予算特別委員会速記録第四号

○斉藤委員長 続きまして、遠藤守委員の発言を許します。
   〔委員長退席、谷村副委員長着席〕

○遠藤委員 公明党の遠藤守でございます。時間は限られておりますので、簡潔にお伺いしますので、知事並びに関係局長も明快に答弁をいただきたい、このように思います。
 初めは、医療機関同士の連携についてお伺いしたいと思います。
 私たち議員、政治家のもとには、日々、都民からさまざまな意見や要望が寄せられるわけであります。
 こうした中、特に最近ふえているのは、こういう声であります。家族が入院したけれども、余りに早く転院を迫られた。病院で紹介された転院先は高額なところか遠方で悩んでいる。どうにかしてもらいたい。こういう声であります。
 こうした声に対して、私は現在、厚生委員会に所属をしておりますけれども、平成二十三年十一月の厚生委員会病院経営本部とのやりとり、そして昨年十一月の同じく厚生委員会福祉保健局とのやりとり、この問題、ぜひ都として何らかの対策を講じるべきである、このような主張をしてまいりました。
 あわせて、知事のもとにも新聞行っているかと思いますけれども、平成二十三年の三月には新聞に寄稿をいたしました。いわゆるこの転院問題、都の課題として取り上げるべきである。こういうような提言をさせていただきました。
 いわゆるこの医療機関同士の連携、すなわち急性期である方が入院をされる。ある程度落ちつくと。しかしながら、家には帰れない。その場合、療養病床への転院、または介護施設等への入所、こうなるわけであります。
 先ほど冒頭紹介をいたしましたけれども、家族の声、余りに早く転院を迫られる。この余りに早くというのは、よく聞くのが三カ月、九十日で、これを境に次の病院行ってくださいねと、こういう話であります。
 そこで、なぜこの三カ月、九十日で転院を迫られるか、この要因について福祉保健局長の答弁を求めます。

○川澄福祉保健局長 医療機関が担っている機能は急性期、回復期、長期療養などさまざまであり、それぞれの病院が連携しながら患者の病状に応じて適切な医療を提供しております。
 診療報酬制度では、医療機関の機能に着目した評価が行われており、急性期医療を担う病院の一般病棟の入院基本料は、がんや難病患者など引き続き密度の高い医療を必要とする患者を除き、原則として九十日を超えると大幅に減算されます。
 この制度が九十日を境に医療機関が患者の転院を促す要因の一つと考えております。

○遠藤委員 今答弁ありました。病床の機能分化、これが一つ。そして、診療報酬上の制度、いいかえれば病院経営上の判断、問題から、三カ月でおおむね転院してくださいねと、こういう話になる。こういう答弁だと思います。
 こうした転院の際に、医療機関、病院で患者、家族の皆さんから相談を受けているのが医療ソーシャルワーカー、いわゆるMSWであります。
 都が平成二十四年度に実施した医療社会事業実績等調査結果によれば、回答のあった三百十八の医療機関等でMSWが年間に受ける相談件数、これ全部の相談件数ですけれども、何と三百十万件。三百十万件いろんな相談を受けると。うち四五%に当たる百三十九万件が今いった転院を含む退院援助に関する相談であります。おおむね四五%、転院のことでみんな困ってるんです。この数は、これは延べの相談件数ですけれども、一つの病院で年間四万三千件の転院を含む退院援助、この相談があるということであります。
 もう一つデータを示します。これはちょっと古いですけれども、平成二十年度、都立病院。都立病院には、おおむね六十人近い医療ソーシャルワーカーがおりますけれども、この人たちが受ける相談件数、二十五万五千八百件、おおむね二十六万件、いろんな相談を受けたと。このうち、転院支援の相談件数は十一万一千四百件、これも半分近い数であります。
 これ以外にもMSWが受ける相談というのは、受診援助ですとか入院の援助、療養上の問題調整、経済問題、就労問題、教育問題、心理情緒的援助、そして医療における人権問題まで。医師は診療を行う、看護師は診療の補助と療養上のお世話をすると。それ以外はおおむね、このMSWが相談業務の一手を担っているというのが現状だと思います。
 そして、冒頭からお話ししておりますけれども、この転院支援、これは患者の病状はもちろんでありますけれども、患者、家族がどれだけ負担可能なのか。入院コストですけど、こういう入院コストの問題。さらに、近いのはいいわけでありますけれども、自宅から次の転院先への距離と。こういうような、患者の病状と、あと入院コストの問題、そして自宅と転院先との地理的な要因、こうした、主に挙げるだけでも三つの要因を加味して次の転院先を患者、家族に情報提供しないといけない。かなりのハードワークであります。
 そこで、都としてこの転院調整を行うMSW、どんな支援をしてきたか、答弁いただきたいと思います。

○川澄福祉保健局長 都は、MSWが患者の病状やニーズに応じて転院先医療機関を選定できるよう地域の医療機関の専門性や受け入れ体制等について医療機関案内サービス「ひまわり」や医療機関名簿を通じて情報提供を行っております。
 また、MSWが日ごろから多くの病院の情報を把握し、相互に病院間の実情を理解し合える関係を構築できるよう、転院調整の実践例や現場で悩んでいる医療連携の課題などを題材にしたグループワーク形式の研修を実施してるところでございます。

○遠藤委員 都としてMSWに対してさまざまな支援を行っていると、こんな答弁でありました。
 しかし、現場に入りますと、やはり患者、家族の方に対して転院先を検討するに十分な選択肢、これが提供されているのか。いいかえれば、入院先を紹介される、現在入院している入院先で次の行き先の提示、この選択肢が私は余りにも少な過ぎると。すべてではないですけれども、少な過ぎる。これが現実だと思います。
 さらに、その入院患者さん、支えてくれる子や孫、これが近くにいればいいわけでありますけれども、仮に老夫妻二人のうち、どちらかが倒れた。身寄りは近所にいない。残されるのは高齢の夫か妻であります。いずれもお年寄りであるわけでありますので、こうした方々に病院のMSWが紹介したのがA、B、Cというこの病院だけですと。あとは三カ月が来たら、どれだか一つ転院先決めてくださいねと。デッドラインは三カ月ですよと。こういう状況というのは、私は余りにも気の毒である、このように思います。
 こうしたことから、昨年十一月、厚生委員会において、こうした転院調整を現場のMSW、ここにゆだねるだけではなくて、都が広域的な観点から調整する仕組みを、ぜひ都としてつくるべきである、このように提案をいたしました。
 その際、都からはこういう答弁がありました。読み上げます。
 お話のように、急性期を脱した後も入院医療を必要とされる患者さんがほかの医療機関に転院される際の支援は、とても重要だと認識しております。病院から病院への転院の円滑化を図るための方策について、しっかりと検討を進めてまいります。
 検討状況はどうでしょうか。

○川澄福祉保健局長 高齢社会における地域医療体制のあり方を検討するため、都は、病院の現状と課題の把握を目的に、昨年十一月から都内の中小病院を中心に訪問調査を実施するとともに、本年二月に都内全病院を対象にアンケート調査を実施いたしました。
 これらの調査では、MSWの活動状況や他の医療機関との連携等についても調査項目に盛り込んでおり、三月末までにその結果を取りまとめる予定でございます。
 今後、その結果も踏まえ、MSWを初めとした実務担当者の意見も取り入れながら、転院支援のあり方について検討を行ってまいります。

○遠藤委員 質疑を受けて、都内の中小病院を中心に訪問調査、さらに都内全病院を対象にしたアンケート調査、これをしていただいていると。その結果をまとめて転院支援のあり方について検討をしていくと、こういう答弁でありました。
 都内の高齢化、平成二十七年度までに急速に進んでまいります。そして、平成三十二年には七十五歳以上の後期高齢者、これが前期高齢者の数を上回る。ここおおむね十年、十五年が勝負どころであると思います。
 こうした中で、これまで私の論は主に、病院と病院、医療機関と医療機関との転院、この話に絞ってきたわけでありますけれども、それのみならず、やはり病院と診療所との連携、さらに診療所や介護サービス事業者の連携、こういういわば施設と施設、医療機関と医療機関をつなぐ、このリエゾン機能、連絡調整機能、これが大変重要だと思います。
 そこで、今までのやりとりをお聞きになり、そして、知事は東電病院のベッドの問題にも深い関心をお持ちであったと思います。医療機関相互の連携と医療と介護の連携について、これについて知事の所見を求めたいと思います。

○猪瀬知事 まず、高齢者の方が医療や介護が必要になっても、できる限り住みなれた地域や自宅で安心して暮らし続けることができる、そうした社会を、超高齢社会のモデルとして東京から実現したい。そのための柱は、必要なときに必要な支援を受けられる仕組みであります。
 医療でいえば、症状に応じた適切な医療、在宅生活を支える医療を提供するための病院同士の連携、病院と診療所との連携、医療と介護との連携の強化、まさに遠藤委員がいわれていることです。それがかぎであります。
 東京には六百四十三の病院と一万二千六百十二の診療所があり、約四万人の医師がいます。この現場の力と知恵を結集することが大事で、そのために東京都は、急性期の病院から在宅医療まで切れ目のない医療を提供するための東京都医療連携手帳、それ今ちょっと持ってきたんですが、これを作成している。これは胃の絵がついている。これは肺の絵がついている。がんごとに違う。これ大腸。そして乳がん。ほかにもいっぱいあります。
 この中に、患者さんを中心に、かかりつけのお医者さん、それから治療担当の病院、それから他の医療機関、それから保険薬局ですね、おくすり手帳。患者さんを中心に、こういう形で、この連携手帳にその診療の流れが全部書いてあって、ここに部位とかいろいろ書いてあります、体の。そしてお医者さんが書き込むスペースも、いろいろ書いてあるんですが、これはちょっと母子手帳の二倍ぐらいの大きさですが、各がんごとに全部別々にこういうものがあって、これが東京都の福祉保健局や東京都医師会、一緒に名前が書いてある。これはこの数年前やっとできた。これは東京は初めてです、ここまでやっているのは。
 ですから、これだけの巨大都市で、しかも超高齢化社会を目前にしながら、こういうものを準備しながら、つまり東京都医療連携手帳、ご存じのように、これを作成していく。もう今始まっていると。これを周知していくと。皆さん、持っていない方がいいわけですけどね。持っている人はどこかががんになっているわけですからね。そういうもの、ちょっとでもがんになったらこれを持っている。
 そして、症状に応じた適切な医療を確保するための周産期医療や小児医療のネットワークの構築、医療と介護の連携を進めるための在宅療養推進会議や支援窓口の設置など、さまざまな施策を進めています。
 今後、医師会や現場の声を聞きながら、こうした取り組みを加速して、高齢者を支える東京の医療体制の充実を一層図っていきます。

○遠藤委員 手帳も大事です。けれども、しっかりと今申し上げた現場の皆さんが安心できる体制、これぜひ早急につくっていただきたい、このように思います。
 関連して、ちょっと質問の順番入れかえて、医療関係で島の医療について聞きます。
 離島住民への医療支援ということであります。
 昨年の六月に離島振興法が改正、延長をされました。この新たな離島振興法に基づいて、東京都は伊豆諸島を対象とする離島振興計画、これを策定いたしまして、その素案を先日公表したところであります。
 この計画の策定に当たっては、各島で住民説明会を開いたり、アンケート調査などを丹念にしておりました。
 私も大島行きましたときに、この作業、地域の行政、または議会、町民の皆さん、一生懸命やっている、この姿を見てまいりました。
 都は、こうした策定過程に当たりまして、島しょ町村との直接のヒアリング、これを行ったり、さまざまな情報交換をしながら、今示されているこの素案の中には、地元の町村の意向、これが十分に反映されているものと、このように理解をしております。
 島民にとって、とりわけ生活の安定に資する医療の充実--仕事も大事です、島の安全対策も大事です。ですけれども、やっぱり人生の基盤は健康、医療でありますので、この医療の充実、これはとりわけ重要であると、このように思っております。
 そこで、都が現地で行ったヒアリング、ここで明らかになった島しょ医療の実態について総務局長の見解を求めたいと思います。

○笠井総務局長 島しょ地域の医療でございますが、すべての島に医師が常駐をしております。そして八丈島には病院が、その他の島には診療所が設置され、内科を中心とした医療サービスを提供しております。
 また、大島と八丈島には産科が開設しており、大島、八丈島では島内での出産も可能となっております。さらに、一部の町村では、島外で高度な専門医療を受診する場合や、妊婦が島外で健診の受診や出産をする場合に交通費などの補助を行うなどの支援策を実施しております。
 なお、この妊婦への交通費の支援につきましては、平成二十五年度から国が特別交付税により財源措置をすることとなりました。

○遠藤委員 離島振興法の改正、延長で国の取り組みも一歩前進と、こういうことだったと思います。
 ただ、なかなか海と陸で隔てられてるということで、島の皆さん、心配の種が多いです。私はこういった観点から、平成二十二年第一回定例会におきまして、島民の交通費負担、この軽減を図る都の財政支援を強く要望したところであります。都もこれにこたえて、必要な支援を行ってきたと理解していますし、これは評価をしたいと思います。
 現在、各島しょ町村では、厳しい財政状況の中で、申し上げました島民の皆さんが本土の病院に行かれる、この島外医療機関へ通院する患者に対し、島の財政は非常に厳しい中ですけれども、島の皆さんのニーズが高いということで、それぞれ補助をするなど、非常に苦心をされているわけであります。
 都は、ハード、ソフト両面から、さまざまな施策をこれまで展開してまいりました。今回、新たにこの離島振興計画を策定するに当たって、またこれから実施をするに当たりまして、医療面も含めて、いまだ十分に解決されていない課題、いろいろあると思います。
 そこで、都はこの新たな振興計画に沿って、町村への財政支援を含めて積極的に取り組むべきと考えますけれども、局長、いかがでしょうか。

○笠井総務局長 離島振興計画の基本理念であります定住化を促進していくというためには、防災対策の強化や福祉、保健、医療サービスの充実など、島民生活の安定に向けた取り組みを島しょ町村みずからが主体的に行っていくことが重要であります。
 都といたしましては、この島しょ地域の重要性にかんがみ、引き続き町村それぞれの実情を踏まえながら、効果的な財政支援などを行うことにより、島しょ地域の振興を図ってまいります。

○遠藤委員 ぜひ島民の皆さん、期待していますので、よろしくお願いします。
 話題を変えます。
 都の文化財の保存管理、これについて質問したいと思います。
 昨日の質疑で自民党の早坂先生からも言及がありました千代田区神田のしにせそば屋、かんだやぶそば、これが火災で一部焼けてしまいました。
 このやぶそばは、東京都の歴史的建造物として選定をされている、池波正太郎さんも行きつけの、そして数寄屋づくりのすばらしい建物でありました。私も文化財のファンの一人として、貴重な建造物に被害が出てしまった、これは非常に残念でなりません。
 都内には、かんだやぶそばさんのような歴史的建造物だけではなくて、国の重要文化財や、または都が指定している文化財などの建造物--これからする話は建造物、建物だけであります。それ以外にもいろいろと大事なものありますけれども、建造物、これは数多いわけであります。
 いうまでもなく、こうした建造物は主に木造でありまして、こうした木造建築物は、火災だけではなくて、地震や風水害、こういった自然災害に万全な対策、これを講じていくべきだ、これは当然といえば当然であります。
 こうした観点に基づきまして、平成二十年の予特の席で、私は文化財の建造物、この防災対策を取り上げました。そのきっかけとなったのは、その質問前日に韓国の第一号の国宝でありましたソウル南大門、これが焼失をいたしました。その前後に、国の中央防災会議が中部、近畿地方で直下型地震が起こった場合、その地域の国宝を初めとする文化財は破滅的な被害が出ると、こういう発表がありましたので、都はどうなっているんだろう、こういう問題意識から、いろいろと調べてまいりました。
 調べてみると、こういうことがわかりました。
 こうした文化財の建造物の防災対策、これは国の文化庁の通知によって、一つ一つの建物ごとに保存管理計画を策定し、それに沿って対策を講じていく、こういう概要になっていたわけです。
 しかし、この文化庁が示している通知というのは、計画というのは防災だけではなくて、例えば、その文化財をどう活用するのか、またはその文化財と環境との調和をどうするのか等々、いろんなことをあわせて作成しないといけない、こういう状況でありました。
 したがって、どういうことになるかというと、余りに緻密で専門的なので、時間とコストがかかる。よって進まない、こういう状況でありました。
 そんなことから、私は平成二十年、都はそういう文化庁の指針に沿っているんじゃなくて、最も大事な防災、この観点に特化して短期間で策定できる、いわば東京モデルを策定し、これに沿って東京都の指定文化財建造物の保存管理、そして防災計画、この策定を行うように都教委に求めました。いわばスピード感を求めて、簡素な計画を立てるべきであるという視点であります。
 そこで、この東京モデルに沿った保存管理計画の策定、進捗状況について教育長にお伺いしたいと思います。

○比留間教育長 都教育委員会の指定文化財建造物のうち、広く一般都民に公開している建造物は、本来目的の使用と異なり、防災等のノウハウの蓄積が乏しいことから、こうした八件につきましては、保存管理計画を優先して策定することとしております。
 平成二十年当時、保存管理計画を策定しているのは二件でありましたが、その後、新たに五件の計画の策定を終了し、現在、残り一件を策定中でございます。
 このほか、都教育委員会では、文化財建造物に対する独自の耐震診断調査を実施するとともに、所有者に防火設備に関する指導助言も行っております。
 今後とも、文化財建造物の適切な保存管理に努めてまいります。

○遠藤委員 平成二十年当時の提案が生かされて、優先すべき建造物、これについて保存管理計画の策定が進んでいる、こういう答弁であったと思います。この点は評価をしたいと思います。
 ですけれども、今当該する建造物、八件ということでありますけれども、都内には都が指定する文化財建造物、年々ふえておりまして、直近では六十一件、これが東京都が指定する文化財建造物ということであります。うち八件ということであります。
 優先順位を決めて進んでいるということは、それは理解をしていますけれども、これにとどまることなく、着実にこの東京モデルを使って文化財の保護を進めていただきたい、このように思っております。
 ところで、こうした大切な文化財を保護する体制はどうなっているのか。これは次に聞きたいと思います。
 都内には、今申し上げましたとおり、建造物だけではなくて、美術品や工芸品、さらに史跡、名勝など、国と都の指定を受けている文化財、これだけでも約四千件あるんですね。これは、私は修学旅行、京都、奈良しか行っておりませんので、一般の人たち、こうした文化財というのは京都、奈良が一番多いんだろうなと、こういう印象を受けます。私もそう思っていましたけれども、実は一番多いのは東京なんです。約四千件。二位は、やはり京都、三千四百三十九件。三位、やはり奈良、二千百九十三件。東京はおおむね四千件ですから、都内には、この文化財がもう日本一集積をしている、こういう状況であります。
 その文化財の保護や管理に当たっては、大事な点が二点あると思います。
 一つは、一つ一つの文化財、個々の文化財の特性をしっかりと把握して、後世にその価値を継承するということ、これが一つであります。
 そして、二点目、万々が一壊れた場合には、その修理や復元ができるような体制、ノウハウをあらかじめ備えておくこと、この二点が重要なんだろうと思います。
 そこで、教育委員会の所管するこうした文化財保護の内容、そして平成二十五年度の文化財保護にかかわる人員体制及び予算、これはどうなっていますでしょうか。

○比留間教育長 都教育委員会は、国や都の指定、登録文化財、正確な数字で申し上げますと三千九百五十五件を対象として、復元、修理に必要な補助金の交付及びそれに必要な技術的、専門的な指導助言を行うといった文化財の保存管理に係る業務を行っております。
 これに加えまして、文化財の指定に向けた予備調査、銃砲刀剣類のうち美術品に当たるものの審査、登録や都民に対する文化財の理解を深めるための広報活動も行っております。
 人員体制は、常勤職員として専門職である学芸員一名、事務職員六名、非常勤職員として学芸員二名、計九名で、平成二十五年度の事業予算は六億六千九百万円となっております。

○遠藤委員 今、答弁聞かれたと思います。正規の学芸員、たった一人。事務職六名、非常勤学芸員二名。これで全国最多の文化財を保護し、そして後世に伝える、これを都教委はしていますと、こういうことであります。
 私は、これでは文化財の保存管理のための知識、または経験、技能、これを都として後世に継承していくことは困難である。学芸員お一人、これはいかにも心もとない、こういう数字だと思います。
 東京都だけ、この学芸員の方、またそれに関連する事務の方、また一生懸命やっている非常勤の学芸員の方、決して都の仕事だけやっているわけじゃないんです。先ほど申し上げましたとおり、国との仕事、さらに、都内には多くの美術館あります。美術館からのいろんな問い合わせ、また区市町村のこうした部門からの問い合わせ、こういうことにも問い合わせをしないといけないわけであります。
 東京都の文化財保護条例にはこういうくだりがあります。都の文化財についてこう書いてあります。
 我が国にとって歴史上、または芸術上価値の高いもの、これを東京都は都の文化財、このように位置づけているわけであります。
 都の専門職員である学芸員の役割は非常に大きい。拡充、増員すべきであると考えますけれども、教育長、どうでしょうか。

○比留間教育長 東京の文化財は多種多様でありますことから、都教育委員会の学芸員には、さまざまな分野の文化財に関する高度な知見、調査能力、保存や修理に関する専門知識、行政上の調整能力などが求められます。
 こうした知識能力の継承のために、後継者の確保に加え、文化庁等が実施する専門研修への出席を義務づけるとともに、文化財関係の学会への積極的な参加といった自己啓発を促しております。さらに、関係機関との折衝、調整の経験を長期にわたり継続的に積ませる必要があります。
 都教育委員会は、このように高い専門性が維持できるよう長期的な展望に立って、文化財保護行政を着実に推進する体制を検討してまいります。

○遠藤委員 長期にわたってできるように着実に検討すると。ぜひ真剣に、そしてスピード感を持って検討してもらいたい、このように思います。
 次いで、地元大田区における津波、高潮対策、これについてお伺いしたいと思います。
 東京港の沿岸部の第一線を防護する水門、これは港湾局管理でありますけれども、平成十三年度から着実に耐震対策を実施してきております。
 ところが、十九ある水門のうち、大田区内の沿岸にある港南四水門、南前堀、北前堀、呑川、貴船、この四つの水門は、いまだに耐震性の強化が実施されていない、こういうことであります。
 こうした中、昨年十二月、港湾局は海岸保全施設整備計画、これを新たに策定し、今申し上げた四つの水門、ようやく、ようやく、水門を廃止して防潮堤を整備する、このように書きました。
 この四つの水門、内側は以前に河川でありました。したがって、現在どうなっているかというと、その河川、一部を残して埋め立てが行われて、現在その一部の埋め立てを残したところ、河川でありますけれども、そこは大田区が管理する水路として、小型の係留船の置き場等々に利用されております。
 このうち、南前堀水門、これについては水路を現在のように一部残したまま防潮堤を整備する。このように決めて、既に必要な調査が行われております。
 そこで、時間がないのであわせて聞きます。
 まず一つ。今申し上げたとおり、本来ですと、護岸一直線にして整備する方が防潮堤としての機能が安全性、耐震性高いと思いますけれども、今の大田区の実情に合わせて、いささか特殊な形で、この整備をすることになった。その考え方について、基本的な点をひとつお伺いしたい。
 そしてあわせて、さっき申し上げましたとおり、この大田区の四つの水門、これについては、これまでも耐震化の取り組みが遅かったわけでありますけれども、この東京港には十九の水門があります。大田は四つですから、残っているのは十五でありますけれども、じゃ、この残りの十五はパーフェクトかというと、ところがどっこい、そうではなくて、この十五のうち、十一はやはり追加的な耐震対策をしなければならないという現状があるわけであります。
 私の主張は、いろいろ、十一残りあるかもしれないけれども、最も脆弱なこの大田の四水門、これを最優先でやるべきである、こういう主張であります。
 二問あわせて答弁求めます。

○多羅尾港湾局長 南前堀水門については、現在では内側は行きどまりの水路になっており、開閉操作を伴う水門を存続させる必要性が薄れております。そこで、津波、高潮に対する安全性向上の観点に加え、地元のまちづくりや小型船係留などの水域利用等について、大田区と協議を行ってまいりました。その結果、水門を廃止し、必要な水路を一部だけ残し、その水路を取り囲む形状で防潮堤を整備していくことといたしました。
 今後、着実に対策を実施してまいります。
 港南四水門全体の考え方でございますが、新たな整備計画では、最大級の地震が発生した場合においても、津波による浸水を防ぐよう耐震対策を実施してまいります。また、東京都防災会議による想定では、大田区における最大津波高は、東京湾平均海面から二・三メートルですが、防潮堤の高さは、伊勢湾台風級の台風を想定した高潮高に対応し、三・五メートルで整備することとしております。
 港南四水門については、沿岸部の第一線を防護する施設であり、地元大田区とも連携し、早期の整備に取り組んでまいります。

○遠藤委員 港湾局長、ちょっとおくれたけれども、大田はおくれたけれども、耐震性も、また高潮対策も十分なものになると、こういうことだと思います。しかも早期の整備に取り組んでいく。これは大田区民、朗報でありますので、きょうの夜から私はこれを伝えますので、ぜひ早くやっていただきたい、このように思います。
 最後に、羽田跡地、この活用であります。
 平成二十三年六月に総合特区法が制定されて、都は外国企業誘致を目的としたアジアヘッドクオーター特区を申請して、同年十二月に指定をされました。いろんな地域、指定されました。東京駅周辺、臨海地域、渋谷駅周辺、あわせて我が羽田空港跡地、これも特区指定を受けました。
 ところが、この羽田空港は他のエリアと違いまして、都市再生緊急整備地域、ここに指定されておりません。いわば、羽田空港跡地は、特別何らかの特殊な考えで都は特区指定したんだと思います。なぜこの羽田を特区エリアとして東京都は指定したのか、これをお伺いしたいと思います。
 あわせて、羽田空港跡地の第一ゾーンに、大田区は、平成の出島、このようにいわれる産業交流施設を設けて、ものづくりにおける国際、国内連携拠点、ハブとして整備をする予定であります。都として、大田区が整備を目指すこの産業交流施設に、いかなる役割を期待しているのか。それぞれ知事本局長の答弁を求めまして、質問を終わります。

○前田知事本局長 羽田の跡地は、国際化された羽田空港に近接し、その後背地は都内最大の工業集積地を形成しております。
 特区の内容を検討するに当たりまして、羽田空港跡地の一部を購入することを予定しております大田区から、立地特性を生かした、今お話しの産業交流機能を集積する提案がございました。この提案は、外国企業と国内企業との活発な産業交流による外国企業の訪日機会の増加や、進出した外国企業のビジネスパートナー探しの支援などを含んでおりまして、外国企業誘致にプラスに作用すると考えました。これで特区の考え方にふさわしい内容と判断したものでございます。
 次に、産業交流施設の役割でございますが、東京都が外国企業を対象に行ったアンケート調査では、日本進出のメリットにすぐれた技術力を挙げる一方で、高度な技術を持つ国内企業との出会いの場が少なく、具体的な提携まで結びつかないといった声が多うございました。
 大田区は、産業交流施設を整備しまして、中小企業の海外展開支援や新産業、新技術の創出支援とともに、展示場と会議施設を設け、見本市と連動した商談会の開催を行うこととしております。こうしたマッチング機能に加えて、外国企業に対するワンストップサービスの提供といった提案が区からなされております。
 こうした機能は、特区内における外国企業の進出及び事業活動サポートを目的に既に開設いたしましたビジネスコンシェルジュ東京と協働することで相乗効果が期待できると、このように考えております。

○谷村副委員長 遠藤守委員の発言は終わりました。(拍手)

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