予算特別委員会速記録第三号

○門脇副委員長 早坂義弘委員の発言を許します。
   〔門脇副委員長退席、村上副委員長着席〕

○早坂委員 さあ、いよいよ二〇二〇年、夏季オリンピック開催都市の決定が半年に迫ってまいりました。関係者の皆様の精力的なご努力に心から敬意を表します。
 スポーツの魅力は、単に勝ち負け、あるいは自分自身の限界に挑戦することのみならず、対戦相手にも十分な敬意を払うことにあると思います。これぞスポーツマンシップです。
 その精神からすれば、二〇二〇年東京招致をかち取ることは、極めて大きな目標ではあるものの、単に招致の成否だけに拘泥するのではなく、今回の対戦相手であるスペインのマドリード、そしてトルコのイスタンブールという国家や都市に十分な敬意を払うべきです。
 そこで、本日は、トルコと我が国に関するあるエピソードを紹介したいと思います。
 明治二十三年、一八九〇年九月、現在のトルコ、当時のオスマン帝国の軍艦エルトゥールル号が、明治天皇への親書を携え、我が国を訪れました。その帰り道、折からの台風にあおられ、和歌山県紀伊半島沖で沈没、乗組員五百八十七人が死亡、生存者はわずか六十九人という大事故が起きました。
 とても貧しい漁村であった本州最南端、現在の和歌山県串本町に流れ着いた船員たちに対して、当時の村人たちは、みずからのわずかな蓄えをすべて供出しました。また、明治天皇の指示により、遭難した船員たちは手厚く支援され、我が国の軍艦によって祖国まで送り届けられました。
 十分な通信機器も救助資機材もない明治時代のこと、初めて見る外国人を人肌で温めたり、大切な鶏を村じゅうから集め、彼らに食べさせたりなど、貧しいながらも、当時の我が日本人の気高さを示す出来事です。
 この美談が我が国の新聞に掲載されたことで、日本全国から多くの義援金が寄せられ、また、この一件に深く感動したトルコ、オスマン帝国国民は、遠い異国である日本に深い尊敬と親近感を抱いたとされています。
 ちなみに、周辺状況として、当時のオスマン帝国は、ロシアの南下政策に悩まされていました。エルトゥールル号遭難事件から十五年後の明治三十八年、一九〇五年、同じくロシアの南下政策に悩まされていた我が国が日露戦争に勝利したことで、トルコ、オスマン帝国は大いに沸き立ち、我が国に対する親近感がさらに増したそうです。
 このお話には、後日談があります。時代はずっと進み、昭和六十年、一九八五年のイラン・イラク戦争です。両国の都市爆撃の応酬が続く中、イラクのフセイン大統領は、四十八時間を猶予期限に、敵国であるイラン上空を飛ぶすべての航空機を無差別に攻撃すると発表しました。そこで、世界各国はイランに救援機を出し、自国民を国外脱出させていました。
 しかし、我が国は当時の自衛隊法により自衛隊機を派遣できず、また、日本航空、JALも労働組合から危険なフライトはできないと猛反対があったことから、特別機を出せずじまいでした。そんな中、トルコ航空が、二機、日本のために特別機を出すことを申し出てくれ、無差別爆撃までわずか一時間というタイミングで日本人二百人が無事イランを出国できたということがありました。
 当時の一部マスコミは、トルコの行為は我が国の経済支援を当てにしたパフォーマンスと酷評しましたが、これに対し、在日トルコ大使は、百年前のエルトゥールル号のお返しをしたまでと、静かに語ったそうです。
 私は、今回の立候補をきっかけに、ライバル都市イスタンブールのことを調べることでトルコが大好きになりました。そういう国と二〇二〇年大会を競い合えるのは、何てすばらしいことだろうと思います。この都議選が終わったら、この都議選で当選できたら、ぜひトルコに行ってみたいと思います。
 ここで、一つ提案があります。今回の二〇二〇年夏季オリンピック招致をきっかけに、スペインのマドリード、トルコのイスタンブール、そして東京の三都市がスポーツ交流を核にした特別な友好関係を築くような働きかけを、東京がしてみてはいかがでしょうか。
 例えば、毎年二千二十人の子どもたちが三都市を相互に訪れ、スポーツを通じて交流し合うというのも意義深いことだろうと思います。それは、スポーツを通して、平和でよりよい世界をつくるというオリンピック憲章の新たな体現方法だと思うからです。
 子どもたちに関連して、もう一つ提案があります。現在、我が国ではジュニアオリンピックが開催されています。これは、JOC、日本オリンピック委員会加盟の競技団体がそれぞれに主催しており、その内容はジュニア単独の大会、日本選手権の一部として行われるものなどいろいろです。
 調べてみると、アメリカにおいても、同様のジュニアオリンピックが開催されているようですが、いずれも国内向けのものです。その国内向けの大会を広く世界に向けたものにするために、二〇二〇年東京大会での収益をその基金に充てるというのはどうでしょうか。
 なぜ東京はオリンピックに立候補したのか。それは、都民にとって利益があるからです。その利益とは、心のデフレ脱却、三兆円の経済効果、東北の復興支援などなど、どれもが重要なものばかりです。これらが都民の理解を得ることができたおかげで、国民支持率は七〇%にまで上昇しました。
 しかし、その利益は、単に東京都民、あるいは日本国民だけにとどまるものなのか。いや、そうではない。東京のオリジナリティー、日本のすばらしさがオリンピックムーブメントにこんな貢献をするのだというメッセージなくしては、百一人の国際オリンピック委員の投票行動には結びつかないだろうと思います。
 IOC委員の皆さんが、三都市を比べて東京の方がいいかな、ではなく、ぜひ東京にやらせたいと確信を持って投票していただくために、東京は最後の半年でどんなメッセージを発信するのか。
 二〇二〇年大会がどうして東京でなくてはならないのか。二〇二〇年東京での開催をこれまでの三十二回のオリンピックの中でどんな特別な意味を持った大会にするのか。アイデアはいろいろあります。
 知事の大きな視点に立ったご見解を伺います。

○猪瀬知事 トルコは、イスタンブールは、三十年前にボスポラス海峡に橋をかけたのは日本の会社なんですね。イスタンブールの海底、地下をヨーロッパ側とアジア側を結んでいるトンネルを今やっているのは日本の会社なんですね。それはそれなんです。
 今、いいたいこといっぱいあるけれども、イスタンブールとマドリードの悪口はいっちゃいけないんです。ネガティブキャンペーンはしちゃいけないことになっている。だから、東京のいいところをきちんといわなきゃいけない。
 そういうことで、二〇二〇年オリンピック・パラリンピックは、こういう言葉なんです。二つの言葉、ディスカバー・トゥモロー。
 IOC評価委員会東京訪問の閉会に当たり、この言葉を再確認して、日本は、東洋でもない、西洋でもない、独自の文明を持っている。つまり最もあしたに近づいている。先進国というのはあしたのモデルはわからないけれども、途上国は先進国のモデルを追いかけるわけ。先進国は未来を自分で探さなきゃいけない。しかし、それはある程度、この洗練されて独自の文明をつくり出したこの東京にあるんだと。それは日ごろ皆さんが一番感じている--おもてなしを含めた我々自身の細やかな心や感情や、そして気遣いや、そういうものの中にあふれているんですが、それを外国人に伝えるというのは非常に難しいんです。
 我々は外国から帰ってくると、東京は一番いいねと思います。これは間違いなく思っている。しかし、そういうことを、外国から日本に来たことのない人はわからない。あるいはIOC評価委員だって、四日間ぐらいいただけじゃ、なかなか本当の東京の姿、下町だって行っている暇はないですから、競技場を視察して、そしてオリンピック・パラリンピックの東京大会の中身をきちんと説明しなきゃいけない。ですから、あのIOCの評価委員は、四日間、物すごく忙しかったですよ、朝から晩まで。昔みたいに接待とかないんですから、今は。
 そういうファクトをきちっと伝えるということが一番大事で、皆さんが日ごろ感じているよさを四日間に凝縮してどう伝えるか。皆さんが感じているこの東京のよさは、オリンピック・パラリンピックをやるにふさわしい場所だという気持ちが皆さんにあると思うんです、既に。その気持ちがあれば--そして国立競技場、あの新しいデザイン、あれはイラク出身でイギリスでずっと活躍した女性の建築家です。トゥモローというイノベーションの東京の姿を、ああいうスタジアムのデザインの中で、あれは安藤忠雄さんを含めて国際コンペで選ぶんですね。日本人の優秀な人もいたんだけれども、ちょっと惜しかった。構造上、ドームが開くか開かないかというところがあって、構造設計の問題でちょっと無理があると。日本人のすごくいい、これも女性の建築家だったんですけれども、残念ながらそのイギリスの建築家になりましたが、でも、すばらしい、やはりトゥモローという感じをあらわしたデザインだと思っています。
 それから、この東京というのは、一晩でできたわけじゃなくて、江戸時代からいろんな伝統をさらに深めてきて、我々自身の持っているこの心と、それから蓄積した伝統文化の深さですね。こういうことで、オリンピック・パラリンピック、二〇二〇年には、IOCあるいは世界のスポーツ界、世界のお客さんに対して、東京のよさを今度は差し上げるという形になると思いますね。
 そういうことで、二〇二〇年東京オリンピック・パラリンピック、最高のホスピタリティーでイノベーションの力を見せて、そしてオリンピック・パラリンピック大会の歴史に新たなインパクトを持ち込んでいく、そういうつもりでいます。

○早坂委員 ホスピタリティーや国民支持率の点数を競い合うことは、もちろん大切なことです。ですが、東洋と西洋のかけ橋、最高のおもてなし、ホスピタリティーは、いずれもライバル都市イスタンブールのセールスポイントでもあります。招致をかち取るために、それらに加えて、全く別の切り口から、百一人のIOC委員を圧倒するような提案をぜひ仕掛けるべきだと思います。
 私はどうしても二〇二〇年東京オリンピックが見たい。そして、その二〇二〇年東京オリンピックは、オリンピックの歴史に残る最高のものであってほしい。そんな思いで、またいろいろと提案させていただきます。ありがとうございました。
 さて、東日本大震災からはや二年、都民の防災意識の高さにこたえるように、あちこちで防災訓練が行われています。本日は、そのあり方について考えてみたいと思います。
 つい先日も、杉並区高円寺にある小学校で行われた防災訓練に参加してまいりました。この小学校は、木造住宅密集地域の中にあり、周辺の火災危険度は五段階評価の四から五。当日の講演会には、阪神・淡路大震災の被災者である、人と防災未来センターの語り部の男性を講師としてお呼びしていました。
 昨年四月に発表された首都直下地震の被害想定によれば、我が杉並区の死者は六百人、このうち七五%が火災により死亡するとされています。区内で最も火災危険度が高い地域で、阪神・淡路大震災の被災者をお呼びしての防災講演会、それだけ聞けばすばらしい企画のはずです。
 しかし、ここで問題にしたいのは、その内容です。講演は、大震災が発生した一月十七日はとても寒く、配給のおにぎりはかちんこちんに凍っていた。自分の家から持ってきたカップラーメンが最高のごちそうだった。三日分でなく七日分の備蓄食料があった方がいいというところからスタート。火災に関しては、杉並のこのあたりは火災危険度が高い地域ですと、わずかに触れたのみでした。
 この語り部の方は、講演なれされていて、お話はそれなりにおもしろく、参加者の満足度は高かったようです。しかし、阪神・淡路でも東日本大震災でも、食料が足りずに亡くなった方はいません。これは首都直下地震でも同じだと思います。
 つまり、備蓄食料は大地震から命を守るための本質ではないにもかかわらず、火災危険度の最も高い地域での防災講演会の印象が、かちんこちんのおにぎりになってしまう。もし今後、この地域で首都直下地震により火災が発生して、この防災訓練の参加者が火災で亡くなるようなことがあった場合、一体だれがその責めを負うのでしょうか。
 たまたま今回の講師がそういう講師だった。杉並区主催の防災訓練なら、そんなお話は杉並区議会ですればいいとお思いかもしれません。ですが、毎年数多くの防災訓練に参加している私の印象としては、実はこの手のお話しか聞いたことがないのです。
 大切なところなので改めて申し上げれば、阪神・淡路の死者の八〇%が倒壊建物や転倒家具の下敷きになって死亡しました。一方で、首都直下地震の死亡原因は、都内全体では、建物倒壊、家具転倒によるものと火災によるものがほぼ半分ずつだと想定されています。
 したがって、大地震から命を守るために最も必要なことが何であるかを防災訓練の参加者に明確に伝えた上で、そのための訓練がこれです、となるはずですが、優先順位が低い話や訓練ばかりをしているのが現実です。
 町会や自治会には小型ポンプが配置され、初期消火訓練が行われています。小型ポンプの倉庫には貯水槽が併置され、そこから水をとり、放水訓練を行います。しかし、火災現場の前に運よく貯水槽があるでしょうか。水はどこから持ってきますかと私が疑問を投げかけると、防災訓練のリーダーからは、早坂さん、せっかく今練習しているんだから、そのお話は後にしてくださいといわれ、次の年の防災訓練には呼ばれなくなります。
 小型ポンプには、長所と短所があります。短所は、水をためてある貯水槽の設置数に限りがあるところです。
 一方で、この短所を補うのがスタンドパイプです。
 私なら、こう話します。地震の被害が大きければ大きいほど、消防隊の手が回らず、助けに来てくれない。ならば、自分たちで初期消火をしなければならない。消防隊が使う消火栓が杉並区内には八十メートル四方に一カ所設置されているので、スタンドパイプがあれば相当程度カバーできるはずです。消火栓には圧がかかっているので、このスタンドパイプをつなげれば、ポンプがなくても三階建てまで簡単に放水ができるからです。
 すると、気のきいた人から、大地震が起きれば、断水して消火栓も使えなくなるんじゃないのと声がかかります。
 そこで、全くそのとおり、スタンドパイプは万能ではありません。ですが、杉並区内の断水率は二五%だとされているので、多くの消火栓は多分使えるでしょう。阪神・淡路でも消火栓の断水が問題になりましたが、このときは水道管がぽきっと折れた。その教訓を生かして、東京都はダクタイル鋳鉄管という強い管にすべて取りかえたので水道管が折れることはない。ただ、水道管と水道管のつなぎ目が地震で外れてしまう可能性があるので、それを耐震つなぎ手というものに今取りかえている最中です。首都直下地震の杉並区での死者は最大六百人、そのうちの七五%が火災によるものとされていますから、今、道路を掘り起こして水道工事をしているのは、実は防災のためなんです。一方で、小型ポンプは、もし水道管が断水しても、貯水槽なりプールの水が火災の目の前にあれば使える。小型ポンプとスタンドパイプのそれぞれの長所、短所を理解して訓練に臨みましょうと説明をすると、なるほど、さすがはミスター防災となるわけです。
 私の話はいいんですけれども、東京の防災を預かる者としての責務は、震災から犠牲者を一人でも減らすことにあります。私は、このことをテーマに八年間都政に臨んでまいりました。
 おにぎりのおもしろい話は否定しませんが、そこでおしまいにしてはいけません。おにぎりからスタートしてもいい。ただ、命を守るためにはこれだという核心部分に全精力をつぎ込まなければならないと思います。そのためには、地域特性に応じた実効性のある訓練を行うことが必要です。
 東京消防庁の取り組みについてお伺いいたします。

○北村消防総監 東京消防庁では、地域住民等による防災マップづくりや軽可搬消防ポンプ、スタンドパイプを活用したまち角での実践的な訓練の指導を推進しております。
 来年度は、木造住宅密集地域を管轄する消防署所を重点に、模擬消火栓を初め、スタンドパイプセットを増強配置し、指導体制の強化を図るとともに、地域の防災リーダーを対象に、初期消火資器材の取り扱いや訓練の実施方法を記載したマニュアルを新たに作成、配布し、住民や自主防災組織などによる訓練体制づくりを推進してまいります。
 今後とも、関係機関と連携して訓練の実効性を高め、より一層地域の初期消火体制の強化に努めてまいります。

○早坂委員 先日、神田のやぶそばで火災が発生し、大きなニュースになりました。このニュースを見て疑問に思ったのは、延焼三軒というところです。東京都が発表した首都直下地震の被害想定によると、火災による千代田区の焼失棟数は、風速八メートルという強風のもとで二軒となっているからです。やぶそばの火災があった日は、そんなに風は強くなかった。にもかかわらず、やぶそばを含めて計四軒が燃えたということは、この被害想定の見積もりは相当甘いのではと思いました。
 ですが、よく調べると、被害想定のいう焼失とは、全焼のことを指します。今回の火災は、やぶそばが半焼で、その他三軒は部分焼でしたから、私の思い違いでありました。
 千代田区には避難場所がありません。首都直下地震での区内の延焼火災はわずか二軒と見込まれているので、避難の必要がなく、つまり、防災まちづくりが完了しているからです。
 一方で、この被害想定の火災延焼による建物被害を見ると、品川区が三〇%、大田、目黒、墨田、杉並が二〇%の焼失率となっています。つまり、品川では、区内すべての建物のうち三〇%が全焼する。
 では、全焼した建物の向こう三軒両隣は、果たして無傷のままでいられるか。もしかしたら半焼、部分焼になるかもしれない。そうやって言葉を補い想像力を働かせると、焼失率三〇%というそっけない言葉の意味する火災被害の状況がありありと浮かんできます。
 猪瀬知事は、言葉の力をおっしゃいます。被害想定の報告書自体は、無味乾燥で仕方がないとしても、その分厚い冊子のどこがポイントなのか、どうすればその内容が都民に伝わるのか。それが都庁のご担当なり、私たち東京都議会の腕の見せどころだろうと思います。
 自助、共助を促す東京都からの情報発信について伺います。

○笠井総務局長 昨年四月に公表いたしました被害想定では、震度分布に加え、建物倒壊、火災延焼の状況などを被害の程度に応じ地図上に色分けして示したほか、区市町村別の詳細なデータをまとめた概要版を作成するなど、起こり得る被害の実像を的確に伝えるように努めたところでございます。
 都民の自助、共助の取り組みをさらに推進するためには、委員ご指摘のとおり、被害想定の内容だけでなく、関連する具体的対策をあわせて示すことや、さまざまな媒体を通じてより多くの都民の理解を促す工夫が必要だろうと思っております。
 今後、都民向けの普及啓発パンフレットやホームページにおいて、延焼予測から見た初期消火や耐震診断、耐震補強の重要性など記載の充実を図り、都民にわかりやすく伝えるとともに、防災ツイッターの活用など、多面的な情報発信にも取り組んでまいります。

○早坂委員 木造住宅密集地域を抱える地域において、初期消火を担う消防団の役割は極めて重要です。
 先日の本会議での我が党代表質問に対し、総務局長から、消防団に対する支援を強化するという積極的な答弁がありました。支援の内容として、初期消火や救助、救出に必要な資機材の整備が重要です。
 そこで、東京都内全域での具体的な取り組みについて伺います。

○笠井総務局長 消防団は、大規模災害発生時の初期消火や救援活動などで、地域での防災活動の核となる重要な役割を担っており、東京都といたしましても、その活動の充実に向けた多面的な取り組みを強化していく必要があります。このため、来年度、特別区消防団の可搬ポンプ積載車や救助資器材を拡充するとともに、団員の装備品の充実を図ることといたします。
 また、多摩・島しょ地域の消防団の資器材整備に対する補助を新たに行い、例えば、バールやハンマーなど救出救助用の簡易資器材や新型の編み上げ活動靴の整備を進めるなど、都内全域を視野に消防団活動の支援に取り組んでまいります。

○早坂委員 次に、都営地下鉄の防災対策について伺います。
 昨年修正された東京都地域防災計画では、安全な交通ネットワークの確保策として、鉄道施設の耐震化や早期復旧対策が挙げられています。我が党の代表質問で、今後の地下鉄施設の耐震化対策について伺い、交通局長から、国の方針に先駆けて一歩進んだ対策に取り組むとの答弁がありました。
 そこで、都営地下鉄の耐震対策について具体的にどのように取り組むのか、お伺いいたします。

○中村交通局長 東京都地域防災計画が想定した大地震の発生に備え、都営地下鉄において、耐震対策の一層の強化が必要であると考えております。今後、東日本大震災での教訓を踏まえまして、運行の早期再開を図る観点から、高架部の橋脚や地下鉄の中柱など、約三千八百本の補強を計画的に実施いたします。
 具体的には、まず、地下鉄運行の起点となります車両基地の工事を、平成二十六年度までに完了させますとともに、本線内は、車両基地側の駅から折り返し運転が可能で、他社の路線と乗りかえることができる駅までを優先的に施工いたします。例えば、浅草線では、馬込車両基地に引き続き、西馬込駅からJR線などと乗りかえが可能な新橋駅までの区間を、二十七年度までに完了いたします。

○早坂委員 東日本大震災では、都内だけでも三百五十万人の帰宅困難者が発生しました。駅は、大勢の人が集まってくる場所でありますから、大規模災害が発生した場合に、各地域の被災状況や公共交通機関の運行状況などの情報提供を行うことは非常に有意義です。
 そこで、都営地下鉄における、大規模災害発生時の情報提供に向けた交通局の取り組みについて伺います。

○中村交通局長 都営地下鉄の駅では、現在、大型ディスプレーを備えた列車運行情報表示装置を改札口に設置して、都営線や他社線の列車の運行情報を表示しております。
 東日本大震災では、NHKの報道が、各地の被災状況や鉄道の運行情報を得る上で非常に有益でございました。このため、乗降客が多く、帰宅困難者の発生が見込まれる駅を優先して、交通局が管理する全百一駅のうち四十三駅で、NHKの緊急災害放送を提供できるように装置を改修いたしました。
 今後、来年度末までに、すべての駅において放送を視聴できるよう、着実に整備を進めてまいります。
 この取り組みに加えまして、大規模災害発生時には、地元自治体、警察、消防などと連携し、駅の構内放送や掲示等を迅速かつ正確に行うことによりまして、お客様への情報提供の充実を図ってまいります。

○早坂委員 今週月曜、三月十一日には、都営地下鉄と東京メトロが、初めて合同で帰宅困難者訓練を行いました。今後とも、このような訓練を行い、乗客の安全確保に努めていただきますよう、お願いをいたします。
 ここまでは、首都直下地震対策について伺ってまいりました。ここで改めて、東日本大震災復興支援について伺います。
 東京都は、発災直後から、東日本大震災の復興支援に対して、質、量、スピードの面で、全国の自治体の中でぬきんでた役割を果たしてきたと自負しています。それは、上下水道や道路、港湾の復旧整備、警察、消防の部隊の大量派遣などを行ってきたことは、いうに及びません。東京都らしい、また、東京都にしかできなかったような復興支援に関して、改めて振り返りたいと思います。
 福祉保健局や建設局でいえば、被災地の火葬場が被災し、やむなく土葬にしていたものを、こちらからトラックを出して、八百六十体のご遺体を火葬してお戻ししたこと。
 教育庁でいえば、原発事故による避難で、福島県では六千人の児童が県外避難をしているため、県の小学校教員の新規採用をストップせざるを得ないところ、子どもたちが福島に戻ってくるまでの五年間程度、東京都内の学校で働いていただき、その後に、福島の学校に戻ることを予定している福島枠での教員採用を行ったこと。
 産業労働局でいえば、原発事故の風評被害で大打撃を受けた、岩手、宮城、福島の被災三県の観光産業に対して、一泊三千円、二年間で延べ九万泊にならんとする支援を行ったことなど、枚挙にいとまがありません。
 オリンピックに使うお金があるなら、その分を東北の復興に使うべきだという意見をおっしゃる方が、この都議会にもいらっしゃるようです。ご意見はご意見として伺っておきますが、私は、東京都議会議員として、東京都の行ってきた復興支援を大変誇らしく思います。
 さて、被災地の復興も新たな段階を迎えています。
 発災直後は、支援のボリュームとスピードが最優先でありました。困っていることがあれば、何でもおっしゃってください、全力で応援します、といわれても、被災した自治体は混乱のきわみで、そもそも何を頼んだらいいかわからない。だからこそ、支援を行う側は、被災直後は、おせっかいなくらいがちょうどいいと書いたものを、その年の九月二十一日の東京新聞に大きく載せていただきました。
 しかし、現時点では違います。被災地も冷静さを取り戻した現在、おせっかいな支援は、むしろ自立の妨げになるかもしれません。被災地から、この分野を手伝ってほしいとリクエストがあったものに対して支援を行うのが、現時点での正しい支援のあり方だと思います。
 発災から二年、新たなまちづくりなど、被災地の復興を支える人的支援について、東京都は、来年度、どのように取り組むのかお伺いいたします。

○笠井総務局長 人的支援も三年目を迎えますが、被災地では、住宅の高台移転や土地区画整理事業など、新たなまちづくりが本格化し、現地からの要望も、インフラ整備やまちづくりの専門技術を有する職員など、即戦力として活躍できる人材の派遣へとシフトしてまいりました。
 委員お話しのように、被災地の要望を踏まえ、現地の課題にこたえ得る有用な人材を復興事業の最前線に派遣し、被災地の実情に即した支援を的確に進めていくことが重要であると認識をいたしております。
 このため、来年度につきましても、東京都は、現地事務所を通じて被災地の状況やニーズを的確にとらえ、百名を超える職員を派遣し、被災自治体の業務の一翼を継続的に担うことで、早期復興を強力に後押ししてまいります。

○早坂委員 技術職員派遣を中心に、引き続き東京都らしい支援を行うというご決意だったと思います。
 まだしばらくは、こういったスタンスの支援を継続するのだろうと思いますが、あらかじめ申し上げておくとすれば、この先、被災地支援のさらに次の段階を迎えることになるということです。それは、地元自治体の皆さんだけで復興に取り組むという、真に自立した姿に対して、東京都が支援をするという段階です。
 復興支援は、被災地の自立を促すためのものであり、それは未来永劫、東京都が職員を派遣し続けることではありません。その段階を迎えるのは、まだ先のことだとは思いますが、常に将来の支援のあり方を見据えながら、東京都らしい、また、東京都にしかできない支援を継続してほしいと願います。
 さて、今日の私たちの生活は、高度にITに依存しています。例えば、携帯電話で通話やメールができるのは、中に入っている高性能チップのおかげですし、電車に乗るにしても、SuicaやPASMOにチップが入っている。そもそも電車が時間どおり到着するのは、ITシステムのおかげです。考えてみれば、電気、ガス、水道のみならず、ありとあらゆるものがITに依存しています。
 都庁の膨大な事務においても、もしITがやられてしまったら、理屈の上では鉛筆なめなめできる部分もあるでしょうが、現実には、ほとんどの事務がストップしてしまうだろうと思います。私たちは、ITのおかげで、人類史上最高の利便性を享受する一方で、そこに高度に依存しているゆえ、失われた場合の影響は、はかり知れないものがあります。
 昨今、世界各国でサイバー攻撃の被害が報告されています。そもそもサイバー攻撃の目的は、単に難しいセキュリティーを破りたいだけなのか、秘密情報から金銭的利益を求めたいのか、あるいは国家や企業に大きなダメージを与えたいのか。
 また、サイバー攻撃をしかける犯人は、国家なのか、個人なのか。それが国家であれば、被害の程度によっては武力行使と同じとみなし、国家の自衛権のもとで反撃することができるかもしれません。一方で、それが個人であれば、被害が極めて深刻なものであったとしても、自衛権を適用することは難しく、犯罪というカテゴリーでの対応をせざるを得ないかもしれません。犯人の追跡と特定が困難な中で、これに対応することは極めて厄介だということがわかります。
 これまでの概念ではとらえ切れない、このサイバー攻撃に対処すべきは、第一義的には日本国政府です。すなわち、自衛隊、警察庁、外務省、経済産業省、総務省など、国を挙げて、我が国民間企業まで含めた国の守りを行わなければなりません。
 東京都は我が国の首都であり、国家経営の中枢機能が集積しています。それは何も政府機関にとどまらず、銀行、証券取引所、テレビ局、空港、鉄道、電力、電話など、民間企業の集積においてもです。政府がサイバー攻撃の被害を受けた場合はもちろん、民間企業が被害を受けた場合でも、それが都民生活に大きな影響を及ぼすであろうことは容易に想像できます。
 しかし、国の責務はもちろんですが、私たち東京都議会、そして東京都も同じように、都民生活のあらゆる分野に責任を負っています。サイバー攻撃に対して、それは国の仕事だ、東京都の役割ではないとはいってはおられません。ところが、現行法体系を調べれば調べるほど、東京にある民間企業のサイバーの分野に、東京都が立ち入る権限も、また、能力も有していないという現実に直面します。
 そこで、きょうはお話をぐっと絞り、都庁という組織が、これまでどういったサイバー攻撃を受けてきたか、また、そのサイバー攻撃に対する取り組みについて伺います。

○笠井総務局長 都庁におきましては、昨年九月、不正アクセスの集中により、ホームページが一時的に閲覧しにくくなる事態が発生したほか、ウイルスの仕掛けられた標的型メールが送りつけられるなどのサイバー攻撃を受けております。
 都は、こうした攻撃に備え、システム面での技術的なセキュリティー対策を講じるとともに、運用面でも、職員に対する標的型メールへの対応訓練を実施するなどの取り組みを進めているほか、緊急時に迅速な対応が図れるよう、国や警視庁などとの情報連絡体制を確保しております。
 近年、サイバー攻撃の手法も巧妙かつ多様化していることから、新たに、送信元を詐称する成り済ましメールへの技術的な対策を導入するなど、さらなる取り組みの強化を図り、サイバー攻撃から都庁の情報資産を守り、都民サービスと都政の安定運営の確保に努めてまいります。

○早坂委員 サイバー攻撃に対する、国との連携強化を図ることが重要だと思います。
 サイバー攻撃の手法は、日々巧妙化しています。慶應義塾大学の土屋大洋教授によると、インターネットにつながっていなくとも、コンピューターがある限り、操作される可能性を認識すべきとのことです。それが重要なシステムであればあるほど、部品の段階で工作されてしまうことや、あるいは動作中のコンピューターに、USBでウイルスを仕掛けられることが現実にあったからです。
 このサイバー攻撃に対して東京都ができることは、まず、都庁の守りを固めることです。そのためには、何が都庁の機密情報なのかが特定されていなければ守りようがありませんし、責任も不十分です。
 既に、都庁では、機密情報に関するルールを定め、管理しているとは伺ってはいますが、セキュリティーを高めることは、一方で煩瑣な作業を課すことでもあります。職員一人一人がそのルールの重要性を理解していなければ、安全対策をおろそかにしてしまいかねません。より実効的な対策をお願いいたします。
 ところで、猪瀬知事の肝いりで、ツイッターでの情報発信が進められています。都民への積極的な情報発信はもちろん大歓迎ですが、一方で、成り済ましやデマ情報などのリスクもあります。必要な対策を十分にとっていただきますよう、お願いをいたします。
 さて、医療は何のためにあるか。その目的は、死を避けることではないでしょう。なぜなら、人は必ず死するものだからです。痛みを取り、苦痛を和らげ、障害を可能な限り取り除く。そうしたことによって、生命の質、クオリティー・オブ・ライフを高めることにこそ医療の目的があるのだろうと私は考えます。
 今日、我が国の二人に一人が、がんにかかり、三人に一人が、がんで死亡しています。がん患者の三人に二人は痛みを訴えることからすれば、がん対策を進めていくことは大きな意義があります。
 緩和医療の重要性につきましては、平成二十三年第三回定例会の一般質問で、当時の石原慎太郎知事と詳しくやりとりしましたので、ここでは繰り返しません。
 国は、平成二十五年度より、緩和ケア推進事業を予算化するとしています。その内容は、都道府県がん診療連携拠点病院において、緩和ケアセンターを設置し、診療体制の整備を行うとのことですが、東京都は、緩和ケア診療体制の充実に向け、今後どのような取り組みを行うのか伺います。

○川澄福祉保健局長 これまで都は、三十四カ所の拠点病院等に、緩和ケア外来や、医師、看護師、医療心理職等、多職種で構成する緩和ケアチームを設置し、がんと診断されたときから、必要な患者に確実に病院内で緩和ケアを提供できる体制を整備しております。
 また、今年度から、地域における緩和ケア水準の向上を図るため、都内二カ所の二次保健医療圏で、がん診療連携拠点病院が中心となり、地域の医療機関や関係団体等の協力を得て、緩和ケア推進会議を設置しております。推進会議では、医療資源リスト等を作成して情報を共有化するとともに、研修会や症例検討会等を通じて、相互にバックアップする体制の構築に取り組んでおります。
 今後、この事業を検証し、都内全域で地域緩和ケアが提供できる仕組みを整備してまいります。

○村上副委員長 早坂義弘委員の発言は終わりました。(拍手)

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