予算特別委員会速記録第二号

   午後三時三十分開議

○村上副委員長 休憩前に引き続き委員会を開きます。
 質疑を続行いたします。
 神林茂理事の発言を許します。

○神林委員 平成二十五年東京都議会予算特別委員会に当たり、東京都議会自由民主党を代表して質問をいたします。
 我が都議会自民党は、代表質問で野島幹事長が申し上げたように、都政を前に進めるために汗をかいております。この予算特別委員会は、まさにそうした観点に立って、執行機関側に都民の声を伝え、都政のありさまを議論し、具体的な提案をし、時に苦言も呈してきたのであります。今回は、猪瀬知事が初めて知事として挑む予算特別委員会でありますが、これまでも副知事として、我々と執行機関とのやりとりを聞いてこられました。ぜひ実りある建設的な議論を行いたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
 さて、猪瀬知事は就任後、平成二十五年度予算を編成し、「二〇二〇年の東京」へのアクションプログラム二〇一三を策定されました。これらを見ると、方向性や具体的な内容は、石原前知事時代を踏襲したものになっております。震災対策や産業支援対策といった、我々と執行機関とがともに練り上げてきた政策も継続されております。
 そこで、最初に知事に、これまで進めてきた都政をどう評価しているのか、また、そうした都政をどのように継承し、どう発展させていこうと考えているのか伺います。

○猪瀬知事 副知事として都政に参画して五年五カ月やりました。石原さんと僕は作家同士で、石原さん、作家の先輩ですから、当然もちろん石原さんというふうに僕はいいながら、石原さんも猪瀬さんというふうにいうんで、実は、けんか、一度もしたことないんです。二人とも、とんがっているからけんかしそうだなと思われるけれども、そうじゃないんですね。わかり合ってやっていました。
 僕が、特に担当しなきゃいけないと思ったのは、都庁の縦割りをどういうふうに克服して、つまり、必ず中央政府の官僚機構が絡んできますから、東京モデルというものを東京から打ち出して、そして、石原さんがおっしゃられているような、東京から日本を変えるという考え方を共有していたつもりです。そこで、電力改革や高齢者の住まい、言葉の力の再生、周産期の医療、そういうことをやってまいりました。
 都庁に勤めている方々、本来は世のため人のために公務員になるということで、この職業を誇りとして選んでいるわけですから、そういう職員が専門家として新しい提案を受け入れてくれるような形で考えながら、そういう意図を酌んで新製品をつくっていくと、そういうことだということでやってきました。
 そういう意味で、発想力がやっぱり大事で、そういう発想力、それから、かつて僕が政府税調委員やったり、それから、道路公団民営化委員やりましたので、霞が関のどこに問題があるかということも僕なりにわかっておりましたので、東京都の職員の皆さんと力を合わせて、そういうところを、改革のテーマをつくって、国全体に改革のうねりをつくり上げていきたい、そして、スピード感を持って磨きをかけていきたいと、こういうふうに思って石原さんと一緒にやってきました。
 話は変わりますが、先週、IOCの評価委員会の現地調査、これも、石原さんが一回目の札を出しておいてくれたから、二回目、四年前のどこがいけなかったのかということを検証しながらやれたということです。前に、大阪で失敗し、名古屋で失敗して、一回目の札を出すというのは大変なんです。そこは、やっぱり石原さんも、暴走老人じゃないけれども、ばあんといったわけですね。ちょっとやり過ぎかなというぐらい、やっぱり出すというのは、そのぐらい大変です、一回目の札を出すというのは。その一回目の札が今生きている。実は一度も、一回でオリンピック通ったところはないんです。それが石原さんのおもしろいところであり、その業績ですよ。だから、今回、二回目は、全部、その一回目の経験を生かして、どこをどう補えばいいかということでやったわけです。
 それから、きのうは三・一一でした。東日本大震災です。二年たちました。石原さんは、日本人は我欲にまみれていると、こう嘆いていましたが、僕は、まだ捨てたもんじゃないと思っています。それは、先ほどちょっとお話ししましたが、東京マラソンで三万六千人分の荷物が、新宿で預けたものがフィニッシュのビッグサイトで、一つも間違いなく、盗まれることもなく、ちゃんと戻ってくる。さらに、ランナーが二人倒れた、心拍停止。それを、AEDを七十カ所に置いておいた。ランナーと沿道の観衆が生き返らせたんです、AEDで。
 つまり、我欲にまみれているところもあったが、そうじゃない部分にもっと期待していくことが僕は大事だと。そういうことで、きょうよりもあしたがよくなるという、そういう希望をつくる、二〇二〇年に向けて、あるいはふだんの都政でも、そういう希望をつくって、その希望を若い人たちに与えていくことが、大人の我々の責務だと思っておりまして、都議会の皆さんとともに、一緒に知恵を絞って、一緒に汗をかいて、これから進んでいきたいと思っております。

○神林委員 知事、思いを語っていただきまして、ありがとうございました。
 引き続きまして、オリンピック・パラリンピック招致については、国、経済界、スポーツ団体はもとより、さまざまな団体の支援のもとで取り組んだ結果、先般公表されたIOCの調査の支持率は七〇%に達しました。招致活動に力を注いできた都議会自民党としても、非常に喜ばしい結果だと思っております。
 そこで、招致レースの重要なポイントである評価委員会の視察を終え、知事に、その手ごたえと今後の課題について伺います。

○猪瀬知事 まず結論は、非常に充実した四日間で、手ごたえを感じております。
 僕自身も、なれない英語でプレゼンテーションをやりましたが、パラリンピックの金メダリストの国枝選手ともテニスをやる、そういう形で、まずは熱意を示す。それが、四年前のやっぱり幾つかの敗戦の教訓でしたので、まず先頭になって熱意を示すということが大事です。
 それから、これも四年前の教訓を生かして、迎賓館での公式の夕食会、高円宮妃殿下がごあいさつされた。これはやっぱり皇室が出てくると空気が全然違います、晩さん会の。もちろん、それからあと、この晩さん会だけではないんですが、トヨタの張会長が、経済界のトップが、トヨタもお金出すよという、そういう雰囲気のことを発言された。これはやっぱり経済界も一つなんだと。当然、東京都は先頭だけれども、安倍首相が歌を歌い、そして、張会長は経済界も一つだといって、そして、皇室もやる。そういうことで、晩さん会も終始和やかでくつろいだ雰囲気で、IOCの委員の方々、喜んでおられました。
 これ大事なことなんですが、サー・クレイグ・リーディー委員長、こうおっしゃった。皇太子殿下にお会いできたことについて、国民的支持の象徴だと、こう述べていた。すごく重要なことですね。そういう意味で、今回、日本が一丸となって招致レースに臨んでいる姿勢を明確に示したことで、最後の評価委員の記者会見のコメントは非常に好意的でした。お世辞をいっているというふうにいう人もいるが、そうじゃないです。それは、その記者会見のときに、こちらの顔をきちんと見ながら、竹田会長や僕の顔を見ながら、ちゃんとそういうふうにしゃべりかけながら記者会見やりました、リーディー委員長が。
 それから、公式日程二日目の三月五日火曜日、政治及び市民の支援というプレゼンテーションがありましたので、その質疑の終了間際に、ギー・ドリュー委員から、東京の支持率は七〇%でありますということを初めて公表されました。これは、一月半ばにやった覆面調査の結果なんです。それは、四年前は五六%だったんです。ですから、一月半ばの世論調査結果が七〇%であると。ということは、このIOC評価委員が来日しているときのテレビのさまざまな露出を考えると、今もしやったら八〇%ぐらいいっているんじゃないかというふうに思います。
 先進国におけるオリンピックとしては、イギリスも六八%だったんです。それ超えていますから、途上国というのは大体ばあっといきますから、七〇、八〇当たり前なんですが、成熟した先進都市においては、繰り返しますが、前回の東京が五六で、招致に成功したロンドンでも六八、で、東京は七〇ですから、今後、この国民の熱い期待を十分に受けとめて、開催都市決定まで、一人でも多くの方々にご支援いただけるよう最大限努力していきたい。
 さらに、これから山場を迎える国際招致レースですけれども、国家総力戦で臨まなければいけない、あらゆる外交ルートを通して、百人いるIOC委員に、何らかの形で、これから、賛成票を投じてもらわなければいけないんで、今回は通知表をつけてもらうわけです。通知表をつけてもらって、七月のローザンヌの前に、その通知表が発表されるわけです、成績が。そして、ローザンヌがあって、そして、九月の七日にブエノスアイレスと。マラソンレースでいえば、ちょうど今ハーフマラソンのところですね。まだ半分ありますから、これからが正念場だと思って、皆さんと一緒に頑張りたいと思います。どうもありがとうございます。

○村上副委員長 書記さん、ちょっと時計をとめてください。
 理事者の皆さん並びに知事にお願いをいたします。
 時間が限られておりますので、答弁は簡潔にお願いをいたします。
 時間を再開してください。

○神林委員 これからが山場でございますから、一緒に頑張っていきましょう。
 それでは、スピード感を持って進めていきたいと思います。
 次に、平成二十五年度予算について伺います。
 我が国経済は、先月の月例経済報告で、二年ぶりに景気判断が二カ月連続で上方修正されるなど、ようやく明るい兆しが見え始めました。
 こうした状況を受け、二十五年度予算では、都税収入は三・九%、一千六百億円増加すると見込まれています。
 一方、歳出を見てみると、政策的な経費である一般歳出の伸びは一・六%となっています。
 そこでまず、一般歳出の伸びと税収の伸びとの関係についてご説明いただきたいと思います。

○中井財務局長 お話のとおり、来年度の都税収入は、前年度に比べ約一千六百億円増加する見込みとなっておりますが、特別区財政調整交付金など、税の一定割合を区市町村に交付する経費もこれに伴い伸びてまいりますことから、これを控除した都の実質的な税収増は約一千四百億円となります。
 一方、都財政は景気変動の影響を受けやすい不安定な構造にあることから、この税収増を施策の充実と財政基盤の強化の両面にいかにバランスよく配分するかが今回の予算編成のポイントの一つでございました。
 こうしたことから、実質的な税収増の半分に当たる約七百億円を一般歳出の増加に活用するとともに、残りの七百億円を都債の発行抑制などに充てた結果、都税収入の伸びが三・九%であるのに対し、一般歳出の伸びは一・六%となったものでございます。

○神林委員 ただいまご答弁にありましたとおり、税収増に浮かれることなく、施策を推進する攻めと、それを支える備えの両面に目配りをきかせたものと評価をいたします。
 予算の内容を少し詳しく見ていくと、三年ぶりに伸ばした一般歳出の中で目を引くのは、投資的経費を九年連続で増加させていることでございます。さきの国会審議では、公共事業イコールむだ、ばらまきというような極めて乱暴な議論も聞こえてまいりましたが、社会資本の整備は、都民の生命、財産を守り、東京の活力を高める上で不可欠な取り組みであります。
 そこで、投資的経費を増額した理由を伺います。

○中井財務局長 木造住宅密集地域の不燃化、耐震化や津波、高潮対策など、災害に強い都市づくりを加速させ、都民の安全・安心を確立することは、現下の都政の最重要課題の一つでございます。
 また、東京外かく環状道路や東京港を初めとする都市インフラは、都民の利便性や国際競争力向上に大きく寄与するものでございます。
 こうしたことから、平成二十五年度予算においても、社会的必要性や緊急性が高く、経済波及効果も大きい投資的経費に財源を重点的に振り向けることとしたものでございます。

○神林委員 ようやく薄日の差した景気回復の動きを確かなものとするために、必要な社会資本の整備は着実に進めていただきたいと思います。同時に、いわれのない批判を受けないためにも、投資効果の高い事業を厳選するとともに、都民の貴重な税金を使って実施している事業の効果が広く都民に伝わるよう、要望しておきます。
 さて、先ほどの答弁では、投資的経費の財源として大きな役割を果たす都債の発行を抑制したということでございます。
 そこで、都債発行に係る都の基本的考え方について伺います。

○中井財務局長 都債は、社会資本の整備や更新などの貴重な財源であり、世代間の負担の公平や年度間の財政負担の平準化を図る機能を持っております。
 一方で、都財政は、バブル経済崩壊後に大量発行した都債の償還が、政策的経費である一般歳出を圧迫し、厳しい財政運営を強いられた苦い経験を有しております。
 都債の活用に当たっては、こうした過去の教訓を踏まえ、財政環境や金利動向の変化に対応しながら、発行規模の適正化や適切な都債管理に不断に努めていかなければなりません。
 こうした考えのもと、平成二十五年度予算においては、将来の財政負担を考慮して、都債の発行額を抑制し、財政基盤の強化を図ることとしたものでございます。

○神林委員 ただいま答弁いただいた都債の活用も含め、リーマンショックや東日本大震災という大きな社会経済の変動の中、機動的な施策展開を支える原動力となったのは、何といっても財政の力であります。
 都はこれまで、我が党と手を携え、血のにじむような財政再建に取り組み、これをなし遂げてきました。最近よく目にする実現不可能とも思えるパフォーマンス的な公約とは異なり、地に足のついた地道な取り組みで実績を積み重ねてきたわけでございます。
 今後とも、都民の期待に確実にこたえていくためには、民間の発想や経営感覚なども取り入れながら、歳入の確保や歳出の精査という基本に立ち返り、これに不断に取り組むことで、スリムで弾力的な財政体質を維持していくことが重要です。
 そこで、十二兆円を超える巨額の予算を扱う知事として、どのように責任ある財政運営を行っていくのか、所見を伺います。

○猪瀬知事 おっしゃられたように、東京を預かる者の責務は、いかなる状況にあっても都民の暮らしを守ることでありますから、先々を見通し、日本の心臓である東京から新しいモデルを常に発信していくということで、行政運営のよりどころは、何といっても強固な財政基盤であります。これは、IOCの評価委員に対しても、東京都の財政基盤についてプレゼンテーションをきちっとしました。
 都道府県で唯一地方交付税を受け取っていないのは東京都でありますが、ただ、構造的に税収が大きく変動するリスクを抱えていることから、他の自治体よりも強い自己規制を課しながら、自立した財政運営をしていかなければいけません。このため、平成二十五年度予算では、都債の発行額を今年度より一割、四百五十億円減らし、基金残高を三百七十億円ふやすなど、中長期的な視点に立って、財政基盤の一層の強化を図ることにいたしました。
 この先も、堅実な財政運営を基本に、都議会の皆様とともに手を携えながら、改革を揺るぎなく進めて、責任をしっかり果たしていくと、そういう覚悟であります。

○神林委員 昨日、三月十一日で、東日本大震災から二年となりました。改めて、犠牲になられた多くの方々のご冥福をお祈りするとともに、被災地の一日も早い復旧、復興と、首都東京の高度防災都市づくりに向けて、都議会自由民主党は引き続きしっかりと取り組んでまいります。
 大地震で得られた多くの教訓を踏まえ、新たな地域防災計画に基づいて、都は、ハード、ソフト両面の対策を強力に実行していくべきでございます。災害に強い都市とし、都民の命を守るには、まず、発災時に有効に機能する地域づくりが重要であり、自助、共助の推進に向け、住民同士のきずなを強化していく必要があります。
 その中核として期待されるのが、東京防災隣組であり、さきの本会議で大幅な増加を図るとの答弁がありました。
 都心のマンション群や子育て世代が多い新興住宅地など、大都市東京の各地域の状況は、まさにさまざまですが、それぞれ工夫を凝らしたすぐれた活動があります。さらに、子どもや若者も巻き込んだ取り組み、未来を担う人材の育成も忘れてはなりません。防災隣組の第二回認定では、こうした多様な活動を掘り起こすことが重要で、また、選定した隣組の活動が一層向上するような支援も必要でございます。
 防災隣組の認定と活動への支援について、どのように取り組むのか伺います。

○笠井総務局長 東京防災隣組の第二回認定では、より多様な活動を行う団体を掘り起こすため、地域の実情に通じた区市町村と十分に連携し、認定作業を進めております。
 現在、高層マンションでの停電や断水を想定した避難生活の仕組みづくり、ツイッターやフェイスブックを活用した情報共有、さらには、地元の学校と連携した合同訓練により、生徒を防災活動の担い手として育成する取り組みなど、区市町村からさまざまな活動が報告されており、こうした幅広い取り組みを数多く認定するべく取り組んでおります。
 加えて、認定団体の一層の活性化に向け、専門家の派遣を来年度から新たに七十回程度実施いたします。
 地域の意欲的な取り組みを発掘し、その活動を積極的に支援することにより、防災隣組のさらなる普及拡大を図ってまいります。

○神林委員 認定された隣組の活動を周囲の団体に波及させていくために、資器材の整備など、地域の活動力を高める具体的な後押しをさらに充実させていくよう検討を求めておきます。
 地域の災害対策は、区市町村が中心となり、消防署、消防団、町会、自治会などと協力して行いますが、効果的に活動できるかどうかは、各機関の連絡、連携にかかっております。
 東日本大震災では、携帯電話の通話規制により、関係者相互の連絡がとりにくくなるという苦い経験をいたしました。首都直下地震を見据えると、帰宅困難者対策では、区や市と民間一時滞在施設との連絡体制が課題であり、多摩・島しょ地域の消防団については、市町村、消防署、団員間の連絡のための無線機の確保が十分でないのが大きな課題だと聞きます。
 こうした課題に対しても、早急に対応策を示していくことが重要であり、区市町村と地域で活動する団体との通信が円滑に行えるよう、緊急的な支援をすべきと考えますが、都の取り組みを伺います。

○笠井総務局長 地域の災害対応を担う行政と団体等の連絡体制を早期に確立するため、二カ年の緊急対策として新たな補助制度を創設し、各区市町村が、それぞれの実情に応じて通信体制を確保する取り組みを支援してまいります。
 この制度の運用により、帰宅困難者の一時滞在施設の運営を担う民間事業者への無線機の配備や、多摩・島しょ地域の消防団への無線の設置を進め、行政と防災関係機関との連携を強化し、地域の災害対応力の向上を図ってまいります。

○神林委員 無線機などは、実際に扱う人々にとって便利で使いやすいものになるよう、要望をしておきます。
 次に、東京の道路整備について伺います。
 我が国の経済を再び成長軌道に乗せ、国際競争力を強化するには、日本を牽引する首都東京のインフラの充実なくしてはあり得ません。
 中でも道路整備は、東京の最大の弱点である交通渋滞を解消して、都市機能の向上を図るとともに、災害時においても交通や物流を確保し、日本の中枢機能を堅持する上でも効果が高く、重点的に取り組む必要があります。
 国においては、地域自主戦略交付金を廃止し、防災安全交付金を創設しましたが、道路整備に当たっては、この交付金の活用も含めた財源の確保が不可欠です。
 そこで、道路整備の推進と、その財源確保について、都の見解を伺います。

○村尾東京都技監 東京の道路は、全国の交通ネットワークのかなめとして我が国の発展を支えるとともに、平常時、震災時にかかわらず、首都の安全・安心を確保し、都市活動を支える重要な社会資本でございます。
 このため、首都圏三環状道路や区部環状、多摩南北などの幹線道路、羽田空港アクセスを向上させる放射一七号線など、さらには、木密地域の特定整備路線を含め、国際競争力の強化や高度防災都市の実現を図る道路整備に重点的に取り組んでまいります。
 今後とも、道路整備に必要な財源を安定的に確保するとともに、新たに創設された防災安全交付金などの配分に当たりましては、日本を牽引する役割を担う東京に、確実に財源を措置するよう、あらゆる機会をとらえて国に強く求めてまいります。

○神林委員 ただいま答弁いただいたとおり、財源を安定的に確保し、整備を推進していただきたいと思います。
 次に、都道の維持管理について伺います。
 東日本大震災では、救助救援活動や緊急物資輸送など、道路ネットワークの重要性が再認識されました。また、昨年発生した笹子トンネルの事故を契機に、社会資本に対する維持管理の果たす役割が改めて注目されています。
 そこで、これまで築き上げてきた道路ネットワークを次世代に引き継ぐため、道路ストックの予防保全型管理をさらに推進すべきと考えますが、都の所見を伺います。

○村尾東京都技監 橋梁やトンネルなどの道路ストックにつきましては、日常的な巡回点検に加え、定期点検などにより状況を把握し、必要な補修補強工事などを実施し、道路ネットワークの寸断や重大な事故を未然に防いでまいりました。
 とりわけ橋梁につきましては、アセットマネジメントの手法を採用し、長寿命化や耐震補強を推進するとともに、必要なかけかえを着実に実施しております。
 また、トンネルにつきましては、現在、高解像度カメラによる壁面の画像調査など、最先端技術を活用した詳細健全度調査を実施中でございまして、必要な緊急対応を行いつつ、予防保全計画の策定に向け、平成二十五年度中に全トンネルの調査を完了いたします。
 今後とも、東京の活力を支える幹線道路整備を積極的に進めるとともに、最新の点検結果などを踏まえながら、道路ストックを計画的かつ効率的に維持管理してまいります。

○神林委員 次に、不燃化特区の取り組みについて伺います。
 先月初め、都内で木密地域にある老朽家屋が自然倒壊し、住民がけがを負いました。これは老朽家屋の存在が深刻な問題であることを明示しております。こうした地域にとって大変危険な老朽家屋の除却に当たっては、複雑な権利関係にある権利者の同意をとることが難しい上に、高齢者がゆえの建てかえ意欲の低下など、所有者が危険な家屋を除却する動機づけが余りに少ない状況です。
 都が進める不燃化特区では、こうした木密地域に内在する深刻な課題に適切に対応していく必要があると考えます。
 まず、老朽家屋の除却を進めるための対策は、どのようなものがあるのか伺います。

○飯尾都市整備局長 老朽家屋の除却に当たりましては、ご指摘のような課題を解決するために、弁護士などの専門家を派遣するほか、除却費用を全額公費で負担することや、更地にした土地の管理用の仮設費を助成してまいります。
 なお、除却後、不燃化された建物に建てかえる際には、設計費の一部を助成するほか、新築から五年間、固定資産税と都市計画税を全額減免する新たな制度を設けることで、老朽家屋の除却を促進することといたしました。

○神林委員 老朽家屋が除却されないことの要因の一つに、家屋がなくなると固定資産税などの住宅用地の特例が適用されなくなり、土地所有者の税負担が増加してしまうことが挙げられています。
 老朽家屋の除却を進めるためのさまざまな支援策を行うことは重要ですが、それに加え、我が党は、これまでも税制面での対応をすべきだと主張してまいりました。見解を伺います。

○新田主税局長 老朽家屋を除却し、跡地が空き地となった場合には、お話のとおり、固定資産税等におけます住宅用地の特例措置が適用されず、税負担が増加することとなります。
 このため、不燃化特区におきまして、防災上危険な老朽家屋が除却され、その跡地が適正に管理されていると区が認定した空き地につきましては、老朽家屋の除却の促進に向けて、引き続き住宅用地並みの税負担の軽減が図れますよう、税制面からの支援策を検討しており、現在、関係局と連携し、具体的な詰めを行っております。

○神林委員 さらに、今回の事故は、道路に接していない、原則建てかえができない、いわゆる未接道敷地に建つ家屋の倒壊でございました。こうした土地は、住民みずからの努力では解決できない木密地域の大きな課題です。
 不燃化特区では、この土地を地域整備の種地として活用していくとありますが、具体的にはどのように活用していくのか伺います。

○飯尾都市整備局長 不燃化特区の区域内でも、特に改善が必要で、整備に向けた権利者等の意向が強い街区を対象にいたしまして、その中の未接道敷地を区が取得し、周辺の土地と組み合わせて、共同化建物への建てかえや、道路、公園などの用地として活用してまいります。
 こうした取り組みによりまして、路地や狭小な宅地などで構成される街区を、周辺住民の協力を得ながら、安全な地区へと整備してまいります。
 都は、区の取り組みを支援いたしまして、木密地域の整備を進め、民間の参入機会を図るなど、地域の価値も高めてまいります。

○神林委員 ただいま答弁があったような取り組みは、限られた地区で始まるものですが、これを契機に木密地域が、この方策によって安全な地域へと生まれ変わり、地域の価値も高まることが検証されれば、特区に限らず、民間参入の呼び水となることが期待されます。
 次に、特定整備路線の整備について伺います。
 都は、震災時に、特に甚大な被害が想定される木密地域において、延焼遮断などに大きな効果が見込まれる特定整備路線の整備を推進することとしています。昨年六月、十月には、二十八の候補区間が公表されましたが、平成三十二年度までに整備をするためには、より一層、迅速な取り組みが求められます。
 先日の本会議で、我が党は、関係権利者の移転などの支援策について伺いましたが、事業化に向け、地元説明会などを開始している旨の答弁もありました。
 そこで、特定整備路線の事業化に向けたこれまでの取り組み状況や、今後の予定について伺います。

○村尾東京都技監 特定整備路線を、今後、実質八年間で整備するためには、関係権利者へのきめ細かな対応を行うとともに、地元区と連携しながら、早期事業化を図ることが重要でございます。
 都は、昨年の候補区間の公表以降、速やかに地元区と調整会議を設置するとともに、道路構造の検討などを進め、これまで、豊島区内の補助二六号線を初め、四区間で地元説明会を開催し、測量に着手するなど、精力的に取り組みを進めております。
 残るすべての区間につきましても、来年度には地元説明会などを開催し、関係権利者への支援策の十分な周知に努めるとともに、債務負担行為を活用し、年度を超え継続的、効率的に測量調査を進め、一日も早い事業化に取り組んでまいります。

○神林委員 次に、木密地域における住民の要望にこたえる相談体制づくりについて伺います。
 特定整備路線と不燃化特区事業においては、相続、複雑な権利関係、移転や再建など、住民が抱えている不安を解消するための相談窓口を、それぞれの事業で設置することになっております。両事業が重複する地域もありますが、それぞれの窓口で対応が異なるようでは、住民の混乱を招く要因になりかねません。両事業が重複する地区では、施策の実効性を高めるためにも、権利者の利便性を考慮して、個々の住民の要望や相談を一体的に受けとめる体制づくりが望まれます。
 そこで、都の見解を伺います。

○村尾東京都技監 木密地域に設置する相談窓口は、関係権利者の方々の意向に沿った移転や再建を支援するものでございまして、気軽に相談できる地域に密着した体制の整備が重要でございます。特定整備路線の相談窓口は、計画線内からの立ち退きに伴い、権利者の方々の要望に沿う移転先の確保や再建プランの作成などが主な役割であり、測量などの準備が整い次第、原則として路線ごとに、平成二十五年度後半から設置いたします。
 また、不燃化特区における区のまちづくりステーションでは、建物共同化や住宅の建てかえなど不燃化促進のための支援策実施や、複雑な権利関係の調整などの対応を行うこととしております。
 相談体制の整備に当たりましては、関係権利者の混乱を招かないよう、両事業が重なる場合には、区の意向も踏まえ、窓口の一本化を図ってまいります。これにより、関係権利者の不安を解消できるよう、手厚いサポートに努めてまいります。
 今後とも、燃えないまち、燃え広がらないまちの実現を目指し、平成三十二年度までの木密地域の整備に向け、全庁を挙げ全力で取り組んでまいります。

○神林委員 長年の課題である木密地域の改善を実質八年で完成させるためには、都として相当な覚悟が必要です。一本化した現地事務所を設置し、個別相談など、意欲的な取り組みを積極的に行うよう、大いに期待をしております。
 次に、緊急輸送道路沿道建築物の耐震化について伺います。
 沿道建築物の所有者は、中小企業や高齢者などさまざまであり、耐震化を加速させるためには、資金面での支援策が重要でございます。先般の代表質問において、所有者への支援策を拡充するとの答弁がありましたが、具体的にどのような内容なのか伺います。

○飯尾都市整備局長 耐震性能が低くなりますと補強箇所も多くなりまして、技術的にも困難になりますことから、多額の工事費を要する場合が多くなります。このため、耐震診断の結果、倒壊や崩壊の危険性が高いと判定された建築物については、改修工事の助成単価を従来の一・五倍に割り増すことといたしました。
 また、低利融資につきましても、融資上限額を従来の一億円から三億円へと大幅に引き上げ、改修や建てかえ工事に要する所有者の費用負担を軽減することといたしました。

○神林委員 助成制度や融資制度などの資金面での支援策を積極的に実施するとともに、情報提供や相談体制の充実など、所有者に対するきめ細かい対応をお願いいたします。
 また、平成二十七年度までに一〇〇%の耐震化を達成するためには、区市町村の協力も不可欠です。改修工事に対する助成制度の充実など、区市町村が積極的に取り組むよう、強く促していくべきと考えます。
 そこで、区市町村の助成制度について、平成二十五年度の見込みはどのようになっているのか伺います。

○飯尾都市整備局長 区市町村が助成する場合、国と都と合わせて最大で工事費の六分の五の金額を負担することができる仕組みとなっております。区市町村に対しまして積極的な取り組みを要請いたしました結果、平成二十五年度からは、約八割の自治体で六分の五の助成率が適用される見込みでございます。
 耐震化を早期に進めるため、残りの区市町村に対しても、制度の拡充について強く働きかけてまいります。

○神林委員 区市町村に対して、さらに強力に働きかけ、一体となって耐震化を進めていくようお願いいたします。
 次に、新たな中小河川の整備について伺います。
 昨年夏の九州北部豪雨や、昨年秋にアメリカ東海岸を襲ったハリケーンの例は記憶に新しく、都内でも、近年、一時間に一〇〇ミリを超えるような局地的な集中豪雨が頻発しております。自然現象に対して常に万全の備えを講じていく必要があることはいうまでもありません。
 こうした中、都は、昨年十一月、中小河川における新たな都の整備方針を策定されました。
 そこで、新たな整備方針について、改めてその意義と効果について伺います。

○村尾東京都技監 中小河川の整備につきましては、近年、これまでの整備水準を超える降雨が頻発していることから、より高い目標を設定し、河川整備を一層効率的、効果的に進めていくことが重要でございます。このため、中小河川の新たな整備方針では、蓄積された降雨データをもとに、区部と多摩の降雨特性の違いを踏まえまして、目標整備水準を設定し、これまでの時間最大五〇ミリから、区部では時間最大七五ミリ、多摩では六五ミリに引き上げました。
 河道整備などのこれまでの対策に加え、新たな整備水準による、より効果の高い施策も早期に実施してまいります。このことにより、既往最大の浸水被害をもたらしました狩野川台風規模の豪雨や、時間一〇〇ミリの局地的かつ短時間の集中豪雨に対しても、河川の溢水防止が可能となります。

○神林委員 ただいまその意義と効果について伺いましたが、それでは、この整備方針に基づいて、平成二十五年度は、具体的にどのような取り組みを開始するのか、伺います。

○村尾東京都技監 整備方針におきましては、時間五〇ミリレベルまでの対策は河道整備で、時間五〇ミリを超える部分につきましては調節池で対応することを基本としております。また、近年の時間一〇〇ミリの局地的短時間の集中豪雨による溢水被害にも対応するため、複数の地下調節池をトンネルで連結し、流域を越えて相互に活用する広域調節池の整備などを提案いたしました。
 平成二十五年度は、この方針に基づき、石神井川や神田川流域など優先度の高い流域におきまして、広域調節池など具体的な検討に着手いたします。今後とも、高度防災都市東京の実現を目指して、中小河川の整備に全力で取り組んでまいります。

○神林委員 次に、八ッ場ダムについて伺います。
 さきの民主党政権は、マニフェストに書いたからという理由だけで、入札直前のダムの本体工事を一方的に中止するという暴挙に及び、地元や関係都県に大きな混乱をもたらしました。繰り返すまでもなく、八ッ場ダムは、人口や都市機能が高度に集積する首都圏を守るために、治水、利水の両面から必要不可欠な施設でございます。ダム湖を前提とした一日も早い生活再建を切望している地元の方々の窮状もこれ以上見過ごすわけにはいきません。
 昨年十二月に、自民党中心の政権にかわり、先般、一都五県の議員で構成する八ッ場ダム建設推進議員連盟一都五県の会は、国土交通大臣に、八ッ場ダムの早期完成を強く要請し、大臣から早期完成に向けて力を注ぐとの回答を得ました。八ッ場ダムは、早期に完成させるべきと考えますが、知事の決意を伺います。

○猪瀬知事 憲法の九十二条に、地方は、セルフ・ガバメント、地方自治体であって地方政府であると書いてあるわけですが、民主党政権ができて、前原国交大臣がその直後に、多目的ダム法に書いてあるその手続を一切踏まず八ッ場ダムを中止した。
 その地方政府の意思というものがきちんと多目的ダム法に書かれているわけですが、一都五県、群馬県、埼玉県、茨城県、栃木県、千葉県、そして東京都、こういうことで、思いつきでやったということですが、その後、事業継続を表明したんだけれども、三年半の月日が、ただただむだに費やされた。
 日本の心臓である東京を含む首都圏において、治水や利水の安全度を高めることは政の根幹でありますから、政府は、事業中止に伴うおくれを取り戻して、ダムを早期に完成させる責務があると考えております。

○神林委員 一日も早くダムの完成についてお力添えをよろしくお願いいたします。
 次に、下水道事業の浸水対策について伺います。
 下水道局では、このたび、経営計画二〇一三を策定、公表しましたが、そのポイントの一つが、都民の安全・安心を支える施策のスピードアップと聞いています。
 そこで、安全・安心に関する下水道の取り組みの中から、特に浸水対策について伺います。
 先ほども申し上げたとおり、昨今、各地で記録的豪雨が襲い、毎年のように、雨季や台風期を中心に甚大な被害が発生しております。高度に都市機能が集積し、多くの人が生活する首都東京で、豪雨による浸水が発生した場合、甚大な被害をもたらしますが、都市部の浸水を防止する重要な役割を担うのが下水道であります。
 そこで、下水道事業における浸水対策はどのような目標を持って、どのように取り組んでいるのか伺います。

○小川下水道局長 下水道局では、浸水被害の解消を目指し、雨水の排除能力を増強する幹線やポンプ所など基幹施設の整備を計画的に進めております。浸水の危険性が高く、優先的に整備することとした対策促進二十地区について、平成二十九年度までの完了を目標としております。既に、すべての地区で着手しており、このたび策定した経営計画二〇一三において、計画期間中の平成二十七年度までの間に十三地区を完了させるなど、対策のスピードアップを図ってまいります。
 さらに、浸水による被害の影響が大きい大規模地下街では、整備済みの新宿駅など四地区に加え、銀座駅など五地区で、一時間七五ミリの降雨に対応できる貯留施設などを整備することとし、平成二十七年度までの間にすべての地区で着手してまいります。

○神林委員 一方、かつて川が流れていた箇所を下水道として使用している地域など、いまだに浸水被害に悩まされている地域も残されております。
 そこで、こうした地区への一刻も早い対応も求められる中、これからの取り組みとして、さまざまな工夫により対策を進めていくべきとありますが、見解を伺います。

○小川下水道局長 ご指摘のとおり、かつての川を下水道幹線として利用している流域では、幹線が浅く埋設されているため、大雨により幹線内の水位が上昇すると、周辺の地盤の低い箇所に雨水が逆流し、浸水被害が発生しやすい状況にございます。
 このような流域では、幹線内の流量が多いことに加え、道路幅が狭いなど厳しい施工環境にあるため、これまで対応が困難でございましたが、既存の幹線の直下などに新たな幹線を整備する手法なども取り入れ、対策を実施することといたしました。
 対策促進地区に加え、これらの流域から二十地区を重点地区として新たに選定し、経営計画期間中の平成二十七年度までの間に、神田川流域の桃園川幹線など十一地区に着手することとし、工事に必要な用地の確保などについて、地元区等と連携を強化し、迅速に対策を進めてまいります。

○神林委員 ただいまの答弁にありましたとおり、地元区などとの連携も図りながら迅速に対応していくとのことでありますので、対策の推進に当たっては、庁内の関係部署や地域との一層の連携を図りつつ、東京の浸水被害解消を早期に実現していただきたいと思います。
 次に、羽田空港に関して伺います。
 羽田空港では、都の働きかけにより実現したD滑走路が供用され、二年余りが経過し、国際線は、来年度中に年間九万回となる予定であり、それによって、経済の活性化や国際競争力の強化が期待されます。
 そこで、羽田空港の機能強化と、さらなる国際化の推進について、今後、都としてどのように取り組むのか伺います。

○飯尾都市整備局長 羽田空港では、現在、国際線の発着枠拡大に対応するターミナルの拡張工事が進められておりまして、来年度には、昼間時間帯に欧米路線や長距離アジア路線の就航が予定されております。また、長距離国際便の増強を図るC滑走路の延伸につきましても、都は、その工事の前倒しを国に働きかけております。さらに、ターミナルの拡張に合わせ、ビジネス航空の専用動線の整備に向けた調整が行われているところでございます。
 引き続き、羽田空港の機能強化と、さらなる国際化を着実に進めるよう国に働きかけてまいります。

○神林委員 羽田空港の機能強化及びさらなる国際化の推進に伴い、空港への交通アクセスについて一層の充実が図られるべきと考えます。
 そこで、空港への交通アクセスの充実強化について都の見解を伺います。

○飯尾都市整備局長 都心に近い羽田空港の機能を最大限発揮させるためには、道路や公共交通など空港アクセスの充実強化が重要でございます。これまで京急空港線蒲田駅の改良事業により輸送力が増強され、第一京浜と環状八号線の立体交差事業によりまして、周辺の渋滞が緩和されております。現在、首都高速中央環状品川線の整備や、大鳥居交差点の改良などを鋭意進めているところでございます。
 また、国道三五七号線につきましては、既に着工している東京港トンネル部の整備促進と多摩川トンネル部の早期着手を国に働きかけております。
 引き続き、国や地元区などと連携し、空港アクセスのさらなる充実強化に向けてスピード感を持って取り組んでまいります。

○神林委員 具体的な名前をいわせていただきます。周辺道路の拡幅や国道三五七号多摩川トンネル、新空港線など、今後整備が急がれる空港アクセスについても、引き続きしっかりと連携を図りながら取り組んでいただきたいと思います。
 さらに、空港機能強化、国際化を進める上では、羽田空港跡地の活用は極めて重要でございます。跡地の大半を占める第一ゾーンについては、地元大田区が最先端のものづくり産業の発信や多文化の交流を図ることとしております。
 私は、第一ゾーンにおいては、空港と市街地の双方に近接した立地を生かし、買う、食べる、飲む、楽しむなど、人の集う施設によるにぎわいの創出や、周辺地域との連携の視点が重要と考えます。
 跡地は、地元区のみならず都の進めるアジアヘッドクオーター特区としても重要です。戦後四十八時間の強制退去や、長年にわたる航空機騒音の歴史を踏まえ、まちづくりにおいて、国と都と区が連携し、その中で都がしかるべき役割を果たしていくことが不可欠だと考えます。
 そこで、今後、この跡地第一ゾーンのまちづくりについて、都としてどのように取り組むのか、所見を伺います。

○飯尾都市整備局長 羽田空港跡地の第一ゾーンは、国際化した羽田空港と都市の機能を結ぶ結節点として重要な場所でございます。また、お話のような経緯もあり、地元の方々にとっても大事な場所と認識しております。ここには、災害時の避難場所を確保するとともに、区が産業交流施設を導入し、地域の活性化を図るなど、にぎわいのある拠点づくりを目指しております。
 都は、国や地元区と連携しながら、まちづくりに必要な都市基盤も含め跡地の整備促進を図ることとしております。
 今後も、跡地のまちづくりに当たり、国や地元区と連携し、都としての役割をしっかりと果たしてまいります。

○神林委員 今、局長の最後の答弁の部分で、都として役割をしっかりと果たしていくと、こういう重みのある答弁をいただきました。引き続き地元区との連携を密に行い、国、都、区の役割分担を明確にしながら、まちづくりを進めていくよう強く要望いたします。
 次に、国際コンテナ戦略港湾について伺います。
 東京、川崎、横浜の三港は、平成二十二年八月、国が選択と集中による重点投資を行う国際コンテナ戦略港湾に選定されました。しかし、その後の状況は、必ずしも都が期待したとおりの方向には進んでいません。
 まず、東京港で最重要の新規整備事業である中央防波堤外側C3ターミナルと臨港道路南北線が二年連続で不採択となっております。これについては、我が党が政権交代直後、国土交通大臣に、東京港の整備推進を直接訴え、前向きに取り組むとの回答を得ていますが、都も引き続き国に働きかけていただきたいと思います。
 次に、港湾運営会社制度の創設であります。
 港湾法改正によるこの制度では、最終的に三港のふ頭会社を一つにして、京浜港を一元的に運営することを予定しています。これについては問題が少なからずあると考えます。
 まず、この制度により、東京港として求められている対応について伺います。

○多羅尾港湾局長 港湾運営会社制度では、最終的な姿として、平成二十八年九月までに、東京港、川崎港、横浜港のふ頭会社が合併して一社となり、京浜港を一元的に運営することが予定されております。当面は、三港統合会社の前段階として、各港に特例港湾運営会社を置くこととなっております。
 東京港においては、東京港埠頭株式会社が平成二十五年九月までに、特例港湾運営会社となることへの指定の申請を国に行うことが求められております。
 なお、港湾運営会社に対し、国は、会社の事業運営の基本を示した運営計画の審査を行うとともに、利用者に提供する施設の利用料の変更命令権などを有しております。

○神林委員 東京港埠頭株式会社は、都の適切な指導のもと、現場の実情に合ったきめ細かいターミナル運営を行っていますが、三つのふ頭会社が一つになると、都など各自治体は会社との関係が薄まり、会社の事業運営に十分な指導力を発揮できなくなるおそれがあります。
 また、一方で、国の関与が強まっている感もあります。都民生活に直結し、日本経済を支える東京港、京浜港の発展のためには、港湾管理者としての現場を熟知した都など各自治体が、今後も、ふ頭会社との強固な関係を保ち、港湾経営に十分な責任を持つことが不可欠であります。
 今後の東京港の運営にどのように取り組んでいくか、知事の見解を伺います。

○猪瀬知事 東京港は、長さ六メートル規格のコンテナに換算すると、日本で唯一、四百万個を超えるコンテナ貨物を取り扱い、これは大体、我が国の全体の四分の一を占めています。今後も、日本と世界を直接結ぶ港として我が国の経済を牽引していけるよう、横浜港、川崎港と連携して、国際競争力の強化に向けた取り組みを進めていきます。
 一方、港の持つ力を最大限に発揮するには、港の現場を熟知した自治体がしっかりと港湾の経営にかかわっていくことが不可欠であります。その点、国交省が考えている危険な意図である三港のふ頭会社の単純合併、これは各自治体の港湾へのかかわりを薄くするものであります。東京都を初め、各自治体が責任を持ってこの経営にかかわっていける体制を確保できるよう、中央官僚機構と対峙していきます。

○神林委員 港の実態にかなったふ頭会社の体制のあり方を初め、制度の適切な運用を国にきちんと要望するなど、十分な対応をお願いしておきます。
 次に、水道事業について伺います。
 我が党はこれまでも、アジア諸国の水事情の改善を図るべく、都にさまざまな提案をしてまいりました。こうした我が党の提案にこたえて、水道局は、ニーズを調査し、高い技術力やすぐれたノウハウを海外へアピールしており、タイで漏水防止のパイロット事業を手がけるなどの成果を上げております。
 水道事業の海外展開について、副知事在任中から取り組んでこられた知事に、今後の展望について伺います。

○猪瀬知事 東京水道は、漏水率三%を達成した漏水防止技術や高度な水運用システムなど、世界一の技術を有しています。こうした技術を活用して、東京の強みを最大限に生かした海外展開を図っており、先月、タイで漏水防止パイロット事業の契約を締結しました。
 さらにこのたび、新たに台湾において水道事業体である台北自来水
 東京水道サービスはこれまで、台湾では下請契約にとどまっていたが、この覚書の締結によって直接受注が可能になります。また、ミャンマーでは、その最大都市であるヤンゴン市の水道局とも技術協力を始めていきます。
 台湾は、日本との経済的結びつきが強く、ミャンマーは、今後の経済発展が期待される重要な国であります。こうしたパイロット事業や人材育成を足がかりにして、アジア各国の水事情の改善に貢献してビジネスにしていきたいと。
 以上です。

○神林委員 ただいまご答弁にありましたとおり、ぜひとも都の強みを生かして事業展開を図り、経済再生の原動力になってもらいたいと思います。
 ところで、水道事業の民営化を主張する政党がありますが、水は、食料、エネルギーと並び国家の安全保障上極めて重要な資源であります。安易な民営化で外国資本の脅威にさらされてはなりません。
 水道は、人が直接触れ、口にするものであり、日本国民は、公営水道の高い安全性と、将来にわたる安定給水に期待しております。いわゆる水メジャーと呼ばれる民営の欧米企業は、水道料金の値上げや不採算の地域から撤退することがあります。アジア諸国では、東京に手を差し伸べてほしいという声が高まっております。
 都は、先月、二〇一八年に開催される国際水協会世界会議の開催都市に立候補いたしました。この世界会議では、各国の民間企業が参加する大規模な展示会が開催されると聞いております。日本企業にとっては、みずからのすぐれた技術やノウハウを積極的に発信できる絶好の機会であり、ビジネスチャンスも広がると期待できます。
 この世界会議を東京に招致するため積極的に取り組むべきと思いますが、見解を伺います。

○増子水道局長 国際水協会の世界会議は、各国の水問題解決のため、六千名を超える国内外の関係者が参加するもので、上下水道及び水環境分野における世界最大の会議であります。そのため、この会議を招致することは、日本の民間企業にとって、ビジネスマッチングの機会が大きく広がるものと期待しております。
 そこで、会議の招致に向けて、開催都市が決定する九月の理事会までの間に、海外で行われる国際水協会関係の会議などに積極的に参加して、東京の開催能力や安全性、快適性などを強くPRしてまいります。
 また、国や産業界及び学術界等が一致団結して招致活動を行うこととしておりまして、理事会でのプレゼンテーションを初め、理事会への働きかけを積極的に実施してまいります。
 これらの招致活動を通じて、東京の安全性や快適性などをPRしていくことは、二〇二〇年の東京オリンピック・パラリンピックの招致に貢献するものと考えております。

○神林委員 ぜひ、世界会議の東京招致を実現させていただきたいと思います。
 さて、水道局では、都民に安全でおいしい水を届けるために、その施策の一環として、貯水槽水道方式から直結給水方式への切りかえを進めております。直結給水方式に切りかえた場合、配水管の圧力を利用するため、エネルギーを有効に活用でき、貯水槽のポンプなどに使用される電気量も削減することができます。この直結給水方式への切りかえをさらに促進していく必要がございます。
 そこで、貯水槽水道方式から直結給水方式へと切りかえた場合の効果と具体的なエネルギー削減量について伺います。

○増子水道局長 直結給水へ切りかえた場合の効果でありますが、貯水槽の点検や清掃にかかる費用が不要となるほか、貯水槽撤去後のスペースを有効に活用することができます。また、ご指摘のとおり、エネルギーの削減についても大きな効果が見込まれます。
 現在、水道局は、都内電力使用量の約一%、年間約八億キロワットアワーという膨大なエネルギーを消費しておりますが、都内にある約十五万件の貯水槽水道で使用される電力量は、その六割にも相当いたします。
 具体的な削減量でございますが、世帯数、ポンプの型式などにより異なりますが、三十世帯のマンションの場合、直結給水へ切りかえた際のエネルギー削減量は、電力量で年間約五千キロワットアワー、これを電気料金に換算いたしますと年間約十三万円となります。

○神林委員 ところで、平成二十五年度には、高度浄水処理が一〇〇%となりますが、都内には、いまだ十五万件の貯水槽水道があり、管理が不十分な場合、せっかくの高度浄水が台なしになります。
 そこで、貯水槽水道の対策や直結給水化をどう進めていくのか、今後の総合的な取り組みについて伺います。

○増子水道局長 貯水槽水道対策でございますが、貯水槽の滞留時間が長いなど、水質劣化の懸念がある約五万件につきまして、新たに、平成二十五年度から三カ年で訪問調査を実施いたします。この中で、滞留時間を短くするための水位調整器具の設置など、簡易で経済的な改善策を提示してまいります。
 また、直結給水方式への切りかえを促進していくため、切りかえ工事の見積もりサービスや、給水管を太くする工事の水道局施工などを引き続き実施してまいります。さらに、貯水槽水道の適正管理に関する情報や、直結切りかえによる電気料金の節減などのさまざまな効果をPRするなど、総合的な取り組みを強力に推進してまいります。

○神林委員 貯水槽水道対策と直結給水化にしっかりと取り組んでいただきたいことを要望させていただきます。
 次に、エネルギー政策について伺います。
 再生可能エネルギーの促進を初め、電力システム改革、官民連携インフラファンドの活用など、これらの取り組みを総合的、複合的に進めて、大都市東京ならではのエネルギー政策を実現していかなければいけません。
 現在、都のエネルギー関連施策の所管は複数局にまたがっており、知事の施政方針表明において、環境局内に専管組織を設けると明らかにされていますが、今後どのような体制で、エネルギー政策と環境政策を融合して具体化していくのか、見解を伺います。

○大野環境局長 環境局はこれまで、先駆的な気候変動対策を通じまして、環境先進都市の実現を目指してまいりました。また、震災後の電力不足に際しましては、これまでの省エネ対策などで得られましたノウハウを生かして緊急対策に取り組み、都内の事業者の方々とともに、事業活動への支障の回避に努めてまいりました。
 今回、新たに設置する専管組織には、電力システム改革の推進、自立分散型電源や再生可能エネルギーの普及、インフラファンドの活用などの所管を一元化してまいります。
 これらの施策を環境局において、気候変動対策などの施策とともに、一体的、総合的に進め、エネルギーの需要、供給の両面から、効果的に施策の推進をしてまいります。国のような縦割り行政の弊害を排しまして、東京の現場の実態を踏まえた具体的なプロジェクトに取り組んでまいります。

○神林委員 ただいまの答弁にもあったように、これまでの都の環境政策の先進性を示すものとして、もう一つ大気汚染対策がございます。これについては、先ほども若干質問がありましたので、二点だけ質問をさせていただきます。
 本年一月初旬から、北京市内を含めた中国各地で深刻な大気汚染が継続しており、我が国でも大きな話題となっております。都内の大気環境への中国からのPM二・五の影響はどうなのか。また、都民からの問い合わせや相談を受ける市区町村の職員に対して正確な情報を伝えることが重要と考えますが、見解を伺います。

○大野環境局長 PM二・五に関する報道を見た都民の方から、さまざまな問い合わせが来ております。都内のPM二・五濃度は、この十年間で約五五%と大幅に減少しております。また、本年二月一日から三月十日までの一般環境大気測定局の一日平均値を見ますと、単位はこれは一立方メートル当たりのマイクログラムということですが、四・八から三四・五までの範囲にございまして、平均は一六・六となっております。昨年の同じ時期と比較しまして大きな変化はございません。今般の中国からのPM二・五の影響は生じていないと考えております。
 都民に安心していただくため、こうした都内の状況をホームページやツイッターで速報しております。さらに、三月の二十一日でございますが、関係局と連携して、区市町村の環境、保健、福祉、教育等の担当者を対象とした研修会を開催することにいたしました。ここで都内のPM二・五に関する情報や専門家による健康への影響等についての正確な知識を提供しまして、都民からの問い合わせや相談に対して的確に対応してもらうことで、都民のさらなる安心に結びつけていきたいと考えております。

○神林委員 最も基本的なことなのかもしれませんけれども、ぜひとも、都内区市町村の職員に正確な情報を提供し、都民の不安解消に努めていただきたいと思います。
 さて、中国における大気汚染は、PM二・五だけではなく、さまざまな大気汚染物質によるものとも報道されております。今後の不測の事態に備えて、都としても対応できる準備を怠らないでいただきたいと思います。
 かつては、東京都も深刻な大気汚染がありましたが、今はきれいな空となっております。事業所の対策などに加え、ディーゼル車の排出ガス規制を行ってきたからこそだと思います。
 殊にディーゼル車対策は、石油連盟、自動車メーカー、東京都トラック協会などの協力を得て、官民一体となった成果でございます。
 中国からの大気汚染物質の飛来はいや応なしにやってくるものであり、ほうっておくわけにはいきません。
 都は、これまでの大気汚染対策のノウハウを蓄積しており、隣国である中国やアジアの国々に対して、アジア大都市ネットワーク21などの国際会議の場を活用するなどして、技術協力をしていくべきと考えますが、見解を伺います。

○大野環境局長 これまでも都は、北京市との技術交流や技術協力に関する合意書に基づきまして、大気環境ワークショップにおいて、モニタリングやその評価の方法など、ノウハウや経験を提供してまいりました。
 お話のアジア大都市ネットワーク21の参加都市でありますバンコクから要請を受けておりまして、本年七月に、都の職員が出向くなどして、大気汚染対策のマネジメント研修を実施する予定でございます。この研修では、大気汚染対策や地球温暖化対策の成功事例を伝えることで、バンコクの環境改善に寄与しようとするものでございます。
 今後も、アジアの大都市に対して積極的に技術協力を行ってまいります。

○神林委員 次に、中小企業振興と雇用の確保について伺います。
 最初に、中小企業金融円滑化法終了後の対応についてですが、既に今月末に法律の終了が迫っております。我が党は、法終了に向けた支援の強化について、前倒しして実施するように強く要望してきました。これを受けて、都としての速やかな対応について評価したいと思います。
 さきの本会議の答弁では、経営改善計画が未策定の中小企業は都内に推計で約一万社とのことでございました。数多くの中小企業が経営の改善に取り組むノウハウや社内資源が十分ではなく、行政としてのサポートが必要なのは明らかでございます。
 そこで、経営改善に向けた窓口相談や専門家派遣の体制について伺います。

○中西産業労働局長 金融円滑化法の終了に伴い、中小企業が経営改善を着実に実現できるよう、専門家による適切なサポートを行うことは効果的でございます。
 このため、中小企業振興公社では、二月から、本社の相談窓口に中小企業診断士を増員いたしました。さらに新年度には、本社に弁護士を増員し、城東、城南、多摩の各支社に診断士の配置をふやします。
 また、経営改善計画の策定などをサポートするため、新年度は、専門家の派遣を新たに六百回分設け、一企業当たり最大八回までアドバイスを行います。このうち資金繰りが逼迫した小規模な企業には、無料での相談を集中的に実施いたしまして、一企業に最大四回まで、全体で二百回分の対応を行うなど、円滑化法終了後の中小企業の経営改善を的確に支援してまいります。

○神林委員 経営の改善に当たっては、その取り組みの途中で資金繰りに行き詰まってしまうことのないよう、金融支援も充実させることが重要でございます。
 都が、この三月から開始した特別借りかえ融資は、当面の手元資金の確保に役立つものであり、中小企業に大変メリットのある制度でございます。
 都は、円滑化法の終了で資金繰りに影響を受ける企業のため、これまでにも増して利用しやすいきめ細かな支援を行うことが必要と考えます。
 制度融資において、どのような取り組みを進めていくのか伺います。

○中西産業労働局長 円滑化法が終了する中、中小企業の経営改善を着実に進めるため、制度融資について、より一層の利便性の向上を図るとともに、厳しい経営環境にある小規模の企業には手厚い支援を行うこととしております。
 このため、特別借りかえ融資では、借入残高の範囲内で保証つき融資を一本化できる仕組みとし、小規模の企業に対し保証料の補助を行います。昨年十月に設けた経営力強化融資におきましても、新年度から同様の保証料補助を開始いたします。
 また、小口資金融資では、商工会議所等から経営指導を受けた小規模の企業に対しまして、金利の優遇幅を拡大いたします。さらに抜本的な事業再生に取り組む企業向けのリバイバル支援融資では、融資限度額を引き上げます。
 こうしたきめ細かい金融支援策の実施を通じまして、経営改善に取り組む中小企業の資金繰りを支援してまいります。

○神林委員 法の終了に不安を募らせる中小零細企業の窮状を思えば、都独自の新保証つき融資などの効果的な活用も要望しておきます。
 我が国の再生には、すぐれた創業者を数多く輩出することも重要です。そのためには、創業者向けに低廉な家賃でのオフィスの提供やソフト支援も充実したインキュベーション施設は重要な役割を果たしていると感じます。創業者の育成に当たり、インキュベーション施設同士が協力して、能力を最大限発揮し、幅広いニーズにこたえることが重要でございます。
 さきの本会議で、インキュベーションHUB推進プロジェクトにより、創業者への支援の充実を図るとの答弁がありました。
 そこで、その支援の目的や内容について伺います。

○中西産業労働局長 産業の新たな担い手でございます創業者を生み出し、その順調な発展を図るためには、創業を目指す方を後押ししたり、起業後の成長をサポートするなど、おのおのの段階に応じたきめ細かい支援が必要でございます。
 このため、都は、複数のインキュベーション施設が協力し、ノウハウや知識を集めて創業の段階に応じた支援を総合的に行いますインキュベーションHUB推進プロジェクトを新年度から開始いたします。
 具体的には、インキュベーション施設の運営者が連携し、起業を予定する方や現在の入居者、さらに既に施設を出て事業展開をしている会社に対する段階ごとのサポートを一体的に実施する場合、経費の半分を毎年度千五百万円を限度に三カ年にわたり助成いたします。こうした取り組みにより創業への支援を的確に進めてまいります。

○神林委員 アジアの市場が拡大する中、すぐれた技術を持つ中小企業が海外市場でその実力を存分に発揮できるよう、都はしっかりとサポートしていくべきと考えます。
 特に、アジア新興国では、模倣被害や訴訟などトラブルが多発しており、最近では、実用新案権を持ち出す訴訟の事例も生じ、行政による一層のきめ細かな支援が必要でございます。
 さきの本会議で、実用新案権の取得経費を助成対象に加えるとの答弁がありました。その内容とともに、トラブルが実際に生じた場合の知的財産総合センターの具体的なサポート体制について伺います。

○中西産業労働局長 現在のアジア地域では、特許に比べ取得が簡単で費用負担も少ない実用新案の権利を盾に、権利の侵害を主張する訴訟がふえております。こうした中、中小企業が実用新案の権利をいち早く取得し、訴訟などに備える取り組みをサポートすることが重要でございます。このため、知的財産総合センターでは、新年度から、外国での実用新案の出願に要する経費の半分について六十万円を限度に助成を開始いたします。
 また、模倣被害等のトラブルに速やかに対応するため、同センターがアジア地域の特許事務所等と連携し、現地での知的財産権の侵害に関する詳細な情報を集め、警告書を発送するなどの仕組みを整備いたします。こうした取り組みを通じまして、海外における中小企業の知的財産の保護を着実に支援してまいります。

○神林委員 安倍首相が経済界トップに対し、異例ともいうべき報酬の引き上げ要請を行ったことは、デフレ脱却と日本経済の再生に向けた強い決意のあらわれといえます。国会では、緊急経済対策を盛り込んだ大型の補正予算が成立しました。景気回復に向けた力強い一歩が踏み出されたというべきであります。
 こうした中で、雇用情勢についても重要な時期に差しかかっております。働く場の確保は生活の糧を得るだけでなく、人々が社会の中で役割を果たすためにも重要な意味を持ちます。まじめに働こうとする方には、若者、高齢者、障害者を問わず、しっかりと仕事が行き渡る政策の展開こそが必要でございます。今後の雇用就業対策について、知事の基本的な考え方を伺います。

○猪瀬知事 安倍首相が、私は一度総理大臣に失敗して、セカンドチャンスで首相になった、人生にはセカンドチャンスが必要であるといいました。東京オリンピックも一度失敗して、セカンドチャンスですがね。年齢や障害の有無を問わず、働く意欲のある人々が、能力や個性に応じて活躍できる社会をつくることが重要であります。
 やむなく離職したり、会社が倒産して失職したり、非正規で働かざるを得なくなったり、あるいは結婚して、出産して、戻りたくても戻れないという人がいたり、そういう人に再チャレンジのチャンスがなければ、社会の活力が失われてしまう。もちろん、規制緩和をしたり、雇用機会をつくる、そういう産業をふやすことですが、とにかくまずは、働く意欲があっても仕事につけない現状を一刻も早く打開すべきであるというふうに思います。
 東京都は、しごとセンターであらゆる年齢層を対象に、きめ細かい就業支援を進めてきました。また、次代を担う若者に対して、実際の就労体験を課し、中小企業とのマッチングを図っています。
 来年度は、新たに若者に身近な就職情報サイトを活用して、質の高い情報を提供します。
 総務省の報告では、ハローワーク、東京にある厚生労働省のハローワークで、就職率はたった一八%。残りの人はどうなったかと、そういう統計データもとっていない。しかし、東京しごとセンターでは、利用者の約半分が就職に導かれて、そして成果を上げています。ですから、東京都の雇用対策は、東京しごとセンターというところでちゃんとやってるんだけれども、国のハローワークはもっと職業紹介の機能をきちんと持って、そうでないなら東京に移管するとか、そういうことをやるべきなんですね。
 大体、国がやらなきゃいけないのは、防衛、外交、金融なので、あとは全部任せてくれればいいわけです。とにかく総務省の行政評価局、それがきちんと去年の、ハローワークのさっきのデータですけれども、一月に、たった一八%であると、みずから評価が低いということを自分でいっているんですね。
 以上であります。

○神林委員 都内中小企業が厳しい経営環境を克服し、発展するためには、優秀な人材の確保と定着が必要でございます。しかし、中小企業には、そのノウハウもなく、人材の定着に重要な雇用環境整備も十分ではありません。また、これらの課題は業種ごとに異なっており、行政としても、きめ細かい対応が必要でございます。
 このため、都は来年度から、業界ごとの実態に即した支援を行うとしておりますが、具体的な施策内容について伺います。

○中西産業労働局長 都では、雇用環境改善などに取り組む中小企業団体等を支援するため、新年度から、課題解決型雇用環境整備事業を新たに開始いたします。
 この事業では、採用時の幅広いPRや就業後の定着対策、長時間労働の削減など、個々の企業では解決が困難な一連の課題に対しまして、包括的に取り組む団体やグループを支援いたします。さらに本事業により得られた成果を業界内に広く普及させることにより、中小企業での優秀な人材の確保と定着につなげてまいります。
 事業の実施に当たりましては、雇用環境の改善に意欲のある団体等を広く公募し、業界の実態に即し、高い波及効果が見込まれる提案に対しまして、その実現に必要な経費について、一団体当たり年間一千二百万円を上限に、二年間の助成を行ってまいります。

○神林委員 次に、林業振興と森林を活用した観光振興について伺います。
 多摩の森林は、水源の涵養や二酸化炭素の吸収など、多面的な機能を有する都民共有の貴重な財産であり、我が党は、林業振興の重要性を一貫して主張してまいりました。しかし、木材価格の低迷など、林業経営は厳しい状況が続いております。そうした中、森林経営の支援をしっかりと行うことが不可欠でございます。
 また、多摩地域の森林には、平易な登山や散歩などの手軽な観光にふさわしい場所があります。そのため、観光客が山歩きを満喫する眺望や景観を確保する取り組みを進めることが大切でございます。
 都は、多摩地域の森林について、林業と観光の両面からの振興に向けどのように取り組むか、所見を伺います。

○中西産業労働局長 都は、林業経営の効率化に向け、新年度から森林経営強化事業を開始し、森林所有者等に支援を行ってまいります。
 具体的に申し上げますと、今後五年間の森林施業等について定め、国庫補助金の条件となる森林経営計画の作成や、森林を整備する上で不可欠な境界の明確化を支援いたします。さらに、国の補助基準には適合しないが設置効果の高い森林作業道にも、都独自の助成を行ってまいります。
 また、多摩地域の森林を生かした観光振興を図るため、都は、林道を散策ルートとして利用し、ビューポイント等を整備する市町村に対する新たな助成制度を開始いたします。こうした観光ルートを地元の観光協会等が旅行商品として開発する場合などにも、都は、民間事業者の持つノウハウを活用し、その取り組みを支援してまいります。

○神林委員 次に、福祉保健分野について伺います。
 まずは、認知症対策についてでございます。
 認知症の早期発見のためには、当然のことながら、早期にその兆候に気づくことが大切です。これには、高齢者本人や家族、地域住民の方々が認知症を正しく理解する必要があり、都民への普及啓発が欠かせません。
 都はどのように取り組むのか伺います。

○川澄福祉保健局長 都はこれまで、都民の方に認知症を正しく理解していただくため、シンポジウムを開催するほか、認知症の基礎知識等を紹介した専門のポータルサイト、とうきょう認知症ナビや、地域で認知症の方を支援する認知症サポーターの養成を通じて、普及啓発に取り組んでまいりました。
 来年度は、認知症への理解と医療機関への早期受診を一層促進するため、東京都健康長寿医療センターの知見を活用して、新たに認知症チェックシートを作成いたします。チェックシートは、高齢者やその家族が、認知症が疑われる症状があるかどうか、自宅でも簡単にチェックができ、症状についても学べる内容とする予定であり、都民向けパンフレットや、とうきょう認知症ナビ等にも掲載し、広く都民に周知してまいります。

○神林委員 ぜひ、わかりやすく、都民に普及啓発をお願いしたいと思います。
 認知症が疑われる方を早期に受診につなげ、医療や介護に結びつけていく上で重要な役割を担うのが、地域包括支援センターでございます。
 都は来年度、区市町村に認知症コーディネーターを配置して、地域包括支援センターなどの認知症対応力の向上を図るということですが、これは大変効果的な取り組みだと考えます。
 そこで、認知症コーディネーターをどのくらいの規模で配置するのか、また、具体的にどのような活動を行うのか伺います。

○川澄福祉保健局長 お話の認知症コーディネーターは、来年度、まず四つの二次保健医療圏内の十二の区市において、地域包括支援センターを中心に配置する予定でございます。
 コーディネーターには、看護師や保健師等の医療職を充てることとしており、その活動の目的は、地域の中での認知症の患者の早期発見、早期診断を進め、適切なサービスにつなげていくことであります。
 そのため、地域のかかりつけ医や介護事業者と連携して、認知症の疑いのある高齢者を訪問し、状態を把握すること、状態に応じて適切な介護サービス等につなげること、医療的な対応が必要な場合には、医師、看護師、精神保健福祉士等から成る専門チームに訪問、診断を依頼し、早期診断、早期対応へとつなげることなどを、活動内容として考えているところでございます。

○神林委員 新規ということですから、まずは来年度しっかりと仕組みを構築して、将来的に実施地域を広げていくように要望しておきます。
 認知症の方を介護している家族は、認知症の方にどう対応すべきか戸惑いを感じつつ、その一方で、周囲に理解されない孤立感や不安感などを抱いております。
 認知症の方を地域で支えていくためにも、介護者への支援の充実が必要ですが、具体的な取り組みについて伺います。

○川澄福祉保健局長 現在、区市町村では、家族介護者を支援するために、介護教室の実施やレスパイトのためのホームヘルパーの派遣等、さまざまな取り組みを行っており、都は包括補助等により支援しております。こうした取り組みを一層進めるため、来年度から、認知症の人の家族を支える医療機関連携型介護者支援事業を包括補助の先駆的事業に位置づけ、区市町村を支援いたします。
 この事業では、認知症疾患医療センターなど医療機関と近接した場所に介護者支援の拠点を設け、医療機関の専門職と連携して行う、認知症の症状や治療に関する相談会、介護者が悩みを語り合う交流会の開催等を支援することとしております。

○神林委員 ぜひ、介護を担う方々が安心して認知症の方を支えていけるよう、支援をお願いいたします。
 次に、保育サービスについて伺います。
 都は、保育サービス緊急三カ年事業などにより保育サービスの充実を図ってきましたが、待機児童の解消には至っておりません。この現状を真摯に受けとめ、保育サービスの整備を一層推進すべきと考えますが、その一方で、認可保育所でなければ保育にあらずという風潮が一部にあることは気になります。
 都が平成十三年に創設した認証保育所制度は、十三時間開所や零歳児保育を全施設で実施するなど、認可保育所では対応し切れない大都市の保育ニーズにこたえてまいりました。現在、定員は二万二千人を超え、都民から大きな信任を得ております。
 こうした実績を踏まえ、先般、我が党は、認証保育所を公的支援の対象に位置づけるよう、国に緊急要望をいたしました。
 都民の保育ニーズは多様です。増加する保育ニーズに適切に対応するためには、子育て家族のさまざまな状況を踏まえた保育サービスの一層の整備が必要と考えますが、都はどのように取り組むのか伺います。

○川澄福祉保健局長 都は、保育の実施主体である区市町村が、認可保育所、認証保育所、認定こども園、家庭的保育などを組み合わせ、地域のさまざまな保育ニーズに対応したサービスを提供できるよう、安心こども基金の活用に加え、区市町村や施設整備を行う事業者の負担軽減、未利用都有地の保育所用地への貸し付け、定期借地権利用に対する補助など、都独自の支援策を実施しているところでございます。
 また、今年度は新たに、保育ママが共同で実施する家庭的保育にも補助を開始し、来年度からは、空き家や空き店舗など、地域の社会資源を活用した小規模保育に対する補助制度も創設いたします。
 都は、今年度から三年間で、さらに二万四千人分の保育サービスの整備を目指しており、今後とも、区市町村の取り組みを積極的に支援してまいります。

○神林委員 ただいま答弁にあったように、都は、区市町村に対して、さまざまな支援策を講じております。しかし、整備が思うように進んでいないところもあると聞いております。こうした区市町村への積極的な支援を、ぜひお願いしたいと思います。
 次に、児童養護施設について伺います。
 都は、民間社会福祉施設サービス推進費により、児童養護施設が、国の基準を上回る職員配置や創意工夫を生かした取り組みを行えるよう支援しております。
 昨年四月、国は四十年ぶりに、措置費で支払われる児童養護施設の職員配置基準を改正しました。我が党は、この改正に合わせ、サービス推進費についても、児童の状況変化に合わせた見直しを行うべきと、昨年の予算特別委員会質疑において提唱いたしました。
 そこで、都は、サービス推進費の見直しにより、どのような取り組みへの支援を充実していくのか伺います。

○川澄福祉保健局長 お話のように、虐待の影響等により対応が難しい児童や、大学進学を希望する児童が増加するなど、児童養護施設に求められる取り組みは時代とともに変化してきており、措置費で支払われる人員配置基準も変更されたところでございます。
 こうした状況を踏まえ、都は、来年度から、サービス推進費を見直しすることといたしました。
 具体的には、処遇困難等児童へのケアを充実するため、登校前など施設の繁忙時間帯に職員を増配置できるよう、児童の状況に応じて加算している単価を増額いたします。また、進学支援の取り組みを一層推進するため、大学や各種学校の入学金などへの補助方式を実績払いにし、補助単価についても、入学金等の実態に合わせ、引き上げてまいります。

○神林委員 ただいまの答弁に続きまして、進学への金銭面での支援のほかに、就労する児童も含め、退所後の児童の支援にどのように取り組んでいくのか伺います。

○川澄福祉保健局長 都はこれまで、退所した児童に生活や就労等に関する相談などを行う児童養護施設等に対し、独自に補助を行うほか、児童同士の交流を支援するなどの取り組みを進めてまいりました。
 今年度からは、退所後の生活や就労等に関する相談支援を強化するため、三十七の児童養護施設に専任の自立支援コーディネーターの配置を開始しており、今後も順次拡大してまいります。
 さらに、来年度は、自立援助ホーム六カ所に、児童の就労定着を支援するジョブトレーナーを配置するほか、退所した児童が気軽に集まり、交流でき、生活や就労上の悩みや相談にもこたえる、ふらっとホームの実施場所をふやすなど、児童養護施設等を退所した子どもたちへの支援を強化してまいります。

○神林委員 虐待を受けた子どもや知的障害のある子を含め、児童養護施設を退所した子どもたちが自立して暮らしていけるように、しっかりと支援の充実を図っていただきたいと思います。児童養護施設におけるサービスの質が一層向上するよう、引き続き支援をお願いいたします。
 続いて、児童虐待対策について伺います。
 児童虐待の相談件数は増加を続け、児童が死亡する悲惨な事件も後を絶ちません。児童虐待を早期に発見し、適切に対応していくためには、一時保護などの法的権限を持つ児童相談所と地域の拠点である子ども家庭支援センターについて、機能の一層の強化が必要と考えますが、所見を伺います。

○川澄福祉保健局長 都はこれまで、深刻化する児童虐待に迅速かつ的確に対応するため、児童福祉司や児童心理司の増員、虐待対策班の設置、保健師の資格を有する医療連携専門員の配置など、児童相談所の体制強化に取り組んでまいりました。
 来年度は、児童福祉司をさらに十三名増員するほか、医療連携専門員を増員し、全児童相談所に配置いたします。
 また、急増する一時保護需要に対応するため、一時保護所の定員も二十四名分ふやし、体制のさらなる強化を図ってまいります。
 児童家庭相談の一義的窓口である区市町村におきましても、児童虐待への対応力を強化するため、先駆型子ども家庭支援センターに虐待対策ワーカーを増員するとともに、事例検討など、ケースワークの実践力を高める研修を児童相談所と合同で実施し、職員の専門性の向上を図ってまいります。

○神林委員 ただいまご答弁にありましたとおり、児童虐待の対策のために機能充実を図る都の積極的な姿勢を評価させていただきます。
 虐待リスクを軽減するには、子育てに不安を持つ家庭に対し、虐待に至る前に早期に適切な支援を行うことが重要でございます。区市町村においては、現在も子育て支援についてさまざまな取り組みが行われておりますが、都としても、虐待を未然に防ぐ観点から、これらの取り組みに対する支援を強化すべきと考えますが、所見を伺います。

○川澄福祉保健局長 お話のように、現在、区市町村では、子ども家庭支援センターや保健所などが、乳児のいる家庭への全戸訪問等で把握した子育てに不安を持つ家庭に対して、家庭訪問による助言や、育児ヘルパーの派遣、育児疲れのときに利用できるショートステイ等のサービスを提供し、支援しております。こうした区市町村の取り組みを一層強化するため、都は来年度、リスクの発見からサービス提供に至るまでの一連の手法を取りまとめたモデルプランを作成いたします。
 プランでは、適切な支援に結びつきにくい家庭への訪問手法や、各家庭のニーズに応じた支援計画を策定するための手法等を盛り込む予定でありまして、このプランも活用しながら、虐待の未然防止に向けた区市町村の取り組みを支援してまいります。

○神林委員 児童虐待の未然防止には、身近な区市町村が大きな役割を果たすと考えます。引き続き、都と区市町村が密接に連携して児童虐待防止に取り組んでいくことを要望して、次の質問に入ります。
 次に、文化や伝統を守る、育てる新しい試みに関してお尋ねいたします。
 アーツカウンシル東京についてでございます。東京には江戸から現代に連なる世界に誇れる都市文化があります。芸術文化は、人の心に安らぎを与え、豊かな感性を涵養するとともに、観光産業やまちおこしへの波及効果など、東京の経済を活性化させるためにも重要な役割を果たしております。アーツカウンシルは、イギリスやアメリカなど、文化行政の先進国で導入されている組織であり、芸術文化を支援することによって新しい文化を生み出すなど、社会に大きなインパクトを与えております。
 都は、アーツカウンシルを設置することによって、どのような効果を上げていくのか、伺います。

○小林生活文化局長 東京の文化政策を議論する芸術文化評議会からの提言を踏まえまして、昨年十一月、アーツカウンシル東京を日本で初めて本格設置いたしました。アーツカウンシルは、民間の芸術活動の支援と人材育成の機能をあわせ持ち、行政と民間の活動現場を橋渡しすることを通じて、戦略的な文化の創造発信と文化都市の形成を目指すものであります。
 アーツカウンシル東京には、芸術文化に精通した専門家を配置し、文化のつくり手の立場に立った新しい助成制度の運用や、若い芸術家を積極的に活用する取り組みによりまして、東京の文化を担う民間の力を引き出してまいります。

○神林委員 アーツカウンシル東京は、民間の文化活動を支援する新たな仕組みであり、東京の活力を高めることがわかりました。アーツカウンシル東京は、今後どのように都と連携し、施策を具体的に展開していくのか、伺います。

○小林生活文化局長 アーツカウンシル東京の発足に伴いまして、民間の文化活動に対する助成金につきましては、芸術団体からの要望を踏まえ、年度途中の企画等に対応するため、来年度から応募機会を年二回にふやすとともに、新たに複数年助成制度を導入し、年度を超えた幅広い活動を支援してまいります。
 また、東京芸術劇場を活用して、若手に現場経験を積ませるインターンシップを開始し、国内で不足している劇場運営の中核を担う人材を育成してまいります。
 今後とも、都の文化政策を実現する組織の一つとして、都との緊密な情報交換や事業評価などを通じて、都と十分連携しながらアーツカウンシル東京の取り組みを充実させてまいります。

○神林委員 今、お答えにもありましたけれども、複数年助成は、かねてから我が党も要望してきたものでございます。それがアーツカウンシルの設立により実現されることは意義あるものだと思います。
 アーツカウンシルは、ロンドン・オリンピックにおいて、イギリス文化の魅力の発信とその成功に大きく貢献したといわれております。東京においても、オリンピック招致の大きな力になるものと考えます。
 今後、アーツカウンシル東京の取り組みを通じ、東京の文化の魅力を世界に発信し、東京の活力をさらに高めていくことを要望して、次の質問に移ります。
 次に、学力向上施策について伺います。
 現代社会は、新しい知識や情報、そして技術が、社会のあらゆる領域での活動の基盤として飛躍的に重要性を増しております。このような変化の激しい社会を子どもたちがたくましく生き抜いていくためには、確かな学力を一人一人に着実にはぐくむことが重要でございます。
 予算発表のときに教育庁から出された資料では、学力向上に向けた新たな取り組みとして、学力向上パートナーシップ事業と東京ベーシック・ドリルの作成という事業を打ち出していることがわかります。
 このうち、まず学力向上パートナーシップ事業を実施する目的及び内容について伺います。

○比留間教育長 学力向上パートナーシップ事業は、東京都全体の学力の向上、底上げを図ることを目的として、都教育委員会と学力向上を重要課題とする地区とが緊密に連携し、効果的な指導方法などを開発するとともに、その研究成果を広く普及するものでございます。
 本事業は、中学校一校と、その近隣の小学校二校程度から成る重点地区を都内八カ所に指定し、二年間実施をいたします。重点地区においては、特に学力向上を図る教科を絞り込み、恒常的に授業改善を行うとともに、家庭との連携による学習習慣の確立を図るなどして、児童生徒の学力を向上させてまいります。

○神林委員 学校には、勉強が得意な子も苦手な子もいるわけですから、たとえ苦手であっても、実はできるようになりたいと強く願うものであります。また、子どもの学力向上は、すべての保護者と先生方の願いでもあります。このことを肝に銘じ、都教育委員会が、一人でも多くの子どもたちに勉強がわかる喜びを実感させていくことを強く望みます。
 次に、東京ベーシック・ドリルの作成のねらい及び内容についても伺います。

○比留間教育長 国や都が実施した学力調査の結果によりますと、小学校四年生までに学習する内容が定着していないと、後々の学年の学習だけでなく、他の教科の学習にまで支障を来す場合があることが明らかになっております。
 このため、都教育委員会は、小学校四年生までの国語、社会、算数、理科の四教科の学習内容のうち、必ず身につけさせたい基礎的、基本的事項をまとめた教材である東京ベーシック・ドリルを作成し、都内全公立小学校に配布してまいります。
 各小学校では、授業時間だけではなく、授業の開始前の時間や放課後などにもこの教材を活用し、徹底した反復学習や定着度を確認するテストなどを行い、すべての児童に基礎的、基本的な事項の定着を図ってまいります。

○神林委員 都教育委員会がこれだけは絶対に徹底すべきと明確に打ち出す内容は、区市町村にとって極めて重要な指針となるはずでございます。ぜひ東京ベーシック・ドリルの内容を充実させるとともに、日々子どもたちへの指導に励んでいる学校現場にとって使い勝手のよい教材を作成していただきたいと思います。
 また、子どもたちの学力をさらに伸ばすような施策にも取り組んでいただくことを要望したいと思います。
 次に、学力向上策の一環として、理数教育について伺います。
 我が国をさらに発展させていくためには、科学技術の先進国として優秀な人材を輩出していくことが必要です。そのためには、小中学校の段階から理数教育を充実させ、子どもたちに理科や算数、数学などの楽しさを感じさせるとともに、興味を持たせ、柔軟な思考力などを身につけさせることが重要でございます。
 先日、都教育委員会は、東京都の理数教育に関する子どもや教員の状況や課題、今後の取り組みについて報告書をまとめ、公表されました。その報告書にある平成二十五年度から実施予定である施策についてお聞きいたします。
 まず、理数系コンテストや東京ジュニア科学塾などを新たに行うとのことですが、その目的や内容について伺います。

○比留間教育長 理数系コンテストは、都内の国公私立中学校の一、二年生が、数学や理科のさまざまな領域に関する知識や技能を競い合う都教育委員会が実施する大会でございます。
 このコンテストは、校内や地区の予選などを通して選出された生徒が参加するとともに、優秀な成績をおさめた生徒が全国大会に出場できるようにいたします。このことにより、都内の中学生の科学に対する関心を高め、理数好きの生徒のすそ野を広げてまいります。
 また、東京ジュニア科学塾は、公立中学校一年生を対象に募集し、その中から選抜された四十名が、年間八回程度、理数系の専門家などから指導を受けたり、企業などの協力のもと高度な実験などを体験したりするもので、知的好奇心や探究心を持つ中学生の能力をさらに向上させていくことをねらいとしているものでございます。

○神林委員 今答弁にありましたとおり、確かに、違う学校の子ども同士が切磋琢磨することや専門家から直接指導を受けることは、貴重な経験になると思います。
 ただ、東京ジュニア科学塾の対象が四十人ということは、余りに少ないと思います。本当ならばもっと多くの子どもたちに経験させたいところですが、来年度から始まる事業ですから、まずは一年間しっかりと取り組んでいただき、この事業を通して理数好きの子どもたちをふやしていただきたいと思います。
 次に、都教育委員会が理数教育を推進するための中心的な事業として実施する理数フロンティア校の目的や内容について伺います。

○比留間教育長 都教育委員会は、区市町村教育委員会と連携し、各地区の理数教育の拠点校として、理数フロンティア校を小中学校五十校ずつ指定してまいります。
 小学校には、校内の教員の授業改善を支援するため、中高校理科の免許を持つ教員等を理科教育推進教員として配置をいたします。
 理数フロンティア校では、児童生徒が理数に対する興味、関心を高めることができるよう、より多くの観察や実験を取り入れた効果的な指導方法や、新たな教材を開発してまいります。あわせて、こうした先進的な取り組みについて、理数フロンティア校が教員を対象とした研修を実施し、各地区の理科や算数、数学の学力向上を図ってまいります。
 今後、都教育委員会は、理数フロンティア校の校長や区市町村教育委員会の担当者を交えた連絡会を開催し、理数フロンティア校の取り組みについて指導助言をしてまいります。

○神林委員 これまで答弁いただいたこと、都教育委員会が新たな施策を展開することがわかり、大いに期待したいと思います。
 学校教育においては、知、徳、体をバランスよく育てることが大切でございます。しかし、長期的に、子どもの体力は低下傾向にあり、さらに、学年が上がるにつれて運動をしない子どもがふえているとも聞いております。体力は、人生を力強く生き抜いていくための土台であり、子どもの体力向上は重要な課題と考え、我が党は、これまでも子どもの体力低下の現状を憂い、その対策を訴えてきました。
 こうしたことを受け、都教育委員会は、子どもの体力向上に向けた推進計画を平成二十二年度に策定し、今年度でちょうど三年間の推進計画が終了いたします。
 そこで、これまでの体力向上の取り組みの成果と、今後の計画について伺います。

○比留間教育長 体力は、子どもが成長していく上で、知力や気力の源であり、たくましく生き抜く基盤として極めて重要であります。都教育委員会は、平成二十二年、子どもの体力向上を図るため、推進計画を策定し、一校一取り組み運動や統一体力テストなど、さまざまな取り組みを展開してまいりました。その結果、子どもの意識が高まり、五年前と比べ、体力テスト結果の六割が上昇するなど、子どもの体力は向上傾向に転じております。
 こうした取り組みの成果を踏まえ、子どもの意識をさらに高め、生活や行動を活動的なスタイルに変えることを目指した第二次推進計画を本年二月に策定をいたしました。
 今後、この計画に基づき、小学校で子どもが運動する時間を一日六十分確保することや、学年別に体力、運動能力の最低基準を活用した取り組みを推進することなど、子どもの身体活動量をふやす体力向上施策を展開してまいります。

○神林委員 東京の子どもたちの体力が向上傾向に転じていることは、大変喜ばしいことでございます。オリンピック招致を目指す東京にあって、子どもたちが進んでスポーツや運動に親しむことができるよう、体力向上の取り組みを一層推進するようお願いして、次のスポーツ振興の質問に移ります。
 スポーツは、私たちの健康と生きがいに大いに寄与するものであり、子どもから高齢者まであらゆる世代の人たちに対し、スポーツに親しめる機会を提供していくことが必要です。特に、これから一層進展する高齢社会において、医療費や介護費用の増大、高齢者の社会的な孤立などが大きな社会問題となっております。
 シニア世代の方々がスポーツを通じて活発に活動することにより、健康を維持増進するとともに、生きがいや多様な社会参加の機会を持つことが、ますます重要になると考えております。
 そのためにも、シニアの方々がますます身近な地域でスポーツに取り組める環境を整えていけるよう、今年度、都が我が党の提案を受け開始したシニアスポーツ振興事業を一層充実していくべきと考えますが、都の見解を伺います。

○細井スポーツ振興局長 ご指摘のとおり、だれもがいつまでも生き生きと活動できるよう、身近な地域で高齢者がスポーツに取り組める環境を整備することは極めて重要でございます。
 都は今年度から、シニアスポーツ振興事業を開始いたしまして、地区体育協会などが行います六十歳以上の都民を対象とするゲートボール、グラウンドゴルフを初めとした各種のスポーツ大会、講習会、講演会などの事業に対し支援を行っております。
 初年度は、都内四十四の地区体協などで実施されまして、参加者からは、これまで余り注目されなかったシニアのスポーツにも光が当たり、大変感謝しているとの声が多数上がっているところでございます。
 平成二十五年度からは、規模をさらに拡充するとともに、新たに、レクリエーション種目団体に対しても支援を行ってまいります。本事業を通じまして、シニア世代のスポーツの振興を図り、高齢者の健康の維持増進、地域の活力向上に寄与してまいります。

○神林委員 さて、ことしは、いよいよスポーツ祭東京二〇一三の開催年でございます。その幕あけとなる冬季国体が、去る一月二十六日から七日間にわたり、都内四会場と福島県郡山市を舞台に開催されました。国立代々木競技場第一体育館における開始式では、荒川静香さんほかトップスケーターによるエキシビションが行われ、オリンピアンたちのすばらしい演技で招致機運も盛り上がったと考えております。
 一方、福島県郡山市での開催は、平成二十三年第三回都議会定例会において、我が党が被災地の復興支援の取り組みを交えた大会とするよう提案したことを受け、今回の開催に至ったわけであります。
 そこで、今回の冬季国体を振り返ってどのように総括しているか、伺います。

○細井スポーツ振興局長 一昨年十二月の冬季国体開催決定以来、オリンピック・パラリンピック招致機運の盛り上げや被災地の復興支援につながる大会とすべく準備を重ねてきたところでございます。
 開始式は、一九六四年のオリンピック競技を行い約一万人の観客を収容できます代々木第一体育館で実施いたしまして、満員の場内では、一流スケーターによるエキシビションや開始のセレモニーなどを行っております。
 また、スピードスケート競技を行った郡山市では、風評被害により観光需要が落ち込む中、延べ二千七百泊の宿泊があり、競技会には約一万人が来場いたしました。地元からは、まちににぎわいが生まれたとの感謝の声も聞かれ、復興に向けて歩みを進める被災地を支援する大会になったと考えております。多くの関係団体などのご支援、ご協力をいただき、スポーツイヤーの幕あけとして、さい先のよいスタートを切ったと認識しております。

○神林委員 冬季大会の後は、いよいよ秋の本大会を迎えます。冬季大会に引き続き、ぜひ心に深く残る大会にしていただきたいと思います。
 最後に、オリンピック・パラリンピック招致についてお伺いをいたします。
 冒頭、知事が答弁されましたように、東京の計画の優位性や開催能力の高さ、都市としての魅力を存分にアピールできたものと評価いたします。
 今後の招致レースにおいては、地震、津波、放射能など、東京の安全性に対する懸念を払拭し、東京は安全だということをIOC委員に理解してもらうことが重要であると考えますが、所見を伺います。

○細井スポーツ振興局長 今回のIOC評価委員会訪問でも、東京の安全性を強くアピールしたところでございます。
 具体的には、二〇二〇年オリンピック・パラリンピック大会の新設及び既存のすべての競技会場、選手村などについては、最新の耐震基準に基づき万全な耐震化を図ること、東京湾は、その地形上、津波が入りにくいが、加えて、防潮堤や盛り土などの対策を講じること、空間放射線量の原発事故による影響分について、一月のデータを一年間で換算すると〇・〇五ミリシーベルトであり、国際的な基準で定める一年間当たり一ミリシーベルトを大きく下回っていることなど、東京の安全性を丁寧に説明したところであります。
 今後も、スポーツの国際会議のスピーチや国内外で接見する個々のIOC委員に対しても、相手の関心や理解度に応じた説明を適切に行ってまいります。

○神林委員 招致レースは、都市間の競争であるとともに、国と国との競争でもあります。招致獲得に向けて、国家の総力を挙げて戦略的にプロモーション活動を展開していくことが重要でございます。我々都議会自民党といたしましても、あと半年、全力で招致活動に取り組んでいくことを改めて申し上げておきます。
 さて、私も数多くの質問をしてまいりましたけれども、理事者の皆様、そして知事のスピード感ある、ご協力のご答弁をいただいたために、無事に全質問を終了することができました。改めて感謝を申し上げまして、私の質問を終わります。(拍手)

○村上副委員長 神林茂理事の発言は終わりました。
 この際、議事の都合により、おおむね三十分間休憩いたします。
   午後五時四十一分休憩

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