予算特別委員会速記録第五号

○大塚委員長 星ひろ子委員の発言を許します。

○星委員 締めくくり総括質疑、最後の質問になりました。よろしくお願いいたします。
 まず、小児在宅医療についてお伺いをいたします。
 これまで生活者ネットワークは、ハイリスクの出産がふえている中、周産期医療の整備について要望してきました。その中でも、NICUにおける長期入院の新生児の地域での支援体制の整備を求めてきました。
 二年前の予算委員会では、NICUからの退院支援のモデル事業について伺いましたが、NICUからの在宅移行が望ましい子どもに対する退院支援や、継続した在宅生活を支援するため、墨東病院を中心にNICU退院支援モデル事業を実施し、在宅移行に向けて支援を行うコーディネーターが配置されたと聞いています。
 このモデル事業は昨年度と今年度の二年間実施され、間もなく終了しますが、モデル事業においてNICU入院児支援コーディネーターを設置した成果についてお伺いをいたします。

○杉村福祉保健局長 NICU退院支援モデル事業では、都立墨東病院に配置をいたしました二名のコーディネーターが、入院早期から子どもと家族の状況に応じた在宅支援プログラムを作成いたしまして、退院後に必要な各種サービスの提供について関係機関と調整を行うなど、在宅療養に向けた支援を行ってまいりました。
 また、家族が子どもの生活リズム等について理解を深めるとともに、退院後に自宅で子どもへの医療ケアを適切に行えるよう、院内で在宅移行訓練を実施いたしました。
 こうした取り組みを通じて、家庭での受け入れ体制や在宅生活を支える療養環境の整備が進み、長期入院児の円滑な退院が実現いたしております。

○星委員 NICUに長期にわたって入院しなければならない乳幼児の多くは、呼吸管理などの医療ケアが必要であるため、退院後の在宅療養の負担は大変大きくなります。重度障害者でも、子どもの世話は育児の一環という考え方が根強く残っており、家族、特に母親が負担を背負っている状況です。
 このような在宅生活を支えるため、訪問看護ステーションの役割が重要です。今後、NICUからの退院支援に当たっては、NICU入院児支援コーディネーターを核として、地域の連携を進めていく必要があります。
 そこで、東京都は病院と地域との連携を強化するために今後どう取り組んでいくのか、お伺いをいたします。

○杉村福祉保健局長 モデル事業の成果を踏まえまして、都は来年度から、周産期母子医療センターにおけるNICU入院児支援コーディネーターの配置を支援いたします。
 また、NICUのスタッフに在宅療養の理解を深めてもらうため、退院後の子どもや家庭への支援、在宅療養を支える各種サービスの内容及び関係機関の連携方法などにつきまして、コーディネーターの具体的な活動事例をもとに研修を実施いたします。
 さらに、訪問看護ステーションの看護師に対しても、子どもや家族の在宅生活を支援できるよう、研修や訪問実習を実施してまいります。
 こうした取り組みを通じて、病院と地域との連携を推進し、子どもたちのNICUから在宅への退院支援に取り組んでまいります。

○星委員 慢性的なNICUの病床不足を解消するためにも、小児在宅医療の充実が必要だと思います。今後も訪問看護ステーションを初めとする地域との連携を強化し、子どもの在宅移行後の生活支援を行うことを強く要望いたします。
 次の質問です。
 社会的な養護が必要な子どもたちへの支援についてお伺いをいたします。
 里親家庭で育った子どもたちは、十八歳で公的援助が打ち切りになります。これで里親解除となります。若者の就労がこれほど厳しい今日の社会状況の中で、養育家庭で育った若者が十八歳になったからといって、いきなり社会に出されて自立生活を送ることは、容易なことではありません。委託期間を延ばすなど柔軟な取り扱いが必要と考えます。里子の委託の延長に関する東京都の対応について、お伺いをいたします。

○杉村福祉保健局長 養育家庭に委託した児童につきましては、児童福祉法の規定によりまして、満十八歳を超えて満二十歳に達するまでの間、引き続き委託の延長が可能となっておりまして、国も児童の自立支援の充実に向け、児童相談所にこの制度の積極的な活用を促しております。
 都におきましては、進学や就職をしたが生活が不安定で継続的に養育が必要な場合や、障害のある児童等で必要なサービスを受けられるまでに一定の期間を要する場合に、児童相談所が児童やその保護者の意向や養育家庭の意見を聞いた上で、個々の児童の状況を適切に判断し、委託の延長を行っております。

○星委員 里子は、委託が解除された後も社会に出て、さまざまな課題に向き合います。幼いころに受けた虐待による心の傷、あるいは実の親からの支援を全く期待できないことなどから、解除後も精神的、経済的にも里親をよりどころにしているというのが現実であり、これまで相談や支援は里親の善意のもとで行われてきました。
 委託期間を終えた里子の自立支援について、今後はどう取り組んでいくのか、お伺いをしたいと思います。

○杉村福祉保健局長 社会的養護のもとで育つ児童の自立に向けまして、都はこれまで、児童養護施設を退所した児童に相談や指導を行う施設に対し独自に補助を行うなど、支援を行ってまいりましたが、昨年実施した児童へのアンケートでは、措置解除後も相談相手として施設や養育家庭に寄せる期待が大きいことが改めて明らかになりました。
 そのため、都は来年度から、児童養護施設に専任職員を配置いたしますとともに、委託期間を終えた里子の自立に向けて養育家庭が行う援助に対しても、必要な経費を支援いたします。
 こうした取り組みにより、社会的養護のもとで育つ児童の自立に向けた支援体制を強化してまいります。

○星委員 それでは、次の質問に移らせていただきます。
 東京の災害対策についてです。
 都内には、土砂災害の発生するおそれのある箇所が約一万五千カ所あり、その多くは西多摩や南多摩に存在しています。二〇〇八年八月には、八王子で、緩斜面ではありましたが、大雨によって土砂災害が起こりました。このような箇所では、地震により地盤が緩んだ後の集中豪雨によって、土砂崩れ、がけ崩れが起こるおそれがあります。
 東京都は、二月二十九日、西多摩地域に続いて、八王子市では初めて、土砂災害が発生した場合に住民の生命等に危害が生じるおそれがある土砂災害警戒区域として三百六十一カ所、このうち建物が倒れて住民の生命等に著しい危害が生ずるおそれがある土砂災害特別警戒区域として三百五十六カ所を指定したと発表されました。
 そこで、土砂災害警戒区域等の指定の効果についてお伺いをいたします。

○村尾東京都技監 土砂災害から都民の命を守るためには、災害の危険性を周知するとともに、安全な避難行動などをとれるよう、土砂災害警戒区域などの指定を進めることが重要でございまして、都は平成二十三年度までの累計で四千を超える箇所を指定いたしました。
 この土砂災害警戒区域を指定しますと、土砂災害の警報などの発令やハザードマップの作成など、区市町村による警戒避難体制の整備が促進されます。
 さらに、警戒区域の中に指定される特別警戒区域では、開発に伴う斜面の崩壊対策や、建物や工作物の強化が義務づけられることとなり、これにより地域の土砂災害への取り組みが促進され、安全性が向上いたします。
 今後とも、関係自治体と連携して警戒区域等の指定を推進し、都民の安全確保に全力で努めてまいります。

○星委員 ただいまご答弁をいただきましたように、土砂災害警戒区域など区域指定をすることにより、避難の準備や開発の際に災害を回避するための対策を立てることができると思います。
 しかし、本来は、土砂災害が起こりやすい危険な場所を宅地開発することこそ問題だと思います。これまで市街化されてきた歴史的経過を踏まえると困難なことではあると思いますが、土地利用のあり方そのものを考える必要があると思います。検討していただくようにお願いをいたします。
 今定例会では、本会議、予算特別委員会、各常任委員会と、防災対策全般についてさまざまな質疑がありました。東日本大震災からちょうど一年が経過する時期でもあり、各局における取り組みの進捗と今後の課題を確認するために、大変意義があったというふうに思っています。
 年明け以降、首都直下地震の発生確率に関する報道や、震度七の揺れも想定されるとの報道がなされ、市民の間には、地震はいつ来てもおかしくない、備えなければという意識が浸透し、さまざまな防災グッズなどもかなり売れているという話も聞きます。
 私たちはいたずらに地震を恐れるのではなくて、冷静にしっかりとした備えをすることこそが大切だというふうに考えています。
 予算委員会の最後の質疑として、首都直下地震にいかに今後備えていくかについて、東京の防災対策を預かる知事に改めてお伺いをして、質問を終わりたいと思います。

○石原知事 東京の直下型の地震についてでありますけれども、実はこの会議が始まります一月ほど前に、東大の地震研究所の平田主任教授を呼びまして、幹部だけでお話を聞きました。
 そのときに、メディアに発表される前に彼が、四年のうちに七〇%来る可能性があると。私たちショックを受けました。再度平田さんに来てもらったときには、どういうわけか、いい直すと、百年のうちに五回という確率だと。それを換算すると、数式でああいうことになるというから、ちょっと私には数学の方はわかりませんがね。
 ただ、やっぱりああいう発言のとらえ方には、私たちは本当に動揺せざるを得ないんですけれども、このところの状況を見ていますと、やっぱり一犬実をほえて万犬虚を伝えるというようなうらみがあるような気がいたします。とにかく、地震とか災害のことをクライシスといいますけれども、これはギリシャ語の、原典では、ある状況が突然からっと変わるということの意味だそうですけれども、まさに私たちは自助というものの根幹に、それを心得てかからなくちゃいけないと思っております。
 都が最近行いました調査では、東日本の大震災以来、携帯ラジオなど防災用品や飲料水、食料の備蓄等、自助の備えを講じたと答えた都民が八割近くふえておりました。これは大変結構な、大事なことだと思いますが、肝心なことは、この大震災が呼び起こした都民の危機感というものを一過性にせずに、東京の防災力向上に備えた持続的な行動へと結びつけていくことが肝要だと思っております。
 都は現在、地震や津波の専門家たちによって、最新の科学的知見や客観的データに基づいた被害想定の見直しを進めておりますが、その内容を四月にも公表して、もう少し具体的な発表をして、震災のリスクを都民に正確に伝えたいと思っております。
 いずれにしろ、都は都なりの、公助としてのできる限りの支援もし、準備もいたしますけれども、これは先ほどのクライシスの話じゃありませんが、個人の方々は、あるいは我が身にかかってくるかという自意識を持たれて、少なくとも、やっぱり自助というものは準備をされる--私も実は神戸震災の後で、まくら元にナップザックにいろんなものを入れていましたが、そのうちどこかにいっちゃったんですけれども、このときのこと反省して、取り戻して、まくらの下に置いていますが、そういうことが大事だと思います。
 それプラス、やっぱり隣組の助け合い、そして公助ということになると思います。
 ひとつそういうことで、これはどれだけのエネルギーがどういう形で東京を襲うかわかりませんが、しかし、もう一つ加えますと、「AERA」という雑誌がどれだけ権威があるかわかりませんけれども、最近出ましたデータでは、たしか百人ほどの地震学者に直下型の地震の予測を聞きましたら、回答された人は二十人だけで、地震の関係者は、地震はそう簡単に予測できないということで、返ってきたのは二十人のその答えでした。
 私が一番気になった何番目かの設問の、次の大地震はどこへ来ると予想されますかというその問いに対して、回答された二十の中で、東京の直下型と答えられた方は一人もおりませんでした。これも、私は別にそれですべて安心するわけではありませんけれども、それほど専門家によって意見が違うということを私たちは踏まえて、最後はやっぱり自分自身の自覚から、まず事を発しなくちゃいけないと思っています。

○大塚委員長 星ひろ子委員の発言は終わりました。(拍手)
 以上をもちまして付託議案に対する締めくくり総括質疑は終了いたしました。
 お諮りいたします。
 第一号議案から第二十七号議案までに対する質疑は、これをもって終了いたしたいと思いますが、これにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○大塚委員長 異議なしと認めます。よって、本案に対する質疑はいずれも終了いたしました。
 なお、あすは午前十一時から理事会を控室一で、また、午後一時から委員会を本委員会室で開会いたしますので、よろしくお願いいたします。
 これをもちまして本日の委員会を閉会いたします。
   午後七時四十一分散会

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