予算特別委員会速記録第四号

○斉藤委員長 続きまして、畔上三和子委員の発言を許します。
   〔委員長退席、門脇副委員長着席〕

○畔上委員 それでは質問いたします。少人数学級について伺います。
 政府は、二〇一七年度までの五カ年で小中学校すべての学年で三十五人以下学級にする計画案を見送りました。そうした中でも、現在、国制度で実施している小学一年生、二年生に加え、都独自に中学一年生の三十五人以下学級に踏み出す予算を提案したことは重要だと思います。
 中学一年生の三十五人以下学級をしようと判断した理由について、まず伺います。

○比留間教育長 中学校入学当初の生徒の学校不適応などに対応するため、都教育委員会は、中学校第一学年について、平成二十二年度から計画的に教員の加配を拡大し、学級規模の縮小のみならず、少人数指導、チームティーチングなど、各学校の実情に即した最適な方策を選択できる弾力的な制度として実施をしてまいりました。
 中学校第一学年では、いじめの認知件数が最も多いなど、依然として課題があることから、来年度、三十五人以下学級編制を可能とする教員の加配制度を完成させることとしたものでございます。

○畔上委員 今ご答弁で、中学一学年では依然として課題があるからだというお話がありましたが、これは重要です。同時に、少人数学級などで、子どもと向き合う時間と、きめ細やかな対応が必要なのは中学一年生だけではありません。
 都民は、小一プロブレム、中一ギャップ対策にとどまらず、少人数学級を求めています。私のところにも、順番に上の学年に進むと期待していたのに何とかならないのでしょうか、こういった声がたくさん届いております。
 都内の現場の代表であります小学校校長会の来年度の予算要望でも、小学三年生の少人数学級を求めています。都内中学校校長会も少人数学級を要望しております。
 そこで、どれくらいの子どもたちが大人数の学級で学んでいるのかということでありますが、今年度の区市町村立小中学校において、三十六人以上の学級数及びその児童生徒数はどのぐらいいるんでしょうか。伺います。

○比留間教育長 今年度の都内区市町村立小学校における一学級当たりの児童数が三十六人以上の学級数は二千五百六十五、在籍する児童数は九万六千七百十一人でございます。中学における学級数は、同様に二千七百五十六、生徒数は十万三千三百四十でございます。

○畔上委員 現時点で、小学生、中学生を合わせますと十九万九千八百五十一人、約二十万人の子どもたちが大規模な学級で学ばざるを得ない、こういう状況ということであります。四十一人以上のクラスにいる子どもたちもいるのです。
 事前にお伺いしたところによりますと、四十一人以上は小学校十九学級、中学校は三学級、合わせて二十一学級もありました。こうした状況を放置していいのでしょうか。教育長、伺います。

○比留間教育長 東京都教育委員会といたしましては、小一問題、それから中一ギャップに対応するために、小学校一、二年生、それから中学校第一学年について、三十五人編制を可能とする取り組みを計画的に進めてまいりましたけれども、児童生徒の生活集団としては一定の規模が必要だというふうに考えておりまして、その考え方は引き続き維持してまいりたいというふうに考えております。

○畔上委員 いまだに大規模な学級規模が必要なんだ、こういうところがまだ東京にあるというのは、本当に残念でなりません。多人数学級で学ぶ子どもたちは二十万人もいるわけです。子どもたちのためになることは、何でもやっていただきたいと私は思うんですね。
 先ほどもちょっといいましたが、現場が求めているのは少人数学級です。先生が丸をつけるにしても、日記にコメントをするにしても、三十人と四十人だと子ども一人にかける時間が全然違う。
 教室も四十人もいれば、机の間を歩くスペースもほとんど狭くて、本当に狭くて、音楽袋や図書袋が机の横にかかっているので、ひっかかって転ぶ子もいると、先生もカニ歩きで、歩くたびに机の上のプリントや物が触れて落ちるんだと、そういう状況でいいとは、とてもいえないわけです。
 文部科学省の二〇一二年九月六日に提出されました公立義務教育諸学校の学級規模及び教職員配置の適正化に関する検討会議の報告の中には、少人数学級の必要性がこう述べられています。
 一つには、一学級当たりの児童生徒数は国際的に見て依然低い水準にあり、保護者の約八割以上が三十人以下学級を求めていること。また、学校現場の状況を見ると、子どもたちの基本的な生活習慣、規範意識、学習意欲、態度などに課題があり、一人一人に目の行き届いた指導を行うことが一層求められていること。さらには、すべての教科などで、より一層きめ細かい指導を充実させるためには、学級規模そのものを縮小することが必要である。こうしています。
 このように、検討会議の報告の中で、少人数学級の必要性が述べられているわけですけれども、これに対する都教委の見解を伺います。

○比留間教育長 文部科学省の報告には、すべての教科等でより一層きめ細やかな指導を充実させるため少人数学級の必要性を述べておりますが、その効果については、引き続きさまざまな分析を積み重ねていくことが必要とし、三十五人以下学級の制度化に当たっては、少人数学級等の効果検証を十分に積み重ねながら検討を進めていくことが必要と結論づけております。
 都教育委員会は、今後の国の検討経過を見守ってまいります。

○畔上委員 何か部分を取り上げて、三十五人学級をやるかどうかはわからないというような結論であるかのようなご答弁でありましたけれども、報告書全体に貫かれているのは、文科省の姿勢は明らかに進めるという立場なんです。
 すべての教科などでより一層きめ細かい指導を充実させるためには、学級規模そのものの縮小が必要、そして、着実に三十五人以下学級を推進することは不可欠だとまで書いているんです。文科省は明確なんです。だから、来年度の予算の概算要求で文科省として少人数学級の五カ年計画の概算要求をしたわけです。
 この間、費用対効果がはっきりしないなどといってお金を出し渋っているのは財務省です。しかし、報告書のポイントをよく読んでみますと、費用対効果の面でどうなのか、こういう指摘に対しても、既に少人数学級にしている県で学力向上への効果を示すデータや生徒指導、学級経営、さらには教職員の実感、保護者等の納得感の面で効果あることを示すデータがたくさんあるんだと書いているんです。
 この文科省の検討会のメンバーは十六人です。その中には、都の教育委員会、木村教育委員会委員長を初め、都立特別支援学校長、区立の小学校長、そして区立の中学校長、三鷹市長、都内の関係者が五人も入っています。
 この方々が入った検討会議で学級規模の縮小が不可欠であり、実践的なデータが多数存在している、こう指摘しているわけです。
 国の動向などといわないで、都が全国に率先して少人数学級を実践すべきです。いかがですか。

○比留間教育長 都教育委員会は、入学直後の時期が、その後の充実した学校生活を送るための基礎を固める重要な時期であることから、平成二十二年度に小一問題、中一ギャップを予防、解決するための加配を導入し、順次拡大を図ってまいりました。
 この加配は、生活集団としての学級の教育効果や切磋琢磨による社会的適応能力の育成にも配慮し、画一的に少人数学級を実施するものではなく、学級規模の縮小や少人数指導、チームティーチングの導入など、各学校の実情に即した、最適な方法で活用することが可能な柔軟な制度としております。
 来年度、国に先んじて中学校第一学年で三十五人以下の学級編制が可能となるよう予算化することで、この中一ギャップに関する加配は完成をいたします。まずは、この加配を活用して、小一問題、中一ギャップの解消に全力を挙げていくことが必要だというふうに考えておりまして、今後の展開につきましては、義務教育の場合は、教育の機会均等でありますとか教育水準の維持というのは国の責任が大でありますので、国の動向を見守ってまいりたいというふうに考えております。

○畔上委員 国の責任はもちろん大きいわけですが、しかし、各県はそれぞれ自分たちで進めているじゃありませんか。
 例えば、香川県。香川県では、県独自に三十五人学級を進めて、二〇一一年度は、国が小学校一年生の三十五人学級を始めたので、県として二〇一一年度は小学二年生を実施し、さらに今年度は小学校三年生にも拡大しました。学年進行で進めたいので、来年度は小学校四年生に拡大を決断し、予算案に入れたというのです。
 山梨県では、来年度は小学校五年生、中学二年生、そして再来年度は小学校六年生、中学三年生と、計画的にすべての学年で三十五人学級とすることを決めたと伺いました。
 山梨県では、以前は切磋琢磨できないなどと否定的な議論もありましたが、不登校やいじめ問題の解決のために少人数学級を求める声が現場からも、そして保護者からも上がって、教育委員会でも教育的効果があるということになったというんですね。
 背景には、山梨県は、二〇〇七年度、中学校で不登校率が全国ワーストワンだったんですが、子どもに向き合う環境をと少人数学級を決断し、実施し、不登校の子どもたち千人が四年後の二〇一一年には六百八十人と、三割減らすことができた。そのことによって全学年にふやす決断をしたということでありました。
 全国の県では、このように国に先駆けて少人数学級を実践して、効果を実感して、そして取り組み、前進をさせているんです。こうした姿勢こそ都教委に求められていると思います。
 昨年の十一月十八日の新聞に、PTA全国協議会、全国市町村教育委員会連合会、小中学校の全国校長会など、二十三の全国組織が連名で、早期に教職員定数改善計画を策定し、小中学校の全学年で三十五人以下学級実現をと、全面広告を出しました。
 少人数学級のメリットとして、授業での発言回数や行事での役割担当がふえる、子ども同士が打ち解け、つながりが深まる、教室にゆとりが感じられるなどなど、書いてあります。ちょっと小さいですが、ここには書いてあります。
 そして、今、学校現場で起きていることの筆頭には、いじめ、不登校への対応が急務だと、このように書いてあります。そして、多様化する学校現場に対応し、子どもたちの学びの質を高めるために、子どもたち一人一人に目が行き届く教育環境の実現をと求めております。
 この全面広告、この教育条件整備に関する国民的総意ともいうべき意見ですけれども、これをどう認識されますか。

○比留間教育長 都教育委員会が取り組んでまいりました三十五人以下学級編制を可能とする教員の加配は、小一問題、中一ギャップの予防、解決のために実施するものでございまして、全学年一律的な学級規模の縮小を図るものではございません。
 PTA全国協議会等の意見広告の内容は承知してございますけれども、都教育委員会の考え方と軌を一にするものではございませんが、それぞれの立場からの意見というふうに受けとめております。

○畔上委員 教育条件整備として、国民的な少人数学級を求める声がこれだけ大きくなっているということなんですよ。このことを真摯に受けとめるべきです。しかも、教育長、軌を一にするものではないと今おっしゃいましたが、ここに載っている小学校長会、中学校長会の会長は、東京都内の校長です。
 教育長、教育長自身が、ことしの一月十八日、全国都道府県教育長協議会の会長として、国に対する来年度予算編成等に関する緊急要望を出しました。その中で、どういっているのか。
 少人数学級の小学校三年以降の学年への拡大による学級規模の適正化などが図られるよう、文部科学省が昨年九月に策定した新たな教職員定数改善計画案を早期に確定し、着実に実施することを要望しているじゃありませんか。文科省の方針を支持し、実行を求めているんです。
 先ほど、二十三の全国組織が全面広告を出した問題で伺ったときに、教育長は、考え方は軌を一にするものではないと、こうおっしゃったけれども、そうであるならば、ご自分の名前で出したこの要望とも意見が違うということでありますか。

○比留間教育長 全国都道府県教育委員長協議会は、四十七の都道府県教育委員会の委員長を構成員とする組織でありまして、同じく、教育長協議会は、教育長を構成員とする組織でございます。
 この両協議会が連名で行っております国への要望においては、三十五人以下学級の拡大だけではなくて、特別支援教育、外国人児童生徒への日本語指導の充実など、さまざまな教育課題に対応するため、中長期的な教職員定数改善計画を早期に策定し、着実に実施することを求めております。
 こうした要望内容は、各都道府県教育委員会のさまざまな要望を、最大限取り入れたものでございます。

○畔上委員 全国協議会の会長名で文科省に要望書を出したのに、その会長が、少人数学級の部分では意見が違うんだと。なのに、少人数学級を求めると。それだけ全国的には少人数学級を強く求めているということじゃないんでしょうか。そこは違いますか。

○比留間教育長 この学級編制で、文科省の現在の予算措置の状況としては、小学校一年、それから小学校二年のところまでは措置をされておりますけれども、そこから先の予算措置はなされておりません。
 東京都は、この中一ギャップの問題については、ここは対応する必要があるだろうということで、教育委員会として予算の要求をしてまいりましたし、国についても、そういう意味も含めて拡大を図る必要があるだろうと、こういう判断でございます。

○畔上委員 少人数学級については、文科省も、そして全国都道府県教育長協議会も、そして全国市町村教育委員会も、全国小中学校校長会も、PTA全国協議会も、都内の関係者も加わった、およそ教育に関するすべての組織が一致して推進すべきだといっているわけです。ところが、都教委だけは反対している。
 結局、都教委は、都独自にやるとお金がかかるから、それをおもんぱかっている、そういわざるを得ないんです。
 私は、少人数学級を進める決め手は、知事の決断だと思っております。先ほど述べました山梨県でも、知事の決断があったと伺いました。
 群馬県庁にも聞き取りに伺いましたが、県知事は、子育てするなら群馬でといわれる、そういう群馬をつくりたいと、ぐんま少人数クラスプロジェクトをつくって、少人数学級を推進しております。
 滋賀県では、来年度予算で三十五人学級を中学二、三年生にも拡大している。そして、小学校は、既に三年生を県独自で実施しているので、来年度は小学校四、五、六年生から選択するとしましたが、決断した滋賀県知事は、大津市の第三者委員会の報告書に背中を押されたんだと、このように記者会見で述べています。
 私は、知事が、教育条件整備の予算編成権を持っている知事が決断をすべきときだというふうに、強く求めたいと思います。
 今、学校でのいじめ問題が深刻な社会問題になっております。
 私は、小学校三年生になって、いじめに遭った子どもの保護者からも、お話を伺いました。その子の学年の場合は、小学校一、二年生のときには三十人余りの四クラスが、三年生で四十人、三学級になったということです。
 いじめの状況を伺って、本当に胸が痛みました。子どもたちの荒れの背景には、家庭の問題などもいろいろあると思いますけれども、それにしても、四十人でなく、もっと人数が少なかったら、目も行き届くし、クラスも落ちつくのではないかと思いましたと、お母さんはおっしゃっていました。
 ギャングエイジといわれる小学校三年生ですが、都教委の作成した、いじめの認知件数のデータでも、小学校の場合は、二年生から三年生に上がると一・四倍にふえております。勉強も大変難しくなる時期であります。
 実は、けさも、小学校二年生のお母さんから、私のところに電話が入りました。子どもが小学校二年生で、今、二十六人と二十七人の三クラスだ、四月から三年生になったら八十人になる、四十人クラスが二クラスになってしまうとクラスの人数が一気に一・五倍になるので、お母さんたちが非常に心配していて、何とかならないのかとお母さんたちで話し合っていると。
 今、小一プロブレム、そして中一ギャップということで三十五人以下学級に踏み出したわけですが、お母さんたちの間では、今、小学校三年生のことを小三ショックという言葉まで生まれているというんです。せめて、小学校三年生の少人数学級の実施を進めるべきだと思います。
 小学校三年生で少人数学級、三十五人以下学級を実施した場合、幾らかかるのか。小学校三年生の場合のみお答えください。

○比留間教育長 小学校第三学年で三十五人以下学級を実施した場合の所要経費を、教員の平均給与を用いて試算いたしますと、教員数約三百三十人で、人件費、給与費は、毎年度約二十七億円が必要となります。

○畔上委員 小学校三年生は二十七億円でできるわけです。
 この間、教育庁予算は、どんどん減らされてきました。公立学校に通う子どもたちの人数は九十四万人と、ほとんど変わらない。それなのに、教育庁の来年度の予算は、一九九九年度より六百億円も少なくなっているんです。先ほど、小三の少人数学級を求めましたが、それは六百億円の二十分の一以下でできるわけです。直ちにできるわけです。
 私は、すべての子どもたちの豊かな教育をしっかりと保障するためには、直ちに少人数学級に踏み出す、そのことを強く求めまして、質問を終わりたいと思います。(拍手)

○門脇副委員長 畔上三和子委員の発言は終わりました。

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