○鈴木(貫)副委員長 引き続き、清水ひで子委員の発言を許します。
〔鈴木(貫)副委員長退席、委員長着席〕
○清水委員 初めに、防災対策について知事並びに関係局長に質問します。
知事は就任早々、震災を未然に予防するという責務を明確にした都の震災予防条例を、都民の自己責任を第一とする震災対策条例に変えてしまいました。その上で、条例に基づく計画を震災予防計画から震災対策事業計画に変えました。
そこで伺います。震災対策事業計画を作成した二〇〇二年度と、直近の計画年度だった二〇一〇年度の、計画全体の事業費の計画額と執行額のおよその額を示してください。
○笠井総務局長 震災対策事業計画の平成十四年度の計画額は約四千九百八十六億円、執行額は約五千二百三十九億円でございます。そして、平成二十二年度の計画額は約五千二百十二億円、執行額は約三千七百五十七億円となっております。
○清水委員 執行額は千五百億円近く減っています。計画事業費はふえてはいますが、石原知事が就任する二年前、震災予防条例に基づく一九九七年度の計画事業費は約一兆円でした。石原知事が就任した一九九九年の計画事業費は五千九百十七億円でした。ですから、二〇一〇年度の震災対策事業費は九七年のおよそ半分、九九年と比較しても七百億円も減っているのです。
知事、計画額も執行額も大幅に減ってしまったことをどう思いますか。あなた自身が震災予防条例を改定してしまった結果です。自己責任が強調され、公的責任が不明確になってしまった結果だと思いませんか。知事に伺います。
○笠井総務局長 防災対策におきましては、自助、共助、公助を担うそれぞれの主体が相互に連携協力を図りながら、あらゆる施策を総合的に推進することが重要でございます。
このため、都は、昨年十一月に策定いたしました東京都防災対応指針において、多様な主体が個々の防災力を高めるとともに、主体間の連帯を強化する、あらゆる事態に備え、個別施策の徹底強化と施策の複線化、多重化を促進するとの二つの方向性を示したところでございます。
都は現在、防災対応指針を踏まえて地域防災計画の修正に着手をしておりまして、引き続き、東京の総力を結集して防災力の一層の向上を図ってまいります。
○清水委員 震災予防、震災対策の計画額、執行額が大幅に減ってきた事実は否定できません。
総務局長の答弁は、自助、共助、公助の連携協力、総合的推進とのことですが、知事は最近の記者会見でも、自分の生命、自分の財産を守るのは自分の責任だ、行政はそんなものを負うんじゃないという趣旨の発言を繰り返しています。こうした知事の姿勢がいかに都の耐震化対策をおくらせてきたかを、この後具体的に明らかにしていきますが、こうした姿勢を根本的に改めるよう知事に強く求めて、先に進みます。
私たちは、震災対策事業の進捗がどうなっているのか詳しく知りたいと思い、総務局に随分お聞きしましたが、はっきりしませんでした。だから私は、具体的に、建築物などの安全化にかかわる事業費がどうなっているのかを調べました。
建築物などの安全化にかかわる事業費は、知事が就任した一九九九年には一千億円だったのが、二〇〇八年度には二百四億円と、何と五分の一まで落ち込みました。ここには知事の、自分の生命、自分の財産を守るのは自分の責任だ、行政はそんなものを負うんじゃないという考え方の反映が、最も深刻な形であらわれていると思います。
都は、緊急輸送道路の沿道建築物の耐震化や、木造密集住宅の不燃化十年プロジェクトなどは行うとしていますが、特に木造住宅の耐震化の支援はおくれています。東京都が木造住宅の耐震改修助成を立ち上げたとき、二〇〇六年度から十年間で二万二千戸の目標を掲げていました。ところが、二〇〇六年度から五年間で約三百戸にしか助成していないのです。同じ期間に静岡県では八千九百四十三件、九千件近くの助成をしているのです。
この結果、東京都の木造住宅の耐震化率は二〇一〇年末で六九%と、おくれている住宅の耐震化の中でも特におくれているのです。ところが、知事は先週の記者会見でも、幾ら東京が裕福であっても、震度六か七で倒れそうな建物に対して財政的な配慮ができるわけない、オーナーなり意識改革するために、せいぜいあなた方努力しなさいよと、財政支援はもちろん、意識啓発すらマスコミにゆだねるようなありさまでした。
知事、それほど木造住宅耐震化にお金をかけたくないのですか。知事の発言について聞いております。知事、お答えください。知事ですよ。
○飯尾都市整備局長 住宅の耐震化を促進するためには、まず、その所有者みずからがその必要性を認識し、主体的に取り組むことが不可欠でございます。
このため、東京都といたしましては、耐震キャンペーンによる普及啓発やポータルサイトによる情報提供、木造住宅耐震診断事務所登録制度や、安価で信頼できる耐震改修工法の紹介など、さまざまな施策を実施しているところでございます。
さらには、震災時に大きな被害が想定される防災都市づくり推進計画に定める整備地域の木造住宅や合意形成が難しい分譲マンションなど、防災対策上、公共的な観点から必要がある場合には、財政的な支援も行っているところでございます。
今後とも、自助、共助、公助の原則のもと、こうした施策を着実に実施し、住宅の耐震化を促進してまいります。
○清水委員 自助、共助、公助と事あるごとにいいますが、公助はつけ足しにすぎません。都は、公共性がある場合に絞って公的助成をするといいますが、住宅の耐震化が進んでいる県や政令市は全く違いますよ。
そのことは、静岡県や横浜市の姿勢と比べてみると明瞭です。静岡県、横浜市の耐震改修促進計画では、いずれも建築物の耐震化はまず所有者だとしています。しかし、行政についても、所有者の取り組みをできる限り支援する観点から、負担軽減のための制度の構築など、必要な施策を講じることを明記しているのです。
ところが、都の計画では、都の支援は専ら技術的なものであるとし、財政的な支援は、公共的な観点から必要がある場合にとわざわざ限定しているのです。そして、実際の制度ですが、全国の木造住宅の耐震改修助成制度を調べてみましたが、助成対象をごく一部の地域に限定している県は、東京都以外に一つもありませんでした。知事、これで災害対策基本法で定める自治体としての住民の生命、身体、財産を守るという責任を果たせるのですか。
震度六か七で倒れそうな建物に財政援助なんかできないという発言は取り消し、木造住宅改修助成の対象を都内全域に広げること、さらに、高齢者や障害者のいる世帯などへの上乗せ助成を求めるものですが、いかがですか。お答えください。知事に聞いています。
〔発言する者あり〕
○大塚委員長 飯尾局長、お願いします。
○飯尾都市整備局長 旧耐震基準の木造住宅の耐震化助成についてでございますけれども、都は、防災都市づくり推進計画に定めます、震災時に大きな被害が想定される整備地域を対象といたしまして、住宅の倒壊による道路閉塞や、大規模な市街地火災を防止するという公共性の観点から、区と連携いたしまして公的助成を行っているところでございます。
また、簡易な耐震改修では住宅の耐震性能が十分向上せず、住宅が倒壊するおそれがあるということから、道路閉塞を引き起こす可能性があり、補助対象としては適切ではないと考えております。
都としては、財源を効率的、効果的に活用する観点から、引き続き整備地域に的を絞り、重点的に木造住宅の耐震化を行ってまいります。
○清水委員 知事に答えてほしいんですけれども、知事は、耐震化が必要な古い木造住宅に住んでいる方の話を聞いたことがありますか。
古い建物で、建てかえるといっても、今の基準だとずっと狭い家になってしまうし、年金生活なので、第一そのお金もない、つぶれたらそこまでの命とあきらめるしかありませんとか、高齢でひとり暮らし、余命から考えて、判断できない、決断できない、費用の半分くらい補助してくれればぎりぎり補強できるのですがなど、本当にさまざまです。啓発すれば耐震化が進むという状況ではありません。
知事、こういう方々はたくさんいるのです。こうした声をどう受けとめるのですか。現場で真摯に話を聞くべきです。どうですか。知事、お答えください。
〔発言する者あり〕
○大塚委員長 局長、速やかに答弁お願いいたします。
○飯尾都市整備局長 木造密集地域などにおきまして、今後、耐震化を進めるということは大変重要だというふうに認識しております。そのため、木密地域不燃化十年プロジェクトにおきましては、私どもとして現地に赴きまして、現地の方々の耐震に取り組むそのお気持ちなどについて十分にお聞きしているところでございます。
○清水委員 住民の方の声を紹介して、知事に伺っているんです。真摯に答えてくださいよ。
静岡県の知事は、木造住宅の耐震化助成をするとき、これは阪神・淡路大震災のときの教訓だ、家が壊れたら仮設住宅に住まなければならなくなり、住民のストレスも大変だし、行政の財政負担も大変だ、事後の災害救助より事前の予防なんだと宣言し、その後、重要な成果を上げているのは、既に述べたとおりです。私たちは静岡県に視察に行きましたが、県民の命と暮らしが第一ですからと、職員の方が口々に語っていたことが非常に印象的でした。
財政を重点的、効率的というのならば、事前の予防の観点に立って、建物の倒壊を最小限に抑えるために、都の持てる力を注ぐべきなのです。防災都市東京の名が泣きますよ。
さらに、現在課題になっているのが、首都直下地震の想定最大震度が六強から七へと拡大したことです。文部科学省の研究チームが、東京湾北部地震で最大震度が七になると全壊する木造住宅が、十六万棟から三十九万棟へと二倍以上になると試算しました。
都は、新耐震基準の住宅は震度七の地震にどの程度耐えられると考えているのですか。
○飯尾都市整備局長 新耐震基準では、震度五強程度の中規模の地震に対しましてはほとんど損傷を生じさせず、震度六強から震度七程度の大規模な地震に対しましても、人命に危害を及ぼすような倒壊等の大きな被害を生じないことを目標としております。
実際、震度七を都市部で初めて記録いたしました阪神・淡路大震災におきましては、新耐震基準で設計された建築物は、設計施工の不備なものを除きますと、大破、倒壊といった大きな被害は受けておりません。
○清水委員 新耐震基準の建物は倒壊しないかのような答弁でしたが、事実は違います。
東京都の外郭団体に東京都防災・建築まちづくりセンターがありますが、その広報誌「街並み」では、木造建築の構造研究の第一人者である坂本功現東京大学名誉教授が、専門家の立場からいえば、新耐震基準ぎりぎりの建物が阪神大震災の震度七のところに建っていたとしたら倒壊するおそれが大きいと、はっきり書いているのです。
国の外郭団体、建材試験センターの実物大実験でも、阪神・淡路大震災クラスの地震動では、新耐震基準ぎりぎりの建物では、柱や筋交いが折れて実質的に倒壊するという結果が出ているのです。
私たちは、木造建築物の構造の専門家にお話を伺いましたが、この方は、新耐震基準はあくまで最低基準であり、東京ではこれからは新しい住宅では、耐震等級三、すなわち新耐震基準の一・五倍の性能を目指すことが重要だ、木造住宅ではそうした性能を最もコストが安く、かつ技術的にも容易に実現できると話していました。
東京都は、首都直下地震の緊迫性、深刻さが拡大している今だからこそ、住宅の耐震に取り組む姿勢を進化、発展させるべきことを申し述べて、次の質問に移ります。
建設局にお聞きしたところ、東部低地帯の河川施設のうち、耐震化が必要とされたのは、水門等が二十カ所、堤防が約百六十五キロメートルあり、現在、堤防で耐震化が未達成なのは六十八キロメートルとのことでした。調査したのは一九九五年ですから、二十年近くたっていますが、堤防でいえば、いまだに約四割の耐震対策が未達成です。
震災対策事業計画では、二〇一五年度までに完了させる計画だったのに、今のペースではあと十五年もかかることになります。一九九五年当時の国の通知は、レベル一地震動に対応した点検ですから、東部低地帯にはレベル一の地震に耐えられない堤防がいまだに六十八キロメートルも残されているという驚くべき状況です。
我が党が本会議等で質問したところ、技監は、関東大震災時の震度に対応して耐震対策を行い、一定の安全性を確保してきた、残る六十八キロメートルの区間のうち六十六キロメートルは、民地側の地盤が満潮面より高い地域、または関東大震災時の震度に対する対策が完了している水門の内側にある地域であり、一定の安全性を有していると答弁されました。
そこで伺います。
「二〇二〇年の東京」への実行プログラム二〇一二では、東部低地帯を守る水門について、現在の技術基準、つまり建設省河川砂防技術基準案に基づく耐震化を平成二十五年度までに完了すると書いてあります。国土交通省に聞いたら、この技術基準案はレベル一対応だというのです。関東大震災級の地震に対応するものではないというのです。実際、実行プログラムには、関東大震災級の地震に耐え得る耐震化を進めているなどとは一言も書いていないではありませんか。伺います。
○村尾東京都技監 お尋ねの建設省河川砂防技術基準は、河川施設の設計を行うための基準であり、地震に対する安全性についても定めております。現行計画では、この基準を踏まえた耐震性を有することとしております。
基準は関東大震災時の震度に対応しておりまして、都としては既に最新の科学的知見や客観的なデータに基づいて、都防災会議で示されたマグニチュード八クラスの海溝型地震等を想定した耐震性の確認を進めており、今後、公表予定の被害想定や技術検証委員会での議論を踏まえ、これらの地震に対する新たな整備計画を策定し、整備目標を示してまいります。
○清水委員 いろいろいわれましたが、レベル一の耐震性をも満たしていない六十八キロメートルの堤防は、震度七の地震が来れば、それ自体が損傷し、水害を発生させる危険が強いのです。
重要なことは、東京都地域防災計画では、一九九六年修正版に限ってなのですが、次のように書かれています。原則として、国における耐震設計基準見直しの動きに対応するものとするが、都においては、関東大震災級の地震動のほか、兵庫県南部地震で経験した震度六を超える揺れをも視野に置くと書いてあります。
そこで、都としては、これら二つの地震を単に視野に置くだけでなく、耐震設計にも反映させたのでしょうか。反映させたとしたら、どのように反映させたのですか。
国の通知が出た年の一九九五年には、阪神・淡路大震災が発生し、当時は最大震度七だったとされています。視野に置くというならば、なぜ震度七に対応させなかったのですか。
しかも、国はその後、二〇〇七年三月に出した河川堤防設計指針最終改正で、設計外力をレベル二地震動とすると明記し、二〇一〇年にはレベル二地震動に対する河川堤防の耐震点検マニュアル案を発表しています。都は、遅くともこの段階で、これらの指針やマニュアルに基づいて、東部低地帯にふさわしいレベル二地震動に耐えられるよう、耐震性を強めるべきだったのではありませんか。
阪神・淡路大震災から既に十七年もたっているのですよ。なぜ十七年間もほうっておいたのですか。お聞きいたします。
○村尾東京都技監 先ほど来、震度七が何か東京じゅうで全部で起こるようないい方をされておりますが、我々は震度七がどこに起こるかを、今、先ほど申しましたように、東京都防災会議の公表予定の被害想定をもとに、技術検証委員会の中で検討していこうとしているわけですね。
したがって、国の基準が照査という形で発表されておりますが、それに基づいた調査を進めながら情報収集もやって、今回の震度七が出てくる場所だとかそうしたものを含めて、的確な構造物の照査を行って必要な計画を立てるというふうに、先ほど来ご説明しているつもりです。
○清水委員 私の聞いていることに明確に答えていません。
今、進めているという都の調査と検討と、それに基づく新たな整備計画の策定は、我が党がこれまでも求めてきたものでもあり、これまで必要なということで急いでいただくことは、それはもうもちろんなんですけれども、しかし、そのためにも、これまでの東京都の地震対策への反省を明確にして、教訓をきちんと踏まえることが重要だということを申し述べておきます。
最後に、大規模盛り土造成地対策について伺います。
東日本大震災のときには、多摩地域の丘陵部の百カ所近くで震度五強が記録されました。立川断層帯地震では、震度七が想定されています。このため、市長会などから東京都に対し、多摩丘陵地の地震などの調査を望む声が出されています。
そこで伺いますが、東京都は宅地耐震化推進事業で大規模造成地を調査し、マップを作成する事業を進めてきましたが、今、中断しています。その理由はどういうことですか。また、調査及び作業はどの程度まで進捗していたのですか。そして、直ちにマップ事業を再開し、マップ作成を急ぐことを求めますが、いかがですか。
○飯尾都市整備局長 都はこれまで、国の通知を受けまして、大規模盛り土造成地マップ作成のための調査を実施してまいりましたが、現在、国においてマップの作成を含めた宅地耐震化推進事業の進め方の抜本的な見直しが行われております。
これまでの調査では、区市町村の協力を得まして、宅地造成に関する資料等を収集分析するとともに、現地確認を実施したものでございます。
○大塚委員長 清水ひで子委員の発言は終わりました。(拍手)
Copyright © 1999
Tokyo Metropolitan Assembly All Rights Reserved.