予算特別委員会速記録第四号

○宇田川委員長 あさの克彦委員の発言を許します。
   〔委員長退席、中屋副委員長着席〕

○あさの委員 まぶしいという方は大変に申しわけございません。私の質問を始めさせていただきます。
 日本は自由主義経済の国であります。自由主義経済のもとでは競争が前提でありまして、民間企業はもちろんのこと、教育現場も競争の中で切磋琢磨しながら、日本というのは発展を続けてまいりました。
 過度な競争による弊害などもいわれることがありますが、基本的に知恵を絞り、前に進む原動力になっていると私は思っております。
 そのような中では、地方公共団体、いわゆる行政も競争の中に置かれることは必要だと私は考えます。それは、民間企業との競争ということではなく、自治体間の競争、つまり行政同士が切磋琢磨する環境をつくることが必要だと私は思うわけです。一定の競争原理が働くことで、住民に対する行政サービスの質や効率性が増してくるのではないでしょうか。
 単純な利益を追求するような、もちろんそれだけではないんでしょうけれども、民間企業間の競争とは違い、自治体間の競争とは、行政サービスの結果や自治体の力をはかる指標などを比較していくことで、結果として行政サービスが向上することで住民にとって有益になる、そういった環境をつくっていく必要があると思います。
 東京都では、都内にある自治体のさまざまな行政データ、例えば財政力指数や他の統計資料などは公表されております。一方で、施策や事業の効果、それから成果をわかりやすく住民に伝えるという観点に立てば、まだ努力の余地があるのではないでしょうか。
 住民満足度というような全体を包括したような指標も一定の価値はありますけれども、それだけで住民が自治体を比較しながら、競争を促していく環境をつくることができるとは思えません。
 また、例えば納税率など、住民サービスとは直接的な関係がなくても、東京都にとっては都民税の収入にもつながる大切な指標もあります。そういった数値で直接比較できるもの、特に、他の自治体や都内平均、あるいは五年、十年といった経年の変化など、比較分析することで競争意識が芽生えるような指標を、ちゃんと数値化して公表することで、都内の各自治体の競争意識を高める環境を整えることになるのではないでしょうか。
 都内市区町村には、それぞれ選挙で選ばれるトップ、首長さんがいるわけです。首長さんというのは、もちろん政治家ですし、住民から直接選ばれる以上、そういった比較データについては敏感だと私は思います。
 まずそこで、これは確認ですけれども、これまで都として、都内の自治体に対して、自治体の比較データとしてどのようなものを公表してきたのか伺います。

○中西総務局長 都は、地方自治法等の規定に基づき、各区市町村の定員管理や給与実態、財政状況など、行財政運営に関する各種調査を実施し、区市町村別のラスパイレス指数や決算情報などを公表しております。
 これに加え、各区市町村の公園や学校などの公共施設の整備状況、各種住民サービスの実績など、幅広く情報を取りまとめ、都独自の年報として公表し、各区市町村に提供しております。
 さらに、各局の所管事項に係る区市町村別の状況などについても、東京都のホームページにおいて公表しているところでございます。

○あさの委員 今のお話にありました各種調査の結果やラスパイレス指数、決算情報や都独自の年報というのは、私も見たことがあります。正直、全体を網羅するという意味において、その役割は十分に果たしているといえると思います。
 ただ、それを見て、自分の自治体が今どのあたりにあるのか、周りよりすぐれている部分や頑張らなくてはいけない部分が見えてくるかというと、一次的にはちょっと難しいかなと思います。
 二次的な加工、つまりグラフ化するなり、データを抽出して、視覚的にわかりやすいものにつくり直すなりしないと、そういった競争意識を刺激するようなものにはなっていないという印象を持っています。
 先ほども申し上げたとおり、市区町村の首長さんは、その意識の中でトップをとりたいと思うでしょうし、びりにはなりたくないでしょう。例に挙げました住民税の納税率なども、都内平均を上回っているかどうか、前年に比べて上がっているかどうか、周りの自治体と比べてどうか、都内自治体の中でどのぐらいの順位にいるのか、そういった意識で自分の自治体の納税率を見ている首長がどんどんふえていけば、少なくとも全体の納税率も向上するのではないでしょうか。都民税の収入が伸びることにもつながると思います。
 しかし、各自治体ごとにそのデータ加工を任せてしまえば、例えば、上司である首長に対して、いい状況であれば報告もしやすいでしょうが、悪いデータになったときには、なかなかそれが一発でわかる報告をするということには勇気が要ると思います。それが人情というものだと私は思うんですね。
 だからこそ、都が憎まれ役というか、報告役を買って出ればいいのだと思うんです。私は、東京都が広域自治体として、さまざまな自治体間の比較データを見やすい形で作成して、広く伝えていくべきだと思います。
 今後、都として、よりわかりやすい自治体の比較データを積極的に作成して、公開していくことに対する都の見解を伺いたいと思います。

○中西総務局長 調査結果等の作成、公表に当たりましては、これまでも結果を正確に示すとともに、前年度との比較や経年の推移を掲載するなど、わかりやすい内容となるよう努めており、今後とも、区市町村との連携のもと適切に対応してまいります。

○あさの委員 これまでもわかりやすい内容となるよう努めてきたことは私も否定しません。しかし、それは、結果を押しなべて正確に伝えるという目的から逸脱しない範囲でということだったと思います。
 確かに年報や各種の表は、詳しい人間が加工するのに適していますし、その表だけでもきちっとした分析をするなら比較することは十分できます。
 ただ、市区町村が嫌がるようなデータであっても、時には公表するべきだと思いますし、何より極論をいえば、首長さんに直接送付される成績表のようなものだっていいと思うんですね。各自治体の踏ん張りが期待できるような形にすべきだと思います。
 それぞれ首長さんは本当に努力をされているとは思っておりますが、人は無理難題だと思うときこそ知恵が出てくるものだと私は思います。その最後の一踏ん張りを生み出すためにも、積極的な比較データの作成、公表を求めておきたいと思います。
 ところで、これまで都内自治体についてのお話をさせていただきましたが、東京都自身も、もちろん競争の中に置いていくべきだと考えます。
 舛添知事は、東京を世界一にするという強い意思をお持ちです。歌の歌詞ではありませんが、オンリーワンではなくナンバーワン、あるいはその両方を目指すということだと思います。
 当然、東京が世界の都市の中でどの位置にいて、どのような点が強みで、どのような点が弱み、いわゆる改善すべき点なのかがわかっていた方がいいわけです。
 知事は、この予算委員会の中でも、具体的にそのような点を挙げておられましたので、都庁としてはその点を十分認識されていると思います。
 しかし、一方で、東京を世界一にしていくためには、都内の各種団体や一般都民の皆様まで、ありとあらゆる方々にもそういった意識を持ってもらうことも必要です。都側だけが理解して進めるのではなく、どこに課題があるのかを広くわかってもらう、どんな点を改善し、あるいはよりよくしていくのかを理解してもらう姿勢があっていいと思います。
 そこで、世界主要都市との比較データとして、東京都はこれまでにどのようなものを公表してきたのか確認をさせていただきます。

○中村知事本局長 これまで都は、インフラ整備や福祉、産業など、さまざまな分野で、世界主要都市の数値データなども参考としながら計画などを策定してまいりました。
 例えば、平成二十三年十二月に策定いたしました「二〇二〇年の東京」におきましては、主要国との合計特殊出生率の比較や都市別国際コンベンション開催状況、主な都市の外国人旅行者数などのデータを掲載しているところでございます。

○あさの委員 今いったようなデータの掲載をしていると。数値は全てをあらわすわけではありませんが、本当に多くのことを教えてくれると思うんですね。今おっしゃったような比較データは、東京が他の世界の主要都市と比べてどのような状況にあるのかを伝える一助とはなると思います。
 また、今後の政策展開の過程で、現状の数値データが、年がたつにつれ、施策が実行されるにつれ、どのように変化していくのかを見ることは、人の意識にも深くすり込まれるということになると思うんです。
 つまり、これから先、今いったようなデータだけでなく、現状をあらわすようなデータをきちっと最初に出しておいて、そのデータが経年ごとに、三年なり五年置きにどうなっているのかということをあわせて公表していけば、簡単に比較検討がより短い時間でできるように、一般の方々もですね、と思うんです。
 世界一の都市東京を目指すのであれば、世界の主要都市との政策指標やデータの比較を参考にして政策を展開すべきと考えますが、見解を伺います。

○中村知事本局長 世界主要都市との政策指標やデータの比較は、政策形成の参考資料の一つとなるとともに、東京が取り組むべき課題をわかりやすく示す点で意味があると考えております。
 これまでの計画におきましても、他都市とのさまざまなデータの比較を具体的に示してまいりました。
 今後とも、こうしたデータを活用し、諸課題の解決に取り組んでまいります。

○あさの委員 大切なことは、都としてデータを活用するだけではなくて、最初からそのデータを公開して皆の意識の中に植えつけることだと思います。
 例えば、すごい小さい話になりますが、営業成績のグラフのようなもので、過去から現在、そして今がどうなっているかといったこと、そういった一定の基準の数値が公表されるだけで、人々はそれを意識するようになります。また、都が行っている施策の効果もわかりやすくなると思います。
 これから長期ビジョンを策定することになると思いますが、知事にはぜひ、そういったデータに基づいたビジョン、そして、将来的に効果の検証などをされるときには、そのデータがどのように変化したのかをあわせて公開されることを求めておきたいと思います。
 次に、住宅政策、特に都営住宅について伺います。
 現在、東京都では七十五万戸が空き住宅となっています。その中でも補修を必要とせず、すぐに住むことができる民間の賃貸住宅が四十万戸以上あると伺いました。
 市場に流通しているわけですから、いわゆる単純な空き家というわけではありませんが、賃貸用のもので平成二十年のデータですけれども、四十九・二万戸、そのうち、腐朽、破損がないとされているもので四十・七万戸ということになっております。
 空き家率は昭和三十年代後半から伸びて、昭和五十年代には横ばいで推移しておりますが、昭和の終わりから平成十年までまた伸びる。ずっと東京都は一貫して伸びてはいるんですけれども、平成十年からはおおむね横ばいで推移しています。
 総務省が五年に一度調査して発表しておりますが、昨年が前回、いわゆる平成二十年の調査から五年目で、その直近の結果の発表は、ことしの七月から順次行う予定となっておりますので、五年前のデータをもとに話をさせていただきますが、例えば国土交通省によるものにおいても、平成二十一年の空き家実態調査では、空き家継続期間が一年未満のものが全体の約七割ということですので、その空き家自体が動いていることは間違いありません。
 ただ、今後の見通しでは、人口はこの後十年以内にピークを迎え、東京都でも平成二十七年にピークを迎えるといわれております。世帯数でも平成三十七年がピークであるというふうに予測されているわけですね。そのような状況の中で、東京の賃貸用の空き家も今後増加していくと見られておりまして、民間の空き賃貸住宅を活用することも考えていかなければなりません。
 今現在、都営住宅は随時、建てかえを進めておりますけれども、こういった建てかえのタイミングこそ、総合的な住宅政策の中で都営住宅のあり方も含めた検討のときだと私は思うんです。老朽化したからこそ、ただ、老朽化したから同じように建てかえるという姿勢ではなく、例えば民間賃貸住宅の活用や市況の方向性、人口や世帯数の動向なども含めて、検証、分析をする必要があると思うんです。建ててしまえば、七十年間ランニングコストが発生するのが都営住宅なんですね。それを考える契機になると思うんです。
 そこでまず、今の都営住宅を建てかえる際に、その全て、もしくは一部を民間賃貸住宅の活用で補うことに対する見解と、これまで、例えば住政審などで家賃補助制度といったものの議論がなされておりますけれども、その議論をもとに、どのような検討を行ってきたのか伺いたいと思います。

○藤井東京都技監 現在、昭和四十年代以前に建設されました都営住宅につきまして、建物や設備の老朽化が進行していることから、計画的に建てかえを進めております。
 住宅は生活の基盤でございまして、都民の居住の安定を確保することが重要でございます。
 お話の民間賃貸住宅の活用は、市場動向の影響を受けやすいのに対しまして、都による直接建設は、中長期的に安定した居住を確保することができるため、住宅セーフティーネットの観点から望ましいと考えております。
 また、家賃補助による方法につきましては、平成十七年に国の社会資本整備審議会から、生活保護との関係、財政負担、適正な運営のための事務処理体制等整理すべき課題が多いとの答申がなされております。
 都の住宅政策審議会でも、施策対象、給付基準、収入、資産捕捉、財政負担、執行体制など、整理すべき課題も多く、また、典型的な所得再分配政策であることから、今後、国と一体となって検討を進めるべきとの整理がなされております。
 都営住宅につきましては、今後とも、計画的な建てかえにより、都民の居住の安定確保を図ってまいります。

○あさの委員 今は家賃補助というものに対する課題が多いということが住政審等でもいわれているという話でありました。公営住宅との共存、もしくは代替は難しいということも思っていらっしゃるんだと思いますね。
 ですが、例えば本委員会の要求資料の第96号及び第101号を見ると、市区町村営の住宅というのを供給しながらも家賃助成制度というものを実施している自治体が都内にもあるわけですね。この資料を見るだけでも、供給実績からだけで二市五区で共存しております。
 つまり、その自治体で村営住宅等をやりながら、町営住宅、市営住宅というのをやりながら、一方で家賃の助成というのも行っているということです。都内自治体でも実施できていることが東京都で何でできないのかということがあるんだと思うんですね。
 さらに、目的や対象が限定的だったら可能だというようなお話であるかと思いますが、それ自体も私からすれば、ちょっとおかしいんじゃないかなという気がいたします。
 例えば、家賃の課題の中にも、家賃上昇という話もどちらかの会派の中でございました。その家賃上昇というところも理論的にはそうだと。一方で、こういったところで家賃助成制度を行っていて、その地域で実際に家賃が伸びているかどうかというデータを持っているかと聞けば、都はそのデータをとっていないといっています。つまり、自分たちが理論的に見て自分たちの趣旨にそぐう結果であるならば、もう実際のものは検討しないという形に私には見えるんですね。
 データをきちっととるんだったらとって、その上で反証するならいいと思うんですけれども、そのデータすら持つことはしない。何でやらないのかといったら、やる必要がありません、理論上、明確だからですと。自分たちは家賃補助や民間借り上げというものをやる気がありませんから、その必要はないんですというような姿勢に聞こえてくるわけであります。だからこそ私は、実際に民間の住宅を活用していくことも模索していく必要があるんじゃないかという提案をさせていただいているわけですね。
 例えば、実際に東京都では、東日本大震災の避難住民の受け入れで民間賃貸住宅活用の実績があるというふうに聞いております。その内容と契約がどのように行われ、そして、どのような借り上げ料が支払われたのか伺いたいと思います。

○藤井東京都技監 都は、東日本大震災の被災県からの要請を受けまして、これまでに約四百八十世帯、千百名の避難者を、応急仮設住宅として借り上げた民間賃貸住宅に受け入れてまいりました。
 これは、災害救助法に基づき、都が貸し主との賃貸借契約により一時的に住宅を借り上げ、避難者に無償で提供するもので、都が支払った賃借料は被災県に求償しております。
 この東日本大震災の避難者の民間賃貸住宅への受け入れと公営住宅における民間住宅の活用とは、制度の目的や根拠法令が全く異なるものでございます。

○あさの委員 今の、まさに行政の理屈なんですね。私からいわせれば、まず結果として、一番最初にいったように、民間の賃貸住宅の市況というのは、今後ますます空き家がふえていくという状況にあるということが予測されているわけです。その中で、今の住宅政策のあり方、都市の整備のあり方というのは、もう根本的に考え直さなきゃいけないというのは、国からの話でも出ているわけですね。
 なのに、今の話の流れでは、当然のことながら、どこがお金を出すかとか、法律上の仕組みがどうかという話で答えていただいておりますけれども、私からいわせれば、民間を借り上げて、お金を払って、人を住まわせたということの結果は変わらないわけですね。だから、対応はできるでしょうということなんです。制度的に実行はできるだろうと。
 あとは目的をどのように持っていくか。例えば時限的なものだというんだったら、都営住宅でも十年を限定に子育て世帯を受け入れたりしているわけです。だとしたら、その十年限定の子育て世帯は民間活用でもできるんじゃないかということなんですね。
 民間の市況が悪いと。国のデータで、アンケートでもとられておりますけれども、入居者が入らない理由として何を挙げるかと。第一位が市況が悪いと書いてあるんです。つまり、実際に持っていらっしゃる、オーナーでいらっしゃる方々は、自分たちで民間賃貸住宅を持っているんだけれども、入居者は今、市況の状態、経済状態が悪いから、市場の状態が悪いからなかなか入ってこないんだと答えている人が半分近くいるわけですよね。それに対して、一切の、手をこまねいていて何もしないというんじゃ話にならないし、だから総合的に全体を見て、いろんな制度を活用して、民間住宅の活用も検討していいんじゃないかということを申し上げているわけです。
 例えば、前述しました国土交通省の調査によれば、現在の東京都の賃貸用の空き家で、共同住宅では七割を超えるところでエレベーターがありません。今後三十年間、高齢者がふえていくと予想されておりますけれども、民間賃貸住宅の六割の空き家では高齢者用の設備がありません。住宅内の部屋の数は七割弱が二部屋以下です。延べ床面積では十五平米から三十平米が五割弱を占めていて、全体の七割弱が四十平米未満なんですね。
 都営住宅は良質な住宅を低廉な料金で提供するという形で運営をされておりますけれども、民間賃貸住宅を借りている、さきに述べたような状況の住宅を借りている方々は、都営住宅に入らず自立して生活している方々なんですよ。その方々が、今いったような条件の民間賃貸住宅の中をぐるぐる回っている。一方で、助けられるべき人が四十平米以下なんていうところじゃなく、もっと広いところに住んでいる。そういう中で、自立している方々が、一体それを見て自分が納税していることに納得できるでしょうか。
 いいですか。そういう形で住宅の中を良質にするんだったら、市場にある住宅だって良質なものになるように政策誘導すべきだと私は思うんですね。だから、民間賃貸住宅の活用も一緒にやっていけば、その中で政策誘導といった手もとれるんじゃないかということをいっているんです。
 都としてこれまで、民間賃貸住宅がそういった良質な住宅、都がいう良質な住宅というものを提供するように、どのような施策を打ってきたのか。民間だから、それは民間の理屈で進むんですといって目をつぶってきたんじゃないんでしょうか。自立して生活される方々がやる気をなくさないような取り組みを都がしてきたというふうには私は見えません。少なくとも結果として、今の賃貸住宅の実態を見れば、都営住宅の方が優遇されているという声が聞こえたって不思議ではないと思うんですよ。
 冒頭、東京都の住宅政策を総合的に考えて、都営住宅の位置づけも含めて、今が立ちどまる契機じゃないんですかと申し上げました。都営住宅のある都有地で、区部に限って試算していますけれども、固定資産税だけでも年間で本当は五十億入るんです。都有地、あるいは区有地、あるいは国有地といったものも入っていますけれども、都有地で使っている分については非課税ですから、その分は固定資産税は入りません。それが五十億円以上の収入になるんですね。現在は有償で借りている場合を除き非課税ですから、都営住宅会計以外に見えない支出、つまり、入るはずの税収がないという支出も抱えているんです。
 私は、今すぐ全ての都営住宅を民間賃貸住宅に変えろといっているんではありません。ましてや、今の都営住宅に住んでいる人を追い出せといっているわけでもないんですよ。都営住宅を建てかえるということは、今そこに住んでいる人はどっちにしても引っ越さなきゃいけないんだから、自分たちで整備をするんじゃなくて、あいている民間住宅を活用すれば、そうしたら結果としては変わらないじゃないかと。同じ家賃で今の民間住宅に住まわせてあげるような検討をすべきなんじゃないかといっているんですね。
 いいですか。こういったことを考えていったら、検討はしないと、リスクは背負わないんだというのではなくて、住宅政策をしっかり考えるべきだと思うんです。七十年という長い耐用期間を持つ住宅を、ただただ今の住宅と同じ数だけ漫然と建てかえることが未来に対する責任ある対応といえるのか、私にとっては甚だ疑問なんです。
 十年という限られた期間に子育て世帯を受け入れるなど、やり方、知恵は幾らでもあるんだと思うんですね。一過性に行うのではない……

○中屋副委員長 委員に申し上げます。質問をしてください。

○あさの委員 数百でも二百世帯でもいいと思うんです。高齢者世帯を分散したりといった誘導をするにも、民間賃貸住宅の活用の方が変化に対応しやすいんだと思うんです。
 舛添知事、これまで私が述べたこと、答弁から出てきたこと、いろんなデータがあります。そういったデータを聞いて、それでも検討の余地すらないのか、本当にこの民間活用というのが机上の空論なのか、一部だけでも民間賃貸住宅の活用を考えることができないのか、知事の見解を伺いたいと思います。

○舛添知事 住宅というのは生活の基盤でありまして、都民の居住の安定を確保することは重要であります。その中で、都営住宅は、住宅セーフティーネットの中核的な役割を担っております。
 私はかねて、厚生労働大臣として、雇用促進住宅を危機のときに活用したことがございます。私はそのときに、住宅も危機のときに備えて、政府や公的機関が管理するものがあってもよいと考えておるということを申し上げました。都営住宅は、現在においても、東日本大震災の避難者を約七百世帯、千八百人を受け入れているなど、危機管理上の役割も果たしております。
 家賃補助などの民間賃貸住宅の活用については、例えば、国の生活保護制度との関係をどうするかなど、さまざまな解決しないといけない多くの課題がございます。
 都営住宅につきましては、市場動向に左右されず安定的に供給することが重要でありまして、今後とも、計画的な建てかえにより、都民の居住の安定確保を図ってまいりたいと思っております。

○あさの委員 私は再三にわたっていいましたけれども、別に今すぐ全部を変えろといっているつもりもありませんし、それから、実際に都内の自治体の中では、家賃助成制度を行っているところもあるんですね。そういったことを考えれば、生活保護との関係性というのも、その家賃助成制度をつくるときにはちゃんと整理されているわけですよ。
 いいですか。だから、そういったことをきちっとやっているところがあるんですから、別に検討してできないことはないんだと思うんですね。確かに国の審議会は、それを出していない部分はあると思いますけれども、その整理をしていないからと、国がやっていないからといっているのではなくて、東京を世界一にとおっしゃるんでしたら、ぜひ先頭に立って、そういった施策の可能性を考えていただきたいと私は思います。
 次に、都市計画道路について伺います。
 東京都は、第三次整備計画でも優先整備路線を選定して、これまで整備着手すべき路線として実現に尽力はされてこられたと思います。第三次計画は平成二十七年度までの整備計画でありますから、当然、その後十年の整備計画、第四次整備計画については、現在、優先整備路線の選定に向けた作業を始めていることと思います。
 実際、第二次整備計画の十年間では、優先整備路線に選定された路線のうち、半分強が実際に着手できたもので、残りは第三次計画に引き継がれたものもあれば、第三次計画では外されたものもあったと聞いております。今後、第四次計画を策定する前に、現状がどうなっているのか、まず確認したいと思います。
 都市計画道路の優先整備路線について、平成二十七年度までにどの程度整備完了、もしくは着手できそうなのか確認をいたしたいと思います。

○藤井東京都技監 第三次事業化計画における優先整備路線につきましては、平成二十四年度末時点で約四割の箇所で事業着手しております。
 計画期間は平成二十七年までとなっていることから、今後さらに着手箇所がふえるものと想定されます。

○あさの委員 整備完了を含んだ着手率でいえば、おおよそ第二次計画のときと同じぐらいの結果になりそうだということですね。
 現在の都市計画道路というのは、戦後間もなく、昭和二十一年に計画されたものがもととなって、その後、何度か計画見直しがされていると聞いております。とすればかなりの時間、計画のままになっているものもあるんだと思うんですね。
 優先整備にかかわらず、現在、都市計画道路の中には、整備着手されないまま、時間経過しているものがあるはずですので、その中で最も古いものというのはどの程度の時間が経過しているのかも伺いたいと思います。

○藤井東京都技監 東京の都市計画道路は、区部におきましては、昭和三十九年と四十一年、多摩地域におきましては、昭和三十六年と三十七年に全ての路線で計画の見直しを行っておりまして、これが現在の道路網のもととなっております。
 こうした経緯から、現在未整備となっている路線のうち、最も古いものはおおむね五十年が経過しております。
 なお、その後も未整備の都市計画道路につきまして、区部では昭和五十六年と平成十六年に、また多摩地域では平成元年と十八年に、必要性の検証などを行っております。

○あさの委員 最初の決定、つまり昭和二十一年からおよそ十五年から二十年ぐらいたったところで一度全路線の見直しというのを行っておりまして、その後は必要性の検証をしながら、今に至っているというのが大まかなまとめだと思いますが、その全路線の見直しから見ても、つまり先ほどのご答弁の中にありました昭和三十九年だとか、四十一年だとか、あるいは多摩地域では昭和三十六年、三十七年といったところから、五十年以上、今なお計画のままになっている路線がまだまだあるということだと思います。
 道路というのはネットワークですから、我々はいまだ未完成のネットワークの中で生きているということになるんですね。ましてや五十年前から残っている計画が、仮に、次に策定される第四次整備計画の優先整備から漏れると、恐らくその計画道路は、計画決定から六十年以上未整備で経過するという形になると思うんです。必要性があるから残しているといいたいんだと思いますけれども、六十年以上未整備でいるものに必要性があるとしても、その必要性はかなり低いのではないかなと私は思うんです。
 例えば、整理整頓という形でいくならば、一定の期間触れないものは不必要なものとして処分すべしといわれます。理由を探せば、必要な理由なんて見つかるんですよ。だけど、何を差しおいても、つくらなきゃいけないものなのかどうか。今後、社会保障費も含めて、税収の中に占める支出というのはいろんなものがふえていきます。その中で、本当に、これはどうしても、ほかを犠牲にしてでもつくらなきゃいけないかどうかというところの視点で検証して、それでも整備すべしとなったら、早急に土地収用でも何でも使って整備をしてしまえばいいですし、そうじゃないなら、計画からなくしていけばいいんじゃないかなと私は思います。
 そこで、平成二十七年以降の優先整備路線を策定していくさなかだと思いますけれども、その整備路線から漏れた古い路線は六十年も経過することになるのですから、ここで思い切って整理してしまう考えはないでしょうか。伺いたいと思います。

○藤井東京都技監 都ではこれまで、区部及び多摩地域の都市計画道路の見直しを適宜行ってきております。
 現在検討中の新たな整備方針におきましても、さまざまな視点から、改めて将来都市計画道路網の検証を行うこととしておりまして、この中で必要性が確認された路線につきましては、優先整備路線以外であっても見直しを行うことは考えておりません。
 今後とも、快適で利便性の高い都市生活の実現に向け、計画的、効率的に都市計画道路網の整備を進めてまいります。

○あさの委員 あくまで必要性にこだわるということでしょう。それを否定するつもりもありませんけれども、例えば、必要性があるとしながら、これからさらに三十年間着手できなければ、本当に必要なのかという疑問が湧いてくるのは自然だと思うんです。計画当初から見れば、百年以上たつものも出てくるわけです。基本的に半分程度の着手率なわけですから、まだまだ完成まではほど遠いということになるんです。延焼遮断帯とか、そういう整備などの必要理由も、今後三十年間でどういうふうに変化していくかわかりません。
 とりあえず、手がつけられないなら残しておこうという程度の内容だったら、必要性の判断の中には、実現可能性ということも含めて、ある程度の期間で区切りながら判断していくことも必要だと思います。
 勇気ある撤退というのも、先ほど申し上げた、今後、社会保障費が増大する、支出がどんどんふえていく行政の中では必要なんだということも含めて、厳しくチェックしていただくことを望んでおきます。
 最後に、経済政策について伺います。
 東京の経済状況は、日本の経済と同様、少しずつ持ち直しの兆しが出ているとの報道もふえてきました。この経済回復にはアベノミクスが功を奏し、リフレ派といわれる方々のインフレ誘導策をもとに、デフレ脱却、経済回復へというシナリオどおりのように見えます。私もいろいろ思うところはありますが、国の経済政策の是非を論ずることよりも、政治は結果責任という側面から見ても、結果を出している以上、これまでのところはそのとおりでいいとしておきます。
 ただ、この回復基調がこのまま安定し、好調を持続できるかどうかについては、当然、不安要素はありますし、経済を好循環にしていくのは、何よりも需要の創出が不可欠であることは否めません。インフレ誘導にしても、金融政策を中心とした景気対策では金利の上昇局面も招いてしまいますし、人々の生活にダメージを与えて、停滞が来るということも確実だと思われます。
 私は、結果が出ていることですから、今までの政策について云々いうつもりはありませんが、ただ、この回復基調のときに、本当に安定して持続的に発展していく経済にしていくためには、需要の創出ということをしっかりとやっていくことがまさに王道なんだと思います。
 どんな施策も、需要が掘り起こされなければ早晩行き詰まり、そのときには無理がたたって、さらなる下降局面に陥らないとも限りません。国の経済政策は国に任せるとしても、東京都としては、そのような中で東京の持続的な発展を促すためにも、その王道を通る必要があると思います。
 オリンピック・パラリンピックの開催も、もちろん六年という期間でのカンフル剤的な効果が期待できますし、実際、効果もあると思いますけれども、その後、緩やかに発展していく仕組みづくりも同時につくりながらでなければ、経済におけるドーピングにしかならないんだと私は思うんです。同様に、自治体が行う公共投資の積み増しでは短期的な効果だけですし、観光振興のように変動しやすいものでは、安定的な発展には限界があると思います。
 東京都の経済指標の一つとして、都内の総生産、いわゆる都内GDPの推移などを見ていても、リーマンショックにより前年比四%も落ち込んで、その後も容易には回復しない状況があります。同じ時期の国の動向を見てみますと、二%の落ち込みで済んで、その後、三%のプラス成長を実現しております。国に比べれば景気の振れ幅の大きい東京都では、なおさら地道に王道を歩むことの大切さが重要であります。
 そして、需要の創出を握る最大の鍵は、やはり消費の伸び、そして、その消費の伸びは何かといえば、やっぱり雇用なんですよ。働くことに安定があるということが本当に必要なんです。特に、若い働き手が安定して生活を送ることができるように、若年者の雇用を安定させていくことが大切だと思います。いわゆる就職氷河期などが続いて、若者の貯蓄率というのも、実は普通に比べて、普通というか、昔に比べて異様な高さを示すともいわれています。
 そういった現在を考えますと、大都市である東京の経済の発展には、若者の就業の確保、安定こそが優先して取り組まれる課題であると私は思います。特に昨今の若者の状況を見ますと、世代間格差ということを声高にいう者もふえてきております。
 正直私は、高齢者の皆さんに対して、まだ社会保障等の整備がきちっと進んでいないときに、この今の経済発展した日本という国をつくってこられた方々に対して、今の若者たちは、私も含めてですけれども、この世代というのは、きちっと感謝をすべきだと思いますし、そういった感謝の中でこそ、都政というのは動かしていくべきだと思うんです。
 そういったことを踏まえて、ただ若者たちが、正直なところ、なぜか自分たちは、いろんな面で優遇されていない、高齢者ばかりが優遇されているといった思いを持っているようですから、そういった意味でも、特にこの若年者の雇用の促進というのをしっかりやっていただきたいと思います。
 こうしたことを踏まえて、東京都として、若年者の雇用の促進に向けた決意を伺って、私の質問を終わりたいと思います。

○塚田産業労働局長 国の労働力調査によれば、非正規で働く若者のうち、三割は正規での仕事がなかったとしております。若者の安定した雇用を実現するためには、正社員としての就職を後押しすることが重要であります。
 都はこれまで、しごとセンターにおけるカウンセリングや研修と就労体験による就職支援プログラム、民間就職情報サイトを活用した事業等を実施してまいりました。
 来年度はこれらに加え、実践的な職場実習を取り入れた事業を開始し、卒業後三年を超える若者を支援するなど、施策の充実を図ってまいります。
 今後とも、こうした取り組みを通じて、若者の安定的な就業を推進してまいります。

○中屋副委員長 あさの克彦委員の発言は終わりました。(拍手)

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