予算特別委員会速記録第三号

○中屋副委員長 高倉良生委員の発言を許します。
   〔中屋副委員長退席、東村副委員長着席〕

○高倉委員 三年前の三月十一日、東日本大震災が発生し、東京では、帰宅困難となった人を迎えに都心方面に向かう車や、あるいは都心から外に向かう車が一気に集中をしまして、救急車が走れなくなるような事態が生じました。大災害のときには、こうした大渋滞のほかに、道路の損壊、また道路沿いの建物の倒壊、あるいは火災によって通行が難しくなるわけであります。
 これに対して、私ども都議会公明党は、災害時に道路交通を確保する手段としまして、道路状況の情報をドライバーに提供するシステムの導入を訴えてまいりました。
 これを受けて都は、新しいシステムの開発を進めまして、昨年、東京で開催をされた高度道路交通システム、ITS世界会議で、新システムのデモンストレーションを行ったわけであります。
 この新システムは、早期に実用化を図るべきと考えますが、システムの内容と実用化に向けた取り組みについて伺います。

○河合青少年・治安対策本部長 ご指摘の新システムは、震災時におけるドライバーの安全確保や救急車などの緊急車両の円滑な通行を確保するため、交通規制や火災の状況、また、自動車から発信される走行地点等を示すプローブ情報を利用した通行可能な道路の情報など、官民が保有するさまざまな情報を地図上に一元化して表示し、スマートフォンなどを活用して迅速かつ的確に提供するものであります。
 これまで当本部では、このシステムの実現に向け、都の防災部門や警視庁、東京消防庁などの関係機関と連携して検討を進めてまいりました。
 現在、その成果を踏まえまして、システムの運用に当たって、情報の発信が円滑に行えるよう、運用のルールなどについて、関係機関と詳細事項を詰めております。二十六年度中の実用化を目指し取り組んでいるところであります。

○高倉委員 ビッグデータといわれる情報の活用が、現在、注目されております。プローブ情報ということでありますが、車のカーナビから収集をされる位置情報、また、速度情報のことで、これもビッグデータでございます。
 私たちが日常的に使っている携帯電話やスマートフォンから出る情報、また、乗り物に乗るときに、Suica、PASMOといったものから出てくる大量の情報もビッグデータということになるわけであります。従来、価値ある情報というふうには見られておりませんでしたけれども、これらが集積をして巨大な情報になったときに、有用な情報を得ることが可能になりました。
 東京都も、カーナビのデータ活用を既に始めていると聞いています。平成二十五年度の職員提案制度で優秀賞をとりました都内の三百六十五日の交通実態がわかる東京都交通情報管理システムの開発がそれであります。
 このシステムはどういうものでしょうか。

○横溝建設局長 東京都交通情報管理システムは、委員お話しのとおり、カーナビゲーションから発信される走行履歴など、いわゆるビッグデータを用いて開発したものでございます。
 本システムでは、入手した最新の走行データに基づきまして、主要な道路において、時間帯別に自動車の走行速度や交通量などを地図上に色分けして表示でき、交通状況の把握が容易になりました。
 これをもとに、道路の整備計画を策定する際の交通上の問題箇所の抽出及び整備後における渋滞緩和や所要時間短縮等の効果検証に活用ができるものでございます。

○高倉委員 今、紹介をしていただきましたこのシステムは、カーナビのプローブ情報、つまり、個々の車のカーナビから収集をされる位置や速度などの情報を、非常にうまく活用した事例であると思います。
 このプローブ情報は、交通安全対策に役立てていくことが私は可能だと思っています。カーナビから集まってくる車の位置情報や移動時間のデータ、これを加工して抽出をしますと、例えば、車がいつも急ブレーキを踏んでいる場所、こういったものが特定をされてきます。また逆に、いつもスピードが出ている区間、こういったものも明らかになってくるわけであります。
 その情報を電子地図上に落とせば、都内全体の交通危険箇所といったものがどこにあるか、これがおのずと浮かび上がってくるわけであります。それをもとに、危険箇所への対策を講じていけば、例えば、通学路の交通安全にも大きな効果を発揮すると思います。自動車メーカーと連携して取り組んでいる埼玉県の事例もございます。
 そこで提案をいたしますけれども、民間事業者の協力を得ながら、交通安全対策にビッグデータとしてのプローブ情報を積極的に活用すべきと考えますが、見解を伺います。

○河合青少年・治安対策本部長 交通事故を一件でも多く減らしていくためには、行政機関はもとより、民間事業者や都民の方々も含め、官と民とが連携し、プローブ情報など、先進的なITSの技術も取り入れながら、交通安全施策を一体的に推進していくことが重要であります。
 道路上の危険箇所につきましては、事故発生データ等によって把握しておりますけれども、お話のとおり、民間事業者が保有するプローブ情報からは、急ブレーキ発生箇所とその時刻、走行方向などが抽出できるため、事故には至っていない潜在的な危険箇所を把握できる可能性があります。
 都は、今後、より安全で快適な道路環境の実現に向け、プローブ情報を調査、解析し、交通安全対策への活用を検討するなど、関係機関と連携して、ITSを活用した交通施策を展開してまいります。

○高倉委員 それでは、次に、障害のある方々の芸術文化活動について質問させていただきます。少々時間をいただきまして、ちょっとご紹介をしたいなと思います。
 今、日本人作家によりますアール・ブリュットという芸術の作品が、ヨーロッパで大変大きな評価を受けております。
 アール・ブリュットは、生の芸術という意味であります。専門の美術教育を受けていなかった人たちが、既存の価値観にとらわれることなく、心の中から湧き上がるままに表現をする芸術であります。
 この芸術は、ヨーロッパが発祥の地でありまして、障害のある人だけではなく、社会的な生活困窮者、また精神の病を持つ人など、幅広い人による芸術であります。ヨーロッパでは、さまざまな美術館に作品が収蔵されておりまして、精神病院を改装した美術館もあるわけであります。
 日本国内では、戦後、滋賀県での陶芸活動からこの芸術がスタートしておりますけれども、作品といいましても、施設や病院の中などで、個人が心の赴くままに制作をしていたものでありますので、なかなか日の目を見ることがなかったわけであります。しかしながら、そうした作品の芸術性に注目をする人々によりまして、日本のアール・ブリュットが大きく前進をすることになりました。
 ここで、アール・ブリュットの作品というのはどういうものか、幾つか紹介をしたいと思います。(パネルを示す)
 この写真は、滋賀県在住の澤田真一さんの作品でございます。精密な陶器の作品をつくる作家として知られておりまして、昨年は、ベネチア・ビエンナーレで世界の約百五十人に選ばれて出展をされた方であります。
 この写真は、島根県の勝部翔太さんの作品でございます。お菓子の袋の口を縛るアルミ製のアルミタイ、これは皆さんご存じだと思いますが、これを使って小さな人形をつくるのが得意な方でありまして、これは戦う人、戦士の小さな人形であります。
 これは、滋賀県の古久保憲満さんの作品でありまして、世界で起こっている出来事をネット等々で調べまして、自分なりに解釈して、大きな作品で描いていると。横九メーターぐらいあるそうでありますが、完成をしますと、もっと大きな十メーターぐらいの作品になるというふうに聞いております。
 このアール・ブリュットを発信する国内の拠点としましては、滋賀県近江八幡市にありますボーダレス・アートミュージアムNO-MAが大変有名であります。滋賀に次いで、最近では東京で愛成会という社会福祉法人が先頭に立ちまして、活発な活動を展開しております。
 この写真です。日本のアール・ブリュット作品が海外で大きな注目を集める転換点になりましたのが、二〇一〇年にパリ市立アル・サン・ピエール美術館で開催をされましたアール・ブリュット・ジャポネ展でございます。
 この作品展では、日本の作家の作品が多数展示をされまして、十カ月で十二万人もの観客が訪れまして、日本作品の芸術性が大きく注目をされたわけであります。
 このジャポネ展を見たオランダのドルハウス美術館の館長が感動しまして、ぜひオランダでもということで、日本作品のヨーロッパ巡回展というのが既にもうスタートしております。
 この巡回展ですが、オランダ、ロンドンと続きまして、この写真はロンドンでありますが、昨年のロンドンでの展覧会では、三カ月で約十万人が訪れるという大変な注目を浴びたわけであります。
 ロンドンの地下鉄の駅にもポスターがこのように張られました。この展覧会は、現地の新聞各紙を総なめにするほどの大反響でありまして、BBC放送の取材チームが日本に取材に来たといったこともあったそうであります。
 もちろん、日本国内でもさまざまな活動が展開されておりますけれども、海外で大きな反響を呼んでいることを知っていただきたく、駆け足で最近の動きをご紹介させていただきました。
 アール・ブリュットは、障害のある人だけの芸術ではないと先ほど申し上げましたけれども、国内では障害のある方々が多く取り組んでいます。こうした作品づくりは、希望を持ってあすに向かって生きる大きな力になるものであります。
 そこで、まずお伺いしますけれども、障害のある方々の芸術文化活動を東京都は積極的に後押しする必要があると考えますが、所見をお伺いします。

○小林生活文化局長 障害者の芸術文化活動は、その芸術性が国内外において高い評価を得る事例も多く、活動を支援することは極めて重要であるというふうに認識をしております。
 都は、東京都美術館におきまして、障害者アートが一般的に認知されていない時代から、全国に先駆けて展覧会を開催いたしました。また、障害者アートの展覧会の会場の提供や、障害者とともに行う音楽活動の共同開催など、民間団体の活動も支援をしてまいりました。
 来年度は、東京都美術館におきまして、リニューアルを機に開始した新たなプロジェクトの一環として、知的障害者の作品の展覧会を開催するほか、障害のある子供たちと芸術家が創作活動を行うワークショップを実施して、障害者の芸術活動の機会をふやす取り組みを強化してまいります。

○高倉委員 このアール・ブリュットにつきましては、昨年の十月には文部科学省で初めての作品展が行われております。国の平成二十六年度の予算案にもアール・ブリュットなどの芸術活動を支援する関連経費が計上されまして、取り組みが始まろうとしております。(パネルを示す)
 一方、東京都内では商店街の積極的なかかわりを得て、町全体を美術館にするようなイベントといったものも開催をされております。
 この写真は、中野区の中野駅北口にありますサンモール商店街、あるいはブロードウェイ商店街で開催をされておりますアール・ブリュットのイベントでありまして、商店街のメーンの通り、それから、この階段とかで作品の写真を紹介しているわけであります。中野ブロードウェイ商店街といいますのは、オタクの聖地として知られておりますけれども、現在はアール・ブリュットの発信拠点にもなっているわけであります。
 昨日、我が党の長橋政調会長が、芸術文化によるまちづくりを訴えましたけれども、まさにそうした活動であるといえるものであります。
 ヨーロッパの巡回展では、関係者が都内の廃校になった学校の体育館とか教室を使わせてもらって、苦労して全国から作品を集めて現地に発送しているという取り組みがありました。これからは作家の発掘、また、作品の収蔵などにも応援が必要でありますし、知的財産の保護をどうするか、こういった大きな課題もあるわけであります。
 また、広く都民や国民に芸術としてのすばらしさを知ってもらうためには、展覧会を開く場所の提供といった支援もあろうかと思います。世界から大きな評価を得ている日本のアール・ブリュットについて、東京は積極的に支援をすべきと思いますが、見解を伺います。

○小林生活文化局長 都は、平成二十二年に民間の実行委員会と協力して、都議会議事堂の都政ギャラリーと都庁展望室において、アール・ブリュットの作品展を開催いたしました。
 都政ギャラリーでは十六人の作家、約六十点の作品を、展望室ではパリで行われたアール・ブリュット・ジャポネ展に出展した二十作品の写真パネルを展示し、都庁を訪れた多数の方々にごらんをいただいたところでございます。
 今後も、都立文化施設などを活用しながら、アール・ブリュットを初めとした障害者の創作活動への支援や作品発表の機会の充実を図ってまいります。

○高倉委員 知事もこの芸術については大変ご理解があると思います。このアール・ブリュットは、国際的に高く評価をされておりますけれども、これは障害者だからという理由ではなくて、まさにすぐれた芸術性が高く評価をされているものであります。
 障害があってもなくても、普通に芸術文化の活動ができること、すぐれた作品を生み出し、アーティストとして活躍できることをアール・ブリュットの作家の方々が示しているわけであります。
 もし行政の側からの取り組みがあるとすれば、いわゆる福祉の視点からの支援ではなくて、すぐれたアーティストの才能を開いていくためのお手伝いをしていくといったことになろうかと私は思います。障害者の芸術文化の新たな未来を開く可能性を秘めているのが、このアール・ブリュットの作家の皆さんであると思います。
 成熟した都市として、東京を文化の面でも世界一とするために、こうした障害者アートの支援に全力を入れるべきと思いますが、知事のご見解をお伺いします。

○舛添知事 まず、高倉委員が非常にすばらしい芸術、特にアール・ブリュットについてご質問してくださったことを大変感謝いたします。
 私が四十年前、パリに行ったときに、一番好きだった画家の一人がジャン・デュビュッフェであります。この人が提唱したのが、このアール・ブリュット。精神病院とか監獄、牢屋に行って、見て、こんなすばらしい絵を描いている人がいると。それを集めてコレクションやったのがジャン・デュビュッフェです。
 きょう高倉先生がご質問なさるというので、きのう久しぶりにジャン・デュビュッフェの本を読み直しまして再認識させられましたけど、そしてまた、アール・ブリュットというのはフランス語なんで、いいにくいと思いますけど、その言葉をお使いになったことを非常に私は高く評価いたします。
 先生のこの資料で、皆さん、地下鉄のところをちょっとごらんください。ちょっと見せてください。このポスターのSouzou、スーズと書いてありますね。この下の英語をちょっと見てください。アウトサイダー・アート・フロム・ジャパンと書いてあるのです。アウトサイダー、この言葉を使いたくないんですよ。アウトサイダーというのは何か、のけものとか、よそ者という意味になりますね。だから、その感触はアール・ブリュットというフランス語にはなくて、手を加えない、加工しない、生のものだという感じがアール・ボフットという、正確に発音するとアール・ブルットというんですけれども、英語に直しちゃうと、アウトサイダーになると、何となく語感がよくないんで、私はぜひ皆さんにお願いしたいのは、この言葉は使わないでくださいと。我々はアール・ブリュットでいきましょうと。
 そして、そういう意味で、二〇二〇年、パラリンピックもございます。ぜひ、私は芸術文化で世界一の町を目指したい、都市を目指したいというときに、こういう方々の芸術というのは非常に高いもの、価値がありますので、ぜひ二〇二〇年に世界中のすばらしいアール・ブリュットを集める展覧会を、例えば東京都美術館でやるというようなことをやりたいと思っていますので、ぜひこれは都議会の皆さん方と協力して、このアール・ブリュットをさらに日本で進めていきたいということで、ぜひ。
 それから、もう一つ申し上げますと、私はスイスにおりましたけど、スイスのローザンヌに実はこのジャン・デュビュッフェが集めたアール・ブリュットの美術館がございますので、そういうところとも連携をしながら、このアール・ブリュットをさらに東京で進めていきたいと思っております。ありがとうございました。

○高倉委員 知事の大変含蓄のあるご答弁いただき、本当にありがとうございます。
 実は、今月の末から、スイスにザンクト・ガレン市という市があって、ここにラガーハウスミュージアムという美術館があります。(パネルを示す)ここで日本の作品展が開かれます。私、昨年、ここの館長さんとお会いしましたけれども、大変、日本の作品に関心の高い方でありました。ここには東京の作家の方の作品を含めて、四百五十点ほどが展示をされるというふうに伺っております。
 実は、ことしが日本とスイスの国交樹立百五十周年なんですね。そして、今、知事がおっしゃられたように、アール・ブリュットの世界で最も著名な、中心的なアール・ブリュット・コレクションという美術館があるのもスイスであります。
 実は、スイスはIOCの本部もあるんですよ。本当に知事、ジュネーブの方で研究生活を送ってこられたというお話をお聞きしておりますけれども、ぜひ今回のこの展覧会にもしっかり応援をいただいて、一生懸命、東京はこうした文化に取り組んでいるんだということを発信していただきたいというふうにお願いしたいと思います。
 それでは、続いて質問をいたします。
 一昨年、都が公表しました東京湾北部地震による被害想定では、負傷者が十四万七千六百人、うち重傷者が約二万千九百人発生することが想定をされています。
 都は、東日本大震災以降、東京都災害医療協議会を設置して、災害医療体制のあり方についてを取りまとめました。この報告書では、全ての病院を災害拠点病院、災害拠点連携病院、災害医療支援病院に分類しまして、平成二十四年十一月に修正をした東京都地域防災計画の中で、それぞれの具体的な役割を明確にいたしました。
 災害拠点病院は、主に重傷者の収容、治療を行う病院として、報告書策定時には都内七十病院を指定しておりましたけれども、その後の状況についてお伺いをいたします。

○川澄福祉保健局長 都は、一昨年四月に公表した東京湾北部地震及び多摩直下地震の被害想定に基づき、二次保健医療圏ごとの医療資源や病院の収容能力を踏まえて、災害拠点病院の必要数を検討し、順次、指定の拡大を図っているところでございます。
 今年度は新たに五病院を指定し、現在、七十五の病院がその機能を担っております。また、来年度においても五病院を追加指定する予定でございます。
 今後とも、災害発生時に重傷者を確実に受け入れられるよう、災害拠点病院の整備を進めてまいります。

○高倉委員 一方、東京湾北部地震の被害想定では、火災による重傷者は約四千九百四十人と想定をされております。五千人近い重傷の方であります。
 東京DMAT運営協議会の会長で杏林大学救急医学教室教授の山口芳裕先生は、重症の熱傷患者が多数発生することにつきまして、一つには治療法の開発や準備、二つには患者の収容や搬送、そうしたことに大きな課題があるというふうに指摘されています。
 発災直後には建物の倒壊、火災の発生等によりまして、多数の外傷患者が発生して、病院に殺到することが予想されます。特に木造住宅密集地域などで火災が発生をした場合には、多数の重症熱傷患者が発生すると考えられます。
 これらの患者に対する都の対応を伺います。

○川澄福祉保健局長 都では現在、全ての災害拠点病院に熱傷用医療資器材を配備するとともに、重症熱傷患者を都内二十六施設の救命救急センターで受け入れる体制を確保しているところでございます。
 また、圏域ごとに設置している地域災害医療コーディネーターが、東京都災害医療コーディネーターと連携し、重傷者の収容先医療機関を調整する仕組みをつくっております。
 さらに、二次保健医療圏ごとに地域災害医療連携会議を設置し、災害拠点病院を中心に、全ての医療機関が連携協力して、熱傷などの重傷者を受け入れる体制づくりを現在進めているところでございます。

○高倉委員 災害時におきましては、地域災害医療コーディネーターが収容先の調整を行うということでありますけれども、大規模災害発生時には、建物の倒壊や火災の発生によりまして道路が寸断され、孤立する地域が発生する可能性があります。
 また、同時に多数の熱傷負傷者が発生をした場合に、地域の災害拠点病院だけでは対応が困難になることも想定をされます。
 こうした事態に備えまして、負傷者を被災していない地域に搬送するなど、多様な搬送体制を確保することも重要であると思いますが、都の見解をお伺いします。

○川澄福祉保健局長 都は現在、災害時に多数の傷病者が発生した場合に備え、消防、警察、自衛隊等との関係機関や民間事業者等と連携し、救急車、ヘリコプター、船舶等による搬送手段を確保しており、災害時には都や区市町村が設置する災害医療コーディネーターが中心となって、搬送手段や搬送先の調整を行うこととしております。
 また、航空機等を活用し、負傷者を遠隔地へ迅速に搬送するため、広域医療搬送拠点臨時医療施設を都内三カ所に設置する予定であり、平成二十六年度からの開設を目指し、現在、関係機関と調整を行っているところでございます。
 今後、実践的な訓練も重ねながら、多様な搬送体制を確保し、災害医療体制の強化を図ってまいります。

○高倉委員 今、搬送体制のお話がございましたけれども、一方で重症熱傷、やけどの重症の熱傷の患者の治療には大きな課題があります。
 人間は体の表面の三〇%以上に熱傷が生じますと、全身に影響が出るというふうにいわれております。以前は、熱傷で死亡する場合には、熱傷ショックということで亡くなる方が多かったんですが、最近は治療が進歩しまして、かわって、細菌の感染による敗血症でもって命をなくすという例がふえているわけであります。
 したがいまして、この重症の熱傷の患者の救命には、その熱傷、やけどの部分を早い段階で、ほかの皮膚で覆っていくという必要があるわけであります。最近は、人工の皮膚が開発をされまして、自分の皮膚のかわりに熱傷面に移植をする治療といったものも行われているわけであります。
 また、必要なときに移植を行えるように、皮膚を準備しておく日本スキンバンクネットワークといったものも設立をされております。東京都内でも救命救急センターを中心として、十五医療機関がこのネットワークに参加をしまして、患者の救命に活用されているわけであります。
 しかしながら、こうしたバンクも含めて、そういったところに保存されている皮膚は数に大変限りがあるわけでありまして、先ほどこちら、災害のときに約五千名の重症のいわゆる熱傷の患者が発生する可能性があるといいましたけれども、こういった災害のときに、大量の重症熱傷の患者が発生した場合に、全く不足して対応できないという状況が実はあるわけであります。
 本当にこうした対応、この医療体制は、私、大変重要だと思っております。きょうは指摘をさせていただきますけれども、ぜひ、このことについてしっかり対応、またご検討いただきたいというふうに思います。
 それから、先ほど広域医療搬送の答弁がありましたけれども、今回の代表質問で我が党の中嶋幹事長が、災害時の多目的船、いわゆる病院船のことを取り上げました。
 先週の三月六日に参議院の予算委員会で、公明党の長沢広明議員が、ことしの病院船導入に向けた実証訓練については、首都直下地震を念頭にして、東京湾上で行うべきであるということを質問したのに対して、古屋防災担当大臣からは、東京湾内での実証訓練を想定しているといった具体的な答弁がなされました。
 実証訓練が東京湾で実施をされる場合に、都は国に対して協力を行うべきと思いますけれども、見解を求めます。

○中西総務局長 現在、国が来年度予算に計上している病院船実証訓練につきましては、東京湾で実施することを想定して検討が進められていると聞いております。
 国の実証訓練は、民間の旅客船をチャーターして、当該船舶の車載スペース等に医療資機材を積み込み、船内で展開の上、複数の医療行為を実証するものとされております。こうした国の実証訓練に都も協力などを行っていくことで、負傷者の搬送等、病院船活用に際して想定されるさまざまな課題を検証することが可能となります。
 このため、今後とも引き続き国の検討状況を注視しつつ、東京湾で実証訓練が実施される場合には、関係機関と連携しながら、必要な協力を行ってまいります。

○高倉委員 次に、大規模災害発生時の通信確保について質問いたします。
 帰宅困難者対策の柱であります一斉帰宅の抑制のために、現在、都立施設を初め、民間事業者にも協力をいただきながら、一時滞在施設の確保が進んでおります。ただ、帰宅困難者がそこにとどまり続けるためには、家族と安否確認をとれるかどうかが重要であります。
 都議会公明党はこれまで、一時滞在施設で災害時でも通信環境が確保できますように、特設公衆電話の整備、また、無線LAN環境の整備を求めてまいりました。
 そこでまず、一時滞在施設に指定された都立施設における災害時の通信環境について、整備状況をお伺いします。

○中西総務局長 大規模災害の発生時には、多くの帰宅困難者が一時滞在施設に待機することから、一定期間、家族などとの安否確認や、必要となる災害関係情報を収集できる環境整備が不可欠でございます。
 このため、昨年度、都立施設を活用した一時滞在施設に、通信の制約を受けにくい特設公衆電話を設置いたしました。
 さらに、今年度内には、設置が可能な施設について、インターネットやSNSを活用できるアクセスポイントの整備を完了する予定でございます。

○高倉委員 東日本大震災におきましては、携帯電話の基地局の多くで電波がとまったわけであります。そのために、通信事業者は現在、衛星アンテナを持つ移動型の基地局の車両、また、持ち運びができる衛星アンテナ基地局の配備といったものを進めていると聞いています。
 しかしながら、東日本大震災においては、避難場所になっていた学校などに、この持ち運びのできる基地局を事業者が持っていって設置をしようとしたときに、事前に十分な意思疎通ができなかったために、設置がスムーズに進まなかったといった事態もあったわけであります。
 主な通信事業者は、現在、災害対策基本法に基づいて指定公共機関に位置づけられ、応急的な措置を行う際には、行政機関に応援を求めることができるわけであります。
 通信設備の応急措置が円滑に行われますように、都は通信事業者としっかり連携をしていくべきと思いますが、見解をお伺いします。

○中西総務局長 災害時に通信設備に障害が生じた場合、通信事業者は被災現場における車載型や可搬型の基地局の設置や、衛星携帯電話の貸し出しなどを行うこととしております。
 都も首都直下地震等の際には、災害対策本部にライフライン確保のための部門を設置し、通信を初めとするライフラインの被害状況を把握し、優先的に復旧する箇所の調整等を行います。
 こうした中、通信事業者から公立施設等における可搬型基地局の設置などの依頼があった際には、関係機関と十分調整するなど、事業者と連携しながら迅速に応急対応を行います。
 今後とも、災害発生時の通信環境の確保に向け、事業者との緊密な連携に努めてまいります。

○高倉委員 次に、公園整備として、水族館のことについてお伺いをさせていただきますけれども、二問用意をしましたけれども、済みませんが、二問目の方を質問させていただきたいと思います。
 さきに一般質問、上野議員の質問に対しまして、新年度に東京都は葛西臨海水族園等に移動水族館車を新たに導入するといったお話がございまして、ぜひ進めていただきたいと思います。
 私は、東日本大震災の後、都議会公明党の被災地支援チームの一人としまして、福島を訪問した際に、あそこにはアクアマリンふくしまという大変有名な水族館がありますが、ここの関係者の方から、東京から来る人が大変減ってしまいましたというお話を聞きました。
 平成二十四年の第二回の定例会で、私はさまざまな提案をさせていただきましたけれども、それに対して、都は迅速に対応していただいて、アクアマリンふくしまが持っている非常に大型の移動水族館車が葛西臨海公園まで来てくれまして、都民に福島の海の生物を紹介してくれたわけであります。
 四日間で一万二千名ですよ、こんなにたくさんの方々が訪れまして、私もその様子を見に行きましたけれども、トラックの荷台に大きな水槽が設置をされているわけですが、本当に親子連れで黒山の人だかりと。子供たちが、親子そろって海水の中に手を入れて、福島の海の生物たちに一生懸命触れて、本当にその笑顔と輝くような目を忘れることはできません。
 アクアマリンふくしまは、以前は東京から福島に子供たちが教育研修に行っていたときに、よくその研修コースにも入っていた施設であります。
 この葛西臨海水族園に新しい移動水族園車両が導入されることになった今、ぜひ福島の方々とさらに交流を深める取り組みを行っていくべきであると思いますけれども、見解をお伺いいたします。

○横溝建設局長 葛西臨海水族園は、平成十二年に福島県立ふくしま海洋科学館アクアマリンふくしまと友好提携を結び、飼育生物の交換やボランティアの相互交流などを行ってまいりました。
 東日本大震災の発災時には、アクアマリンふくしまからウミガラスなどの被災動物をいち早く受け入れるとともに、現地に飼育資材の支援を行ってまいりました。
 また、アクアマリンふくしまが調査研究を行っておりますシーラカンスの標本を中心にいたしました企画展を共同開催するなど、交流を深めてまいりました。
 今後とも、都立公園や動物園における移動水族館を活用した共同企画などの場において、アクアマリンふくしまのPRにも協力し、東京と福島の人をつなぎ、交流を深めるさまざまな連携を進めてまいります。

○高倉委員 それでは、健康施策についてお伺いします。
 都議会公明党は、先日、地方独立行政法人の東京都健康長寿医療センターの高橋龍太郎副所長さんからお話を伺いました。
 それによりますと、全国で毎年、推定一万七千人の高齢者の方が浴室、お風呂で死亡しているということで、これは交通事故死の約四倍にも上るというお話でありました。
 原因は、浴室内外の温度差が血管の収縮に与える影響、すなわちヒートショックといわれるものに伴う血圧低下にあるとされております。
 このヒートショックを防ぐためには、脱衣場の断熱加工、また、熱源確保だけではなくて、温かいシャワーを数分間、浴室の中に出しっ放しにしてから浴槽に入ると。こういった工夫も効果的であるというふうにお聞きしました。
 大切なことは、こうした情報を都民に十分に周知することではないかと思います。都は、一つの研究事業としての枠を超えて、広く都民へヒートショックへの注意喚起と予防策の周知を図るべきであると思いますが、見解をお伺いします。

○川澄福祉保健局長 都における高齢者医療と研究の拠点である東京都健康長寿医療センターでは、ヒートショックに関する研究成果を踏まえながら、これまでホームページや講演会等を通じて、冬場の入浴時の危険性や事故を予防する入浴法等を紹介してまいりました。
 お話のように、ヒートショックによる高齢者の不慮の事故を防止するためには、広く都民に対し注意喚起を図り、予防策を周知していくことが重要であることから、来年度はヒートショックを老年学公開講座で取り上げるほか、新たに都民向けリーフレットの作成を検討してまいります。

○高倉委員 健康施策の中で、産後ケアについてお伺いしたいと思います。
 産前産後の女性の健康を守る取り組みとしまして、都議会公明党では、産前産後ケアの充実を子育て支援策の重要な柱に据えるべきと主張してまいりました。これを受けて、都は来年度から、子育てスタート支援事業を拡充いたします。都が積極的にこの取り組みを進めることは、都議会公明党として高く評価をいたしたいと思います。
 産前産後ケアにつきましては、こうした取り組みに加えまして、民間団体との連携によりサービスを提供することも、私は有効であると思っております。
 現在、民間の訪問型の支援としまして、産後ドゥーラという活動が活発に行われておりまして、助産師もこの活動に積極的にかかわっております。
 ドゥーラというのは、ギリシャ語で、他の女性を支援する経験豊かな女性といった意味があるわけでありまして、実は、民間の資格といっていいと思いますが、しっかりとした研修プログラムを受講した人が、産後の家庭を訪問したり、また、家事や育児をサポートするとともに、育児の悩みを傾聴したり、必要に応じて専門機関につなげるなどの、母親に寄り添う支援を行っているわけであります。
 産前産後ケアの施策の充実を図るためには、このように地域で活動する民間団体などと連携することも効果的と思いますけれども、見解をお伺いいたします。

○川澄福祉保健局長 出産前後の母親の孤立感や育児不安の軽減を図る産前産後ケアは、子供の健やかな育ちと母親の心身の健康を支える上で、重要な取り組みでございます。
 そのため、区市町村は、親子で宿泊して二十四時間体制で支援するショートステイやデイケア、相談支援などを行うほか、家庭訪問や家事、育児援助等のさまざまな取り組みを実施しており、都は包括補助事業等により支援をしております。
 産前産後ケアは、ノウハウを持った民間事業者やボランティア団体と連携することも効果的であり、都は今後とも、地域のニーズに応じて、産前産後ケアに取り組む区市町村を積極的に支援してまいります。

○東村副委員長 高倉良生委員の発言は終わりました。(拍手)
 この際、議事の都合により、おおむね十五分間休憩いたします。
   午後三時二分休憩

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