予算特別委員会速記録第五号

   午後五時四十分開議

○谷村副委員長 休憩前に引き続き委員会を開きます。
 質疑を続行いたします。
 小磯善彦委員の発言を許します。

○小磯委員 都議会公明党を代表いたしまして、締めくくり総括質疑を行います。
 初めに、帰宅困難者対策について質問いたします。
 いよいよこの四月から、帰宅困難者対策条例が施行されるわけでございます。都も都立施設等を活用して、行き場のない帰宅困難者を受け入れる一時滞在施設の準備をしておりますけれども、民間事業者の協力は欠かせません。しかし、民間の方も協力したいと思っても、例えば、帰宅困難者を受け入れた際の施設運営をどうすればよいのかなど、そういったことについて不安な思いもあります。
 そこで、都が民間の手本となる運営体制を確立して、範を示す必要があると考えますが、所見を伺います。

○笠井総務局長 発災時に、一時滞在施設が有効に機能するためには、施設の安全点検や災害情報等の提供体制など、あらかじめ施設管理者が周到な準備を行う必要がございます。
 このため、一時滞在施設として活用を予定している約二百カ所の都立施設向けに、平時はもとより、災害時における対応の詳細を示す一時滞在施設の運営マニュアルを新たに作成いたします。
 今後、このマニュアルを民間の一時滞在施設にも広く提供し、受け入れ訓練の実施や、訓練結果の検証につなげていくことにより、運営体制の強化を図ってまいります。

○小磯委員 ただいまは、都が一時滞在施設の運営マニュアルを新たに作成して、これをまた民間にも提供するという大変大事な答弁がありました。
 民間の協力による一時滞在施設の確保についてですが、都は、備蓄品への補助、税制や都市開発諸制度の優遇などの支援策を行うこととしております。また、民間事業者からの要望が強い、受け入れた帰宅困難者にけががあった場合等の施設管理者の免責制度についても、国に要望しているとのことでございます。
 こうした中、民間の損害保険会社が、大規模地震の発生時に、自治体や一時滞在施設として協力する民間事業者に対して保険金を支払う、そういう商品を開発いたしました。この保険金は、施設の開放に伴う備品などの損害とか清掃費用などに使うことができて、一時滞在施設として協力する事業者の負担も緩和されます。民間企業が都の施策に沿う形で、このような商品を独自で開発することは大変いいことだと思います。まさに、社会全体で取り組む帰宅困難者対策であります。
 都としても、このような民間の取り組みを積極的に普及啓発すべきと考えますが、所見を伺います。

○笠井総務局長 都は、発災時の損害賠償責任が事業者に及ばない制度の創設を、昨年十一月、国に提案要求したところでございます。
 今後、その実現に向け、都としても、国への働きかけを引き続き行うとともに、本年一月に設置した国や経済団体などから成る連絡調整会議の場において、専門家などからも意見を聞き、制度創設に向けた議論を行ってまいります。
 また、お話の損害保険につきましては、民間企業の先進的な取り組みとして、区市町村や関係団体に情報提供するとともに、帰宅困難者対策ポータルサイトや防災ツイッターで広く企業などに周知をしてまいります。
 今後とも、一時滞在施設として協力いただく事業者の負担軽減を図りつつ、必要な施設数の確保を進めてまいります。

○小磯委員 企業や学校、一時滞在施設にとどまった帰宅困難者は、混乱収拾後に帰宅することとなります。公共交通機関が復旧していない場合、多くの帰宅困難者は、徒歩によって帰宅することになります。
 そのため、都は従前から、他の首都圏の自治体とも連携し、コンビニエンスストアやファミリーレストランなどのチェーン店と協定を結び、徒歩帰宅者に水やトイレなどを提供する災害時帰宅支援ステーションの確保に努めてまいりました。先日も新たなチェーン店と協定を結ぶなど、帰宅支援ステーションの店舗数はふえています。
 しかしながら、幾ら店舗数がふえても、そこが帰宅支援ステーションとわからなければ意味をなしません。現在、帰宅支援ステーションには目印となるステッカーが張ってありますが、例えば、コンビニによっては、多種多様のステッカーが張られ、よくよく見なければ帰宅支援ステーションのステッカーを判別できません。
 そこで、徒歩帰宅者に災害時帰宅支援ステーションだと認知させる一層の工夫が必要と考えますが、都の見解を伺います。

○笠井総務局長 大規模災害による混乱が収拾した後、職場や学校、一時滞在施設などで待機した多くの方々が円滑に帰宅できるよう、災害時帰宅支援ステーションの場所や、受けられる支援の内容をわかりやすく周知することが重要でございます。
 そのため、都は防災ホームページにおいて、帰宅支援ステーションにおける支援内容を周知するとともに、位置情報を検索できる防災マップを提供してまいりました。
 今後は、これに加えて、都内約九千カ所のすべての帰宅支援ステーションを対象として、発災時に、店舗の前に掲出するのぼり旗を配備してまいります。
 さらに、この取り組みを九都県市と連携し首都圏に広げていくなど、帰宅支援ステーションの認知度向上に積極的に取り組んでまいります。

○小磯委員 大震災の折、徒歩で帰るとき、お店などの前に帰宅支援ステーションののぼり旗が出してあれば、徒歩帰宅者が安心して立ち寄れるということであります。こういう人に配慮した優しい取り組みが重要だと思います。ぜひとも首都圏に広げていくことをお願いしたいと思います。
 我が党では、従来から、宇宙航空研究開発機構、JAXAによる地球観測衛星の活用について主張してまいりました。昨年の予算特別委員会では、平成十八年から二十三年五月まで運用されていた「だいち」が、東日本大震災でも、被災地の災害状況を衛星写真で克明に映し出すなど、さまざまな成果を上げたことを踏まえ、こうした衛星の利用について質問し、検討していく旨のご答弁をいただきましたが、この後、この後継衛星となる「だいち二号」がいよいよ来年度に打ち上げを予定されております。
 人工衛星の活用は、広域の観測を初め、夜間や悪天候でも観測できるというメリットがあります。さらに、浸水、冠水域や液状化エリアの特定、道路状況や地殻変動、海上漂流物分布の把握等の利用、広範囲を繰り返し観測できることから復旧、復興の進捗状況の把握まで可能となるわけであります。
 これまでは、同じ場所の画像は数日に一回しか写せないといった課題もあったようでありますが、今度は最短で十二時間に一回は画像が入手できるとのことで、実現への期待は高まっているところであります。衛星を活用した情報収集に向けての都の所見を伺います。

○笠井総務局長 災害時には、被災状況に関する多くの情報を迅速に収集することが必要であり、都は多様な情報ツールの活用を検討しております。
 このうち、お話の衛星画像の活用につきましては、災害の影響を受けずに、広域的なデータが得られるなどの有効性がある一方で、これまで画像の更新までに数日を要するなどの課題がございました。ご指摘のとおり、新たに打ち上げが予定されている「だいち二号」では、おおむね十二時間ごとに、以前よりも解像度の高い画像が得られると聞いております。
 現在、JAXAに対して、具体的に得られる画像の内容や、実際の地理情報との照合手法などを照会しているところでありまして、今後、JAXAと連携し、災害時の活用について検討してまいります。

○小磯委員 より具体的に検討しているようで安心をいたしました。
 東京都が全国に先駆けて、JAXAの衛星通信の画像情報を入手して、的確に分析し、活用できる手法を確立できれば、画期的なことであります。他の道府県にもそのノウハウを提供することが首都東京の役割だと思います。どうかよろしくお願いいたします。
 次に、市区町村の防災体制の強化と、都の連携体制の確保についてお伺いをいたします。
 大震災が発生した際に、広域自治体として都は、応援部隊や緊急支援物資の振り向けなどを担うことになりますが、そうした対応を敏速に行うためには、市区町村からの的確な情報を得る必要があります。都内の被害状況を正確に掌握し、強固なバックアップ体制を立ち上げなければなりません。また、住民の避難や避難所の運営など、震災時に最前線を担うのも市区町村となります。
 しかし、現在、市区町村にそうした機能が整っているのか、大変に危惧されております。第一に、市区町村の役所、役場の庁舎に耐震性がなく、震災時に機能しないと危惧されているのが四区七市二町一村、耐震診断を行っていないのが一市一町三村に及びます。これは自治体数でいいますと、三一%になります。
 実際、公共建築物の耐震工事については、避難所となる小中学校を優先し、庁舎が後回しになっている傾向もあります。都として、役所、役場の庁舎の耐震化あるいは建てかえをしっかりと促し、必要に応じて支援をするべきであります。これは強く求めておきたいと思います。
 また、いざというときに都民の命を守る司令塔となる役所、役場が被災状況を集約し、警察、消防はもとより、電気、ガス、上下水道、負傷者対応の医師会、重機を出動させる建設業組合、し尿処理を扱う環境衛生組合などとの連携を図り、一元的な指令を発するための体制を整えなければなりません。
 都の防災センターで市区町村との連絡がとれない、連絡がとれても現場が大混乱で被害情報が入らない、またはその余裕がないといった事態に陥らないように備えておく必要もあります。
 本来であれば都庁の防災センターのような機能を各市区町村にこそ整備し、連絡体制システムを日ごろから訓練しておく必要があります。そのための財政的な支援を都や国が担うべきと考えますが、当面の対応をどうするのか、大変に大きな課題であります。
 そこで、都内区市町村との通信連絡をしっかりと確保し、的確な被害情報等を把握するための現在の都の取り組みについて伺います。

○笠井総務局長 大規模地震発生時に各地の被災状況を収集し、的確な初動対応を行うためには、市区町村を通じた情報の把握が重要でございます。
 このため、都は、市区町村や関係防災機関との防災行政無線ネットワークの強化に向け、大量のデータ通信なども円滑に行えるように改修を進めるとともに、通信方式の異なる無線の配備といった回線の多重化にも取り組んでおります。
 また、現在、被害状況や必要な救援物資の迅速な把握のために、各市区町村に都から連絡員を派遣する体制についても検討しているところでございます。
 こうしたハード、ソフト両面からの対策を進め、市区町村との緊密な連携により、災害対応に万全を期してまいります。

○小磯委員 大震災発災時など、いざというときの対応に最も重要なのは正確な情報であります。守れるはずの命をしっかりと守れるように、都と市区町村が一体となって対策を講じていただくよう要望いたします。
 いざ災害のときに重要な施設の一つが、消防署であります。東京都の主要施設十カ年維持更新計画の対象として、十三署が建てかえを予定しております。平成二十五年度予算において新たに整備を予定している消防署本署庁舎と、整備を予定している場所についてお伺いいたします。

○北村消防総監 平成二十五年度予算においては、新たに赤羽消防署及び町田消防署の整備を提案しております。
 整備する場所については、赤羽消防署は現在地に、また、町田消防署は主要幹線道路へのアクセスが良好な町田市本町田にある旧緑ヶ丘小学校跡地に、それぞれ改築する予定であります。

○小磯委員 二十五年度予算で二署の整備を進めていくということであります。
 マグニチュード七クラスの首都直下型地震が、今後三十年以内に起こる可能性は七〇%ということで、私たちは常に防災、減災への取り組みを怠ってはなりません。
 そういう中で、町田市の防災対策の主軸を担う町田消防署は築五十年と、老朽化が指摘されてまいりました。災害時に消防署が倒壊すれば、装備されているポンプ車、救急車、レスキュー隊、はしご車など、機能しないことはいうまでもありません。
 私は、二〇一〇年十二月八日の都議会一般質問で、町田消防署の建てかえを強く訴え、消防総監から用地が確定し次第、新設に向けた具体的な手続を速やかに進めるという答弁があり、二十五年度予算措置につながったところであります。
 大切なのは、建てかえだけでなく、迅速に災害出動するためのアクセスが重要であります。大規模災害が起これば、全国からの車両が殺到するため、広い道路に面していること、活動のスペースの確保も重要であります。
 さらに、場合によっては、近くにスペースなどの条件が整えば、ドクターヘリ、また自衛隊ヘリの運用も視野に入れたヘリポートの設置も必要になってくるとも考えます。今申し述べたのは、災害時の消防署の機能でありますが、大事なことは、平時にいかに災害に備えるかということであります。
 これからは、自助、共助、公助のすべてがいざというときに十分に機能して、災害に対応することが重要であります。そのためには、うまくその機能が発揮できるよう、日常、住民、町内会、公的機関がコミュニケーションを図り、訓練をすることが必要であります。消防署もそうした観点を取り入れた本署の整備が今後ますます大事なのではないでしょうか。
 消防庁舎は、災害時においては災害活動の拠点となりますが、平常時においては広く都民が防災教室、防災訓練などに活用できる施設であることが重要だと考えます。東京消防庁は、消防庁舎を都民にどのように活用してもらうことが大事だと考えておられるか所見をお伺いします。

○北村消防総監 消防庁舎は、地域における災害時の活動拠点として、その役割を担っていくことが重要でございます。
 このため、東京消防庁では、これまでも庁舎や敷地を活用した消防団と消防署隊との連携訓練を初め、地域住民による初期消火訓練、さらには防災教室での応急救護訓練や各種講習を実施するなど、消防庁舎の積極的な活用に配意しております。
 今後とも、消防庁舎の活用にあっては、地域の実情に合った防災機能の確保を十分考慮し、対応してまいります。

○小磯委員 ただいまは、消防総監より、地域の実情に合った防災機能の確保を十分考慮し対応するとの答弁をいただきました。大事な答弁でございました。何とぞよろしくお願いいたします。
 中小河川の整備について質問します。
 とりわけ、東京都と他県に係る中小河川の整備の難しさについて質問いたします。
 私の地元、町田市内を流れる境川であります。(パネルを示す)知事、境川はご存じですか。--名前のとおり、境川は、東京都町田市と神奈川県大和市、相模原市の、境を流れております。下流部を県、中流部を都、そして上流部を県と管理区間が定められております。
 そうした中、平成二十年八月末には、多摩部を中心に時間一〇〇ミリを超える集中豪雨があり、境川で浸水被害が発生いたしました。河川の整備は、上流を先に行うと下流であふれてしまう可能性があるために、下流から上流に向かい、その整備を進めていく必要があります。
 そこで、都、県それぞれの整備状況について伺います。

○村尾東京都技監 都県境を流れる境川につきましては、県と協力して時間雨量五〇ミリに対応する整備を進めており、都が管理する中流部区間におきましては、既に九四%の整備率となっております。
 一方、県管理区間につきましては、下流から整備を進め、平成二十一年度には、前年に溢水した上流区間にも着手したものの、依然として下流区間において、相模鉄道との交差部など、ボトルネックの解消に至っておりません。
 このため、都の整備済み区間におきましても、流下能力確保のための河床掘削などを十分に行うことができない状況となっております。

○小磯委員 神奈川県区間はボトルネックが解消できず、都の整備済み区間における十分な河床掘削等を行うことができない状況となっております。
 境川は二級河川であり、都道府県知事が河川の管理を行うこととされ、都と県にまたがって流れていることから、一本の川であっても、整備の進捗が異なっているなど、大変難しい事情があると私は理解しています。
 町田市管理区間より上流側でも、五年前浸水被害がありました。(パネルを示す)ここは、この河川は上流部でございますので、管理は神奈川県ですが、川の左側、これは町田市で、こちらの方は町田市であります。町田市の住宅地にあふれました。土のうを積みましたが、結局、今も土のうを積んだままになっております。両岸に土のうが積んでありますが、写っているのは町田市側であります。神奈川県側がまだ未整備ということであります。
 東京都は、神奈川県側の整備も進むよう、これまでいろいろと努力をしております。そういう中、都は昨年十一月に、中小河川の新たな整備方針を策定しました。これは都における今後の河川整備のあり方を示すものとして評価するところであります。
 そこで、この整備方針を踏まえ、都において今後、境川の一刻も早い取り組みをすべきでございます。都の所見を求めます。

○村尾東京都技監 昨年十一月に策定した整備方針では、目標整備水準をこれまでの時間最大五〇ミリから、多摩では時間最大六五ミリに引き上げ、新たに具体的な対策を講じていくことといたしました。
 都県境を流れる境川におきましては、時間六五ミリ対応にも有効に機能する新たな調節池を整備することにより、都が管理する中流区間の河床掘削を可能とするなど、効率的、効果的な対策を進めていくこととしております。
 平成二十五年度は、境川における調節池の配置など、具体的検討に着手いたします。
 なお、土のうが積んである区間につきましては、河川にかかわる一都三県連絡協議会の場などにおいて調整してきた結果、県は、今年度、下流側から用地取得を開始しております。引き続き、県ともさらなる調整を図りながら、境川の整備に全力で取り組んでまいります。

○小磯委員 東京管理区間を幾ら整備しても、下流の神奈川県側が整備されないと、川床を掘れないということで何十年も経過してきたわけであります。
 ただいまの答弁で、平成二十五年度に、これまで手を出せなかった大型の調節池の配置の検討に着手するということであります。これは東京管理区間を五〇ミリに川底を掘れるということであります。これは画期的なことであります。まさに二十一世紀に境川元年を迎えたということになります。建設局の皆様のこれまでのご努力を高く評価いたします。検討についてよろしくお願いいたします。
 著しい浸水被害が発生し、かつ、河道などの整備が困難な河川に対して、総合的な治水対策を講じることを目的として、特定都市河川浸水被害対策法が制定され、既に町田市の鶴見川が特定都市河川に指定されています。
 境川については、平成二十二年第四回定例都議会でも取り上げておりますが、浸水被害を軽減し、地域住民が安全・安心に暮らすために一刻も早く特定都市河川に指定すべきであります。
 そこで、境川を特定都市河川とした場合の効果と、指定に向けた取り組み状況についてお伺いいたします。

○飯尾都市整備局長 特定都市河川に指定した場合、流域自治体による河川や下水道の貯留施設等の整備に加えまして、開発行為における雨水貯留浸透施設の設置の義務化などによりまして、総合的な治水対策を講じることが可能となります。
 このため、境川におきましても、流域の関係都県市から成る協議会で指定に向けた調整を重ねてまいりました。このたび、合意が得られましたことから、法に基づきまして、都と神奈川県は、本年二月に町田市など関係市に対して意見聴取を開始しております。
 引き続き、特定都市河川の指定に向けて積極的に取り組んでまいります。

○小磯委員 ぜひ課題を解決し、一日も早く治水安全度の向上を図っていただきたいと思います。
 次に、がん対策について質問いたします。
 がんの中で罹患率の高い胃がんについて質問いたします。
 日本人の死因は、がんが一位ということですが、がんの中では、肺がんが死因の一位であります。しかし、罹患率すなわち、かかりやすいがんということになりますと、胃がんが一位になるわけであります。
 胃潰瘍や胃がんの主な原因は、ストレスとされてきました。胃の中は強い酸性のため、菌は住めないと思われていたからであります。ところが、一九八三年にピロリ菌が発見され、九四年には、WHO、世界保健機関が胃がんの病原体であると発表しました。正式にはヘリコバクター・ピロリという、胃の中に好んで住みつき、胃の壁を傷つける毒性の強い細菌であります。
 国際がん研究機関は、日本人は特に胃がんの発生率が高いと発表しております。胃がんの患者が多い国は、日本のほかには、北朝鮮や韓国、イラン、アフガニスタン、チリなど一部の国だけであります。欧米諸国では、胃がんはそれほど顕著に見られません。
 なぜ、日本では欧米諸国と比べて胃がんが多いのかというと、かつて日本では、井戸水や川の水を飲む人が多く、ピロリ菌に感染し、胃がんの発生率が高くなったと推測されております。実際に、五十代以降の方の七〇%以上は、ピロリ菌感染者だという報告もあります。また、ピロリ菌といっても、地域によってその性格に違いがあり、特に東アジア型と呼ばれるピロリ菌は、欧米のそれと比べても病原性が強く、胃がんとの関連性も高いといわれております。
 しかし、日本では、胃がんの検査項目にバリウム検査や内視鏡検査はあるものの、ピロリ菌検査は義務づけられていません。私は、胃がん撲滅のために、ピロリ菌の無料検査を東京都が先陣を切って行うべきだと考えます。
 そこでまず、ピロリ菌と胃がんの発生の因果関係と、除菌の有用性について、都の見解を伺います。

○川澄福祉保健局長 国が平成二十四年六月に見直したがん対策推進基本計画では、ウイルスや細菌への感染は、がんの原因として寄与が高い因子とされております。
 その一つとして、ヘリコバクター・ピロリも、胃がんと関連する細菌として挙げられておりますが、その除菌の有用性につきましては、内外の知見をもとに検討するとしております。
 都は、今回改定する東京都がん対策推進計画の中で、ウイルスや細菌の感染に起因するがんの予防を進めることとしており、今後、ヘリコバクター・ピロリにつきましても、国の検討状況を注視しながら、情報収集に努めてまいります。

○小磯委員 東京都としても、ピロリ菌が胃がんの細菌であるとの認識を示されました。
 次に、ピロリ菌の保険適用の対象はどうなっているか伺います。

○川澄福祉保健局長 国は、従来、ヘリコバクター・ピロリ感染の保険診療の対象患者として、内視鏡検査または造影検査において、胃潰瘍または十二指腸潰瘍の確定診断がなされた患者、早期胃がんに対する内視鏡的治療後の患者などを示しておりました。
 このたび、ヘリコバクター・ピロリ感染の診断及び治療に使用する医薬品の効能、効果に、胃潰瘍などに加え、ヘリコバクター・ピロリ感染胃炎が認められたことに伴い、平成二十五年二月から、医療保険の適用対象に、内視鏡検査において胃炎の確定診断がなされた患者も追加されたところでございます。

○小磯委員 これまで胃潰瘍や十二指腸潰瘍などの病気に限って保険が適用されておりました。今回、それよりも症状の軽い胃のもたれや不快感などの慢性胃炎であっても、呼気検査などでピロリ菌の感染が確認され、内視鏡で慢性胃炎だと診断されれば、除菌に保険が適用されることになりました。国において、我が党が熱心に取り組んで、こういう結果につながっております。
 日本では、毎年約十二万人が胃がんと診断され、約五万人が亡くなっています。今回の保険適用拡大により、胃がんの原因そのものを取り除く胃がん予防が大きく前進すると期待されております。
 国立国際医療研究センター理事、国府台病院長の上村直実先生によりますと、胃がんの九〇%以上はピロリ菌の感染による胃炎が原因で、ピロリ菌を除菌すれば、胃がんの発生を抑制することが可能である、これは医学的には世界の常識になっている、ところが、我が国の医療の現場では、これまでその医学界の常識がなかなか受け入れられずにいた、背景として、日本のピロリ菌感染者は三千五百万人以上もいるといわれ、対策に係る財源が莫大になることなどの課題があったものと推測される、今回の保険適用拡大は胃がんの芽を摘む早期発見のチャンスを広げてくれるものだということで、大変歓迎しているわけであります。
 ピロリ菌感染の有無を調べる検査と、萎縮性胃炎の有無を調べるペプシノゲン法を組み合わせまして、胃がんになりやすいか否かのリスクを調べるのが、胃がんリスク検診であります。
 この胃がんリスク検診を積極的に導入する基礎的自治体も出てきているわけであります。都内でも、足立区、目黒区、品川区、墨田区、多摩市が取り組んでおり、来年度から中野区、町田市が取り組むと伺っています。
 がん対策は今後総力を挙げて取り組んでいかなければならない重要な課題でありまして、こうした基礎的自治体による動向も、都として十分に把握をしていただきまして、包括補助という形で、ぜひとも支援というものを検討していただくことを要望したいと思います。
 次に、ピロリ菌の保険適用が拡大したわけでありまして、都立病院、公社病院におけるヘリコバクター・ピロリ菌の除菌治療の取り組みを積極的に行うべきと考えますが、見解を伺います。

○塚田病院経営本部長 これまで胃潰瘍、十二指腸潰瘍の確定診断がなされた患者に対しては、広尾病院の専門外来を初め、外来診療を行っているすべての都立病院及び公社病院において、除菌治療を行ってまいりました。
 先ほど福祉保健局長がご答弁申し上げましたとおり、このたび、除菌治療の保険適用範囲が胃炎にも拡大されました。新たに適用される疾患にも対応し、今後とも適切な除菌治療を行ってまいります。

○小磯委員 すべての都立病院と公社病院で取り組んでおり、とりわけ広尾病院では、ピロリ菌専門外来が設置をされているということでございます。保険適用拡大で、患者もふえることと考えられますので、体制の整備をよろしくお願いを申し上げます。
 さて、都の予算案では、東京都医学総合研究所が開発した基礎技術をもとに、各種がんの診断薬、医療機器の早期実用化に向けた研究を推進する、がん総合的高次研究の事業が計上されております。研究の意義と具体的内容を明らかにしていただきたい。

○川澄福祉保健局長 胃がんを初め、がんの治療を効果的に行うためには、できるだけ初期の段階でがんを発見するとともに、治療の効果を迅速に把握することが重要であります。
 現在、東京都医学総合研究所では、尿から検出されるたんぱく質、ジアセチルスペルミンを活用したがんの早期診断法の研究を行っており、大腸がんに関しては、既に特許を取得しております。
 また、膀胱がんの治療効果を尿で迅速に測定できる医療機器の実用化にも取り組んでいるところでございます。
 来年度以降は、研究対象を肺がん、肝がん、子宮がん等にも拡大し、取得した特許技術などを活用しながら、早期診断や適切な治療効果測定ができる新たな診断手法の開発を積極的に進めてまいります。

○小磯委員 特許を取得したということは議会で初めての報告だと思いますが、尿から検出される特定の物質を活用した大腸がんの早期診断法などを、他のがんの早期診断にできるよう研究するという大変画期的な取り組みだと思います。
 さて、がん対策の最後に、猪瀬知事にお伺いいたします。
 都は、平成二十年三月にがん対策推進計画を策定し、がんの予防、検診、治療から緩和ケア、がん登録に至るまで、これまで総合的ながん対策を進めてまいりました。今回改定する計画においても、従前の成果を踏まえた一層の拡大が期待をされております。
 そこで、今後の東京都のがん対策推進についての知事の決意をお伺いいたします。

○猪瀬知事 がんは、我が国の死亡原因のトップであり、東京でも死亡者の約三割、年間三万人以上の方が亡くなっております。一生の間に二人に一人ががんになると推計されており、我々の健康を脅かす最大のリスクであります。
 がんを予防するためには、自分の生活習慣を見直すことが何よりも重要であります。食生活を見直し、運動を行い、免疫力を高める、これががんの予防に一番役に立つ。僕も、きのう、テニス一時間三十分やって、八キロ走っていますからね。月間目標八十キロですから、ジョギングの。何かやっていますか。(笑声)昨年の十一月には、大腸がん予防のための十二キロウオークというのにも参加しました。
 今回、改定するがん対策推進計画には、がん予防を施策の柱の一つに据え、食事や運動など、生活習慣に関する取り組みを推進します。
 また、小児がん診療連携ネットワークの構築、地域で安心して緩和ケアを受けられる体制の整備、早期に発見し最適な治療を行う研究の推進など、新たな施策を盛り込み、来年度予算にも計上しました。
 東京都は、最高水準の医療を提供できるよう、二十四カ所のがん診療連携拠点病院に加え、独自に東京都認定がん診療病院を十カ所、東京都がん診療連携協力病院を十五カ所認定し、がん医療水準の向上に取り組んでいます。
 こうした特性を生かして、医療現場の力を結集し、がんの予防から治療、療養生活の質の向上に至るまでの総合的ながん対策の推進に全力で取り組んでいきます。

○小磯委員 知事みずからのがん予防と、がん撲滅への強い決意を述べていただきました。何とぞよろしくお願いいたします。
 次に、地球温暖化対策についてお伺いいたします。
 我が国では三・一一以降、電力の安定的供給という観点から、省エネ、節電や再生可能エネルギーについての議論は盛んに行われてまいりましたが、地球温暖化対策との関係での議論は余りされなくなっております。
 しかし、地球温暖化は、我々が議論をしないでいればそれで済むという問題ではありません。まず、どんなふうに温暖化とその影響が進んでいるのかを確認したいと思います。
 このボードを見ていただきたいと思います。日本で一時間に五〇ミリ以上の雨が降った年間の回数の推移をあらわしたグラフでございます。気象庁では、一時間に五〇ミリ以上の雨を非常に激しい雨と定義しておりますが、この五〇ミリ以上の雨が降る回数は、年を追ってふえる傾向が見られております。このグラフの最初の十年間、ここは、その平均は百六十回でございました。直近十年間の平均は二百三十九回にもなり、ほぼ一・五倍となっております。ここ数年、毎年のように集中豪雨が日本各地を襲っておりますが、それがデータでも確認されているわけであります。
 さらに、世界に目を向けますと、一昨年のタイの大洪水、昨年の秋にニューヨークを襲ったハリケーンなど、大規模な気象災害の報道が目につくようになりました。こうした報道を見ると、異常気象がふえてきていることは、だれも否定できないと思います。
 しかし、これらが本当にCO2の増加によるものかについては疑問を持っている方もいるかもしれません。
 そこでまず、異常気象の増加と地球温暖化問題との関係をどのようにとらえるべきかについて、所見をお伺いいたします。

○大野環境局長 世界の年平均気温を見ますと、最も気温の高い上位の十年は、すべて一九九八年以降に集中しております。また、二〇一〇年以降では、ロシア、アメリカ、オーストラリアなどで、記録的な熱波や干ばつが発生をしております。
 一方、世界のCO2濃度を見ますと、毎年、過去最高を更新しておりまして、増加のテンポも上がっているという状況でございます。
 国連の専門機関でございます世界気象機関は、その報告書の中で、個々の異常気象を気候変動を原因とするものだと特定することはできないが、温室効果ガス濃度の上昇によって、異常気象の規模や頻度が増すことを予期すべきであるとしております。
 最近の集中豪雨やハリケーンの激化、熱波や干ばつの増加などは、気候変動に関する政府間パネル、IPCCが六年前の報告で既に予測していたとおりの現象でございまして、異常気象の増加の背景に地球温暖化の進行があることは確実であると認識しております。

○小磯委員 異常気象の増加の背景に地球温暖化の進行があることは確実であるということで、ここまではっきりと認識を示したのは初めてであります。
 昨年の夏には、北極海を覆う氷、海氷の面積が観測史上最小になったというニュースもあり、予測を上回る速度で温暖化が進んでいるともいえます。
 地球温暖化対策の強化が必要なことは間違いありませんが、京都議定書の次の国際的な対策の枠組みづくりはなかなか進んでおりません。その中で、東京のような都市が対策の強化を進めることの意義はどこにあるのか所見を伺います。

○大野環境局長 国際的な枠組みづくりは確かにおくれておりますけれども、個々の地域や国では、東京だけではなくて先駆的な取り組みが始まっております。
 例えば、アメリカでは、全米の最大の州でございます経済規模を持つカリフォルニア州が本年一月からキャップ・アンド・トレード制度を開始しておりますし、また連邦政府も、CO2排出量の大きい石炭火力発電所の規制を強化しております。中国も、国際的な義務は拒む一方で、国内では、北京、上海など五つの都市と広東省など二省でキャップ・アンド・トレード制度を先行的に導入しようとしております。
 東京都の取り組みは、都市レベルの先駆的な施策として注目をされておりまして、今月末、これは三月二十八日でございますが、香港で中国の諸都市を対象とした東京都の制度に関するワークショップも開催されます。
 都市は、世界人口の半数が居住し、世界のエネルギーの三分の二を消費しておりまして、東京など先駆的な都市の取り組みが、国際的な対策の強化を牽引していく意義は大きいものと考えております。

○小磯委員 三月二十八日に香港で中国諸都市を対象にした都の制度に関するセミナーが開催されるということで、都の環境施策は評価が高いということだと思います。
 確かに今世紀は都市の世紀ともいわれており、東京のような世界有数の大都市が、気候変動対策で果たす国際的な役割は大きいと思います。
 一方、東京での取り組みが国際的な意義を持つといっても、多くの都民や企業の賛同を得るためには、東京自身にとってのメリットも明確にして取り組みを進めることが重要と考えますが、所見をお伺いいたします。

○大野環境局長 CO2の削減を進める上で最も重要な施策は、省エネや節電によってエネルギー使用量を削減することと、再生可能エネルギーやコージェネレーションの普及など、エネルギー自体を低炭素化していくことでございます。
 この二つの方向は、三・一一以降の電力問題への対応として、強力に取り組みを進めている施策そのものでございまして、こうした取り組みは、昨年、一昨年の節電を賢く進める上でも大きな役割を果たしましたが、CO2の削減と同時に、東京の暮らしと経済を支えるエネルギー需給の安定化にも資するものでございまして、エネルギーコストを低減するメリットも持つものでございます。
 今後とも、都は、東京にとってのこうしたメリットをより一層明確にしながら、都民や事業者とともに気候変動対策にも取り組んでまいります。

○小磯委員 次に、地中熱利用についてお伺いいたします。
 地中の温度は年間を通してほぼ一定しており、地上の夏の気温より低く、冬の気温より高くなっております。この温度差を利用して熱交換を行い、効率的な冷暖房を行うものが地中熱ヒートポンプと呼ばれるものであります。
 地中熱ヒートポンプは、太陽光発電や風力発電のように天候に左右されることがなく、二十四時間三百六十五日利用可能であり、また、全国どこでも利用できるが、寒冷地において普及が進みやすい傾向が見られております。これは寒冷地においては、置きかえられる空調設備が、暖房は石油ヒーターなどエネルギー消費量の多い設備であるからと考えられます。
 都内では住宅における空調設備のエネルギー消費割合が二割程度であるのに対し、業務ビルが四割程度と高く、地中熱利用の導入効果が比較的大きいわけであります。そのため、地中熱ヒートポンプの導入事例が最近建設された業務ビルでも見られます。
 東京は、導入効果とボーリングのスペース確保など、寒冷地とは違いますが、集積する業務ビルを中心とした地中熱利用のポテンシャルなど、東京の特性を生かした普及が必要と考えるが、所見をお伺いいたします。

○大野環境局長 都内では、都市開発の機会をとらえまして、業務ビルなどの地下スペースの有効利用という視点から、地中熱の導入を推進することが効果的でございます。
 例えば、小田急線でございますが、今月完成しました在来線の地下化に伴いまして、東北沢及び世田谷代田の二つの駅舎で地中熱を空調に利用する方式が採用されておりまして、地下スペースの有効利用のモデル事例になるものと考えております。
 また、建物の新築または改築において基礎ぐいを地下に挿入する際に、地中熱の熱交換用のパイプをあわせて設置する工法によりまして、ボーリング用のコストを削減するなど、新たな技術開発も進んでおり、こうした技術の活用も含め、都内における地中熱利用の普及に努めてまいります。

○小磯委員 今の、地下に挿入する基礎ぐいに地中熱の熱交換用のパイプを挿入する、これは東京スカイツリーでそういったことをやっておりました。ぜひ東京の特性を生かした地中熱利用の普及を進めていただきたいと思います。
 昨年七月の固定価格買い取り制度導入以来、再生可能エネルギーは飛躍的に拡大しておりますが、熱の分野でも再生可能エネルギーを最大限導入することが必要であります。海外では、例えばイギリスでは、地中熱ヒートポンプや太陽熱などを対象として、固定価格買い取り制度のように、再生可能エネルギー熱の導入を促進する制度が一昨年から導入をされております。
 都は、再生可能エネルギーの熱利用拡大に向け、都みずからの取り組みとともに、国による取り組みも働きかけるべきと考えますが、所見を伺います。

○大野環境局長 再生可能エネルギーの熱利用の本格拡大に向けまして、地中熱は太陽熱とともに重要なエネルギー源と認識をしております。
 都はこれまで、建築物環境計画書制度を活用しまして、都心のオフィスビルを初め、清掃工場や病院など、さまざまな施設へ地中熱ヒートポンプの導入を誘導してまいりましたが、再生可能エネルギーの熱利用の本格拡大には、国による全国的な取り組みが必要でございます。
 都は、引き続き都制度を活用しながら、地中熱など再生可能エネルギーの熱利用の都内への普及拡大を進めるとともに、海外の先進事例も踏まえまして、自立的な市場拡大に資する仕組みづくりなど、実効性の高い取り組みを国に強く要求してまいります。

○小磯委員 ぜひ、その取り組みをしっかりやっていただきたいと思います。
 次に、東京港の港湾経営について伺います。
 港がその機能を発揮し、人々の生活を支えていくには、港湾運送事業者、倉庫業者など、実に多くの事業者の方々がかかわっています。港のサービス向上に向けた取り組みを効果的に展開していくためには、こうした現場の方々の声に耳を傾け、それを港湾の経営に確実に反映させていくことが極めて重要であります。
 さて、一昨年、港湾法が改正され、国際コンテナ戦略港湾政策の一環として、港湾運営会社制度が導入されました。この港湾運営会社は、コンテナターミナルなどを一元的に運営する株式会社であり、この制度が目指す最終的な姿は、三港のふ頭会社を一つにして、京浜港を一元的に運営することであります。
 東京港においては、東京港埠頭株式会社が、港湾管理者である都を通じて、港湾関係者との良好な関係を積み重ね、港の実態に合ったきめ細かいターミナル運営を行っております。
 ところが、三港のふ頭会社が一つになると、都を初めとする自治体の会社への関与が弱まり、港の現場から遠く離れたところで港湾の経営が行われる印象がぬぐえません。港湾関係者の間では、現場の声がきちんと届くのか、今後の港の経営がどのようになるのか、皆さん大変根強い不安をお持ちであります。港湾の経営においては、実際に第一線を担っている方々の声に耳を傾けること、これを絶対に忘れてはなりません。
 そこで、今後の京浜港のあり方を検討する場にも現場の声を反映させていくべきと考えますが、都の具体的な取り組みについてお伺いいたします。

○多羅尾港湾局長 東京都は、長年にわたり多くの地元港湾関係者の方々と日々緊密な意見交換を行い、また、事業運営上のご要望も受けとめながら、港を整備、運営してまいりました。
 平成九年には、港湾運送事業者、労働組合など、東京港関係者が一堂に会する東京港振興促進協議会を設立いたしました。ここでは、ふ頭の混雑を緩和するための車両待機場の整備や、ターミナル営業時間の拡大などとともに、港の安全対策、環境対策など、東京都と民間が一体となって、今日まで施策の立案に当たってまいりました。
 今後、京浜港のあり方を検討する際にも、東京港で事業を営む方々や働く方々のご意見を十分反映させていきたいと考えております。

○小磯委員 東京港においては、港湾管理者である都が継続的に港湾の現場の声を吸い上げる仕組みができていると聞いて、心強く思います。
 さて、これからが東京港、京浜港の将来を決める大切なときであります。東京港、京浜港をしっかりと経営するためには、これまでも、またこれからも、やはり港の現場に精通した港湾管理者である各自治体の役割が極めて重要であります。国際コンテナ戦略港湾、港湾運営会社制度の検討に当たっては、このことを肝に銘じていかなければなりません。
 そこで、港の現場を担う方々の不安を払拭し、安心して仕事をしていただけるよう、港の経営の根幹にかかわる部分について確認したいと思います。
 東京港の経営は、今後とも都がしっかりと責任を持って担っていくべきと考えますが、知事の見解を伺います。知事ご自身が、皆さんの不安を払拭していただきたい。

○猪瀬知事 東京港の国際貿易港としての開港は、日米開戦の年である昭和十六年であります。これは、横浜港より八十年後、神戸港、大阪港より約七十年後のことであります。
 我が国の主要港の中では後発であるものの、東京都は港の現場で働く方々とともに、時代の変化を先取りし、東京港の発展の歴史をつくり上げてきました。例えば、世界的なコンテナ化の流れの中に、東京都は事業者の声にいち早く耳を傾けて港湾を整備して、昭和四十二年に日本最初のコンテナ船の就航を実現させた。後発であるがゆえに新しいことができた。だからこそ、平成十年以降、十五年間連続コンテナ取扱個数日本一となるなど、多くの船会社、それからコンテナを送るそういう会社、そういうことで、非常に利用いただいて満足していただいているということです。
 そういうことから、国土交通省が京浜三港のふ頭会社を単純合併しようとしている港湾運営会社制度についても、東京都が引き続き、港の現場を持っているという強みを最大限に生かせる運用を提言していきます。東京都は、これからも東京港の運営について、自分たちが責任持っているんだということでやっていく予定であります。

○小磯委員 都は、今後も大いに指導力を発揮して、現場の声を十分に聞きながら、責任を持って港湾経営を担っていただきたいと思います。
 また、現場の声を、三港での検討の場や国との交渉の場においても確実に反映させるなど、港の第一線を担う方々の不安を払拭していただきたいと思います。
 次に、オリンピック・パラリンピック招致について伺います。
 今月四日から七日までに行われたIOC評価委員会の東京訪問では、国を挙げた招致活動や招致への熱意が高く評価されるなど、十分に成果があったと聞いております。
 一方、前回のリオデジャネイロが南米初を追い風としたように、今回はイスタンブールがイスラム圏初を掲げ、IOC委員の心を引きつける強力なインパクトを示しているのに対し、東京は、なぜ東京で開催するのかという大義が置き去りにされた感があるとの報道もあります。
 一九六四年に開催された第十八回オリンピック東京大会は、我が国の戦後復興の象徴として多くの国民に大いなる希望と自信を与え、生まれ変わった東京の姿を世界にアピールしました。
 一昨年三月十一日に東日本を襲った未曾有の大震災は、我が国に甚大な被害と人々の心に悲しみをもたらしました。都議会公明党はこれまでも、被災地応援ツアーの実施を提案するなど、被災地を支援する取り組みを精力的に進めてまいりました。現在、復興に向けて国を挙げた取り組みが進められておりますが、その厳しい道程においては、国民が心を奮い立たせ、一つになる夢と希望を持つことが何よりも必要であります。我々人類は、世界が経験したことのない規模の自然災害にも負けない姿を示す、このことこそが、今回、東京に、日本にオリンピック・パラリンピックを招致する大義ではないでしょうか。
 被災地の復興を後押しするためにも、オリンピック・パラリンピック招致を国民の共通目標とし、国民に勇気と元気を与える必要があると思いますが、知事の所見を伺います。

○猪瀬知事 小磯委員のおっしゃるとおりですが、きょう、午前中に、陸上百メートルで金メダルをとったカール・ルイス選手が、選手といっても、もう現役じゃないですけれども、来ました。そして、被災地に行って、若い中学生、高校生に陸上競技の基本的な技術の指導をして、そして技術的な指導だけじゃなくて、精神面でも非常に重要なことを彼はいいました。ネバー・ギブ・アップという言葉を彼らに伝え、同時に、挑戦することで失敗というのはあるけれども、失敗というのは挑戦しなければない、失敗があって初めてまた成功できるんだということを現地の子どもたちに語りかけてくれたということで、きょうは都庁を訪問していただきました。カール・ルイス外二名ね、三段跳びの人と走り幅跳びの。今、名前が一瞬出なかった。
 そういうことで、スポーツは人々を元気にする力がある。昨年のロンドン・オリンピック大会で日本人が活躍しましたから、銀座に五十万人、パレードに人が出ました。すばらしいことです。ことしの東京マラソンでも、被災地の高校生に百人、参加していただきまして、これは日比谷公園まで十キロメートル走ったわけですが、高層ビル街や皇居沿いを元気に走り抜けて、大きな声援を受けたわけですね。大変よかったと思います。
 国民が一つになれる夢を与える、提供する、これがオリンピック・パラリンピックの力だと思います。二〇二〇年に東京でオリンピック・パラリンピックを開催することは、復興、再生のシンボルとなり、閉塞感に覆われた日本に、坂の上に雲があるよということを示すということになります。被災地でサッカーをやり、聖火ランナーが被災地を走り、被災地に希望の光をともす、それが東京オリンピック・パラリンピックであります。
 七年後、輝きを取り戻した日本の姿を全世界に示すことで、困難に直面する世界じゅうの人々も勇気づけることができるでしょう。加えて、世界じゅうから寄せられた支援に対する感謝の気持ちをあらわす絶好の機会ともなります。人々の心のデフレを解消する契機にもなり、是が非でも招致を実現したい。皆さんと一緒に頑張りたいと思います。

○小磯委員 ただいま知事からカール・ルイスさんの話が出ました。昨日は、石巻市を訪れて陸上教室を開催されたということでございます。そのときにカール・ルイスさんの感想として、悲しい出来事だったと思うが、復興に向かって歩んでいるのを見て勇気づけられたと、逆にそういう感想を持たれていたそうであります。そしてまた、その教室に参加した方は、生で本物の動きを見られてすごく感動したということでありまして、こうしたドラマを、ぜひともこの二〇二〇年のオリンピックでは実現をしていきたい、こんなふうに思っております。
 それでは、液状化対策の質問をさせていただきたいと思います。
 国の中央防災会議の作業部会は、先週十八日、南海トラフでマグニチュード九クラスの巨大地震が発生した場合の被害想定を発表いたしました。それによれば、インフラやライフラインなどの被害は関東以西の四十都府県に及び、建物被害や経済活動への影響など、被害額は東日本大震災の十倍を超える約二百二十兆円に及ぶものと推定しております。
 都議会公明党はこれまで、液状化の可能性が高い地域における戸建て住宅地の液状化対策の重要性について、繰り返し指摘しているところでありますが、国土交通省は、今月八日に、宅地の液状化被害可能性判定に係る技術指針案を発表し、この中に、予防対策として、宅地の液状化に関する取り組みを盛り込んでいると聞いております。
 そこでまず、国の宅地の液状化に関する取り組み内容について、お尋ねいたします。

○飯尾都市整備局長 お話の技術指針案の中で、国は、戸建て住宅地等における個人、民間等による液状化対策を促進すべく、取り組みの内容といたしまして、適切な判断のための情報提供の充実、新規開発時の対策の促進、液状化対策コストの低廉化等を進めることが必要としております。この中に、お話の宅地と一体的に行われる道路等の公共施設の液状化対策も含まれております。

○小磯委員 国土交通省が宅地の液状化の予防対策を発表したことは、公明党が提唱した防災・減災ニューディールの考えを踏まえたものであり、まさに画期的なことであります。都は、おくれをとってはなりません。
 東日本大震災では、埋立地等の戸建て住宅を中心に液状化被害が多発し、九都県八十区市町村で計二万七千棟が被災しました。南海トラフ巨大地震の被害想定では、液状化により約一千棟の建物が全壊すると予測しております。震災への備えとして戸建て住宅の液状化予防措置を講じることは、まさに喫緊の課題であります。
 国は、平成二十五年度当初予算案において、今後発生が懸念される大規模地震による宅地の液状化被害を抑制するため、液状化に関する調査や事前の対策工事を国費で支援するとしております。
 そこで、液状化対策が必要と判定された宅地における道路などの公共施設と宅地との一体的な液状化対策を、国とあわせて都も支援を行うべきと考えますが、都の見解を求めます。

○飯尾都市整備局長 宅地と一体的に行われる道路等の公共施設の液状化対策に対する国費助成につきまして、その具体的な内容は、国の来年度予算が成立した後に明らかになる予定と聞いております。
 都といたしましては、その内容を踏まえた上で、例えば土地区画整理事業で、事業者から具体的に液状化対策を実施する提案がございましたらば、事業計画等の相談に応じていくこととなります。

○小磯委員 次に、災害時に多くの都民が命を守るよりどころとなる公共建築物の液状化対策の基本方針について質問いたします。
 都がかつて我が党の代表質問に、二十四年度末までに見直しを行うと答弁した新たな液状化予測図は、約束どおり、この三月末にも公表されます。
 そこで、そもそも今回の改定は、昭和六十一年に初めて作成されたものを、どのような知見に基づき改定するものなのか、見直しの具体的な内容を伺います。

○村尾東京都技監 東日本大震災を踏まえ、昨年度から東京都土木技術支援・人材育成センターが中心となって、地盤の専門家の意見を聞きながら液状化予測図の見直しを行っております。
 見直しに当たりましては、これまで蓄積してきた五十年、約二万本余りの地質調査データを用い、地下水位や砂層の分布状況などを詳細に把握した上で予測いたしました。
 また、液状化の判定に当たり、液状化現象が多く見られた地域におきましては、新たに地質調査を実施し、そのデータをもとに判定方法の妥当性を検証いたしました。
 これらにより精度を高め、新たな予測図を、今週公表いたします。

○小磯委員 現状版より、より予測の精度が向上しているはずであり、今後の都の液状化対策が大いに進展していくことを期待いたします。
 改定された液状化予測図がまだ公表前とのことなので、現状の液状化予測図に基づいて質疑をいたします。
 そこでまず、現在の予測図での液状化が発生しやすい地域である赤色、液状化の発生が少ない地域である黄色、液状化がほとんど発生しない地域である緑色の三区分は、それぞれ区分の面積がどのぐらいあるのか伺います。

○村尾東京都技監 現在の液状化予測図は、昭和六十一年度に公表し、その後、二度にわたり対象地域を拡大したものでございます。
 対象地域全体の面積は千百九十五平方キロメートルで、このうち液状化が発生しやすい地域は、地表から深さ二十メートルまでの地層全体と、地表から深さ六メートルまでの浅い部分がともに液状化しやすい地域であり、全体の約五%、六十三平方キロメートルが該当いたします。
 また、液状化の発生が少ない地域は、地層全体では液状化しにくいものの、浅い部分では液状化がしやすい地域でございまして、全体の約一四%、百七十二平方キロメートルとなります。
 残りの八一%、九百六十平方キロメートルが、液状化がほとんど発生しない地域となってございます。

○小磯委員 黄色地域と赤色地域の合計は二百七十平方キロメートルを超える広大なものであります。しかも、黄色と赤は、このパネルでも明らかなように、区部東部に集中しており、人口密度も都市機能の集中度も高い地域であります。
 当然、こうした地域全体的に液状化対策が進むことが望ましいわけでありますが、液状化予測図にある液状化が発生しやすい地域及び液状化の発生が少ない地域の中で、防災上重要な公共施設に位置づけられている都立学校の数と、そのうち区市と避難所協定を結んでいる学校数--こちらでいいます、液状化が発生しやすい地域に所在する都立学校は二十二校、うち避難所指定校は二十一校、液状化の発生が少ない地域に所在する都立学校は五十一校一分教室、うち避難所指定は四十三校一分教室ということを、ちょっと事前に資料をいただきました。
 この都立学校以外の防災上重要な建築物として、昭和六十一年予測図の赤色、黄色の地域内、ここにも、またこの災害拠点病院となる都立病院、そしてまた都立公園関連施設なども存在するわけであります。
 代表総括では面的整備について訴えたわけでありますが、少なくとも都としては、防災対策や都民の避難誘導対策上、重要なかなめとなる避難所や大規模滞留施設、防災指揮拠点の立地箇所だけでも、万全の液状化対策を講じておかなければ大変なことになるわけであります。
 これは、学校と体育館を想定して私どもで作成したイメージ図でございます。大規模建造物の場合、建設時にボーリング調査を行って土質を調査するとともに、通常かたい岩盤層にくいを打ち込みます。岩盤に打ち込んだくいは、上下方向の揺れには強く、建造物の躯体が崩れることはありません。しかし、横方向の揺れに対しては、岩盤に打ち込んだくいは必ずしも万全ではありません。この点、液状化が深い深度から地表近くまで広範囲にわたって発生すると、例えば海岸近くなどでは、側方流動が発生し、くいが折れるおそれもあります。
 東日本大震災は、この地表近くの液状化が地上の建造物にどれほど深刻な影響を及ぼすのかが初めて顕著になった事例であると思います。
 地表近くでも液状化が発生すると浮力が発生し、コンクリートのべた打ち基礎を押し上げる。あわせて、水を含む砂層の液状化により、軟弱化した地層では地震の振幅が増大し、この合わせた力が地表の建造物に影響を与えるのであります。
 当然、岩盤に基礎を打った鉄筋、鉄骨構造の建造物の躯体それ自体は崩れなくても、液状化によって波打つようになったべた打ち基礎と一体的な構造にある壁や出入り口が、波打つべた打ち基礎に引きずられて、ひびが入ったり、ドアがあかなくなったりするわけであります。それだけで、非構造物が落下する場合と同様に、もはや防災上、避難誘導上、期待されていた役割を果たせなくなってしまうのであります。
 そこで、さきに見直され公表された都の防災対策の基本となる地域防災計画の中の都施設の液状化対策についての具体的な内容を明らかにするとともに、今後、速やかに対策に取り組むべきでありますが、総務局長にこの件をお伺いいたしまして、そしてまた、財務局長には、防災上重要な公共施設が発災時に十分な機能を果たせるよう、各施設管理者において備えていく必要があると考えております。
 今般、都内の液状化予測図の見直しが図られるとのことでございますが、都有施設の敷地について、液状化への対策を講じる必要があると思います。
 対策が必要となった場合、既存施設については、所管局が適切に実施していくことになるわけでありますが、調査や検討に当たっては、各局がまちまちな対応をとらないよう技術的な側面からの支援が必要であります。
 そこで、各局が所管施設の敷地に関する液状化について、新たに調査や対処を行う必要が生じた場合、技術的側面から財務局はどのように取り組むのか、所見を伺います。

○笠井総務局長 首都直下など大規模地震が発生いたしますと、区部の低地帯を中心に液状化の被害が広がるおそれがあり、発災時に重要な役割を果たす公共施設につきましては、耐震化の推進に加え、適切に液状化対策を講じる必要がございます。
 このため、都は、昨年十一月に修正をいたしました地域防災計画に、液状化のおそれのある地域で、公共建築物等の工事を行う際の地盤改良や建物の基礎等の強化といった対策を定めたところでございます。
 防災上重要な公共施設が発災時に十分な機能を果たせるよう、各施設管理者において備えていく必要があると考えております。

○中井財務局長 都有施設の建設に当たっては、敷地の地盤性状を把握して建物の基礎構造を検討するため、ボーリング調査や採取した試料の土質試験などによる地盤調査を行っており、その結果を踏まえ、必要な液状化対策を講じているところでございます。
 各局が所管施設の敷地に関する液状化について新たに調査を行うこととなった場合は、施設建設時の地盤調査結果や液状化予測図などのデータを活用するとともに、必要に応じてボーリング調査を追加するなど、調査方法の提案や調査結果の検討など、適切な支援を行ってまいります。
 また、施設ごとの状況を踏まえ、液状化対策が必要な場合には、施設利用への支障が生じないよう、具体的な設計や工事についても的確に対応してまいります。

○谷村副委員長 小磯善彦委員の発言は終わりました。(拍手)

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