予算特別委員会速記録第三号

○鈴木(あ)副委員長 上野和彦委員の発言を許します。
〔鈴木(あ)副委員長退席、鈴木(貫)副委員長着席〕

○上野委員 初めに、首都東京の防災対策について質問いたします。
 先日、文部科学省の首都直下地震防災・減災特別プロジェクト、こちらの方では、東京湾北部地震がこれまでの想定を上回る最大震度七の揺れが出る可能性を指摘いたしました。阪神大震災も最大震度七ということで、その破壊力というのは極めて大きいということが想像されるわけでございます。私の地元でも住民の方々から、東京湾の水門、防潮堤は大丈夫なのか、こういった声が聞こえてきます。
 東京港の水門につきましては、阪神大震災級のレベル二ということで整備していると。これについては港湾局を評価したいところでございます。
 問題は防潮堤です。防潮堤は、関東大震災級のレベル一で構築されているわけでございますので、震度七に対する防潮堤の耐震の強化というのは今後の課題となっていく。これが一点であります。
 もう一点は、南海トラフの巨大地震です。この東日本大震災と同じ海溝型であり、またマグニチュードもかなり大きいと、このようにいわれておりますので、大きな津波とか液状化の発生が予測されるわけでございまして、この対策というのを急がなければなりません。
 昨年の五月、私は、地震工学の学識経験者と岩手、そして宮城の海岸線被災地を調査してまいりました。そうした中で特に印象に残ったのが陸前高田です。陸前高田の海岸に行ってもう唖然としました。液状化で大変な破壊をされている。その専門家の方と一緒に話したわけですけれども、この防波堤、防潮堤は恐らく数メートルは沈下したんじゃないかと。
 一番驚いたのは、目の前の防波堤のブロックです。このブロックが何と斜めに切られたような形で破壊されている。通常は、ブロックというのは、一番弱いのは継ぎ目、ジョイントの部分で、恐らく津波で押されて倒れているだろうと想像して行ったら、何とそういった形で、専門用語で剪断破壊といいますけれども、その専門家の先生がいわれていましたけれども、これはまさにすごいハンマーのようなもので衝撃を与えない限り、こういう割れ方はしないというんです。すなわち、津波の破壊力というのがいかに強いかと、このことをそのときに見まして、本当に身震いした次第でございます。
 東京湾の防潮堤はいわゆる高潮の対策ということでつくられてきたわけですから、五メートルから八メーターという高さなので、これは津波の高さに大しては大丈夫だといわれていますけれども、じゃあ津波の破壊力にはどうなのか。
 実は、防潮堤というのは、静水圧という静かな水の圧力で考えてつくられているわけです。だから、津波の破壊力、波力に対してどうなのかというと、これは非常に大事なんです。これをしっかりと検証していかなければなりません。
 そこで、東京港の水門や防潮堤等の首都直下地震や南海トラフの巨大地震に対する耐震対策、液状化対策、そして津波の波力対策などについて、早急な対策を講じるべきであると思いますけれども、港湾局の方、お答えください。

○中井港湾局長 東京港における海岸保全施設整備につきましては、委員ご指摘のとおり、平成十八年度に緊急整備計画を策定し、水門については、これまでに想定されていた首都直下地震や関東地震を対象として、耐震性の強化の取り組みを既に進めているところでございます。
 また、現在、東京都防災会議で検討されている地震や津波等を想定いたしまして、施設の耐震性、液状化対策の必要性、波力の影響等を検証するとともに、技術検証委員会による検討等を踏まえ、整備計画の見直しなど、必要な対策を講じてまいります。

○上野委員 ぜひともスピード感を持って対策を講じていただきたいと思います。
 自然災害の脅威というのは、これは地震だけではありません。
 近年、気候変動による台風の巨大化などが問題になっております。最近は、東京を台風が直撃するということはないわけでございまして、特に石原知事になってからは、東京に向かっていた台風というのが東京に近づいたら九十度角度を変えて離れていくという、こういった状況もありますけれども、地球温暖化に伴いまして、今後、この大型台風が首都圏を襲うことも十分考えられます。
 そこで、このパネルを見ていただきたいと思うんですけれども、日本は太平洋で発生する台風の通り道に位置しておりまして、一年間や五年間、これを見ていきますと、一年間だと日本がよく見えます。
 しかし、五年、十年、三十年、六十年たつと全く日本が見えないぐらい、どこにでも台風が来るというおそれがあるわけでございまして、特に私の地元江戸川区におきましては、河川のはんらんというのを一番心配しているわけです。河川の護岸は大丈夫なのか、大規模水害で崩壊しないのか、そのことを心配されております。
 河川、これは、右岸というのは、下流に向かって右側が右岸、左側が左岸といいますけれども、荒川は右岸と左岸で高さが違うということが私も最近わかりました。なぜ違うんだろうかと。
 言葉でいってもなかなかわからないので、実際にパネルにさせてもらいましたけれども、これは実際に江戸川区の土木部で測量をやったわけですね。そして、この青いところが荒川の右岸です。赤いところ、上の方はパラペットといいまして、本体の堤防の上に波滴がかからないような三十センチぐらいの。大事なのはこの下の方の線、この右岸の青い色と、左岸、これ、中川左岸と書いてありますけれども、荒川と中川は並行に走っておりまして、荒川の左岸と都が管理している中川の左岸というのは、これは兼ねているわけです。
 これは、一メートルから三メートルぐらい低くなっている。もっとわかりやすくイラストで出たものがあります。これを見てもらいたい。これだとわかりやすいですけれども、右岸が都心側、左岸、これは江戸川区、葛飾側。水が上がってくると、江戸川区側の方に落ちるようになっている。これは心配なんですね。
 なぜこうなったかというと、実は明治にさかのぼるんですね。明治四十三年に東京の大水害が発生いたしました。そのときに東京の都心、下町が大変な被害に遭ったということで、明治政府は、都心を守るために荒川放水路というのをつくっていこうということで、明治四十四年から昭和五年まで約二十年間かけてつくっていった。
 そのときに、この右岸は、都心、城下町を守ろうと高くして、左岸、江戸川、葛飾方面になりますけれども、こちらの方は当時は田畑だったんですね。水田地帯ということで、そこを遊水池にしようという考えがあった。だからそこが低くなっていた。
 これは放水が出た場合、田畑ですから、土が肥沃になるというのもあったんでしょうけれども、今は違う。今は葛飾、江戸川で百十二万人が住んでいらっしゃる。この状態をそのままほうっておいていいのかと。当然にこれは高くしなきゃならないわけです。高くするためには、地震にも強く、水害にも強いのがスーパー堤防です。
 スーパー堤防というと、私も驚きましたけれども、つい先日もテレビ、マスコミで事業仕分けで仕分け人がいった、この二百年に一度の水害を防ぐのに四百年かかるのでは本末転倒という言葉を使っていましたよ。これはとんでもない話なんで、詭弁です。これをちょっときょうは話させてもらいたいんですけれども。なぜ詭弁か。
 (パネルを示す)スーパー堤防の計画延長というのは、全体延長八百七十二キロで、六つの河川の総延長、この八百七十二キロすべてのスーパー堤防が完成するまでの期間を単純に試算したのが四百年なんですよ。これは全部完成しないと効果はありませんか。新幹線だってそうですね。全国に計画がありますけれども、東海道新幹線ができて、えらい事業効果がありましたよ。
 スーパー堤防も、いわゆるゼロメートル地帯である江戸川、荒川で見ますと、足しても五十三キロなんです。全体の総延長八百七十二キロからすると、わずか六%なんですよ。仕分け人の計算でいくと、数十年でできる計算になっていくわけです。
 知事もオランダのことはよくご存じだと思いますけれども、オランダは国土の四分の一がゼロメートル地帯ですね。オランダは、この地球温暖化の中で海面は上がっていく、氷河は解ける、川の水も上がっていくという状況の中で、この治水対策を命がけで今やっています。そうした中で、アムステルダムやロッテルダムなどの重要地域は一万年確率ですよ。その他の地域は五千年確率で治水対策をやっていこうとして取り組んでいる。
 その中で、世界で最もすぐれた治水対策は何なのか。探してみたら、ジャパンダイクだと。スーパー堤防なんです。そして、オランダは一昨年の平成二十二年十一月十日に、そのためにオランダ政府の視察団十数名の要人がわざわざ日本に来たんです。東京江戸川区に来た。どこに来たかというと、スーパー堤防整備地区である都立の大島小松川公園ですよ。そこに来た。この平成二十二年十一月十日といったら、ちょうど事業仕分けでスーパー堤防を一たん廃止といっていたそのときに、くしくも来ているわけです。
 そのときに聞いた話ですけれども、こういうふうに事業仕分けをやっているけど、どうなんだと。そうしたら、オランダの方がいわれるには、これまで政権が変わっても、国民の命を守るのはこれは国の役目なのだと。治水対策に取り組みますよと。たとえ治水対策を見直しても、計画が縮小されることは一回もなかったといっているわけですよ。これが本当の危機管理ですよ。これはしっかりとやっていかなきゃいけない。
 とにかくいずれにしても、荒川が左岸が低いというのは、やっぱりぜひとも高くしていかなきゃならない。江戸川区は、地元で気候変動に適応した治水対策についてということで、これは江戸川区への提言ということで、学識経験者あるいは行政委員の国土交通省、内閣府、東京都も参加して、立派な提言を出されておりますので、今度、このことも東京都技監、ご一緒に検討してもらいたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 先ほども地震がありました。要するにハード対策が大事です。だけれども、これは時間がかかる。自然災害というものは、今起きてもおかしくない、あした起きてもおかしくないという状況の中では、何が一番大事かというと、それは避難対策なんです。この避難対策のソフト対策というのは最も重要なんですけれども、今の地域防災計画の中では、そのことが全然充実していないわけですね。
 そういった中で、最大震度七の首都直下地震が来れば、木密地域などの火災が起こる可能性も大きいわけでありまして、火災が起こった場合の避難対策は重要であります。さらには、大都市特有の災害として、地下街で発生する災害への対策も必要であります。
 万が一、津波や大規模水害などによりまして地下街やゼロメートル地帯が浸水するようなことになりますと、多くの人々は逃げ場を失って大災害につながる、そういったおそれがあるわけです。したがいまして、発災時の避難方法、例えばシミュレーションとか、そういったことを行いながら具体的な検証というのをぜひとも総務局にやってもらいたいわけです。
 そこで、避難対策の検討に当たりまして、そうした専門家を交えた検討部会で具体的な検討を行い、その検討結果を地域防災計画に反映していくべきと考えますけれども、総務局長、お答え願います。

○笠井総務局長 東日本大震災の教訓を踏まえ、大規模水害などに備えていくためには、施設整備などのハード対策に、避難などのソフト対策を組み合わせていくことが大変重要でございます。
 このため、都は、避難誘導のあり方などについて知見を有し、釜石市において、児童生徒の防災教育に取り組んできた専門家を東京都防災会議の専門委員に選任いたしまして、同会議のもとに設置した避難対策に関する検討部会において、具体的な方策の検討を行うことといたしました。
 この部会におきまして、安全な避難先の確保や広域避難を含めた的確な避難誘導のあり方などについて検討し、その結果を地域防災計画の修正に反映してまいります。

○上野委員 次に、液状化対策について質問いたします。
 私は、昨年の八月、東京湾岸で最も被害の大きかった浦安市、こちらについて、市の職員と一緒に調査、視察いたしました。とにかく液状化の被害の甚大さには正直驚かされました。
 被害地域を回っている中で、突然道路も宅地も液状化被害をほとんど受けていない地域があったわけです。これはどういう地域なんですかと聞きました。そうしたら市の職員が答えた。これはURが区画整理事業などの面的整備をする際に、事前に液状化対策を施した地域だというんですよ。サンドコンパクションパイル工法とかサンドドレーン工法というのをやったんだといっておられました。まさに事前の液状化対策の重要性が必要だということをここで改めて認識したわけでございます。
 このたび東京都は、木造住宅密集地域の不燃化十年プロジェクトということで、不燃化、耐震化を加速する取り組みに着手いたしておりますけれども、この木密地域のうち、震災時に、特に甚大な被害が想定される整備地域、二十八地域というのが指定されました。
 これは重点的な取り組みを実施するといわれていますけれども、じゃあ、この二十八地域は液状化は大丈夫なのか、このことを都が公表しております液状化予測図と重ね合わせしたのがこのパネルです。
 皆さんの手元にもございます。これは東京湾ですね。ここは荒川です。これは東部地域のところになります。この青いところは液状化はほとんどしません。で、このピンクと黄色いところが液状化する可能性がある。特にピンクは発生しやすいといわれている。二十八地区のうち十五地区がこの地区に入っているんですよ。
 木密地域、しっかりとした不燃化の建物を建てよう、倒れないものを建てよう、こういう目的で今やっていらっしゃいますけれども、どうも地盤から上のことしか考えていらっしゃらない。このままこういうところで幾ら不燃化の建物を建てても、砂上の楼閣になる可能性が十分にあるわけであります。
 このこともしっかりと対策を立てていかなきゃならない、このことを強く思うわけでございます。
 そういった意味で、しっかりと液状化対策につきまして、今回の不燃化特区では、コア事業として都市計画事業などの手法を活用することを基本としておりますけれども、液状化対策というのは、面的に実施することによって効果を出すわけであります。コア事業というのは、いわゆる面整備をやろうというところですから、こういうときは、液状化対策を施行するチャンスでもあるし、減災対策につながるわけであります。
 そこで、都市整備局長にお伺いします。
 この不燃化特区におきまして、液状化が発生しやすい地域では、面的整備事業にあわせて液状化対策を推進すべきと考えますけれども、意見を述べてください。

○飯尾都市整備局長 不燃化特区では、区が主導いたしまして、老朽木造建築物の共同建てかえを行うなど、市街地の不燃化を進める核となる波及効果が期待できる事業をコア事業として実施することとしております。
 液状化発生の可能性のある地域におきまして、不燃化特区を設定して、コア事業として防災街区整備事業などにより敷地を共同化いたしまして、不燃化建築物の整備等を行うような場合、液状化対策をあわせて行う必要があると考えております。
 都としては、そのようなケースにつきましても、区から具体的な提案がございましたら、支援策などについて区と協議してまいります。

○上野委員 都市整備局長、ちょっとまだ席にいてもらいたいんですが、今のご答弁で、防災街区整備事業などといわれましたけれども、などというのは、これは区画整理事業も入るんですか。教えてください。

○飯尾都市整備局長 防災街区整備事業でございますとか、あるいは再開発事業のような大きな建築物を伴う事業を今のところは想定しておりますけれども、具体的な事例につきましては、区からの提案を受け、支援策などについて協議をしてまいりたいと考えております。

○上野委員 区画整理事業という言葉が出なかったのでちょっと心配しているんです。
 十年プロジェクト事業の実施方針、こちらの方の七ページに、コア事業においては、都市計画事業など強制力のある手法を活用することを基本とすると。その注釈、市街地開発事業ということで、土地区画整理事業、市街地再開発事業、防災街区整備事業等と、こういうふうにちゃんと説明してあるんですよ。区画整理事業もやるんですね。

○飯尾都市整備局長 液状化対策につきましては、敷地の中におきまして建物を建てるときなどに行うというようなことが想定されておりまして、区画整理は、敷地まで整備するということでございますので、建物を建てるようなことを今のところは想定しておりますけれども、区の方で区画整理事業などの中で提案があるということであれば、このようなものについても具体的に協議をしてまいるつもりでございます。

○上野委員 非常に大事なことなんですね。
 先ほど、敷地を共同化して不燃建築物の整備等には液状化対策を行うと。これもまたちょっとおかしいわけであって、これは要するに、共同化というのは集合住宅になっている。大きい建物になりますと、こういった液状地盤というのは沈下するものですから、くいを打ちます。くいは支持層まで打ちます。N値が五十以上というところで、これは液状化が起きても地盤、要するに建物は沈下もしない、倒れないんですよ。ここに液状化対策をやるといわれていますけれども、大事なのは一戸建ての住宅なんです。区画整理事業というのは、まさに戸建て住宅なんですよ。
 私の江戸川区で、液状化で被害を受けた地域がありました。まさに一戸建ての住宅です。十数軒でした。被害を聞いてすぐ飛んでいきました。私は全く面識がなかったけれども、チャイムを押した。そこからご主人が出られました。被害の状況を聞いたら、中に入れといわれたんです。遠慮したけれども、入らぬとわからない、体感してくれといわれた。で、上がって、私たちの生活は二階だと。わかりましたと二階に上がろうと階段を一歩、二歩上がったら、後ろに倒れそうになったんですよ。私たちの感覚というのは、平衡感覚でいるわけですね。ちょっとでも傾いた場合にはそんな状況になるというのを私は体感いたしました。その方がいわれていました、この建物はわずか数年ですよと。要するに、新耐震基準で立派に建てたんです。それが、今沈下し傾いているんですと。私は、頭痛と吐き気で夜も眠れません、こういわれていました。
 帰りに玄関で、五歳のお子さんとお母さんが私を送ろうとされました。私が去ろうとしたときに、五歳のお子さんが私にいったんですよ。おじちゃん、あの部屋は真っすぐなの、斜めなの、どうって。私は胸にずきんと来ました。その話を聞いたお母さんが突然泣かれたんです。
 実は、この子は今幼稚園に行っています、幼稚園の先生から電話が来たんですと。みんなと一緒に廊下を歩いていた、何もつまずくものはないんだけれども、おたくのお子さんだけ何回も倒れるんです、心配です、病院に行ってくださいと。急いで行って、お子さんを病院に連れていって、お医者さんから、脳をやられているかもわからない、MRIをやりましょうといわれた。この小さい子に、MRIなんて私はやらせたくありませんと泣かれたんですよ。もうそのことは、私はずっと残っている。
 大事なのは戸建て住宅なんですよ。そこの液状化対策をやらなきゃいけない。ただ、東京都の、これは木密地域事業だ、液状化対策事業だという、事業の縦分けでこれはできませんみたいなことをいっちゃだめなんです。都民の立場に立ってやっていくというのが大事なんです。そのことをしっかりと強く申し述べておきたいと思います。
 次に、時間もございませんので、東京の危機対応力の一層の強化という観点から、事業継続計画、いわゆるBCPについて質問いたします。
 震災などの危機に備えまして、都は平成二十年十一月、我が党の指摘に応じまして、都政のBCP、これを策定いたしました。
 しかし、この東日本大震災では、帰宅困難者の受け入れ体制の整備や物資の搬送体制の見直しといった課題も明らかになったと聞いております。こうした課題を踏まえて、早急に計画を見直す必要があります。
 また、BCPは、常にその内容を見直して、計画の改善を図ることが極めて大事です。すなわち、PDCAサイクルを通じて継続的に改善を図っていってよりよくしていく、この事業継続のマネジメント、いわゆるBCMを進めることが、BCPを有効性ある、発揮するものになっていくわけでありまして、そのためには、このBCMの推進体制の強化と実践的な訓練というのが必要であります。
 都は、都政のBCP策定委員会を活用して、BCMを行っているとのことですが、このBCPは既に策定されているわけですから、まず名称がおかしいですね。これはやっぱり、都政のBCM推進委員会、このように改めて推進体制を強化するべきであります。
 また、さらに、発災時に、これは国、区市町村、そして民間団体と一体となって対応していかなきゃなりません。そのためには、こうした訓練というのを東京都独自でやるんじゃなくて、お互いに関係機関が連携して実施をしていくというのが極めて重要なわけです。
 そこで、都は、東日本大震災の教訓を踏まえて、計画内容を見直すことはもとより、BCMの一層の推進に向けまして、推進体制の強化や訓練の充実を図るべきと考えますが、都の見解を求めます。

○笠井総務局長 発災時に都の機能を確実に維持するためには、都政のBCPを実効ある内容へと見直し、実践的な訓練等を通じてBCMを着実に推進することが重要でございます。
 このため、大震災の課題への対応策はもとより、被害想定の見直しや地域防災計画の修正内容も反映して、都政のBCPや危機管理マニュアルを見直してまいります。
 また、都政のBCP策定委員会がより機能的なものとなるよう、名称や構成委員も含めて見直しを進め、地域防災計画の修正にも反映させるなど、BCMの推進体制を一層強化してまいります。
 さらに、情報通信や物資の受け入れ、搬送といった個別のテーマに沿って具体的な手順を検証する実践的な訓練を実施するとともに、国、区市町村、民間団体と連携した訓練についても検討を進め、関係者に働きかけてまいります。

○上野委員 ぜひ、しっかりとBCMに取り組んでいただきたいと思います。
 BCMの推進は、国際的な潮流に今なりつつあります。現在、ISOにおける国際標準化の検討は、ほぼ最終段階に入っておりまして、ことしじゅう、早ければ夏にも国際規格が発行する、このようにいわれておるわけであります。
 大震災直後などの危機におきましては、さまざまな混乱の発生も懸念されております。例えば、自然災害のパニックに乗じましてテロが発生する危険性もあり得ます。もともとBCPというのが世界的に注目されたのは、アメリカの同時多発テロです。これによって非常に注目されたわけでございますけれども、危機というのは、いつ襲ってくるかわかりません。
 東京が危機に際し機能不全に陥れば、都民の安全・安心の確保はもとより、国力の減衰をも招きかねません。衰退をも招きかねません。だからこそ、都はあらゆる事態を想定して危機に備え、その機能を維持していかなければならない使命があると思います。
 そこで、さまざまな危機における首都東京の機能維持につきまして、知事の所見を伺いたいと思います。

○石原知事 災害とかテロは、いつ発生するか全く予測がつかない問題でありますが、たまたま私、横田の問題の交渉にワシントンにいましたときに、国防総省に行ってラムズフェルド、ウォルフォウィッツという連中に会いました。
 次の日にホワイトハウスに行ってライスに会うつもりでいましたが、起こされたら、ニューヨークで貿易センタービルが燃えていると、飛行機がぶつかって。ニューヨークが霧かと思ったら、いや、よく晴れている。
 秘書にテレビをつけさせたら、次の飛行機がぶつかって、これはまさにテロだなということでしたが、なお、寝室の窓、カーテンを開けましたら、きのう行ったペンタゴンが目の前で燃えているわけですね。
 これはやっぱり、私は非常にショックを受けましたし、何といっても、国防の中枢の中枢の中枢である国防総省が爆撃に遭って燃えているというのは、本当にアメリカにとってもショックであるしシェイムだったと思います。
 そのときに私、四日間ですが、足どめを食ったんですけれども、そのアメリカがつくったFEMA、フィデラル・エマージェンシー・マネジメント・エージェンシーですか、このFEMAが実によく機能して、それが随所に見られて感心をいたしました。
 これは日本にも必要だと思って、帰ってきて小泉総理にいいましたら、日本はその必要ないということで、それならこっちで勝手にやるわということで、首都圏だけのFEMAをつくりました。
 ですから、今までは東京なり神奈川県に災害が起こると、自力でカバーできないときには官邸に電話しなくちゃいけない。もうそんな必要はない。我々は、神奈川県と東京の県境で起こった災害については、両県で連絡を取り合ってやるということで、とにかく電話番号で確認しようと。
 要するに、デスクをきちっと確認することで首都圏全体の、テロにしろ災害にしろ、そういったときの互助機能というものをシステム化したわけですけれども、ご指摘のように、これは本当に、一つのビジネスがコンティニュイティーを保って、都全体のために国家のために機能するためには、いろんな措置が必要だと思います。
 例えば、エネルギーの供給をどういうふうに補てんするとか、その他、疫病の問題もあったり、いろいろあるでしょうけれども、いずれにしろ、首都圏という広範囲の、非常に集中、集積が進んだ地域での出来事で国家を麻痺しちゃいけませんから、一種の広域行政として、首都圏を構成している自治体が、県にしろ、政令都市にしろ、とにかく積極的に協力をし合うという体制だけはとっております。

○上野委員 知事の答弁をお伺いしまして、大変頼もしく、安心した次第でございます。
 次に、オリンピック・パラリンピック招致について伺います。
 今回は、オールジャパンの体制で招致活動を進めていくと聞いておりますが、招致をかち取るためには、あたかも東京が危険な都市であるかのように主張して招致活動の足を引っ張るような意見に惑わされることなく、開催都市である東京都とオリンピックの主役であるスポーツ界の両者が、力を合わせて招致活動を引っ張っていくことが重要であると、このように考えます。
 スポーツ振興局長、元気いっぱいの答弁をお願いします。

○細井スポーツ振興局長 都は、スポーツ界、経済界、被災地などからの強い要請を受けまして、昨年九月に立候補申請をいたしました。
 オリンピック招致は、国と国との熾烈な戦いでございまして、国家の総力を挙げて挑んでいかなければ、かち得ません。
 都は、高い評価を得た前回計画をベースに、その後の状況変化を的確にとらえ、各分野の専門家の意見も十分に踏まえるとともに、IOCの意向に精通している海外アドバイザーからの助言も受けまして、最高の申請ファイルを策定いたしました。
 また、四千億円を超える基金も準備いたしております。今後も、なすべきことは確実に実行してまいります。
 昨年、東京で開催しました世界体操選手権は、東日本大震災を受けまして、東京の安全性が疑われまして、他国での代替開催案が浮上いたしました。都や競技団体は東京の安全性を訴えまして、死に物狂いで東京の開催を守りました。これにより、水泳など、その後の世界大会の東京開催は予定どおり行われまして、外国からの訪問客数ももとに戻ったところでございます。
 委員ご指摘のように、あたかも東京が危険であるかのごとく誇張するような一部の人の発言は、スポーツ関係者のこうした努力を無にし、オリンピック招致を求める国の声に、国民の声に水を差すことにつながります。
 今後もスポーツ界は、各競技団体がイベント等にアスリートを派遣し、オリンピック招致機運を盛り上げるとともに、国際プロモーション活動にも全力を入れることになっております。
 スポーツ界の熱い情熱に加え、国や都の力を結集させ、必ずや招致をかち取ってまいります。

○上野委員 しっかりと国や都の力を結集させて、必ず招致できるように、かち取ってもらうように、お願いいたします。
 次に、下水道事業について質問いたします。
 下水道局では、私の地元、江戸川区の葛西水再生センターに大規模な太陽光発電設備を導入するなど、再生可能エネルギー等を積極的に活用しております。
 また、下水道事業は多くの電力を必要とするために、節電や電力の安定確保にも取り組みを進めているところでございます。
 今後も再生可能エネルギー等の導入を拡大するとともに、引き続き節電などに取り組むことが必要であると考えております。
 また、処理水質の高度化や、頻発する集中豪雨への対応などによりまして、今後は温室効果ガスの増加も見込まれておりますので、より一層の温室効果ガスの削減努力も必要でありますので、あわせて見解を伺います。

○松田下水道局長 下水道局は、都内の電力の一%を消費いたします事業者であり、ご指摘のとおり、再生可能エネルギーの活用や節電の取り組みはますます重要になっております。
 お話の太陽光発電は、葛西水再生センターで導入したものでありまして、太陽の動きに合わせてパネルを回転させ発電効率を高める日本初の大規模な実用化施設でございます。
 このほかの太陽光発電では、砂町水再生センターの庁舎などに導入しておりますが、今後、森ヶ崎水再生センターや事務所、ポンプ所などへ導入を拡大してまいります。
 さらに、外気温と比べ夏は冷たく冬は温かいという下水の温度差を利用したエネルギーを文京区後楽地区や江東区新砂地区などで地域冷暖房に活用しておりますが、今後、芝浦水再生センターの上部に建設を進めております大規模な業務商業ビルにも拡大をしてまいります。
 節電の取り組みにつきましては、大幅な電力不足が予想された昨年の夏、NaS蓄電池の活用により、都全体の受電電力の抑制に大きく貢献をいたしました。
 また、年間を通して、当局の使用電力の四分の一を占める水処理工程での送風機の抑制運転などで節減に努めております。
 今後とも、これまでの実績を踏まえ、さらなる工夫を凝らして、引き続き効果的な節電に取り組んでまいります。
 また、事業の充実強化によって温室効果ガスの増加が見込まれますが、さらなる取り組み、まさに重要であります。発生する温室効果ガスのうち、汚泥の焼却に伴う一酸化二窒素の割合が約四分の一を占めておりますので、現在、汚泥の高温焼却により大幅な削減に努めております。
 今後は、さらに削減するために、日本初の汚泥ガス化炉や多層型流動焼却炉、ターボ型流動焼却炉の導入拡大を図ってまいります。
 また、一酸化二窒素は水処理で出るのですが、これがなかなか測定ができなかった。当局で新たに開発をした日本初の連続測定器を活用して、発生の抑制技術を開発してまいります。
 また、省エネ型の機器の導入、小型化、分散化などにより、きめの細かい運転管理を行って電力消費量の削減に努めてまいります。
 今後とも、日本最大の下水道事業者として、現場の発想や新技術を積極的に導入することで、より一層の温室効果ガスの削減を図り、地球温暖化防止に貢献してまいります。

○上野委員 下水道局は、温室効果ガスの約四割を東京都の中で占めているということから、大変悪者にされたりしておりましたけれども、先ほどの答弁にありましたようにアースプランを策定しまして温室効果ガスを大幅に削減する、この努力に対しましては、私は大変に評価しているところでございます。
 次に、障害者対策について質問いたします。
 国は来年度から、精神科の長期入院患者が退院し地域で生活できるよう、一緒に買い物に出かけたり、住まい探しを手伝うなどの支援サービスについて、患者が必要に応じて区市町村に利用を申し込む方法、すなわち個別給付について利用を促すこととしています。
 精神科入院患者の中には、長期入院している間に大きくさま変わりしたであろう地域での生活に強い不安を抱いているわけです。
 最初は退院を希望しないことも少なくないと聞いておりますけれども、また、そのようなときに、長年ケアをしている看護師の方が地域で暮らす勇気を持てと励ましてくれて、そしてしっかりと頑張ろうと、そういう気になったという話を聞いたことがあります。
 そこで、新たな支援サービスを活用し、より多くの精神科入院患者が円滑に退院して再び地域で暮らすためには、患者自身や送り出す病院スタッフへの働きかけが必要だと考えますけれども、都の見解を求めます。

○杉村福祉保健局長 都は、精神障害者の退院を促進いたしますため、地域活動支援センターなどにコーディネーターを配置いたしまして、入院中の精神障害者に対する退院に向けた働きかけや、退院後の支援機関との調整などを行い、地域移行を進めてまいりました。
 この四月から、地域移行に関する相談支援が、今お話しのとおり、新たに障害者自立支援法のサービスに位置づけられますため、多くの事業者によるサービス提供が見込まれますが、その一方で、入院患者の中には、地域移行をためらう方も少なくございません。
 そのため、都は、コーディネーターを活用いたしまして、入院患者や病院職員に対して、地域で暮らす当事者の体験を紹介するなど、働きかけを強化いたしまして、新たな相談支援サービスも十分活用して、精神障害者の地域移行を推進してまいります。

○上野委員 そうした退院支援の促進によりまして、退院を希望される入院患者がふえれば、その方々が安心して地域で生活できるよう、移行後の生活基盤の確保というのが必要になります。
 そこで、病院や施設から地域に移行する人にとっては、グループホームやケアホームが居住の場になります。これらの整備というのを一層促進すべきと考えます。
 また、国は今後三年間で障害福祉サービスを利用するすべての利用者につきまして、ニーズを踏まえたサービス等利用計画を作成するとしております。
 この利用計画を作成する相談支援専門員になるためには、一定の実務経験のほか、国が定める標準カリキュラムに従った研修を修了していることが要件となっております。
 そこで、最後の質問になりますけれども、相談支援専門員をさらにふやしていくためには、官民協働して取り組む必要がある、このように考えますけれども、あわせて答弁願います。

○杉村福祉保健局長 都は、第二期東京都障害福祉計画に基づきまして、障害者の居住の場でございますグループホームやケアホームの整備を進めておりまして、平成二十年度末から昨年十二月までで千三百七十一人分を整備してまいりました。
 現在策定中の第三期計画におきましては、障害者の地域移行・安心生活支援三か年プランを新たに定めまして、平成二十四年度から三年間で定員を千六百人ふやすことといたしております。
 この目標の達成に向けまして、整備費の事業者負担を軽減いたします特別助成を行いますとともに、より重度の障害者が利用するケアホームの創設に際しましては、消防設備に要する費用の補助を新たに実施し、整備を促進してまいります。
 次に、障害者自立支援法等の改正によりまして、本年四月から、サービス等利用計画の作成対象者がすべてのサービス利用者に拡大されますとともに、サービス等利用計画作成に従事いたします相談支援専門員の養成研修につきまして、都道府県に加え、知事が指定する事業者も行うことが可能となりました。
 そのため、都は本年一月から、事業者指定を開始いたしまして、養成研修の実施について、民間事業者の参画を促しながら専門員の養成に取り組んでおります。
 また、平成十八年度から都が実施してまいりました養成研修につきましても、来年度は実施回数を拡大いたします。
 これまで、都の養成研修を約二千二百人の方が受講しておりますが、今後は需要数の増加に対応いたしますため、民間事業者と連携をいたしまして、官民協働で相談支援専門員の養成に取り組んでまいります。

○鈴木(貫)副委員長 上野和彦委員の発言は終わりました。(拍手)

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