてはできず、幼児期の子供の容体は急変しやすく、一日に三回は医師が診なくてはならず、あえて始めようとする医師は少ないのが現状であると述べておりました。
 そこで、病児、病後児保育の現状と、病児、病後児保育が抱える課題及びそれに対する都の取り組みについてお伺いいたします。

○川澄福祉保健局長 本年一月一日現在、病児保育施設は十三区二十市で五十七カ所、病後児保育施設は二十区十五市で六十一カ所、計百十八カ所設置されておりまして、全区市で、病児保育、病後児保育のいずれかを実施しております。
 この事業は、利用者数が季節や病気の流行に左右されるとともに、全国一律の補助基準であることなどから、安定した経営が難しいといわれております。
 そのため、都では、施設の人材やノウハウを活用した地域の保育所等への情報提供や職員への実習、保育所等で病気になった子供の病児保育施設への送迎などの取り組みを、包括補助により支援しているところでございます。
 また、国に対して、大都市における地価や人件費を考慮した補助単価となるよう提案要求をしているところでございます。
 来年度は、病児、病後児保育施設が、地域の保育所等を支援する場合の補助基準額を増額するなど、支援策を拡充し、区市町村や事業者の取り組みを一層促進してまいります。

○鈴木委員 来年度、支援の充実を図るということで、区市町村の取り組みがさらに広がることを期待したいと思いますが、区市町村の中には、設置したくても、病児、病後児保育に協力的な医療機関や小児科医がいないという声も聞きます。
 そうした場合には、近隣の区市町村にある病児、病後児保育施設を利用できれば、利用者にとっても、また、稼働率に悩む施設側にとってもメリットがあると思います。いわゆる病児、病後児保育の広域利用であります。都内のどこに住んでいても、子供が病気になったときに、病児、病後児保育施設が利用できるよう、広域自治体として、都の積極的な取り組みが求められると思います。
 そこで、病児、病後児保育の普及に向けた知事の見解をお伺いいたします。

○舛添知事 大変すばらしい質問をありがとうございました。私も厚生労働大臣のときに、この問題はなかなか光が当たらないので、何とか解決しようと努力をしてまいったわけです。今おっしゃいましたように、子育てをしながら働く保護者にとって、万一子供が病気になったとき、安心して預けられる病児、病後児保育施設があることは本当に大変心強いものであります。
 しかし、身近な地域にそうした保育施設がなくて、利用したいときに利用できない、そういう方々もたくさんおられます。また、ふやそうと思っても、まさに今おっしゃったように、医師、看護師の確保、季節によって利用者数の変動が大きくて、安定した経営が難しいということで、なかなか皆さん手を出せないんですね。
 そういう中で、お話にありましたように、行政区域を越えて、近隣の区市町村で相互に病児、病後児保育施設を利用できる仕組みができれば、安心して子育てができる環境の整備につながると思います。また、運営事業者にとっても安定した運営が可能となるメリットもあります。
 この点は、就任直後、私は福祉保健局に対して、直ちに現状の分析と検討を行えということを指示いたしました。
 今後、病児、病後児保育施設の設置を一層進めるとともに、区市町村や東京都医師会の協力も得まして、医師、看護師の確保や広域利用の仕組みづくりに取り組みまして、子供が病気になったときの子育て家庭の切実なニーズに応えていきたいと思いますので、ぜひまた鈴木理事の貴重なご意見を賜りたいと思っております。

○鈴木委員 ただいま、福祉のスペシャリストである知事から、本当に気持ちのある答弁をいただきましてありがとうございます。
 今定例会では、舛添知事が選挙戦で、四年で八千人の待機児童を解消することを公約の一つに掲げたこともあり、待機児童対策について活発な議論が繰り広げられました。
 都の施策の基本的な方向性は、認可保育所、認証保育所、家庭的保育、小規模保育など、さまざまな保育サービスの提供により、多様な選択肢を用意して、ニーズに対応するというものです。
 ゼロ歳児、一歳児などの乳児については、家庭で育てた方がよいという意見はありますが、やはり女性の社会進出、共働き世帯の増加などにより、保育サービスに対するニーズは高まっているといわざるを得ません。
 そうした中、現場では、認証保育所から認可保育所への移行を考えたときに、施設長の資格要件に、二年以上の児童福祉事業の従事経験が必要とされるものの、認証保育所の従事経験が認められないことや、パートタイム勤務者にとっての福音となるはずの定期利用保育がなかなか普及しないこと、さらに、これまた鳴り物入りで始まった小規模保育が、ゼロ歳児から二歳児を対象としているため、三歳以降の預け先探しに苦労するという声も聞きます。
 折しも都では、学識経験者を初め、区市町村、事業者、利用者など各方面を代表する委員から成る子供・子育て会議において、区市町村のニーズ等を踏まえた、子供、子育てに関する総合計画の策定に向けた議論をしているとのことですが、こうした現場の声、区市町村のニーズなどをきめ細かく反映して、実効性のある計画とすべきだと考えます。
 知事の公約の実現のためには、区市町村との一層の連携、現場の声を踏まえた対応が不可欠と考えますが、改めて、待機児童解消に向けた知事の決意をお伺いいたします。

○舛添知事 待機児童を解消していくためには、保育の実施主体である区市町村が地域の多様な保育ニーズを踏まえて、今おっしゃいました認可保育所、認証保育所、家庭的保育など、さまざまな保育サービスを組み合わせながら拡充していくことが必要であると考えております。
 そのために、都はこれまで、さまざまな支援メニューをそろえまして、区市町村の取り組みを支援してまいりました。また、来年度予算でも株式会社やNPO法人への独自補助など新たな施策を盛り込んでおります。
 今後、保育サービスの整備を一層進めていくためには、区市町村との連携を一層図り、現場の声や保護者のニーズを酌み取りながら、あらゆる手法を駆使していかなければなりません。
 現在、区市町村では新たな制度に向け、ニーズ調査を行っております。また、都では、子育て中の都民、幼稚園、保育園などの事業者、学識経験者、区市町村代表から成る東京都子供・子育て会議において、子育て支援に関するさまざまな議論を行っております。
 こうした調査や議論を踏まえまして、保育サービスの整備目標と、いつまでにどれだけ整備をするのかを定めた工程表を作成いたします。
 工程表は、今後策定する新たなビジョンに反映させまして、待機児童の解消に向けまして、公約で申し上げましたとおり、全力で取り組んでまいります。

○鈴木委員 保育園に預けたくても預けられない待機児童がたくさんいる。そうした親御さんは本当に深刻な問題であるというふうに思っております。この委員会、そして議会で知事の発言を聞かせていただいて、画一的な保育事業ではなくて、本当に事業者目線に立った、子供たちの目線に立った、そして親御さんの目線に立った、利用者の立場に立った新しい保育事業を東京都から展開していただけるんだなというふうに期待をしておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 今回の定例会では、我が党は本会議代表質問に始まり、さきの総括質疑でも、保育施策、待機児童対策についてただしてまいりましたが、その上での締めくくり総括質疑であります。
 先ほども申し上げましたように、都もこれまで、さまざまに知恵を出し、定期利用保育、小規模保育、さらには、共同実施型家庭的保育など多様な保育サービスを提供してまいりましたが、現場ではそれぞれに課題を抱えていることを知事にもご認識いただければと考えて、お尋ねをさせていただきました。
 せっかくの多様な保育サービスが、それぞれ有効に機能するよう、現場の声を直接聞いていただくことを改めてお願いいたします。知事も精力的に現場を回られるとのことですので、重ねてお願いをして、次に移らせていただきます。
 最後に、教育施策について伺います。
 まず、教科書の誤記等の訂正について伺います。
 これまで、教科書の改訂期にはたびたび問題になっているわけですが、最近の例でいえば、昨年二月、全国で使われている中学校理科の教科書を発行している大日本図書株式会社が、多数の内容訂正、変更があったにもかかわらず、使用している学校等に訂正情報を通知していないことがわかり、新聞に大きく報道され、問題となりました。
 訂正、変更は、三学年分で二百六十九カ所にも上っていましたが、同社は、この訂正をホームページの掲載にとどめ、影響を受けた子供たちの手元に訂正の冊子が届いたのは、三年生は卒業間近の年度末の三月に入ってから、一、二学年にあっては年度明けでありました。
 同社は、二〇一二年度に学習指導要領が全面実施されたことから、記述がふえたことによるチェックミスと説明しておりますが、まさに学習の根幹である教科書に、一年間の学習を終えようとする年度末に訂正が入るなどということは、あってはならないことだと思います。
 そこで、昨年度、都内の公立中学校において、訂正のあった当該の大日本図書発行の理科の教科書はどの程度使用されていたのか、また、この事態を受けて、都教育委員会はどのような対応をしたのかをお伺いいたします。

○比留間教育長 大日本図書株式会社が発行した中学校理科の教科書は、平成二十四年度、都立学校三校、都内四区十六市一町一村の公立中学校百七十七校、合わせて約七万人の生徒が使用しております。
 多数の内容訂正等があったにもかかわらず、使用している学校に訂正情報を通知していない実態があったことから、都教育委員会は、大日本図書株式会社に対し、今後の対応について直接聴取をいたしました。その上で、当該教科書を採択している全区市町村教育委員会への個別説明の実施を要請いたしますとともに、原因究明及び再発防止を指示したところでございます。
 さらに、国に対しては、大日本図書株式会社への改善指導の状況を確認いたしますとともに、全ての教科書発行者への指導を徹底するよう要望をいたしました。

○鈴木委員 今ご答弁いただきましたけれども、本来、教科書会社は、検定済み教科書の訂正を行った際には、学校や教育委員会へ速やかにその内容を通知するよう、教科用図書検定規則等で規定されているわけです。
 しかし、学校や教育委員会への訂正の仕方については、教科書会社により、ホームページへの掲載にとどまるところから、子供たちに訂正シールや訂正済みの新しい教科書を提供するところまで、その対応は発行者によりさまざまであると聞いております。
 教科書は、教育内容に最も大きな影響を与えるものであり、子供たちが使用する教科書の重要性を考えますと、その内容に誤りがあってはならず、教科書会社の対応の違いによって、子供たちが不利益をこうむるようなことがあってはならないと思います。
 今後、学習指導要領改訂の際には、多くの教科書で記述等に訂正や変更が予想されますが、今回の改訂時にあったような大量の訂正や通知の不備は、決して許されるものではありません。
 こうした状況を改善するため、都教育委員会は、教科書会社が教科書の記述等の訂正を行った際の学校等への対応について、実態を把握し、各学校を所管する区市町村教育委員会とともに対応していくべきだと考えます。
 そこで、都教育委員会は、今後、このような問題にどのような対策を講じていくのか、見解をお伺いいたします。

○比留間教育長 教科書の記述に誤りなどがあった場合、区市町村教育委員会や学校に対する発行者の対応の違いによって、児童生徒の教育内容に差異が生じることがあってはならないものでございます。
 今後、都教育委員会は、必要に応じ、区市町村教育委員会に対する調査や意見聴取等により実態を把握してまいります。
 また、国に対しましては、正確な教科書の検定合格を求めますとともに、訂正があった場合の速やかな学校への通知等を発行者に指導するよう要望していきます。
 さらに、発行者で構成する教科書協会に、必要な通知や説明を学校等へ迅速かつ確実に行うよう申し入れていきます。加えて、発行者の対応が不十分な場合には、当該発行者に必要な措置を早期に講ずるよう求めるなど、都教育委員会は、区市町村教育委員会と連携して、児童生徒がひとしく正しい教科書で学べるよう取り組んでまいります。

○鈴木委員 都教育委員会は、このようなことが二度と繰り返されないよう、しっかりと対策を講じ、次の改訂時に生かしていただきたいと要望いたしておきます。
 また、国においては、文部科学大臣の諮問機関である教科用図書検定調査審議会における、専門的、学術的な調査審議はもとより、文部科学省における検定が厳正に行われ、教科書記述の正確性を確保し、間違いのない適正な教科書の発行につなげていってほしいと思います。
 さらに、教科書会社においては、申請段階から誤記、誤植などのない正確な教科書記述とするため、徹底した校正を行う体制を整えるなど、責任のある教科書の著作、編集に努めるべきであると考えます。
 今後、都教育委員会は、国とともに、訂正時における適切な対応がなされるよう、教科書会社に徹底した指導を行っていただき、採択権のある区市町村教育委員会に対しても、採択時において厳正な審査を行うなどの指導助言を強く要望して、次の質問に移ります。
 次に、社会貢献への醸成についてお伺いいたします。
 さて、二〇二〇年に開催される東京オリンピック・パラリンピック競技大会は、我が国や東京の魅力を全世界に発信する絶好の機会となります。日本には、勤勉さ、公共の精神、規範意識など、世界の中でも高く評価されている日本人の心があります。とりわけ、自然や他の人々などとのかかわりの中で、常に感謝の気持ちを持ち、それを相手や他の人々に、自分のできることで返していくという美意識を持ち続けております。
 東京の子供たちが、こうした日本人としての心を持ち、世界の人々から信頼されるようになるためには、小中高を通して、感謝の心を持って社会に奉仕する人材に育てていくことが必要だと思います。
 そこで、小学校から高校までの全ての段階で、社会に貢献する意欲や態度を育成していくことが重要であると考えますが、都教育委員会の取り組みをお伺いいたします。

○比留間教育長 都教育委員会は、オリンピック・パラリンピック開催に向け、児童生徒が、日本人らしい心で海外からの来訪者を歓迎し、大会運営やボランティアとして活躍できるよう、社会に貢献する意欲や態度を育んでまいります。
 具体的には、小中学校における地域清掃などのボランティア活動や、都立高校の教科「奉仕」におけるさまざまな体験活動を充実してまいります。
 また、地域に住む外国人や留学生との交流、スポーツ大会の運営支援などへの参加を推進してまいります。
 こうした活動を通して、全ての子供たちが社会の一員としての自覚を高め、六年後を見据えて、おもてなしの精神を基盤とした社会貢献意識を身につけるよう、区市町村教育委員会や学校と連携して取り組んでまいります。

○鈴木委員 奉仕の精神というのは、まさに自分が生かされている、そして支えられている、その思いから自発的に行動に移される行為であるというふうに私は思っております。そうした中で、一番大切なその心を、ぜひ教育委員会の皆様方のさまざまな施策の中で育んでいただけるよう強く要望いたしておきます。
 ぜひ、高い社会貢献意識を持ち、実際に行動できる志のある子供をお育ていただきますようお願いして、次の質問に入ります。
 日本の伝統文化を尊重する教育についてお伺いいたします。
 日本人独特の美意識として、わび、さびがあります。質素で、素朴なもの、静寂さにこそ美を感じる心は、茶の湯や俳諧などの芸術を通して培われてきた日本固有の美意識であります。
 こうした日本人特有の繊細な感性は、今も私たちの心の中に流れているはずです。わび、さびを初めとする日本人の精神を、作法を通し子供のうちから育てていくことは、日本人として誇りを持ち、世界の中の日本人として活躍するための素地になると考えます。そのためには、まず、日本の伝統文化を知り、理解し、受け継ぐ心を育てていく必要があると考えます。
 そこで、子供のころから、茶道や俳句などの日本の伝統文化を学び、理解し、自己の内面を見詰める機会を持つことが必要だと考えますが、都教育委員会の取り組みをお伺いいたします。

○比留間教育長 都内公立学校では、児童生徒が各教科や学校行事等で、俳句や短歌、武道や茶道等、日本の伝統文化を学んでおります。
 また、都教育委員会は、日本の伝統文化に関する指導書や教材を作成し、各学校を支援してまいりました。
 今後、授業や、部活動等の放課後の活動で、伝統文化に関する地域の専門家を一層活用してまいります。
 また、古典に親しむなど伝統的な言語文化を重視する学校を新たに百九十五校指定し、その成果を全都に発信するとともに、取り組み内容を検証してまいります。
 今後とも、区市町村教育委員会と連携し、児童生徒が我が国の伝統文化を学ぶことにより、日本人としての美意識や価値観を理解し、日本人としての自覚や誇りを高めるよう取り組んでまいります。

○鈴木委員 人間は抽象的な存在ではありません。日本人なら日本人であることが根底にあって初めて道徳心が芽生え、徳目を実感でき、それを身につけることができると思います。そして、この徳育は、人間を根底から開発する力を持っているといわれております。
 ぜひ、これからも日本の伝統文化を学ぶ機会を充実させるとともに、日本人としての美意識や価値観を理解し、大事にする心を育む教育の推進をお願いいたします。
 最後に、まだ十二分時間がございますので、質問を控えていた羽田空港の機能強化についてお伺いいたします。
 昭和五十三年に成田空港が開港して以来、成田は国際拠点空港として、羽田は国内拠点空港としての役割を担うことになり、その後の増大する首都圏の航空需要に対応するため、両空港の容量拡大が進められてきました。
 さらに、羽田空港については、当時の石原知事と福田総理との法人事業税の暫定措置の話し合いの際、都から強く働きかけた結果、第四滑走路の供用と同時に、国際定期便の運航が再開されるなど、国際化の推進が図られてまいりました。
 その結果、羽田空港では、いよいよ今月末に、発着枠が再拡張の最終形である年間四十四万七千回に到達することになるわけです。このうち国際線については、昼間の発着枠が三万回から六万回に倍増され、深夜、早朝を含めると九万回まで拡大されます。国際線の旅客ターミナルの拡張も進み、ターミナルに隣接したホテルの開設も予定されております。
 現在、政府は、訪日外国人旅行者数を将来的に三千万人とすることを目標としたビジット・ジャパン事業を展開しており、また、国家戦略特区による国際的ビジネス環境の整備も期待されます。東京都においても、一千万人の外国人旅行者の誘致、外国企業五百社以上の誘致を目指しており、今後も東京への来訪者は大幅に増大すると見込まれます。
 羽田空港は都心に近く、便利な空港であり、首都東京の重要なインフラであることから、その機能強化は、都民にとって、利便性向上とともに、東京ひいては我が国の経済発展にも寄与するものであります。
 首都東京の国際競争力を一層高めていくために、さらに、知事のいう、世界一の二〇二〇年オリンピック・パラリンピックの実現には、絶対に羽田空港のさらなる機能強化と国際化の推進が必要と考えますが、知事の見解をお伺いいたします。

○舛添知事 今、鈴木理事からご指摘ありましたように、このところ羽田空港の機能強化が進み、さらに国際化が進んでおります。この問題は、今後とも、まさに現場を見て、周辺の再開発も含めて積極的に取り組んでまいりたいと思います。
 ただ、問題は、成田空港と羽田空港、この二つの関連を、今ちょっとご指摘があったようにきちんとしないと、なかなか前に進みません。私は近いうちに、千葉県知事の森田氏ともお会いして、この問題についても議論をしたいと思っています。
 今、鈴木理事がおっしゃったように、両方の容量を上げて、両方の機能強化と国際化をやることが一番いい方法であって、羽田を強化して成田がだめになる--成田は、あれだけ苦労して成田は受け入れたんだぞと千葉県はおっしゃいますね。それに対する答えがないといけないので、いや、成田もよくなりますよ、羽田もよくなりますよと。そして今、低運賃の飛行機が成田から飛ぶという、役割の分担ということも行われておりますので、まさに二〇二〇年に東京オリンピック・パラリンピックが開かれるということは、こういう、今まで成田か羽田かという、そっちを立てればこっちが立たないという、そういうジレンマのような問題を解決するためにも大変絶好な機会が来ておると思いますし、私は千葉県の森田知事とも非常に親しい間柄でありますから、この問題についても積極的に議論し、また、都全体を挙げまして、今理事がご指摘の問題に前向きに取り組んでまいりたいと思っております。

○鈴木委員 ただいま、知事の力強い答弁をいただきました。
 羽田空港は、東京の玄関であり、日本の玄関でもあります。オリンピック・パラリンピックにおける、大勢の来訪者のおもてなしをする最初の場所であります。国は、羽田空港の機能強化に向けた技術的な検討を行う委員会を設置し、第五滑走路も含めた検討を行っていると報道されており、今後は、自治体等の関係者との検討、協議の場が設けられると聞いております。
 この機を逃すことなく、東京を世界で一番の都市にするために、知事には、みずからの都民との約束を果たすために、今まで以上に羽田空港のさらなる機能強化に取り組んでいただきたいと思っております。
 この締めくくり総括の中で、知事に本当に丁寧に、そして真剣なご答弁をいただきまして、本当に感謝いたしております。
 私は、政治家に必要な資質として、マックス・ウエーバーという方が語っている、情熱、判断力、責任が大事だというふうに述べられているわけですけれども、まさに、知事は、本当にそれを行動に移されている、そして、これからも移していただけるというふうに思っております。
 東京には、さまざまな課題が山積しております。そして、時代も大きく変わってきております。一番大切なのは、私は、現場を知るということではないかなというふうに思っております。現場主義を貫く知事を、これからも私たち都議会自民党はしっかりと支えて、東京を世界で一番の都市にしていきたいことをかたくお約束させていただいて、私の質問を終わります。
 ありがとうございました。(拍手)

○宇田川委員長 鈴木章浩理事の発言は終わりました。
 この際、議事の都合により、おおむね十五分間休憩をいたします。
   午後三時二十一分休憩

ページ先頭に戻る