予算特別委員会速記録第三号

   午後三時二十一分開議

○門脇副委員長 休憩前に引き続き委員会を開きます。
 質疑を続行いたします。
 島田幸成委員の発言を許します。

○島田委員 二十五年度予算に関連しまして、まず最初に教育政策についてお伺いいたします。
 都立の小中高一貫教育についてお伺いいたします。
 都内私立の多くは中高一貫教育を行っていて、都立においても中高一貫校の整備が進んでおります。ただ、小学校を併設している私学は都内に数校しかありません。公立でも小中高一貫教育はありません。
 しかし、先ほどもありましたけれども、すべての基礎になる初等教育が非常に重要で、身につけた基礎力をその後の教育課程でどう伸ばしていくかが大きな課題といえます。ちなみに、私自身、私学を経営しておりまして、その学園では、保育園から高校まで、そして大学までつながる一貫教育を行っておりまして、この課題に取り組んでおります。特に、都立小中高一貫教育の検討に当たっては、ぜひ革新的な教育内容を検討していただきたいと思っております。
 知事は、地下鉄の壁をばかの壁といっておりますが、小中高の間には壁、あるいはギャップがあり、それを取り除くことが必要だというふうに思います。知事は、その壁を取り除くことは非常に得意なことだと思います。
 埼玉の私立開智学園では、現行教育制度の六・三・三制にはとらわれず、小中高の十二年を見通し、子どもの時期の小学校四年までの期間、そして体格が大人に変わっていく小学校五年から中学校二年の期間、そして精神的に大人になっていく中学校二年以降の期間と、四年、四年、四年に分け、それぞれの発達段階での教育プログラムを独自に行っております。このように、検討に当たっては、現行の教育制度を打ち破るような特色のある中身にしてほしいと思っております。
 私が今述べたような点で、知事が今回、みずからの発案で都立小中高一貫教育学校の設立の検討に入ったことは評価しているところであります。この設立の検討にはどのような思いがあるのか、そして、どのような内容にしたいのか、見解をお伺いいたします。

○猪瀬知事 島田委員がおっしゃられたように、あちこちにばかの壁はあります。それを一つ一つ、まず、おかしいじゃないかと思うことから始めていかないといけないと思いますが、とにかく、東京の生きた現場から東京モデルというものを展開して、一人一人が輝く社会を実現するために、人々が自分の個性と才覚を最大限に発揮できる環境を整えることが大切であります。
 教育の分野においても、子どもたちは一人一人個性を持っていますから、教育の形は多様であることが望ましい。都内公立校は、区市町村による小中学校の連携の取り組みがあり、都立には中高一貫教育校が十校あります。小中高一貫教育の公立は存在していません。数年かかると思いますが、これをやろうということであります。
 小中高の十二年にわたる一貫教育は、その都度、受験、受験で区切られることがなく、子どもたちが学びたいことを徹底的に学ぶと。特に理数分野においては、日本というのは人の力というか、教育がやっぱり一番大きな資源であると思っておりますが、ノーベル賞をとった山中教授のような、そういう人材を育成するということが一番大事だと。まずは、東京モデルで範を示すと。
 また、小中高が一貫になると、先取りして新しいことを学ぶことができますし、実質的な飛び級もつくることができる。だから、六・三・三制の枠に阻まれているものを取り除いて弾力的な教育システムの実験モデルを構築すると。
 戦前もいろんな流れがありました。旧制高校だけでなく専門学校もあり、また中学も五年までありましたから、戦前は中高一貫みたいなものだったんですね。そういうことも含めて、小中高一貫という新しいモデルをつくって、そして、まず東京から、ああ、東京はそれをやれるんだとわかれば全国に一つの範となるというふうなことで、東京モデルとしてやりたいと、こう思っております。

○島田委員 今、知事に答弁いただきましたけれども、現行の教育の体制にとらわれない新しい教育の形をぜひ見せていただきたいというふうに思っております。
 また、都立小中高一貫教育の設立に当たっては、民業の圧迫にならないよう私学関係者の理解も必要だと思います。公立の授業料はただでありますし、圧倒的な数の教員を有しております。公立と私学がお互い切磋琢磨し、東京の教育力の向上につながるようお願いを申し上げます。
 また、都では、都立高校改革の中で中高一貫教育学校を設立しております。これらの学校では、既に卒業生を輩出した学校もあり、また、まだ設立されたばかりの学校もあります。
 中高一貫校では、教員が中学から高校へと持ち上がり、教員の交流が盛んなことや、カリキュラムでも中高間のむだのない編成が組まれるなど、成果が出ているというふうに思います。
 一方で、生徒間の学力差や生徒の学習意欲の低下、いわゆる中だるみへの懸念もあります。ある私立の中高一貫校では、スポーツ施設が不足し、中高で施設のとり合いになり、クラブ活動が思うようにできなくなるなど、ハード面での課題も多いと聞きます。
 都立小中高一貫教育校を検討する上で、まずすべきことは、現在既にあります都立中高一貫教育学校をどう検証していくかが大事だと考えます。
 今後、都立中高一貫教育学校をどのように評価、検証していくのか、お伺いいたします。

○比留間教育長 都立中高一貫教育校は、六年間の計画的、継続的な一貫教育の中で、学校ごとに、理数教育や国際理解教育など、特色ある教養教育の充実に取り組んでまいりました。
 既に卒業生を送り出した学校では、難関大学に一定の合格者を出すなど、進路面で成果を上げております。また、教育面でも、小石川中等教育学校の生徒がポーランド科学アカデミー主催の物理論文コンテストで受賞するなど、顕著な実績の事例も報告をされております。
 一方、中だるみ対策では、中学と高校の接続期に海外語学研修や実力テストを行うなどの取り組みを行っております。
 都教育委員会は、こうした取り組みや事例も踏まえ、都立中高一貫教育校十校のうち、半数を超える六校が学校としての完成年度を迎える来年度に--この学校としての完成年度というのは、一年生から六年生までがすべて在籍するようになるという意味でございますけれども、来年度にその成果を検証し、都立小中高一貫教育校の設置の検討に生かしてまいります。

○島田委員 ありがとうございます。前倒してこの中高一貫教育校の検証をするということの答弁でございまして、ぜひこの検証を進めていただき、都立の小中高一貫校の検討に役立てていただきたいというふうに思っております。
 次に、少人数教育についてお伺いをいたします。
 公立小学校、中学校の学級編制、つまり、一学級の児童生徒の人数でありますけれども、小学校一年生、二年生が三十五人、そして中学校一年生も、これは代表質問でお伺いしましたが、今年度の予算で、東京都では三十五人学級編制が可能となりました。
 ところで、都教委は、平成二十二年度から、小一問題、中一ギャップ予防、解決のための教員加配を行うとともに、その成果を検証して報告書にまとめております。
 そこで、平成二十三年度に都教委が中学校に対して行った中一ギャップの予防、解決のための教員加配にはどのような効果があったのか、お伺いをいたします。

○比留間教育長 都教育委員会は、平成二十三年度に、中一ギャップの予防、解決のための教員加配の効果を検証するため、都内すべての公立中学校を対象として調査を実施いたしました。この調査は、中学校一年生について入学当初と十月の調査時点を比較し、生徒の学校生活に改善が見られたかを問うものでございます。
 調査結果では、中一ギャップに関連して、不登校生徒やいじめ発生件数の減少、学習意欲の向上などの項目について、加配を受けた学校の校長の肯定的な回答の割合が、加配の対象とならなかった学校を上回っております。

○島田委員 今、中一ギャップ、小一プロブレムのための加配で効果があるということが、この報告書からもわかるということでございます。
 しかし、小一、小二、中一以外の学年では、一学級の規模は四十人であり、私は多過ぎるというふうに思っております。特に小学校低学年段階では、学級規模を小さくしてきめ細かな対応をすることが望ましく、そういう意味からも、小学校二年生から三年生に上がる際にもとに戻ってしまい、心配な点もあります。このため、必ずしも画一的な少人数学級、すべての教育活動を行うのではなく、学校の実情や児童生徒の状況に応じた形で対応できることも必要だと考えます。
 例えば、ある学年のある教科を習熟度に応じた少人数指導が可能になるよう、教員で加配して、学力の維持向上に向けて弾力的にきめ細かな対応がとれるような取り組みにすることが重要であります。
 このため、都教委では、こうした少人数指導のための教員加配を行ってまいりましたが、これらの意義や効用、また、どのように活用していくのか、お伺いいたします。

○比留間教育長 児童生徒の基礎学力の向上を目指し、きめ細かな指導を行っていくためには、教科等の特性に応じた多様な学習集団を編成できる少人数指導が有効と考えておりまして、これまでも少人数指導の加配の充実に努めてまいりました。
 現在、小学校で千二百六十九人、中学校で九百四十九人を加配教員として配置しており、小学校では主に三年生から六年生まで、中学校では各学年で活用をされております。
 加配教員と各学年や各教科の教員が連携し、指導方法の研究、教材の開発などに取り組むことで、児童生徒の習熟度に応じた指導ができ、基礎的な学力の定着が図られ、学習意欲が向上しているなどの効果がございます。
 都教育委員会は、今後ともこの加配を活用し、児童生徒の状況に応じたきめ細かな指導の充実に努めてまいります。

○島田委員 少人数教育の加配、都が独自で行うことによってきめ細かな指導ができているということは、大変すばらしく、評価できることでありますが、もとより、少人数教育は国の責任で実施されなければならないことであります。
 民主党政権下では、小学校、中学校の全学年で三十五人学級の実現を目指し、五カ年計画の予算措置を計画していたところでございます。しかし、政権がかわり、現政権は、さらなる少人数学級については検討ということで大変消極的であり、私は残念に思っております。
 少人数学級の効果は明らかでありまして、今お伺いしましたが、先日、国会の予算委員会で民主党の細野幹事長も安倍総理大臣に求めておりましたけれども、この少人数学級を早期に実現してもらいたいと私は思っております。都も国に対してその実現を要望していただきたいと思っております。人材教育は未来の投資でございます。ぜひよろしくお願いいたします。
 次に、スクールカウンセラーについてお伺いをいたします。
 都は、スクールカウンセラーを公立小中学校に全校配置し、いじめや不登校など、学校現場の課題の解決を図るとしております。特に最近、いじめや体罰による児童生徒の自殺が社会問題となっておりまして、心の悩みの解決に当たる専門家であるカウンセラーを学校現場に配置することは重要であり、評価いたします。都もこれまで,カウンセラーの配置を進めております。
 一方で、私は文教委員会でもただしてまいりましたが、カウンセラーの採用に当たっては、臨床心理士に限るのではなく、一般的にガイダンスカウンセラーといわれる、カウンセラーに準ずる者も含め、幅広い人材の中から人選し、採用すべきだと主張してまいりました。
 国のある調査では、問題行動の解決において、臨床心理士のカウンセラーよりも、カウンセラーに準ずる者を多く採用した自治体において大きな事業成果を得られたという結果が出ております。このようなことから、国は各自治体にカウンセラーに準ずる者も積極的に採用するよう働きかけております。
 いずれにしても、せっかくカウンセラーを全校配置するのでありますから、カウンセラーが有効に活用されるべきであります。
 このたび都は、スクールカウンセラーを全公立小中高で配置する予算が計上されておりますが、スクールカウンセラー配置の成果を踏まえ、今後一層その効果を新たに検証することにより、カウンセラーの有効活用を図るべきだと考えますが、都教育委員会の見解をお伺いいたします。

○比留間教育長 学校においては、臨床心理に高度な専門性を持つスクールカウンセラーからの助言により教員の相談技術が高まるなど、教員と連携した取り組みによって、児童生徒の問題の解消に効果を上げております。また、児童生徒や保護者への継続的なカウンセリングが心理的安定をもたらし、不登校の改善やいじめの解決につながったなどの成果も報告をされております。
 今後、スクールカウンセラーの配置による成果を検証するとともに、連絡会などで効果的な活用事例などを情報提供し、各学校におけるスクールカウンセラー活用の一層の充実を図ってまいります。

○島田委員 今後、検証結果を踏まえながら、カウンセラーの有効活用を図るとともに、カウンセラーに準ずる者も含めて採用することを重ねて要望申し上げます。
 次に、私学振興についてお伺いいたします。
 若者の内向き志向が指摘される中、都は、都立校のみならず、来年度から私学にも留学の支援の予算を計上し、グローバル人材育成に取り組むことは評価いたします。しかし、その内容を見ると、おおむね三カ月以上の留学を対象に補助するとのことであります。
 お伺いしますと、現状では約七割の学校が補助対象にならないということでございます。多分、私立学校の海外研修というのは、大体夏休みを利用し、一カ月以内の短期研修を組んでいるところが多いからだろうというふうに思います。
 ただ、高校レベルの海外研修は、まず本格的な海外留学の導入と考え、短期でまず海外での体験を経験し、その後、長い期間での留学を考えるというのが無理のない海外留学だろうと考えられますし、また、不況で家庭の収入は下がり、以前よりも,一カ月未満の留学でも経済的理由からためらう家庭も多いと聞きます。
 このようなことから、都は一カ月以内の留学まで補助対象を広げるべきだと私は考えますけれども、これまで私学団体や現場の先生方とヒアリングを行ったということでありますが、なぜ三カ月以上の留学を補助対象にしたのか、お伺いをいたします。

○小林生活文化局長 私立高校生の留学支援制度の構築に当たっては、私立学校関係者とのヒアリングを重ねてまいりました。その結果、国際感覚の醸成や語学力の習得に一定の効果を上げるためには、おおむね三カ月以上の留学期間が必要であること、また、そのような長期間の留学は保護者の費用負担が大きいことから、公的な支援制度を設けてほしいとの意見が多くございました。
 こうしたことから、都としては、短期的な海外体験ではなく、おおむね三カ月以上の海外留学を対象に支援する制度とすることで、長期留学制度の創設や拡充を後押しし、都内の私立高校における海外留学制度の充実を図ったものでございます。

○島田委員 制度の構築の考えはよくわかりました。三カ月の留学は、高校生にとってはかなりのハードルになるかもしれません。制度導入後は、学校現場の実態をよく調査し、必要な制度の改善につなげていただきたいと思っております。
 次に、多摩振興についてお伺いいたします。
 このたび都は、新たな多摩ビジョンの検討に入っております。新たな多摩ビジョンの素案の基本認識では、右肩上がりの成長、拡大から、活力ある都市の成熟、持続への発想の転換が必要としておりますが、国では成長戦略を掲げ、成長、拡大への取り組みを進めている中、多摩については成熟を基本としていくというのは、時代の流れに多摩が取り残されてしまうのではという危惧を覚えております。
 例えば、多摩地域には、製造業を中心に高度な技術を有する中小企業が多数存在しており、海外との競争を含めた厳しい生存競争に日々さらされております。多摩の優秀な中小企業が進化、発展し、国の成長戦略の重要な担い手となるには、これらの企業への支援と育成、そして、新しい発展の方向性を都として示していくことが重要と考えます。
 そこで、新たな多摩ビジョンにおける多摩の産業に対する認識と今後の方向性について、都の見解をお伺いいたします。

○笠井総務局長 人口減少局面の到来や高齢化の進展など、多摩地域を取り巻く厳しい状況変化に対応するには、これまでの右肩上がりの成長、拡大といった考え方から、地域が有する多様な特性を最大限に活用した活力ある都市の成熟、持続へと発想を転換していくことが重要であろうと思っております。
 もとより、多摩地域は高い技術力を持つ中小企業や大学、研究機関、産学公連携の担い手となる各種支援機関などが存在し、これらの集積と活用により、高付加価値の製品やサービスを生み出すことが可能な地域でございます。
 このため、新たな多摩のビジョンの素案では、地域が有する高度な技術基盤や知的資源を活用して、介護や産業用ロボットの開発など、成長が期待される分野への企業参入を促進していくことなどを、これからの多摩の産業の進むべき方向性として示しているところでございます。

○島田委員 ぜひ、多摩の中小企業が、この成長戦略の重要な担い手となるよう都の支援をよろしくお願いしたいというふうに思います。
 多摩地域を取り巻く大きな状況の変化の一つとして、相次ぐ大規模工場の撤退があります。大規模工場の撤退は、地域の雇用の喪失や地域の小売業やサービス業への影響、自治体の産業政策への影響など、地域にさまざまな影響を及ぼすことが想定されます。
 近年の景気低迷や企業活動のグローバル化、国際競争が激化する中、大規模工場の撤退の流れはやむを得ないかもしれませんが、撤退により地域の活力が損なわれないようにするためにも、その跡地の活用を考えていくことが重要であります。
 都として、多摩地域の大きな課題である大規模工場撤退後の跡地活用の方向性を示すべきだと考えますが、見解をお伺いいたします。

○笠井総務局長 大規模工場の相次ぐ撤退は、多摩地域の大きな課題である一方、その跡地活用は新たなまちづくりの契機でもありまして、市町村が企業や住民などのコーディネート役として地元のニーズや特性を生かしたまちづくりを進めていくことが重要であります。
 このため、多摩のビジョンの素案では、跡地活用の方向性として、市町村と地権者、住民などが参画した土地利用方針の協議の場の設置や、条例等に基づく特別用途地区の指定など、地域の意向を反映できる仕組みづくりが必要であることを明らかにいたしました。
 今後、関係各局や市町村、民間企業などと連携し、こうした大規模工場跡地の活用に向けた方策を検討してまいります。

○島田委員 今ご答弁いただきましたように、土地利用については、新たなまちづくりの契機にもなるわけであります。地域の意向を反映しながら都としての支援をよろしくお願いして、多摩地域の観光振興についてお伺いいたします。
 東京は、丸の内や新宿の高層ビル街、東京スカイツリーなど、現代を象徴する建築物が林立する大都市である一方、西多摩地域に目を転じれば、豊かな自然や独自に培われた伝統文化が息づいております。
 最先端の都市としての姿と、人々の心をいやす自然や風物とのこのような対比が、東京の多彩な魅力を形づくっているといえます。
 そこでまず、恵まれた自然など、豊富な地域資源にあふれる西多摩地域について、都は観光の視点からどのように認識し、これまでどのような取り組みを実施してきたのかお伺いいたします。

○中西産業労働局長 西多摩地域は、豊かな自然に加え、歴史や文化に根差した観光資源に恵まれており、東京の観光振興を図る上で欠かすことのできない地域であると認識しております。
 このため、都はこれまで、観光協会等が行うイベントの企画や旅行者の誘致に向けた情報発信などの取り組みに対しまして、専門的な立場から助言するアドバイザーを派遣してまいりました。また、観光案内板の設置や観光パンフレットの作成などに取り組む地元自治体の支援を行っております。
 さらに、東京の公式観光サイトにおいて、西多摩地域の四季折々の風景が楽しめる画像や観光イベントの最新情報などをきめ細かく紹介してまいりました。

○島田委員 西多摩地域には、四季折々のイベントや地元ならではの料理など、さまざまな地域資源が存在します。私の地元羽村市でも、今月下旬から約一カ月間、はむら花と水のまつりが開催されます。羽村の堰を彩る桜並木や一面に広がる四十万本のチューリップ畑など、市内各所での春のにぎわいを感じることができ、春の一大イベントとして観光の目玉となっております。
 しかし、西多摩地域には、地元ならではの特産品や伝統的な祭りなど、まだまだ磨けば光る観光資源がたくさん眠っております。このような資源を生かさないことは、地域にとって大きな損失であります。
 都は、観光資源の掘り起こしや活用に努める地域の取り組みを積極的に支援する事業を来年度から開始すると聞いておりますが、そこで、本事業の概要についてお伺いいたします。

○中西産業労働局長 都は、新年度、都内各地の埋もれた観光資源を活用する取り組みといたしまして、地域資源発掘型実証プログラム事業を実施いたします。
 本事業は、地域の魅力ある資源を新たな観光商品として活用しようとする観光協会等のアイデアを民間事業者の商品化ノウハウに結びつけることで、旅行者の誘致につながる地域の取り組みを支援するものでございます。
 これを契機といたしまして、観光協会等を中心に、地域の商店街、地場産業を担う事業者、住民などが一体となった観光振興の取り組みが一層進むよう、都は本事業の積極的な活用を図ってまいります。

○島田委員 本事業が西多摩の観光開発にも寄与することを期待しております。先ほど申し上げたように、西多摩地域には、四季を通じて触れ合える自然が数多く存在します。ミシュランのグリーンガイドに三つ星で掲載されている高尾山を初め、多摩川、秋川、奥多摩湖、桧原の払沢の滝と、多くの水辺も多摩地域の重要な観光資源であります。
 その中でも、最近は、登山やハイキングなどを楽しむ山ガールの存在や森林セラピーの流行など、森林に焦点を当てた取り組みが各地で進んでおります。
 そこで、こうした森林を観光の視点から活用し、観光振興を図っていけばと考えますが、見解をお伺いいたします。

○中西産業労働局長 近年、幅広い世代が山歩きや自然散策などを楽しむようになっており、西多摩地域の豊かな森林は、こうした需要を満たす可能性を秘めた重要な観光資源でございます。
 そこで,都は新年度より、森林資源を生かし、林道における散策ルートやビューポイントの整備などを行う市町村に対しまして、その整備費を助成する事業を実施いたします。
 こうした取り組みを通じまして、今後も西多摩地域の身近で魅力ある森林資源を効果的に活用し、さらなる観光振興に結びつけてまいります。

○島田委員 ありがとうございます。
 次に、多摩地域の防災対策についてお伺いいたします。
 今回新たに策定される多摩ビジョンでも、安全・安心が確保された多摩とし、防災に強いまちづくりが重要課題となっております。防災対策については、東日本大震災以降、南海トラフ巨大地震など、沿岸部の津波が話題になっておりますが、私の地元の西多摩などでは、地震による土砂崩れ、山間集落の孤立などが話題になります。都には、こうした多摩特有の課題にもしっかり取り組んでいただきたいと考えます。
 とりわけ、多摩で最近話題になっているのが立川断層帯です。これについては、さきの本会議で我が党の代表質問でも取り上げ、答弁をいただきました。首都直下地震に比べると発生確率は低いとされておりますが、東日本大震災の影響で発生確率が高まった可能性が指摘されております。
 都が昨年四月に出した被害想定の中で立川断層地震を取り上げたのは、多摩都民の高い関心にこたえたものとして私は評価しております。しかしながら、立川断層帯の実像はまだまだわからないことが多く、一体どのような断層構造になっているのか、断層が動くとどのような揺れになるのか、その真上の建物はどうなってしまうのか、ぜひとも明らかにしていただきたいと思います。
 こうしたことを調査するために、文部科学省が本年度から三カ年のプロジェクトを実施しております。日産の村山工場跡地には、全長二百五十メートル、深さ十メートルにも及ぶ巨大なトレンチが掘られ、断層面を観察するというものです。先月には都民の一般公開も行われ、私も現地を視察しましたが、大変意欲的な取り組みだと思います。
 徳島県では、昨年末、中央構造線活断層帯の真上には、学校や病院、大規模な商業施設などの建物を制限する条例を制定し、この四月から施行されると聞いております。
 私は、断層帯についても、断層の位置が明らかになり、断層が動いた場合に、地表面が大きくずれることが想定される場合には、こうした踏み込んだ条例も検討すべきではないかと考えております。
 そうした意味で、今回の調査プロジェクトは重要であります。都はこの調査プロジェクトにも協力しているとのことですが、ぜひともしっかりと協力していきたいと思いますが、具体的にはどのような協力をするのでしょうか、都の見解をお伺いいたします。

○笠井総務局長 都は、文部科学省の三カ年の調査研究プロジェクトの運営委員会に参加し、プロジェクトの各事業を実施するために、地元の市町村や関係者間の調整を図るなどの協力を行っております。
 お話の大規模トレンチの現地見学会につきましても、地元自治体からの要望を踏まえ、一般市民の方の見学にできる限りこたえるよう国に要請して実現を図りました。
 今後とも、プロジェクトの円滑な推進が図られるよう、関係市や町とも連携して取り組んでまいります。

○島田委員 調査研究自体は、研究者が科学的な知見に基づき、客観的に行うべきものですので、行政としては、これが円滑に進むよう十分なサポートをお願いいたします。
 また、プロジェクト終了時には、得られた研究成果をしっかりと検証し、例えば,断層帯の上にある公共建築物については、危険であれば移転させるなどの対策につなげていただきたいと思います。
 さて、次に、昨年十一月に発表された都民生活に関する世論調査によれば、東京全体では、都政への要望は二年連続で防災対策が一位でした。ところが、地域別に見ると、都政への要望は、多摩中央部北では防災対策が二位、多摩西部、島しょでは防災対策は三位でした。さまざまな要因があるのでしょうが、私は、この地域の皆さんは、地盤もかたいし地震は大丈夫だと思い込んでいる面もあるのではないかと思います。
 そこで、西多摩地域を含めた多摩地域の皆さんが立川断層帯について正しく理解し、自助、共助の取り組みを進めてもらうよう都として取り組むべきだと考えますが、見解をお伺いいたします。

○笠井総務局長 都は昨年四月、都に起こり得る地震の被害の実像を明らかにするため、東京都防災会議の地震部会の専門家による最新の科学的知見に基づき、立川断層帯地震に関する被害想定を策定、公表いたしました。
 また、今回の文部科学省の三カ年プロジェクトの実施状況や、プロジェクト完了時に得られた研究成果についても、関係市や町と連携して都民にわかりやすく示してまいります。
 こうした取り組みにより,耐震診断、耐震補強や家具類の転倒防止対策の推進など、多摩地域における都民の自助、共助の取り組みにつなげていきたいと思っています。

○島田委員 立川断層周辺には多くの都民が家を構え、暮らしております。この人々に、いかに地震に備えてもらうか,非常に大切だと思います。
 地元の自治体とも連携して、普及啓発に精力的に取り組んでいただきたく要望を申し上げて、最後に地方分権についてお伺いいたします。
 二〇〇〇年の地方分権一括法の施行以来、この十数年にわたり地方分権が進められてきておりますが、この流れは今後も加速していくことと思われます。
 中でも二〇一〇年に閣議決定された地域主権戦略大綱及び二〇一二年に閣議決定された地域主権推進大綱において、国と地方の役割分担について補完性の原則に基づき、住民に身近な行政はできる限り地方公共団体にゆだねるものとされ、特に基礎自治体重視の姿勢を打ち出しております。
 こうした中で、大都市東京における区市町村に対する分権をどのようにとらえ、展開していくのか、分権の基本的な考え方をお伺いいたします。

○笠井総務局長 基礎自治体への分権に当たりましては、住民ニーズに的確にこたえ、地域の実情に応じた行政運営を実現することが重要でございます。とりわけ大都市東京におきましては、東京の実態や地域特性などを十分踏まえ、都と市区町村が適切に役割分担していくことが求められます。
 こうした観点から、都はこれまでも、建築確認事務や騒音規制に関する事務など、住民に身近な事務権限の移譲を着実に進めてまいりました。
 今後とも、市区町村がみずからの責任と判断において、地域の実情を踏まえた行政サービスを行えるよう、市区町村と十分に協議を行いながら適切に対応してまいります。

○島田委員 分権の基本的な考えはわかりました。
 次に、都と市町村の役割についてお伺いいたします。
 地方分権の流れにより、住民に身近な行政は、原則として基礎自治体が担うこととされ、特に福祉の分野、これは介護保険法、あるいは障害者自立支援法においてかかわることですが、福祉の分野においては基礎自治体がサービスの実施主体と位置づけられております。
 他方、広域自治体は、基礎自治体では担えない事務を担当することとされ、広域的な視点から一体的に実施されることが効率的かつ効果的な事務や、専門性を要求される事務を行うこととなります。また、基礎自治体の調整役としての役割が期待され、それは地域間格差の是正も含まれます。
 とりわけ公平性が求められる行政分野においては、格差が生まれないようサービス水準の確保が極めて重要な役割となっております。
 そこで,都は、広域自治体の役割として、都内市町村におけるサービス水準の確保についてどう考えるのか、見解をお伺いいたします。

○笠井総務局長 行政サービスの水準確保に当たりましては、一義的には実施主体となる市町村が、みずからの責任と判断において適切に事務を処理することができるよう、行財政基盤の確立や体制整備に取り組むことが重要でございます。
 ご質問にありました住民へのサービス水準の地域間格差の是正につきましては、まずは国が対応すべきでありますが、都はこれまで、広域自治体として独自の財政補完制度などにより、市町村に対しさまざまな支援を行ってまいりました。引き続き市町村との適切な役割分担のもと、都民サービスの向上に努めてまいります。

○島田委員 ぜひ都は、独自の財政補完制度を充実していただいて、広域的な観点から都民サービスの確保に努めていただきたいと思っております。
 最後に、地方分権にかかわる財源についてお伺いをいたします。
 地方分権にかかわる財源については、国は両大綱において、地方交付税や国庫補助負担金等に関し所要の措置を行うとしております。
 これに対し、都は、二〇〇七年に発行した「『地方の自立』に向けて―東京から地方分権を考える」において、分権とは,必要な財源を移すことであるとするとともに、国の施策及び予算に対する東京都の提案要求の中で、権限と財源は両輪であるとの認識を示しております。この考え方は、国と都のみならず、都内分権においても同様と考えます。
 都内区市町村が、自主的、自立的な運営を行うためには、権限とともに、その裁量を発揮するための財源を配分する必要があると考えますが、分権における財源のあり方とその現状についてお伺いいたします。

○笠井総務局長 市区町村への事務権限の移譲に当たりましては、移譲される事務の執行に要する経費の財源を確実に措置することが必要でございます。財源措置の方法は、権限移譲の手法により異なり、法に基づく権限移譲の場合には、国がその執行に必要な経費を地方交付税の基準財政需要額に算入することにより措置をしております。
 一方、条例による事務処理の特例制度に基づく権限移譲の場合には、地方財政法において、都道府県が財源措置を講ずることとされております。
 このため、都におきましては、市区町村との十分な協議を経た上で、事務処理特例交付金などにより、必要な措置を講じているところでございます。

○門脇副委員長 島田幸成委員の発言は終わりました。(拍手)

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