予算特別委員会速記録第三号

○中屋副委員長 大場やすのぶ委員の発言を許します。
   〔中屋副委員長退席、委員長着席〕

○大場委員 初めに、消費者の被害の防止について、大きく二つの観点から伺います。
 まず、消費者を狙う悪質事業者の取り締まりについてです。
 東京は、経済、産業、文化の中心地であり、時代の先端を行く新しい価値を次々と生み出し、新しいものやサービスがいち早く手に入る都市です。しかし一方で、消費者を狙う悪質で巧妙な手口も、まず最初に東京からあらわれる傾向があることを見逃すことはできません。
 昨年は、高齢者の住まいに悪質事業者が突然電話をかけてきて、注文をしていない健康食品を強引に送りつける、健康食品送りつけ商法で多くの高齢者が被害に遭い、社会的な問題となりました。また、SNSで知り合った人から言葉巧みに高額の投資用ソフトの契約を勧誘され、消費者金融で借金までさせられるという手口による被害が、若者の間で多発していると聞きます。
 さらに、最近は、意図的に社名を変えたり、倒産と新会社の設立を繰り返すなど、巧みに法の取り締まりを逃れようとする悪質な事業者もいるので、これまで以上に新しい情報を迅速に収集し、これら事業者の先を行く対応が必要です。
 先日の新聞報道によりますと、悪質商法や詐欺、誇大広告などによってもたらされた平成二十五年の消費者被害額は、全国で五・七兆円、国内総生産、GDPの約一%に相当するというものでした。暫定値ということではありますが、市場経済がこうむる影響も莫大なものであると懸念されます。
 こうした悪質な手法により、消費者のみならず、社会に多大な被害や損失をもたらす事業者に対して、都は速やかに市場から排除するなど、消費者被害の防止と健全な市場の形成を図ることが重要です。
 そこで、最近の悪質事業者の取り締まり状況について伺います。

○小林生活文化局長 消費者被害の防止を図るため、特に悪質で、多くの被害を生じさせる事業者に対しましては、特定商取引法や消費生活条例を厳格に行使し、業務停止などの行政処分や改善指導を行っております。
 また、巧妙化する悪質事業者に迅速に対応するため、悪質な勧誘手口などの情報を素早く収集する新たな情報収集のツールとして、平成二十五年五月、インターネット上に悪質事業者通報サイトを開設したところでございます。
 こうした取り組みによりまして、本年度は二月末現在で十四件の業務停止命令、六十五件の改善指導を行い、国をも上回り、全国トップの実績を上げているところでございます。

○大場委員 悪質な事業者による消費者被害を未然に防止するためには、手をかえ品をかえ、目まぐるしく出現する新手の手口に関する情報を都民へ迅速に提供することも重要と思われます。それには通報サイトのさらなる活用が期待されるところです。
 これまで通報サイトに寄せられた情報の運用実績と通報サイトによる情報収集を強化するために、今後どのような取り組みを行うのか伺います。

○小林生活文化局長 悪質事業者通報サイトを開設してから本年二月末までにサイトに寄せられた通報は、約九カ月で百三十六件であります。通報内容では、インターネットで注文し代金を払ったが商品が届かないなど、海外の事業者による詐欺まがいのネット通販や、投資用マンションの執拗な勧誘に関する事案が多く寄せられたため、即座に消費者への注意喚起を行いました。
 また、昨年十二月には、消費者宅を訪問し、排水管清掃や家屋の補修工事を不当に勧誘していた事業者に対しまして、通報に基づく初めての処分を実施したところでございます。
 今後は、被害に遭いやすく、また相談窓口を利用しない若者に対しまして、悪質な勧誘を受けた際に情報を寄せるよう、企業の新入社員研修や大学の入学ガイダンスの機会を捉え、通報サイトのさらなる活用に向けたPRを積極的に行ってまいります。

○大場委員 通報も百三十六件あったということで、通報サイトに寄せられました情報が注意喚起や処分、指導などに役立てられていることはわかりました。今後とも、通報サイトの周知を図り、より多くの都民から幅広い情報を収集し、消費者被害を未然に防止するよう、より一層の取り組みをお願いいたします。
 次に、高齢者の消費者被害防止に向けた取り組みについて伺います。
 高齢者は、孤独感や健康、判断能力の衰えなどに不安を抱えている方が多く、悪質事業者はその不安につけ込み、巧妙な手口で悪質な勧誘行為を繰り返すと耳にいたします。さらに、本人が気づかないうちに被害に遭い、事態が深刻化するおそれもあるといいます。
 高齢化の進展に伴い、ますます高齢者の被害の増加が懸念されます。特に東京はひとり暮らしの高齢者が多く、その数はさらにふえると予想されます。
 そこで、最近、都に寄せられている消費生活相談で、高齢者が被害に遭っている悪質な手口による事案はどのようなものがあるのか伺います。

○小林生活文化局長 都内の消費生活センターに寄せられた高齢者に関する相談は、投資商品に関するものが多く、実態のない架空の権利をあたかも投資商品であるかのように勧誘し、契約させる手口が増加しております。
 具体的には、仕組みが複雑で実態の不明なCO2排出権取引契約を必ずもうかると勧誘したり、実在しない老人ホームの入居権などを選ばれた人だけが購入できる権利であると見せかけ、言葉巧みに持ちかける事例がございます。これらはいずれも、契約代金を支払うと事業者の所在が不明となるものでございます。
 これらの取引は、規制する法律のない、法のすき間を突いた詐欺的な投資勧誘であり、高齢者の投資商品に関する相談の平均契約金額が千二百万円を超えるなど、深刻な事態となっております。

○大場委員 千二百万円という高額な被害に遭われる方も多いようでございます。
 ところで、都はこちらのリーフレットのように、高齢者が狙われやすい手口などをわかりやすくまとめた啓発資料などもつくっています。(資料を示す)悪質商法や振り込め詐欺から高齢者を守るにはと。「みまもり」と。みんなでいつも気にかけて、待ったと一声かけましょう、もう知らぬ顔はいけません、隣人、地域で輪になろうと、こういうリーフレットが配られて、このリーフレットは区市町村にもご協力いただきながら配布していると聞いておりますが、より多くの高齢者や周囲の人に情報が伝わるよう、引き続き周知に努めていただくようお願いをいたします。
 高齢者の被害は、周りに相談できる人がいなかったり、被害に気づいてくれる人がいないことで深刻化しやすく、その防止に向けては、単に消費者問題として捉えるのではなく、介護や生活支援、孤立防止など幅広い視点で捉え、地域ぐるみで高齢者を見守っていく、そんなきめ細かい取り組みが必要です。
 私の地元の世田谷区では、区が養成した区民が消費者あんしんサポーターとして高齢者の集まりなどに出向き、消費者教育を行うという取り組みをしています。また、区市町村の消費者センターが、役所の中だけでなく、民生委員や町会、警察などとも連携して取り組んでいる例もお聞きいたしております。このような取り組みを自力で進められる区市町村もあれば、ノウハウがないなど、都の支援を必要とするところもあります。
 都は、今後、高齢者の被害防止に向け、地域で活動する人材の育成や関係者のネットワークづくりなど、新たな視点に立った地域の体制強化に取り組むべきと考えますが、見解を伺います。

○小林生活文化局長 地域の連携による高齢者の見守りは、これまで健康や介護など、福祉分野の関係機関を中心に行われてまいりました。しかし、ひとり暮らしの高齢者の大幅な増加が見込まれることから、今後は、消費者被害防止の視点も重視していく必要があるというふうに認識しております。
 このため、消費者からの相談を待って対応を始めるというこれまでの発想を転換し、高齢者の被害対策には、未然防止や早期発見、救済に地域の中で取り組むことが有効であることから、都独自の消費者被害防止地域見守りネットワークモデルを創設することとし、検討に着手をいたします。
 具体的には、介護事業者や民生委員等を対象とした消費者被害防止に関する研修等を強化するとともに、福祉部門との連携強化の仕組みづくりなどに取り組んでまいります。

○大場委員 都には、高齢者が都内のどこに住んでいても、また、ひとり暮らしであっても、周囲の見守りの中で安心して暮らしていくことができる、そんな社会を目指して、先ほどの答弁で都ならではのモデルづくりに取り組むということでございますので、ぜひ取り組んでいただきたいと思います。
 最後に知事に伺います。
 知事は、東京を世界一安全・安心な都市にするため取り組むと伺っております。私は、消費者、特に高齢者の被害防止なくして世界一の実現はないと考えております。
 今後の高齢社会における消費生活行政について、知事の基本的な考え方を伺います。

○舛添知事 東京は世界有数の大消費地である一方、新手の消費者被害が発生するなど、都民の消費生活の安心の確保は課題となっております。特に今後、ひとり暮らしの高齢者の大幅な増加が見込まれる中で、高齢者の消費者被害への対策強化が急務であります。
 被害防止には、高齢者からの相談を待つのではなく、地域の中で、予防、拡大防止、救済などの視点から、多面的な取り組みを行うことが有効だと考えております。
 また、被害防止、悪質事業者の市場からの排除には、相談から処分まで一貫した対応を行う都道府県の役割がさらに重要となると考えております。
 都はこれまで、常に国や全国の自治体をリードしながら、先進的な消費生活行政に取り組んでまいりました。しかし、法のすき間を狙うなど、悪質事業者の手口が巧妙化する中で、国からの権限移譲が十分でないため、自治体の機動性を発揮できない場合もございます。
 今後、都は区市町村とも連携し、新たな視点から高齢者の被害防止に取り組むとともに、国に権限移譲を強く求め、都民の消費生活の安全・安心を守ってまいります。

○大場委員 知事の力強い答弁をお聞きいたしまして、私も今後の高齢社会における消費生活に明るい展望が持てるような気がいたしました。
 私はかねてから、高齢者は社会の財産であると申し上げてきました。知事には、全ての都民が地域の中で老後の安心を得、豊かに暮らすことのできる、そんな世界一の都市東京の実現に取り組んでいただきますようお願いを申し上げまして、次の質問に移ります。
 次に、個人都民税の徴収率向上について伺います。
 個人都民税は区市町村が徴収していることから、その徴収率向上については、区市町村との連携が鍵となります。そうしたことから、都は平成十六年に個人都民税対策室を設置し、区市町村からの徴収困難事案の引き受けや、事務研修生の受け入れ、都職員の派遣等を行い、区市町村との連携を進めていると聞いております。
 また、さらなる徴収率向上への取り組みとして、先日の本会議の一般質問において、我が党の清水議員の質問に対し、都が直接徴収している都税と比べて低い状況にある個人都民税の徴収率向上を図るため、都と区市町村が連携し、給与からの天引きである特別徴収を積極的に推進していく旨の答弁がありました。
 そこで、改めて特別徴収を推進するメリットと課題を伺います。

○影山主税局長 個人都民税の納付方法は、区市町村から送付する納税通知書で年四回納める普通徴収と、給与所得者については事業主が毎月の給与から天引きして区市町村に納める特別徴収があり、特別徴収の場合は、徴収率はほぼ一〇〇%となっております。また、給与所得者にとっては、毎月の天引きで一回当たりの負担額が軽くなることや、納め忘れがなくなるなどのメリットがあります。
 一方、特別徴収の課題でありますが、事業主については、特別徴収した住民税を、従業員の住所地のある区市町村ごとにそれぞれ払い込まねばならないなど、事務量が増加することなどから、その理解を得る必要がございます。また、給与所得者は、居住している区市町村の区域外に勤務している場合も多く、区市町村間で連携し、広域的に取り組んでいくことが重要であります。

○大場委員 給与からの天引きである特別徴収は、区市町村や従業員にとって大きなメリットがあります。一方、事業主にとっては、各従業員の住所地の区市町村に天引きした税を払い込むことから、その事務負担にも考慮する必要があります。そのため、特別徴収の推進に当たっては、お話のとおり、事業主への理解が重要だと考えております。
 そこで、ただいま伺った課題への対応も含め、都は特別徴収の推進をどのように進めていくつもりなのか、所見を伺います。

○影山主税局長 給与所得者については、地方税法の規定により、原則として特別徴収することになっておりますが、都内の給与所得者のうち特別徴収されているものの割合は六八・九%と、全国平均七二・三%より低い状況でございます。このため、二月に行われました個人住民税徴収対策会議において、平成二十六年度から二十八年度を特別徴収推進期間とし、都と区市町村が一体となって取り組んでいくことを決定いたしました。
 今後、パンフレットの配布やホームページを活用するなどの広域的な広報の展開、税理士会を初め関係団体への協力依頼、対象事業主への働きかけなどを行い、特別徴収義務者としての段階的指定や一斉指定の検討などを行ってまいります。
 さらに、埼玉県を初めとした近県との連携も視野に入れつつ、工程表を作成し、計画的に取り組んでまいります。
 また、事業主の事務負担にも配慮し、きめ細かな対応を行うなど、その理解と協力を得ながら、特別徴収の実施率を着実に高め、個人都民税の徴収率向上に努めてまいります。

○大場委員 個人都民税は、都税収入の約二割を占める都の基幹税であります。その徴収率向上は、都税収入を確保し、税負担の公平性を図る上で不可欠であります。
 個人都民税の徴収率向上に向けては、従来の取り組みに加え、こうした新たな取り組みを行っていくことが必要です。
 特別徴収については、事業主の理解と協力を得ながら、まずは都内区市町村と連携し、給与所得者からの特別徴収を積極的に推進していくことが重要と考えます。
 また、都民の生活圏、経済活動の広域化を考えますと、先ほど答弁にありましたように、一都三県の連携も今後必要と考えますので、その実現についても要望しておきたいと思います。
 次に、高齢者の就業について伺います。
 高齢化が進展する中で、高齢者の就業意欲は非常に高く、高齢者のまだまだ働きたいという声に応えていく必要があります。働く意欲のある高齢者の培ってきた知識や経験を生かすことは、経済社会の活力を高めることにもつながると考えます。
 一方、高齢期になると、健康状態や職業経験等の個人差があり、また年金などの経済状況等も異なっていることから、その就業や社会参加のニーズは多様化しています。高齢者の活躍の場としては、企業で雇用される以外にも、NPOや創業、シルバー人材センターを通じた就業、ボランティアなどさまざまな形があります。
 しかし、高齢者の中には、何らかの形で社会参加したい、定年後は企業で雇用される働き方とは違う形で働きたいなど、漠然とした希望を持っていても、どのような働き方があるのか、また具体的にどうしたらよいのかわからず、実際の行動に踏み出せない方も少なくありません。
 こうした方々に対しては、多様な選択肢の中から、自分に合う働き方を見つけ出し、その実現に向けて踏み出すきっかけづくりを支援していくことが必要であると考えますが、見解を伺います。

○塚田産業労働局長 高齢者の就業を推進するためには、高齢者自身がさまざまな選択肢の中から、希望や能力に応じた働き方を見つけられるように支援することが重要であります。
 このため、都では来年度から、東京しごとセンターでNPOでの就業、ボランティアなど多様な働き方について、その仕組みや仕事の内容、就業先の探し方などの基本的な理解を促すセミナーを開催し、働き方を選択するためのきっかけづくりを行います。
 また、セミナー受講後は、しごとセンターのシニアコーナーにおける就業相談の中で、自分に合った働き方を見つけ、関心がある分野のNPOへの訪問や地域のボランティアセンターへの登録など、具体的な行動につなげられるようサポートしてまいります。

○大場委員 ぜひともよろしくお願いいたします。
 高齢者は、仕事を通じて長年培ってきた知識や技術、豊富な人脈などを有しています。また、数々の困難をかいくぐってきた経験なども、若い人がなかなか持ち得ない大きな強みです。高齢者が仕事につき、生き生きと働いていく上では、こうした強みを最大限に生かすことが効果的です。
 一方、事業主等の側から見ても、高齢者の力を引き出すことができれば、経営にとって大きなプラスになります。
 しかし、高齢者がふえていく中で、戦力として働く機会はまだまだ不足し、高齢者の強みが十分に生かされていないのが現状です。その理由の一つとして、事業主等が高齢者を生かすノウハウに欠け、手探り状態にある実態が考えられます。
 こうした事業主等に対しては、参考となるモデルを示し、高齢者活用に向けた行動を促すことが有効ではないでしょうか。
 都は、高齢者の希望や能力に応じた多様な働き方のモデルとなるような取り組みを支援し、あわせて広く示していくことにより、高齢者の職域を広げ、高齢者が元気で生きがいを持って働くことができるような環境を整備していくべきです。都の所見を伺います。

○塚田産業労働局長 少子高齢化と、これに伴う人口減少が見込まれる中、高齢者が持つ知識や経験を生かして活躍できるように支援していくことが重要であります。
 このため、都は来年度から、高齢者を活用する上で参考となる事例を掘り起こし、事業化を後押しするとともに、これを事業主等に紹介し、高齢者の活躍の場の拡大につなげてまいります。具体的には、東京しごと財団において、高齢者就業のモデルとなるような企画を募集し、三百万円を上限として、事業の立ち上げに必要な経費の二分の一を助成いたします。さらに、その取り組み内容を発表する場を設けるなど、広く発信してまいります。
 こうした取り組みを通じて、高齢者の職域の拡大を図り、就業を支援してまいります。

○大場委員 高齢者が生きがいを持って働くことは、健康維持や介護予防につながることが期待されます。高齢者が生き生きと活躍できる社会の実現に向け、積極的に、今ご答弁いただいたように取り組んでいただきますことを要望いたしまして、次の質問に移ります。
 次に、東京の緑施策について伺います。
 我が党はこれまで、水と緑に囲まれた潤いを実感できる魅力的な都市を創造することの重要性を主張してきました。都市における緑は、防災、環境保全、レクリエーション、景観、魅力など、さまざまな機能を果たしています。
 東京を世界一の都市にしていくためには、公園の整備などにより、新たに緑を生み出すことも必要です。民有地の既存の緑を保全していくことも重要と考えます。
 民有地に残された貴重な緑を保全していくため、都はどのように取り組んでいくのか伺います。

○藤井東京都技監 緑豊かな東京を実現するためには、都市計画公園などの整備を計画的に進めるとともに、民有地の緑につきましても積極的に保全していくことが重要でございます。このため、都は、平成二十二年に緑確保の総合的な方針を策定いたしまして、区市町村と連携し、緑の保全に取り組んでおります。
 例えば、区市町村が特別緑地保全地区制度を活用いたしまして、屋敷林や崖線の緑地などを公有地化して保全する場合には、財政的支援を行っております。また、都独自の農の風景育成地区制度を創設いたしまして、農地を中心とした潤いのある景観の維持を図る区市町村を支援しております。
 引き続き、東京に残された貴重な緑の保全に取り組んでまいります。

○大場委員 民有地の緑の保全について、区市町村と連携して取り組んでいることはわかりました。特に、区市町村の財源だけで公有地化するのは負担が大きく、都の財政的支援は非常に有効な取り組みであります。引き続きこうした支援をしっかりお願いしておきます。
 また、我が党は屋敷林を守る必要性を主張してきました。屋敷林は厳しい気候や自然災害などから家屋を守るとともに、燃料や建築材を確保することを目的に、農家の周囲に植えられたシラカシ、杉、ケヤキなどの樹林であり、歴史的にも、昔の人の生活の知恵が詰まった地域の貴重な樹林地であります。
 私の地元世田谷区にも屋敷林があり、樹齢百年を超えるケヤキやシラカシなどの防風林がそびえ立ち、タケノコをとっていた竹林が残るなど、かつての世田谷の農家のたたずまいを感じることができます。区内に数多く残されたこのような屋敷林が、今では相続時に売却されるなどして、次々と姿を消してしまい、年輪を重ねた樹木が伐採される状況に、私は心が痛む思いであります。
 都が私有財産である屋敷林を支援するのは難しいと承知していますが、屋敷林は地域にとっても、我が党が目指す、後世に誇れるクリーンで美しい東京の実現に向けて大変重要であるため、改めて屋敷林の保全に関する都の認識と現在の取り組みについて伺います。

○長谷川環境局長 屋敷林は潤いや安らぎをもたらし、風格ある都市景観を創出するほか、その町の歴史や文化を象徴する地域の貴重な財産であると認識しております。また、都内に残された在来植物のまとまった緑として、地域の生き物の生息場所としても重要でございます。
 このため、都は現在、先ほどの特別緑地保全地区制度を活用する区市町村への支援のほか、相続を契機として屋敷林が失われていくことを踏まえ、国に対し、相続税等における優遇措置や保全策に対する財政措置を要望しているところでございます。

○大場委員 都が屋敷林の重要性を認識して、相続を契機として売却されぬように取り組んでいるということはわかりましたが、みずから先祖代々引き継がれた屋敷林を維持し続けようとする土地所有者を支援する視点も重要であります。
 実際、屋敷林を管理していく上で、所有者のご苦労は大変多いと聞いております。例えば、樹木の枝が隣の敷地に越境してしまう問題や、落ち葉や害虫の発生など、近隣住民の方々との関係に大変苦慮していることに加え、所有者の高齢化に伴い、屋敷林の手入れを十分に行うことができず、繁殖力の強い外来種がせっかくの在来植物を侵食してしまうなどの課題が見受けられます。
 区市町村の中には、屋敷林を保存樹林として指定し、その樹木の剪定や害虫駆除などに対する補助制度を設けているところもありますが、地域の良好な緑として適正に維持管理をしていくには十分な支援とはいいがたい面もあります。
 こうした中、先ほどお話をした世田谷区の屋敷林では、区役所と土地所有者が住民の利用に供する市民緑地として契約をし、区の関係団体がその管理を行うとともに、市民団体と連携して、周囲に親しまれるイベントも開催しております。
 都は、こうしたさまざまな手法や工夫により屋敷林の維持管理に取り組んでいる区市町村を積極的に支援すべきと考えますが、見解を伺います。

○長谷川環境局長 都内に残された貴重な緑地でございます屋敷林を適切に保存していくためには、お話のとおり、地域参画による維持管理の取り組みが有効と考えます。このため、都は、来年度から新たに、土地所有者と地域住民等の協働によって屋敷林の保全活動を進めようとする区市町村の取り組みを支援してまいります。
 具体的には、生き物の生息場所としての質を高める観点から、区市町村の行う適切な管理方法を助言する専門家の派遣や活動ガイドラインの策定、必要な用具の整備などの経費を一定期間補助し、その後の活動の円滑化に向けた基盤づくりを後押ししてまいります。

○大場委員 地域を巻き込んだ屋敷林の保全活動を進める区市町村に対して都が支援を開始するとの答弁をいただきまして、大変うれしく思います。
 市街地では、春の芽吹きや秋の落葉など、都民の方々が季節の移り変わりを感じる機会も減ってきているように思います。屋敷林の保全活動を地域住民とともに実践することで、住民の方々が緑のすばらしさを実感し、地域で貴重な緑を守ろうとする機運が醸成されることを期待いたしまして、次の質問に移ります。
 次に、観光振興について伺います。
 昨年、我が国を訪れた外国人旅行者数は、過去最高の一千万人を達成しました。円安傾向が始まった昨年の花見の時期やゴールデンウイークには、都内の観光スポットでも大変多くの外国人旅行者の姿を目にしました。また、東南アジア諸国などでビザ発給要件の緩和が行われ、LCCなどの新規航空会社の参入が続くなど、アジアの人々にとって日本への旅行がさらに身近になってきました。
 このように、外国人旅行者の誘致の好機が続く中で、二〇二〇年東京オリンピック・パラリンピックの開催が決定し、東京が世界から注目を集めています。国はこれを契機に、ビザ発給要件の一層の緩和、訪日プロモーションの強化などにより、二〇二〇年に向けて、訪日外国人旅行者数二千万人を目指すとしています。
 東京は日本の政治経済の中心であり、江戸から続く歴史や伝統、芸術から、ファッション、アニメといったポップカルチャーなど多彩な文化、世界的に評価の高い日本食、多摩・島しょ地域の豊かな自然など、魅力にあふれています。さらに、安全で清潔な生活環境、治安のよさ、人々のおもてなしの心など、東京の魅力を語るのに、枚挙にいとまがありません。
 今、こうした東京の魅力を高め、しっかりとPRすることは、東京にとって、さまざまな国から新たに旅行者をお迎えすることができるチャンスであります。最近のテレビや新聞などの報道では、アジアからの観光客が新宿や渋谷などの繁華街を訪れ、食事、買い物などを楽しむ様子などが伝えられています。また、私の地元世田谷の下北沢は、ミシュランでも星がつき、欧米からの旅行者が気ままに町歩きを楽しんでいる姿を見かけるようになりました。
 このように、東京にはいろいろな国や地域から旅行者が訪れていますが、旅行者の国や地域によって、人気の観光スポットや旅の楽しみ方はさまざまなようです。こうした旅行者の都内滞在中の行動やニーズを的確に把握し、今後の誘致施策に生かすべきと考えますが、都の取り組みを伺います。

○塚田産業労働局長 外国人旅行者誘致を効果的に行うためには、国ごとにきめ細かく旅行者の特性を捉えて、誘致活動に反映させることが重要であります。
 このため、都は、外国人旅行者の都内での訪問先や滞在中の行動、満足度などについて国別に把握する調査を、訪日外国人旅行者数が多い十五カ国で実施しております。
 来年度は、今後の旅行者数の増加が特に期待できるベトナム、インドネシアなどの五カ国を調査の対象に加え、二十カ国に拡大して実施いたします。この結果を、各国の旅行者の特性に応じた観光ルートの開発やプロモーションの企画立案等に活用し、さらなる外国人旅行者誘致に取り組んでまいります。

○大場委員 日本政府観光局の調査によりますと、今お答えいただいたベトナムとインドネシアのほかにも、東南アジアの国々では、年間の訪日旅行者数が過去最高を記録したそうです。特に、昨年訪日ビザが免除となったタイからの旅行者は、対前年比一・七倍と急増しています。
 これまで都は、アジアからの旅行者の誘致については、中国、台湾、韓国など東アジアを皮切りに誘致活動を開始し、羽田空港の国際化に伴い、シンガポールなど東南アジアも誘致の対象地域として取り組んでいると伺っております。東南アジアは経済成長率が高く、地理的にも、欧米に比べれば日本に近いため、積極的にプロモーションを行えば多くの旅行者の誘致につながるのではないでしょうか。
 そこで、東南アジアからの旅行者誘致に向けて、来年度、都が力を入れる取り組みについてお伺いし、質問を終わります。

○塚田産業労働局長 東南アジアは経済成長が著しく、旅行需要の高まりが見込まれることから、多くの旅行者を東京に呼び込む上で重要な地域であります。今年度は、ベトナムとインドネシアからの旅行者誘致に重点的に取り組むこととし、初めて観光プロモーションを行い、現地旅行事業者に向けた商談会やセミナーなどを開催いたしました。来年度もこれを継続し、東京への旅行商品の造成をさらに促進してまいります。
 また、タイにおいては、これまで主に旅行事業者を対象に、旅行博出店や海外旅行事業者の招聘などに取り組んでまいりました。これに加え、来年度は、旅行者が急増しているこの機を捉えて、現地市民に東京の魅力を直接訴えかける広報活動を集中的に行うなど、旅行者誘致を強化してまいります。

○大場委員 せっかくのオリンピック・パラリンピックに向けての夢のあることができましたので、ぜひとも観光についても頑張っていただきたいと思います。
 以上で終わります。ありがとうございました。(拍手)

○宇田川委員長 大場やすのぶ委員の発言は終わりました。
 この際、議事の都合により、おおむね三十分間休憩いたします。
   午後六時九分休憩

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