予算特別委員会速記録第四号

○鈴木(あ)副委員長 尾崎大介委員の発言を許します。
〔鈴木(あ)副委員長退席、西岡副委員長着席〕

○尾崎委員 それでは、まず最初に、地域主権改革に伴う権限移譲について、何点かお伺いさせていただきたいと思います。
 本年、二十四年の四月から来年の四月にかけて、地域主権改革に伴う基礎自治体への権限移譲ということで、多くの事務が市区町村に都道府県から移譲されることになります。この権限移譲に伴う財源措置、これは一時的には国の責務であることは理解できますけれども、そうはいっても、区市町村において対応できない場合も想定できるわけであります。
 これまた、事務量も増加いたしまして、財政的負担も増すことになるわけでありますから、権限移譲と財源措置はセットでありまして、適切な事務執行には確実な財源措置が不可欠だと考えます。地域主権大綱においては、国は、権限の移譲に伴って、適切に既存の財源措置を見直し、市町村に対して、地方交付税や国庫補助負担金などに関し、確実な財源措置を行うこととするとあります。
 そこでまず、お伺いしたいんですけれども、財源措置は国の責務とされておりますけれども、国の対応というのはどうなっているのかお伺いいたします。

○笠井総務局長 基礎自治体への権限移譲に伴う財源措置につきましては、地域主権戦略大綱におきまして、国が、地方交付税や国庫補助負担金などにより確実に行うこととされております。
 これまでの国の説明では、地方交付税につきましては、基準財政需要額の算定において、都道府県分を市町村分に振りかえ、市町村分を増額措置することで対応するとのことでございます。

○尾崎委員 不交付団体に対する財源措置というのは、現時点において不明確でありまして、私、調布なんですけれども、調布のような不交付団体にとっては、事実上、財源措置とならないわけであります。
 現在、市長会からも東京都への支援要請が行われておりますけれども、一部の事務は、事務処理特例条例において既に区市町村に委託されております。これの場合は、条例でありますから、委託料だとか、いろいろな形でお金が出る部分はあるんでしょうけれども、今回のこの一括法によって移譲される事務の場合は、東京都からの交付金も交付されないことになるわけでありまして、これは交付されないことになるだけでなくて、逆に自治体で処理できないものを東京都に逆委託するような場合には、逆に今度は、東京都に対し委託料が発生してしまうというようなことになるわけであります。
 これを考慮すると、権限は来たけれども、財源がないとなれば、仕事はふえてもお金が一方的に出ていくことになりかねないわけであります。これは余りにも市区町村の負担が大き過ぎると考えるわけでありまして、特に不交付団体にとっては、財政負担はかなり増すものと思われますので、東京都による財源措置なり支援措置が、これは必要だと思うんですけれども、東京都の対応をお伺いいたします。

○笠井総務局長 移譲事務にかかわる財源措置は、地方交付税や国庫補助負担金などにより国の責務で行うものであり、不交付団体という理由から、都が重ねて措置することは困難でございます。
 しかしながら、地方交付税では、不交付団体にとって事実上の財源措置になり得ず、不満があることは都としても承知しております。
 そのため、都は、不交付団体など、すべての市区町村に対し、必要な財源を措置するよう国に要求いたしております。
 今後とも、市区町村と連携をいたしながら、国に対して確実な財源措置を求めてまいります。

○尾崎委員 ぜひこれは、規模は違いますけれども、同じ不交付団体の立場で、ぜひ国に強く要望していただきたいと思います。
 移譲事務の中には、非常に専門性が高く、市町村で担い切れない可能性があるものがたくさんあります。例えば水道法なんかも、その一つの例でありますけれども、多摩地域は、今回の水道業務の一元化によって、水道に関するノウハウが、もうなくなっちゃっているわけであります。特にうちの調布市なんかもそうでありますけれども、こういった場合に、広域性を持つこうした事務もあるため、単独の市町村では実施できないものもあるわけであります。
 こうした事務を円滑に執行するために、事務の共同処理や、あるいは東京都への事務委託等も考えられますけれども、やっぱり自治体間連携というのは、一つの自治体がイニシアチブをとっても、なかなかこれは進まない部分もありますので、ぜひ東京都がリードしてもらわなくちゃ、なかなか進むものではないと考えるんですが、見解をお伺いいたします。

○笠井総務局長 基礎自治体への権限移譲におきましては、移譲を受ける市区町村が、組織体制を整備するなどの主体的な取り組みによって、事務を実施していくことが求められております。
 しかしながら、事務の専門性や効率性などの観点から、一部事務組合の活用や他の地方公共団体への事務委託など、自治体間連携により事務を共同で処理することも、円滑に業務を行うための有効な選択肢の一つでございます。
 市区町村が自治体間連携を行う際には、広域性や執行体制などを踏まえ、十分な検討を行うことが必要であり、都としては、これまでも、具体的な手法の周知、助言を行っているところでございます。
 なお、都に対し事務委託の要請があった場合には、地方分権の趣旨を踏まえ、事務の内容や市区町村の実情などを総合的に勘案いたしまして、受託の可否を判断してまいりたいと思っております。

○尾崎委員 市町村への権限移譲の中で行政サービスの実施主体がかわることになるわけでありますから、それによって住民生活や企業活動の混乱を生じさせてはならないと思います。
 これは、先日の本会議でも、移譲後において区市町村からの照会や、あるいは相談に随時対応して、きめ細やかなサポートを行うと答弁をされておりますことから、今後もしっかりと支援をしていただきたいと強く要望して、次の質問に移ります。
 児童虐待について質問をさせていただきます。
 最近、この児童虐待のニュースが、連日、毎日のように報道されまして、後を絶ちません。先日、我が会派の松下玲子議員が、杉並区における里親による三歳の児童虐待事件について本会議で取り上げましたけれども、東京都として対策を急ぐべきだという観点から、何点か質問をしていきたいと思います。
 厚労省がまとめた児童相談所における児童虐待相談対応件数によれば、平成二十二年度の速報値として全国で五万五千百五十二件、うち東京都は四千四百五十件という報告がなされております。
 一方、警視庁でも、これは都内における児童虐待事件の件数を発表しておりますが、二十一年度で七件、二十二年度で十四件、二十三年度で十六件という報告がなされております。
 相談件数が増加をしているとはいえ、この四千四百五十件に比べて、この杉並の事件を含めた事件数十六という数字は、これは明らかに少ないわけでありますけれども、これは別に警視庁のデータが間違っているわけではありませんで、重大事件、あるいは殺人事件も含めた事件化されたものが十六件ということでありまして、いまだ最悪のケースには至っていないけれども、それだけの虐待予備軍ともいえるこの数字は、相当な数に上ると思われます。
 確かに相談事案の中には、通報があって行ってみても虐待の事実が認められなかったケースも、これは比例して増加をしているのでありますけれども、通報数やこの相談件数がふえること自体は、私は別に悪いことだとは思いません。これだけ社会問題として虐待事件が取り上げられて、この虐待事件を未然に防ぐという意味からも、本当にこれは悪いことではないと思うんです。
 問題は、この増加する相談件数に対応をしていくことが大事なのでありまして、東京都において、過去三年間、どのくらいの割合でこの虐待に対しての相談事案がふえているのか、お伺いをいたします。

○杉村福祉保健局長 児童相談所が受理をいたしました児童虐待相談の対応件数につきましては、平成二十年度は三千二百二十九件、平成二十一年度が三千三百三十九件、平成二十二年度は四千四百五十件でございます。
 また、区市町村における対応件数は、平成二十年度は五千八件、二十一年度は五千五百十件、二十二年度が七千七百八十二件となっております。

○尾崎委員 この相談件数が増加していることは、何も東京都に限ったことではなく、全国的に見ても、平成十一年度と二十二年度の十年間で比較をいたしますと、虐待対応件数は一万一千六百三十一件から五万五千百五十四件と約四・七倍になっているとともに、死亡事例、虐待による死亡事例ですけれども、これは依然として後を絶たないわけであります。
 この相談件数に対して、実は全国の児童福祉司数は、同じ十一年度から二十二年度の間で、千二百三十人から二千四百人となっております。これは約二倍ですけれども。
 そこで聞きますけれども、東京都では、ここ三年の虐待対応件数に対して、児童相談所の常勤職員定数、並びに児童福祉司の数、これをどの程度増員したのか、お伺いをいたします。

○杉村福祉保健局長 児童相談所の常勤職員の定数は、平成二十一年度の四百二十八に対しまして、二十三年度は四百四十と十二人の増でございます。
 増員の内訳は、児童福祉司が十一、児童福祉司へのスーパーバイズを担います児童福祉相談専門課長が一となっております。児童福祉司の定数は百七十二から百八十三に増加いたしております。

○尾崎委員 これは比較している年度数が十年間でありますから、一概に数値だけを見て結論は出せないんですけれども、総務省がことし一月二十日に公表した調査結果によると、児童相談所及び市町村における児童福祉司の受け持ち件数の意識調査というのがあるんですけど、妥当と考える受け持ち件数は、一人当たり十件以上二十件未満と回答した方が三二・四%と最も高いわけであります。これは常識的に考えてもそのぐらいじゃないかなと思うんですけれども、これに対して東京都の場合の児童福祉司の相談件数は、平成二十二年度で二十六人なんですね。
 この二十六人というのは虐待件数だけですから、これは児童福祉司の方とか職員の方々、虐待の相談だけじゃなくて、心身障害などの相談に来る方もたくさんいらっしゃるわけで、これを合わせるともう百人を超えてしまう。一人当たり百人の件数を抱えているようなオーバーワークになっていることは、これは数字だけを見ても本当に明らかだと思います。
 これはやっぱり厚労省が発表している子ども虐待による死亡事例等の検証結果等についての第七次報告、これでは地方自治体への提言として、虐待の早期発見とその後の対応、そして児童相談所の体制の充実というものが挙げられておりますけれども、この児童相談所の質的、そして量的な充実という面から見れば、三年間で、今の局長のお話だと十二人ふえたということでありますけれども、これはちょっとやっぱり余りにも少ないんじゃないかなと思うのが、私の実感であります。
 今回、私も質問をするに当たって、児童相談所の職員や関係者の方々ともお話をさせていただきましたけれども、大体この児童相談所の相談における心身障害の相談一件に対する業務量を一としますと、この虐待相談を含むものは、その一つの業務量に対して十二の業務負担であると、一対十二ぐらいの、それだけの大きな負担量がこの虐待相談等というのにかかるということをお話をされていました。
 つまりそうした状況に、果たして現状の虐待件数に対して、今の職員数、児童福祉司の定員で、急増するこの虐待にどのように対応していくのかお伺いをいたします。

○杉村福祉保健局長 都は、児童相談所に、児童虐待通告への初期対応を行います虐待対策班を設置いたしますとともに、地域専任の職員を配置し、区市町村の子ども家庭支援センターと緊密に連携を図りながら、専門機関として児童虐待に対応いたしております。
 また、児童相談の一義的な窓口でございます区市町村におきましては、先駆型子ども家庭支援センターに配置されております虐待対策コーディネーターなどを中心として、個々の虐待ケースの状況を把握し、適切な支援に結びつけております。
 このように、都におきましては、児童相談所と区市町村がそれぞれの役割のもとに機能を発揮いたしまして、緊密に連携を図りながら児童虐待に対応いたしております。

○尾崎委員 今現在の取り組みとして取り組まれているのは、状況はわかるんですけれども、私が聞きたいのは、この虐待件数の相談というのは、これ以上ふえることはあっても、なかなか少なくなることはないと思うんです。これに対してどう対応していくのかというのをちょっと聞きたいので、お願いします。

○杉村福祉保健局長 今申し上げたとおりでございますけれども、東京都は児童相談所の機能を充実いたしますとともに、区市町村の第一義的な窓口でございます子ども家庭支援センターの充実等を現在も取り組んでおりますし、今後とも同様に取り組んで参りまして、児童相談所と子ども家庭支援センターが十分連携をして、児童虐待に対応してまいりたいと考えております。

○尾崎委員 本当は、どう対応していくのか、もっとちょっと細かく聞きたいんですけれども、私も、別に東京都の職員を大幅に増員することだけでこの問題が解決することとは思っておりません。
 ただ、やっぱり児童相談所の職員の年代数、これも年々高くなっているわけであります。これは虐待対応が豊富な児童福祉司、あるいは職員が退職を今後どんどん、普通の会社と同じようにどんどん迎えていくことを考えれば、やっぱり今のうちから、若い世代の職員や福祉司を入れて育成していかなければ、仮に来年度、この虐待相談対応件数が倍になったとしても、倍になったから五十人ふやしましょうといったって、仮にその五十人が集まったとしても、いきなり就職してモンスターみたいな親の人たちと対応することは、やっぱりできないわけですから、これは今のうちから、これから増加することを考えて、増員することを考えていかないと、ちょっと対応できなくなってしまうと思うんですね。
 いっときを争う児童保護の現場で、一日保護がおくれてしまったがゆえに、手おくれになるようなことがあってはならないと僕は思います。
 この虐待は、もちろん軽微な虐待から、子どもを殺してしまうようなものまでさまざまあるんですけれども、今もいいましたけれども、重度の虐待を起こすような親のところに職員が面談なり調査に出向いても、軽くあしらわれてしまうようなことにもなりかねないわけであります。
 そこで、この市町村などの関係機関との連携を、局長おっしゃいましたけれども、ぜひ、より強化してもらって、虐待防止に努めていくことを並行して行っていく必要がこれは絶対あると僕は思います。
 児童相談所や市町村、警察、学校、教育委員会、これで構成する要保護児童対策地域協議会というのがあるのですけれども、これは地方公共団体に設置されておりますが、この設置率は全国的に見ても九五%なんです。これは高いんですけれども、設置率ですから、設置はしているんですけれども、実際に機能しているかどうかというのはちょっとわからない部分があります。実際に機能している部分というのは、自治体というのは虐待事件が減少している傾向があります。
 この会議の運営状況を見ますと、児童虐待が発生しているにもかかわらず、個別ケース検討会議、あるいは実務者会議未開催の市町村が、これは全国ですけど、この協議会において約三三%あります。機能していないものも含めると、三分の二にも上るということになっております。
 東京都では、この協議会が機能しているしていないも含めて、どの程度把握しているかお伺いをいたします。

○杉村福祉保健局長 虐待を受けている児童の早期発見や適切な保護を図ることを目的といたします要保護児童対策地域協議会は、現在、都内の六十一区市町村で設置いたしておりまして、未設置の一村におきましても、協議会にかわる児童虐待防止ネットワークを設置いたしております。
 児童相談所の職員は、すべての協議会のメンバーとなっておりまして、どの地域の協議会におきましても、地域における虐待の実態把握や活動の基本的方針を定める実務者会議や、個々の事案につきまして、関係機関が支援方針を検討し、それぞれ役割分担を明確化する個別検討会議を実施いたしまして、適切に対応しているということを都も確認をいたしております。

○尾崎委員 機能しているかしていないかというのは、例えばこの協議会の中では代表者会議だとか、実務者会議、あるいは個別ケース担当会議といろいろな種類の会議があるのですけれども、この代表者会議を一回やっただけでも、これ実はカウントをされてしまうのですよ。東京都においては、僕はそんなことはないと思いますけれども、ぜひこの代表者会議というのは、代表者会議というのは代表者会議ですから、やっぱり必要なのは個別ケース担当会議だとか実務者会議がきちっと行われているかどうかということも含めて、これは東京都にきちっと把握をしていただきたいと思います。
 虐待がなぜ起きるのかについての明確な因果関係というのは、これは今のところ見つかっておりません。この相関関係として、先ほど述べました第七次報告を初めとする報告では、子どものころの体験だとか、あるいはネグレクトを挙げておりますけれども、経済的要因も非常に大きな要因として考えられます。
 この死亡事例において、市町村の母子保健担当部署が関与していた事例が、虐待死、そして心中の事例ともに約五割を占めていたという報告もされておりますけれども、特に貧困率が高いのは母子家庭でありまして、人口問題研究所の二月の発表によりますと、十九歳以下の子どもがいる母子世帯の貧困率は四八%という結果が出ております。
 これは別に母子家庭が虐待が多いとか、そういうことをいっているんじゃないんですけれども、この母子家庭の貧困については、虐待という視点からだけではなく、さまざまな問題がありますので、検証が必要だと思われるわけです。
 この虐待防止は、そもそも、僕はこれ、役所の縦割り行政で何とかなるものではないと思います。
 国にもいえることなんですけれども、これは国で出している、総務省が出している児童虐待防止に関する総合政策評価書というものなのですけれども、僕も総務省の人間とも何度も話しましたが、国も国で、総務省はこれ結構きちっとした、全国でどのぐらいの虐待対策が行われているかというのを、この政策評価書でまとめているんですけれども、じゃあ、このまとめた部分を厚労省にきちっとそれをやれとか、あるいは厚労省がこの政策評価書を受けて、この部分が足りないからやりますというようなことをやっているかといえば、全然そんなことはないわけでありまして、これはもちろん国だけでなく、東京都もいろいろと縦割りの部分があるかもしれませんけれども、この協議会も含めて、これは児童相談所から母子担当部署、教育関連部署、医療機関等、これは協議会の中でこういうネットワーク体制が非常に重要な部分を占めているわけであります。
 これが先ほど述べた要保護児童対策協議会の役割といっても、本当にこれは過言じゃないわけでありまして、ぜひともこの協議会の推進を、市町村と連携を強化して進めていくことが必要と考えるんですけれども、見解をお伺いいたします。

○杉村福祉保健局長 児童相談所は、子ども家庭支援センターが要保護児童対策地域協議会の中核としての役割を適切に果たせるよう、区市町村との連絡を担当する児童福祉司が、センターを定期的に訪問いたしまして、虐待対応への助言などを行うほか、区市町村の職員ですけれども、職員を児童相談所に受け入れて研修を行うなど、専門性の向上を支援いたしております。
 また、個別検討会議におきまして、個々の虐待事案について、対応方針の決定に児童相談所は加わるなど、区市町村と密接に連携をいたしまして児童虐待に対応いたしております。

○尾崎委員 やっぱり連携というのは、いろいろな連携があると思うんですけれども、例えば児童相談所が対応できる重度の虐待、区市町村の方の協議会で対応できる軽度な虐待と、これは二つあると思うんですけれども、ただ、通報者だとか相談者というのは、重度だとか軽度をどっちに連絡していいかというのはわからないわけで、こっちの協議会の方に通報された部分で、例えば重度な部分があるものを、じゃあそれは児相で対応しましょうと。児相の方で軽度の部分があるものは、例えばその市区町村の設置してある協議会の方で対応してくださいというような、この仕事のワークシェアみたいなのを、やっぱりこれはぜひともやっていただきたいと思います。
 さらにやっぱり必要なのが、この早期発見にかかわる広報、PR活動でありまして、現在でも都道府県や市区町村において児童相談所の連絡先を記載いたしましたリーフレット等を作成したりしておりまして、中にはマグネットシートとか持続性の高い媒体を使用して工夫している自治体もあります。
 実際、近所で虐待が見受けられるような状況を認識したときに、一体どこに連絡をすればいいのかわからない人たちもたくさんいるわけであります。通告することをためらう理由の中には、自分が通告したことが虐待した人に、虐待者に知られてしまうことを恐れてちゅうちょしてしまう事例や、あるいは通告をしようと思うんですけれども、一一〇番を回してやっぱり警察に連絡するのは、ちょっといろいろとあるから面倒くさいなとためらうというような事例も多々見られるわけであります。
 虐待を未然に防止するには、通告する担い手ともなるこの一般市民の認識をもっと高めるということは、これは本当に社会の対応システムの方向性と成果を左右する重要な要素だと位置づけることが僕は必要だと思います。
 ここで、虐待通報の認知度を上げていくことが必要と考えますけれども、見解をお伺いいたします。

○杉村福祉保健局長 都民が、虐待が疑われる事例を発見した場合に、直ちに児童相談所や区市町村に連絡をしていただけるよう、都は、その連絡先を記載したリーフレットを作成いたしまして、さまざまなイベントや区市町村を通じ配布いたしております。
 また、都の広報誌やホームページなどを活用いたしまして、虐待の通告は都民の義務であり、また権利でもあることや虐待相談については匿名でいいこと、あるいは秘密は守ること、また子どもの安全を第一に考えることなどを広く都民に周知をいたしております。
 区市町村におきましても、子ども家庭支援センターを中心としてさまざまな広報活動を行っておりまして、区市町村のこうした独自の取り組みにつきましても、東京都は包括補助などにより支援を行っております。

○尾崎委員 例えば、海外では、テレビのスポットCMを初めとしたマスメディアを駆使してホットラインの番号を周知させるなどの、前例にとらわれない実効的な広報活動への転換を図って、財源をしっかりと充てて、方法と量の面から検討を行ってもらいたいと、僕は強く要望いたします。
 先ほど質問をしたように、まずこの児童相談所の職員、児童福祉司の増員、そしてこの要保護対策協議会が機能するように拡充をしていくこと、さらに広報、PR活動を強化することで、総合的な観点からこの虐待対策というものはとらなくてはならないと思います。
 ただ、潜在化している児童が、これらの取り組みによって上がってきた場合です。今よりも相談件数がふえた場合、それを受け入れる、この一時保護施設の整備がなされていなければならないわけです。全国の一時保護所数は、平成十七年の四月から二十三年の七月までの間で、百十二カ所から百二十七カ所に増加をしております。一時保護者も比例して、平成十七年度の一万八千百九十五人から二十一年度には一万九千三百九十六人に増加をしております。
 都内の現在の一時保護施設の収容率は、実に九八・六%と、一〇〇%に近い状況にあるわけです。実際、保護した児童が廊下に寝ているといったような状況もあるというふうに聞いております。
 やっぱりこうした状況が続くと、せっかく今までの取り組みで虐待家庭から一時保護をしたこの児童を受け入れる体制がないために、再び虐待の待つ親元に戻すというようなことがあってはならないと思いますので、今後、児童虐待が増加することは容易に想像できるこの状況下で、一時保護施設の拡充は必要不可欠だと考えますけれども、見解をお伺いいたします。

○杉村福祉保健局長 児童相談所では、児童虐待の連絡を受けた場合に、迅速に児童の安全を確認し、状況に応じて親から分離をして一時保護を実施いたしております。
 保護すべき児童が一時的に集中した場合には、緊急対応用として確保している居室の利用や、児童養護施設などへの一時保護委託などにより対応をいたしております。
 定員の拡充につきましては、来年度開設を予定しております子ども家庭総合センター、そして移転改築を予定しております墨田児童相談所における整備を計画的に進めているところでございます。

○尾崎委員 これまで質問をしてきましたが、犯罪の種類に、これは上も下もなく、どんな理由であれ命を奪ったりすることは許されることではないと思います。
 今、DVの事件だとか、ストーカー事件といった本当に現代社会のひずみのような事件が多発をしている中で、なかなか児童虐待だけに人員や予算を割くということは、これは難しいのかもしれません。ただ、児童虐待の事件が、僕はそれらの犯罪と決定的に違うのは、この被害者の児童というものは抵抗することができない、逃げることもできない、そして、助けを求めることもできないということにやっぱり尽きます。
 先日、杉並区の里親が三歳の女の子を虐待死させた事件で、東京都児童福祉審議会が事件の検証結果を公表して、改善策を知事に提出いたしました。
 あえて少しこの事件の概要を話させていただきますけれども、昨年八月にこの三歳の女の子が死亡して、発見当時、この子の体や顔面には無数のあざや血腫がありました。両耳にも、引きちぎったような深い傷が認められたことから、これは里親のいう階段から落ちたという説明と余りにも異なるため、杉並児童相談所に通告し、発覚した経緯があります。
 この報道によれば、自宅室内の壁には女の子の血痕が付着していたほか、多数の髪の毛が落ちておりまして、女の子が髪の毛をつかまれて振り回されて、そしてさらに頭部を壁にぶつけられたりしたということは、これは想像にかたくないことだと思います。
 原因は不明とされておりますけれども、性器からの出血が認められており、これらも含めて恒常的に虐待が行われていたかどうかは、これから明らかになると思いますけれども、まさしくこの人間の所業とも思えない事件であることは間違いないわけであります。
 この死亡した女の子は、事件の約十カ月前から二つの保育園に通っておりまして、それぞれ五カ月の在籍だったわけでありますけれども、この保育園が、里親による虐待の可能性を検討することはなく、児童相談所など関係機関への通告や相談は行われませんでした。
 今回質問するに当たって、僕はさまざまな関係者とお会いさせていただき、いろいろな事件を聞かせていただきましたけれども、一つは、死亡するようなこうした事件の場合、日常的に暴行を加えられたり、ご飯を与えられなかったりすることが多いということであります。
 一九九七年に起きたあるケースの場合なんかは、六歳の男の子が長期間にわたって恒常的に暴行を加えられて、最後亡くなったときには、深夜一時から次の日の夕方五時まで、十六時間にわたって断続的に暴行を加えられて死亡しました。
 こうした事件は氷山の一角であって、潜在化している虐待が、現在、今こうしている間にも現在進行形で進んでいるのが、このコンクリートジャングルともいえる、僕は東京のB面であると思っておりますし、これがまたさらに現実だと思います。
 冒頭局長から答弁をいただきましたけれども、東京では、市町村においての相談件数も合わせれば年間一万件以上の事案があるわけであります。こうした子どもたちが、本当にどういう気持ちで朝起きたときにいるのかとか、夜いきなりたたき起こされて殴られたり何だりするときに、どういう気持ちなのかなということを考えたときに、やっぱりこれはぜひ本当に急務として取り組んでいただきたいと思います。
 この子たちに共通しているのは、親に虐待をされても、その親をかばう傾向にあることに、事件発覚の難しさがあります。ここは普通逆だと思うのですけれども、僕は。
 尋ねられても答えられないで、なぜ殴られるのかもわからない状況の中で、必死にもがいている子たちを救う手だては、やっぱり待ちの姿勢ではなくて、攻めの姿勢で虐待を探していくしかもう方法はないと僕は思います。
 今回この質問をするに当たって、いろいろ聞いて、僕は本当に嫌な気持ちになったりしましたけれども、現場で対応されている職員は、それ以上にやっぱり疑念と憤りを感じながら、また、バーンアウトをしそうになりながらも、本当に必死になって日々の仕事をこなしていると思います。ただ、やっぱり物理的にオーバーワークになってしまえば、そうした子どもたちの小さなサインを受けとめることができないわけであります。
 東京都の施策には、待機児童対策も含めて、児童を対象とした施策がたくさんありまして、拡充に向けて尽力をされているのは本当に理解をするところでありますけれども、これは本当に知事が日ごろいっておられる、少子化対策に力が入っている僕はあらわれだと思います。
 ただ、この虐待をされている都内の一万人の子ども、もちろんこれは軽微な虐待も含めてですけれども、この子どもたちも、やっぱり同じ子どもたちだと思うんですね。全国では虐待に対してまだまだ認知度も低いわけでありますし、対策の遅い自治体もあります。はっきりいって、別に東京都がどんとおくれているとか、そういうことをいっているんじゃなくて、全国にはもっともっと東京都よりも低い、虐待対策に対して低い自治体もあるので、ぜひ東京から模範的な施策と対応を発信して、一人でもこのとうとい小さな命が失われることのないよう期待をするものでありますけれども、ぜひちょっと知事の見解をお伺いしたいと思います。

○石原知事 質問を聞いておりまして、いろいろ考えさせられるところが多かった、とってもいい質問だと思います。
 私も古い人間ですから、幼児時代の戦前の記憶、戦争中の記憶、敗戦直後の記憶、それから今日の繁栄に至るまでの記憶がありますけれども、かつての時代、人口に比して児童相談所とか児童相談員というのは、そんなにはたしかいなかったと思いますね。
 それだけ事件がなかったということでしょうけれども、これはやっぱり社会そのものが変質してきた、社会の変質って大きな話でありますけれども、その社会が造成する価値感が変わってきた。それから、それの変化に伴って家庭のあり方といいましょうか、まちのあり方といいましょうか、各家庭が、結局大きな都会によっては特に孤立化してきた。そういったものがこういう大きな、広範囲に悲劇というものをもたらしてきたと思います。
 次の時代を担う子どもたちが健全に育ってくれるということは、社会の未来というものを保障、担保するわけでありまして、その子どもの健全な育成を支えるのは、親だけではなしに社会全体の責任だと思いますが、それを果たさないと、この日本という国家社会の未来もないんじゃないかという気がいたします。
 都は都なりに、いろいろな行政として、総体的にどういう評価を受けるかわかりませんけれども、都なりの努力をしてきたと思いますが、また、特に東京という非常にわい雑なまち、これはまた違った生活の触感というものを育ててきて、親そのものが親としての情念を欠いて、ほかの嗜好に走るといいましょうか、価値観に走って、子どもを育てるという親としての責任のプライオリティーの順位が狂ってきて、特に私、風俗的に眺めてみますと、再婚した女性で、連れ子を母親そのものがいじめて殺す、新しい亭主もいじめるというケースが多いようでありますけれども、こういった風俗というのはかつてはなかったわけでありまして、いずれにしろ、そういう東京ならではの、こういう事故の件数、悲劇の件数というものを勘案しましても、私たち相当のことをしませんと、この国の将来はないんじゃないかという気がいたします。
 東京は、例の心の東京革命の一環として、親を親として育てるための心の東京塾なんていうものを開講しておりますし、都立高校生には、社会の一員として、幼い者をはぐくむというような教育もしておりますけれども、いずれにしろ、我々が、あなたが指摘された、子どもを虐待して死に至らしめるという、こういう悲劇のはんらんというものの表象する、私たちも、社会として大きな喪失、こういったものを取り戻すなんていうのは容易じゃないと思いますね。
 これはやっぱり、価値観というもの、正当な価値観というものをいかにこれから造成し直していくかという、これはもう児童相談所とか児童相談員だけの仕事じゃなくて、これは私たち社会人全体の責任において行わなくちゃいけないと思っております。

○尾崎委員 ありがとうございます。
 やっぱり知事がいわれたように、社会が悪いのか、あるいはその時代の変化なのか、ちょっとわからない部分はいろいろありますけれども、ただ、今、現実に起こっているこの問題に、ぜひ東京において知事がしっかりとリーダーシップをとってやってもらいたいと思います。
 特に、児童虐待防止法第三条、第五条にはこうあります。何人も、児童に対し、虐待をしてはならないと。児童の福祉に職務上関係のある者は、児童虐待を発見しやすい立場にあることを自覚し、児童虐待の早期発見に努めなければならないと。
 今回の杉並の事件で亡くなった女の子は、実の親が養育困難ということで、やっと行き着いた先がこの里親のところでした。
 私、ここで、別に東京都の責任を追及するとかそういうことでは全然ないんですね。ただ、この里親を認定したのは東京都でありまして、ある意味、この子の法的な親は東京都なわけでありますから、今回のこの悲惨な事件をしっかりと教訓にしていただいて、二度とこうした事件が起きないよう努めていただくことが、せめてものこの子の死がむだにならないことだと思いますので、ぜひよろしくお願いをいたします。
 ちょっと時間もないんですけれども、次の最後の質問に移らせていただきます。
 放射能対策についてお伺いをいたします。
 三・一一以降、放射能対策については、都議会でも何度も議論をされてまいりました。
 特に子どもに対しての食材等については、保護者からの不安の声がいまだにあることから、東京都もさまざまな取り組みをされてきたことは、本当に評価をいたします。
 現在、認可保育園に関しては、地元自治体が給食食材の事後調査を行っておりまして、基準値以上の値は出ていませんけれども、保護者の不安を払拭するためには、引き続き調査を求めているところであります。
 認証保育所に関しては、事後調査を実施しているところと実施していない自治体がまちまちでありまして、例えば私の地元では、調布市と狛江市と二つあるんですけど、調布市では実施をしているけれども、狛江市では実施をしていないという状況があります。
 また、保護者の方々からは、事後調査ではなくて、事前の検査に切りかえてもらいたいというような意見もありますが、そもそもこれは、原発事故後に放射線の基準値が大幅に上がったり、右往左往した国の対応にも、僕は都民が信頼を寄せられない根本的な問題があると思います。
 こうした状況だからこそ、自治体が国にかわって食品の安全・安心に対する取り組みをしていかなくてはならないと思います。
 特に、健康安全研究センターのホームページには一億件を超すアクセスがあるなど、都民が東京都に求める期待は非常に高いと思います。
 しっかりとこの声にこたえていくことが必要と考えますけれども、都民の食に対する不安を払拭するため、東京都としてどのように取り組んでいくのか、所見をお伺いいたします。

○杉村福祉保健局長 国は、放射性物質の暫定規制値を超える農産物等が流通しないよう、生産地での検査結果に基づき出荷制限等を実施する仕組みを構築しておりまして、都におきましても、都内産の農産物等を計画的に検査をいたしております。
 これに加えまして、都は、小売店に流通する食品について、都民、特に子どもが日常的、継続的に摂取をいたします乳製品などを中心に、モニタリング検査を実施いたしておりまして、その結果は速やかに都のホームページで公表いたしております。
 さらに、電話相談窓口の設置やホームページでの解説、都民向けシンポジウムの開催など、積極的な情報提供を行っております。
 今後とも、こうした取り組みによりまして、食の安全・安心の確保を図ってまいります。

○西岡副委員長 尾崎大介委員の発言は終わりました。(拍手)

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