予算特別委員会速記録第三号

   午後三時二十分開議

○宇田川委員長 休憩前に引き続き委員会を開きます。
 質疑を続行いたします。
 吉住健一委員の発言を許します。

○吉住委員 知事は、選挙戦を通じて、世界都市ランキングで東京は四位に甘んじているが、世界一の都市にするというメッセージを発信されました。私も、東京を世界で一番の都市にという都議選における都議会自民党の公約を胸に、質疑をしてまいります。
 東京が世界で一番の都市となるためには、住んでいる人や働いている人が安心して日々の営みを送れる環境をつくることが重要です。東京にはいろいろな魅力がありますが、その一つに、世界でも有数の経済都市という面があります。
 そこで、都内の中小企業の景気対策について伺います。
 先日、都の制度融資にかかわる審査会に出席をし、リーマンショックや東日本大震災が中小企業の業績に大きな影響を及ぼし、一層厳しい経営環境をもたらしたことを再確認しました。景気変動や大災害は、いつどのように発生するのか予測がつきません。いざというときに、財政基盤が脆弱な中小企業を支えるセーフティーネットが重要で、都の制度融資の積極的な役割に期待をしています。
 国は、リーマンショック後の緊急対応として全業種に拡大していた緊急保証制度を順次縮小し、この春にはリーマン前の水準に絞り込みました。景気回復の流れを受けての対応は理解できますが、一歩路地裏に入った商店街では、まだまだ厳しい経営環境にあえいでおり、実情を踏まえた対応が必要です。
 都として、財政基盤の弱い中小零細企業を支えるセーフティーネットとしての金融支援に、来年度どのように取り組んでいくのか伺います。

○塚田産業労働局長 都の制度融資では、リーマンショック直後に経営緊急融資を実施したほか、東日本大震災や厳しい円高局面など、その時々の環境の変化に対応したさまざまな融資メニューを提供してまいりました。
 また、国のセーフティーネット保証制度の利用対象業種から外れる企業には、経営一般融資の利用要件を緩和し、昨年三月の中小企業金融円滑化法終了時には特別借りかえ融資を創設するなど、中小企業の経営の安定を図るため、都独自のきめ細かな対応を行っております。
 来年度は、こうした取り組みに加え、特別借りかえへの新たな事業資金の上乗せや、小規模企業向けのつなぎ融資メニューの新設などにより、中小企業の資金繰り支援を一層強化してまいります。

○吉住委員 都はこれまでも、不況時や年末年始の特別対策を実施するなど、金融支援を継続してまいりました。これからも時宜を得た対策を実行していただけるよう期待します。
 ただ、そうはいいましても、資金さえ投入すれば業績が上がるわけではありません。そこで、中小企業の販路開拓に関する支援について伺います。
 リーマンショック後に続いた景気低迷と円高不況の中、大手や中堅企業の海外移転や生産調整などが進み、多くの中小企業が取引先の減少による売上高の低迷に苦しんできました。経営基盤の脆弱な中小の下請企業などは、取引先の数も限られていることが多く、影響を受けやすいことから、都がこうした企業の新規取引先開拓を後押しする取り組みを進めてきたことは大いに評価します。
 一方、安倍政権の経済政策により、経済が順調な回復を見せる中、中小企業の中には、今までの経営の延長線上ではなく、新製品の開発に取り組んだり、アジア市場を目指したり、積極的に事業展開を図ることで、取引の拡大に取り組む企業もあります。
 東京の活力を一層高めるためには、成長に向けて新たな挑戦をする企業の販路開拓に向けた取り組みに対して支援を行っていくことが必要と考えますが、都の考え方を伺います。

○塚田産業労働局長 都はこれまで、目指せ中小企業経営力強化事業により、厳しい経営状況にある中小企業に対し、展示会出展費用の助成等を通じて販路の開拓を支援してまいりました。
 東京の産業のさらなる発展のためには、成長を目指して新事業を展開する企業に対しても、新たな取引先の獲得に向けた効果的な支援を行っていくことが重要であります。
 そこで、都は来年度、新製品の開発に取り組む中小企業が試作品に対するニーズを把握するため、市場調査や国内外の展示会への出展を行う場合、百五十万円を上限に経費の二分の一を助成いたします。また、ニーズを把握した結果、製品改良が必要となる場合には、五百万円を上限に経費の二分の一を助成いたします。
 こうした取り組みにより、新たな事業展開に取り組む意欲ある中小企業の販路開拓を支援してまいります。

○吉住委員 続いて、観光施策について伺います。
 東京は、経済都市としての重要性が高いと同時に、観光都市としての魅力もあります。このたびの定例会でも何回となく取り上げられていますが、MICEは、一度に多くの外国人旅行者を呼び込むだけではなく、高い経済波及効果が見込まれることから、世界の諸都市が誘致に積極的に取り組んでいます。
 こうした中、海外競合都市との誘致競争を勝ち抜くために、都はどのように誘致活動を展開していくのか伺います。

○塚田産業労働局長 MICE開催都市を決定する際に重視される要素は、主催者の国や地域、会議の開催規模や内容などによって多種多様であることから、効果的な誘致活動を行うには、その対象に応じた戦略を構築することが重要であります。
 このため、都は今年度、企業が開催する大規模会議や報奨旅行等について、東京と誘致を競い合う都市の取り組みや海外十カ所の市場動向、主催者ニーズなどを把握するための調査を進めており、来年度は国際会議を対象とした調査を実施いたします。
 今後、これらの結果を活用するとともに、新たにMICEに精通した専門家から成る会議体を設置し、誘致、開催についての経験や知見に基づく助言を得ながら、効果的な戦略の構築に取り組んでまいります。

○吉住委員 熾烈な都市間競争を勝ち抜くために、しっかりと戦略を立てていることがわかりました。
 そこで、次に企業系会議等について伺います。
 都は今年度、企業系の会議や報奨旅行等についてマーケティングを行い、来年度には戦略を構築するとのことですが、すぐにでも実施すべき課題もあると思います。
 そこで、これまでの調査状況を踏まえ、都は来年度からどのような取り組みを進めようとしているのか伺います。

○塚田産業労働局長 今年度実施している調査では、企業系の会議等の誘致に成果を上げている都市は、主催者に対して、視察の招聘や開催時に実施するイベントなどのサービス提供を確約することで、誘致を優位に進めていることが明らかになっております。
 これを踏まえ、都は来年度、新たに主催者等の視察に当たっては滞在費などを負担するとともに、魅力的な視察コースを設定し、ツアーを実施するなどの支援を行い、東京での開催決定を促してまいります。加えて、開催時に行うアトラクションや文化体験プログラムの開発を進めるとともに、これらの提供を主催者に約束することで、開催都市としての魅力を高めてまいります。

○吉住委員 続いて、海外からの観光客を呼び込んでいくために、どのような広報を展開していくのか伺います。
 さきの本会議での我が党の代表質問に対し、知事は、従来型の行政広報の手法を大胆に転換し、新たに海外向けの都市広報に今すぐ着手すると、強い決意を述べられました。
 しかし、海外向け広報は、これまでの都民向け広報から一歩踏み出す新しい取り組みであるため、行政内部だけではなく、知事が述べていたように、外国人など外部の専門家の知見を活用することが重要だと考えます。
 そこで、海外広報を展開するに当たり、海外メディアからの意見は非常に重要だと思いますが、海外への都市広報の展開に当たり、海外メディア関係者からどのような意見を聴取したのか伺います。

○小林生活文化局長 海外メディアの関係者からは、海外向けの効果的な広報の手法などについて貴重な意見をいただきました。
 この中で、海外に発信すべき情報は、重大事故等の情報、ユニークで特色ある情報、より詳細な情報の三つから成り立ち、東京の持つ強みや魅力を伝えるという今回の都市広報の趣旨を踏まえれば、ユニークな情報で興味、関心を抱かせ、より東京に関する詳細な情報に引き込むということが重要であるという話がございました。
 この題材として、例えば日本独自の文化である銭湯や、整然と人々が行き交うスクランブル交差点などの、海外の人々にとって興味深い情報を発信することが有効ということでありました。また、こうした東京の魅力の掘り起こしには、日本人が発信内容を選ぶだけでなく、外国人の視点が不可欠であり、海外から記者を招聘し、興味、関心に応じて取材させる手法を取り入れたらどうかという提案もございました。
 さらに、経済成長著しい東南アジアは、富裕層の若者を中心に英語になれている人も多く、日本や東京に対する興味、関心が高いことから、海外向け広報を、まずそこから着手すべきという意見もございました。

○吉住委員 東京をよく知らない人々が関心を持つきっかけとなるユニークな東京の魅力を発信すべきとの意見、また、まずは東京への関心が高い東南アジアの人々に情報を発信していくことが重要との意見には、私も同感です。
 そこで、さきの本会議での代表質問においても、今月から日本のテレビ局と連携し、東南アジア、インドのテレビ局へ都の取り組みを紹介するミニドキュメンタリー映像の配信を開始したとの答弁がありましたが、その具体的な内容を伺います。

○小林生活文化局長 都が東南アジア、インドのテレビ局に先週から始めた映像の配信は、キャッチ・アジア・メディア・ネットワークと申しますが、これは都と日本企業が提供する情報を組み合わせ、ニュース番組やドキュメンタリー番組で放送するものでございます。
 東南アジアやインドでは、日本の食や伝統文化、災害対策、先端医療、都市インフラなどの関心が高いことから、これらの分野から重点的に題材を選定してまいります。
 第一回の配信では、災害対策をテーマに、国際緊急援助隊としても活躍している東京消防庁のハイパーレスキューを取り上げ、高度に訓練された救難体制等を紹介いたしました。第二回は、歴史に根差した魅力をテーマに、江戸東京博物館を取り上げ、豊かな江戸文化とそこで活躍する外国語ボランティアガイドを紹介いたしました。
 来年度につきましては、先ほど述べた分野の中からテーマを選定し、四回の配信を予定しております。

○吉住委員 今後も印象に残る映像の配信を続けていただきたいと思います。
 海外への情報発信では、言語の異なる人々に東京の魅力を理解してもらう必要があることから、映像の活用が非常に有効であると考えます。
 そこで、アジア地域のみならず、全世界の人々に向けて映像による情報発信を展開していくべきと考えますが、来年度、具体的にどのような取り組みを進めていくのか伺います。

○小林生活文化局長 映像による情報発信につきましては、来年度は、キャッチ・アジア・メディア・ネットワークに加えまして、高度な技術力と日本人の特性であるホスピタリティーなどが一体となった東京の魅力を紹介する短編映像を制作し、ユーチューブやSNSなどを活用して広く発信してまいります。
 映像の制作に当たりましては、都が保有する素材に加え、自分だけが知っている東京の魅力などのテーマで、在住外国人や都民の方々から写真や動画を幅広く集め、その上で、この素材を世界の各地域や年齢層を想定しながら、専門家の力をかりて編集し、発信をしてまいります。あわせて、海外から招聘する記者がそれぞれの興味、関心に基づいて取材した映像も活用してまいります。
 こうした取り組みを効果的に展開するため、海外のメディアと連携をするほか、この四月から、民間での海外広報の経験を有する専門人材を二名採用するなど、都市広報の推進体制を充実してまいります。

○吉住委員 さて、オリンピック・パラリンピックの開催を六年後に控えていますが、大会に参加する人、観戦する人々は、日本の文化を体験していくことになります。オリンピックは、スポーツの祭典であると同時に、文化の祭典でもあります。東京大会は、東京の文化の魅力を国内外に発信する絶好の機会でもあり、観光客としてのリピーターをふやせる可能性もあります。
 世界の人々にとって、文化プログラムが魅力あるものとなるためには、東京はもとより、国内外の英知を結集することが重要であります。オリンピック文化プログラムを具体化する取り組みとして、先般、二〇一二年ロンドン大会の文化プログラム責任者から意見を聴取したとのことですが、その結果、文化プログラムの展開に当たってどのような課題が明らかになったのか伺います。

○小林生活文化局長 先月、ロンドン・オリンピックの組織委員会で文化プログラムを指揮したディレクターを初め、ロンドン市の文化部長、民間の芸術活動を支援するアーツカウンシル・イングランドのディレクターを東京に招き、意見交換を行いました。この中では、成功体験はもちろんのこと、反省点も数多く聞けたことが大変有益でございました。
 ロンドン大会の文化プログラムが成功した要因として、第一に強調していたことは、組織委員会を中心として、開催都市とアーツカウンシルが加わり、三者が一体となって取り組んだことを挙げておりました。また、数多くの無料イベントを、ロンドンだけでなく英国全土で展開したことで、英国はもとより、世界中から二千万人という多くの参加者が得られたことも挙げておりました。
 一方、反省点といたしましては、組織委員会の中に、文化プログラム部門とその責任者を設置したことがオリンピック開催の二、三年前となり、おくれたとのことが指摘がございました。
 東京大会において多彩で魅力的な文化プログラムを展開するには、多くの若手アーティストや民間の文化団体が活躍する場の提供が重要でありまして、それを推進するアーツカウンシルの体制強化が必要であるとの助言もございました。

○吉住委員 今、課題がさまざま挙げられました。
 東京大会での文化プログラムの展開に当たって、アーツカウンシル東京が重要な役割を果たしていくと思いますが、今後、多彩で魅力的な文化プログラムを実施していくためにアーツカウンシル東京をどのように活用していくのか、また、その機能をどのように充実していくのか伺います。

○小林生活文化局長 アーツカウンシル東京は、民間の芸術文化活動を支援する専門機関でありまして、昨年度、我が国で初めて都が設立したものでございます。
 ロンドン大会において、アーツカウンシルが担った文化面での大きな役割を考えますと、二〇二〇年の東京大会で多彩で魅力的な文化プログラムを展開していくためには、アーツカウンシル東京の体制を着実に強化していくことが重要であると考えております。
 そのため、まず来年度は、文化プログラムの具体化に向けた取り組みを進めるため、アーツカウンシルに国際戦略部門を新たに設置し、専門家を五名増員いたします。また、都におきましても、文化プログラムを担当する職員を三名増強し、アーツカウンシルとの連携を強化してまいります。

○吉住委員 体制強化に努めてください。
 続いて、防災対策について伺います。
 まず、減災社会の構築という観点から耐震化について伺います。
 都は、高度防災都市を目指して、特定緊急輸送道路沿道の建築物耐震化を条例で期限を切って推進しています。現段階では耐震診断は七五%を超えていますが、原則自己負担なしでの診断助成といった助成制度が活用されてきた結果であろうと思います。
 ところが、建物所有者としては、診断結果はわかったものの、耐震改修の具体的な内容、改修後も以前と変わらずに生活できるのかといった不安もあり、診断をした段階で立ちどまってしまうケースもあります。私も、建物所有者から、耐震改修を行うと使い勝手が悪くならないか、改修中は住めなくなるのではないかと耐震化への不安の声を聞いております。
 そうした現状を踏まえ、診断を終えて、耐震化が必要と判定された建物所有者に、実際の改修にまで進んでもらうためには、耐震改修に関する所有者の理解を深めることが重要と考えますが、都の見解を伺います。

○藤井東京都技監 建物所有者に耐震改修についての理解を深めてもらうため、都は今年度、改修事例の見学会を四回行い、毎回定員を上回る多くの申し込みをいただいております。参加者からは、改修実施を真剣に考えていきたいなどの感想が寄せられておりまして、来年度は実施回数をふやすとともに、マンションや業務ビルに加え、商業ビルなど、さまざまな事例の見学会を企画してまいります。
 また、ビルやマンションの改修事例を紹介した冊子につきましては、来年度、最新技術の紹介や居住性に配慮した事例など、内容をさらに充実させ、セミナーなどでの配布やホームページへの掲載により周知を図ります。
 これらの取り組みに加え、建物所有者の個々の事情に応じてアドバイザーを引き続き派遣するなど、診断を終えた建物所有者に耐震化を促してまいります。

○吉住委員 診断は進捗していますが、耐震化率一〇〇%が目標です。耐震化には、当然費用もかかります。工事費がどの程度かかるのかも見当がつかなければ、改修の段階には進めません。
 このため、診断実施後は速やかに補強設計をしてもらい、工事費用を明らかにしていくことが重要であると考えます。
 現状では、区市町村によって助成制度に違いがあり、建物所有者の自己負担額に差が見られる場合もあります。こうした建物所有者の実情を踏まえ、都としてどのように取り組むのか、見解を伺います。

○藤井東京都技監 耐震診断を終えた特定沿道建築物を補強設計につなげるため、都は、拡充された国の助成制度を活用いたしまして、本年一月から、区市町村が補強設計費用の六分の一を負担する場合、都の負担分を合わせて助成することで、建物所有者が費用負担をしなくて済むようにいたしました。
 補強設計の全額助成には、こうした区市町村の協力が不可欠であることから、助成制度の拡充を要請してきた結果、来年度からは八割を超える区市町村で全額助成が実施できる見込みでございます。
 都は引き続き、建物所有者が速やかに改修工事へと取り組むことができるよう、区市町村との会議などの機会を捉え、助成制度の拡充を強く働きかけるなど、特定沿道建築物の耐震化の早期実現に向けて全力で取り組んでまいります。

○吉住委員 一足飛びに耐震化が進んでいくことは難しいとは思いますが、耐震化をさらに進めていくために、今後も適切な予算措置がなされていくことが大切だと考えます。
 続いて、震災時における電源の確保について伺います。
 東日本大震災後、被災地の知人から、避難場所でトイレ、お風呂、下水道が使えなかった話、停電により明かりがない生活を余儀なくされたと聞いております。
 下水道局が震災時の下水道機能を確保するために、施設の耐震化や耐水化を積極的に進めていることは評価すべきと思います。
 しかし、下水を処理するためには、処理過程で多くの電源を必要とすることから、電力の確保も欠かせない取り組みです。実際に、さきの震災後には、計画停電や電気の使用制限により、都内の水再生センターやポンプ所において、下水道施設の運転管理に大変な苦労があったと聞いています。
 近年、首都直下型地震の発生が危惧されていますが、下水道局では、震災に伴う停電時において下水道機能を維持するために、どのような対応をとることとしているのか、また、そのために必要な電力をどのように確保するのか伺います。

○松浦下水道局長 下水道局では、震災時など停電の際にも、晴天時の下水処理や雨天時のポンプ排水機能を維持するために必要な電力を確保する取り組みを進めております。
 具体的には、都内にある水再生センターやポンプ所百八施設において、合わせて約九十万キロワットの電力を供給できる非常用発電設備の整備を進めております。今年度末までに七十四施設で整備が完了し、二十六年度には新たに堀切ポンプ所などで整備に着手し、七十八施設で整備が完了する予定であり、累計で約七十七万キロワット分の電力確保ができる見込みであります。
 今後とも、震災時においても必要な電力を確保する取り組みを進め、下水道機能を安定的に発揮してまいります。

○吉住委員 震災に伴う停電時における下水道の電力確保の取り組みについてわかりました。
 一方で、都内には震災時に都民が避難するための避難場所が多くあり、中には水再生センターの施設上部にある公園などが避難場所として指定されているものもあります。
 私の地元の落合中央公園も、落合水再生センターの施設上部を利用した新宿区が管理している公園で、震災時の避難場所として指定されています。震災時の物資については、区などが備蓄していると思いますが、電力の確保には、下水道局が設置している非常用電源などを活用できないかと考えるのですが、いかがなものでしょうか。

○松浦下水道局長 下水道局では、震災時などの停電の際に非常用発電機の電力の一部を、避難場所に指定されている上部公園などに供給する取り組みを進めております。
 都内にある二十の水再生センターのうち、落合や清瀬など八つの水再生センターの施設上部の公園などが避難場所として指定されており、今年度、これらを管理する新宿区や清瀬市など七つの区市と、震災時における電力供給の協定を締結いたしました。この協定に基づき、電力供給にかかわる施設の整備を今年度中に完了させてまいります。
 今後とも、震災対策を着実に進めるとともに、地元区市とも連携した対策に取り組み、都民の安全・安心を確保してまいります。

○吉住委員 いざ発災時には非常に助かると思います。
 続いて、被災地支援について伺います。
 東日本大震災から三年が経過しましたが、一日も早い復興を願わずにいられません。
 都はこれまでも、我が党の要望を踏まえ、発災直後に現地事務所を開設し、被災地のニーズを捉え、救援物資の搬送、震災瓦れきの受け入れ、応援職員の派遣など、被災地が必要とする支援に力を尽くしてきました。
 しかし、こうした支援にもかかわらず、復興への道のりは遠く、今も約二十七万人もの方々が全国に避難しており、都内にも約八千人の避難者がいます。
 去る三月十一日には、政府主催の追悼式が開催され、多くの犠牲者に哀悼の意がささげられましたが、犠牲者のみたまに対する最大の供養は、被災地の復興であろうと思います。重要なことは、みずから復興に取り組もうとする被災地を東京も全力で支援していくことだと思います。
 そこで、四年目に入った被災地支援についての都の基本的な考え方を伺います。

○中西総務局長 都はこれまで、被災地の一日も早い復旧、復興を果たすため、職員の派遣などさまざまな支援に取り組んでまいりました。現在、被災地では、被災者の生活再建に不可欠な災害公営住宅や、津波浸水区域からの高台移転を進める防災集団移転促進事業等の復興事業に本格的に着手したところであり、来年度以降、ようやく成果があらわれてくる段階でございます。
 こうした被災地の状況を踏まえると、今後も手を緩めることなく、被災者の生活再建等、被災自治体が抱える喫緊の課題解決に向けた支援に取り組むことが必要だと考えております。
 都は、引き続き、復興の状況やニーズの変化を的確に把握しながら、被災地を強力に後押ししてまいります。

○吉住委員 被災自治体が抱える喫緊の課題解決に向けた支援に取り組むとのお答えでした。
 昨今、平常時においては被災地の現状を伝える報道が減ってきていた中で、応援職員の確保が思うように進まず、被災自治体の幹部が派遣要請のために全国行脚をしているとお聞きしました。被災地の復興を力強く後押しするためには、継続的な職員派遣が必要であると考えますが、被災自治体への職員派遣について、これまでの実績を伺います。

○中西総務局長 都はこれまでも、警察、消防を合わせて延べ三万人を超える職員を被災地に派遣し、総力を挙げて被災地を支援してまいりました。具体的には、発災直後の救出救助活動、避難所の運営や壊滅的な被害を受けた町の復旧、復興、被災者の生活再建など、さまざまな業務に職員を派遣してまいりました。
 平成二十四年九月には、甚大な津波被害を受けた市町村を中心に技術職員の不足が深刻化したことから、都が全国に先駆けて、行政OBや民間経験者四十七人を任期つき職員として採用し、被災地へ派遣したところでございます。現在、技術職員六十六人、事務職員三十二人の総勢九十八人を被災地に派遣しており、全国二番目の兵庫県の五十六人と比較しても、群を抜いた派遣数となってございます。

○吉住委員 都が積極的に応援職員を派遣してきたことがわかりました。
 現地では、インフラの復旧が、用地確保ができないためにおくれていると聞いております。沿岸部では、津波の被害を防ぐため、従来よりも高い防潮堤の早期建設が課題となっていますが、そのためには土台部分の土地を広くとる必要が出てきます。
 しかしながら、土地の権利者調整が足かせとなり、用地交渉が進まず、建設がおくれていると聞いております。このような例も含めて、岩手県だけでも、県が取得する用地の権利者約一万二千人が、相続の未処理、抵当権抹消など困難な事情を抱え、その調整に当たる職員が不足しているといわれています。
 そこで、来年度、用地取得など被災地の喫緊の課題解決に向けた職員派遣にどのように取り組むのか、お伺いします。

○中西総務局長 防潮堤の復旧に係る用地取得など被災地が直面する喫緊の課題に対し、必要とされる職員を的確に派遣することは、早期復興を後押しする上で重要でございます。
 そこで、来年度は用地取得に従事する職員を今年度の二倍を超える十二人にふやし、インフラ復旧の加速化に貢献してまいります。また、被災者の住まいの再建のため、災害公営住宅の建設や復興まちづくりを支援する技術職員、被災地の経済再生のため、税務や補助金交付等の行政実務にたけた事務職員など、総勢百人を超える職員を派遣いたします。
 都は、被災地が直面する課題の解決に向け、重点的、効果的な職員派遣を行い、被災地の早期復興を全力で支援してまいります。

○吉住委員 東日本大震災の被害は余りにも甚大で、被災自治体の行政機能は著しく損なわれました。東京が全国に先駆けて支援してきたことに、敬意と共感を持っております。
 東北が真の復興をなし遂げるためには、地元の住民、企業、自治体が一体となって主体的に復興に取り組む必要があります。その舞台を整えるまで、その舞台の完成を見届けるまで、ぜひとも引き続きの支援をお願いします。
 続いて、エネルギー施策について伺います。
 持続可能な経済成長は、エネルギーの安定供給が不可欠です。エネルギーの大消費地であり、福島や新潟に電力を依存している東京は、遠隔地の電力だけに頼るのではなく、分散型電源を普及させ、首都東京の電力安全保障を高めなくてはなりません。
 とりわけコージェネレーションシステムは、通常時には熱を有効に活用することで、省エネルギーや低炭素化が可能となります。また、非常時には一定の電源を確保することができ、電源の多元化により、防災、危機管理機能を高められます。
 都は、二十五年度からオフィスビル等へコージェネレーションを導入する際の補助制度を実施していますが、現在の制度の概要及び効果などについて伺います。

○長谷川環境局長 お尋ねの事業は、分散型電源の普及や防災力の向上の観点から、民間都市開発などでコージェネレーションシステムを導入する場合に、設置経費の一部を補助する制度であり、事業期間は五年間でございます。
 今年度の交付決定件数は十件であり、これにより今後五万六千キロワット分の設備が導入されることとなります。補助制度開始前の都内での導入実績は、二十三年度が五千キロワット、二十四年度は一万四千キロワットであったことを見ますと、この補助制度は、都内への分散型電源の導入に大きく寄与しているものと考えております。

○吉住委員 制度の概要は理解しました。
 初年度に、予算額三十億円のうち、かなりの部分を交付決定したやに伺っております。補助制度はイニシャルコストの軽減につながり、コージェネレーションシステムの導入促進に貢献していることもよくわかりました。
 一方で、国も同様な補助制度があると伺っております。国と都の制度では、どのような違いがあるのか伺います。

○長谷川環境局長 都の制度は国と異なり、ビルエネルギーマネジメントシステム、いわゆるBEMSの導入を条件としております。これにより、コージェネレーションシステムの最適運転や空調、照明などのきめ細かな制御が可能となるため、無理なくピークカットや省エネが実現でき、電力系統に対する負荷の平準化も可能となります。
 また、コージェネレーションシステムを大規模な施設に導入する場合には、帰宅困難者の一時滞在施設の設置と、災害時にその施設に電力供給することも条件としております。これが都の制度の特徴の一つでございまして、これによって、オフィスビル集積地域における帰宅困難者対策にも寄与するものと考えております。

○吉住委員 国の制度と違い、さまざまな政策、防災に対する目的や省エネについて配慮された制度だと理解しました。
 今後、さらに分散型電源を進めるためには、経済的な支援だけではなく、さまざまな支援策が必要であると考えますが、普及拡大のためにどのように取り組むのか伺います。

○長谷川環境局長 お話のとおり、分散型電源の普及には多面的な取り組みが必要でございます。
 そこで、まず制度面の誘導策として、キャップ・アンド・トレード制度の対象となる大規模事業所において、高効率なコージェネレーションシステムから供給される電力や熱を受け入れた場合には、低CO2として評価する仕組みを新たに構築いたします。
 また、コージェネレーションシステムの実際の運転状況のデータを収集、分析した上で、今後導入を検討している事業者に、その効果や実績などの情報を提供することで、さらなる普及促進につなげてまいります。こうしたソフト面の支援策をあわせて実施し、分散型電源の普及促進に努めてまいります。

○吉住委員 続いて、水道事業におけるエネルギー対策について伺います。
 安全でおいしい水を供給することは、水道事業者の責務でありますが、都の浄水場の多くは低地に位置しており、安定給水の確保には、ポンプによる送水など多くの電力を使用せざるを得ません。
 我が党は、第四回定例会で、水道施設の更新にあわせ抜本的なエネルギー対策を講じていくべきであると提言をしました。水道施設の再構築は、これまで培ったさまざまな技術を集約し、東京の地形特性を踏まえた低エネルギー化を図る絶好の機会ですが、どのような取り組みをするのかお伺いします。

○吉田水道局長 都の浄水場の施設能力の七割は高度経済成長期に整備したものであり、今後本格的に更新時期を迎えます。このうち、最も早く更新に着手します境浄水場では、貯水池との約二十メートルの標高差を生かし、取水する全量を小水力発電に利用するとともに、浄水処理した水は自然流下により給水所へ送水するなど、水が持つ位置エネルギーを最大限活用してまいります。
 また、それ以降に更新する浄水場においても、位置エネルギー利用の観点から、浄水場の施設配置を最適化することや、コージェネレーションシステムを採用した発電設備の導入などにより、エネルギー効率を向上させてまいります。
 こうした取り組みを、今回新たに策定する東京水道エネルギー効率化十年プランに反映させ、エネルギー効率の高い水道システムの構築に全力で取り組んでまいります。

○吉住委員 境浄水場がさまざまな工夫により生まれ変わり、エネルギーの効率化、危機管理の充実、安定給水の確保と、一石三鳥の省エネルギー浄水場になることがわかりました。
 東京水道は、国際貢献として海外へ技術を輸出していますが、欧米の水道事業においても、効率的なエネルギー利用について、さまざまな取り組みが進められていると聞いています。海外の水道事業体との間で取り組み事例に関する知見を交換し、互いに切磋琢磨して、よりエネルギー効率のよい水道システムの実現に向けていくべきと思いますが、見解を伺います。

○吉田水道局長 水道局ではこれまで、国際水協会やC40などが開催する国際会議の場を活用し、当局のすぐれた技術を発信してまいりました。各国の水道事業体には、事業運営上、電力を大量に消費するという共通の課題があり、他の事業体で実施しているエネルギー対策の事例を収集し、相互の技術向上に役立てていくことは、この課題を解決していく上で効果的であります。
 そこで、東京が先導して、ITを活用し、事例の蓄積や知見の交換を行う新たな仕組みを検討してまいります。また、水道技術に関する国際会議は、例年、世界各地で開催されますが、特に二〇一八年には、国際水協会の世界会議が東京で開催され、六千人規模の関係者が集まります。この会議に向け、エネルギーに関する分科会の開催を働きかけるなど、さまざまな取り組みを通して、世界の水道事業体と先進事例を共有し、エネルギー対策を強化してまいります。

○吉住委員 最後に、地方自治における参政権問題についてお伺いいたします。
 数年前に、永住外国人の地方参政権付与が国会で取り沙汰されようとしたことがありました。その折、多くの国民が反対の声を上げ、私ども都議会自民党も、全国の組織に呼びかけて反対運動を展開いたしました。
 参政権とは、国民固有の権利であり、地方自治体も国家を形成する一機関である以上、国益や都民、国民の安全や暮らしを守る上でも、慎重な上にも慎重に扱うべきものであります。
 ここのところ、海外では慰安婦像の設置運動や日本海と東海の併記と、地方自治体に対する外国からの圧力が現実政治に影響を及ぼしています。
 私が住んでいる新宿区は、一〇%以上の住民が外国籍で、百十カ国以上の方の籍がある、国際色豊かな町であると同時に、市谷には防衛省があり、北朝鮮による弾道ミサイル発射に関する情報が入ったときにはPAC3が配備される、安全にかかわる重要な地域です。平常時において、外国籍住民の意見をどのように酌み取っていくかは配慮が必要ですが、物事の結論を出すことについては、日本国民が責任を持つべきだと思います。
 例えば、特定の地域を、多国籍化を誘導する特別な地域に指定すべきだとか、PAC3等武器を持ち込んではならない地域に指定すべきだとか、都民、国民の暮らしや安全にかかわる事項が争点となるときに、日本国籍を持たない人たちが参政権を持っているという場面を想像すると、違和感があります。
 私が初めて選挙に立候補したときに訴えたことは、多国籍地域における秩序の回復でありました。興味本位な報道による誘導や行政主体の観光地化が地元住民の生活に与える影響を訴え、環境浄化、秩序の回復を訴え、初当選をさせていただきました。
 今回は、政治活動の原点に立ち返り、国際化がもたらす地方自治への影響を念頭に、地方自治と参政権の関係について伺わせていただきます。国際政治学者でもいらっしゃる知事が、地方自治における参政権問題について、どのような見解をお持ちかお伺いします。
 これは、自治基本条例というものをつくることが流行している中で、区民の定義が、例えば在勤、在学、在活動者、あるいは法人も含む、さまざまな地方自治の学識研究者によって誘導されてまいります。誰が決定権者なのか、そういうことも踏まえて、この質問をさせていただきました。

○舛添知事 本会議でも申し上げましたとおり、地方政治に関してであれ、その国で政治的な権利を行使しようとするならば、国籍を取る、帰化すべきだというのが私の考えであります。
 地方自治体でありましても、ご質問にありますように、国の安全保障の問題、あるいはその自治体の中だけにとどまらないで、広く全国に影響を及ぼす国家的な問題とも無縁ではありません。その自治体の区域の中には、今おっしゃったように、市谷のような自衛隊や米軍の基地のような施設、あるいは空港や主要な道路、発電所やダムといった広く国民の生活を支える重要なインフラが存在している場合もあります。地方の首長や議会は、その地域の中でさまざまな影響力を行使し得る立場にあります。だからこそ私は、政治的な権利を行使するなら国籍を取るべきだと主張しているわけであります。
 加えて、本当に大事なことは、日本人と日本で暮らしている外国人の方が、互いにルールを守りながら、阻害し合うことなく生活していくことではないか、そういう東京にしていきたいと思っております。

○宇田川委員長 吉住健一委員の発言は終わりました。(拍手)

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