○西岡副委員長 田中たけし委員の発言を許します。
〔西岡副委員長退席、鈴木(あ)副委員長着席〕
○田中委員 まず初めに、エネルギー政策について伺います。
いうまでもなく、電力エネルギーは国民生活において欠くことのできないものであり、国内産業を支え、経済の高度成長とともに、電力供給体制も拡大してまいりました。人口が最も集積している大都市東京が最大の電力消費地であり、その必要電力の多くを、新潟県や福島県など都外に依存しております。
今回の東日本大震災により福島第一原発の事故が発生し、東京への電力安定供給が困難となり、電力供給体制のもろさが露呈いたしました。
このような中、国は国家の存立に直結するエネルギー戦略をいまだに描けておらず、原発の定期検査後の再稼働がいまだ見込めない中、電力の安定供給体制が不安視されており、一刻も早く新たなエネルギー戦略を打ち立てるべきと考えております。
その一方、国の対応が全く進まない中、都民生活を守り、都内産業を維持発展させていくためにも、東京がみずからの電力確保を求められております。
そこで、都はいち早く行動を起こし、百万キロワット級の天然ガス発電所の設置や、自立分散型エネルギーの確保などに取り組んでいます。特に、昨年十二月に公表した「二〇二〇年の東京」において、東京産電力三百万キロワット創出プロジェクトを掲げ、都内の発電能力を倍増するとしております。東京は、東京電力管内の約三割に当たる電力を消費しているものの、使用電力の実に約八割を都外に依存していることから、極めて有効なプロジェクトであると評価できます。
そこで、三百万キロワット創出プロジェクトに象徴されるエネルギー戦略を打ち出した経緯と基本的な考え方について、また改めまして、三百万キロワット創出プロジェクトに取り組む際の課題点についてお伺いをいたします。
○秋山知事本局長 昨年、東日本大震災によって、福島第一原子力発電所や火力発電所が被災したために、東京におきましても計画停電や夏の厳しい節電対策など、電力不足への対応に追われたところでございます。
大量の電力を消費する東京ですが、都内の発電能力は震災前年の最大使用電力千七百万キロワットの約二割にすぎず、遠隔地からの送電に頼ったエネルギー供給体制の脆弱性があらわれたものというふうに思っております。
こうしたことから、都は、いかなる災害に直面しても都市活動を維持していくというために、「二〇二〇年の東京」計画においてエネルギー戦略を都市政策の一環として明確に位置づけたところでございます。その中で、エネルギーの安定供給体制の構築、自立分散型エネルギー源の確保、エネルギー利用の高効率化・最適化の三つを基本に、経済成長と低炭素化を両立させる新たなエネルギー政策を強力に推進することといたしました。
その象徴的な取り組みといたしまして、三百万キロワット創出プロジェクトを打ち出したもので、百万キロワット級の発電所の設置、自立分散型発電の拡充、住宅への太陽光発電の導入を初めとする再生可能エネルギーの普及等により、二〇二〇年までに東京産電力の倍増を目指していくことを目標に掲げたものでございます。
そのためには、都みずからの取り組みはもちろんでございますが、民間の力の活用や、電力事業への多様な主体の参加促進を図っていく必要があることから、都といたしましては、官民連携インフラファンドの創設や、都市開発と連動した取り組みを積極的に推進するとともに、九都県市とも連携しながら、新規参入を阻む規制の緩和、撤廃を国に強く要求をしてまいります。
○田中委員 ご答弁いただきましたように、エネルギー政策を都市政策の一環にしっかりと位置づけ、そして、都が主体的に電力創出をしていくことは大変意義深いことだと思っております。そして、九都県市連携により規制緩和を要求していく中で、私はぜひ、今回の三百万キロワット以上のさらなる創出に向けての取り組みも大いに期待をしていきたいと思っております。
次に、この三百万キロワットのプロジェクトの中の自立分散型エネルギーについて触れてまいります。
災害発生時、都民生活を守るため、都の果たすべき役割は拡大しております。特に、自立分散型発電は、各所の都施設を維持し、都の役割を継続的、安定的に果たしていく上で重要であると考えます。
そこで、都施設への対応について、何点かお伺いをいたします。
まず、港湾施設についてお伺いをいたします。
私の地元品川区には大井ふ頭がありますが、東京港最大のふ頭であり、港湾局の主要施設の一つであります。災害発生時においても港湾機能を維持していくためには、防災、危機管理機能を高めることが極めて重要であると考えます。
一方、この大井ふ頭周辺には、既に品川火力発電所、大井火力発電所、さらには東日本大震災の復興支援のため、タイ王国から提供を受けたガスタービン発電施設が設置されている地域でもあります。
このような地域での対応に際しては、近隣に対する配慮も必要と思っております。例えば、同地域には品川清掃工場があり、この清掃工場でごみ焼却時に発生する焼却熱を活用し、蒸気タービン発電を行うとともに、近隣にある八潮団地への冷暖房用熱供給を行っております。このように、コージェネレーションにより熱エネルギーを近隣施設に供給し、有効活用することができれば、エネルギー効率も高まり、環境への負荷も軽減され、港湾施設近隣のまちの魅力も高めることができます。
そこで、震災による電源喪失に備え、大井ふ頭の電力をバックアップする発電施設設置の必要性をどのように認識されているのか、あわせて、近隣施設へのエネルギー供給も検討すべきと考えますが、ご見解をお伺いいたします。
○中井港湾局長 東京港は、震災により電力供給が途絶えた場合でも、緊急救援物資の受け入れや首都圏の経済活動を維持していくために、海上コンテナ輸送を確保していく必要がございます。
そのため、耐震強化岸壁を有する大井ふ頭において、コンテナターミナル用としては世界的にも例を見ない自立分散型ガス発電施設の設置を検討しており、来年度は調査設計を実施する予定としております。
これにより、物資の積みおろし機能やコンテナの冷蔵機能等を確保するとともに、夏場の電力使用制限時にも必要な電力供給が可能となるなど、東京港を荷主や船会社にとって災害に強く安心して利用できる港としてまいります。
また、お話のあった近隣施設への活用につきましても、エネルギー効率向上といった点で好ましいものであり、近隣の需要や発電施設の運用状況等を踏まえつつ、可能性を探求してまいります。
○田中委員 東京の多くの港湾施設の近隣には、商業施設等、多くあります。今後の電源設備の展開に際し、コージェネレーションによる熱供給を行うなどの対応もぜひご検討いただきたいと思います。
次に、水道事業における電力確保についてお伺いいたします。
さきの大震災では、東北地方を中心に広域的な停電が発生し、数日間にわたる断水の被害に見舞われました。また、計画停電の際には、都内においても、多摩の一部地域で断水や濁水が発生し、その影響は約二十六万件にも及びました。大規模な浄水場が停電した場合や、人口や産業が集中する区部などで、計画停電の実施された場合に、その影響ははかり知れませんが、仮に今、浄水場への電力供給が途絶えた場合、東京の水供給にどのような影響が生じるのか、お伺いいたします。
○増子水道局長 水道局ではこれまで、広域的な停電に対して一定の給水が確保できるよう、浄水場における自家用発電設備の整備を進めてまいりました。
しかし、今回の被災地における被害状況を踏まえますと、浄水場への電力供給の途絶に加え、地震等により施設に不測の事態が生じることも考慮する必要があります。仮に今、このような事態が東京で発生した場合には、現状の自家用発電設備の能力では、浄水処理や送水、配水に必要な十分な電力を確保できず、その発生状況によっては、断水被害や大幅な水圧の低下が広範囲に生ずることも想定されます。
○田中委員 今ご答弁いただきましたように、大変大きな影響が見込まれております。
本定例会の我が党の代表質問に対し、水道局からは、新たな安全度という考え方のもと、すべての浄水場で電力の自立化を推進するとの答弁がありました。電力の供給が途絶えても給水を継続していくことは極めて重要であり、一刻も早く取り組む必要がありますが、電力の確保に向けた具体的な取り組みについてお伺いをいたします。
○増子水道局長 さきの大震災の教訓を踏まえますと、災害時等における水道事業の継続には電力の安全度向上は必須であり、電力事業者からの供給のみに頼らない電力の確保が不可欠であります。
このため、まず大規模浄水場にその能力を最大限に発揮させるための自家用発電設備を増強してまいります。具体的には、平成二十四年度から東村山浄水場において増強工事に着手いたします。また、その他の浄水場や給水所等におきましても、整備に向けた調査設計を順次実施してまいります。
こうした取り組みにより、自家用発電設備の能力を高めて、浄水場等における電力の自立化を図り、非常時におきましても、給水の確保に全力を期してまいります。
○田中委員 ぜひ一刻も早い対応をお願いしたいと思います。
この自家用発電設備は、電源喪失時に緊急活用されるものでありますが、今後も電力供給不足が想定される中、電力需要が伸びる時期などにも積極的に活用すべきと考えますので、対応のほどよろしくお願いをいたします。
次に、電力に関しての関心事項である電力料金の値上げについてお伺いをいたします。
一月、東京電力が突如、電力料金の値上げを発表いたしました。発表の後、私の地元でも、電力を多く使うメッキ業の方々や金型のまち工場の方、一円、二円の経費を切り詰めて経営を行っている生鮮食料品の方などからも心配の声を伺いました。我が党は、経済への影響、とりわけ多くの中小企業への影響が大きいことから、いち早く東京電力に料金値上げに至る経緯、人件費削減や資産売却等の内部努力の状況説明を求め、さらなるコスト削減を行い、値上げ幅を圧縮するよう強く求めました。
今般、東京電力から値上げの緩和策が示されましたが、内容は不十分といわざるを得ず、役員賞与カットや物品調達契約の見直しなど、さらなる内部努力の上積みを求めております。
都において、猪瀬副知事が、経済産業大臣、原子力損害賠償支援機構、東京電力へと直接折衝しているのは承知しております。そこで、企業活動に影響が大きく、産業振興にもマイナスとなる電力料金問題に関する取り組みについて、知事にお伺いをいたします。
○石原知事 電気料金の値上げが、東電が口走っているような値幅で上がったとしますと、これは中小企業には致命的な影響を与えるわけでありまして、それを勘案して、この問題については執行機関と議会とがタッグをしっかり組んで当たらなければならないと思います。
東電は、自分の責任や置かれた立場を自覚もせずに、値上げは権利だなどと口走っていますけれども、内部努力や中小企業への配慮なしで、とにかく自分の、何というのでしょうかな、組織なり体制の合理化というものを義務としても果たさないくせに、こういうことを口走っていることは、本当に論外だと私は思います。
さらに、政府はこの問題を一企業の経営の問題にすりかえようとしていますけれども、これはやっぱり政府も国全体のことを考えて、相当はっきりした発言を東電に向けてすべきだと思っています。
ゆえにも、国との交渉に非常にたけた猪瀬副知事にこの問題に取り組んでもらっておりますので、彼も非常に綿密な調査をして、いろいろ事を構えておりますが、詳細は猪瀬副知事から聞いていただきたいと思います。
○鈴木(あ)副委員長 答弁は簡潔にお願いいたします。
○猪瀬副知事 電気料金の値上げ、六千八百億円の燃料費の高騰だというふうになっていますけれども、そのうち千九百億円の内部努力、合理化で、残り約五千億円を対象とすると、こういうことなんですけれども、千九百億円の合理化というのは非常に少ない金額でありまして、それをきちっと見ていかなければいけないということであります。
しかも、一律二・六円の、中小企業も大企業も関係なく一律という、非常に大ざっぱな値上げの仕方なのであります。さらに、値上げは権利だというけれども、権利というのは、競争があるから値上げは権利だということで、PPSという独立系の事業者は三・五%しかないので、競争していないわけですから、値上げは権利だといういい方も傲慢であります。
このため、東電、国に対して、原子力損害賠償支援機構とか、値上げの根拠とか中長期的な経営見通し、経営合理化の具体的な内容についての情報開示、中小企業への配慮を特に求めました。
また、二月十日には、九都県市を代表して経済産業省に行き、資源エネルギー庁長官にも直接要請したわけです。
この間、東電幹部を何回も呼びまして、値上げの根拠についてもう少し明らかにしろということで、例えば有価証券報告書を見ても、子会社の名前が四十社しか入っていなくて、外百二十八社と書いてある。外って何だということで、全部出せということで、出してきたら、四百八十名の役員のうち百七十人が東電のOBか出向であると。そういう会社に東電が仕事を出すわけですから、ゆるゆるの関係になるわけですね。
そういう中でちょっと、ご存じだと思いますが、この間話題になったのは、東京リビングサービスという福利厚生施設の会社が六本木の駅から二分のところにあると。これが高級飲食店を経営したりしているわけですね。福利厚生といいながら、高級飲食店を経営しているわけで、こんなおかしなことがまかり通っていたわけでありますが、こういうのは氷山の一角で、東電の発注がどういう形になっているかと全部見直すと、関連会社の取引がかなりある。これを三割削減すると、年間五百億円削減される。
原子力損害賠償支援機構、原賠機構の方では、積み上げ方式で一割だといっていたんですけれども、三割だということにして、そして、枝野大臣にこの三割だということを公開の席で約束させましたので、これからまだ道のりは長いですけれども、三月末に原賠機構と東電で総合特別事業計画ができますが、そうすると、今度は家庭向けの値上げということになってくるわけでありますが、家庭向けといいながら、実は五十キロワット以下の中小企業、実は中小企業七十万社のうち、九割、六十三万社は、今度その小口の家庭向けのところに入ってくるんですね。
ここをこのまま値上げさせるわけにいかないわけでありまして、したがって、東電に対してもっと厳しい形でいろんなものを要求していくことが必要だということで、最後になりますが、石原知事とも相談の上、株主提案権を行使して、株主総会の場で東京都の意見、提案を表明していくつもりであります。それまでも途中、できるだけのことをやっていきます。
以上であります。
○田中委員 力強いご発言、ありがとうございます。
今回の電力料金の問題は、値上げにより大きな影響を受ける、特に中小企業者の立場に立ち、対応しなくてはならないと思っております。また一方で、東京電力には原発事故の収束や原子力損害賠償等の責任もあり、原発事故で多くの被害を受けている被災者の方の立場もしっかり踏まえないといけないんだろうと思っております。
いずれにしても、その料金値上げで影響を受ける中小企業者に向けて、最善最良の対応を東京電力に求めていくため、先ほど知事もおっしゃっていましたが、しっかりと議会とも連携をしていただく中で、ご尽力をいただきたいと思っております。
国はエネルギー戦略をいまだに描けずにいる中、国に先駆け、東京都みずからがエネルギー問題に対する取り組みを行うことは、震災後の危機的状況にある日本において、東京がいち早く活力を取り戻し、東京の活力が被災地の復興につながり、そして日本の再生につながるものと確信しております。東京の活力の源泉がエネルギー問題の解決であり、東京都が率先してこの東京産電力三百万キロワット創出プロジェクトに取り組むことは、大変意義深いものがあると考えております。
このプロジェクトの実現には多くの時間を要し、継続した石原知事の力強いリーダーシップが求められ、特にこのプロジェクトの立ち上がりから定着するまでの数年間の取り組みが重要であると認識しております。このプロジェクト実現に大いに期待をしておりますが、唯一、一点だけ、心にひっかかる点があります。
今定例会の知事施政方針表明の最後の部分で、石原知事はベトナム戦争への取材をきっかけに政治家を志したこと、東西冷戦の終えんにより政治的対立軸が失われ、国際情勢が複雑化している中、日本の政治家が危機感を欠き利己的であるなど、将来の日本を案じていることなどが述べられております。
私が知事からこの内容を本会議場で伺ったのは初めてではなく、実は二回目であります。
一回目は衆議院本会議場で、国会議員在職二十五年を迎えた際、議員辞職を表明された演説でありました。知事の施政方針を伺い、トラウマとなっている私は、当時のこのことを思い出し、何か今回の施政方針に知事は特別のメッセージを託しているのではないかと受けとめております。
いずれにしても、石原知事には引き続き東京の発展、被災地の復興、日本の再生のために、志を同じくする我々とともに、エネルギー問題を初め数多くの課題を乗り越え、首都東京の使命を果たしていただきたく強く考えております。
そこで、日本の再生に欠くことのできないエネルギー政策についてのご見解と、東京都が果たすべき役割、特に東京の活力の源泉となる東京産電力三百万キロワット創出プロジェクト実現に向けた知事のご決意をお伺いいたします。
○石原知事 この天然ガスを使っての東京自前の発電所をつくろうということに際しての、二つのヒントがあります。
一つは、大分前ですけれども、今、東京ガスが運営しているLNGの火力発電所を、実は建設中に私、私の大学時代の友人が東ガスの役員をしていたので、ぜひちょっと見てくれということで行きました。
それともう一つは、あの三・一一の災害が起こったときに、この間亡くなりましたけれども、森ビルの森君が建設した六本木ヒルズが、あれはたしかゴールドマン・サックスの強い要望で、彼らがあそこに事務所を借りるということの必要条件として、自家発電をちゃんとやってくれということがあったそうでありまして、あの地下に非常に大きな発電所があります。
そういう二つの事実を勘案して、今度の災害が起こったときにこの問題について考えたわけでありますが、早速それを受けて、猪瀬副知事が現地に行ってくれました。今、稼働している発電所を見学、視察した上で、これはとにかく東京で自前でやろうということの結論になったわけでありまして、これは決して簡単にできるものじゃありませんし、あなたが心配してくれていることはありがたいんですけれども、私だってそう長く生きているわけじゃありませんから、どうなるかわかりませんが、できるだけ早く東京のために実現したいと思っています。
○田中委員 まだ若干、トラウマが残った状態で、次の質問に入りたいと思います。
次に、都区のあり方に関してお伺いをいたします。
今、大阪では、橋下大阪市長のもとで大阪都構想を掲げ、大阪の復活、大大阪の誕生に向け、具体的取り組みを次々打ち出しております。東京に次ぐ第二の都市である大阪が活力を取り戻すことは、日本の発展の原動力となり、将来、リニア中央新幹線の開通でますます近くなる東京の発展にもつながるため、今後の大阪の発展を大いに期待しているところであります。
橋下市長が提唱している大阪都構想は、大阪府と大阪市が二重行政を行っているため、多くのむだが生じ、政令市である大阪市区域内の行政に対し、ほとんど大阪府が関与できず、大阪市を含む広域行政の視点から、大阪全体の発展が見込めないため、大都市行政と地域行政との役割分担の問題点を明らかにし、解決していくものと認識をしております。
大阪の改革では、東京の都区制度を模範とし、新たな大都市制度をつくろうとしております。当然、東京と大阪ではさまざまな条件が異なるため、全く同じ制度をつくるものではありませんが、東京の都区制度は六十年以上の実績を有しており、大阪にとって大いに参考になるものと認識をしております。既に公会計制度などで、大阪が都の取り組みをもとに改善を進めており、今後とも大阪との間では連携支援が必要だと考えております。
しかし、大都市行政を担う東京都と地域行政を担う特別区との間でバランスをどのようにとり、両立させていくかという視点で、大阪からは模範とされている都区制度にも、まだまだ多くの課題があると認識しております。
そこで、都区の間では、これまで大都市運営と身近な行政サービスとの両立を目指し、どのように取り組んできたのか。また、今後、どのような姿を目指していくのかお伺いをいたします。
○笠井総務局長 特別区の区域では、都は、消防や上下水道など大都市の一体性、統一性確保のための必要な事務を行っております。
一方、都は福祉事務所や保健所を初め、平成十二年には清掃事業など住民に身近な事務を順次、区に移管してまいりました。これらは、区との真摯な協議による成果であります。
現在は、昨今の社会情勢の変化を見据え、都区のあり方を根本的かつ発展的に検討するため、都区のあり方検討委員会において、事務配分、特別区の区域のあり方、税財政制度の三点について議論を進めているところでございます。
少子高齢化の進展などに伴い、効率的で効果的な行財政運営がより求められております。今後とも、都区のあり方検討を含め、東京の自治を担う都と区が真摯に協議し、住民サービスの維持向上はもとより、大都市の一体的運営による東京の発展を目指してまいります。
○田中委員 今、区と真摯に協議していくというご答弁がありました。これまで制度がさまざま変遷を経てきたことからわかるように、この協議にはゴールはなく、時代背景や都区を取り巻く状況に応じて、常に考えていかなければならない課題であります。
都民でもあり、区民でもある二十三区住民にとっての最良の行政が施せるよう、都が大都市経営のリーダーとして、今後とも区とともに住民サービスの充実向上に向けた取り組みを続けていただくことを強く希望いたします。
次に、財政運営についてお伺いいたします。
今日の東京都が置かれている経済状況は、リーマンショック以降、ギリシャを初めヨーロッパ諸国での債務危機、歴史的円高、東日本大震災やタイの水害などの自然災害等の影響を受け、依然厳しい状況にあり、さらには法人事業税の不合理な暫定措置が継続するなど、都税収入も五年連続で減少し、平成十九年度と比較すると一・四兆円もの収入減となるなど、極めて厳しい財政状況のもとでの予算編成でありました。
一方、これまで蓄えた基金の有効活用や必要最小限の都債の発行により、東日本大震災からの復興、高度防災都市東京づくり等々、都民が安全で安心して過ごせる東京の実現に向けた予算編成が行われたものと思っております。
このような厳しい財政環境にあっても、積極果敢な予算編成が行える背景には、石原知事の強力なリーダーシップのもとでの聖域なき事業評価や公会計制度の活用によるものと思っております。
そこで、何点かお伺いをいたします。
毎年行われている事業評価で、今年度は「二〇二〇年の東京」を策定するタイミングで、「十年後の東京」に掲げられた事業を評価の重点対象としたとのことですが、具体的にはどのように評価されたのか、お伺いをいたします。
○安藤財務局長 「十年後の東京」への実行プログラム事業の評価に当たりましては、これを重点対象としたことを踏まえまして、昨年の夏前から、それぞれの事業を所管する局や知事本局と連携をしながら、事業実績などの分析を進め、課題や問題点を早期に整理をいたしました。その後、予算編成の過程で、それぞれの事業を改めて検証いたしまして、今後、拡大、充実するのか、あるいは見直し、再構築なのかといった評価を実施いたしました。
その結果は、「二〇二〇年の東京」計画とともに、二十四年度予算に反映しておりまして、百九件を公表しております。具体的には、民間社会福祉施設の耐震化の推進事業につきまして、補助対象の拡充など、支援のあり方を再構築したほか、運営方法の工夫などにより、東京ジョブコーチ支援事業の経費削減などを実現しているところでございます。
○田中委員 知事肝いりの事業にも評価が行われ、聖域なき事業評価の結果、「二〇二〇年の東京」策定に大きく生かされたことは、国のパフォーマンスでしかなかった事業仕分けとは全く異なり、高く評価するものであります。
また、積極果敢な予算編成が行えるのは、石原知事が常々発言されている公会計制度の導入成果が大きいと考えます。既に都では、新しい公会計は、事業評価での活用や職員の意識改革を初め、都政改革の重要なツールとなっておりますが、一方で、一般の都民や他の自治体から見ると、具体的にどのように活用されているのか、わかりにくいのも実情であります。
そこで、公会計に関する理解を深めるため、具体例を交えながら、都の活用方法について伺います。
毎年行われている予算案の概要の中に、今年度の評価結果の事例として、先ほど我が党三宅正彦議員が取り上げておりましたが、船舶建造費補助による代替船の建造の評価が出ておりました。この事例は、公会計を活用し、発生主義の視点から分析がなされておりますが、どのように評価されたのか、事業評価を所管している財務局長にお伺いいたします。
○安藤財務局長 お話の事例は、先ほどもご質問にございましたけれども、青ヶ島へ運航している「還住丸」と「黒潮丸」という二隻の船の老朽化を受けまして、修繕しながら現行の二隻を使い続けるか、それともこの際新たに船を建造して一隻に集約するかという検討に当たりまして、それぞれのコストを比較したものでございます。
単年度の現金支出に着目いたします従来の官庁会計によりますれば、新たに船を建造するには、どうしても一時的に大きな現金の支出が必要となりますので、なかなか踏み切れずに、最後の最後まで修繕を繰り返しながら現在の船を使い続けるという判断になりやすいところでございます。
他方、発生主義により試算いたしますと、船の耐用年数を考慮した減価償却費に維持経費も加えた一年当たりのコストでは、乗組員数の見直しや燃費の向上などにより、新たに船を建造した方が、今の船を使い続けるよりも、年間一千万円も有利になるということがわかったところでございます。
また、船の大型化による就航率の向上なども期待できますので、より効率的、効果的な手法として、新たな船の建造を選択したという事例でございます。
○田中委員 単年度の現金支出だけではなく、将来にわたるトータルコストの視点から、客観的数値に基づき判断が下され、予算編成の中で活用されているものと、改めて確認いたしました。
今日の厳しい経済情勢の改善が見通せない中、引き続き安定した都政運営を行っていく上で、事業評価による施策の検証を強化し、公会計制度を活用し、都財政の基礎体力を一層高めていく必要があると考えております。
公会計制度は、石原知事が苗を植え、着実に実を結び、都政運営、予算編成の中で大きな成果を上げておりますが、さらに、大阪府や町田市など、都の公会計制度を導入する自治体がふえてきていることも評価のあらわれと認識しております。今後、導入自治体をさらにふやしていく上でも、導入効果をより具体的に発信していくことが必要だろうと思っております。
今後とも、新しい公会計から得られる情報も駆使し、都財政の基礎体力をさらに強化していくべきと考えますが、全国に先駆けて改革を推進してこられた石原知事のご見解を、改めてお伺いをいたします。
○石原知事 まち中のどんな零細企業でも、会計制度というのは発生主義・複式簿記でやっているわけです。ところが、世界を眺めまして、先進国の中で、大福帳に似た単式簿記なんてばかなことをやっている国は日本だけ。世界じゅう見回しましても、国家として単式簿記というわけのわからぬ会計制度をやっている国は、近くの北朝鮮とフィリピンとパプアニューギニアだけですな。とにかく、財務諸表がない国家なんていうのは、これは考えないと。これは企業としてはあり得ないことですけれども--単式簿記じゃきちっと財務諸表が出てきませんからね。
民主党も、財務省に首根っこを押さえられているものだから、会計制度を変えようということはいえずに、結局、事業仕分けというナンセンスなことをやって、何も結果が出ないというていたらくでありまして、私は、この間も歴代の経団連の会長にいったんですけれども、財界も政党に、与党に金を出すだけじゃなくて、文句もつけろと。君らが知らないだけの話で、企業じゃ当たり前かもしらぬけど、国として当たり前のことを国がやっていないんだから、財界も、圧力とはいわないけど、建言して、新しい会計制度、複式簿記・発生主義にしなさいということぐらいいったらどうだということを申しましたが、これは、やっぱり日本人もそうばかじゃありませんから、だんだん浸透していくと、私は信じております。
○田中委員 現在、特別区では公会計制度を導入しておりますが、すべて総務省モデルであります。民間企業、国際社会ではなかなか通用しないものだと認識をしております。
徐々に東京モデルの導入の機運が二十三区内にも高まってきておりまして、東京都の足元である特別区への導入促進をぜひお願いしたいと思っております。
次に、税収確保の視点からお伺いをいたします。
厳しい財政状況の中、税収確保は喫緊の課題であります。都税収入のうち、個人都民税が占める割合は約二〇%となり、固定資産税、都市計画税、法人二税に次ぐ基幹税目となっております。リーマンショック以降、落ち込んでいた都税全体の徴収率が下げどまってきたにもかかわらず、都税収入全体が上昇に転じない大きな理由は、個人都民税の徴収率の低迷であり、個人都民税の確保が必要であると認識しております。
しかし、個人都民税は、都が直接徴収するのではなく、区市町村が賦課徴収しております。その区市町村では、組織規模の制約から、税務の専門職員を確保しにくく、滞納整備のノウハウの継承もされにくい状況にあります。
都税収入に多大な影響がある個人都民税の徴収率を引き上げるため、各区市町村の実情に応じた都のきめ細かな対応が求められますが、厳しい財政状況の中、都として徴収率向上に向けどのように取り組みを行っているのか、お伺いをいたします。
○新田主税局長 都では、平成十六年度に個人都民税対策室を設置いたしまして、区市町村からの困難事案の引き受けや、区市町村実務研修生の受け入れ、都職員の派遣等の支援を行い、税収の確保に一定の成果を上げてまいりました。その後、リーマンショック後の景気低迷等による徴収率の低下を受けまして、従来の取り組みに加え、滞納整理事例等の情報交換を行う収納実務担当者会議の設置、開催を初め、年々支援メニューの充実を図ってまいりました。
このように、都が触媒となることにより、区市町村が業務を進める上で有益な情報の共有化は、着実に進展してきました。さらに、今年度からは新たに、都職員が区市町村を訪問し、幅広くアドバイスを行う巡回相談や、区市町村が創意工夫した督促文書の展示会開催等の取り組みも進めております。
○田中委員 区市町村の税収入全体に占める個人の区市町村民税の割合は、市町村では約四〇%、特別区では約九〇%を占めており、各区市町村にとっても極めて重要な財源であります。そのような点から、都と区市町村が連携した取り組みは、区市町村の財源確保にも資するものであります。
区市町村財政が極めて深刻な状況にある中、現状を打開するため、より踏み込んだ対策を進めていくべきと考えますが、所見をお伺いいたします。
○新田主税局長 都では、これまでの取り組みを通して、都が有する滞納整理のノウハウを提供いたしますとともに、区市町村との信頼関係を築いてまいりましたが、今後は歳入確保という同じ目的のために協力してともに行動する、より強力な共同関係にステップアップさせていくことが必要と考えております。
そのため、新年度のできるだけ早い時期に、都と区市町村による個人住民税徴収対策本部を立ち上げ、区市町村の抱える課題を共有することで、区市町村全体の連携を強化しますとともに、より効果的な取り組みを推進いたします。
また、これまで区市町村からいただいた要望を踏まえ、地方税法の枠にとらわれず、必要に応じて都職員を柔軟に派遣することや、島しょ地域から転出した住民の滞納について、都が納税交渉や処分を行うなど、新たな事業にも積極的に取り組み、一層の連携強化を図ってまいります。
○田中委員 平成二十四年度編成、大変厳しい環境で行われましたが、引き続いて二十五年度以降も厳しい状況が続くかと存じます。しっかりと対応できる体制を整えていただきたく、お願いし、発言を終わります。
ありがとうございました。(拍手)
○鈴木(あ)副委員長 田中たけし委員の発言は終わりました。
この際、議事の都合により、おおむね三十分休憩いたします。
午後六時十四分休憩
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