○鈴木(あ)副委員長 佐藤広典理事の発言を許します。
〔鈴木(あ)副委員長退席、委員長着席〕
○佐藤委員 まず、被災地自治体支援について伺います。
現在、都では、被災地に正職員を派遣しております。ただ、都の人員もここ数年で減少しており、多くの業務を抱えております。
被災地自治体では、多くの業務を抱え、任期つき職員の任用もしているようでありますが、ノウハウ等を教える職員も十分ではないでしょうし、業務を覚えるにも時間がかかります。行政経験のある方もボランティアに参加されていらっしゃると思いますが、被災地自治体業務を支援したいと考えても、ボランティアの立場としては自治体業務に携わることは難しいでしょうから、都からの派遣ということであれば、十分に能力を発揮できることと思います。
被災地は、特に技術職の職員が不足しているという状況であるようです。地域の復興をどうしていくのかといった議論をしている状況でもあるようですが、地域の方々の意思決定の手伝い等の業務支援を行うにも、行政経験のある方が必要とされているのではないでしょうか。都が幅広い支援のあり方を検討していくべきではないでしょうか。
そこで伺いますが、被災地自治体の支援を行うためにも、都が行政経験のある退職した都庁職員や監理団体などを活用した被災地自治体の支援を検討してはどうかと考えますが、見解を伺います。
○笠井総務局長 震災後一年が経過いたしまして、被災地が支援を必要とする業務は、地域を支えるインフラの本格復旧、被災者の生活再建など、復興を見据えた取り組みへと移行してまいりました。これを受け、都の人的支援も、まちづくりの専門技術や行政実務にたけた職員の中長期派遣にシフトしておりますが、来年度も百名を超える規模で職員を派遣し、被災地の要望にこたえてまいります。
一方、被災地におきましては、依然として技術系職員を中心とする人材不足が続いておりますことから、都は、被災地の状況を的確に把握し、お話の退職職員や監理団体の活用などにつきましても幅広く検討しながら、ニーズに即した支援を行うことを通じまして、被災地の早期復興に貢献してまいります。
○佐藤委員 被災地自治体も復興に向け、多くの業務を抱えていると聞いております。ぜひ被災地の支援をお願いいたしまして、次の質問に移ります。
次に、横田基地について伺います。
きのう西岡議員も提案しておりましたが、横田基地の民間利用は、多摩地域にとって大きな発展の契機になる課題であります。
二月二十七日付の朝日新聞で次のような報道がなされました。昨年三月十一日の東日本大震災の直後、成田、羽田の両空港に向かっていた航空機八十六機が、両空港を閉鎖されたためにおりられなくなり、うち十四機は燃料不足で緊急事態宣言を出していたことが、国土交通省への取材でわかりました。各機が一斉に新たな着陸先を探し、管制機関が混乱したことも一因となったというものです。
最近、千葉県また茨城県等で地震が多発しております。また、東京湾の直下のプレートが想定よりも浅かったことなどがマスコミでも話題となっております。首都直下地震が起こり、万が一、成田、羽田空港が使えなくなったとしても、代替空港として横田基地を活用する準備をしていくことが必要です。
私はこうしたことから、横田の軍民共用化の推進を訴えてまいりました。また、現時点でも、都内への救出救助部隊の迅速な投入、救援物資、医療物資の搬送など、横田基地に期待される役割は非常に大きいと私は考えております。
都の防災訓練は、これまでも横田基地における物資輸送訓練などを実施してまいりましたが、横田基地を活用した米軍との共同訓練を実施することで、実際の発災を見据えた具体的な対策を整えることができます。こうした取り組みをさらに積み重ねていくべきと考えますが、見解を伺います。
○笠井総務局長 災害対応におきましては、警察、消防、自衛隊、そして米軍も含めた関係機関との連携協力が重要でございます。
都はこれまでも、総合防災訓練によって、横田基地を航空輸送拠点として活用し、物資輸送や救援部隊の搬送など、米軍と連携したさまざまな訓練を実施してまいりました。昨年十月に実施した訓練では、これまでの物資輸送に加え、新たに横田基地内にある病院への患者搬送訓練も行ったところでございます。
今後とも、さまざまな状況を設定した訓練を、米軍を初めとした関係機関と積み重ねることで、発災時の対応力を高めてまいります。
○佐藤委員 具体的な取り組みの積み重ねが、私が主張している横田基地の軍民共用化への道にも通じると思います。積極的な取り組みを要望しておきます。
次に、こうした横田基地の軍民共用化を見据えた基地周辺の交通整備について伺います。
横田基地の軍民共用化に向け、取り組んでいるわけでありますが、横田基地に旅客を運ぶ交通計画を定め、旅客の整備を現段階から進めておくべきではないでしょうか。
旅客ターミナルの整備には、横田の東側を活用するしかなく、そのための旅客ルートには、旅客数の伸びが著しい多摩都市モノレールの延伸が必要であるといえます。
多摩都市モノレールは、旅客数が東京モノレールに並ぶほど大きく伸びております。また、多摩都市モノレールの上北台-箱根ヶ崎間は、平成十二年一月の運輸政策審議会答申第十八号において、二〇一五年までに整備に着手することが適当とされております。
この答申は、首都圏全体の鉄軌道整備のマスタープランといえるものでありますが、横田基地へのアクセスを考えたとき、多摩都市モノレールの箱根ヶ崎延伸を含め、首都圏全体の鉄道ネットワークの形成が進めば、多摩地域はもとより、埼玉県や遠く山梨県等も十分に横田基地を利用できる圏内になるのではないかと考えております。
そこで、運輸政策審議会答申第十八号に位置づけられた未整備区間についての都の取り組み状況について伺います。
○飯尾都市整備局長 都市の機能や利便性を高めていく上で、鉄道ネットワークの充実を図ることは重要でございます。
このため、都は、国や鉄道事業者等と連携いたしまして、運輸政策審議会答申第十八号に位置づけられた路線の実現に向け取り組んでおります。
この答申の中で、平成二十七年までに開業することが適当とされた都内の十六路線につきましては、既にすべて開業または事業中となっております。一方、平成二十七年までに整備着手することが適当とされました、多摩都市モノレールの箱根ヶ崎方面への延伸を含みます路線につきましては、事業主体や採算性などの課題があり、現時点では未着手となっております。
都といたしましては、将来の輸送需要の動向などを見据えながら、これらの未着手路線の整備につきまして、国や関係自治体、鉄道事業者とともに検討してまいります。
○佐藤委員 現在、都では、横田基地軍民共用化に関する調査委託などを実施しておりますが、横田基地にアクセスする交通網整備について調査費を計上して、横田基地への旅客を運ぶ交通計画の策定や経済波及効果予測調査等を行うことを要望しておきます。
次に、都立病院PFI三事業の薬品の調達について伺います。
この都立病院PFI三事業は、契約変更した後の契約総額五千百二億円にも上る事業です。また、この三事業での薬品の調達額について、予定価格をもとに算出すると、全事業期間を通じて一千六百五億円に上ります。
広尾病院、大塚病院、墨東病院、神経病院、松沢病院の五つの都立病院において、平成二十二年度の医薬品調達額を確認しましたところ、共同購入による調達分が約五十億円であり、実に、医薬品調達金額の約八八%の薬品が共同購入ということがわかります。
一方、PFI事業による調達をしている駒込病院、多摩総合医療センター、小児総合医療センターの三病院を見ると、血液製剤等についての共同購入が約七千四百万円であり、PFI事業によって個別の病院が調達しているものが約九十七億円、PFI調達でないが病院直接契約で調達しているものが約九億円です。三病院の医薬品調達金額約百五億円の約〇・七%の薬品しか共同購入していないということがわかります。
今申し上げた調達金額にあらわれているように、都立三病院のPFI事業においては、都が直接購入するしかない一部の医薬品を除き、各病院で薬の調達をすることとなっております。PFI事業を行っていない都立病院の薬品の九割近くが共同購入であることを考えると、PFI三事業においても、共同購入できる薬が少なからずあるのではないでしょうか。
PFI事業を行っている病院も、ほかの都立病院と一緒に共同購入した方が、スケールメリットが働いて薬品調達コストが下がるのではないかと考えます。PFI事業としての契約が結ばれているわけではありますが、当事者間の合意があれば、契約変更も可能ではないでしょうか。
そこで、三病院PFI事業の契約を見直し、共同購入可能な薬に関しては、ほかの都立病院と一緒に共同購入し、スケールメリットが働くような調達をするよう提案をいたします。契約変更すべきと考えますが、見解を伺います。
○川澄病院経営本部長 PFI事業は、医薬品調達業務だけではなく、統括マネジメント、施設整備、運営業務等を包括契約として、財政負担の縮減やサービス向上などのメリットが期待できることから実施しているものでございます。
三事業では、医薬品調達を含む契約を締結し、事業者のノウハウや専門知識を活用することによって医薬品調達の効率化を図っており、今後とも効率的な調達が行われるよう指導してまいります。
共同購入とPFIによる調達のどちらにおいても、医薬品費の縮減を図って経営改善につなげていくことが肝要であり、PFI事業におきましては、民間の価格交渉力を生かした調達を推進してまいります。
○佐藤委員 ぜひ、医薬品費の縮減を図るよう努力していただきたいと思います。
また、平成二十二年度包括外部監査の意見三十二では、薬剤の取引価格情報を提供する業者の利用や、包括的管理業務委託をしているPFI事業者の調達単価など、参考にできる情報を一層活用すべきと思われるといった指摘もあります。
そこで伺いますが、都立病院の薬品購入についての価格交渉力を増すためにも、PFI事業で調達した薬品価格情報を都立病院とも共有すべきと考えますが、見解を伺います。
○川澄病院経営本部長 都立病院での医薬品購入における予定価格の設定につきましては、これまでの都立病院における納入価格実績のほか、医薬品のベンチマーク分析情報も利用した上で、国公立、民間を含めた全国の他医療機関の取引価格と比較考量を行うなど、最新の取引状況を反映しております。
PFI事業における医薬品購入価格におきましては、購入額全体に値引き率を設定し、都の利益を確定させた上で購入費用の圧縮を図っており、都の購入方法とは調達手法や利益の確定方法が異なるものであります。
しかしながら、医薬品調達に関する豊富なノウハウを有する民間卸会社が複数年度にわたり継続して調達を行っていくPFIの手法は、すぐれた調達手法の一つと考えており、今後のPFI事業の進捗を踏まえつつ、都立病院での予定価格の設定におきましても参考にしてまいります。
○佐藤委員 ぜひ都も交渉力を増すような工夫をしていただきたいと思います。
次に、差額について申し上げたいと思います。
都立三病院のPFI事業がほかの都立病院と異なる点の一つに、薬品の調達において、協力会社に対して差額の調整を行い、支払うという点があります。
まず、SPCと薬品卸会社が値引き率の交渉を行い、値引き率を決めるわけです。そして、薬価に対して値引き率を乗じて出てきた金額を設定して、その金額よりも安く調達ができた場合には、差額の半分をSPCを通じて、協力会社である薬品卸会社に支払うというものです。いいかえれば、最後の調整済みの差額が、協力会社の薬品卸会社に支払われる仕組みになっております。
つまり、都が調達行為において、物品の対価としてでなく、サービスの対価として差額の半分を協力企業に支払うわけです。これは、都庁のPFI事業の中でもこの三事業だけで行われているものです。
ただ、差額の半分をSPCを通じて協力企業である薬品卸会社に支払われるわけですが、薬品の調達については、SPCが薬を扱う免許を持っていないために、SPCと契約している協力企業の薬品卸会社が直接病院に納入しているとのことです。つまり、薬の調達については、売り上げ、利益ともにSPCには計上されないわけですが、SPCを経由して差額を薬品卸会社に支払っております。事実上、SPCを介さず都が直接調達をしているわけですが、なぜSPCを介さない調達になるとわかっていながら、薬品調達をPFI事業に含めたのか、疑問を持ちます。
契約差金の扱いについては、平成十八年に財政委員会で取り上げたことがあります。差金の流用については、予算事務規則や通達で、財務局との協議が必要と慎重な取り扱いを定めていることと思います。しかし、今回のPFI事業の薬品調達に関しては、予定価格が一千六百五億円と大きいわけですから、差額の分配についても再度検討された方がよいのではないかと考えます。
差額の今後のあり方について十分検討していただくよう要望いたします。
PFI病院三事業では、都がSPCと契約を結び、SPCが協力企業に発注するわけですが、そこでSPCに出資している企業が協力企業として契約を受けている実例もあります。株主であると同時に仕事を受けているわけです。
三病院の協力企業において、少なくとも五つの出資企業が協力企業としてSPCと契約をしておりますし、また、出資企業のグループ企業も協力企業として契約をしている実例もあります。
また、協力企業の中には、平成十九年度から平成二十三年度まで、都の病院経営本部との契約実績がなかった企業も数多く含まれております。少なくとも、多摩SPCでは十二社、駒込SPCでは四社、松沢SPCでは四社、そういった協力企業があります。病院経営本部との契約実績がなかっただけに、契約の履行状況を注意深く見守る必要もあるのではないかと思います。
今申し上げたように、SPCに出資している企業が協力企業として契約を受けている事例について、契約が高どまりしないよう、都が監視及び指導するべきと考えます。SPCについては、監査法人が経理を見ることにとどまっているわけですが、監査法人は契約金額の多寡について意見を述べる立場ではありませんから、やはり都の検証が必要です。
一歩踏み込んだモニタリングの強化等に取り組むことが必要と考えます。見解を伺います。
○川澄病院経営本部長 PFI事業は、各業務にどれだけの費用をかけるのか、また、どの協力企業を選定するのかといった業務設計や遂行方法を、事業者の創意工夫に任せることにより、事業者の有する経営能力や技術的能力を発揮して、低廉かつ良好な公共サービスの提供を目指していくものであります。こうした仕組みのもと、事業者は、都の求める業務水準を達成すべく業務を遂行しております。
都は、モニタリングを通じて、事業者が都の求める業務水準を満たしているかどうかをチェックするとともに、事業者からの監査報告を通じて、毎年度、事業者の財務状況が事業遂行に問題のない状況にあるかどうかを確認しているところでございます。
今後も、モニタリングの精度を高め、事業者が担っている各業務の効率化やサービスの向上を促進していくなど、PFI事業の本質である民間の能力の活用を一層図っていく視点に立った取り組みを推進してまいります。
○佐藤委員 ぜひモニタリングの強化に取り組んでいただきたいと思います。
モニタリング業務に必要な都職員とともに、外部からの人的支援にもコストがかかっております。といいますのが、PFI事業の導入可能性調査を行う際、アドバイザリー契約をするわけですが、アドバイザリー契約をした企業の契約が、その後も一部を除き継続をしております。
多摩の場合、平成十五年から九年近くにわたり、五億九千五百七十四万円に上ります。また、がん感染症では、平成十五年から九年近くにわたり、七億二千六十五万円にも上ります。また、精神医療センターでは、平成十七年から四億九千八百五十万円にも上るわけです。三事業の合計でおよそ十八億円余りを払っております。
次に、PFI事業のコストについて触れたいと思います。
PFI事業を検討する際、VFMを算出するときに用いるのは、都が直営で実施する場合のコストと、PFI事業実施に必要な民活で実施した場合のコストを比較していると聞いております。
しかしながら、入札を実施して落札をした場合、落札差金が出てまいりますから、入札によらないコストをもとに比較するのではなく、都が直営で実施した場合の落札した金額とPFI事業実施に必要な民活での実施をした場合のコストを比較しなければ、PFI事業の方が税金の支出が少ないとはいえないのではないでしょうか。
先ほどから指摘をしてまいりましたが、税金の支出を抑え、民間活力を導入するために取り入れたPFI事業にも、多くの課題があるわけです。
また、PFI事業は、医療の周辺支援業務であり、医療の質を高めるためにも、医師の確保には引き続き尽力しなければなりません。予算を割くべきは、医師や看護師といった人的資産であって、今後も医療の質を高める必要があると考えます。
VFMを算出し、予算縮減ができたということであれば、縮減された予算を人的資産に対して予算措置していくべきと思いますが、見解を伺います。
○川澄病院経営本部長 都立病院の運営に当たりましては、必要な医療人材を適切に確保し、都民の期待にこたえる質の高い医療を提供していくことが求められております。
PFI事業では、民間事業者が有するノウハウの活用が事業全体を通じて可能となり、財政負担額の縮減のみならず、都と民間事業者の明確な役割分担による医療サービスの向上や、長期包括契約による医療周辺業務の効率化等が期待できるものであります。
こうしたメリットを生かすことにより、医師や看護師等が一層医療に専念できる環境を整えるとともに、患者サービスの向上や経営改善の取り組みを促進し、各病院における医療の質をさらに高めるよう取り組んでまいります。
○佐藤委員 医師や看護師といった人的資産に予算措置して、今後も医療の質を高めるようにご尽力いただくようお願いをして、次の質問に移ります。
長期で契約をしている都の契約には、PFI事業だけでなくファンド投資といったものもあります。これまで都が契約し、ファンドに出資した総額は百三十六億円であり、そのうちの四つのファンドが存続期間を迎え、清算することになりましたので、資料を出していただきました。
今回の予算案にも六十億円の新規ファンド投資が計上されておりますので、ファンド投資について質疑させていただきます。
今回資料を出していただいた四つの清算されたファンドでは、二十八・三億円の出資が履行され、二十五・八億円が分配されております。二十八・三億円の出資で、総額百三十一社と十四の作品に投資をしているわけです。また、投資損失も二・五億円であり、出資履行額の約九%です。
三つのファンドについては元本割れをしております。それぞれ事業再生等、政策目的を持ったファンドであったようですが、都が政策目的を設けて運用会社に委託したのでしょうが、政策目的の達成と利回りの両立についてはどう考えていたのでしょうか。
また、今回の四ファンドの投資結果についてどう考えているのかということと、予算に盛り込まれている新しいファンド投資にどう生かしていくつもりなのか、お聞かせください。
○前田産業労働局長 都が中小企業支援のために設けましたファンドのうち、四つについて期間が満了し、見込みも含めて清算がされております。ベンチャー企業などそれぞれのファンドの目的に従い、多くの中小企業などを支援いたしました。
金銭面では、うち一つが結果として分配金等が出資額を大きく上回り、三つが結果として、それぞれ程度の差は異なりますが、下回りました。
中小企業支援について金融を通じて政策目的を達成しようとする場合、制度融資であれベンチャーファンドであれ、リスクをとらなければなりません。ベンチャー企業や再生途上の企業には民間の資金が十分に供給されにくく、何の手立ても講じなければ、将来性のある企業の成長の芽を摘み、立ち直りの機会を逸してしまうことにもなります。
産業振興の観点から、企業を成長や再生の軌道に乗せるために、都はみずからファンドを設立し、資金供給だけでなく手厚い経営支援を継続的に行うことが不可欠と考え、これまで取り組みを進めてまいりました。その結果、今年度終了するファンドでは、上場を果たしたベンチャー企業や倒産を回避し業績が回復した企業など、成果があり、リスクとのバランスを確保しつつ、事業目的を達成したものと考えております。
新たなファンドにおきましても、これまでの取り組みを踏まえまして、成長支援や出口戦略の多様化など、具体的な支援の充実を検討してまいりたいと考えております。
○佐藤委員 昨年十一月十日の経済・港湾委員会の質疑で、ファンド投資の状況を確認させていただいたことがあります。その際の答弁において、なお、管理報酬は、一般的に純資産のおおむね年率三%以内で設定されているケースが多いと聞いておりますとお答えいただいております。
しかし、今回出てきた資料を見ると、都が出資した額とそれに対応する管理報酬を見てまいりますと、東京中小企業投資事業有限責任組合では、七・五億円の投資をして一・五億円の管理報酬を支払っております。実に平成十二年から十二年間の運用で、結果として二〇%もの管理報酬を支払っているわけであり、コストが高いのではないかと思うわけです。
また、動画革命東京匿名組合について、同じく都の出資とそれに対応する管理報酬を見ると、一億出資をして五年で一千万円、結果として一〇%もの管理報酬を支払っております。
今回清算が終わった四つのファンドのうち、三つは元本割れをしているわけですが、元本割れをしても管理報酬は減らないといった契約であるようです。ファンドの契約には管理報酬という高いコストがかかるということがわかります。
ファンドの管理者について、過去、コンペの結果選定し、契約したとのことでありますが、いま一度、どういった選定方法と契約であったのか検証が必要ではないかと申し上げておきます。
また、都が一億円の出資を行っておりました、この動画革命東京匿名組合でございますが、有限会社アニメイノベーション東京が運用するファンド、この動画革命東京匿名組合に対して、新銀行東京が平成十九年十二月末時点で七千万円の投資を行っておりました。
動画革命東京匿名組合のファンド総額が三億二千万円です。そのうち都が一億出資して、新銀行が七千万円出資して、合わせて一億七千万円にも上るわけです。都と新銀行の出資で七割もの比率を占めているわけです。
この有限会社アニメイノベーション東京が運用するアニメファンドに、投資を集める働きかけを都として行ったのかどうか、新銀行に対して何らかの働きかけを行ったものかどうか、委員会で質疑をしましたところ、都としても、このファンドの意義にかんがみて、円滑な立ち上げに向け、各金融機関に必要な働きかけを行ったと聞いておりますといった答弁がありました。
都がファンドの立ち上げに当たり、円滑な立ち上げに向け、各金融機関に必要な働きかけを行ったということでありますが、結果として、新銀行が七千万円の投資をするに至っているわけです。このファンドの清算結果が出たわけでありますが、結果の検証が必要だと思います。
なぜアニメファンドを立ち上げるのに、産業労働局が協力しなければいけない状況で、新銀行にも声をかけることになったのでしょうか。どういった経緯なのでしょうか。お答えください。
○前田産業労働局長 今お話のアニメファンドは、平成十七年度にアニメ産業の次世代を担う若手クリエーターの発掘と育成を促進することを目的に立ち上げました。
このファンドは都が出資するほか、都の政策目的に賛同した出資者の参加を得て実施してまいりました。
ファンドの出資先の開拓は運用者の役割でございますが、都としては、この事業の意義にかんがみ、ファンドの円滑な立ち上げを目指して、当時関係金融機関に必要な働きかけを行っております。なお、出資につきましては各金融機関の判断でございます。
一言申し上げさせていただきますが、先ほど理事から管理報酬についてお話がありました。管理報酬の割合は年当たりで表現をいたします。存続期間が長くなれば累積するものであります。いずれのファンドも一年当たりでは一般的な管理報酬の水準を上回るものではありません。ファンドの管理及び支援企業への投資育成といった、円滑な運用に見合った適正な報酬額だと考えております。
○佐藤委員 今回の三つのファンドが元本割れをしているように、政策目的のファンドの利回りは低いということがわかります。低い利回りのファンドには管理報酬の負担は重いのではないかと申し上げたわけです。
今回の清算結果を見てわかるように、政策目的のファンドが、政策目的の達成と利回りの確保を両立できるのかどうかは難しい課題だと思います。先ほど指摘をしましたように、契約期間が長いため、適切な監視と情報開示をお願いしておきます。
一方、新銀行東京は、投資をしているファンドの投資結果について、投資総額は明らかにしても、その投資結果については情報開示をしておりません。
次に、新銀行東京について伺いたいと思います。
三月二日、新銀行が中期経営計画を発表しましたが、私は、まずは再建計画の総括が必要であると考えております。
新銀行東京の政府向けの貸し出しの推移を見ると、平成二十年九月期には約七百六十一億円、平成二十一年三月期には約七百六十億円、そして、平成二十一年九月期には約二百七十四億円、平成二十二年九月末には約二百九十九億円、平成二十三年三月末には約三百六十五億円、そして、平成二十三年九月末には約三百四十三億円です。
都の答弁によれば、安定的な収益確保を図るという経営判断によって、政府向け貸し出しを行ってきたとのお答えであります。このように、再建計画の期間中、多くの資金が政府向けの貸し出しに振り向けられてきたわけです。
一方、平成二十三年九月末時点で、中小企業向け与信残高は七百七十四億円であるわけですが、今申し上げたように、政府向けの貸し出しには約三百四十三億円融資をしているわけです。ということは、中小企業への貸し出し余力は大いにあるのではないかと思うわけです。
都は、昨年同期と比較をすると増加をしていると答弁しておりますが、わざわざ日銀から多くの資金を借りている割には、中小企業融資に使っている資金の割合が少ないのではないかと思うわけです。日銀からは〇・一%の金利で一千百六十七億円を借り、政府には、日銀より高い金利で約三百四十三億円融資をしているわけです。これだけでも差益が出てくるわけです。また、日銀資金を使って有価証券運用をして利ざやを稼いできたわけです。
こういった再建計画時期の経営結果について、しっかりとした総括が必要なのではないでしょうか。再建計画の総括が記載されていないが、計画からは再建計画とは随分内容が異なっているように思うわけです。再建計画と実際どうだったのかの検証を行い、総括をするべきと考えますが、見解を伺います。
また、再建計画では、中小企業向け融資戦略全体像を示し、成長企業支援型融資では二十三年度で百億円、ファンドも百億円など、メニューごとに事業目標を掲げておりました。特に、ファンドは投資目標額に届かなかったわけですが、メニューごとの総括をお願いします。
○前田産業労働局長 平成二十年に策定いたしました再建計画は、中小企業支援を継続しつつ、黒字化を図ることを最大の目標としたものであります。新銀行東京はこの考えに従い、規模を縮小しリストラを断行することにより、赤字脱却を目指し、経営再建に取り組んでまいりました。
計画策定後生じましたリーマンショックなどの経済金融環境の激変に伴いまして、各項目一つ一つを見れば計画と相違しているものもございますが、黒字化を前倒しで果たすなど、全体としては計画に沿ったものとなっていると考えます。なお、こうしたことは、新銀行東京の中期計画において総括をされております。
また、日銀借り入れについてのお話ありましたが、これは日本銀行の金融政策として実施され、広く金融機関の利用を促しているものでございます。
○佐藤委員 四百億円の追加出資の際、平成二十年三月二十五日の予算特別委員会の総括質疑で、泉谷つよし議員が、再建計画はダミーだ、追加出資が承認されたら全く違う事業を展開するのではないかと指摘をしてきたわけですが、当初、新型保証が二百億円計画されていたように、再建計画期間中の経営実態は、再建計画の目標値と大きくずれておりました。黒字になったからいいというものではないと思います。
再建計画のメニューごとの検証がなくて総括といえるのでしょうか。メニューごとの総括結果はお示しいただけなかったわけでありますが、私は、過去、新銀行のファンド投資について、再三にわたって投資結果の情報開示を求めてまいりました。
先ほど申し上げたように、都が一億円の出資を行ってきた動画革命東京匿名組合に対しては、新銀行東京が、平成十九年十二月末時点で七千万円の投資を行っておりました。このファンドの清算結果を見ると、都は一億円出資して二千万円の返還金だったわけですから、清算まで出資を続けていたということであれば、新銀行は七千万円出資をして一千四百万円の返還金になるかと思います。
このように、大きく元本を毀損するファンドもあるわけですから、ファンドの投資結果の検証も行う必要があるのではないでしょうか。
再建計画では百億円のファンド投資計画を明記をしていたわけですが、中期経営計画の中で、ファンド投資の計画内容をはっきりさせるべきではないでしょうか。見解を伺います。
○前田産業労働局長 新銀行東京は銀行業務の一環として、ファンド投資を含む運用を行っております。
平成二十年度に策定いたしました再建計画では、その当時の見通しのもとに、お話のようにファンド投資を一つのメニューとして位置づけておりましたが、これも先ほどご答弁申し上げ、またご承知のように、平成二十年九月のリーマンショック以降の経済金融環境の激変の過程の中で、計画どおりの実行は不可能となりました。
今回の中期経営計画は現在の経済金融情勢を踏まえ、継続した黒字を見通せるようになった新銀行東京の現状に即して策定されたものであり、当時の計画と内容が異なるのは、これは当然のことだと考えます。
○佐藤委員 私が質問をしているのは、今回の中期経営計画の中において、ファンド投資の計画内容であるわけです。経営計画を出す以上、内容が固まっていてしかるべきではないでしょうか。
新銀行マスタープランには、ファンド投資について記載をしており、また、再建計画にも多額のファンド投資計画の記載があったわけです。しかし、なぜ、中期経営計画にはファンドに関する記載がないのでしょうか。
中期経営計画を発表した際、新銀行の寺井社長が、ファンドの運営体になったり、プロジェクトファイナンスのコーディネーターになったり、金融の手法は技術的にはいろいろ考えられるとコメントしたことが報じられています。であるならば、なおさら中期経営計画の中に、ファンドの運営体のことやファンド投資計画のことなども記載されてしかるべきではないでしょうか。
今回出てきた中期経営計画では、ファンド投資については、やるともやらないとも記載がないため、わかりません。私は、リスクの高いファンド投資はやめるべきだと考えております。
さて、先ほど黒字化を前倒しで果たしたという答弁がありましたが、新銀行の融資・保証実績を事業規模別に見てまいりますと、売り上げ分類が五億円以上の企業への件数割合が年々ふえており、十七年度二〇%、十八年度一九%、十九年度二二%であったものが、二十年度五三%、二十一年度六三%に大幅に増加しております。
これは、再建計画期間中に、中小零細企業への貸出実績をふやしていないことと、比較的事業規模の大きい優良な中堅企業にシフトしてきたことがわかります。
三月六日の都政新報で、寺井社長は、物すごく粒の小さいものを何万件もやるのは、生産効率の面で無理だ、中小企業中心といいながらも、生産性を少し上げるために、ロットは昔よりは大き目にならざるを得ないと述べております。
再建計画時期の融資実績を見ても、中小零細企業から優良な中堅企業にシフトしている状況であることがわかるわけですが、今まで以上に中小零細企業には貸さないということなのでしょうか。ここでいう、ロットは昔よりは大き目にならざるを得ないという文言は、どれくらいの規模の企業に融資をするということになるのでしょうか。お答えください。
○前田産業労働局長 まず、融資判断は、融資先の経営や資産の状況、個別のリスク判断等によって行われるものでありまして、初めに融資規模ありきで行うものではありません。その上で、経営効率を念頭に営業戦略をつくるのは、これは経営者として当然のことであります。
新銀行東京は経営再建過程にありまして、体力との関係で制約を受けざるを得ません。中小企業向け融資を拡大する中でも、貸出先のすべてを零細企業とすることはできません。寺井社長の発言は、中小零細企業への支援を念頭に置きつつ、そうした制約下での取り組みを率直に述べたものと受けとめております。
○佐藤委員 融資規模ありきで融資判断しているわけではないというお答えでありますが、今回の予算特別委員会の要求資料でも、売り上げ分類が五億円以上の企業への融資割合が大きく、平成二十二年度では融資金額で約七三%、融資件数で約六四%でした。また、平成二十三年度では金額で約九二%、件数で約七七%でした。
結果的にであったにしても、この融資実績を見ると、中小零細企業への貸し出しをふやしてはいないということでしょうし、中期経営計画のもとで、この傾向が強くなるのではないかと思われます。
また、寺井社長は、都の関係を生かしたい、防災やエネルギー政策など都の政策課題を解決できる技術を持った企業を都に仲介する、既に種まきを終えていると語っておりますが、これについても中期経営計画に詳細な記載がありませんが、説明をお願いします。
○前田産業労働局長 中期経営計画には、お話の東京都の政策支援を含めまして、新銀行東京の今後三年間の方針が明記されております。
この方針に基づく個々の具体的内容につきましては、株式会社新銀行東京が検討の上、東京都に提案されるものと考えております。
また、民間金融機関として、個々の取り組みの具体的内容を企画段階で公表することはあり得ません。
この二点から、計画の記載とは次元が異なるものと考えます。寺井社長は現時点で話せることを話したものと認識しております。
○佐藤委員 急遽決められた再建計画でさえ、中期経営計画より具体的に明記がされておりました。
寺井社長は、都との連携について話しているわけですから、都は株主として監視をする立場にある以上、中期経営計画に関することについては、寺井社長の記者会見の事前に把握をしてしかるべきなのではないでしょうか。
中期経営計画を発表した記者会見で、寺井社長は、社会貢献で何をやるかが最大の課題と語っており、また、次の次の計画では拠点も頭数もふやしたいと述べており、拡大について触れているわけですが、私は拡大していくことには納得ができません。一方で、寺井社長は、ほかの金融機関との提携について、現在は具体的な提携先はないが、よいパートナーがいれば、ほかの金融機関との資本、業務提携は模索していくと述べております。
私は、新銀行は、今後、リスクの高い事業拡大をすることなく、経営譲渡などで現在の未公開株式を公開株式と交換をし、都の出資を回収することなどを検討すべきではないかと考えております。事業譲渡等や株式売却等の道筋を早くつけるべきと考えますが、都の見解を伺います。
○前田産業労働局長 新銀行東京は、これまで懸命に再建を進め、連続して黒字を計上するまでになりました。この間の現経営陣の努力は民主党さんからもご評価いただいていると思います。
新銀行東京は、これまでの取り組みを踏まえ、今回三カ年の中期経営計画を策定いたしました。今後、安定した黒字体質を継続しつつ、経営基盤をさらに強固にいくとしております。
こうした取り組みをさらに進め、企業価値を高めることが重要であり、それが四百億円の追加出資を保全することにつながるものと考えております。
そうした段階で、お話の事業譲渡や株式売却をやみくもに追及しても、それは民間銀行である新銀行東京にとっても、その多数の取引先にとっても、出資者である東京都にとりましても、何一つメリットはないと考えます。
○佐藤委員 再建計画期間中であっても、石原知事は事業提携などについて発言をしていたわけです。再建計画中や中期経営計画中であっても、事業譲渡や株式の売却の検討や交渉は可能なはずです。
これまで、提携先等について、石原知事がさまざまな発言をしていたわけでありますが、新銀行と他企業との事業統合がなされた場合、他企業に直接株式を購入してもらうといった可能性もあるわけですし、また、都が保有する未公開の新銀行株式を、統合先企業の公開株式と交換をすれば、公開株を売却することで都の出資分を回収することも可能になるのではないでしょうか。
都が出資をしてきた資金を回収することを念頭に、事業譲渡や株式売却を模索するべきではないかと申し上げて、私の質疑を終わります。(拍手)
○大塚委員長 佐藤広典理事の発言は終わりました。
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