予算特別委員会速記録第三号

○西岡副委員長 原田大理事の発言を許します。

○原田委員 まず、環境、エネルギー政策について質問をいたします。
 冒頭、知事にお伺いしたいと思います。
 昨年三月十一日の震災から一年が経過いたしました。震災は、我が国に大きな痛みをもたらしましたが、同時に我が国の美徳を呼び覚ましてくれたものであります。暴動も略奪もなく、商店にきれいに並ぶその礼儀正しいさま、あるいは、みずからのことを顧みず、お互いに助け合うさま、こういった姿は、ほかの国々から驚嘆を持って眺められたものであります。
 しかしながら、その評価とは裏腹に、現実は厳しいものでありました。放射線被害を恐れて外国人は次々に国外へと出ていきました。
 そうした中、名誉都民で東京都北区にお住まいのドナルド・キーン氏が日本国籍を取得する意向を示し、つい先日、取得されました。震災後、日本を離れた外国人が多い中で、キーン氏の示したこの深い共感は、離れがたきこの国土に生き続ける我々を勇気づけるものでありました。
 国籍取得を受けての記者会見で、キーン氏は、ずっと待っていた知らせで、本当にうれしいとしながらも、その一方で、まちが明るく、必要のない看板がまたふえている、率直にいって、がっかりしたとも述べておられます。無論、この指摘は、日本への深い愛があってのものでありまして、外国人というお客さんではなく、日本人になったからこその発言とも述べておられます。
 国のエネルギー政策においては、再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度の導入に向けての会合が開かれ、また、環境税の導入が決まるなど新たな展開も見えてきました。我が国の将来を切り開くためには、エネルギーの大量生産と大量消費によって成り立っていた震災前の東京に戻るのではなく、朝になると日が上り、夕方になると日が沈み夜を迎える、こうした自然の法則に寄り添って、人間が生物として感覚的に豊かに生きていける、そんな東京をつくることが大事だと思います。
 キーン氏が名誉都民として顕彰されたのは平成十八年のことでありまして、石原知事の在任中のことでございますので、そのときのこともきっと覚えていらっしゃると思いますが、この一年の東京を踏まえた上で、今後の東京のエネルギー政策についてどのようにお考えかお伺いいたします。

○石原知事 日本を愛するキーンさんが東京に戻られて、震災の後、みんなが節電に努力して、ヨーロッパの先進国と同じぐらいの、要するに夜の明る過ぎるまちに暗さが戻った、あの日本を評価されたのだと思いますが、それが瞬く間にもとに戻ったというのは、実際に私も東京を眺めて、その感慨を禁じ得ません。
 ただ、やはりむだな電力、むだなエネルギーの消費っていうのは、私たち、これからも先のことを考えれば、要するに自戒して、自分を節していかなくちゃいけない大きな問題だと思います。
 ただやっぱり、文明というものはいろんな技術で運用されているわけでありまして、その文明の運用に必要の最低限のエネルギーというものは私たちは確保しなくちゃいけないと思いますし、それについての大計、大きなシミュレーションをもとにした国家の大計というのは、いまだに今の政府では立っていない気がいたします。
 あの震災の発生後、夏前に、担当の、新しくできた節電担当の大臣が来まして、東京にぜひ節電の協力をしてほしいといいましたから、それは大変結構だけれども、首都圏全体が大きな消費地だから、あなた、ほかの県回るのかねっていったら、東京だけですっていうから、とんちんかんな話で、やるならやっぱり政令を出しなさいと。
 そしたら、政令っていうことがわからないんですな。それでね、考えますっていうから、考えて上申するんじゃなしに、君が決めて、政府に上げるのが政令の要するに正規な運用ですよといったら、わかったようなわかんないような顔をしてました。
 そのとき私いいましたのは、実は田中角さんの時代にできた、オイルショックのときにできた政令がいまだに生きておりまして、あのときになかった、要するに電力の消耗源、例えば自動販売機などというものは、新規に、記載されて新しい政令として施行されるべきじゃないかといいましたら、よくわかったようなわかんないような顔をしてましたが、それがどういうわけか間接的に世間に知れて、不思議なことに、自動販売機業界も、それからパチンコ業界も自粛して、かなり電気の消費量というのを、消してくれましたですな。
 これはやっぱり日本人の利口なところで、政府よりははるかに民間の人間の方が危機感があって、シャープだなって気がしましたけど、これがもとに戻ったっていうのも、私たちの一種の油断でしょうか、おごりでしょうか、やはり、例えて申しわけないけれども、夜中でもこうこうと電気をつける自動販売機が羅列されてる、あるいは昼間からパチンコ屋がじゃんじゃら鳴らしてネオンもつけて、雨の日は、朝から開店を、傘を差して並んで人が待つなんていうのは、こういう事象っていうのは、私は好ましくないと思いますから、キーンさんがどういうつもりでいったか知りませんけれども、私はやっぱり、最低限のエネルギーというものを心得た上で、そういった自粛というものを--政府が督励しないなら、私たち自身、要するに自分の教養に沿って判断していかざるを得ないんじゃないでしょうかな。私は日本人はそういう点で利口だと思いますから、期待しております。政府にはあんまり期待しておりません。

○原田委員 単なる復旧ではなく、真の意味での復興をといったようなかけ声もありました。そうした意味で、この一年間のことを顧みて、さらにさらに我々も努力していかなければならないと、かように思う次第でございます。
 申すまでもないことでありますが、エネルギー資源の確保は文明社会にとって欠かせない課題であります。古来より現在まで、エネルギー資源をめぐって国際紛争なども頻発している状況であります。
 現在、我が国は、エネルギー資源のほとんどを外国からの輸入に頼っております。エネルギー自給の切り札として、原子力が大いに期待されてきましたが、核燃料サイクルも原子力発電自体も、現状では前途多難な状況であります。
 国家としての主体性を保ち、国際社会を生き抜いていくためには、エネルギー自給率の向上が欠かせません。これは、外国からの干渉排除や有事の備えとして重要であるにとどまらず、エネルギー資源を輸入する際に代替手段を持つことは、相手から有利な条件を引き出すためにも必要なことであります。
 東京も首都として、産業の集積拠点として、また、一大消費地として、日本全体の中で果たすべき役割を踏まえながら、都市としてのエネルギー戦略を立てて行動する必要があります。
 その際、海外からの資源調達や送電網の国際連携といった部分は国に任せつつ、その動向を見きわめつつも、国内で取り組むことができる部分に注力すべきであります。
 すなわち、エネルギー源として、地熱、太陽光、太陽熱、風力、バイオマス、こういった国内で開発可能なエネルギー源を活用すること、そして、エネルギーの供給源である他道府県との協力関係をしっかりと築いていくこと、そして、消費地として省エネや、例えば自動車燃料の石油からの転換など、消費構造の改革に努めることであります。
 これは、国レベルの話になりますけれども、例えばアイスランドでは、地熱資源をキーとした総合エネルギー自給戦略を立てていました。電力は地熱発電で賄い、そして、暖房需要は地熱の熱そのものを利用し、そして、自動車や船舶は動力を燃料電池とすることによりまして、化石燃料の輸入に頼らない社会を目指したのであります。この詳細は、平成十九年度の都議会海外調査の報告書にも記載させていただきました。
 ここで注目すべきは、アイスランドは環境に注目して、これらの地熱の開発に取り組んだのではなく、安全保障に着目して取り組んだということであります。実際、例えばバイオマスなどは、アイスランドは北極圏にほど近い国ですので、結局、輸入になるということで、実際の導入検討の対象にはならなかったようであります。
 さて、東京を見てみますと、昨年の十二月、「二〇二〇年の東京」が発表されました。この計画の中で、東京産電力三百万キロワットの創出が掲げられています。しかしながら、その中身を見ますと、火力発電所の建設など、福島第一原発の停止を受けて緊急的に行う電力確保策と太陽光発電などが混在しております。
 電源の安定性確保という点から見ますと、太陽光発電は、夜間や雨天時には発電できず、設備の能力としての最大発電量が同じでも、実際に発電できる量や、ピーク時に使えるかどうかといった発電の特徴は異なりまして、火力の百万キロワットと太陽光の九十万キロワットをそのまま並べて論じることはできないのではないかと思います。もっとも、太陽光の利点は別なところにありますので、都民の太陽光発電についての正しい理解と普及のためにも、より丁寧な説明が必要であろうと思います。
 さらには、そうした違いをあえて無視しまして、具体的に数字で示された発電容量を足し合わせても、二百五十万キロワットにとどまっております。
 そこで、東京産電力三百万キロワットの創出を掲げるのであれば、それぞれの特徴を踏まえた一つ一つの施策の整理と、そして施策の拡充が必要と考えますけれども、計画の運用に関する、都の今後十年間の取り組みについてお伺いいたします。

○秋山知事本局長 「二〇二〇年の東京」計画では、百万キロワット級の発電所の設置に加えまして、自立分散型電源の拡充、太陽光発電やごみ発電などの、いわゆる再生可能エネルギーの普及など、あらゆる手段を講じて、二〇二〇年までに新たに三百万キロワットを創出し、都内発電能力を倍増することを目標に掲げております。
 目標の設定に当たりましては、電力使用量が季節や時間帯により大きく変動し、かつ発電の方法により特性が大きく異なる中で、これを具体的な政策に反映させていく必要があることから、最大発電能力を基準といたしました。
 この目標の達成に向けた具体的な政策展開でございますけれども、三カ年の事業展開や三年後の到達目標を示したアクションプランでございます実行プログラムの中で、大規模な都市開発とあわせて、コージェネレーションシステムなどの導入を誘導いたしますとともに、住宅を中心に太陽光発電設備等の設置を支援することとしておりまして、これとあわせて国に対しては、電力事業に係る規制緩和を強く働きかけてまいります。
 また、実行プログラムは、社会状況の変化に迅速かつ的確に対応するため、毎年度改定をすることというふうにしておりまして、こうした機会に、より効果的な政策を展開するなど、東京産電力三百万キロワット創出プロジェクトの推進に全力で取り組んでまいります。

○原田委員 全力で取り組んでいくという知事本局長のそのご答弁、高く評価するものでございますけれども、都民にとって必要なことは、数字を追い求めることではなく、実際に生活の安全、仕事の安全が確保されることでありますので、そうした成果にしっかりと、この取り組みがつながっていくよう求めるものであります。
 さらに見てみますと、二次エネルギーである電力については、東京産を目指すとしていますけれども、例えば百万キロのエネルギー源となる天然ガスの確保は都だけでできる問題ではありません。そうした中で、太陽光発電への取り組みは、結果的に一次エネルギーからの自給策になっております。環境に優しいというこれまでの切り口だけではなく、エネルギー自給率の向上という観点からも、一次エネルギーである地熱、太陽光、太陽熱、風力、バイオマスなど再生可能エネルギーを最大限生かしていくべきと考えますが、見解を伺います。

○大野環境局長 天然ガスなどの一次エネルギーの確保は、現在、個々の民間事業者が行っておりまして、国は必要な役割を果たしておりません。
 このため、都は国に対して、エネルギーの安価かつ安定的確保に向けた戦略の強化を要求するとともに、都内のエネルギー自給率を高めるため、天然ガス発電所や地域分散型発電の導入とともに再生可能エネルギーの普及拡大を進めております。
 特に、都内において導入ポテンシャルが高い太陽エネルギーの普及拡大を目指しまして、平成二十一年度から太陽光発電設備への補助を開始し、大きな成果を上げております。一方、普及がまだ進んでいない太陽熱利用につきましては、今年度から新たな補助事業を開始しております。
 さらに、風力などを含む再生可能エネルギー全体の普及拡大を図るには、固定価格買い取り制度の実効性を担保するための適切な買い取り価格の設定がまず必要でございますので、都は既に、国に対して強く要求をしております。

○原田委員 都市とはそもそも、電力に限らず、水や食料など生活に不可欠な要素について、都市外のさまざまな地域から供給を受けることで成り立つものであります。よって周辺の地域と協力関係を築き、広域的な共存共栄を図ることが大切であります。
 電力の立地について、現行のプロジェクトを見てみますと、まず百万キロ級の天然ガス発電所については、出発点が都内産電力であったため、当然、都内になりましたが、一方、官民連携インフラファンドでは、必ずしも事業地域を都内に限定せず、九都県市で検討するとしております。
 東京のエネルギー確保と安定供給を図るために、エネルギー供給プロジェクトをどのように構築していくのか伺います。

○大野環境局長 今後、東京におきましては、遠隔地の大規模発電所に過度に依存しないエネルギー供給体制を構築していくことが必要と考えております。
 このため、まず第一に、百万キロワット級発電所整備に向けた調査や、官民インフラファンド活用による発電所整備を進めるほか、大井火力発電所など老朽火力発電所のリプレースを促進するため、国や東京電力に申し入れを強力に行っております。
 第二に、地域分散型発電を推進するため、臨海副都心への分散型エネルギーネットワークの導入などを推進しておりますし、第三には、太陽エネルギーなど都市型の再生可能エネルギーのさらなる普及拡大を図っております。
 こうした三つの柱に基づく具体的な取り組みを進めまして、東京のエネルギーの安定供給に努めてまいります。

○原田委員 先ほど局長の方からも、天然ガスについてのご言及もありましたけれども、国に対しては、この天然ガス調達について、速やかに状況を改善するよう求める必要があります。
 天然ガスは、非在来型の資源であるシェールガスの本格的な採掘が始まったことによりまして、国際的な市場価格が下がっております。単位熱量当たり二ドル強とかなり低下しているのでありますけれども、日本が今回緊急に買ったのは十八ドル程度で購入しておりまして、これが、国富の流出と貿易赤字につながっているのであります。この問題に関して、国も動き始めたようではありますけれども、さまざまな主体としっかり連携し、国益、そして都民の利益にかなう施策を着実に進めていただきたいと思います。
 都内産の電力ということでいえば、短期的には、大井火力発電所の緊急設置電源の有効利用が考えられます。この電源は二十万キロワットありまして、タイから無償で借り受けたガスタービンも含まれるのでありますけれども、余り稼働していないようであります。ほかの発電所に設置された緊急設置電源については、平日を中心に結構稼働しているようであります。
 この緊急設置電源は、大気汚染防止法の排出基準はクリアできるんですけれども、都が環境確保条例で上乗せして定めた、より厳しい基準がクリアできません。そのため、都は、環境確保条例を改正して、去年の夏、ことしの冬と、電力需要の逼迫が懸念される時期に限りまして、特例措置として運転を認めることとしましたが、その内容と経緯についてお伺いしますとともに、この夏以降も同様の状況が想定されるわけですけれども、どう対応するのかお伺いいたします。

○大野環境局長 大井火力発電所内の緊急設置電源は、お話のような排ガス中の窒素酸化物濃度が環境確保条例の上乗せ基準を遵守できないものでありましたが、都としては、昨年の夏、発電能力の増強が必要であると判断しまして、条例に特例措置の規定を設け、昨年四月二十二日から六カ月間の稼働を可能にしたものでございます。
 しかし、昨年の夏は広範囲にわたる節電の取り組み等によりまして、供給力不足を補うための運転は、東京以外の他の緊急設置電源も稼働が少なく、大井でも二日間にとどまりました。
 ことしの冬は、東京電力から、供給力は確保できているが、発電所の事故など万が一の事態に備え、特例措置の適用を受けたいという要請がございまして、二月一日から二カ月間、改めて稼働を可能といたしましたが、現在までこうした事態は生じておりません。
 都としては、この緊急設置電源への排ガス規制緩和の適用は、あくまで緊急避難的なものと考えております。
 今後は、中長期的な観点からの供給力の確保が必要でございまして、大井火力の緊急設置電源は、排ガス中の窒素酸化物濃度が高いことに加えまして、熱効率も三〇%程度と低いものでありますので、ことしの夏以降につきましては、これらの状況を勘案した対応を東京電力に求めてまいります。

○原田委員 きれいな空気は、都市の国際競争力を高める重要な要素であるというふうに国際的にも認識されておりまして、都市部への近さ、人口密度などを考えれば、一定の厳しい基準があるということは合理性があると思います。
 タイ国から借りているガスタービンは、現在はいわば最後のとりでになっているわけでありますけれども、我が国にとりまして、安全保障上も経済上も重要な国でありますタイからの支援が有効に生かされていくように望むものであります。
 さて、我が国は世界でもトップレベルのエネルギー技術を持っております。天然ガス発電も高効率でありますけれども、最近の石炭火力発電の技術の進歩も物すごいものがあります。
 石炭というと昔のイメージで、効率も悪く、排気も汚い印象を持たれている方も多いかもわかりませんけれども、熱効率でもクリーン度でもLNG並みを実現しているのであります。超々臨界圧石炭発電とか、石炭ガス化複合発電というのがありますけれども、高いものでは五七%の熱効率を達成しております。
 こうした高効率にもかかわらず、初期投資も、あるいは発電コストも安い、さらには資源の地政学的なリスクも少ないということで、この技術は世界の垂涎の的であります。この技術は国産の技術であります。
 火力だけではございませんで、再生可能エネルギーの分野でも、技術的に世界の最先端を行き、さらに、すぐにでも使えるエネルギー源として現実性を持つのが地熱であります。我が国は資源小国と思われておりますけれども、地熱の資源量が二千三百四十七万キロワットで世界三位と見込まれるなど、潜在的なエネルギー資源は豊富なのであります。
 また、地熱発電のタービンと発電機のシェアにおいて、日本企業三社合計で、世界の何と七割を握っております。アイスランドで実際に視察した地熱発電の設備も日本製でありました。
 また、フィリピン、この国は世界第二位の地熱大国なんですけれども、この地熱の約六割を、日本が円借款を利用して開発したと、そういう実績もございます。この再生可能エネルギーというと、単体での発電量が少ないイメージを持たれるかもわからないですけれども、レイテ島の施設は七十二万二千キロワット、ルソン島の施設は四十五万八千キロワットといった大規模なものであります。
 また、都内でも、小規模なんですけれども、八丈島において地熱発電が行われております。
 地熱発電は、その原理も単純であり、また、資源探査の精度や掘削コストに課題はありますものの、技術としては確立されております。
 さらに、地熱発電は、気象による変動の大きい太陽光発電、風力発電に比べますと、出力が安定しておりまして、定格運転が可能であります。
 ただ、有望な候補地の多くが国立・国定公園内にあって、これまで国によって開発が規制されてきた。この点さえクリアできればいいんですけれども、現在、規制緩和について、経産省、環境省等でも検討が始められているようであります。
 地熱は、地震国であることと表裏一体として我々に与えられた資源であります。そのような国土であることを受けとめ、そして生かし、震災を乗り越えていくためにも、他道府県とも連携しながら地熱利用に取り組むべきであります。
 さて、この地熱発電、あるいは太陽、風力など、再生可能エネルギーは、発電効率や発電量、コストなどの課題があるのは確かに事実であります。これらをクリアし、経済的に軌道に乗せるには、より効率的に、大量に発電した主体に、経済的に報われる仕組みを与えるということが必要でありまして、その切り札が固定価格買い取り制度であります。
 初期投資にかかる補助金は、普及の始まりの段階で重要です。理想的には、固定価格買い取り制度によって初期投資を回収できる見込みが示されれば補助金等の必要はなくなるわけでございますけれども、そううまくいくかどうかは未知数でありまして、推移を見守った上で、補助的な施策が必要となる場合もありましょう。
 さらに、地熱などの偏在する大規模なエネルギー源を生かし、普及させていくためには、この固定価格買い取り制度のしっかりとした制度設計に加えまして、広域的な利用拡大を進めることが必要であります。再生可能エネルギーの普及をどのように進めていくのか、都の見解を伺います。

○大野環境局長 再生可能エネルギーの大規模な普及拡大を進めるためには、先ほども申し上げましたとおり、固定価格買い取り制度の買い取り価格が、事業採算のとれる水準に設定されることが必要ですが、それとともに、北海道や東北など、風力や地熱などのポテンシャルの高い地方において開発される発電設備による電力の広域融通を可能とすることが必要でございます。
 電力の広域融通は、東日本におきましては、現在も周波数が五十ヘルツで統一されておりますので、現状でも技術的には可能でございますが、これまでは送電系統を電力会社ごとにばらばらに運用してきましたので、これが実現しておりません。このため、現状の運用方法を改め、送電系統の一体運用を実現するよう、都は、国や電力会社による積極的な対応を既に強く要求をしております。

○原田委員 さて、もう一つ、再生可能エネルギーを安定して活用するには、蓄電池の果たす役割が重要であります。
 蓄電池は、出力を調整したり、あるいは余剰電力をピーク時間帯に活用できるといったようなことから、発電所を新規に建設するのと同じような効果が見込めるわけであります。実際にNaS電池、リチウムイオン電池といった大規模化が可能な蓄電池のほか、いわゆるスマートシティー構想の中でも、電気自動車を蓄電池として活用しようと、さまざまな取り組みがなされているわけでございますが、蓄電池の課題と今後の方向性についてお伺いいたします。

○大野環境局長 蓄電池は、電力のピークカット機能や再生可能エネルギーの調整電源としての機能に加えまして、災害時の電力供給源など多様な役割が期待されます。
 日本の蓄電池に関する研究開発は、世界のトップ水準にございますけれども、大容量化、低コスト化、高効率化など、まだ課題も残っております。
 都は今後、域内の電力需要の平準化や再生可能エネルギーの最大限の活用に資する蓄電池の活用可能性につきまして、その実用化の状況を見ながら検討してまいります。

○原田委員 エネルギーを効率的に利用するという観点からは、例えばコージェネレーションシステムにおいては、発電効率の高い設備を導入するだけではなくて、発電に際して生じる排熱の利用、これをいかに高めていくかということが重要であります。
 また、都内では、これまでも七十を超える地域冷暖房区域において熱供給事業が行われているんですけれども、未利用熱の活用、あるいは、この地域冷暖房区域間における熱の相互融通も熱の有効利用に資するものと考えます。
 そこで、熱の面的利用、ネットワーク化によるエネルギーの有効な利用について、見解を伺います。

○大野環境局長 平成二十二年の一月から、地域におけるエネルギーの有効利用を図るため、延べ床面積五万平方メートルを超える開発におきまして、地域冷暖房や未利用エネルギー等の活用などを含むエネルギー有効利用計画制度を開始しております。
 こうした中で、地域冷暖房区域の間で熱を相互利用するネットワーク化を進める事業者もあらわれてきております。熱需要のバランスが確保された熱の面的利用は、高効率なエネルギー利用につながることから、都はこうした計画に対して、より効率の高いものとなるよう、計画制度等を活用して事業者への助言等を引き続き行ってまいります。

○原田委員 さて、二〇一二年度の予算関連の税制改正法案が三月八日、衆議院を通過いたしました。このことにより成立が確実となったわけでございますけれども、これによりまして地球温暖化対策税が十月から段階的に導入されることになりました。
 環境税は外部不経済を内部化するものでありまして、導入するだけでも意味があるわけでございますけれども、温暖化対策や再生可能エネルギーの普及に必要な諸政策の財源としても期待がされるわけであります。
 東京都は、これまでも独自に地球温暖化対策に取り組んではきたわけでございますけれども、自治体が果たすべき役割をより一層アピールして、この温暖化対策税の中から適切に財源を確保して、さらに事業を進めていくべきと考えますが、所見を伺います。

○大野環境局長 今回、地球温暖化対策のための税を含む税制改正法案が成立する見通しとなったと報道がされております。しかし、追加的な税収規模を見ますと、全国で二千六百億円程度にとどまっておりまして、かつ、全額が国税という予定でございます。
 国は、地方財源の確保充実に関しまして、平成二十五年度実施に向けて成案を得るべく検討を進めるとしておりますけれども、都としては、温暖化対策における地方自治体の果たす責任と役割を踏まえまして、国と地方で、税源を適切に配分することを、引き続き国に対しても強く求めるとともに、地球温暖化対策を進めてまいります。

○原田委員 都はこれまでも、都として独自に環境税の制度設計を検討してきたという経緯もございます。そうしたことも踏まえまして、これからも積極的な取り組みを期待したいと思います。
 この外部不経済の内部化という視点は非常に重要でございます。これまで、さまざまなものが想定外とされてきておりましたけれども、そうしたものをしっかりと社会経済システムに組み込んで考えていく。こうしたことが重要でありまして、我々の眼前にこれが先送りのできない課題として突きつけられているわけでございます。
 こうした取り組みを、自分たちにとって都合がよいことも、あるいは不都合な真実もひっくるめてしっかりと受けとめて、日本国内で起こることは我が身に起こることなんだと、こういうことで真正面から受けとめるところに共感と、そして、連帯意識が生まれてくるものと思います。それができれば、本当の意味で、我が国は一体となりまして、そこから新しい日本の姿が生まれてくるものと考えております。そのことを願いまして、次の質問に移ります。
 スポーツ文化の発展と施設整備についてお伺いいたします。
 東京マラソン、これは年々参加者も増大しておりまして、一大イベントとして定着しております。こうしたスポーツの機運の高まりというものは本物であります。
 一方、皇居ランナーの激増によりまして、歩行者等との摩擦が生じるなどの現象も起きていますが、その背景には、身近にスポーツを行ういい環境がない、限られている、こうした状況もあるわけでございます。
 スポーツ文化の発展を図り、ひいては東京で行われるオリンピックや国際大会への関心を高めていくためには、真正面からこうしたスポーツを行う人に対する施策を行っていくこと、これが必要であります。
 スポーツ文化の発展に寄与する地道な施策の一つとして、身近なスポーツ施設、スポーツ環境の整備が考えられます。
 都が現在整備している大規模な競技場と、区市町村が整備する小規模の施設の中間的な、一定の広域的なエリアを対象としたそれなりのいい施設、この整備のニーズも高まっているわけでございますけれども、今後のスポーツ施設整備の考え方について見解を伺います。

○細井スポーツ振興局長 施設整備につきましては、東京都スポーツ振興基本計画に基づきまして、都は、全都、広域的なスポーツ大会や交流の場としての機能を重視して施設を整備し、区市町村は、地域の日常的なスポーツ活動の場としての機能を重視すべきと考えております。
 この方針に基づき、スポーツ祭東京二〇一三に向け、味の素スタジアムの第一種陸上競技場化改修工事を行うとともに、多摩におけるスポーツ振興拠点として、新たに第三種公認となる西競技場を整備しております。
 さらに、スポーツ祭東京終了後には、アリーナや屋内プールなどを備えました武蔵野の森総合スポーツ施設の整備を着実に進めてまいります。
 また、東京体育館等の既存の都立スポーツ施設についても、利用者や競技団体等のニーズを踏まえた大規模改修工事を計画的に行ってまいります。
 今後、施設利用のあり方や民間企業などが保有するスポーツ施設との連携の可能性を探るほか、区市町村の施設担当者による連絡会を新たに開催するなど、関係機関との連携を緊密にし、都民がより利用しやすい施設となるように取り組んでまいります。

○原田委員 何だか最近は議会のたびに地震が起こるようでございますけれども、質問を続けさせていただきます。
 都立公園の活用についてであります。
 都立公園には運動施設が配置されていることも多くありまして、広く親しまれております。近年のスポーツ人口の増加によりまして、都立公園内の競技場等の施設について、試合や大会での利用、こういったことを求める期待も高まっているわけでございます。
 一方では、これまでの利用者を大切にしつつも、こうした新たなニーズにこたえていくことも、広く都民に愛され続ける公園であるためには重要であります。
 今後、スポーツ利用者も快適に、身近に利用できるように、都立公園のさまざまなスポーツ施設について環境整備を行う必要があると考えますけれども、どのように取り組んでいくのか伺います。

○村尾東京都技監 都立公園の運動施設は、多くの都民が気楽にスポーツに親しめる身近な施設であることを基本としております。そのため、グラウンドの整地や防球ネットの張りかえなどの維持管理を適切に行っております。
 また、夜間照明の設置、テニスコートの人工芝化、野球場の排水設備の改修など、運動施設の更新に取り組み、質の改善を図っております。
 今後とも、運動施設につきまして、快適性と利便性の向上を目指して施設改修を行ってまいります。

○原田委員 次に、障害者スポーツについてお伺いいたします。
 障害者スポーツに取り組んでいる人の中には、健常者以上の能力を発揮される方もいます。私も高校のときに柔道部だったんですけれども、いろんな方が練習に来られておりました。その中に、目の見えない方が練習に来られておったんですけれども、その方、最初は一緒に練習して大丈夫かなと思ったんですけれども、全くの杞憂でございまして、強いんですよね。そうした障害者でもすばらしいアスリートの方がいらっしゃいます。
 ちなみにその方、バルセロナのパラリンピックで金メダルをとられました。
 本当の意味で、健常者も障害者も同じ人間であることを感じ、生きていく、そうしたことを進めていくためには、体で感じる以上に強い体験はございません。障害者と健常者が同じフィールドでともに生きていく上で、パラリンピアン、あるいは障害者スポーツをやっている方と健常者が、スポーツというまさに体を使う場面で一緒に触れ合う、こういう機会をつくることは大事だと思います。
 スポーツ祭東京、さらにはオリンピック招致の場面を初め、交流イベントに積極的に取り組んでいただきたいと思いますが、都の見解を伺います。

○細井スポーツ振興局長 障害者スポーツには、障害の有無や年齢、性別にかかわらず、だれもが楽しめるという魅力のほか、障害や障害のある人への理解を深めることができるなど多くの意義がございます。
 都はこれまで、障害者スポーツを体験できる各種スポーツイベントや小中学校での出前授業等において、パラリンピアンが参加者や児童生徒の目前で高度なわざを披露したり、一緒にスポーツを楽しむなど、障害のある人とない人が触れ合う機会を提供してまいりました。
 今後こうした機会をとらえて、パラリンピアンの派遣規模をふやしていくほか、地域スポーツクラブなどにおいても、障害のある人とない人がともにスポーツを楽しめる場をさらに広げてまいります。

○原田委員 また、単発のイベントだけではなくて、常時交流できる仕組み、これをつくっていくことも必要であります。
 北区には二十三区で唯一の障害者スポーツセンターがありまして、障害者スポーツ指導員の育成などを行っていますけれども、区市町村や、あるいは地域スポーツクラブと連携するなどして、日常レベルで一緒にスポーツができる環境づくりにぜひ取り組んでいただきたいと思います。障害者スポーツセンターが今後果たすべき役割とあわせて所見を伺います。

○細井スポーツ振興局長 障害者スポーツセンターは、障害者スポーツの拠点としてさまざまな障害特性に応じた運動メニューの提供のほか、リハビリ段階にある方などについて、地域に移行するまでの橋渡しとなる支援を実施しております。
 また、重度障害の方や競技力強化を目指す方など、地域での十分な対応が難しく、より専門的な支援を必要とする方へも適切な対応を行っているところでございます。
 これに対し、障害のある人とない人がともに日常的にスポーツを楽しむためには、身近な地域での取り組みが重要となります。このため、都は、地域のスポーツ施設などで障害者スポーツ教室を開催できるよう、地域開拓推進員を設置し、区市町村や地域スポーツクラブに出向いてノウハウの提供や障害者スポーツ指導員の派遣を行うなど、継続的な取り組みとなるように支援いたしまして、新たな地域スポーツの場の拡大を図ってまいります。

○原田委員 本当にせっかくの機会でございますので、障害者だけでとどまるということではなくて、さまざまな取り組みを進めていただきたいというふうに思う次第でございます。
 次に、防災とまちづくりについてお伺いをいたします。
 北区の十条地区では、民間施行によります駅の西口の再開発、さらには旧岩槻街道、補助八三号線の整備など、さまざまなまちづくりの事業が進行しております。
 また、十条地域は木造密集地域でございまして、これまでもさまざまな取り組みが行われてきましたが、今回、木密地域不燃化十年プロジェクトの実施方針が公表されまして、不燃化特区制度に基づく新たな取り組みにも期待が集まっております。
 それと同時に、さまざまな事業が同時並行で行われることで、一時期に負担が集中するのではないか、あるいは、取り残される事業があるのではないか、こうした不安の声もあります。
 そこで、十条地区では現在どのようなまちづくりの取り組みが行われているのか、また、事業が効果的に実施されるために、各事業間の調整にどのように取り組んでいるのか伺います。

○飯尾都市整備局長 十条地区は、老朽木造住宅が密集し、狭隘な道路が多いなどの課題を抱えておりまして、現在、都は、延焼遮断帯となる都市計画道路補助第八三号線の拡幅整備と、これとあわせた沿道のまちづくりを、地元区においても主要生活道路の拡幅整備などの事業を行っております。
 また、十条駅西口地区では市街地再開発事業の準備組合が設立され、事業化に向けた検討が進んでおります。
 これらの事業を効果的に推進するため、都と区とで行政連絡会を設置しており、この場を活用するなど、事業実施上の懸案解決や各事業間の調整に取り組んできております。
 今後とも、区との連携を図りながら木密地域の改善を進めてまいります。

○原田委員 しっかり連携に取り組んでいただきたいと思います。
 その中で、特に進捗が心配されるのが埼京線の連続立体交差事業であります。特に駅前再開発などのほかの事業が終わってからではかえって事業に取り組みにくくなってしまうのではという懸念の声もあります。こうした不安を払拭すべく、各事業主体が積極的に地域にかかわりながら、ほかの事業の進捗状況を見据えた上で、地元の住民と将来像についての合意を形成していくことが望まれます。
 そこで、このような状況を踏まえ、今後の鉄道立体化の推進に向けた取り組みについて見解を伺います。

○村尾東京都技監 鉄道立体化に当たりましては、地元区が将来の都市施設や、それを実現する面的整備などの手法を具体的に検討し、地域の合意形成を図っていくことが必要でございます。
 JR埼京線十条駅付近につきましては、現在、地元北区が地域の将来像を示す基本構想の策定を進めており、あわせて、駅前広場を含む駅西口再開発の都市計画や、関連する道路整備などの検討に取り組んでおります。
 都といたしましても、これら地元のまちづくりに対する取り組みを見据え、区や鉄道事業者と連携して、鉄道立体化について検討してまいります。

○原田委員 区や鉄道事業者と連携してということで、その点、しっかり進めていただきたいと思います。
 木造密集地域の安全を図っていく上では不燃化への取り組みももちろん重要でございますけれども、同時に、いざというときの防火の備えも大切であります。
 震災時に活用を図るために整備を進めている消防水利の充足の状況について伺います。

○北村消防総監 東京消防庁では、震災時における市街地大火に備え、特別区内を一辺が七百五十メートルの区画に分け、その街区ごとの延焼危険度に応じた消火用水の確保を図っております。
 今年度末における充足率は約九八%となる見込みでございますが、消防水利の用地確保が困難となっている地域が課題でございます。
 今後とも、消火用水が不足している木造住宅密集地域等を重点に、その地域特性を勘案しながら、従来の防火水槽や建物の基礎を活用した地中ばり水槽の設置を促進するとともに、深井戸による地下水の活用など、多岐にわたる消防水利を整備してまいります。

○原田委員 約九八%ということで随分進んでいるわけでございますけれども、逆にいえば、約二%はまだ残っているわけでございます。頑強な堤防もアリの一穴から崩れると申しますので、この二%についても着実に進めていただきたいと思います。
 現在、十条地区では、消防署の敷地外としては初めてのケースとして、北区中央公園に深井戸の整備が進められています。また、平成二十四年度予算においては練馬区の中新井公園内におきまして深井戸の整備が検討されております。
 水利不足の地域を解消するためには、今後一層の取り組みが求められるところでございますが、十条などに整備される深井戸の効果と今後の整備についてお伺いいたします。

○北村消防総監 お話のとおり、深井戸については二百メートルを超える深さから地下水をくみ上げることにより、この地域に必要な大量の消火用水が効果的に確保できます。
 また、一方、住民の生活用水などにも転用が可能であります。
 今後とも、木造住宅密集地域等において、大量の消火用水が必要となる地域を選定し、深井戸の整備を進めてまいります。

○原田委員 以上、エネルギー、スポーツ、そして、安全のまちづくりということでお伺いしてきましたが、これらの施策をしっかりと進めて、この東京に生きててよかったと、生き物として生きててよかったと感じられるような東京をつくっていただきますように願いまして、私の質問を終わります。(拍手)

○西岡副委員長 原田大理事の発言は終わりました。
 この際、議事の都合により、おおむね三十分間休憩いたします。
   午後六時二十四分休憩

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