予算特別委員会速記録第四号

○西岡副委員長 栗林のり子委員の発言を許します。
〔西岡副委員長退席、鈴木(貫)副委員長着席〕

○栗林委員 それでは、質問に入らせていただきます。
 二十四年度の東京都の予算は、防災力向上に向けた強い決意がうかがえるものになっていると思います。
 先日、電車の中で、東京消防庁の中づり広告が目にとまりました。人とまちが織りなす大切な日常を守る地域防災のかなめ、消防団募集の広告ではありましたけれども、いいキャッチコピーだなと思いました。
 まさに地域防災とは、人とまちが織りなす大切な日常を守る、生命と財産を守ることです。災害に強い建築物と助け合える強い地域コミュニティ、これが柱ではないでしょうか。ハード、ソフト両面の対策をさらに強化する必要があると思います。
 初めに、安全な建築物という観点から、路地状敷地、いわゆる旗ざお地といわれる大規模長屋についてお伺いをいたします。
 路地状敷地とは、路地状部分のみによって道路に接する敷地で、道路に接する間口部分は狭いものの、その奥が広くなっている、いわゆる旗ざおですね。こういう旗があって、さおがある。さおのところが通路で、旗の部分が宅地になっている形状の敷地でございますけれども、そこに建築基準法では特に制限は設けられていないわけですが、東京都は独自に東京都建築安全条例の中で共同住宅の建築は禁止しているわけですが、長屋は道路に通じる通路を確保することなどによって建築が可能であり、戸数に制限などが設けられておりません。
 最近、このような敷地を活用した大規模な長屋が、私の地元世田谷区や隣の目黒区などで相次いで建築されており、周辺住宅街への圧迫感や安全性などの面から、近隣住民との間で紛争に至る事例が出てきております。
 世田谷区は、住居系用途地域が全体の九一・二%であり、第一種低層住居専用地域が半数を占めるという、まさに低層中心の住宅都市という特殊性を持つ地域であります。
 最近は、相続の関係から、広い庭つきの戸建てが売却され、その跡地に建てられる建築物をめぐり、さまざまな問題も出てきております。
 そこで、昨年、第三回定例会で我が党の斉藤議員がこの問題を取り上げた際、路地状敷地の大規模長屋について実態を調査するとの答弁がありましたが、その調査結果についてお伺いをいたします。

○飯尾都市整備局長 路地状長屋として都内で建築確認があったもののうち、調査対象といたしました延べ床面積三百平方メートル以上のものは、平成二十一年四月から平成二十三年九月までの二年半で約三百件ございました。
 長屋は共用の廊下や階段がございませんで、住戸が隣接または上下で重なり合う形式の住宅でございまして、都内各地で建築されておりまして、敷地の形状や戸数、配置はさまざまでございました。
 中には、住宅地におけるマンション建設時に見られるような近隣紛争となる事例がある一方で、周辺の住環境に配慮いたしまして、隣地境界よりも建築物を後退させた事例もございました。

○栗林委員 二年半で三百件とは、かなり多いと感じます。世田谷区を見ても、今後、相続などから、このような土地が売買の対象としてさらにふえる可能性があるのではないかと思います。
 同じく昨年、三定で、建築完成後の適正な管理について、区市と連携して建築主に対し指導を徹底していくとの答弁がありましたけれども、その取り組みはどういう状況か伺わせていただきます。

○飯尾都市整備局長 都は、毎年、都内全域で一斉公開建築パトロールを行っておりまして、昨年は、第三回定例会での質疑を受けまして、直後の十月のパトロールにおきまして、路地状敷地の長屋も対象に追加いたしました。
 その結果、路地状部分にごみ箱が設置されるなど、建築安全条例に定める通路の幅員が確保できていない事例の報告が五件ございました。
 これを踏まえまして、区市や指定確認検査機関に対しまして、建築確認時の審査の徹底を図りました。
 また、工事完了時における検査においても、設計図書どおりに施工されていることを確認するとともに、適合しない場合は確実に是正させることを徹底したところでございます。
 さらに、区市に対しましては、工事完了後も適正な維持管理を図るため、パトロールを実施いたしまして、適正な是正指導を行うよう要請いたしました。

○栗林委員 安全が一番重要でございます。完了検査後に、二メートルの通路に後づけでごみ箱を設置したり、バイクとか自転車の駐輪スペースになっているようでは、避難通路はわずか一メートルになってしまいます。その奥に数十軒の住人が暮らすことになります。
 住宅の安全性と住民の安全性ということからも、徹底した強い是正指導が必要です。まじめにルールを守り建築する方もいる中で、違反行為をやった者勝ちという、そういう流れは根絶をしていかなくてはならないと考えます。
 そこで、やはり防災が最大のテーマでございます。建築物の安全性を確認する上で、区市に対する指導徹底やパトロールについて、今後も継続的に行うことが必要であると思いますが--今後も引き続き取り組んでいくと思いますが、その辺のお考え、局長、お聞かせください。

○飯尾都市整備局長 都は、月一回の区市との連絡会議におきまして、東京都全体の建築行政を担う立場から必要な情報提供や意見交換を行うとともに、区市と合同で一斉公開建築パトロールを実施しております。
 都といたしましては、このような機会をとらえ、区市との情報交換を行いながら、必要に応じて建築確認時や完了検査時における確認を徹底するとともに、一斉パトロールにおいて是正指導を促してまいります。
 今後とも、引き続き区市と連携いたしまして、路地状敷地における長屋の安全性の確保に取り組んでまいります。

○栗林委員 ぜひ強い姿勢でお願いいたします。
 また、世田谷区では、このような路地状敷地の長屋建築に関しまして、残念なことに近隣との紛争が数件起きております。争い事は地域コミュニティを分断し、支え合い、助け合う地域を構築することも難しくなっていきます。それは地域防災力の低下にもつながっていきます。
 先日の本会議でも知事がおっしゃっていました、近所で近助、近所で助け合う、そういう向こう三軒両隣で助け合うことがやはり大変重要だと思います。
 また、紛争に巻き込まれている多くの方が、高齢者の方なんです。戦後の混乱期に、日本が一番大変だった時代に、苦労して、頑張ってこられて、そして第一線をリタイアされてから、静かな住宅街で余生を暮らそうと思われていた方たちです。まちに緑を残すこととか、住環境を守るために努力をされて、まちの景観を守ってきた方たちなんです。
 ここはマンションとかアパートは建てられないと聞いていたのに、突然、長屋という名のもとに大型で重層な集合住宅が建てられているなんて困惑をしています。
 区に行くと、これは都の条例が、都に行くと、区で規制ができるはずということで、結局は都民、区民はたらい回しという中で、こういう問題は、都と区のすき間に入っている問題があるのではないかと思います。
 パトロールを徹底し、違反に対しては厳しく対応し、紛争にさせない取り組みを求めます。
 昨日も、知事の答弁の中で、地域地域の特性が生きるまちづくりが大事であるとおっしゃっていらっしゃいました。そのとおりだと思います。
 東京二十三区、多摩地域、また島しょと、それぞれの特色があります。それぞれの区市が、特色ある、そして災害に強いまちづくりが進むよう後押しをしていただきたいと思います。
 世田谷区は、現在、区条例の見直しや規制をめぐる対策案など検討しようという動きが出てきております。ぜひ都も、さまざまな事例のノウハウもお持ちなんですから、提供していただき、区とともに知恵を出して、都と区とそれぞれの権限が問題解決にうまく機能するよう対応していただくことを要望いたします。
 続きまして、少子化対策について伺います。
 総務省の二〇一〇年十月の国勢調査の結果で驚いたのは、単身世帯の増加でありました。夫婦と未婚の子どもから成る世帯二八・七%を上回り、単身世帯が三一・二%と一番多いという結果になりました。
 中でも、中年未婚者で、何と男性は四十代前半で二七・九%、後半で二一・五%が未婚で、離別、死別者五%を合わせると、四十代男性の三人に一人は配偶者なしという状況です。
 この単身者の増加は、社会保障制度などの社会政策の根幹にかかわることになります。東京都も、三十年後の単身世帯は約五〇%近くなるといわれています。このままこの状況が続くと、五十年後の日本は、十人中四人が高齢者、五人が現役世代、何と子どもはたった一人という、そういう社会になると予測をされております。
 平成二十三年度版の高齢社会白書によると、東京都の高齢化率は二〇三五年には三〇・七%、また平均寿命は二〇五五年で男性八十三・六七歳、女性九十・三四歳と予測されています。
 高齢化率、単身世帯率の増加を考えると、社会保障制度などへの影響だけではなく、当然、防災力の低下にも通じることとなります。そのような背景を考えると、少子化対策はさらに強化が必要であります。
 少子化を克服するには、これから結婚し子どもを持つ若者や子育て中の家庭が、安心して子どもを産み育てることができる社会を築かなければなりません。
 しかし、平成二十三年四月の保育所待機児童は七千八百五十五人であり、依然として高い水準になっています。こうした状況は、実際に保育所を利用しようと考えている世代だけではなく、これから子どもを持とうとする世代にとっても大きな問題です。
 都は、少子化打破緊急対策において、平成二十二年度から三年間で二万二千人の保育サービスをふやそうとしています。平成二十四年度からはさらに取り組みを強化し、平成二十六年度までの三年間で二万四千人分をふやす方針を打ち出され、より積極的な姿勢を出していらっしゃいます。
 そこで、安心して子どもを産み育てることのできる社会の実現に向けた知事のお考えを、改めてお伺いをさせていただきます。

○石原知事 ご指摘のように、我が国は既に人口減少社会に突入しているわけでありまして、このまま少子化が進めば、経済のパイも縮小して税収は減って、年金や医療、あるいは社会のインフラの維持が非常に難しくなって、また、日本の文化や伝統すらが失われることになりかねないと思います。
 日本は日本で大変なところに来ておりますけれども、聞くところ、ロシアは人口がどんどん減って、統計していくと、五十年後には人口がいなくなると。そういう状態には絶対持っていっちゃいけないと思いますし、国は国でさまざまな施策を講じておりますが、子どもを持つことへの国民の不安はなかなか払拭されておらずに、少子化の流れを変えることは非常に難しい状況であります。
 私も、まちで二人以上の小さなお子さんを連れていらっしゃる夫婦を見ると、非常にうれしくて、思わずちっちゃな子どもの頭をなでたりするんですけれども、これ、私はいろんな原因があると思いますね。
 経済状況もあるでしょう、いろんなこともあるでしょうが、やっぱり私は、家庭の構造が狂ってきて、三代一緒に住むということが本当に必要だと思うんですけれども、このごろの若い人たちは、結婚すると親とは一緒にいたくないということで、結局子どもを産んでも、ちょっと熱が出ると周章ろうばいして、病院へ赤ん坊を抱えて飛び込んでくる母親がふえておりますが、そういった実態が示すように、何というんでしょうか、それは子どもが熱出して不安でしょうけれども、おじいちゃん、おばあちゃんがいれば、特におばあちゃんがいれば、こんなものはすぐ治るとか、安心しろとか、いろいろ手だてを講じてくれる、知恵も与えられるんでしょうけれども、それがないまま気苦労ばかりで暮らしているものですから、子どもがふえない、一人でたくさんだということになりかねない。
 そういう点では、やっぱり私たち、人生の組み立て方というものを根本的に考え直す時期に来ているんじゃないかと思いますが、これは政治家が幾ら喧伝しても、国民の皆さんが自分の選択で人生を決めるわけでありますから、行政のできる範囲というのはごく限られていて、非常に困難な問題だと私は思っております。
 答えになりませんけれども、そういう実感は日に日に強くしております。

○栗林委員 知事、本当にそのとおりで、私も、これから結婚する世代に、そういう子育て環境、決して保育園とかそういう施設ではないんだという、やはり家族という、もう一回その辺の認識だとか、そういったことも学べるような場も必要じゃないかなと思います。
 最近は、やはりそういう生き方が見直されていまして、親に、おじいちゃん、おばあちゃんに子どもを見てもらって、おじいちゃんをイクじいという--育児をするパパをイクメンと呼びましたけれども、育児をするおじいちゃんはイクじいということで、最近そういった取り組みがふえてきているという状況も出てきております。
 そういったことを考えましても、結婚したいと思っている未婚の男女、調べてみますと、約九〇%ぐらいの人がいずれは結婚したいと思っているんですね。大体何歳ぐらいでということを調べましたら、男性は三十・四歳、女性は二十八・四歳ということで、これもちょっと上昇傾向にあります。
 また、異性の交際相手がいないというのが、男性で六一・四%、女性で四九・五%、どちらも上昇傾向にあります。
 そういったさまざまな環境、状況を考えまして、先ほども虐待のお話がありましたけれども、結婚、妊娠、出産、子育て、各ステージにおいて、これから結婚する若い世代に、子育ての楽しさとか喜び、こういったことを身近に感じていただけるような取り組みも必要と考えますが、保健局長、見解を伺わせてください。

○杉村福祉保健局長 結婚や出産を望む人たちが安心して家庭を築き、子どもを育てることができる環境を整えることは、社会全体で取り組むべき課題であると認識をいたしております。
 そのため、都は、少子化打破緊急対策におきまして、平成二十二年度から、保育、医療、雇用、住宅など各分野にわたりまして、子育てを支援するための具体的対策に取り組んでおります。
 また、企業、関係団体、NPO等の参画を得て設置をいたしております子育て応援とうきょう会議では、仕事と生活の調和について、将来の子育て世代である大学生等が考えるフォーラムを開催するなど、若い世代が結婚や子育てへの理解を深めることを支援いたしております。

○栗林委員 意識啓発ぜひやっていただきたいと思います。
 しかし、意識啓発だけではもう間に合わないかなと思います。直接支援が必要な時代でございます。
 結婚活動、婚活という言葉、またパラサイトシングル、こういう言葉の概念を生み出されました家族社会学者の山田昌弘先生が、著書の中で、婚活時代の到来をこう分析しています。それは、仕事を持つことと結婚することは人生の二大イベントだ。精神分析学者の創始者でもありますフロイトがいっているんですけれども、人が上手にできるようにならなくてはならないことは、働くことと愛することであると述べています。
 今は、この二つのイベントをクリアするために、意識的に活動しなければ難しい時代に入りました。昔は選択肢そのものがありませんでしたから、何も考えることなく、仕事と結婚というこの二大イベントをクリアできたんですが、もう時代は変わりました。
 ちょっと分析させていただきますと、就職と結婚は関係が物すごく密接だというんですね。一九九〇年代ぐらいまでは、まず就職でいうと、規制された就職市場だった。学校経由の就職あっせん、就職協定、また女性が制限されていた。ですから、ほぼ全員が職につける時代だった。
 結婚はどうかというと、規制された結婚市場だった。職場と見合いによるあっせんが行われていた。これは職場結婚か、あっせんというのは地域とか職場とか親戚などで必ずおせっかいな、私のようなおせっかいおばさんがお見合い写真の束を持っていて、該当する人がいたら近寄っていって、どうというような、そういうお見合いをあっせんする方がいました。
 また、恋愛と結婚という、その規範があったんですね。男性は仕事、女性は家事というような標準型があった。ですから、ほぼ全員が何とか結婚が可能な時代だったと。
 ところが、一九九〇年以降、就職の規制緩和、そして結婚の規制緩和が始まります。
 まず、就職の規制緩和は学校のあっせんが縮小されます。就職協定がなくなります。そして、男女雇用機会均等法、こういったことで大いに女性の活躍の場も広がってまいります。そして、希望どおり就職できる人とフリーターなどへの二極化が始まります。そのため就職活動が必要となり、そして就職支援活動が活発化されることになります。
 片や結婚はどうかというと、男女交際の増大になります。ここからあっせんが縮小していきます、自分のことは自分で決めるという。恋愛と結婚の分離が始まります。恋愛は恋愛、結婚は結婚という。希望のライフスタイルの多様化です。自分らしく、ここから標準型というものはなくなっていきます。ここで格差が拡大します。希望どおり結婚できる人と未婚化への二極化です。
 就職に関しては、公的支援、ハローワークとか、就職相談とか、今も合同面接とかいろんなのがありますが、この結婚については公的支援がない現状があります。
 ここで、山田先生がこの社会状況を見て、よりよい就職先を見つけるには、会社情報を集めたり、自分から積極的に行動する就活が必要不可欠となった。結婚も同じで、恋愛観や結婚観にも規制緩和が進み選択肢が広がった。就職にしろ結婚にしろ、自由化が起これば積極的に活動しなくては実現が難しい状況となった。
 就職活動についてはそのようなハローワーク等の公的支援があるけれども、結婚支援については、いまだ支援がない。
 そういうことを背景に、昨年の内閣府の調査で明らかになりましたのが、結婚支援事業の実態調査を見ると、都道府県で約七〇%です。七〇%がもう実施しております。兵庫県では、ひょうご縁結びプロジェクトを開始し、何と四千人が登録をされたそうです。また、区市町村でも三三%が実施をしておりまして、都内でも、各市のサポート事業が始められており、新宿では、昨年十一月、区の主催で三十歳のつどいというイベントが行われました。世帯形成期の若者の仲間づくりを後押しするとともに、行政への関心も深めてもらうことがねらいですけれども、さまざまなコーナーの中に、出会い、懇親の場なども設け、約五百人が来場し、大盛況だったと聞いています。
 このように、区市も取り組み、また、商店街とか地域でも取り組み、街コンなどという取り組みも始まりました。ですから、ここで東京都しかできない取り組みを私は提案したいと思います。
 それは何か。ボランティア活動です。ボランティアは共同作業を通し、継続的に、知事が先日おっしゃっていました、自我の確立と他者のかかわり、これが今余りにもないんです。共同事業を通して他者とかかわっていく、そして継続という長いスパンで人とかかわりを持つ中で、よさも見出せるのが、やはりボランティアではないかと思うんです。
 そのボランティアも、都内には、次世代に残すべき自然環境がたくさんあります。それらの保護活動、清掃活動とかに、未婚でチームを組んで、ボランティア活動を通して出会いの場のような仕組みを構築できないかと思います。これ予算はかかりません。ボランティアですから、むしろ貢献してもらえます。仕組みをつくればいいだけなんです。
 例えば、海の森、ここに春と秋に苗を植えるそうです。苗木を植えて、数年たったときに樹木も育つ、それと同時に愛も育つ、こんな夢のあるようなプロジェクトができるのではないかと思います。
 少子化打破なんです。これはすばらしい打破の緊急テーマがございます。でもあと一年でこの打破をやり遂げなければいけないという喫緊の課題にもなっております。この少子化打破するために、こういったボランティア活動を通しての支援活動に、ぜひ力を入れて取り組むべきと考えるんですが、これはご答弁どなたもいただけないんです。実は、結婚というカテゴリーは、どこも受けとめていただけないのです。それこそ、たらい回し……(石原知事発言を求む)知事、お願いいたします。

○石原知事 それは結婚せずに一生を送る人生というのはむなしいものだと思いますから、せっかくおっしゃっていただいたボランティア活動を通じて、たくさんのカップルができたら結構なことで、仕事はたくさんありますから、幾らでも準備いたします。(拍手)

○栗林委員 若者の文化を牽引された知事のご答弁、本当に深く感謝いたします。ありがとうございます。
 次に、児童養護施設の退所者の支援についてお伺いいたします。
 虐待や養育放棄などにより、親からの愛情に接する機会がなかった子どもは、心に大きな傷を抱えているだけではなく、大人への不信感を抱いたり、自己評価が低いなど、さまざまな課題を抱えています。こうした子どもたちは、児童養護施設などで育ち、社会に巣立っていくが、社会に出た後もさまざまな困難を抱えるといわれています。
 都は、昨年、全国的にも例のない施設退所者に対するアンケート調査を実施いたしました。施設から社会に巣立った子どもたちが、社会に出た後どのようなことで困っているかを把握するために、当事者の生の声を聞くことは極めて大切なことです。この調査結果から、雇用形態が不安定な状況がうかがえ、その背景には、施設で育つ子どもは、親など身近な大人の働く姿に触れる機会がなかったなどの職業観の形成が困難だったということも、うかがうことができました。
 同じ年代の子どもたちは、社会に出た後も、親など身近な大人に支えてもらいながら少しずつ自立していくものですが、施設などで育ち親からの支援が期待できない子どもたちも、同じように支えとなる存在が必要です。
 そこで伺います。養護施設などで育つ子どもにこそ手厚い支援が必要であり、社会に出た後に確実に自立できるよう、支援の必要性を、我が党は昨年の定例会で、高倉議員の一般質問、その後の代表質問でも取り上げ、これまでも強く求めてきたところですが、これまでの施設における取り組みと都の支援について伺います。

○杉村福祉保健局長 児童養護施設におきましては、児童が社会で自立した生活を送れますよう、一人一人の自立支援計画を策定をいたしまして、児童の状況に合わせた進路指導を行いますとともに、基本的な生活習慣や金銭管理、社会人としてのマナーなどを習得できますよう指導を行っております。また、NPOや企業などの協力を得まして、学習支援や就労支援も行っております。
 退所後におきましても、児童が生活や就労の面で困ったときに相談を受け付けますとともに、必要に応じまして職場や自宅へ訪問するなど支援を行っております。都は、こうした施設のさまざまな取り組みに対し、独自の補助を行うなどにより支援をいたしております。

○栗林委員 施設においては、虐待を受けた子どもの入所が年々増加しているといわれています。施設の職員は、今施設にいる子どもの支援、指導をしながら、退所した人たちの相談に、あいている時間とか勤務時間等を使って当たっていただいているようです。一人一人に光を当てた支援、自立支援が大事です。二十四年度の対応策を伺わせていただきます。

○杉村福祉保健局長 都は、児童養護施設におきまして、入所している児童の自立に向けた支援や施設退所後の相談支援を、より手厚く行える体制を整備いたしますため、来年度から、新たに自立支援強化事業を開始することとしております。
 この事業では、各施設に、自立支援コーディネーターを配置いたしまして、進路指導などについて他の職員に助言を行いますとともに、学習支援に取り組む団体などとの連携を強化いたします。また、施設内で必要な情報の共有化を図りまして、退所した児童について、継続的かつ効果的な相談支援を行ってまいります。
 こうした都独自の取り組みによりまして、児童養護施設の体制を強化し、社会的養護のもとで育つ児童の自立を支援してまいります。

○栗林委員 自立支援コーディネーターの配置は大変重要な役割を果たすこととなると思いますので、よろしくお願いしたいと思います。
 それでは、災害時のトイレ問題、伺わせていただきます。
 トイレという問題は、なかなか口に出しにくいテーマということで、しかしこの震災を通して、食料と同じぐらい重要であると同時に、課題も明らかになりました。災害時に、だれもが安心して利用できるトイレ環境は重要です。
 トイレに行く回数を減らすため、水分や食事を控えたり、そういったことから体調を崩すこともあり、時には、命にかかわることになるともいわれています。大人一人の一日のし尿排せつ量は一・四リットル前後といわれておりまして、専門家の間でも、三日分の対応が必要といわれています。そこで、この都庁内の災害時のトイレ対策はどのようになっているか伺います。

○安藤財務局長 都庁舎は、首都直下地震にも耐える耐震性能を有しておりますので、地震等の災害時におきましても、建物内のトイレを使用することとしております。なお、仮に断水が生じた場合でも、建物内のタンクにあります水を使用することで、三日程度の利用が可能であり、また、非常用の仮設トイレも四十基を準備しておるところであります。

○栗林委員 耐震性とトイレの水の確保はわかりましたけれども、それでは、便器の数は、どのぐらいあるのか伺わせていただきます。

○安藤財務局長 都庁舎のトイレの便器の数ですけれども、第一、第二本庁舎、都議会議事堂の三棟合わせまして、大便器が千十七個、小便器が六百四十個の合計千六百五十七個でございまして、うち女性用は四百六十五個、身体障害者の方用は百十五個でございます。

○栗林委員 数を知るということは、大変大事なことだと思います。
 昨年三月十一日、都庁舎内に、五千人に上る多くの帰宅困難者の方がいらっしゃいました。都庁の職員の方も懸命に対応してくださったわけですけれども、五千人のうち、女性は半分として二千五百人。当日は、女性トイレは長蛇の列だったと聞いています。
 一方、職員の人数ですが、都庁舎内の職員は約一万人と聞いていますけれども、東京都人事委員会の平成二十三年四月一日現在の発表資料、都職員の構成によると、女性の職員の比率は、知事部局で五割を超えている。すると職員は、女性が五千人いるということになります。しかも、今ご答弁いただいた便器の数は、第一庁舎で四十五階、第二庁舎で三十二階、議会棟で七階までの全部の数であります。帰宅困難者の方が、高層階を利用はしにくいです。そうなると、比較的低層階で対応することになるのではないでしょうか。
 私調べましたが、第一本庁舎も第二本庁舎も、一階の女子トイレ便器の数は六個、だれでもトイレは二つ、議会棟の一階は十八と、だれでもトイレが四つ、三つの建物一階全部足しても、何と三十四です。もう計算するまでもなく、足りないという感覚は持っていただけるのではないかと(「足りないですよね」と呼ぶ者あり)はい、足りないんです。都庁舎は、一時滞在施設としての指定が想定されています。女性用トイレについて、仮設トイレや簡易トイレを確保するなど、手厚く配慮をお願いしたいと思います。さまざまな状況をシミュレーションし、さらなる対応策を進めていただきたいと思います。
 先日の本会議で、我が党の松葉議員から、女性の視点に立った防災対策の推進についての質疑を行い、地域防災計画の検討に当たり、女性の声を反映させていく旨の答弁がありました。トイレ対策にも、女性の視点が大変重要でございます。
 阪神・淡路大震災や東日本大震災でも厳しい現実がありました。子どもが怖くてトイレに行きたがらないとか、高齢者の方にとり、トイレが遠く行きにくいなど、子ども、高齢者、女性にとっても、より深刻な影響としてあらわれています。さらにいえば、仮設のトイレを設置する場合、プライバシーへの配慮や設置の男女比など考慮すべきことがさまざまあります。
 そこで伺います。都は、現在、地域防災計画の修正を進めていますけれども、東日本大震災の教訓を踏まえて、発災時のトイレ機能の確保に向けた取り組みにおいても、女性の視点を踏まえた対策が必要と考えますが、局長、見解を伺います。

○笠井総務局長 発災時のトイレ機能の確保は、避難者の生活環境を維持する上で不可欠でございます。東日本大震災では、断水に伴うトイレの不足、し尿処理への対応、公衆衛生の確保などについて、さまざまな課題が明らかになりました。
 また、臨時トイレを設置する際の女性のプライバシーへの配慮なども求められており、こうした教訓を防災対策の見直しに生かす必要がございます。このため、今後、トイレ機能の確保を検討するに当たりましては、東京都防災会議のもとに設置いたしました検討部会において、専門的な知見を有する女性委員や被災地に派遣された女性職員などの意見も踏まえた具体的な検討を行い、その経過を地域防災計画の修正に反映させてまいります。

○栗林委員 ぜひとも、被災地派遣の経験などを生かした対応策を進めていただきたいと思います。
 それでは、薬物乱用防止策の推進についてお伺いいたします。
 これから日本をしょって立つ子どもや青少年を守り、そして健全に成長させていくためには、善悪を正しく判断する知識を持つことが重要です。大量な情報があふれ、どんなことでもゲーム感覚で安易に行動に移すことが可能な時代になってしまっています。
 その一つが脱法ドラッグです。今回、徹底した都の調査で、合法ドラッグと称して販売された薬物から合成麻薬が検出されました。これは、都が独自の調査で法律の取り締まり対象になっていない脱法ドラッグを売る店が九十三店舗あることを確認してきたほか、平成八年から開始している脱法ドラッグの買い上げ調査、さらには我が党も推進してきた、平成十七年四月に、国に先駆けて制定した東京都薬物の濫用防止に関する条例による薬物規制と普及啓発に取り組んできたからこそ、問題を明らかにすることができました。このような調査は、さらに強化すべきと考えます。
 私も、若い方たちと、薬物乱用防止のボランティア活動をしていますが、一年ごとにアンケート調査をやっています。大麻など薬物を使おうと誘われたことがある、二〇〇九年では一八・六%、二〇一一年では一九・五%、やはりアップしていました。使ってみたいと思ったことがあるのも、やはり一一・四%から一二・四%と増加傾向でございました。
 しかし、いろいろな、さまざまな意識啓発事業をしていただいていますけれども、そこをすり抜けるかのように手を出してしまう若者の実態は、依然としてふえていることがわかります。
 そこでさらに、薬物乱用防止のメッセージを、幅広く若者に届くよう、効果的に発信していく必要があると思いますが、局長の見解を伺います。

○杉村福祉保健局長 都では、年代に合わせた内容や方法を工夫しながら、若者に対して、薬物乱用防止の普及啓発を行っております。
 中学生では、薬物乱用防止のポスターや標語を募集しておりまして、今年度は過去最高の約三万九千点の応募がございました。最優秀作品は、都の普及啓発にも活用をいたしております。
 また、高校生では、薬物乱用について学習をする高校生会議を実施いたしまして、その活動の成果を、麻薬・覚せい剤乱用防止運動都民大会で発表いたしますとともに、リーフレットにまとめ、高校一年生全員に配布をいたしております。
 さらに、多くの若者が集まります自動車教習所やカラオケボックスなどでのポスターの掲示や街頭ビジョンの活用などにより、広く青少年向けに啓発を行っております。
 今後もこうした取り組みを進め、次世代を担う若者に対して効果的な啓発活動を推進いたしていきます。

○栗林委員 さらなる若者、青少年を守る活動、取り組みに期待し、質問を終わります。(拍手)

○鈴木(貫)副委員長 栗林のり子委員の発言は終わりました。
 この際、議事の都合により、おおむね十五分間休憩をいたします。
   午後三時四分休憩

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