予算特別委員会速記録第三号

○村上副委員長 佐藤由美委員の発言を許します。
   〔村上副委員長退席、委員長着席〕

○佐藤委員 佐藤由美でございます。
 まず初めに、知事の基本姿勢について伺います。
 今定例会の本会議において、知事は憲法に対する評価について、時代の変化に応じて議論すべきと答弁をされておられました。
 思うに現在、憲法に重大にかかわる議論が巻き起こっている危機感、すなわち、現在起きているこの議論に関して、都議会の議場で取り上げなければならないほどの現状があるというふうに思います。
 本来、道徳といった内容をも憲法という冠をつけて、個人の権利、自由の擁護とは逆のベクトルをもって憲法改正と提唱する議論もあるところ、そもそも憲法は、国家の権力を制限し、国民の権利、自由を擁護することを目的として、加えて、この理念を生かす上での積極的な国家を念頭に、国家による人権保障を内容とするものであることは周知のとおりです。
 いうまでもなく、憲法は、時代が変わろうとも、変えてはならない普遍の価値を明らかにし、人権を国家によりじゅうりんされない、人権を保障し、これを担保するための国家体制を明らかにし、法による支配をもって制度的に保障することに,その核があるというふうにあります。
 知事は、憲法の前文を前に思考停止という表現をされておられましたが、憲法の前文にこそ国民主権、恒久平和、人権の保障が明らかにされているのではないでしょうか。改めて、一人一人が輝く東京を掲げる知事に、この点について見解を伺いたいと思います。

○猪瀬知事 さきの本会議で、民主党の和田議員、それから、共産党の清水議員と憲法の議論になりましたが、佐藤委員のご質問はちょっと誤解があるようですが、基本的人権とか国民主権は一切否定しておりません。それは侵すことのできない重要な権利だと認識しております。
 繰り返しますが、あそこで申し上げたのは、憲法があって、そして当然、我々が戦争を想定外にするという錯覚をしてきたということなんですよ。東日本大震災で原発事故が起きましたけれども、これも想定外だと。想定外ということはないわけで、常に現実に起こり得ることはあるわけですから、今の憲法でも戦争は想定外じゃないんですよ。ただ我々が想定外だと思い込んできたということをいったわけです。
 憲法九条の成立過程で、きちんと、GHQの、当時憲法制定に当たったケーディス大佐が、憲法九条は自衛権を認めていると、当時、彼はいっていたんですよ。ただ我々は、戦争を想定外だとしてきたんです、戦後社会はね。だから、それは想定外じゃないよと。当たり前のことなんです。
 そういうことで、今おっしゃられたような基本的人権、国民主権は一切否定していませんから、誤解していただきたくないなということなんですが、ごく普通に当たり前の感覚で憲法をとらえて、ただ、激しい時代の変化に対応できる、そういう必要な改正は国民全体で議論してやるべきであって、六十八年そのまま同じ条文でいいかどうかというのは別の問題。ただ、今おっしゃられたようなことについては、全く認識は共有していますからご心配なくということで。ただ、国家の基本法としての憲法は、常にその価値を高めていく必要があるということですね。そういうことでお答えしました。

○佐藤委員 どうもありがとうございます。個人の尊厳を守るために何ができるのか、この観点から、ぜひとも都民の生活のために取り組みを進めていただきたいというふうに思います。
 今の知事の基本の姿勢を踏まえまして、改めてインフラの老朽化、更新を迎えている中、また高齢化が進行し、家族の多様化が進む中で、国際化の進行、社会における格差が拡大をしているこの状況の中で、平成二十五年度、課題に対して、都政として取り組みをどう進めていくのか、個別に伺っていきたいと思います。
 まず、社会的なインフラ、都市の更新、再生について伺いたいと思います。
 知事は、首都高速に係るインフラの更新などを公約に掲げているところです。東京都は首都を擁し、通常時はもちろん、災害時においても首都機能を確保する必要があるところ、都市の更新、再生は急務であります。
 この中で、土地利用、空き家老朽化対策についてまず伺いたいと思います。
 国土審議会土地政策分科会企画部会の土地政策の中長期ビジョンにおいては、人口の減少、少子高齢化、グローバル社会の進展における不動産市場のあり方とともに、市場では解決できない空き地、老朽家屋の課題について適切な対応が必要だと指摘をしているところになります。
 総務省の住宅・土地統計調査では、五年に一回調査が行われる中、直近の調査によると、空き家は年々増加しており、全国で七百五十七万戸、空き家率は一三・一%となっているところです。
 実際、平成二十四年八月、全国で三十六の自治体においては条例を制定しているところです。首都圏では埼玉県の所沢市や千葉県の松戸市、東京都では足立区などが例があります。
 今、こちらの方に出ているこの写真なんですけれども、こちらは空き家で、使える状況にある住宅でありますが、こちらに関しては、ちょっと写真が小さいかもしれませんけれども、老朽化をしたアパートの中で、このあたりとか、窓が割れているのが見えるかと思います。
 それで、こうした中で、古くなったテレビであったりとか、こういう電器とか、こういうごみがどんどん集まってきてしまう。随分前に見たときから、またちょっとひどくなっているなというこの写真、こういう場所が各地にあるところであります。(「場所はどこなの、それ」と呼ぶ者あり)これは、場所がどこかというのは、それはまた別ですけれども、これはどこかということよりも、これが都内にあるということをまず認識していただきたいというふうに思います。
 東京都内には、約七十五万戸に上る空き家が存在をしておりまして、都内でも老朽化、廃屋などの倒壊や資材の剥離、落下等、危険性の高い建築物で適正に管理されない空き家、老朽家屋があって、先ほど見ていただいたような外部不経済が生じています。建築物自体の危険のみならず、治安上の問題、不法投棄などによる生活環境の悪化といった、こうした問題が懸念されると思います。
 そこでまず、東京都の空き家、老朽家屋に係る問題認識について伺います。

○飯尾都市整備局長 都内にある約七十五万戸の空き家のうち、賃貸用、売却用、別荘等を除きました、長期にわたり利用されていないものが約十九万戸存在しております。
 こうした空き家の増加は、有効な対策が講じられなければ、将来、居住環境の悪化や防災機能の低下を招くことが懸念され、既存住宅ストックや住宅市街地が適切に維持管理、更新、再生されることが重要と認識しております。

○佐藤委員 まさに、売却や賃貸用に供されて市場に流通するものはいいとしても、活用されない空き家、家屋について対策を講じるべきだと考えます。
 一つの対策の方向は、有効な活用であり、いま一つは、除却できる仕組みの構築と考えます。
 昨年三月に策定された東京都住宅マスタープランによると、都内には長期不在の空き家のうち、利用可能にもかかわらず、全く活用されないまま市場にも流通していないものが約十万戸あると推計をされています。これらの空き家の有効活用をしていくべきだと考えます。
 都は、今年度、空き家活用モデル事業を行ったと聞いていますが、その実績と今後の空き家の活用に向けた取り組みについて伺います。

○飯尾都市整備局長 今年度、空き家の利活用方策の可能性を検証するために、改修工事に対しまして補助を行う国の事業を活用したモデル事業を実施いたしました。NPO等複数の事業者からの相談を受けましたが、対象となる物件が見つからないなどの理由から、応募には至りませんでした。
 引き続き幅広くPRを行いながら、都の実情を踏まえたモデル事業に取り組むなど、空き家の利活用方策を検討してまいります。

○佐藤委員 ぜひ子育ての、母子の支援施設であったり、あるいは住宅のない方に対しての住宅の提供、あるいは先ほども話がありました高齢者のグループホームなど、さまざまな行政課題に対応する施策への活用を、民間団体、NPOとの連携により進めていただきたいと思います。
 古い建物については、所有者の意思でDVのシェルターとして使ってほしいとかいう形で、DVの団体とかでそれを使っていたりとか、そういう例もあるところです。ぜひとも今回のリフォームの助成の対象など、事業の改善などを行うとともに、関係者と連携をとって実績を伸ばしていただきたいと思います。
 一方で、こうした空き家の中には、先ほどごらんいただいた形で老朽化をして、借り手がついたりとかしない、リフォームをしても活用ができない家屋、建物があります。このような空き家は、繰り返しになりますが、不審者が侵入をしたり、あるいはごみが不法投棄されるなど、そのまま放置されていると治安上でも問題があって、除却をする必要があるというふうに考えます。
 一方、所有者においては、除却したいと考えていても、経済的な理由から除却ができないという実態があるとの調査もあります。老朽家屋の除却に対する助成に係る仕組みもつくることが急務と考えますが、東京都の見解を伺います。

○飯尾都市整備局長 老朽化した空き家などの建築物につきましては、一部の区市町村において、条例や要綱を定めて適正な維持管理についての勧告や除却に対する助成などを実施しており、地域の実情を把握している区市町村で対応することが重要であると考えております。
 都では、木密地域において公共施設の整備など、地域の改善に必要な老朽建築物の除却に限って助成を既に行っているところでございます。加えて、不燃化特区では、住民負担のない除却制度を設け、地域を限定して重点的に支援を行い、燃えない、燃え広がらないまちづくりを進めることとしております。

○佐藤委員 また、経済的な事由として、空き家を除却すると固定資産税率の住宅用の特例が適用されなくなって、本則に戻って六倍高くなるということから、住宅として活用していないけれども、そのまま建築物を解体せずにいるという状況もあるとの指摘があります。
 そこで、除却をしても土地の固定資産税について軽減措置をするということで、老朽空き家を自主的に除却を促すといった環境整備も必要と考えますが、見解を伺います。

○新田主税局長 都の施策の促進を税制面から支援いたしますいわゆる政策税制は、公平中立という税制の原則の例外でありますことから、施策の重要性や政策効果、税収に与える影響等を十分踏まえて検討する必要がございます。
 こうした考え方に立ち、老朽空き家対策につきましては、現在、不燃化特区に対象を絞り、関係局と連携して、税制面からの支援策の内容や条件を検討しております。

○佐藤委員 不燃化特区、燃え広がらないまちをつくるという目的において、そうしたさまざまなスキームが投入されているところですが、先ほどごらんをいただいたのは不燃化特区にはあるわけではありません。
 そして、目的も燃え広がらないまちというよりはむしろそうした建物があることによって治安上の問題や外部不経済、ごみの不法投棄など、生活環境が悪化しているという状況に対して、いかにそうしたスキームをほうり込んでいけるかということをぜひとも検討を始めていただきたいというふうに思います。
 こうした所有者の管理、除却などを促すためのインセンティブ、助成や税率などについてのそうした仕組みを構築するとともに、管理が放置されている理由として所有者が明確になっていないケースもある中で、行政が介入しなければならないケースも出てくると思います。
 そうした観点から、所有権に制限がかかる問題であるだけに、法令が規制する部分はどういうところにあるのか、あるいは助成などの資金拠出が必要になってくるところから、透明性を持った新たな仕組みの構築に向けて、ぜひとも具体的な取り組みを進めることを求めたいというふうに思います。
 次に、関連して、認証保育所の改築、耐震化に関して伺います。
 平成二十二年度の一般会計、決算特別委員会においても問題を提起いたしましたが、先ほどもお話がありましたが、保育室から認証保育所に移行した施設の中には、老朽化が進んで,耐震改修ではなく改築が望ましいケースもあります。
 認可保育所の改築に対しては、国の安心こども基金による補助がありますが、個人設置の保育所や認証保育所には、こうした財政的な助成をする枠組みがありません。
 新規の保育所を設置してふやしていく一方、長年、保育を提供してきた保育所が設備の改善をもって、耐震化あるいはよりよい保育環境を目指しながら廃業せざるを得ない状況に追い込まれ、歯抜けになってしまう状況にならないよう取り組みを進める必要があります。
 認可、認証といった保育所の形式いかんにかかわらず、いずれも次世代を担う大切な子どもを保育しています。ぜひとも、長年、地域の子育て家庭を支えてきた施設が引き続き保育を担えるよう、施設の改築についても助成を行う必要があると考えますが、見解を伺います。

○川澄福祉保健局長 個人や株式会社等の保育所は、社会福祉法人のように事業を廃止した場合に、建物などの財産を国等に引き継ぐという制限がございません。
 そのため、認可保育所を建てかえるための建設費の国の補助は、社会福祉法人等に限定されております。都も同様に補助金を支出しておりません。
 保育所の改修経費につきましては、認証保育所に対しても支出しておりまして、開設時に、内装工事の経費等について、事業者負担を八分の一まで軽減する都独自の補助を実施しております。
 また、児童の安全を確保するため、耐震性を高めるために実施する改修工事に対しましても補助制度を設け、認可や認可外の種別や運営主体を問わず、支援を行っております。

○佐藤委員 改修に関しては支援があるというご答弁ですけれども、改修をするのか、あるいは改築をするのかというのは、そこの建物の状況に応じて選択されるべきところであります。そして、だれが運営主体かということではなくて、保育という公共サービスの機能に注目して、どういう枠組みが必要なのかを検討していくべきと考えます。
 個人や株式会社において、もしその助成を受け入れながら保育を停止して、その助成を受けた建物を第三者に転売して利益を得るというような行為があれば、その助成金の返還を求めるといったことを考えるべきではないでしょうか。今なすべきは、あらゆるスキームを駆使することではないでしょうか。
 メリットやデメリット、論点を整理して、課題については、それに対してどうすればそれがなくなるのか、阻却することができるのかという知恵を出すことが必要と考えます。
 東日本大震災から二年が経過して、そのときに明らかになったように、東京で都市機能が麻痺をして多くの帰宅困難者が出る中で、子どもの通う学校や保育所こそ子どもたちの安全な避難場所としての機能が求められました。親はすぐには迎えには行かれません。だからこそ、保育関係者は、安全な環境を確保することを考えますし、親も子どもが安全な場所にいることを信じて迎えに行くわけです。
 この観点からも、ぜひとも保育所の形式にかかわらず、改修、改築、あらゆるそうした方法を支援していくような枠組み、環境づくりをしていく取り組みを求めまして、次の質問に移りたいと思います。
 次に、感染症対策、予防接種についてお伺いをいたします。
 国立感染症研究所の感染症発生動向調査によると、昨年一年間に二千三百五十三件、昨年の二十三週目、きのうもお話がありましたけれども、五月、六月から急激に増加して、二百五十件程度であったものが一カ月に五百件ずつ増加し、ことしもその傾向が続いているところです。
 二月の時点で本年で既に五百件を超えて、都内だけで二百四十九例と報告されています。東京都の風疹の週別の報告においても、東京がただ単に人口が多いということのみならず、百万人当たりの風疹報告数も,ほかの道府県に比較して二・五倍の状況があると報告されています。
 先天性風疹症候群という病気に胎児がかかってしまう可能性が指摘されていることは周知のとおりです。今回、とりわけ三十代、四十代の男性の風疹報告数が多いと報告されています。
 当時、接種率が低く、パートナーに感染する可能性も高いところ、追加接種における助成を検討するなど、具体的な取り組みが求められると考えますが、都の見解を伺います。

○川澄福祉保健局長 都内においては、昨年夏より成人男性を中心とした風疹の流行が継続しておりまして、本年二月以降は、患者報告数は週当たり百名を超す状況が続いております。
 風疹はかかった本人は比較的軽症でございますが、免疫を持たない妊婦が感染すると、白内障や先天性心疾患などを主症状とする先天性風疹症候群の子どもが生まれる可能性があり、注意が必要な疾患でございます。
 このため,都は、昨年六月から都民に対し、今回の風疹の流行に関し、三度にわたり注意喚起を行ってまいりました。
 今後とも、風疹の感染予防に関する普及啓発に努めるとともに、ワクチン接種に取り組む区市町村を支援してまいります。

○佐藤委員 感染症を専門にする小児科医は、まさに自分の地域から一人もそうした先天性風疹症候群の子どもを出したくないその思いで、自分の医院の看護師、職員全員の抗体を検査して即刻ワクチンの接種をしている、そうした強い決意で取り組みを進めているところであります。
 予防接種は、感染症対策として最も基本的で効果的な対策であり、個人的な予防を目的とするのみならず、集団予防を図って社会的な損失を防ぐ目的があることは周知のとおりです。
 平成二十四年度の予防接種制度の見直しについても提言が出され、その中でWHOの勧告しているワクチンが予防接種法の対象となっておらず、日本においてワクチンギャップの状態が生じていること、そして適正な実施を確保することを報告しているところです。
 そして、この中では、子宮頸がん、Hib、小児用肺炎球菌、水痘、おたふく風邪、成人用肺炎球菌、B型肝炎という七ワクチンについて広く接種を促進することが望ましいとし、このうち、子宮頸がん、Hib、小児用肺炎球菌、三ワクチンについては、二十五年度以降も円滑な接種を行える必要があると指摘しているところです。
 こうした中で、この三ワクチンについて、予防接種法に基づく定期接種をする法改正も視野に入れて国の方で動きがあるところです。
 ところで、東京都内においては、東京都、多摩六市は地方交付税不交付団体であることは周知のとおりです。三ワクチンに係る国の基金による補助金がなくなるところ、不交付団体では国からの地方交付税交付金が入っていないところです。この点について東京都はどのように認識し、対応していくか伺います。

○川澄福祉保健局長 子宮頸がん予防ワクチン、Hibワクチン及び小児用肺炎球菌ワクチンの接種は、平成二十五年度から子どもを対象とした定期予防接種となる予定でございます。
 三ワクチンの接種に要する経費は、これまで住民負担分を除いた額の二分の一を国が子宮頸がん等ワクチン接種緊急促進事業で支出しておりましたが、来年度からは、住民税の年少扶養控除廃止等による地方増収分を財源として活用することとされております。

○佐藤委員 年少扶養控除廃止等による地方増収分を活用するということですけれども、不交付団体にとっては実質的に財政負担が増加することになるのではないでしょうか。地方財政制度の問題もあり、なかなか難しいところでありますけれども、都としても何らかの対策を行っていくべきと考えます。
 また、平成二十三年度における三ワクチン助成状況の調査によると、子宮頸がんについてはほぼ全額助成とするという市区町が多い一方で、Hib、小児用肺炎球菌は全額助成を行う区と自己負担の割合が高い区とで二分されているところです。
 Hib、小児用肺炎球菌ワクチンで乳児期最大四回、子宮頸がんワクチンで中高生期に最大三回接種することを計算すると、全額無料の区とそうでない区だと、最大で八万円の格差が出るという試算をしているものもあります。
 そして、各市区町村ごとに接種状況との連関を見ると、全額助成する区では接種回数が多く、例えば小児用肺炎球菌について自己負担が五千円、六千円と必要となる区は、都の平均を大幅に下回って接種が低くなっている状況が明らかになっております。
 ワクチン接種は個人を守ること、社会で免疫を獲得するという観点を重視しなければ意義が薄れるところ、自治体ごとの財政構造の違いにかかわらず、また、住む地域や経済的な事由によらず、希望するすべての子どもがワクチンを接種することが不可欠と考えます。
 定期接種は、本人負担なく接種できるようにするべきと考えますが、見解を伺います。

○川澄福祉保健局長 定期予防接種の費用につきましては、予防接種法の規定により、経済的理由により負担できない者を除き、実費を求めることが可能となっており、その判断については、区市町村が行うこととなっております。
 なお、現時点では、子ども対象とした定期予防接種において、都内で自己負担を求めている区市町村はございません。

○佐藤委員 ぜひとも本人負担なく接種ができるよう整えていただきたいと思います。
 また、自治体同士の境では、かかりつけの医療機関が居住自治体の外にあって助成が受けられないなどの問題が指摘されてきました。
 また、多摩小児医療センターに二十三区内に住所を有する子どもが入院していた際に、病状と体調をよく知る医療センターの主治医による接種が本人にとって必要な中、実際のところ自費で接種をしているケースが出ているという話も聞きます。
 また、里帰り出産など、地域外でも定期予防接種ができるよう体制を整備すべきと考えますが、見解を伺います。

○川澄福祉保健局長 近隣自治体との間で相互に定期予防接種を受けられるようにする取り決めは、自治体間の調整で行うものであり、二十三区のほか、多摩地域においても既に幾つかの自治体間で居住地以外の地域でも相互に接種が受けられるようになっております。
 また、里帰りして出産する場合など、居住地以外での接種を希望する場合にも、居住地と里帰り先の自治体との間で個別に調整することにより、接種は可能となっております。

○佐藤委員 医療機関と自治体が相互の契約をもって個別に手続をすれば接種ができるという状況があるようですけれども、多摩小児医療センター、子どもが病気を抱えている中で一つ一つ個別に契約をしていくというのは、その抱える家族にとっては大変な負担ではないでしょうか。
 また、自治体間の協議についても、都の方で協議の場をつくるなど、積極的な取り組みをするなどできるのではないでしょうか。二十三区と多摩と島しょと相互の乗り入れが必要と考えます。
 繰り返しになりますけれども、ぜひとも、自治体ごとの財政構造や住む地域などによらずに、本人負担なく子どもたちがワクチンを接種できるよう取り組みを強く求めたいと思います。
 次に、都立学校の入学要件について伺います。
 都立葛飾ろう学校高等部専攻科では、ろう学校で唯一調理師免許が取得できる厚生労働省の指定養成施設ともなっているところから、ここを卒業すると自動的に調理師免許が取得できるところです。
 カリキュラムも、日本料理、西洋料理からエスニックまで多岐にわたり、レストランの協力をいただいて授業を実施し、現場で即戦力となることを目指しております。そして、有名なホテルのレストランなどに卒業生は巣立っているところであります。
 通常、調理師養成施設では、聴覚の障害に配慮して教えないため、技術を学ぶことは困難であるところ、ここでは、例えば、てんぷらを揚げるにしても、耳のかわりに目で確認をするといった方法で調理の技術を学んで、また厨房はチームで動くところ、タッチをするなどして厨房で動けるよう、そうした取り組みを一つ一つ学んでいるところです。
 このろう学校は、子どもの選択の幅を広げる画期的な取り組みであると私は思います。そして、実際に毎年、他県から、入学に関しての問い合わせがあると聞いております。
 しかしながら、都内在住の要件の縛りの中で、家庭の環境によっては、家族全員で東京に移住できる家庭ばかりではない中で、この縛りによって受検をあきらめる子どもも少なくないと聞いております。子どもの選択の幅を狭めることなく、必要な職業訓練、高等教育を受けられる環境を整えるべきと考えます。
 都立葛飾ろう学校高等部専攻科、この食物系に他県の生徒が入学できるよう門戸を開くべきと考えますが、都の見解を伺います。

○比留間教育長 都立特別支援学校高等部専攻科は、都民である障害のある生徒が高等部普通科で学んだ基礎、基本の上に専門的な職業教育を受け、就労による社会的自立を図ることを目的として設置しているものでございます。
 そのため、高等部専攻科の応募資格として、都内に住所を有することを要件の一つとしております。
 他県在住者に高等部専攻科の応募資格を認める場合には、専攻科を志望する都立特別支援学校高等部普通科の生徒の進路を確保する仕組みをつくること、他県在住者の応募について、近隣県と相互に調整を図ること、応募資格の変更について保護者等関係者の理解を得ることなど課題がございます。
 今後、これらの課題について検討してまいります。

○佐藤委員 ぜひとも検討を前向きに進めていただきたいと思います。
 都立の看護の専門学校では,東京都で一定期間の勤務を条件とするにしても、都外からの受け入れをしております。また、そもそもハンデがある中で、ほかに選択肢がない中で、みずからではいかんともしがたい中で応募資格に制限がかかる現状を改善して門戸を広げていただきたいと思います。
 東日本大震災の被災児について都立学校が門戸を開いたのは、その緊急性のみならず、みずからの意思に及ばないところでハンデを負った子どもに対して東京はなすべきと判断したからであるというふうに理解をしております。ぜひとも迅速な、相当な判断をしていただきたいと思います。
 次に、権利擁護に係る問題について伺いたいと思います。
 報道において、孤独死があった場合における公営住宅に対しての対応が全国自治体さまざまある中で問題提起がされているところであります。
 こうした中で、家族が多様化をして少子高齢化する中で、高齢者の権利擁護について伺いたいと思います。
 ひとり暮らしをして、死後における葬儀や、残存家屋の寄附について、任意の後見契約に基づいて、その委任をした八十代の女性が、以前、私のところに相談に参りました。悪質なNPOであることに気づいて、このNPOとの契約については解除しましたけれども、ここには幾つか問題があると思います。
 こうした悪質なNPO、ひとりで暮らしているお年寄りの弱みにつけ込んで、その財産を横取りしようとするような悪質なNPOを根絶し、情報を周知していくとともに、まさにこうした高齢者の権利を正面から守っていく取り組みの両輪が必要であるというふうに考えます。
 認知症の疑いがあり、あるいは悪質商法等に繰り返しだまされるような、こうしたおそれのある高齢者、虐待されている高齢者など、必要な支援につなげるためには、ケアマネジャーや民生委員など、生活に寄り添って支援をする地域の福祉関係者や、区市町村、地域包括支援センターがこうした権利侵害に気づいてつなげられるよう、権利擁護に係る法制度や窓口の周知、そうした研修が必要だと考えますが、取り組みについて伺います。

○川澄福祉保健局長 都は、平成十九年度から、区市町村や地域包括支援センターの職員を対象に、高齢者の虐待対応に関する制度の知識や、虐待が発生した際の具体的な対応方法を習得するための研修を実施しております。
 介護支援専門員に対する専門研修では、必修科目として、権利擁護や消費者センター等の活動と連携について取り入れております。
 また、民生委員に対する人権研修の中で、高齢者の権利擁護に関する制度や、窓口の周知を行うとともに、会議等でリーフレットを配布しているところでございます。

○佐藤委員 さらに、こうしたひとり暮らしで身寄りのない高齢者が尊厳を持って生活できるようにするために、成年後見制度の活用も有効な手段の一つであると考えます。
 成年後見制度は、本人の判断能力が精神上の障害などによって不十分な場合に、本人を法律的に保護をして支える、そしてその人らしく生きるために保護していく制度になります。
 しかし、こうした成年後見制度については、財産を持って、その財産から報酬を支弁することができる場合は格別、そうでない場合には、報酬に関してハードルになって、こうした申し立てや後見人をつけられないという問題があります。
 また、こうした担い手となる、後見人と候補者となる市民後見人をふやしていくことも重要な課題であります。
 こうした費用、報酬面における東京都からの助成、あるいは後見人に関しての研修の取り組みについて伺います。

○川澄福祉保健局長 まず、実施状況でございますが、都内では、平成二十三年度末現在、成年後見制度の申し立て経費に関する助成は三十二区市町村、後見人等への報酬に関する助成は二十三区市町村で実施しております。区市町村がこうした費用の助成を行った場合、国の補助対象となるほか、都としても、包括補助により支援を行っております。
 また、養成にどのように取り組んでいくかということでございますが、都は、後見人等候補者の養成を図るため、区市町村が推薦する都民を対象に、後見業務に関する基礎講習を実施しております。
 また、講習修了生の実習活動への支援や、独自に実施する後見人の養成講習など、区市町村の取り組みにつきましても、包括補助により支援を行っております。
 現在、区市町村職員や学識経験者等から構成する検討会を設置し、市民後見人養成のあり方について検討を行っており、その結果を踏まえ、区市町村による主体的な取り組みを促進してまいります。

○佐藤委員 ぜひとも座学の研修など、東京都のスケールメリットを生かして継続をしていただきたいと思いますし、この研修を修了した修了生が実際に後見につけるような、それをバックアップしていけるような取り組みも必要だと思います。
 制度は実際に使えなくては趣旨が生かされません。ぜひともこの制度が利用しやすくなるよう、引き続き積極的な取り組みをお願いしたいと思います。
 次に、身寄りのない高齢者を保護する、障害を持った者を保護する観点から、地域生活定着支援センターについて伺います。
 平成二十一年度から、高齢または障害を有するために福祉的な支援を必要とする矯正施設の退所者に対して、退所後直ちに福祉につなげられるよう、そうした社会復帰に向けての取り組みが進められているところであります。
 親族等の受け入れ先のない満期釈放者は、全国で七千二百名、うち、高齢または障害を抱えて自立が困難な者は約千人といわれております。
 これまで、高齢や障害を抱え、自立が困難であって、親族等の受け入れ先がなくて、円滑に福祉サービスへつなぐ仕組みがなかったがために、住宅や就労を確保することができず、地域で生活できず、再犯を繰り返し、入所となるリスクが大きいところでありました。
 東京都においては、平成二十三年度からこの定着支援センターを設置して、事業を開始しているところです。
 この丸二年間の実績とともに、今後に向けた取り組みを伺います。

○川澄福祉保健局長 地域生活定着支援センターは、身寄りがなく、矯正施設退所後、福祉的な支援を必要とする高齢者や障害者を入所中から支援し、適切な福祉サービス等につなげる役割を果たしており、これまで約百名の対象者に支援を行っております。
 対象者の生活歴や心身の状況等は複雑かつ多様であり、的確な支援を行うためには幅広い知識と高い専門性が求められます。また、保護観察所など更生保護にかかわる機関や、福祉事務所、福祉施設など多方面との適切な調整が必要でございます。
 こうしたことから、都は来年度、センターの人員体制を強化するとともに、区市町村や関係機関との連絡会の開催など、引き続き連携の強化に努め、矯正施設退所者の円滑な地域定着を促進してまいります。

○佐藤委員 本来、福祉的な支援があれば、犯罪を繰り返さずに済んだ事例も多くあることから、この事業は、確かに現場の中では困難事例や現地往復など、さまざまな困難があると聞いておりますけれども、ぜひとも社会における理解が広がって、多くの、すべての多様な人を包摂した社会になることを期待し、次の質問に移りたいと思います。
 生活福祉資金貸付制度について伺います。
 この制度については、一九五〇年代から開始されて、低所得者が一時的な資金難に直面した際に利用できる公的な貸付制度であります。
 金融危機に端を発して雇用情勢が深刻化した中で、改めて総合支援資金が創設されるなど、二〇〇九年に改正がされて、失業者の生活費を提供していくことになったところであります。
 一方で、この生活福祉資金については、利用者の生活実態や貸付効果の把握が進んでおらず、貸し付けという手段が果たし得る役割や、適切な貸付対象を定義することについての議論もなかなか進んでこなかったと指摘をされているところであります。
 貧困層については給付、あるいは所得があって返せる場合には貸し付けという、そうした仕分けはなかなか難しい中で、さまざまな福祉制度との連携と整合性を考えて構築していくことが求められています。
 その上で、こうした制度を、その人に応じて、求めている人に応じて、ワンストップサービス、伴走型の支援など、生活全般を見て、その人が本当に必要とする支援を行うべきと考えますが、都の見解を伺います。

○川澄福祉保健局長 低所得者や離職者等、生活困窮者の生活の安定を図っていくためには、その方の置かれたさまざまな状況や生活上の課題などを幅広く勘案して、支援を行っていくことが重要であります。
 こうしたことから、公的な貸し付けの際には、貸し付けの必要性だけではなく、就労や家計の状況など生活全般についての相談を行い、関係機関と連携して、就労等の必要な支援を実施しております。
 また、生活の安定に向けた償還計画の策定も支援しているところでございます。

○佐藤委員 平成二十五年度の予算においては、こうした相談事業を強化するという観点から、アフターフォロー事業について計上し、拡大をしているところであります。方針と取り組みについて伺います。

○川澄福祉保健局長 都は、国の総合支援資金から生活費等の貸し付けを受けた離職者等が安定した生活を送れるよう、貸付終了後もきめ細かなアフターフォローを行う区市町村社会福祉協議会への支援を、今年度から開始しております。
 関係機関への同行や家計の見直しを通じて、就職や生活再建などに成果を上げており、来年度は実施する団体を拡大する予定でございます。
 また、都は、生活困窮者の支援のため、緊急対策として、職業訓練とあわせて実施した生活サポート特別貸付についても、同様の継続的な支援を、来年度から新たに開始いたします。

○斉藤委員長 以上で、佐藤由美委員の発言は終わりました。(拍手)

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