予算特別委員会速記録第五号

○大塚委員長 ただいまから予算特別委員会を開会いたします。
 これより付託議案の審査を行います。
 第一号議案から第二十七号議案までを一括して議題といたします。
 この際、部局別質疑について申し上げます。
 去る三月十五日に議長を通じ各常任委員長に依頼してありました部局別質疑につきましては、お手元配布のとおり報告がありました。ご了承願います。
 これより締めくくり総括質疑を行います。
 順次発言を許します。
 酒井大史理事の発言を許します。

○酒井委員 それでは、都議会民主党を代表して締めくくりの総括質疑をさせていただきます。
 まず、地域主権改革について伺います。
 国と地方自治体は、地域のことは地域住民が責任を持って決めるという活気に満ちた地域社会をつくることを目指し、地域主権改革に取り組んでいます。
 地方自治体は、地方自治に影響を及ぼす国の施策について地方の意見を反映させるため、国と協議の場の法制化を求め、昨年四月、国は法律を成立させ、六月から議論を重ねています。
 初回の会合で山田全国知事会会長は、責任を持って国と一緒になってこの国の再生、復興に頑張る、社会保障改革についても、何としても国と地方は協力をしてやっていかなければならない、知事会の決議で消費税増税について決議するなど、積極的に国民に問いかけていかなければならないと表明しました。
 国と地方は、協議が調った事項について、その結果を尊重していかなければなりません。まさに国、自治体の形をつくる上で双方が重い責任を負うことになったわけです。
 国との協議の結果に対して、地方自治体も責任を持つ立場になりましたが、どのようにお考えか、まず見解をお伺いいたします。

○秋山知事本局長 国と地方の協議の場におきまして、今まで実質的に協議の対象とされましたのが、社会保障と税の一体改革と子ども手当の見直しの二件だけとなっておりますけれども、協議対象事項は法律で幅広く規定されておりますことから、さらにこの協議の場が活用されるべきものという認識をしております。
 これまでの協議の内容を見ますと、社会保障と税の一体改革では、消費税率を引き上げた場合の国と地方の役割分担に応じた税収の配分につきまして、地方団体の意見が一定程度反映されたという成果があったものというふうに考えております。
 しかしながら、子ども手当の見直しにつきましては、国と地方の協議の場を経ずに、国から地方負担を拡大する案が一方的に公表されるという事態が起こったために、その後の協議が円滑に行われたとはいいがたい状況でございまして、国の協議の進め方に課題が残されたものというふうに考えております。
 一方、協議の場には地方六団体の代表が議員として参画しておりますが、地域によって多様な課題を抱える四十七都道府県と一千七百を超える市区町村の意見を集約し、取りまとめることは容易ではないという事情もございます。
 国と地方の協議の場において、協議が調った結果は尊重されるべきことではございますが、地域ごとに状況の異なる各自治体レベルの意見が必ずしも協議結果に反映されるとは限らないことから、そうした際には都として国に対して提案要求等を通じて必要な意見を主張していくべきものというふうに考えております。

○酒井委員 今回、協議が法制化をされ、今後も重要な課題について議論が行われてまいることになると思います。国と地方においては、今後も、分科会などの開催など、協議の場の活用をぜひともしていただき、地方自治に関する改革を進め、また、都においても意見の反映に向け尽力をしていただきたいと考えております。
 協議が調ったテーマについては、地方としてもしっかり地域住民に示していただきたいということをご要望申し上げておきます。
 さて、この地域主権改革の推進によって、地方自治体の自治権が拡大されることになります。都においては、都民生活や福祉の向上のために、より一層その権利を適切に行使をしていくことが求められますが、都の権利行使において大きな位置を占めるものに課税のあり方があると考えます。
 地方自治を推進する上での財源となる地方税、都税に関しては、福田政権下において行われた法人事業税の一部国税化の問題について、私どももこれまで国に繰り返し廃止の要請を行い、ようやく社会保障・税の一体改革の中であるべき姿へ戻すことが確認をされるに至りました。
 地方税制度のあり方をしっかりと考えていくこととあわせて、課税に当たっては、公正公平を基本とし、納税者には感謝をしつつ、滞納者には厳しく対応するとともに、都は間違いのない正しい課税を行い、親切丁寧な対応をしていくことはいうまでもないことであると考えます。
 そのような中、都は、都内の冷凍倉庫会社から、過大な固定資産税を納付させられたとして、国家賠償法に基づいた損害賠償請求訴訟を起こされました。そして、ことし一月、東京地裁は都に過納金相当額を支払うよう命じました。しかし、都はこの判決を不服として取り消しを求め、控訴を行い、この専決処分の承認をこの議会で求めています。
 この問題については、財政委員会でも我が会派の淺野議員からさまざまな観点からの質疑をさせていただきましたが、冷凍倉庫の固定資産税過徴収問題をめぐっては、全国で訴訟が提起をされ、平成二十二年六月の名古屋市事件において、最高裁は、国家賠償請求を行い得るとの判決を下し、冷凍倉庫会社と名古屋市は和解をしました。また、自治体によっては、みずから国家賠償請求責任を認めて賠償金を返還する動きも出てきております。
 本件訴訟においては、平成十八年の税務調査によって、原告所有の冷凍倉庫を一般倉庫と見誤り賦課徴収していたとして、その誤認を認め、還付加算金とともに返還していたものの、その遡及が地方税法に規定する五年間であったため、国家賠償法に基づく賠償請求をされ、東京地裁で敗訴したものであります。
 本来正しい課税をしていれば、こうした訴訟を起こされることはありませんし、課税の公平性を失するような状況を生み出すこともありません。また、還付加算金をつけての返還は、一般納税者の税金を還付加算金という形で浪費をしているもので、主税局の責任は重大であると思います。
 しかしながら、都においては今後、判決ではなく、みずからの判断で原告と和解を行うことを切に切に期待をし、固定資産評価への改善を促す機会としていきたいと考えております。
 そこで、都においては、控訴提起に至った法解釈及び行政運営について、都民福祉の向上、課税の公平公正性の観点から適切に自治権を行使したと考えているのか、ご見解をお伺いいたします。

○新田主税局長 地方分権が進展している現在、地方自治体が税務におきましてもその権限をより公平公正に行使していくことは重要であると認識しております。
 しかし、現行の固定資産税制は抜本的な改革が先送りされ、たびたび修正が加えられてきた結果、複雑でわかりにくく、また、基準が明確でない部分も多いものとなっております。
 都はこれまでも、国に対して簡素でわかりやすい制度の実現を繰り返し提案要求してまいりましたが、今後、よりよい固定資産税制の実現に向け、都議会の先生方のご協力を得て、一層強力に働きかけていく所存でございます。
 なお、本件訴訟におきましては、固定資産評価の基本に係る重要な問題が含まれておりますが、必ずしも十分な審議が尽くされたとはいいがたく、全国の自治体の行っている固定資産税の実務に多大な影響を与えかねないことなどから、控訴の判断を行ったところでございまして、ご理解を賜りたいと考えております。

○酒井委員 今ご答弁をいただきましたが、繰り返しになりますけれども、ぜひこの問題については控訴審の中で議論をしていただき、かなうのであれば、ぜひとも和解という形で対応していただきたいということをお願い申し上げますし、また、今、国に対する提案というお話もございましたけれども、東京都にも裁量権が固定資産税の問題については多分にあるわけでございますので、自治権の行使という形では適切に対応していただきたいということを申し上げておきます。
 このまさに自治権の行使における最たるものが、課税の賦課徴収であると思います。繰り返しになりますが、都は自治権の行使である賦課徴収に当たっては、納税者である都民にはわかりやすく、公平で公正な事務の執行を行わなければならないと考えております。
 そこで、課税のあり方における都の基本姿勢に関してお伺いをいたしますけれども、固定資産税について、来年度は評価の基準年度に当たります。さきの財政委員会でも言及をいたしましたが、平成二十四年基準年度においては、従来、一般倉庫に区別されていた冷蔵倉庫が、冷凍倉庫とあわせて新しいカテゴリーでの冷蔵倉庫として評価をされることになります。
 既に該当する倉庫の抽出は完了していることと思いますが、過去の事例やさきの財政委員会の中での答弁で可能な限りという文言を使っている以上、抽出漏れといったものが危惧されます。
 そこで、現在、主税局としては抽出漏れ、対応漏れがないようどのような体制をとって取り組んでいるのか、お伺いをいたします。
 また、仮に対応漏れが生じた場合、税法の遡及年限五年に固執をするのであれば、抽出漏れが生じた場合には納税者が不利益をこうむることになるわけですけれども、その点についてはどのように対処するのか。
 さらに、冷蔵倉庫に限らず、基準年度に当たっては、既存の複合用途、複合構造家屋の適切な把握に努めるべきであると思いますが、ご見解をお伺いいたします。
 また、納税者へのわかりやすい説明という観点から、課税通知書の改善も行うべきと考えますが、これらの点も踏まえて課税のあり方に対する基本的な方針、お考えをお伺いいたします。

○新田主税局長 平成二十四年度評価基準の改正におきましては、従来の冷凍倉庫の区分が廃止となり、新たに摂氏十度以下の冷蔵倉庫区分が設けられたことに合わせまして、局としましては体制を強化し、都税事務所の総力を挙げ、二年間をかけてすべての一般倉庫を対象に、所有者への事前聞き取りや現地調査等を行い、冷蔵倉庫の捕捉に努めてまいりました。
 そのため、抽出漏れはないものと考えており、今後とも調査漏れがないよう最大限努力してまいります。
 なお、現行の地方税法の制約につきましては、今後、国に問題提起等を行うことなどを考えていきたいと思っております。
 また、既存家屋の用途あるいは構造につきましては、新築後の現況の見直しについても、登記事項の変更、増改築の確認等により、その時々の体制のもとでできる限り正確な把握に努めていきたいと考えております。
 さらに、納税通知書の表記につきましては、納税者にとってより親切でわかりやすいものとなるよう研究してまいります。
 こうした点を踏まえまして、都といたしましては、納税者の視点に立った評価、課税事務の実現に努めているところでございますが、今後とも、縦覧制度の周知を一層進め、より懇切丁寧な対応に努めてまいりますとともに、固定資産税制における評価と課税の仕組みが、より簡素で理解しやすい制度となるよう、強力に国に対して働きかけてまいります。

○酒井委員 ただいま主税局長からご答弁をいただきました。倉庫の確認については、この訴訟で使用実態といったものを重視されているということでございますので、そうであるならば、これは一般倉庫の確認だけではなくて、既存の冷凍倉庫についても調査をすべきであるということを申し上げておきたいと思います。
 また、抽出漏れ、対応漏れに関しては、努力をするということはよいわけですけれども、主税局の責任で対応がおくれたときの納税者の不利益をどう解消するかということを問うているわけです。
 国の制度に対し問題提起をする、このことはよいことであると思いますけれども、みずからの対応のおくれに対して、そのことによって納税者が不利益を得ることがないように、これは主税局の独自の判断としても行い得る対応であろうかと思いますので、ぜひしっかりと考えていただきたいということを強くお願いを申し上げたいと思います。
 また、基準年度における倉庫以外の確認でありますけれども、その時々の体制のもとでできる限り正確な把握に努めていきたいとの答弁でございましたが、現行の体制で把握をするということが難しいということは、私も十分に理解をしているつもりであります。
 であるからこそ、みずからその体制では把握できないような基準をつくり、課税の公平性を失するような状況をつくっていることが問題であるということを私どもはいっているわけでございます。その点を十分に考えて認識を改めていただきたいと思います。
 また、納税、課税通知については研究をしてまいるということですけれども、ぜひとも早急に検討していただきたい、研究をしていただきたいと思っております。
 現状、この四月から、新たな評価替えの時期に来ると、毎年課税通知書というのが来るんですね。この課税通知書を見ても、私も自分の家の課税通知書を見ると、土地、建物について評価額が幾らで、課税額が幾らということしか書いてないんです、実際に。これでは、幾ら不服申し立て制度があるといっても、自分の家屋、所有物件がどういう基準に基づいて評価がされているのか全くわからないんですよ。
 であるからこそ、皆さんが評価をしている根底にある再建築費評点計算書に基づいて計算しているわけですよね。この評価額に対して、用途やまた複合構造家屋の構造等においては、それぞれ経年減点補正率といったものが違って、それを掛けて、さらにブラックボックスである補正率といったものが一・〇一とか一・一とかというものが掛かっているから、なかなか年々年々、本当は減価償却して価値が下がっていくはずなのに、補正係数によって固定資産の価格が下がらないという、皆さんの基準で掛けられるそういった補正係数もあるわけです。
 そういったものを掛けた上で評価額が出て、そしてそれに課税をすると。で、課税額が出るから、納税者の皆さんには払ってくださいということをいうわけじゃないですか。そういったすべての情報を公開することによって、初めて納税者の側は自分の建物に幾ら評価をされていて、どういう理由で、どういう判断をされて課税がされているのかということを理解できるわけですから、そのことがまず最初のスタートラインになると思うんです。
 課税の通知の仕方、このことを改善していくことが、主税局にとってより納税者にわかりやすい、理解を得られる、そういった課税制度になってくると思いますので、新田局長だけはこの点について少なくとも理解をしていただいていると思いますので、ぜひ改善をしていただきたいということを心からお願いを申し上げ、次の質問に移らせていただきたいと思います。
 昨年三月に発生した東日本大震災は、国と地方自治体の役割や関係などを議論する大きな契機となりました。被災者の安全や生活を守る観点から、東京都を初めとした各地の地方自治体が迅速、具体的に行動に移した取り組みが被災地のコミュニティ再生への出発点となったことや、行政機能の復旧などに大いに役立っています。
 また、関西広域連合による東北各県へのカウンターパート方式での支援や、杉並区などの自治体スクラム支援会議による福島県南相馬市へのきめ細かな支援など、広域的な取り組みも進んでいます。
 国が大規模災害時における自治体の水平的支援を新たに認めることが防災対策の推進に重要であるだけでなく、これを機会に都道府県や区市町村同士が自発的な連携協力を発展させることは、国の出先機関の移管の進展を初めとした地方自治を推進する地域主権改革にもつながります。
 災害時における水平的支援を一例として挙げましたけれども、自治体間連携の進展がこれからの自治推進に重要となると考えますが、都の見解をお伺いいたします。

○秋山知事本局長 自治体間連携と自治の推進の関係で申し上げれば、昨今、交通網の発達などによりまして生活圏や経済圏が拡大し、環境や交通、産業振興などの広域行政課題につきまして自治体間の連携による対応が重要となってきております。
 そのため、都は、広域行政課題を解決する先駆的な取り組みといたしまして、九都県市の連携を推進することによりまして、ディーゼル車の排出ガス規制を初め首都圏FEMAの創設、羽田空港や環状道路等の整備促進などの成果を上げてきたというところでございます。
 また、災害時には協定によりまして、九都県市域内相互の応援体制を構築してございますが、大震災を契機に九都県市域外の自治体を支援するため、他県市との効果的な協力体制の確保などにつきまして検討を進めておりまして、今後、協定の見直しを提案することとしております。

○酒井委員 次に、大阪や愛知における都構想、新潟での州構想や政令指定都市市長会が掲げる特別自治市構想など、大都市制度の改革案に関して幅広い議論が沸き起こっています。
 それを受けて、第三十次地方制度調査会では、社会経済や地域社会の変容に対応した大都市制度のあり方について調査を開始しました。国会においても、各党が特別法や地方自治法改正案などによる検討を開始し、一部政党では改正案を提出しています。
 多様な自治制度の提案は議論の推進に寄与するものですが、二重行政をなくす一方で、新たに自治体や議会を置いて住民生活を守るとする制度改革でどのような都市が生まれるのか、また一層制の自治制度とはどのような都市をつくることなのでしょうか。
 大都市に係る自治制度改革に当たっては、どう都市をつくるべきかという中長期的な展望と大都市の役割を踏まえた理念をしっかり持って議論すべきと考えますが、ご見解をお伺いいたします。

○秋山知事本局長 大都市のあり方をめぐってはさまざま議論が進められておりまして、例えば大阪では東京の都区制度をモデルにした新たな大都市制度の検討が、また政令指定都市では、都道府県から独立した特別自治市構想の検討が進められているところでございます。
 一口に大都市と申し上げましても、昼間流入人口が三百万人を超え、圏域人口が三千五百万人にも及ぶ東京のような一国の首都と地方における中核的な都市とでは、その人口規模やそれぞれの都市圏における役割に大きな違いがございます。そのため、制度の枠組みなど画一的な議論に終始することなく、それぞれの大都市の役割を踏まえた実質的な議論が必要であるというふうに考えております。
 国際経済のグローバル化が進む今日、大都市の競争力がその国の活力と成長力を決めるということから、集積のメリットを生かして、大都市の持つポテンシャルを最大限に発揮し、その担うべき役割を十分に果たすことができるような制度を構築していくことが極めて重要であるというふうに考えております。

○酒井委員 では、次に、築地市場の移転問題についてお伺いをいたします。
 私たち都議会民主党は、築地市場の移転予定地の安全性が確認をされていないこと、また、関係者の合意も得られていないことから、築地市場の強引な移転に反対をしてきました。
 既に現在、豊洲の土壌汚染対策工事が進んでいますが、私たちはこの工事の結果について大いに注目をいたしております。
 市場は、今までさまざまな指摘に対し、汚染は除去するから大丈夫だと重ねてきました。十メートルメッシュに一カ所のコアサンプルで汚染を三次元的に把握することは不可能であり、それは専門家会議の平田先生もその代表性があるかどうかという点については認めているところであり、だからこそ地下水調査をしたと述べています。
 東京都は、調査の限界を認め、汚染が残置されることを前提とした対策であることをしっかりと示すべきと考えます。
 砒素や鉛のような有害物質が自然由来かそうでないかという判断において指摘をしてきましたが、一律自然由来としてしまうような簡単な話ではありません。毒性の強い有害物質や重金属であるということを重大に受けとめ、慎重な対応をとるべきだと考えます。
 そこで、今回都は、不透水層内の砒素や鉛といった有害物質も一律自然由来としておりますけれども、これらを残置して市場用地の安全性をどのように確保していくのか、お伺いをいたします。

○中西中央卸売市場長 今回の底面管理調査は、調査対象の約四分の一で実施しており、検出した不透水層内の砒素や鉛は、全量分析による含有量などのデータが環境省から出された通知に示された自然由来に関する判定基準に適合いたしますとともに、専門家の見解も得た上で自然由来と判断したものでございます。具体的なその見解については、ホームページ等で公表してまいります。
 今後、残る四分の三の底面管理調査を行いますが、その結果、自然由来と考えられない場合があれば、深度方向の調査を継続いたしまして掘削除去を行います。
 市場用地については、操業に由来する汚染物質は確実に除去し、自然由来は土壌の入れかえや盛り土など、二重、三重の封じ込めを行います。
 さらに、液状化対策を施し、施設完成後も地下水を管理していくなど、安全・安心に万全を期してまいります。

○酒井委員 ただいまご答弁をいただきましたけれども、自然由来かどうかの判断について、専門家の見解も得た上でというお話ではございました。その内容については、ホームページ等で公表をしていただけるということですので、お手盛りだといわれないようにしっかりと、どういった方々がどういった見解を述べられているのかということをぜひともしっかりと公表して、広く都民の理解を得られるようにしていただきたいと思います。
 次に、生鮮食料品を扱う中央卸売市場でありますので、汚染物質を完全に除去することがまず何より大切であるわけですけれども、有害物質が残るのであれば、答弁にあったような封じ込めをしっかり行うしかないと思います。
 ここで必要なのは、大きく二つであると思います。一つは、地下水の管理であり、もう一つは液状化です。
 まずそこで、地下水の管理についてお伺いをいたします。
 地下水の管理では、APプラス一・八メートルに水位を保つことは重要であると思います。東京都は、毛細管現象による地下水の上昇を防ぐため、AP二メートルからAP二・五メートルまで砕石層を設けることになっていますが、我が会派の田の上議員が地盤沈下によってこの砕石層の位置がずれることを指摘してきました。
 私たちの指摘に東京都は、六街区については砕石層を厚くするなど必要な対策を行いましたが、五街区、七街区については既に沈下は完了し、新たな対策をしないとの立場をとっています。
 しかし、私は引き続き五街区、七街区について沈下が起きていないのかを確認し、沈下が確認されたのであるならば、六街区と同様、必要に応じて砕石層の厚さなどを調整するなど対策を検討すべきだと考えますが、ご見解をお伺いいたします。

○中西中央卸売市場長 五街区及び七街区では、盛り土が行われた後五年から十年経過しており、沈下は既に完了していると考えております。
 しかし、ご指摘のように、地下水の上昇を徹底して防止する必要がありますことから、対策工事に際して改めて地盤の状況を確認することとし、必要な場合には砕石層の厚さを調整してまいります。
 また、開場後にも地下水の水位や水質のモニタリングを確実に行い、市場用地としての安全・安心に万全を期してまいります。

○酒井委員 ただいまのご答弁で改めて確認をすること、必要に応じて砕石層の厚さを調整するということが示されました。ぜひともしっかりと行っていただきたいと思います。
 また、モニタリングにつきましては、本当にそういったことを市場開場後においてもしっかりとやっていただきたいということを申し添えさせていただきたいと思います。
 そして、もう一つ、封じ込めには液状化対策が欠かせないと思います。東日本大震災や先々週の三月十五日に発生した地震でも、千葉県など臨海部の至るところで液状化現象が見られたことから、液状化に対する都民の関心は高まっています。
 豊洲新市場の液状化対策のレベルは、レベル一地震動をもとにしていますが、現在、東京都防災会議においては、東日本大震災の実態を踏まえ、首都直下地震による東京の被害想定の見直しを行っています。
 そこで、豊洲新市場についても、封じ込めを万全なものとするため、液状化対策と範囲の見直しを検討していくべきだと考えますが、見解を伺います。

○中西中央卸売市場長 豊洲新市場では、市場用地としての安全性の確保に万全を期すため、通常は対策を行うことのない建物以外の敷地においても、護岸と同じレベルの地震を想定した液状化対策を行うこととしています。
 液状化対策で採用した工法は、阪神・淡路大震災や東日本大震災においても効果が確認されており、同等の地震があっても液状化による影響はないと考えております。
 一方で、国や東京都防災会議においては、今後想定される地震モデルや地震動などが検討され、都の地震、津波に伴う水害対策技術検証委員会では、堤防や水門などの耐震性の向上策等について検討を進めています。
 豊洲新市場敷地の液状化対策につきましては、こうした動向も勘案しながら、生鮮食料品を扱う基幹市場という認識のもと、速やかに対応してまいります。

○酒井委員 ただいまのご答弁で、生鮮食料品を扱う基幹市場という認識をお持ちであるということで、液状化対策についてはその基準等が示されたときには、優先してやっていくということであろうということを確認させていただきました。
 次に、私たちは、リスクコミュニケーションの一環として、早い段階から市場関係者を含めた協議会を設置し、その取り組みが検証、確認できる体制を構築すべきことなどを求め、東京都も協議会の設置を明らかにしてきたところです。
 一方で、水産仲卸業者の団体である東卸も、二月七日に示された方針の中で、土壌汚染問題対策チームの設置を明らかにしたところであり、私は、東京都が設置をするこの協議会の中に、土壌汚染問題に最も神経をとがらせてきた水産仲卸業者を加え、実質的にクロスチェックともいえる対応を図るべきであると考えています。
 そこで、協議会の設置時期も含め、今後の進め方について東京都の見解をお伺いいたします。

○中西中央卸売市場長 市場関係者や学識経験者などを構成員といたします協議会につきましては、仮設土壌処理プラントが完成し、汚染土壌の処理結果を示すことが可能となります七月を目途に設置いたします。
 この協議会は、市場関係の各業界団体それぞれに参加いただくこととしており、お話の土壌汚染問題に関心の高い水産仲卸業者の団体である東卸からも構成員の推薦をいただき、参加していただくことを考えています。
 協議会では、工事の進捗状況や汚染土壌の処理状況を報告するなど、情報の共有化を図るとともに、積極的に意見交換を行い、関係者の理解と信頼を得ながら、土壌汚染対策工事を確実に進めてまいります。

○酒井委員 ただいまの答弁、水産仲卸の業者の方々にもご参加をいただくということを初めて表明をされたということは評価させていただきたいと思います。ぜひとも、これは都側のお手盛りの協議とならないように、反対派も含めて、また慎重派も含めて、この協議といったものが実質的なクロスチェックになるように進めていただきたいというふうに期待いたしたいと思います。
 この豊洲新市場の開場は、汚染土壌の無害化が確認されていることが大前提であると考えます。今後、豊洲新市場を開場するためには、この平成二十四年度の予算案の可決、成立はもとより、今後、東京都中央卸売市場条例の第四条を改正し、市場の名称及び位置などを定める必要があります。
 私たち都議会民主党は、汚染された土壌が無害化され、安全な状態になっていなければ、豊洲新市場の開場には当然のことながら反対であり、開場スケジュールよりも食の安全を確保していくことの方が、都民にとってはより重要であると考えます。
 そこで、開場の前提条件について東京都の見解をお伺いいたします。

○中西中央卸売市場長 食の安全確保は、卸売市場の基本的使命であり、豊洲新市場の開場に当たっては、あくまで汚染された土壌が無害化され、安全な状態になっていることが前提であると考えております。
 現在施工中の土壌汚染対策工事を着実に進め、汚染の除去に万全を期してまいります。

○酒井委員 ただいまご答弁をいただきました。この卸売市場の基本的な使命である食の安全確保を最優先に考えていただきたいと思います。
 私たち都議会民主党は、関係者の合意がない中で、築地市場の移転を強引に進めることについては反対であると主張してきましたが、二月七日の中央区と東京都の合意については評価するとともに、東京都が、中央区が主張していた鮮魚マーケットなど、食文化の拠点を継承していくことに合意したことは、これまでこの問題に取り組んできた都議会民主党の一定の成果であると考えています。
 私は、この合意が着実に履行されることを強く望むものであり、その観点から石原知事に確認の質問をいたします。
 石原知事は、平成二十二年三月十五日の予算特別委員会において、豊洲も築地もともにブランドとして並び立つような妙案をみんなで考えればよろしいと思いますと答弁していますが、今回の合意はまさに豊洲も築地もともにブランドとして並び立つような妙案であると考えます。
 中央区は、昨年十一月の要望書などによれば、食文化の継承の核となる施設について、食のプロに評価、使用される施設、あるいは一般客、観光客にも親しまれる施設とのイメージを掲げており、この施設を整備し、場外市場地区とともに築地の食文化の拠点として活気とにぎわいを確実に将来に引き継いでいくとの姿勢を明らかにしております。
 そこで、私は、こうした中央区の要望を踏まえ、鮮魚マーケットなど、食文化の拠点の継承に向けて、東京都としても積極的に将来にわたり取り組んでいくべきと考えます。
 先ほど市場長が答弁した土壌汚染問題に対する考え方も含め、石原知事の見解をお伺いいたします。

○石原知事 昔の浮世絵を見ますと、日本橋は確かに今の築地に匹敵する一種の魚河岸だった姿が描かれていますが、都市の発展とともに態様を変えて、日本橋は日本橋として、上に高速道路がかかりましたけれども、何というんでしょうか、江戸から地方へ行く一種の原点、始発点として意味づけられていますし、いろいろな店を並べて、日本橋としての活況を呈しております。
 こうした歴史が示すように、市場移転後も築地と豊洲がともにブランドとして並び立つ妙案をみんなで知恵を出し、探ることは重要だと思います。都としては、こうした観点に立ちまして、中央区との合意に基づき、食文化の拠点を継承していくことに協力していきたいと思っております。
 これから東京がどのように変容し、今の築地がまちとしてどういうふうに変わっていくか、これはやっぱり都民というかお客様の動きというものを勘案しなくちゃいけないと思いますが、いずれにしろ、まちがまちとして今まで以上に発展していくことが必要だと思います。
 そういうことも念頭に置きまして、新しい新市場の整備に当たっては、おっしゃるとおり、あくまでも食の安全が最優先に確保されるべきでありまして、我が国の最高権威の学者の方々の英知もおかりして編み出した万全な土壌汚染対策を確実に進めていくことが必要であると思っております。
 工事の進展に沿って、何か新規に必要が生ずれば、当然専門家の知見も得ながら、都民や市場関係者の安心や理解が得られるような必要な対策を講じ、万全を期してまいります。

○酒井委員 ただいま知事からご答弁をちょうだいいたしました。中央区との合意に基づいて食文化の拠点をしっかりと継承していくことを東京都としても協力していくこと、また土壌汚染対策については、食の安全が優先される、最優先されるということをご答弁いただいたということで、この点については重く受けとめさせていただきたいと思います。
 次に、東京における道路ネットワークの整備についてお伺いいたします。
 まず、多摩地域の都市計画道路の整備について伺います。
 私は、平成十九年第四回定例会一般質問で、多摩地域における都市計画道路の整備について質問いたしました。その折には、関係市町と連携し、多摩地域の発展に資するよう、骨格幹線道路を初めとする都市計画道路ネットワークの早期形成に努めていく旨のご答弁をいただいております。
 その後、多摩地域の都市計画道路の整備が進められてきましたが、その整備率は約六割にとどまっており、今なお人、物、経済の流れをつかさどる道路を初めとした交通網の整備は十分とはいえない状況にあると思います。
 例えば、多摩地域の交通は、混雑時の旅行速度が時速十五キロメートルを下回る区間も多く、移動に多大な時間とエネルギーをかけざるを得ない状況となっています。
 また、世界に誇るべき先端技術産業や大学、研究機関の集積を生かし、広域的な産業交流を活性化する上で、隣接県との往来や拠点都市間のスムーズな移動が課題となっています。
 さらに、東日本大震災の教訓を踏まえると、災害時の安全な避難経路や緊急車両の通行など、防災性の面でも不十分な状況にあると思います。
 そこで、今後の多摩地域の都市計画道路のあり方について、都はどのようにお考えになられているのか、見解をお伺いいたします。

○飯尾都市整備局長 多摩地域が活力と魅力にあふれ、一層の発展を遂げますためには、南北道路などこれまで整備してきた基盤を生かしつつ、効果的な道路ネットワークを形成することが不可欠でございます。
 また、都県間を結ぶ道路を一層充実させるとともに、立川など拠点の育成や利便性の向上に資する道路の整備が重要でございます。
 さらに、災害時の迅速な救助救援活動や緊急物資輸送を支える道路ネットワークの充実が欠かせません。
 そこで、これらの視点を踏まえまして、今後、新たな都市計画道路の整備方針の策定に向けて調査検討に着手してまいります。

○酒井委員 ただいまの都市整備局長のご答弁により、多摩地域の都市計画道路の整備に向けた取り組みについてはわかりました。
 平成十九年の第四回定例会でもご提案させていただきましたが、多摩地域の交通網充実の一つのアイデアとして、中央自動車道の国立府中インターチェンジ付近から立川市の広域防災基地や、また、軍民共用化といったものを目指している横田基地を通り、圏央道青梅インターチェンジを地下で結ぶ自動車専用道路、これを多摩中央ハイウエー構想と私は命名をいたしておりますけれども、横田基地はさきの委員会の中でも、西岡議員が軍民共用化の推進についてお話をさせていただいておりますけれども、仮にこれが実現をしたときのアクセス道路にもなるこの提案も踏まえ、ぜひとも多摩地域の道路整備に一層取り組むことをお願いいたしまして、次の質問に移らせていただきたいと思います。
 次に、東京外かく環状道路整備についてお伺いいたします。
 外環道の関越から東名までの区間の計画について、都議会民主党としても、東京都とともに政府に対し積極的に働きかけてきた結果、国の平成二十四年度の事業計画では、事業費二百億から三百億円の予算計上が実現いたしました。
 国が予定している事業内容は、調査設計、用地買収、環境整備工事ということになっています。
 都の来年度予算案においても、東京外かく環状道路の整備推進として、百一億四千五百万円が計上されておりますが、この予算の具体的な使い道について見解をお伺いいたします。

○村尾東京都技監 外環は、首都圏の渋滞解消や国際競争力の強化、さらには防災上の大きな役割を担うとともに、首都圏の高速道路ネットワークの形成に欠かすことができず、早期完成を図ることは極めて重要でございます。
 外環の整備は、超党派で組織される東京都議会外かく環状道路建設促進議員連盟の皆様のお力添えもあり、大きく前進しております。
 お尋ねの平成二十四年度予算についてでございますが、東京外かく環状道路の整備推進として計上した百一億四千五百万円のうち百億円につきましては、国の直轄事業に対する工事及び用地の負担金でございます。
 また、一億四千五百万円は、都が用地事務を受託しております大泉ジャンクション地域の用地取得に係る測量及び物件調査などの費用でございます。

○酒井委員 国では、この外環道の計画が具体化していない唯一の区間である東名以南について、来年度、計画の具体化に向けた検討をする予定と聞いております。具体的には、東京南西部地域の将来の交通課題の整理、規格の高い道路整備が果たすべき役割の検討、路線の検討、各路線の概略計画の検討、環境調査計画の検討などの内容になっているようです。
 この区間については、平成二十一年に国と都で公表した対応の方針の中で、検討の場を設置することとなっていますが、いまだに具体的な動きには至っていません。
 石原知事も去る三月十六日の記者会見で、非常に高い優先順位で考えるべきだと思うと発言をされております。
 羽田空港や京浜三港と首都圏との交通ネットワークの強化のためにも、東名以南の区間について早急に議論を進めていくべきと考えますが、見解をお伺いいたします。

○飯尾都市整備局長 国と都が平成二十一年四月に外環に関して示しました地域の課題に対する対応の方針では、東名高速以南につきまして検討の場を設置し、基礎的な調査を踏まえ、具体的な検討を実施するとしております。
 このため、都は、国に対する提案要求の中で、東名高速以南の具体化に向けまして検討を進めることを働きかけてまいりました。
 引き続き、計画の早期具体化に向けて、国と都による検討の場の設置や必要な調査などを実施するよう、国に強く求めてまいります。

○酒井委員 次に、来年度予算案では、外環の地上部、いわゆる外環ノ2に関する予算が、骨格幹線道路の事業の中に五億六千三百万円計上されております。
 都は、外環ノ2の取り扱いについて、地元との協議をきめ細かく行った上で決定していく方針をこれまで示してきたわけですが、この最終的な結論がまだ出ていない中で、この予算を計上することに問題はないのかどうか、予算化の理由と具体的な事業内容についてお伺いをいたします。

○村尾東京都技監 今回予算を計上した地上部の一般街路につきましては、現在、事業が進められております外環本線の大泉ジャンクション地域と重複する、目白通りから練馬主要区道三三号線までの約一キロメートルの区間でございます。
 この区間には、外環本線と重複する都道である土支田通りと井草通りがあり、外環の整備にあわせてその機能を確保する必要がございます。
 また、当該区間では、外環本線とその地上部街路の二つの都市計画線があり、両方の都市計画線にまたがっている関係権利者の方々の生活再建を図る必要もございます。
 そのため、外環本線の用地取得の進捗状況を踏まえ、平成二十四年早期の事業化に向けて、昨日から地元説明会を開催し、事業の概要や今後の進め方などを説明しております。
 また、平成二十四年度予算案につきましては、用地取得に必要な測量及び物件調査や用地補償などに係る費用として五億六千三百万円を計上いたしました。

○酒井委員 ただいまのご答弁によりますと、今回の予算については既存の道路の部分だけということで、現状、道路ではないところについては従来どおりの方針ということを確認させていただきました。
 次に、首都高速道路の維持管理についてお伺いをいたします。
 首都高速道路は、総延長が三百一キロメートル、首都東京の大動脈として、首都圏はもとより、我が国全体の経済、文化を支える基盤的なインフラであり、首都高速道路が担う役割を考えると、その機能を維持し続けるために適切に管理をしていくことが極めて重要であると考えます。
 一年前の東日本大震災では、東北地方の高速道路が短期間で復旧し、命の道として機能したところであり、災害時における高速道路の重要性が改めて認識をされております。災害時の機能維持は、今後予想される首都直下型地震において、首都高に求められる重要な要素であると考えます。
 そこでまず、東日本大震災で首都高速道路はどのような被害を生じたのかお伺いをいたします。

○飯尾都市整備局長 都内の首都高速道路におきましては、阪神・淡路大震災を踏まえまして、長大橋などを除いて、都も出資をいたしまして耐震補強を終えております。このため、これらの区間では、今回の震災においても路面のひび割れやジョイント破損など、損傷は軽微なものでございました。
 なお、長大橋の一つでございます荒川湾岸橋につきましては、耐震補強の工事中でございまして、トラス部材の接続部にボルトの破損や鋼材の曲がりといった損傷が発生いたしましたけれども、平成二十三年度補正予算の災害復旧事業費補助を活用いたしまして復旧し、現在、引き続き耐震補強工事を進めておるところでございます。

○酒井委員 東日本大震災では、幸いにも首都高における負傷者などはなかったものの、被災による通行どめの発生により、短期間ではありますが、一般街路にも渋滞などの影響を及ぼしたと聞いております。
 事実、私もこの都庁から自宅の立川に帰るまで五時間かかりましたけれども、このような状態が首都高速の各所で発生し、長期化した場合、日本の経済にも大きな影響を与えることにもなりかねません。
 このような事態を引き起こすことのないよう、急ぎ耐震対策を完了させるべきであると考えますが、見解をお伺いするとともに、その状況についてもお伺いをいたします。

○飯尾都市整備局長 阪神・淡路大震災で高架橋の橋脚に甚大な被害が生じましたことから、首都高速道路株式会社は、緊急に実施すべき耐震対策として、これまでに橋脚の補強約七千二百基、けたの落橋防止約三万二千カ所の対策を完了させております。
 現在、残された長大橋の変形を抑制する補強やトンネル壁面等の補強を進めておりまして、平成二十四年度中にすべての耐震対策が完了する予定でございます。

○酒井委員 耐震補強については平成二十四年度に完了とのことであり、首都高速道路株式会社と連携し、着実に事業を推進していくよう求めたいと思います。
 耐震補強の状況についてはわかりましたけれども、首都高速道路株式会社によると、総延長三百一キロメートルのうち、開通から四十年以上経過しているものが約三割、三十年以上だと半分近くを占め、高齢化が進んでいるように聞いております。
 また、日常百十万台の交通量、そのうち特に大型車交通量は都内道路の五倍という過酷な使用状況にもあると聞いております。
 首都高速道路の今後の健全性の確保をどのように進めていくのか、お伺いをいたします。

○飯尾都市整備局長 都ではこれまでも、さまざまな機会をとらえまして、首都高速道路株式会社に施設の健全性を確保する対策を実施するよう求めてまいりました。会社としては、それを受けまして、耐震補強や車両の大型化への対応に取り組んできたほか、計画的に点検補修等を行ってまいりました。
 さらに、来年度からは、施設の長寿命化を図りますため、繊維補強コンクリート舗装など耐久性向上対策を実施することといたしております。
 引き続き、会社に対しまして、施設の安全性確保に万全を期するよう強く求めてまいります。

○酒井委員 今後も健全性が確保できるということでございますけれども、首都高速道路においては、補修を必要とする損傷は平成二十一年では全体で約九万七千件、このうち経過年数が四十年以上になる都心環状線では約九千件、一キロメートル当たり約六百件にもなっています。
 しかも、この補修を要する件数は、平成十四年で約三万六千件であったわけですから、二・七倍にも急増していることになります。このような状態では、いつまでも補修で健全性を確保するのにも限界があるのではないでしょうか。
 既に首都高速道路株式会社では、道路ネットワーク機能を将来にわたり永続的に維持するため、大規模更新について学識経験者を交えた検討を始めたところであり、年末までに提言が取りまとめられると聞いております。その検討の過程で、首都高の今後のあり方についてもさまざまな議論がなされるものとは考えられます。
 そうした状況も踏まえ、東京都としても、常々話題となる日本橋を覆う高架道路を初めとした都心環状線の撤去をも含めた首都高の今後のあり方について検討すべきということを要望して、次の質問に移らせていただきます。
 次に、産業振興について何点かお伺いをいたします。
 まず初めに、アジアヘッドクオーター特区についてお伺いをいたします。
 我が国の将来に向けた発展と繁栄を確実なものとする上で、産業の力を高め、経済を伸ばしていくことが基礎になることはいうまでもありません。そのため、国政において、民主党政権は経済の成長戦略のあり方について真摯な検討を行って、日本経済の今後に向けた方向づけに取り組んでいます。
 こうした動きと軌を一にして、私たち都議会民主党も、首都東京における産業振興をしっかりと行い、国際競争力を高めなければ、日本そのものが沈んでしまうとの危機感を持ち、これまでも施策展開のあり方について着実な提案をしてきたとの自負があります。
 特に、東京のこれからの成長戦略の中で重要な役割を担うことが期待されるアジアヘッドクオーター特区については、我が党は総合特区としての採択など、入り口の段階から国政を含めて幅広く働きかけを行い、その実現に力を入れてまいりました。
 こうした中、先日の予算委員会の我が党からの代表質問の答弁で、知事は現政府には成長戦略がなく、それをもとにした大計などの取り組みもない旨の発言をしているわけですが、そうした部分については極めて遺憾であるといわざるを得ません。
 経済の成長戦略は、単に抽象的な方針を示すだけでは不十分であり、事業展開の考え方をきちんと整理して、効果の高い施策を着実に進めていくことが必要です。そうした意味では、我々は、アジアヘッドクオーター特区は、施策としての完成度を高め、実効性ある事業として展開をされるようしっかり見守ることが必要であると考えております。
 ヘッドクオーター特区の中では、一定の期間内に外国企業を数多く誘致するとの方向を示しています。一方で、東京では既に東京ビジネスエントリーポイント事業で海外企業の誘致を行っています。都のこれまでの施策の成果を踏まえながら、ヘッドクオーター特区は実効性の高い施策としてブラッシュアップを続ける努力が不可欠であると考えます。
 そこで伺いますが、ビジネスエントリーポイントなど、東京都のこれまでの海外企業誘致の現状と今後の取り組みについてお伺いをいたします。

○前田産業労働局長 海外企業の誘致は、産業の活性化につながるとともに、都内中小企業のビジネスチャンスを広げる重要な取り組みであります。このため、都は、平成十七年に東京ビジネスエントリーポイントを設置し、年間六百件を超える相談を通じて、海外企業の東京への進出やその後の定着に必要な情報提供などを実施してまいりました。
 また、東京のすぐれたビジネス環境をPRする海外企業誘致セミナーを開催するとともに、セミナーに参加した企業が都内中小企業と商談を行うため、産業交流展への出展を働きかけるなどの工夫を進めてまいりました。
 今後は、アジアヘッドクオーター特区事業との適切な役割分担を踏まえながら、引き続きビジネスエントリーポイント事業などを効果的に進めてまいります。

○酒井委員 さて、このアジアヘッドクオーター特区に関しては、ビジネス支援の一環としてコンシェルジュを設けることが打ち出されています。コンシェルジュは、ビジネスワンストップサービスの提供や中小企業とのマッチング促進のため、弁護士や会計士に加え、中小企業振興公社などの専門サービスにつなぐことが期待をされています。
 都の計画によれば、平成二十三年度中に実施体制を検討し、二十四年度には丸の内にビジネスコンシェルジュ機能を整備するとしています。アジアヘッドクオーター特区で新たに整備するビジネスコンシェルジュ機能は、エリアを区切って集中的に力を発揮することが求められるわけですから、ビジネスエントリーポイントにはない異なる機能を持たせるべきと考えます。
 現段階での検討の状況や関係機関との調整の進みぐあいについてお伺いをいたします。

○秋山知事本局長 東京ビジネスエントリーポイントは、広く全都を対象に外国企業へのビジネス情報の提供などを行うのに対しまして、アジアヘッドクオーター特区で設置いたしますビジネスコンシェルジュは、新しく東京に進出しようとする外国企業を誘致する手段といたしまして、都区内で展開しようとするものでございます。
 このため、ビジネスコンシェルジュは、規制緩和の特例措置が認められる特区の特性を生かして、日本法人設立に当たっての各種許認可手続の代行などをワンストップで行い、また、誘致した外国企業と国内企業の交流を図るビジネスクラブを設置し、マッチングを支援いたします。
 運営に当たりましては、民間事業者の創意工夫を最大限発揮できる仕組みとするよう、具体的な運営方法の検討や多言語による専門サービス業者との打ち合わせを既に始めているところでございます。
 このコンシェルジュを初めとするビジネス支援機能の充実と、都が提案しております規制緩和の特例措置等を行うことで、外国企業の東京への誘致を積極的に進めてまいります。

○酒井委員 多少苦言になりますけれども、東京都のヘッドクオーター特区は、国への提案段階では極めて低い評価であったというふうに聞いております。ぜひとも計画の質を高め、引き続き気を引き締めてしっかりと取り組んでいただきたいということを強く要望させていただきます。
 次に、観光振興についてお伺いをいたします。
 三月十六日、日本政府観光局が発表した訪日外客数二〇一二年二月の推計値は五十四万八千二百人で、東日本大震災前の二〇一一年二月と比べて一九・三%の減少となっています。
 中国、台湾など、昨年は二月であった旧正月がことしは一月であったため、ことし一月、二月の合計数を昨年一月、二月と国別で比較してみた場合、訪日外客数でトップの韓国が三十四万二千六百人でマイナス三一・五%と大きく落ち込む一方、中国ではプラス八・三%、台湾でもプラス一一・一%など、国によって大きな違いがあります。
 特に一月、二月で前年同月比プラス一〇%となったタイにおいては、洪水被害による悪影響がありながらも、ビジットジャパン事業の展開や空港座席供給量の増加などで、訪日需要が喚起されたことが要因であるともいわれ、マイナス三一・五%の韓国では、放射能汚染に対する不安感だけではなく、円高、ウォン安の影響なども指摘をされております。
 このようなことから、私はこれまで以上に訪日外客数の増減要因などを詳しく調査分析し、統一イメージによる継続的なPRキャンペーンを張るなど、戦略的にシティーセールスを展開していく必要があると考えますが、見解をお伺いいたします。

○前田産業労働局長 外国人旅行者の誘致に当たりましては、そのニーズを的確に把握し、戦略的に施策を進めていくことが重要であると認識しております。
 都はこれまでも、プロモーション実施都市に対する調査や海外市場の成長可能性について検討を行うなど、効果的な施策の展開に向け、国や地域のニーズ把握に努めております。
 来年度からはさらに、東京を訪れます外国人旅行者の行動特性について、国別を初めとしてきめ細かく把握するための調査を実施いたします。
 今後とも、こうした多角的な調査により、国や地域の特性を勘案するとともに、現在審議が進められている東京都観光事業審議会の答申も踏まえまして、戦略的にプロモーションを展開し、外国人旅行者の誘致をさらに推進してまいります。

○酒井委員 次に、歴史的建造物等を生かした観光まちづくりについてお伺いをいたします。
 平成二十二年三月十一日の予算特別委員会の代表総括で、我が会派の増子議員が歴史的建造物を中心とした景観形成事業や歴史的景観形成ファンドの創設などについて質問し、あわせて歴史的建造物等を生かした観光まちづくりについて質問をしてまいりました。
 平成二十三年度予算では、歴史的建造物周辺地域の修景事業等の実施として、足利尊氏ゆかりの名刹である府中市の高安寺及びその周辺地域などが対象となり、歴史や文化を感じさせる景観形成を地元の観光まちづくり団体などと連携して行っていると聞いています。
 私は、こうした歴史的建造物等を生かした観光まちづくりが他の地域でも積極的に実施されることを期待するものですが、当該事業の概要と今後の取り組みについてご見解をお伺いいたします。

○前田産業労働局長 都内には、江戸東京の歴史や文化を今に伝える貴重な歴史的建造物などが多く存在しております。こうした施設を中心に、その周辺地域を整備し、地域の魅力を点から面に広げることは、旅行者がまち歩きを楽しむことができる環境が構築され、観光振興の視点から重要であると認識しております。
 このような認識のもと、都は平成二十二年度から都選定の歴史的建造物について、その周辺地域において地域の観光まちづくり団体が行うエリア整備事業等を支援してまいりました。
 平成二十三年度は、お話のありました府中市の高安寺のほか、墨田区の言問橋周辺で案内板の整備等の取り組みを支援いたしました。
 来年度も、引き続き歴史的建造物等を中心とした魅力的な観光エリアの創出に向け、地域の主体的な取り組みを支援してまいります。

○酒井委員 この事業は、モデル事業として二十四年度に終了する予定ですけれども、事業の成果を検証し、ぜひとも今後の観光まちづくりに生かしていただきたいということをご要望させていただきます。
 次に、江戸城再建についてお伺いをいたします。
 石原知事は、平成二十年六月の本会議で、江戸城再建について、民間の有志の方々から、オリンピックを想定して東京のランドマークをぜひつくりたいとの申し出を受けて、江戸城再建について、民間有志の申し出について都もこれを歓迎し、できれば実現したいと答弁をしていました。
 江戸城寛永度天守は、都立中央図書館にたった一枚の建地割図が残されているだけで、設計図も絵図もなく、どんな城だったのかなぞでした。しかし、城郭復元研究の第一人者といわれる広島大学大学院の三浦正幸教授の協力のもと、残された建地割図から十二枚の復元図が創作され、それをもとにCGが作成をされ、平成二十二年六月、その全容が明らかになりました。
 ただいまパネルにしてお見せをしているのがそのCGでございます。いかがでしょうか。これについては、今、日本の中でも数ある城郭がございますけれども、あの世界遺産になっている姫路城にもまさるとも劣らない、まさに美しく、そして日本の歴史、文化の象徴であるといえるのではないでしょうか。
 世界の主要都市には、必ずといっていいほど偉大なモニュメントがありますが、日本の首都東京には世界に誇れる歴史的、文化的シンボルがありません。大変残念なことです。
 一九六四年の東京オリンピックでは、高速道路の建設によって日本橋の景観が破壊されましたが、二〇二〇年の東京オリンピック招致において、江戸城再建を果たすことができるのであれば、それは日本の大きな観光の目玉になるだけでなく、日本人がみずからの歴史や文化を見詰め直す大きなムーブメントにもつながるのではないでしょうか。
 そこで、東京都としても、観光資源として江戸城再建に向けて積極的に取り組むべきであると考えますが、知事のご見解をお伺いいたします。

○石原知事 そのお話は、私が知事に就任する以前からあちこちでうわさを聞いております。私の運輸省の在任中のときのある局長が、今、その推進団体のリーダーになっているようですけれども、聞きますと、完全な復元、つまり木製、あれは振りそでの火事で焼けちゃったわけですけれども、見てくれは昔のままでも、木製でやるのとコンクリートで、大分値段が違うんですよ。
 私はコンクリートでいいと思うんですけれども、中には六十何メートルの建物が建つと、皇居を見おろすことになる云々という人もいますけれども、別に屋根越しで見て、人の動きが中が見えるわけじゃありませんし、それはいろいろな形で遮へいしたらいいと思います。
 私は、基本的にはぜひやってみたいな、好ましいなと思っておりますが、ただ、東宮御所のあります、あそこは宮様団地というんでしょうか、園遊会もやりますけれども、あの前の青山通りに高層ビルが建ったときに、三木内閣のときでしたか、園遊会で三木さんと三木夫人がえらい心配して、こんな高い建物が目の前に建って云々といっていましたが、別にそれで何も起こっていませんし、今の皇居、特に天皇のお住まいとは大分離れていますから、まあ金さえ--やったらいいんじゃないですか、だれかいつの時代に。オリンピックに間に合うかどうかわかりませんがね。
 大体幾らなんでしょう。松本城は完全に木製だそうですな、聞きましたら。白鷺城も修復、修復して見事に残っていますけれども、一回焼けちゃったんですから、コンクリートでいいじゃないですか。中はちょっと適当に飾って、それでも私はいいと思います。
 皇居を見ますと、外人がいつも妙にいうのは、皇居の印象が、夜真っ暗で何が住んでいるかわからなくて不気味だと。一部ライトアップしたらどうだと、二重橋でもやらせてもらえぬかというと、宮内庁がかたくなで、非常にバリアが強くてできない。
 ただ、私は、白い塀でも橋だけでもいいから、夜にライトアップしたらいいじゃないかと思うんですけれども、とにかく深夜あそこを通ると、こっち側には幾らか明かりがあっても、皇居だけは真っ暗でしんとしているというのは、外国人から見て観光という以前に非常に奇異な印象を受けますので、私はやっぱり一角に修復した江戸城がうまいライトアップで浮かび上がるというのは、東京としても歓迎すべき光景だと思います。これは、いつの時代にだれができるかわかりませんが、民主党も頑張って金を集めてくださいよ。

○酒井委員 今、知事から前向きなご答弁をいただいたと思います。都心の静寂の中に江戸城がライトアップされるという姿も大変美しいものであろうかと思いますし、これはあくまでも私の私見でありますけれども、皇居の中につくるということであれば、なかなか民間の人をその中に入れるということに関しては、多分、宮内庁等も渋ると思うんですね。であるならば、うちの会派の中でも一部議員と話しているんですけれども、あのような外国の模作したような迎賓館ではなくて、江戸城をどおんと建てて、海外のお客さんに来ていただけるような、そういった施設に仮にするということも、これは日本の文化、うちは今回、オリンピックで大江戸ルネッサンスということをいわせていただいているわけですけれども、そういった外国のお客さんが来るような施設に江戸城をどんとして、天皇陛下にもそういったところに中に入っていただくと。
 そして、我々は外からすばらしい建物を見上げるということがあってもよろしいのではないかというふうに思います。民主党も頑張れといわれましたので、この点については政府にも働きかけをしていきたいなというふうに思っております。
 ぜひ知事にもお力をおかしいただきたいということをお願い申し上げ、次の質問に移らせていただきたいと思います。
 次に、無電柱化による魅力あるまち並みの創出についてお伺いをいたします。
 無電柱化については、「二〇二〇年の東京」への実行プログラムでも幾つかのメニューが記載され、例えば、面的な無電柱化の推進では、東京スカイツリー等の良好な景観が求められる観光地周辺や八王子駅及び立川駅頭の人通りが多く美しいまち並みが求められる主要駅周辺において、面的な無電柱化を推進するなどが明記されております。
 また、多摩地域、周辺区部での取り組みとして、平成二十四年度四十キロメートル、二十五年度四十一キロメートル、二十六年度三十九キロメートルなどと記されていますが、引き続き、無電柱化を進めるためには、経営計画の見直しが迫られている東京電力などの関係者と連携していく必要があります。
 そこで、社会情勢が大きく変化している中で、東京都における無電柱化事業に対する今後の取り組みについて見解をお伺いいたします。

○村尾東京都技監 無電柱化事業は、都市防災機能の強化、安全で快適な歩行空間の確保、良好な都市景観の創出を図る上で重要な事業であります。
 今後とも、必要な財源を確保しながら、国や電線管理者と連携して無電柱化を推進し、高度防災都市の実現に向け積極的に取り組んでまいります。

○酒井委員 次に、サービス産業の振興についてお伺いをいたします。
 昨年二月二十三日の予算特別委員会の代表質疑で、私はサービス産業の振興について質問をいたしました。
 このような中、二月七日に発表された東京都産業振興基本戦略素案では、サービス産業の振興が商店街や農林水産業、観光産業と並んで地域産業の一つとして明確に位置づけられたことは、率直にいって評価するものです。
 昨年も申し上げましたが、我が国日本は、GDPで中国に追い抜かれ、今後の人口減少社会の中でその地位がますます低下していくことが予想されており、私たち一人当たりのGDP、すなわち労働生産性を高めていくことが極めて重要になってまいります。
 また、第三次産業が都内総生産の九割近くを占めるなど、全国に比べても、より顕著な第三次産業化が見られる東京都こそ、率先してサービス産業の振興策に取り組む必要性を訴えてまいりました。
 そこで、今回、改めて東京都産業振興基本戦略素案の中にサービス産業の振興を位置づけたことの問題意識について、見解をお伺いいたします。

○前田産業労働局長 産業振興基本戦略は、都政の新たな長期ビジョンである「二〇二〇年の東京」を産業振興の面から推進するため、今後十年間の都の産業振興に関する基本的な考えや施策の方向性を取りまとめたものでございます。
 都民経済計算によれば、サービス産業を含む第三次産業は都内総生産の八七%、都内就業者数の八一%を占め、いずれも年々上昇傾向にあり、東京におけるサービス産業の存在感は高まっております。
 また、人口や経済活動が集中する大都市では、新たなサービスがビジネスとして成り立つ可能性が大きいことから、サービス産業は、東京の強みを生かせる分野の一つでございます。
 このため、同戦略において、今後の産業振興の方向性の一つとしてサービス産業の振興を位置づけたものでございます。

○酒井委員 私たちは、今後成長が見込まれる医療や福祉、介護などの分野における労働生産性を上げていくためには、環境、エネルギーといったグリーンイノベーションと同様、医療、福祉、介護などの分野におけるライフイノベーションに向けて技術革新を誘発していくべきだと主張し、東京都も、これらをテーマに中小企業の技術開発や事業化などを支援していくことや新たな機器等の研究開発を支援していくことなどを答弁いたしました。
 そこで、私は、基本戦略素案にもあるように、医療や福祉、介護などを初めとするサービス産業の中で、これから発展が期待される分野などに照準を定め、新サービスの創出を検討すべきではないかと考えますが、見解をお伺いいたします。

○前田産業労働局長 今後成長が期待される産業分野で、都内の中小企業が新サービスを創出する取り組みを支援することは重要でございます。
 都は、既に平成二十三年度から、技術開発を伴う新サービスの創出に係る支援を実施しております。
 今後は、お話の健康、福祉、観光などサービス産業の中でも、これから発展が期待される分野や都民生活の向上や都市課題の解決に寄与する分野において、企業や起業家等による新サービスの創出を促進するための施策を検討してまいります。

○酒井委員 さらに、昨年の質問では要望にとどめておりましたけれども、商品知識の豊富さや接客マナー、もてなしの心など、日本のサービス産業の中には世界でも通用するビジネスモデルがあるとして、サービス産業の海外販路開拓も含め、今後の施策展開の検討を求めてきました。
 基本戦略素案でも、宅配便や美容院など、日本式の細かいサービスが諸外国に受け入れられる事例があるとしており、こうした例からも、サービス業が諸外国でも市場を獲得できる可能性があるものと考えています。
 そこで、こうした市場の現状を把握するとともに、ビジネスモデルの知的財産化や海外展開支援について、サービス産業への支援策を拡充していくべきと考えますが、見解をお伺いいたします。

○前田産業労働局長 東京のサービス産業の担い手であります中小企業が、海外市場でその力を発揮できるよう適切な支援を行うことは必要でございます。
 都は、海外での販路開拓を目指す中小企業に対しまして、既に情報サービスの分野で現地の市場の動向等について、情報の収集や提供を行い、相談にも応ずる体制を整備しております。
 また、東京都知的財産総合センターでは、海外でも通用するすぐれたビジネスモデルを知的財産として保護するための相談にも対応しております。
 都内で存在感を強めるサービス産業について、中小企業による海外展開を支援するとの基本的な考え方に沿って今後も取り組みを進めてまいります。

○酒井委員 次に、雇用就業対策についてお伺いをいたします。
 ことしの成人が生まれた平成三年から四年はバブル崩壊の時期で、その後、日本は長らく低迷が続いております。今の若者はよい時代を知らず、生きにくささえ感じています。
 かつて、「大学は出たけれど」という歌がありましたが、社会の入り口で門戸を閉ざされた若者が多数存在をしています。
 東京都は、私たちの代表質問に対して、未就職卒業者緊急就職サポート事業の規模を千人に拡大することや、今後成長が見込まれる産業分野における就業支援を新たに実施することなどを答えており、私はこうした東京都の取り組みを評価するものです。
 私は、さらにより多くの若者に希望を与えるためにも、東京都は雇用就業施策を積極的に展開し、若者の就業を促すべきと考えますが、見解をお伺いいたします。

○前田産業労働局長 未来を担う若者が職業的自立を果たせないことは、本人にとって不幸なばかりか、社会的にも損失であります。
 この問題の本質的な解決のためには、国が実効性のある経済対策を進め、雇用を創出することが不可欠でありますが、都としても、若年者対策を柱の一つとして雇用就業施策を進めてまいりました。
 これまでも都は、意欲ある若者に対し、東京しごとセンターにおいてきめ細かく就業を支援しているほか、大規模な合同就職面接会を開催し、中小企業とのマッチングの機会を提供するとともに、未就職卒業者緊急就職サポート事業によりまして、既卒者の正規雇用化を支援してまいりました。
 来年度は、この事業の拡充や成長分野に就職先を重点化した取り組みの開始に加え、新卒向けセミナーの充実など、若者の就業支援をさらに強化してまいります。

○酒井委員 どのような時代であっても、若者は次の時代をつくってまいります。これからの若者は、世界との熾烈な争いの中で、たくましく日本を支えていかなければならない世の中になってきております。そうした若者を育てていくために、ぜひとも教育から就労支援まで、力強く若者を支えていただきたいということをご要望申し上げます。
 さて、若年者雇用に関する取り組みの内容は今ご答弁いただいたとおりですが、先日三月十九日に内閣府から非常にショッキングな推計が示されました。
 一昨年の春に卒業した大学生、専門学校生で就職できなかったり、就職できたとしても三年以内に離職してしまった人の割合が五二%、つまり二人に一人が就職できず、仮に就職できたとしても早期離職してしまうことが明らかになりました。
 国においては、この原因を学生の大企業志向などと見定めて、ことし六月までにミスマッチの解消やインターンシップの拡充など、総合的な対策を打ち出す予定だと聞いており、私は東京都としても、若者の定着支援に向けた取り組みを進めていく必要があると考えますが、見解をお伺いいたします。

○前田産業労働局長 大卒者の就職後三年以内の離職率は、平成七年三月の卒業生以降、一貫して三割以上となっているなど、若者が就職先を早期にやめる傾向が続いております。
 企業にとりまして、新卒者を採用し、戦力として育成するためのコストは高く、若者の早期退職は大きな損失となる一方、また、若者自身の職業能力の蓄積の点からも問題であります。
 このため、都ではこれまで東京しごとセンターにおきまして、キャリアカウンセラーが若者の相談にきめ細かく対応し、職場への定着を支援してまいりました。
 また、若者の職場定着を支援するセミナーを開催し、職場で抱える課題をグループワーク等を通じ解決を図ることで、働き続けることへの意欲向上を促しております。
 今後とも、こうした取り組みにより若者の職場定着を支援してまいります。

○酒井委員 この早期離職に関しては、精神論でいえば甘ったれんじゃねえと思うわけですけれども、しかし、そうはいっていても、これはしっかりとサポートしなければ、今の若者は対応できないということでもありますので、ぜひとも東京都としても取り組みをしていただきたいというふうに思います。
 また、東京都が実施をしている紹介予定派遣制度を活用した未就職卒業者緊急就職サポート事業は、卒業後三年程度以内の既卒者を対象に行っておりますけれども、ここ数年来の雇用形態の多様化によって、就職している若年層であっても、非正規による雇用の割合が非常に高くなっています。
 東京都は、平成十八年度から人事制度の整備など、処遇改善に取り組む中小企業に専門家を派遣する非正規労働者雇用環境整備支援事業を実施していますが、企業の中には内部登用という形で、非正規雇用の正規雇用化を図っているところもあり、私はこうした制度の導入を促していくことで、幅広く若年者の正規雇用化に取り組んでいくべきだと考えています。
 今後、東京都はどのように取り組みをしていくのか見解をお伺いいたします。

○前田産業労働局長 意欲と能力を有し、正規雇用を望みながらも、やむなく非正規で雇用された若者が安定的な雇用につくためには、今お話しの正社員への内部登用制度の導入を企業に促すことも有効な手段の一つであります。
 このため、都はこれまでも、非正規労働者の雇用環境整備に意欲的に取り組む中小企業に対して専門家を派遣し、人事制度の改善等について助言や提言を行ってまいりました。平成二十二年度までに百五十四社がこの事業を活用してさまざまな改善に取り組んでおります。このうち、正社員への転換制度は六十九社が導入しております。
 また、こうした各企業の取り組み事例につきましては、都のホームページなどにより広く紹介し、普及啓発も図っております。
 来年度は専門家派遣の規模を拡大し、非正規労働者の雇用環境整備への支援を強化いたします。

○酒井委員 この間、都内の労働相談件数は五万件台を推移し、中でも解雇に関する相談件数が年々ふえ続けるなど、相談内容はより深刻になっています。こうした労働問題を防ぐためには、まず、すべての職場で適正な労働環境を確立させることが必要であります。
 そのためには、合理的な理由のない解雇や行き過ぎた解雇を防ぐための解雇権乱用の法理を労使に周知徹底することや、労働基準法、労働契約法の趣旨を事業主に周知し、労働契約の基本と変更手続について啓発をしていく必要があります。
 また、解雇の問題に限らず、労働問題そのものの原因は、就業規則を初め、労働関係法令によって定めなければならない規定が未整備であることや、仮に整備されていたとしても、古かったり、労使双方の理解が不十分だったりということが想像されます。
 現在、東京都では労働関係法令の周知啓発に取り組んでいるところですが、適正な労働環境を確立するための取り組みについて見解をお伺いいたします。

○前田産業労働局長 労働問題の発生を未然に防止するとともに、適正な労働環境を確保するためには、労働者、使用者の双方が労働関係法令を十分に理解していることが重要でございます。
 このため、都は、これまで労使双方に対し、セミナーの開催やeラーニング、労働法の基本的な知識に関する冊子、パンフレットの作成、配布を通じて、法令の趣旨とその遵守について周知を図っているところでございます。
 今後は、こうした取り組みを着実に実施するとともに、使用者団体や企業、労働組合などの要請に応じてセミナーの講師を派遣するなど、よりきめ細かな普及啓発に取り組んでまいります。

○酒井委員 次に、教育施策についてお伺いいたします。
 初めに、教員の多忙感解消に向けた取り組みについてお伺いいたします。
 今月、都教育委員会から、小中学校の校務改善推進プランが出されました。かねてから私たち都議会民主党は、教員の多忙感解消についての取り組みを求めてまいりました。
 校務改善の推進は、副校長を初めとする教職員の多忙化を解消することで、教職員が生徒一人一人と向き合う時間を確保し、指導の充実化を図ることが目的であります。
 複数のモデル校では、業務改善計画を実施した結果、各教職員の子どもたちに対する指導内容に変化はあったのか、また、業務を効率化させたことによる学校全体の教育内容に対する影響、例えば何か新しい取り組みが行われたとかいうような新たな指針やアイデアがふえたといった影響があったのかどうかお伺いいたします。

○大原教育長 都教育委員会は、今年度、二十の小中学校をモデル校として指定し、経営支援部の設置や経営業務を専任する主幹教諭の配置など、さまざまな取り組みを区市町村教育委員会や学校と連携して実施いたしました。
 例えば、経営支援部を設置し、教職員の役割分担を明確化したモデル校では、副校長への業務の集中が緩和され、副校長が教職員の人材育成や地域連携の強化などの本来業務に一層力を注げるようになりました。
 その結果、副校長が授業観察回数をふやして、直接教員の指導を行ったり、地区の重点施策であった幼、小、中の連携教育の学習内容の充実を図ることができました。
 都教育委員会は、こうした校務改善の取り組みを通じて、教職員の育成や教育内容の充実に努めてまいります。

○酒井委員 このプランの中では、ただいまご答弁にもありましたとおり、これまで副校長に集中していた業務を軽減させるため、主幹教諭、事務職員等で構成される副校長直轄の組織、経営支援部の設置を行いました。
 その中で、専任の支援職員が小中学校を管理する市区町村教育委員会の判断のもとに、必要に応じて設置されることとなりました。
 私たち都議会民主党は、平成二十一年の文教委員会で、当時の島田委員がスクールセクレタリーという学校専門職が一人から複数配置されているという欧米の小中学校の例を取り上げ、導入の提案をさせていただきましたが、そのようなシステムが経営支援部に設置されたことは評価をしたいと思います。
 さて、このプランには、経営支援部のシステムがモデル校で実施した検証結果が出ています。副校長に集中していた業務がこの経営支援組織で分担され、副校長の負担軽減につながったという効果が出た一方、経営支援組織の構成員の負担が増した側面があるという課題が挙げられました。
 そこで、業務の全体量自体を削減していくことも必要と考えます。この業務はなぜ行うのか、本当に行う必要があるのかを考え、一つ一つ業務を整理して見直しを図り、選択と集中による業務の効率化を組織的に実施していく必要があると思われます。
 この点について、各教職員への意識づけを含めて対応の見解をお伺いいたします。

○大原教育長 学校において校務改善を着実に推進するためには、分掌組織に責任と権限を与え、教職員の役割分担を明確化し、校務のスケジュール管理を徹底することが重要でございます。
 その上で、副校長のリーダーシップのもと、各教職員にみずからの業務の目的を理解させ、見通しを持って仕事を進めさせることで、教職員一人一人が、みずからの業務の効率化に主体的に取り組めるようになると考えます。
 都教育委員会としても、今後、学校に対して行う調査や配布物の縮減を行いますとともに、時間講師の採用業務を省力化するための情報提供システムを構築するなど、ICTの活用を進め、業務の効率化を支援してまいります。
 こうした意識改革や業務改善により、副校長や教職員が子どもと向き合える時間を十分に確保してまいります。

○酒井委員 多忙感解消の取り組みは、都及び市区町村教育委員会、学校が連携して進めることが重要と考えますが、最後に、このプランについて、来年度どのような活用がなされていくのかお伺いいたします。

○大原教育長 今回公表いたしました小中学校の校務改善推進プランは、教職員がより組織的に校務を行い、効率的な学校運営を実現することによって、教職員が子どもと向き合える時間を十分に確保し、さらなる教育の充実を図る目的で策定したものでございまして、学校、都及び区市町村教育委員会が今後連携して取り組むべき基本的な実施方針でございます。
 本プランに基づきまして、来年度は約二百四十校の小中学校が経営支援部を設置するなど、各学校が区市町村教育委員会と連携して校務改善を実践してまいります。
 都教育委員会は、学校、都及び区市町村教育委員会の代表者で構成いたします校務改善推進会議を新たに設置して、実践例を評価し、効果が高い取り組みを都が発行するメールマガジンや校長会、副校長会で紹介するなどによりまして、全公立小中学校の校務改善を積極的に支援してまいります。

○酒井委員 次に、家庭と地域の教育力向上についてお伺いいたします。
 昨年の第四回定例会の代表質問にて、我が会派は、家庭と地域の教育力向上の重要性を石原知事に訴え、知事もその重要性から、今後の教育再生・東京円卓会議で議論していく旨、述べられました。
 一方、都教育委員会においては、東京都教育ビジョン(第二次)にて、家庭や地域の教育力向上を支援することを視点に、地域とともに育てるという目標を掲げています。
 家庭への支援については、「二〇二〇年の東京」に学校と家庭の連携推進事業が掲げられており、今年度においては、新たに学校生活において課題の見られる児童生徒とその保護者に対する支援員を配置したと聞いております。
 児童生徒の健全育成を推進するために、学校の児童生徒や保護者への対応を支援する事業である家庭と子どもの支援員の現状と今後の予定についてお伺いいたします。

○大原教育長 複雑多様化し、教員だけでは児童生徒の問題行動の解決が難しい状況では、家庭や地域の実情に応じた支援ができる人材の協力を得ることが必要でございます。
 このため、都教育委員会は平成二十三年度から、問題解決に向けての相談のきっかけづくりや学校と家庭を結ぶパイプ役を担う家庭と子どもの支援員を小学校四十九校、中学校八十一校に配置しております。
 この家庭と子どもの支援員には、保護司、民生児童委員、警察OBや心理学系の大学生などの地域の人材や専門性のある人材を活用しており、学校ごとに週三回、一日四時間、年間三十週の配置を基本としております。
 都教育委員会は、家庭と子どもの支援員の配置校の拡大を予定しておりまして、今後とも、地域の人材等を活用した児童生徒の健全育成を推進してまいります。

○酒井委員 地域の教育力向上においては、学校を地域全体で支援することを通じて、地域の教育力向上につなげていくことが重要であると考えています。
 現在、地域全体で小中学校の教育活動を支援する学校支援ボランティア推進協議会の設置が取り組まれておりますけれども、まだ設置されていない市区町村もあることから、この取り組みを一層推進していくことが求められます。
 各市区町村における地域の状況を考慮する必要があるかと思いますが、都教育委員会として、本事業を今後どのように取り組んでいくのかお伺いいたします。

○大原教育長 学校支援ボランティア推進協議会は、平成二十三年度には、都内二十二区市の小学校四百四十二校、中学校二百一校で設置され、授業の補助のほか、読み聞かせ、登下校の安全確保などの活動を行っており、地域全体で学校支援の活動を推進しております。
 また、区市町村によっては、従前から地域の実情に応じて独自の方法でボランティアを活用しているところもございます。
 都教育委員会は今後とも、地域人材と学校の調整を行う地域コーディネーターの養成や先進的な活動事例の紹介などを通じまして、本協議会の拡充、拡大を図りますとともに、区市町村独自の取り組みに対しても支援いたしまして、地域における多様な学校支援活動を促してまいります。

○酒井委員 学校と地域の連携においては、教員自身が地域の活動に入り込み、つながりをつくっていくことが、結果として教員の社会性向上にもつながり、重要であると考えます。
 文科省が提示している小中学校の初任者研修目標には、研修項目、社会奉仕体験活動の中に、学校や地域社会の実態及び児童生徒の発達段階に基づいた活動を行う上で必要な知識を身につけるという目標が掲げられています。
 このような新任研修のプログラムの充実を行い、教員の地域活動への参加を促していくべきと考えますが、見解をお伺いいたします。

○大原教育長 都教育委員会では、教員の初任者研修を実施するに当たりまして、ボランティア活動の体験など、地域活動に参加できる機会を設定するよう、その実施細目に定めております。また、校内における研修で学ぶ内容として、地域行事の理解と参加を実施の手引に示しているところでございます。
 そのため、初任者は、所属する学校の実態や自己の課題に応じまして、地域の清掃活動、地域図書館での資料整理、青少年育成団体が主催するスポーツ祭りや夜間の地域パトロールなど、地域と連携した活動に参加しているところでございます。
 今後とも、区市町村教育委員会と連携いたしまして、初任の教員に、体験を通して地域連携の重要性を学ぶことができるように促してまいります。

○酒井委員 次に、新しい公共についてお伺いいたします。
 私たち都議会民主党は、これまで代表質問等で新しい公共型社会の実現に向けた取り組みの推進を求めてまいりました。
 今年度、都は国からの交付金を受け、新しい公共の拡大と定着を図ることを目的とした新しい公共支援事業を開始し、来年度までの二年間で実施予定ですが、この支援事業の一つである新しい公共の場づくりのためのモデル事業の支援についてお伺いいたします。
 都は、昨年七月からモデル事業の募集を行ってきたところですが、これまでどれぐらいの応募があり、何件選定されたのか、また、今後の見込みについてもお伺いいたします。

○井澤生活文化局長 今年度から二カ年の予定で取り組んでおります新しい公共の場づくりのためのモデル事業は、現時点で二回の応募と選定作業を終えておりまして、応募総数は四十八件、選定した事業は二十九件となっております。
 事業額の合計は約三億三千三百万円であり、計画額の約八六%に達しております。
 本年二月に三回目のモデル事業の応募を締め切り、現在、選定作業を進めておりますが、最終的には計画額をほぼ達成できる見込みでございます。

○酒井委員 現在、二回目の選定を終え、事業数が二十九件ということは、多くのNPO団体が集積する東京都においては多少少ないようにも感じますが、三回目の選定で計画額をほぼ消化できる見込みとのことでございます。
 一方、モデル事業の内容に関しては、内閣府のガイドラインの定めでは、行政が独占してきた公を市民、企業、NPO等に開くため、その先進的な取り組みについて、NPO等と地方自治体との協働による事業として実施するとされています。
 モデル事業の選定は、第三者機関として設置された運営委員会が行い、東京都が決定することとなっていますが、これまでどのようなモデル事業が選定されてきたのかお伺いいたします。

○井澤生活文化局長 モデル事業は、行政とNPO等が協働して、地域の諸課題解決のために行う先進的な取り組みを、新しい公共支援事業運営委員会が評価した上で選定しております。
 具体的には、例えば高齢者や若い母親などの交流促進及び地元商店街による買い物弱者支援などの拠点となるまちなか協働サロンの運営や、あるいはコマツナ、ウドなどの江戸東京野菜の魅力を地域に伝える役割を担う江戸東京野菜コンシェルジュを育成し、派遣することによって、教育現場等での食育や農産物の地産地消を推進する取り組みなど、地域に根差した意欲的な事業が選定されております。

○酒井委員 新しい公共にふさわしい先進性のある事業が選定されてきたということですが、これらは環境、教育、福祉やまちづくりなど、地域の諸課題の解決に取り組むNPO等が参考にすべきモデルとしての事業となっていきます。それだけに、その成果や課題を幅広く他のNPO法人等に明らかにし、今後の活動に役立ってこそ意味があるといえます。
 そのためには、実施されたモデル事業を適切に評価することが大変重要であると思います。国もガイドラインの中で、新しい公共支援事業本体は二カ年度の事業としつつも、事業評価については平成二十五年九月三十日まで実施できるとしています。
 そこで、東京都においては、モデル事業の終了後、どのように事業評価を行っていくのかお伺いいたします。

○井澤生活文化局長 都は、国が定めたガイドラインに準拠して支援事業に取り組んでおり、モデル事業が終了した後、実施主体がまず自己評価し、その上で新しい公共支援事業運営委員会が事業評価を行うことになっております。
 今定例会に提案しております東京都新しい公共支援基金条例の一部改正により、条例の失効日を平成二十五年九月三十日まで延長し、事業成果の取りまとめや評価を行うための期間を確保いたします。
 今後、モデル事業の成果が市区町村やNPO等の活動に資するものとなるよう、運営委員会において事業評価の手法等を検討し、効果的な事業評価の実施に努めてまいります。

○酒井委員 次に、二〇二〇年オリンピック・パラリンピック招致についてお伺いいたします。
 先月、東京招致委員会は開催計画書に当たる申請ファイルをIOCに提出しました。二〇二〇年オリンピック・パラリンピック競技大会の招致には、ローマが断念しましたが、東京を初め、スペインのマドリード、トルコのイスタンブール、カタールのドーハ、アゼルバイジャンのバクーの五都市が現在名乗りを上げている状況です。
 さて、ことしの五月二十三日には、カナダのケベックでIOC理事会が開催され、立候補都市が選定される予定です。立候補都市の選定に当たっては、作業部会を設置し、各都市が提出した申請ファイルに加え、客観的な事実やデータに基づき、インフラの整備状況など、各都市の開催能力を比較し、絶対評価で点数化するとのことです。
 IOCのルール上、申請都市が他都市との比較はできないとのことですが、二〇二〇年オリンピック・パラリンピック競技大会を日本に招致するに当たり、日本や東京が持つアピールポイントは、どういったところが挙げられるのかお伺いいたします。

○細井スポーツ振興局長 二〇二〇年東京大会は、一千三百万人の人口を有する大都市の中心で大会を開催することにより、選手や観客などが高度に発達した都市の利便性を享受しつつ、世界に誇る食文化や伝統工芸、おもてなしの精神など、東京、そして日本の魅力を体感できる大会となります。
 今後の招致活動に当たりましては、こうした点をアピールするとともに、日本の強い経済力、そして東京の盤石な財政力、高品質かつ豊富な宿泊施設、公共交通機関を初め、充実した輸送インフラなどを特に強調してまいります。

○酒井委員 IOC委員や国際競技連盟を初めとした海外の大会関係者に、日本や東京の持つ強みをアピールしていくことは大変重要でもあると思います。
 また同時に、都民、国民に対して日本や東京の優位性をアピールすることを通じて、二〇二〇年大会を日本で開催する実現可能性が高まっていることを認識していただくことで、世論の盛り上げにもつながっていくものと考えられます。
 よって、日本や東京の持つ強みの部分について、掘り下げて質問をさせていただきます。
 初めに、ヨーロッパを初め、世界的な経済危機に見舞われる中、今日の状況を考えてみますと、今回の招致では国や申請都市の経済力、財政力が重要視されるのではないかと考えます。
 この経済力や財政力という点において、日本や東京が持つ強みはどのように考えているのかお伺いいたします。

○細井スポーツ振興局長 IOCは、開催都市選定に当たり、円滑かつ確実な大会運営を担保するために、開催都市や開催国の経済力、財政力を大変重要視しております。
 世界有数の経済大国である日本のGDPは、二〇〇九年で約四百七十兆円と非常に大きく、そのうち都内総生産は約八十六兆円で、日本全体の約二割を占めております。
 また、東京都の予算は一般会計、特別会計、公営企業会計を合わせますと約十二兆円にもなり、ノルウェーなどの国家予算にも匹敵する規模となっております。
 さらに、都は大会開催に関連する社会資本等の整備に要する資金に充てるため、既に四千八十八億円の大会開催準備基金を積み立てておりまして、万全の体制を整えているところでございます。

○酒井委員 次に、宿泊施設についてお伺いいたします。
 ロンドン・オリンピックにおいては、大会関係者用に多くの客室が押さえられたため、観戦客用のホテル料金が通常の四倍から五倍にも高騰している状況と聞いております。こうしたことからも、大会開催に当たっての宿泊施設は重要な要素であり、立候補都市の選定においても、宿泊施設の評価ウエートが最も高いと聞いております。
 そこで、東京の場合には数多くのすぐれたホテルがあると思いますが、大会開催に伴う宿泊ニーズにどのように対応していくのかお伺いいたします。

○細井スポーツ振興局長 IOCは、大会開催期間中、IOC委員や国際競技連盟などの大会関係者用のホテルとして、四万室を確保することを求めております。
 東京では、大会の中心である選手村から半径十キロ圏内に、IOCが求める客室数の倍以上に当たる八万六千室、半径五十キロ圏内には十四万室を超える豊富な客室を有してございます。
 また、最高級ホテルや旅館など、多種多様なタイプが存在しており、そのサービスレベルは世界的に見ても非常に高いものでございます。
 このように、東京の宿泊施設は、質、量ともに充実しておりまして、大会関係者や観客のあらゆるニーズを十分に満たすことができるものと考えております。

○酒井委員 次に、輸送インフラについてお伺いいたします。
 北京オリンピックでは、二百三カ国から一万人以上の選手が訪れ、また大会関係者や観戦客を含めると、海外から約五十万人以上が来訪したとのことです。
 ロンドン・オリンピックにおいても、鉄道や道路での混雑が予想されており、ボリス・ジョンソン市長は、ロンドン市民に対し、オリンピック開催中は交通ラッシュを緩和するために、パブに寄ってから帰ろうと呼びかけをしていると聞いております。
 オリンピック・パラリンピックでは、国内外から多くの大会関係者や観客が来日することが予想されますが、二〇二〇年東京大会の輸送計画には、どのような強みがあるのかお伺いいたします。

○細井スポーツ振興局長 東京は、一日に二千五百七十万人を輸送する鉄道網などの公共交通機関を初め、世界に誇る輸送インフラを有してございます。
 二〇二〇年東京大会では、大都市の中心部で開催されるというメリットを生かしまして、充実した公共交通機関を最大限に活用することで、多くの観客を安全かつ定刻どおりに輸送することが可能でございます。
 また、ほとんどの競技会場が選手村から半径八キロ圏内に配置されるコンパクトな会場配置を生かしまして、選手や大会関係者が短時間でストレスなく移動できる輸送環境を実現することができるものと考えております。

○酒井委員 また、メーンスタジアムとなる国立霞ヶ丘競技場も一つの大きなアピールポイントになるのではないかと思います。
 来年度の国家予算に、国立競技場の大規模改修に向けた調査費として一億円が計上されました。こうして国家プロジェクトとして動くことの意義が非常に大きいこと、また、一九六四年東京オリンピックのレガシーを引き継ぐということなど、さまざまなメーンスタジアムのアピールすべき点があるかと思われますが、ご見解をお伺いいたします。

○細井スポーツ振興局長 一九六四年東京オリンピックのレガシーでございます国立霞ヶ丘競技場が、国策として八万人収容の最新鋭の施設に建てかえられることは、二〇二〇年東京大会招致が国を挙げたオールジャパン体制の取り組みであることを明確に裏づけるものとなります。
 また、大都市の中心で開催される大会を象徴する立地にあり、交通アクセスのよさによって観客の利便性が向上するとともに、神宮外苑や明治公園と一体となった豊かな環境の中で大会運営を行うことが可能となります。
 霞ヶ丘競技場を含む神宮地区一帯は、「二〇二〇年の東京」計画においても四大スポーツクラスターの一つと位置づけられており、にぎわいあふれるエリアとしての将来の利活用に大きな期待が持たれることは、二〇二〇年大会のレガシーとして非常に大きなアピールポイントとなるものと考えてございます。

○酒井委員 こうして掘り下げて確認してまいりますと、多くの東京の強みがあることがわかり、招致獲得も決して夢ではないと強く感じてまいります。ぜひこのような経済力や充実した都市インフラなどをベースとした東京の持つ高い大会開催能力を積極的にアピールしていただきたいと思います。
 なお、メーンスタジアムである国立競技場に関しては、先日の総括質疑において知事は、国立競技場を再生するということは国事であり、継続性の確保という点から国立競技場の整備は閣議決定するよう努力してほしい旨、述べられました。
 知事、ぜひお聞きいただきたいと思います。私たち都議会民主党は、速やかに現政権に対し知事の要望をお伝えし、現在も動いているところでございます。それほど国立競技場については重要視しておりますので、改修が必ずや実現するものとなるよう、今後とも全力で現政府に対し働きかけを行ってまいりたいと考えております。
 次に、こうした強みがある一方、セキュリティー面においては、昨年の東日本大震災で被災した影響と、首都直下地震発生の可能性があるとうたわれている中で、日本は本当に安全なのかといった地震に対する不安の声が聞かれます。
 こうした不安を確実に払拭していくことは、オリンピック・パラリンピックの有無にかかわらず、都として全力で取り組んでいくべきものであります。中には、この地震のリスクを理由に、オリンピック・パラリンピック開催の是非を問う論調もありますが、むしろ、日本は地震国であるけれども、自国の世界最高レベルの地震対策技術を駆使し、万全な対策のもとで大会を開催できるということを積極的に世界にアピールすべきと考えますが、都の見解をお伺いいたします。

○細井スポーツ振興局長 東京都は、都市の防災性向上のため、世界的に見ても最高水準の耐震技術による建物の耐震化や、木密地域の不燃化など、実効性のある取り組みを推進しております。
 二〇二〇年東京大会の開催に当たっては、競技会場などの大会関係施設の地震対策として、耐震性能の向上はもとより、免震や制震システムなど、日本の持つ最先端の耐震技術を積極的に導入し、万全の対策を講じていく考えでございます。
 このような地震国日本ならではの研究と実績に裏づけられた具体的な取り組みを実践することで、安全な大会運営が可能となることを、国際スポーツ会議など招致活動のあらゆる機会をとらえてアピールしてまいります。

○酒井委員 ことし七月末から開催されるロンドン五輪が迫ってきております。開催期間中のジャパンハウスで許されている東京招致のPRは、招致成功のためにも大変重要であると考えます。
 石原知事には、ぜひこの開催期間にロンドンに出向いていただき、東京の顔、日本の顔として積極的なトップセールスを行っていただきたいと考えております。
 また、知事は先日の予算特別委員会にて、JOCが先頭に立って、投票権を持つIOCの委員に対して働きかけてもらいたい、その際、東京の強みをアピールできる非常に存在感のある、馬力のある国際的な人物を活用するなど工夫を凝らすべきとおっしゃっていましたけれども、ぜひ知事にもそうした多くのトップの方々に働きかけをしていただき、ともにロンドンで積極的なトップセールスを行っていただくよう要望いたしまして、次の質問に移らせていただきたいと思います。
 次に、福祉保健施策についてお伺いいたします。
 がん検診受診率向上、精度管理について伺います。
 がん検診は、二〇〇七年に策定された国のがん対策推進計画において、がん検診受診率の目標値を五〇%としました。さまざまな制度の違いこそあれ、先進的な国々では七〇%以上を誇っている中で、五〇%は低い目標ですが、目標値を明確にしたことに一定の意義は見出すところです。
 では、その目標をだれがどのように対策をとって達成するのかといえば、甚だ心もとないのが現状でございます。
 がん検診には、市区町村による健康増進事業としてのもの、事業者が行うものなどがあり、一元的に実施されておりません。そのため、正確な受診率の把握も困難なのが現状であります。
 しかし、困難な中でも、がんの死亡率低減に向けては、がん検診受診率向上策は非常に重要であります。東京都としても検診受診率の目標を五〇%としていますが、その目標達成に向けて、都ではこれまでどのような取り組みを行ってきたのかお伺いいたします。

○杉村福祉保健局長 都はこれまで、検診対象者や未受診者への個別の働きかけなど、受診率向上事業に取り組む区市町村に対しまして、包括補助事業を活用して支援をしてまいりました。
 また、受診率向上の効果が確認された取り組みについて、区市町村を対象とした報告会で紹介いたしますとともに、実施方法や手順を記載した手引を作成し、区市町村での取り組みを支援いたしております。
 職域につきましても、がん検診に積極的な企業をがん検診推進サポーターとして認定し、従業員への受診勧奨や都民への普及啓発などの活動を支援いたしております。

○酒井委員 包括補助という形での支援も一つの方法ではあると思いますけれども、五〇%でも先進国に比べれば低いといわれる中、率直にいって、その達成も難しいのではないかと心配をいたしております。
 さきに述べたような困難さがあるため、必ずしも容易ではございませんけれども、少しでも有効な対策を実施していかなければならないと思います。個別の受診勧奨、再勧奨、いわゆるコールリコールが最も有効とされる方法ですが、費用もかかるのも事実でございます。市区町村間の差をなくすような取り組みをぜひとも行っていただくよう、強く求めておきたいと思います。
 がん検診受診率の向上のためには、検診による早期発見、早期治療の重要性、ステージによる治療成績の違いや生存率、治療による体への負担や日常生活への影響がかなり違うことなど、都民に、より自分の生活に即した実感を持って理解していただけるような、受診行動につながる働きかけが必要であると考えますが、平成二十四年度においてはどのような取り組みを行うのか、お伺いいたします。

○杉村福祉保健局長 がん検診は、がんを早期に発見し、治療に結びつけることを目的としておりますが、心配なときはいつでも医療機関を受診できる、あるいは忙しいなどの理由で検診を受けない方も少なくございません。
 このため、来年度は、がん検診や予防の重要性を広く理解していただけますよう、これまでの取り組みに加えまして、都民、関係者に向けて普及啓発講演会を実施いたしますとともに、映像作品を制作し、都が実施いたしますイベントやインターネット配信などで活用するなど、がん検診の受診促進に向けた普及啓発を行ってまいります。

○酒井委員 東京都がん対策推進計画の中では、すべての市区町村において、科学的に効果が明らかな方法による検診の実施と検診の質を向上させることを分野別の目標の一つに掲げております。
 この検診の質の向上に必要なのが精度管理でもあるわけですけれども、検診受診者のうち、がんが疑われた人がきちんと精密検査を受けたかどうかを示す精検受診率、同じくがんが疑われた人のうち、実際にがんであった人の割合を示す陽性反応的中度などの評価指標があります。検診の質を示すこれらの評価指標については、市区町村間の差が大きいのが現状でございます。
 精度管理の推進について、これまでの都の取り組みをお伺いいたします。

○杉村福祉保健局長 都はこれまで、精度管理を進めるために、区市町村向けにがん検診の精度管理のための技術的指針を作成いたしまして、担当者を対象とした説明会を開催してまいりました。
 また、精密検査受診率等、精度管理に必要な指標について、区市町村別の数値をホームページで公表いたしますとともに、数値の改善に取り組む区市町村を包括補助事業により支援いたしております。
 さらに、検診の精度を高めるため、従事者向けの技術講習会を開催いたしております。

○酒井委員 行政の努力だけでは受診率向上や精度管理に限界があるのも事実であろうかと思います。特に市町村のリソースが限られている中で、保健部門での新たな業務が発生している昨今ではなおさらであると思います。市区町村間の差をなくし、都全体でがん検診の精度を向上させることが肝要であると思います。
 今後は、これまでより一歩進んだ先進的な試みを参考に、市区町村におけるがん検診の精度管理向上に取り組むことが必要と考えますが、見解をお伺いいたします。

○杉村福祉保健局長 区市町村におけるがん検診の精度管理を向上するため、来年度は、民間シンクタンク等を活用いたしまして、区市町村や検診実施機関にヒアリングを実施し、取り組み事例の調査分析を行います。
 その結果を踏まえ、がん検診の精度向上に有効な取り組みを取りまとめた手引を作成いたしまして、区市町村が質の高い検診を実施できますよう支援をしてまいります。

○酒井委員 ぜひともがん検診の精度向上、そして管理をしっかりとしていただき、一人でも多くの、がんに罹患されている方の早期発見、早期治療につながるような施策を積極的に推進していただきたいということをご要望申し上げ、次の質問に移らせていただきたいと思います。
 次に、犯罪被害者支援対策についてお伺いいたします。
 まずは、今月二十日、十三人が死亡、六千二百人以上が負傷した地下鉄サリン事件から十七年が経過いたしました。改めて、亡くなられた皆様方のご冥福を申し上げるとともに、今もその後遺症で苦しんでいる方々や、家族を失い心身ともに回復に向けた途上にある方々に対して、我々も都における犯罪被害者支援対策の充実、推進に向けた取り組みを今後も続けていくことを申し述べさせていただきたいと思います。
 さて、平成二十二年における東京都内の犯罪認知件数は十九万五千九百七十件で、前年比で一万件減少しておりますが、凶悪犯による殺人は百件と前年並みであり、親告罪である強姦は百六十件となっています。交通事故に関しては五万五千十三件で、死者数は二百十五件と前年並みです。
 平成二十二年度の東京都の総合相談窓口における相談件数は四千七百九十一件で、年々増加しており、特に電話などの相談や精神的支援対象者がふえています。犯罪被害の相談に関しては、被害の時期が一年前や十年前など、犯罪被害者の方々が相談する心境になってから初めて連絡があり判明するケースや、時間を置いて改めて相談に来られる、そういったケースがあるなど、その支援に関しては継続的で多様な取り組みが必要と考えます。
 まず、都は犯罪被害者の方々から相談を受ける中で、その置かれた現状についてどう認識しているのかお伺いいたします。

○笠井総務局長 都内における犯罪認知件数は減少傾向にありますけれども、今なお高い水準にあるのが現状でございます。
 こうした中で、平成十七年に犯罪被害者等基本法が施行されて以降、被害者の刑事裁判への参加制度の導入や犯罪被害者等給付金の引き上げ、自治体による相談窓口の整備など、被害者を取り巻く環境は改善されつつございます。
 しかしながら、都が平成二十年度から運営する東京都総合相談窓口に相談に来られる被害者の方々の状況はさまざまでございます。とりわけ精神的な影響に関しましては、短期間での回復が難しい事例も多く、被害者が抱える課題を一つ一つ解決していく継続的で幅広い支援が求められているものと認識をいたしております。

○酒井委員 ただいまの答弁でさまざまな施策が行われているといったことは理解いたしましたが、犯罪被害者をめぐる環境はまだまだ厳しいものがあると思います。
 私も、現在、犯罪の被害に遭われた方からいろいろと相談を受けて、いわゆる直接支援をしておりますけれども、被害を受けた人は、その精神的な苦しみといったものは大変大きいものがあるということを実感しております。その一方で、支援をする側にとっても大変根気の要る作業だと思います。
 この東京都の相談窓口等で支援をされている方々も、本当に大変な思いをしながら支援をしているということが推察されます。ぜひとも、都においても継続的に、そして幅広い支援が行われることを期待いたしております。
 次に、平成二十三年一月、都は第二期の東京都犯罪被害者等支援計画を策定し、支援事業を行っておりますけれども、一年を経過した中で、計画の進捗状況についてお伺いいたします。

○笠井総務局長 都は、平成二十年度から二十二年度までを計画期間とした第一期の計画に引き続き、昨年四月からは、第二期の計画であります東京都犯罪被害者等支援計画に基づく支援を全庁を挙げて推進しております。
 この計画では、これまでの成果を踏まえ、より一層被害者の声にこたえるため、総合相談窓口を初めとする各種の支援策、市区町村等との連携体制、都民意識の啓発の充実強化を三つの柱といたしております。
 都は、今年度、被害直後に自宅に戻ることができない被害者へ宿泊場所を提供する際に、都外に住む親族の付き添いもできるよう制度改正をしたほか、市区町村職員を東京都総合相談窓口へ受け入れて実務研修を行うなど、市区町村事業の底上げを促進する取り組みを開始いたしました。
 また、警視庁は、中学、高校生が授業の一環として被害者の声を聞く命の大切さを学ぶ教室を既に約百校で開催しております。
 このように被害者支援の充実に向け着実に取り組んでおり、この四月からは、東京都総合相談窓口の相談員の増員も図ることとしております。

○酒井委員 一歩一歩施策が進んでいることは評価いたしますし、また、さきの総務委員会の中で我が会派の佐藤議員から質問させていただいたと思いますけれども、宿泊場所の提供等においても、これまで都民センターを通じなければ宿泊場所の提供の手続ができなかったものを、警察署等々でもできるようにといったご提案もさせていただいていると思います。より東京都の施策といったものが有効に活用されるようなしつらえといったものも、あわせてご検討していただきたいと思います。
 平成二十二年度に計画を策定する上で、重要な犯罪被害者を取り巻く状況として、平成二十一年度における犯罪被害者の方々からの電話相談件数と面接相談は計二千六百七十一件、自宅訪問や付き添いなど直接的支援件数は二百九十三件、精神科医などによるカウンセリングは三百七十四件、一時居所提供は四件となっていました。
 また、被害者に対する医療、住宅、経済的支援、就労など長期的かつ幅広いニーズの件数を把握して、都は犯罪被害者の支援をここまで推進するといった数値目標を定めて支援に取り組むべきであったと考えていますが、今後、都は明確な目標を持った支援計画を策定する考えはあるのでしょうか。ご見解をお伺いいたします。

○笠井総務局長 被害者の状況はさまざまでございますことから、その支援に当たりましては、何よりも被害者のニーズに合った取り組みを行うことが大切だと思っております。
 このため、都は、第二期の計画におきまして、総合相談窓口の機能の強化や市区町村の支援体制の整備を大きな目標といたしております。平成二十四年度には、すべての市区町村で相談窓口が設置される見込みでございます。
 また、地域で活動する町会、PTA、医療機関、不動産事業者などとの連携を深めるなど、被害者が身近な地域で必要な支援を迅速に受けられるような仕組みづくりに努めております。
 今後とも、被害者のニーズや被害者を取り巻く環境の変化を的確にとらえ、支援を進めてまいります。

○酒井委員 全市区町村で相談窓口が設置されるということですけれども、ぜひとも設置されるだけではなく、同水準での対応が必要であると考えますので、レベル感を統一していただきたいと思います。
 一部達成状況についてはお示しをいただきましたけれども、昨年の予算委員会でも指摘したように、本支援計画は支援の方向性を示してはいるものの、達成目標の数値化や年次計画が示されていないことに問題があると思います。
 繰り返しになりまして恐縮ではございますけれども、やはり支援の基本的な理念や方向性は条例で示し、実施に向けた計画は具体的なロードマップを示せるようなものになるように、ぜひともご提案をさせていただきたいと思います。
 昨年九月の第三回定例会の代表質問で、都議会民主党は、都において性犯罪被害者ワンストップ支援センターを設置し、被害者に総合的支援を行うよう求めましたが、先月二月、都内に臨床心理士や弁護士などが中心となって、民間による、東日本で初めての性暴力被害支援センター、レイプクライシスセンターTSUBOMIが設立されました。
 電話相談から弁護士への面接、そして支援につなげた例など被害者からの需要があると聞いておりますけれども、紹介できる病院が少ない、警察との連携体制がとれないなど、活動の充実に向けた課題があるとのことです。
 都においては、今後、センターを警視庁や病院などに仲介し、共通の理解と認識を持った協力体制をつくり、性犯罪被害者の支援を行う必要があると考えます。
 こうした先駆的な取り組みを行う民間団体と連携し、犯罪被害者支援を充実させていくべきと考えますが、見解をお伺いいたします。

○笠井総務局長 東京都総合相談窓口における支援の四割以上が性犯罪被害に関するものであり、性犯罪被害者やその家族への対応は大きな課題となっております。
 都は、被害者支援都民センターと協働し、豊富な支援の経験を持ち、被害者の心情を十分に理解した犯罪被害相談員による相談や付き添い、精神科医や臨床心理士による最新の療法に基づくカウンセリングなど、被害者のニーズに応じたさまざまな支援を行っております。
 一方、被害者を社会全体で支えていくためには、より多くの人々や民間団体を含めた支援機関との幅広い連携協力体制がつくられることが望ましいと考えております。
 都といたしましては、今後とも東京都総合相談窓口を核としながら、より広範な支援のネットワークの形成も視野に入れて事業を推進してまいります。

○酒井委員 今後、都においては、都立病院や婦人保護施設などにワンストップ支援センターを置くことを、ぜひとも検討してほしいということを申し上げておきます。
 同じく先月二月、神奈川県は、県警及びNPO法人神奈川被害者支援センター、神奈川県産婦人科医会と協力病院による情報提供や被害者への適切な診療など、性犯罪被害者への支援における連携・協力に関する協定を締結しました。
 性犯罪による被害者の心情に配慮し、連携協力して接することにより、被害者が心身に受けた影響からの早期回復に資していくことになりました。
 都においても、性犯罪被害者のため、こうした取り組みを行うべきと考えますが、見解をお伺いいたします。

○笠井総務局長 性犯罪被害者に対しては、これまでも警察署と医療機関との協力体制のもと、被害直後における診療や検査、適切な支援機関の紹介などを行ってきております。
 医療機関におきましては、医師や看護師が被害者の心情を理解した適切な対応を行うことが、二次的被害を防止し被害者が回復へと向かう上で大変重要でございます。
 こうした観点から、都は今年度、東京産婦人科医会や東京都病院協会などの協力を得て、医療機関の役割及び診療や事務の手続、被害者への対応方法などをまとめたパンフレットを作成し、都内の産婦人科医などに配布いたしました。
 産婦人科医会では、性犯罪被害者に対する診療のチェックポイントを周知徹底する取り組みが行われており、都のパンフレットもあわせて有効活用されることにより、医療現場における被害者対応の質の向上が図られると考えております。
 今後とも、都は、警視庁や関係各局の間で協議をいたしながら、性犯罪被害者支援の充実に向け、産婦人科医を初めとする医療機関との連携協力を引き続き推進してまいります。

○大塚委員長 酒井大史理事の発言は終わりました。(拍手)
 この際、議事の都合により、おおむね十五分間休憩いたします。
   午後三時十四分休憩

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