予算特別委員会速記録第三号

○斉藤委員長 続きまして、鈴木章浩委員の発言を許します。
   〔委員長退席、村上副委員長着席〕

○鈴木委員 初めに、官民連携インフラファンドについて伺います。
 記憶に新しい、九人ものとうとい命を奪った、昨年十二月の中央自動車道笹子トンネルにおける天井板崩落事故は、更新時期を迎え始めた国内各地の老朽インフラに内在するリスクの高さを改めて浮き彫りにいたしました。
 よくいわれますが、我が国は今、公的セクターが千百兆円を超える多額の債務を抱えている上、今後の税収入の伸びも見込めないという状況にある中で、膨大な数に上る老朽インフラへの対応が迫られるという大変厳しい事態に直面しているといえます。
 このことは、堅実な財政運営に努めてきた首都東京においても例外ではありません。前回のオリンピックから五十年が経過し、都内各所においても、高度経済成長期に集中的に整備された老朽インフラ更新に関するニーズは確実に伸びつつあります。
 その一方で、日本経済を覆い尽くした感のある、長期にわたるデフレ、円高不況は、設備投資などに対する企業の投資マインドを大きく萎縮させてしまい、企業が抱える内部留保額は二百兆円を超えるといわれるなど、多額のキャッシュが活用されることなく、滞留したままになっています。
 そうしたことから、政府・自民党は、昨年末の政権復帰以降、大胆な金融政策、機動的な財政政策、民間投資を喚起する成長戦略、いわゆる三本の矢によって強い経済を取り戻すべく、官民連携インフラファンドの創設を打ち出すなど、民主党政権ではなし得なかった民間投資の活性化に取り組んでおり、二〇二〇年までの十一年間で、従来の規模の二倍となる十兆円の拡大を目指しております。
 特にここに来て、国内の景気は、株高や円安効果もあって、小売店の売り上げや輸出産業関連のメーカー受注にも改善が見られるようですが、今後も民間投資を活性化させるための不休の努力が、今こそ欠かせないものとなっております。
 ところで、従来のPFI事業は、一九九九年、PFI法の施行以来、全国で四百件近い事業が行われており、その七割が学校や病院、庁舎や宿舎など箱物施設の整備でありました。しかし、国や自治体の資本投下が原則不要で、民間事業者が施設を運営し、利用者から料金を徴収するような独立採算型の事業は五%にすぎず、空港や港湾、上下水道といった大規模インフラの整備更新ではPFI事業が普及していないなど、インフラ分野への民間参入は必ずしも期待どおりに進んでいない状況にあります。
 そうした中で、二〇一一年の法改正により、簡単にいってしまえば、これまでのPFI事業が、官が企画や仕様書をつくる官製発注であったものが、企画の段階から民間事業者の意思が反映され、川上から川下まで、民間事業者が広く参入しやすいスキームになっており、今後、事業に係る株式、債権が適正な条件で流動化される、リスクマネーも含めた資金を取り込めるよう、マーケットが形成されることが大切でありますが、それまでの間は、この官民連携インフラファンドが、政府資金を呼び水として、機関投資家などによる投資を促進していくことが望まれるわけであります。
 そこで、都においては、既に、民間資金を活用しながら、PPP、パブリック・プライベート・パートナーシップ、官民連携インフラファンドを今年度立ち上げました。都議会自民党としても大いに注目をしておりますが、インフラ整備に民間資金の投入を図ろうとするこの手法は、従来型行政の域を超えた、全く新しい事業でもあるわけで、不断の検証が必要なことを肝に銘じて取り組んでもらいたいところであります。
 本日は、事業開始から二年目を迎えるこの官民連携インフラファンドについて、少々掘り下げ、幾つか伺っていきたいと思いますが、初めに、都が官民連携インフラファンドを手がける意義、事業実施の背景について、改めて確認をしておきたいと思います。

○前田知事本局長 官民連携インフラファンドの必要性につきましては、先ほど委員お話しになりましたとおり、日本の国と地方の債務残高がGDPの二倍にも及んでいること、この借金に頼った財政、行政運営は,続けることは難しい。
 一方で、これもお話がありましたが、国内の社会資本は、更新時期に来ている施設が膨大に存在する。その更新財源をどう確保するのかという大きな背景がございます。
 また、具体的課題として、一昨年の東日本大震災以降、エネルギー政策の先行きが見通せない中で、都民生活や企業活動を守るため、電力の大消費地であります東京都として、電力の安定供給や新電力事業者の育成、再生可能エネルギー活用可能性の検証が課題となっております。
 こうした状況を踏まえまして、都は、発電事業を投融資先として官民連携インフラファンドを立ち上げることといたしまして、国内でのインフラ投資における民間資金活用のモデルケースとなる取り組みを始めたところでございます。

○鈴木委員 都と民間が連携して資金を出し合う、この官民連携インフラファンドのねらいの一つは、先ほども述べましたが、民間の力だけではカバーが困難な、大き過ぎるリスクに対して、ファンドからの資金を呼び水として供給し、民間からの投融資を引き出すところにあるとされております。
 一足早く公的セクターの財政悪化に見舞われた欧米諸国でも、一九八〇年代以降、ファンドを活用したインフラ整備に早くから取り組んでおり、有料道路や空港、港湾などの交通分野のほか、発電や水道分野などにおいて、多くの実績があるとも聞いております。
 そこで、ファンドを活用してインフラ整備等を行う場合の特色について伺っておきたいと思います。

○前田知事本局長 東京都と官民連携インフラファンドの実例で申し上げますが、昨年十月、本ファンドから投融資を行いました、千葉県袖ケ浦の十万キロワット級火力発電所を例とした場合、ファンドに出資された民間資金を活用することで、発電所の建設コストは約百億円でございますが、東京都の四億円の出資にあわせて民間の資金を活用して、発電力の確保が可能になるという、行政としては、比較的少額の出資で大きな事業効果が得られると考えております。
 また、東京都が組成したファンドは、投資運用に精通した専門の民間事業者二者にファンド運営を託す一方で、東京都みずからは、民間資金の呼び水としての役割ということで、三十億円をファンドに出資する、いわゆる投資家と呼ばれる有限責任組合員としての役割に徹するなど、東京都のリスクを必要最小限に限定できる仕組みを採用したところでございます。

○鈴木委員 ファンドを通じて、発電事業、有料の道路や橋などのインフラ事業に対して投融資を行い、将来、その事業から得られる収益を出資者に還元するという仕組みは、これまで行政が行ってきた資金調達方法とは大きく異なるものであります。
 そもそもファンドという仕組みは、絶対利回りの追求が第一に求められるわけであり、ファンド運営事業者は、投資回収のための冷徹な経済合理性原則に基づく行動を行い、投資家と約束した利益を出すことを大きな使命としているはずです。
 先ほど局長からの答弁もありましたように、ファンドの運営をプロの民間事業者に任せ、都みずからは投資家の一員に徹するという都のファンドのつくりにメリットがあることは十分認めるところでありますが、投融資先の選定と投融資の決定、情報公表の是非など、ファンドの意思決定の権限は都にはありません。この部分が一つのポイントになるのだと思います。
 国と都では、ファンド設立の趣旨、目的が異なりますので、単純に比較はできないわけでありますが、例えば,国の官民ファンドの場合、ファンド運営事業者の権限を公的セクターが担い、国側がイニシアチブをとって意思決定が可能なつくりとしております一方、都が採用した仕組みの場合は、一投資家の立場の都は、ファンド運営事業者に対して意見を申し述べることは可能でも、ファンド運営事業者は、都の意見に従う法的義務はないため、ファンドの最終的な意思決定に都の意向が反映されるかは明確ではありません。
 このため、ファンドを通じて行う投融資は、行政の意向を反映させることが難しいのではないかという見方もあるようですが、都の見解をお伺いいたします。

○前田知事本局長 ファンドの運営は、委員お話しのように投資行為でございます。その投資行為と東京都という行政が目指します公共目的、これの両立というのが一番難しいところであるのは、まさにおっしゃるとおりです。
 ちょっと詳しくなりますが、ファンドの運営には、お話のように、投資回収のための合理的な予測可能性に基づく高度かつ専門的なノウハウというものが必要です。このため、投資判断を行うファンド運営事業者には専門の民間事業者をもって充てることとしまして、東京都は投資家という立場で本ファンドに参画しました。
 同時に、ファンドの目的を達成するために、東京都は、ファンド運営事業者の公募、選定に当たりまして、都の事業実施の趣旨に賛同して応募のありました事業者の中から、詳しく話を聞きまして厳選した二つの事業者を選定しておりまして、電力の安定供給への貢献など、東京都が掲げる行政目的というものをファンド事業者との間で共有していると、このように認識しております。

○鈴木委員 この官民連携インフラファンドという新しい手法においては、今後、新たなルールづくりが必要になるというふうに思っておりますが、インフラファンドに投入される都出資金の原資は公金であるということです。ファンド運営会社に何もかもすべて任せていては、都民に対する説明責任が果たせないといわれても仕方ありません。
 都の意向がしっかりとファンド運営に反映されているか、不断の検証は不可欠だと思いますし、我々都議会自民党としても、今後とも注意深く見守っていきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
 さて、インフラファンドからは、本年一月、熊本県芦北町に新設するメガソーラー発電所への投融資を行いました。投融資先が首都圏から遠く離れた遠隔地であったこともあり、都の公金を出資する意義が見えないとの声があったのも事実です。
 新しい事業手法であるがゆえにも、都民に対してわかりやすく、より丁寧に説明する必要があると考えるところであります。
 本ファンド事業にとって、熊本県に立地する発電所に対して行った投融資の意味について伺っておきたいと思います。

○前田知事本局長 東日本大震災後に設けましたこのファンドでは、電力の安定供給ということと、それから新電力の育成並びに再生可能エネルギーの実証ということが目的になっております。
 このファンドでは、これまで首都圏で二十万キロワット、その他の地域で約二万キロワットの発電事業に投融資を行い、電力確保に努めてまいりました。
 熊本県のファンドですけれども、まず、東京から遠く離れているではないかということなんですけれども、さきの東日本大震災時に全国的に電力融通が行われましたように、国内の電力需給は地域ごとに独立しているというわけではなく、密接かつ相互に依存し合っているという広域的な視点、観点がございます。
 また、メガソーラーという熊本の発電所、再生可能エネルギーの実現可能性を早期に実証するためには、敷地や気象の条件などを満たす適地を、東京の周辺だけでなく全国的に求める必要があったことによるものでございます。
 こうした経緯から、ファンド運営事業者が熊本県のメガソーラーに投資することになったところでございますが、お話のように、投資の結果の再生可能エネルギーの実証等は極めて重要なことだと考えておりまして、私どももきちんと把握をしてまいります。

○鈴木委員 今定例会の我が党の代表質問において、野島幹事長から、従来手法とは異なる民間資金を活用したインフラ整備については、既存の行政のままのやり方、いわゆる判こ行政のままで執行を行うことの難しさを指摘したところであります。
 私も、ファンドという仕組みが、まさに行政と議会がこれまで構築してきた既存の仕組みに当てはめることがなかなか難しい典型的な例なのではないかと考えております。
 実際、ファンドが大企業の大株主となるなど、実体経済に影響を及ぼすほどの規模の勢力を持つようになった今日でも、ファンドを構成する投資家とファンド運営事業者との関係は、金融関係者の間では契約上のプライベートな関係としてとらえられ、ディスクロージャーのレベルや内容については、当事者同士の関係にゆだねられているのが実態のようです。
 近年、金融分野におけるディスクロージャーは、財務諸表に限定することなく、広く経営方針を含めて自主的に情報開示するなど、情報発信機能としての側面を重視する動きが拡大していると聞いております。
 都の官民連携インフラファンドの仕組み上、都は一投資家にすぎませんが、都からの公金が出資されている以上、都民や我々都議会に対して、ファンド運営事業者と都にはしっかりと説明責任を果たしてもらう必要があります。立ち上げたばかりの民間資金を活用したモデル事業に水を差さないように特段の配慮をしてもらいたいと思います。
 ファンド事業者に関するディスクロージャー、情報公表のあり方について都の見解を求めます。

○前田知事本局長 このファンドにつきましては、東日本大震災後の電力の安定供給と再生エネルギーの実証にどうしたらより効果的、効率的に貢献できるかという観点から、民間の金融手法であるファンド投資という手法を選択いたしました。
 もちろん金融につきましても、委員お話しのように、ディスクロージャーは進んでおりますけれども、このファンドの投資というものの運用は、行政の手続ではなく民間の投資判断となるため、すべての情報を公開するということは、組合契約において秘密保持が定められるファンドの制度上なじまないものと考えます。
 一方で、今お話しのように、このインフラファンドは、東京都の施策として主に発電所などに投資するものでありまして、こうした投融資先についてはできる限り情報を発信するとともに、最終的にファンドの期間が終了した段階で投資リターンについて報告をいたします。

○鈴木委員 ただいま局長からは、ファンド情報のすべての公表については、制度上なじまないとする旨の答弁をいただきましたが、都と都議会は車の両輪の関係に立っているわけでありますし、少なくともファンドが行った投融資については、いつ、どこで、だれが、何をといった基本的な情報については、都議会や都民に報告すべきであると考えるところであります。今後とも、粘り強く都に対してファンド情報の公表を求めていきたいと思います。
 ファンド情報が公表されることにより、多くの方々のファンド事業への理解を促進することにつながる上、今後、民間資金活用に向けた道筋が開くことにもなります。ファンド運営事業者の理解をいただきながら、ぜひとも説明責任の履行にしっかりと取り組んでもらいたいと思います。
 このたびの官民連携インフラファンド事業は、猪瀬知事の副知事の時代からの電力改革の肝いり事業でありますので、今後、猪瀬知事がこの取り組みを推進していくに当たり、どのようにお考えなのかを決意をお伺いいたします。

○猪瀬知事 大変いろいろ勉強されてご質問していただいて、とてもありがたいと思います。
 これは、三・一一があり、電力供給が不安定になる、そういう東京電力改革の一連の改革の中で、この官民連携ファンドというものが登場してきたわけで、ほかの、実は神奈川県とか千葉県とか埼玉県も一緒に、まず、お皿の上に幾らか公金を乗せようじゃないかといったけれども、彼らはわからない。だから、東京は三十億円、呼び水として出した。非常にリスクに敏感であり、同時に先駆的である、それがこの官民連携ファンドの取り組みなんですね。
 その三十億円の呼び水、十五億円ずつ二本の柱を立てて、そして第一号、千葉県の袖ケ浦で十万キロワットの火力発電所、この春にも着工して一年半後の平成二十六年夏には稼働の予定です。
 また、先月発表しましたが、熊本県の芦北町のメガソーラー、これは八千キロワットですが、この年末にも稼働する予定で、電力の安定供給が急務である中、かなりスピーディーな取り組みだというふうにご理解いただきたい。
 そして、官民連携ファンドという、この先駆的な取り組みがあると、国の動きも、やっぱり東京モデルを見ながら動いてくるということなんで、具体的にこれを始めたことは--もちろんこれ、さらにもう少し大きくしていったりとかいろいろ考えますが、もちろん都議会の皆さんともご意見をいろいろ交換しながらやりますよ。
 まずは、このファンド事業で着実に取り組んでいくことによって得られた知見とかノウハウ、これを生かしながら今後考えていきたい。電力の安定供給と電力改革をこれからさらに推し進めていくときに、これをやっていることでいろんなことがわかってくる。
 そういうふうなことで、ぜひともこの官民連携ファンド、先ほどいいましたが、非常にリスクに敏感であり、なおかつ先駆的である、ここをご理解いただきたい。そして、東京都民のために、これをやらなければいけないという決意でやりました。

○鈴木委員 知事の力強い決意はしっかりと受けとめさせていただきます。
 昨日の質疑の中でも、都のファンド事業への取り組みの成果を震災復興に生かすべきと触れられておりましたが、民間資金の活用を図っていくことは、ますます重要な手法となってまいります。今回の取り組みの成果が、電力事業だけでなく、国においてさまざまに生かされていくものと期待をしております。
 しかしながら、官民連携インフラファンドに投資する原資は、都民の貴重な税金であるという緊張感と、国を変えていくという気概とを持って、今後とも頑張っていただきたいと強く要望いたします。
 これまでの議論を通じて、官民連携インフラファンド事業について、都のエネルギー政策としても重要な役割を果たしていることについての一定の理解を得ました。
 一方、東日本大震災を背景とした計画停電などの経験を経て、遠隔地の電力供給のみに頼るのではなく、東京産電力を確保することにより、首都東京の電力安全保障を高めることも極めて重要です。
 現在、火力発電の役割が高まっておりますが、東京電力の火力発電所の約四割が、運転開始から三十五年経過している状態です。これはCO2排出量が多く、故障のリスクもつきまとい、地球温暖化の面からも、安定供給の面からも好ましい姿とはいえません。
 東京都は、最大使用電力のおよそ千八百万キロワットの九五%以上を福島原発と柏崎刈羽原発に頼っておりました。そうした原発によるスケールメリットを活用した安価な電力により産業を支えてまいりましたが、想定外を想定していく、知事がいう災後社会においては、スケールメリットがスケールデメリットになってきております。産業の血液ともいえる電力の自立分散型は今後ますます重要であります。
 こうした中、都は、いち早く行動を起こし、自立分散型電源の確保に取り組んでおります。とりわけコージェネレーションシステムは、通常時は熱を有効活用することで、省エネルギーや低炭素に役立つとともに、非常時には一定の電源を確保することで、防災、危機管理機能を高めることができます。
 しかしながら、震災前後でコージェネレーションの導入量は大きな伸びを示しておらず、発電規模で年間五千キロワット程度となっています。震災から二年がたち、電力供給体制の改革を行うには、都の目標とする五十万キロワットへ取り組んでいくことが重要です。
 そこで、低炭素なコージェネレーションを導入した事業者を先駆的な事業者として表彰する制度を設けるなど、何らかの支援策が必要と考えますが、都はどのように推進していくか見解をお伺いいたします。

○大野環境局長 お話のように、コージェネレーションシステムは、電気と排熱の両方を効率的に活用しまして総合効率を高め、CO2削減とエネルギーの有効利用を図るものでございます。
 この高効率のコージェネレーションを普及するに当たりまして、二つの側面から取り組みます。
 一つは、経済面からの支援として、来年度から新たに導入支援のための補助制度を創設いたします。
 また、制度面からの支援といたしまして、キャップ・アンド・トレード制度の対象となる大規模事業者において、高効率コージェネレーションから供給される電力や熱を受けた場合には、これを低CO2として評価する、つまり排出量を小さく算定する。そういう仕組みを新たに構築してまいります。
 こうした取り組みによりまして、環境性能の高いコージェネレーション設備の普及拡大を図ってまいります。

○鈴木委員 東京産電力を確保するためには、自立分散型電源の拡充に加え、再生可能エネルギーの普及も重要であります。
 都は、平成二十一年度から実施してきた住宅用太陽光発電の補助事業により、補助開始前に比べて導入速度を十倍以上に加速するという大きな成果を上げておりますが、「二〇二〇年の東京」では、東京産電力確保の一環として、二〇二〇年までに九十万キロワットの太陽光発電を新たに導入する目標を設定しており、目標達成には、今後さらなる普及拡大が必要であります。
 昨年七月に固定価格買い取り制度が導入されるなど、太陽光発電をめぐる状況は大きく変化しており、これまで普及が進んできた住宅用の一層の普及とともに、事業用の太陽光発電についても、今後の大きな伸びが期待されます。
 二〇二〇年までの目標達成に向けた都の取り組みについての所見をお伺いいたします。

○大野環境局長 太陽光発電のさらなる普及拡大でございますが、今後、まず住宅用につきましては、低利ローンの活用により、初期負担なく設置できる仕組みの構築や、相談窓口の開設など多様な取り組みを進めまして、そういう新規プロジェクトを進めてまいります。
 また、事業用につきましては、今年度試行的に開始をいたしました屋根貸しマッチング事業の検証を踏まえまして、新たな取り組みなどを開始してまいります。
 さらに、来年度開発いたしますソーラー屋根台帳ですが、都内の建物それぞれにつきまして、近隣の建物の日陰の影響も反映して、導入可能量を把握できるものでございまして、自宅や会社の屋根が太陽光発電に適しているか、正確にホームページの地図上で確認することができるようなものでございます。
 これを公開いたしまして、建物所有者に気づきを与え、太陽光発電設置への動機づけを図るとともに、太陽光発電の販売事業者のビジネスチャンスにも広げるという、そういう効果が期待できます。
 これらの取り組みを総合的に展開いたしまして、都は、二〇二〇年までの太陽光発電の導入目標達成に向けた取り組みを加速してまいります

○鈴木委員 太陽光発電のさらなる普及に向けた取り組みがよくわかりました。
 太陽光発電は、システム全体は二十年程度使えるものでありますが、十年を過ぎると、パワーコンディショナーという部品の交換が必要になる可能性があり、初期負担以外のコストも発生します。
 都は、都民に対してこのような情報も正確に提供しながら、太陽光発電の普及拡大を進めてもらいたいと思います。
 次に、国境離島の活用についてお伺いいたします。
 日本は、六千八百を超える島々から成り、排他的経済水域を含めると、世界で六番目の広さを有する海洋国家であります。
 離島、とりわけ国境離島は、日本の海洋権益を守る上で極めて重要であります。日本の海には日本を再生し、将来を切り開く力があります。
 例えば、日本近海は世界三大漁場の一つであり、極めて豊かな水産資源に恵まれております。また、近年、メタンハイドレートや海底熱水鉱床などの海底資源の存在も認識されており、日本が資源大国になる可能性も秘めております。
 そうした状況にあって、東京都に存在する国境離島、特に奇跡の島といわれる沖ノ鳥島、南鳥島の活用は極めて重要であります。
 かつて、平成十七年五月、石原前知事が沖ノ鳥島の実情や多角的な利活用、資源開発の可能性を探るため、島を視察し、現地で日の丸を掲げたことが国を動かし、沖ノ鳥島保全法の制定につながりました。
 さらに、昨年四月に、国連の大陸棚限界委員会が、沖ノ鳥島の北方海域などを、新たに日本の大陸棚として認める勧告を採択いたしました。島を管轄する自治体として、都が積極的に水産資源開発に取り組んでいくことによって、国際社会でも、我が国の海洋権益の主張の正当性が認められるきっかけをつくったといえます。
 国がやらないなら、まず動く。特に日本の首都東京として、こうした気概は知事のおっしゃるとおり重要であります。
 また、南鳥島では、昨年、東京大学の研究により、同島周辺海域に極めて有望なレアアース鉱床があることが明らかになりました。
 民主党政権時代には、この重要な戦略資源を目の前にして、遅々として開発に取り組んでこなかったのに対し、我が自民党は、さきの衆議院選挙の政権公約で、レアアース泥を含む海洋資源開発への集中投資などにより、資源大国への転換を図るとしております。
 本来、国境離島の管理、保全は国の仕事であることはもちろんであります。しかし、平成十八年五月、国ではなく都に対して、将来世代のために沖ノ鳥島を守ってほしいと坂井溢郎、喜和子ご夫妻から一億円もの寄附を寄せていただきました。そうした志をしっかりと受けとめ、国に任せきるのではなく、島を管轄する都がより積極的にかかわっていくべきであると思います。
 例えば、都の保有する漁業調査指導船によって、沖ノ鳥島海域等での調査を進めていくべきであります。
 海洋温度差を利用した発電や、レアアース泥の資源開発などの取り組みは、その実現まで課題があることは承知しておりますが、産学官の連携を深めるなど、都としても一歩踏み込んだ取り組みをすべきであると思います。
 そこで、知事の国境離島についてご所見をお伺いいたします。

○猪瀬知事 我が国の最南端である沖ノ鳥島と最東端、一番東の端である南鳥島は、東京からはるか千八百キロメートルの洋上にあります。
 このため、東京は、我が国の排他的経済水域の四割を有しておりまして、こうした海域を適切に活用していくことは、日本の国益につながるというふうに思っています。
 これまで手つかずだった沖ノ鳥島周辺で、平成十七年度から、カツオ、マグロ漁業への操業支援や水深約二千メートルの海域への浮き魚礁の設置など、漁業振興に取り組んできました。こうした取り組みが、お話のとおり、実際国を動かしてきたことは間違いありません。
 また、昨年二月に竣工した新造船「みやこ」、これを活用して、伊豆諸島から沖ノ鳥島、南鳥島を含む、東京都の排他的経済水域の全域を漁業調査の対象とするとともに、違反操業を取り締まる体制も整えました。
 さらに、鈴木委員ご指摘のように、南鳥島周辺海域では、東京大学の調査によって高濃度のレアアース泥が分布している可能性が--そういう情報を得て、昨年十月に東大の加藤教授に来ていただきまして、詳しく説明を受けました。そして、このレアアースも、レアアースといってもいろいろありまして、ほとんど中国に頼っているわけですが、独占的に中国が持っているわけですけれども、中国の持っているレアアースでも、我々素人ですからあれなんですが、元素のちょっと重い方のレアアースは中国にそんなにないんだと。
 ところが、一番必要な、その重い方のレアアースが南鳥島にあるんだということで、加藤教授に説明を聞きました。ならやろうじゃないかということで、経済産業省も十一月に調査を始めまして、文部科学省がこの一月にもう一回、前の調査と、さらにサンプリングでもう少しメッシュを小さくして調査するということなど重なり合いまして、もちろん、役所同士がちょっと別々にやったりとか、日本は縦割りだからそういうこともあるんです。
 そういうことを含めて、ただ、ここで安倍政権が新たにやはりちゃんとやろうということで、レアアース泥資源開発を重要な国家政策と位置づけましたので、二月に経済産業省が鉱物資源の研究者や深海揚泥技術、泥を持ち上げるという意味ね、そういう技術を持つ企業によって構成される勉強会を設置しましたので、その資源開発に着手したということなんですが、もちろん東京都も既にその勉強会に参加しております。
 今後とも、国境離島である沖ノ鳥島、南鳥島の具体的な活用に取り組んでいきたい、そう思っております。

○鈴木委員 知事にはぜひ日本の海を守るために、先頭に立って具体的に取り組んでいただきたいと強く要望いたします。
 また、今、知事の答弁の中でも、水産資源の管理について話が出ましたので、触れさせていただきます。
 先ほど触れました沖ノ鳥島で魚礁を整備し、五、六年間、シマアジの放流を続けております。東京から約一千七百キロ、小笠原諸島からも一千キロ近く離れた同島海域での漁は、経済的に成り立ちにくいものでありますが、水産資源の管理は絶対に怠ってはなりません。
 離島振興においては、我が会派の三宅正彦議員が、故川島忠一先生の遺志を継がれ、島民の方々と力を合わせ、力強く取り組んでいるところであります。
 伊豆諸島から小笠原諸島に至る東京の島々にとって、漁業は非常に大切な産業です。また、これらの島々の周辺の広大な海域は、日本有数の好漁場として知られており、全国各地から漁船が集まって操業しています。しかし、かつては豊かな水産資源に支えられ、活況を呈していた島の水産業も、近年は資源の減少、魚価の低迷など厳しい状況にあります。
 こうした状況の中、島しょ地域の漁業者は、東京都のサポートを受けながら、他県漁業者との乱獲防止に向けた話し合いや取り組みを実施していると伺っております。しかし、こうした地道な取り組みの一方で、操業禁止区域での密漁など、法令を無視した操業が行われております。
 東京の水産資源を将来にわたって利用できるようにするためには、漁業者の自主的な規制に加えて、操業秩序の維持が不可欠と考えられます。
 そこで、漁業取り締まりの取り組みについてお伺いいたします。

○中西産業労働局長 東京の海域で行われている漁業は、法的な制限のほか、漁業者が自主的に定めたルールのもとで操業が行われています。
 都は、法令違反に対処するため、保有する漁業調査指導船四隻のほか、航空機や大型船を活用するとともに、海上保安庁と連携しながら監視活動を行ってまいりました。
 こうした取り組みにより、都が処分した違反漁船の件数は、この十年間で、平成十四年度の七件から平成二十三年度の一件まで着実に減少してまいりました。
 今後とも、東京の貴重な水産資源を守るため、こうした活動を継続し、操業秩序の維持を図ってまいります。

○鈴木委員 次に、産業振興について伺います。
 ひたすらに世界一を目指す気概、こういう皆さんがいる限り、日本はまだまだ成長できると私は確信しています--安倍総理は、来年開催するソチ五輪のボブスレー競技用そりの国産化を目指す大田区の中小企業経営者と意見交換をした翌日、このような力強い施政方針演説を行いました。この下町ボブスレーの取り組みは当初、大田区内十社の中小企業が中心となり、一号機は三十二社の技術が集結し、全日本ボブスレー・スケルトン選手権大会という女子の大会で、いきなり優勝という結果を残しました。今まで決まって海外の企業の独占だった分野において、下町の技術が肩を並べたのです。
 そして、さらに二号機の開発においては、その説明会に百社以上の中小企業が集まり、男子の大会であるノースアメリカンカップ七位と、ソチ五輪出場へ大きな手ごたえを得たのです。
 このようにいうまでもなく、これまで我が国経済の成長を下支えしているのは、長年培って磨き上げてきた技術力や卓越した製品を持つ東京の中小企業です。まさに東京の中小企業こそ、メード・イン・ジャパンの心臓部です。
 都では、既に航空機産業への参入促進を支援しておりますが、多くの中小企業では、成長分野への高い関心を持ちながらも、情報不足やノウハウ不足などから参入のきっかけをつかめないのが現状であります。都は、日夜奮闘している、こうした中小企業をしっかりと支援すべきであります。
 新たな成長が見込まれる分野に、中小企業の参入を促進するための支援を行うべきと考えますが、知事に見解をお伺いいたします。

○猪瀬知事 景気が上向きになる兆しが見え始めたとはいえ、停滞感、閉塞感が充満する我が国の現状を打破するには、新たな成長戦略を打ち出していくことが必要であります。
 そのため、東京水道の海外展開や、高齢者向けケアつき住まいを一万戸の目標で整備するなど、先ほどの官民連携ファンドもそうですが、東京都が先導して、新たな発想によって民間市場を拡大していく。スマート保育もそうです。
 欠かせないのは中小企業に対する支援でありますが、GDPの二割近くを生み出す東京の産業は、約五十万の中小企業が支えています。この中に、独自の高度な技術を武器に、成長分野に参入しようとしている中小企業も多い。
 東京都は、ついこの一月ですが、環境やエネルギー、医療などの成長分野のものづくり企業を育成するために、民間からも出資を得て、ベンチャーファンドを新たに設立しました。
 来年度は、成長分野への中小企業の参入を促すため、新たな事業を開始します。東京が抱える課題と求められる技術の情報を発信して、大学や研究機関と連携した新製品開発を支援していきます。例えば、災害時にも役に立つ自然エネルギーを利用した小型発電装置などを想定しています。
 こうしたさまざまな施策を講じて、東京の中小企業の活力を高め、ひいては日本の経済の再生を牽引していきます。時間はまだあります。大丈夫です。

○鈴木委員 ありがとうございます。何度もいいますが、東京の中小企業こそ、メード・イン・ジャパンの心臓部であります。その輝きをぜひ見逃すことなく、足を運んで、その心意気を一にしていただきたいというふうに要望して、私の質問を終わります。ありがとうございます。(拍手)

○村上副委員長 鈴木委員の質問を終わります。
 この際、議事の都合により、おおむね三十分間休憩いたします。
   午後六時休憩

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