○鈴木(あ)副委員長 田の上いくこ委員の発言を許します。
〔鈴木(あ)副委員長退席、西岡副委員長着席〕
○田の上委員 政治は、ばらまきではなく、仕事で生きがいを与えることが肝要です。私が江戸川区議会議員になった年に、母子家庭の母の就業の支援に関する特別措置法が成立し、初めての本会議で取り上げ、高等技能訓練促進費などが区で使えるようになったという経緯があります。法改正による児童扶養手当の一部減額もあり、自助を促す就業支援に転換したときです。
東京都の児童扶養手当受給者数は、平成二十三年十二月のデータで、母子家庭、父子家庭合わせて八万七千百六世帯、母子家庭の平均年収は平成十八年度全国母子世帯等調査によると二百十三万円で、全世帯平均年収五百六十四万円の四割以下になっていることはご案内のことと思います。
ひとり親家庭の支援は経済支援から就業支援へ、その後、在宅就業に特化した支援を平成二十一年から進めています。
安心こども基金の中にあるひとり親家庭への支援は、平成二十二年三月に、都に三十四・五億円分配され、その後も積み増しされています。しかしながら、現在、この基金でひとり親家庭への支援で執行されているのは、二十二年度までで七・五億円、うち在宅就業支援事業では二億円です。
在宅就業支援事業を行っているのは、はあと立川を拠点とする東京都、区市では、世田谷区のみとなります。
なぜ実施自治体が少ないのか、また、今後どのように区市への働きかけをしていくのか伺います。
○杉村福祉保健局長 在宅就業支援事業は、ひとり親家庭に対して、在宅就業に必要なスキルを習得させ、自立の促進を図るものでございまして、平成二十二年度から開始をいたしております。
この事業は、国の安心こども基金を活用しておりまして、当初、国が示した事業期間は平成二十三年度末までと、二年間に限定されておりました。
また、事業を実施する自治体が、研修に加えまして、業務の開拓、成果物の品質管理や納入など実務を経験させ、その指導を行うことが要件となっておりました。
こうしたことから、区市におきましては、体制整備が困難で取り組みが少なかったものと考えております。
今回、本事業の実施期間が延長されたことから、先行事例の紹介などの情報提供や助言を行いながら、区市の取り組みを働きかけてまいります。
○田の上委員 期間のこともおっしゃっておりましたが、在宅業務の開拓等まで業務の範囲が広がることが区市にとって負担となっているとのことでした。
この事業は、実際には民間の団体に委託されることが多く、受託する団体を探すのが困難ということもあるかと思いますが、他の自治体ではコンソーシアムをつくり、一社だけで事業を行うというより、どれかに特化した企業、NPOが集まって共同体として事業を推進している自治体もあります。ぜひ参考にしていただきたいと申し上げます。
先ほどの調査によると、母子家庭の就業率は八五%ですが、常用雇用率は平成十八年時点で四三%。安定した雇用と住まいを得たいと思いながら、低収入で仕事を重ねています。ダブルワークの負担を抑えるためにも、在宅就業を活用していくことが重要と考えます。
厚生労働省では、在宅就業により見込まれる収入のレベルを二つ示しています。一つは、無理なダブルワーク解消につながるレベルの収入として、文書レイアウト編集などの専門的な在宅ワークで月六万円程度のもの、もう一つは、生活の維持や将来の教育費等に備えるレベルの収入として、データ入力など月三万円程度のものです。
都で進めてきた在宅就業支援事業においては、どのようにこの成果をとらえているのでしょうか、伺います。
○杉村福祉保健局長 都におきましては、在宅就業支援事業で実施をする業務を、生活費を補完するものと位置づけまして、研修が家庭生活において過度な負担とならないよう考慮したことから、データ入力やホームページ作成など、月収三万円程度の一般的なレベルの業務に必要な研修を実施してまいりました。
研修が修了した者の修了後三カ月の平均収入を見ますと、約三万円となっておりまして、当初見込んでいたとおりの実績を上げております。
○田の上委員 月収六万円の方はなかなか難しいということかと思います。都においても、約三万円の実績に甘んじることなく、一定の目標を掲げて取り組んでいただきたいと思います。
先ほども申し上げましたが、基金としてはかなり予算がありますが、実際にはなかなか使われていない現状があります。しかしながら、他の自治体の例を見ますと、愛媛県松山市では、参加者の就労意欲の維持向上を目的に、成功事例の紹介や講師を招いての啓発セミナーを開催したり、北海道では、ひとり親のニーズを把握するとともに、本事業実施へのアドバイスを得るため、有識者による会議を開催したりして、企業等にニーズを聞くというようなこともしております。
こういった例を生かしながら、さまざまな工夫が必要と考えますが、再度ご見解を伺います。
○杉村福祉保健局長 都は、平成二十二年から二カ年にわたりまして、ひとり親を対象といたしました在宅就業に関するセミナーを計八回実施しておりまして、約二百五十名の参加がございました。
また、本年二月には、企業と従事者のマッチングを行う就業フェアを実施いたしまして、二十二社の企業の出展と約五百名の来場者を得ており、就業に結びついております。
さらに、ひとり親家庭に対する相談窓口では、就業を含め、子育てや住宅など生活全般に関する相談に応じております。
今後とも、セミナーの参加者、発注企業の声や他の自治体の動向も参考にしながら、在宅就業従事者の支援に取り組んでまいります。
○田の上委員 ぜひ工夫をしていっていただきたいと思います。
先ほど、国の在宅就業支援事業は、研修や在宅業務の開拓、相談支援等、すべてが要件で、大変であるということでございましたが、多岐にわたる横断的な業務だということであれば、福祉だけではない、就労の視点からも働きかけが必要ではないかと思います。産業労働局とも連携した取り組みを要望いたします。
在宅就業は、時間と場所を選ばず、ひとり親家庭にとって柔軟な働き方ができることが何よりのメリットです。また、今後進行する高齢社会の中で、身体的理由により働きに出られない方にとっても有用な働き方となります。
私自身も母子家庭で育ち、幼いころは母が仕事に出かける姿を恨めしく思ったものです。生活維持のために働かなくてはいけない、でも、少しでも子どもと一緒にいたい、そんな親の選択肢の一つとして、在宅就業支援を積極的に進めていただきたいと強く要望いたします。
次の質問に移ります。障害者雇用です。
全国の企業数の約二一%を抱える東京都では、先進的な取り組みが求められていますが、達成企業割合では、企業の数の多さもあってワーストワンとなっています。三百人以下の中小企業で雇用を促進させることも進めていかなくてはなりませんが、中小企業における障害者雇用は一長一短ではありません。
企業の常勤者の人数と雇用した障害者の数は、ほぼ比例しています。障害者の就業の場をふやすという大命題のもと、平成二十三年六月のデータで四八・四%でとどまっている従業員数千名以上の大企業の法定雇用率達成企業をふやすことにも同時に力を注ぐべきではないかと考えます。
東京都では、どのように取り組まれているのか伺います。
○前田産業労働局長 法定雇用率の達成に向けた個々の企業の取り組みは、障害者雇用拡大の観点から重要であります。
未達成企業への個別の指導は、企業規模を問わず国が実施するというものでございますが、都は、障害者雇用に関するセミナーや個々の企業の実情に合わせた支援を行う東京ジョブコーチ支援事業等を通じて支援を行ってまいりました。
一方、企業規模別の雇用率について見ますと、大企業に比べ、中小企業では低迷している現状でございます。
また、一昨年七月に施行された改正障害者雇用促進法によりまして、障害者雇用納付金の対象がより規模の小さな中小企業に拡大することとなりました。
このため、都は今年度から、意欲ある中小企業を対象としたモデル事業を開始するなど、中小企業に対する働きかけと支援を強めております。
○田の上委員 厚生労働省の障害者雇用の集計結果を見ると、平成二十三年の法定雇用率未達成企業は四万一千二百十一社、そのうち、不足数が〇・五人または一人である企業が六三・九%となっています。あと一人というところに踏み込めない原因を考えなければなりません。既に法定雇用率を達成している企業であっても、現場の話を聞いていると、指導員の努力は大変なものであると感じます。
例えば、国の障害者雇用優良企業の認証のように表彰制度を設けるなど、企業の努力を認める制度を構築することも一つのインセンティブになると考えます。ぜひさまざまな工夫をしていっていただきたいと要望いたします。
昨年の第四回定例会代表質問で、都議会民主党では、都教育委員会が法定雇用率未達成事業者として適正実施勧告を受けていることを例に挙げ、さまざまな方策を講じ、法定雇用率を達成していくべきだと主張いたしました。
先日、地域の障害者雇用企業連絡会に出席をいたしましたが、公的機関の法定雇用率未達成は、頑張っている民間企業にとって大変不満となっています。民間企業では、なるべく仕事をつくるために、親会社から特例子会社に発注するように心がけています。
例えば、名刺をつくる特例子会社があれば、すべての部署に営業して回り、努力をしています。まさに随意契約の最たる理由になります。
東京都の仕事の多くを受注している、中でも随意契約の多い監理団体の実雇用率はどのようになっているのでしょうか。都の認識を伺います。
○笠井総務局長 監理団体における障害者の雇用確保は重要であるというふうに認識しており、これまでもその促進に向け指導を行ってまいりました。
平成二十三年六月一日現在、障害者雇用促進法に基づき、障害者雇用状況をハローワークに提出している二十二団体のうち、法定雇用率を達成している団体は六団体であり、前年度と比較して二団体増加している状況にございます。
今後も、未達成の団体に対しましては、バリアフリー化などの職場環境の整備や障害者に適した職務内容の見直しなどを行い、ハローワークなど関係機関とも連携を図りながら、それぞれの実情に応じた雇用の取り組みを強化するように働きかけてまいります。
○田の上委員 ご案内と思いますが、民間企業の法定雇用率は一・八%、国や都道府県などの機関は二・一%となっています。
監理団体のうち、対象団体は二十二団体、そして、そのうち達成しているのは六団体で、昨年、淺野克彦議員の質問の後、二団体ふえたということでございますが、まだまだ働きかけが必要と思います。
事業によっては難しい分野もございますが、例えば福祉保健局所管である東京都医学総合研究所〇・八%や東京都保健医療公社〇・九二%、産業労働局所管である東京都中小企業振興公社〇・五八%など、障害や雇用を担当する局が所管の団体は、特に達成することが期待されます。
報告団体においても、同様に調査をしたところ、五十団体のうち五十六人以上の規模の団体は十九団体でしたが、ゼロ%の団体が幾つも見られました。
また、指定管理者についてはどうかと調査をかけたところ、指定管理者選定時や事業報告として提出を求めていない、企業側から公表を差し控えたいというコメントを掲げる局もあり、実態はわかりませんでした。
先ほども申し上げましたが、民間企業から見れば、公的機関の法定雇用率未達成はモチベーションの喪失につながります。公的施設を管理している団体は、都民から見れば公的機関と同じで、公務を行っているのと同じです。
当然に雇用率を達成していてしかるべきですが、今後、総務局はどのように指導されるのでしょうか、伺います。
○笠井総務局長 指定管理者制度は、公の施設の管理運営の効率化とともに行政サービスの向上を図ることを目的とした制度であり、指定管理者の選定と評価は施設の適正な管理運営の能力に基づき、なされるものでございます。
一方で、お話の障害者の雇用促進は、障害者の職業生活における自立を促進し、職業の安定を図ることを目的とするものであり、重要な雇用施策の一つであると認識をしております。
指定管理者制度の運用に当たりましては、雇用施策を初めとするさまざまな施策との関係や他の施設の管理形態との均衡などを考慮する必要がございますが、障害者雇用の促進に向け、今後、幅広い観点から検討してまいります。
○田の上委員 先ほど来出ていますが、法改正により、障害者雇用納付金制度の対象が中小企業にまで拡大されています。平成二十七年四月からは、百人を超える事業主にまで拡大されます。不景気や円高の先行きの見えない中も、中小企業の雇用促進が求められています。
一昨年の委員会質問の答弁で、産業労働局は、法律で障害者雇用が企業に義務づけられており、一定規模以上の企業において法定雇用率に達しない場合には、納付金が課されるということについて、企業の理解を深めることが重要という言葉で、法遵守の大切さを述べていました。
監理団体や指定管理者など、税金が多く投入されている、あるいは公的施設を管理している団体において、契約のあり方を工夫するなど、実雇用率の提出を求める仕組みをつくるべきと要望いたします。
一回で助成金をもらうよりも、職の定着、雇用継続のためには、少ない金額でも継続した支援の方がよいという企業からの意見をよく聞きます。
都では、中小企業を対象に、重度障害者一人当たり月額三万円、それ以外では月額一万五千円を最長二年間支給する制度がありますが、時限であり、また、企業の規模が限られています。
今後、制度改正によって高齢者を六十五歳まで雇う必要が生じることも予想されますが、これは障害者も同様であります。
定着支援の一環として、長期雇用に直接つながる支援のあり方を再検討する必要があるのではないでしょうか。都の見解を伺います。
○前田産業労働局長 障害者の安定的な雇用の確保に当たりましては、障害者と企業双方に対する定着支援が効果的です。
このため、都は、ご指摘の助成金制度のほか、在職している障害者向けの訓練による職業能力の開発、向上や、東京ジョブコーチ支援事業による職務の調整等を通じ、障害者それぞれの方々の体調や業務等の変化に柔軟に対応できるよう支援を行っております。
今後とも、それぞれの施策を効果的に活用して、職場定着に向けた支援を行ってまいります。
○田の上委員 さまざまな企業の方から聴取しましたが、継続雇用において必要な支援は、薄くても長いものということでございました。定着支援のためにさまざまな施策があることは承知しておりますが、今後、前向きに検討していただきたいと要望いたします。
次に、発達障害を中心とする特別支援教育です。
昨年の第一回定例会で、特別支援学校における知的障害と発達障害をあわせ持つ配慮の必要な生徒への対応について質問いたしました。知的障害だけでなく、発達障害の特性も踏まえた指導、支援をしていかなくてはなりません。
平成十七年度から、自閉症に関する教育課程の研究を進めているが、二十三年度からは中学部、高等部生徒の自閉症教育の研究にも着手していくという趣旨のご答弁をいただきましたが、発達障害の範囲は自閉症にとどまりません。
今回、医療と連携した発達障害児への教育支援モデルの研究という予算が計上されました。この経緯について伺います。
○大原教育長 現在、小中学校や都立高校で学ぶ発達障害の児童生徒の支援のニーズは、発達障害の程度が重い児童生徒への指導や地域生活支援を必要とする児童生徒への対応など、極めて多様化しております。
こうしたニーズに早期から適切に対応し、学校卒業後までの継続的な支援を充実させるためには、教育と医療、福祉等がこれまで以上に連携を強め、適時適切な指導と支援を行っていく必要があります。
そのため、都教育委員会では、医療機関や大学等と共同した現状調査や実践的な研究を行い、今後の教育活動等に活用できる支援モデルの構築を意図いたしまして、医療等との連携による発達障害児の教育支援モデルの研究に取り組むこととしたものでございます。
○田の上委員 二〇〇一年のWHO総会で正式に採択された国際生活機能分類では、治療を中心とした医学的モデルから社会的モデルへと障害観の転換が図られました。医学モデルは、医療やリハビリによって障害者に働きかけ、障害をなくす、軽減することを重視するものですが、社会モデルは、障害そのものを問題にするのではなく、社会適応が困難となっている環境を改善することで障害のある人々の社会参加を進めるものであり、今後の浸透が期待されます。
発達障害の方々の生きにくさの背景にある環境を改善することが大切です。こうした考えのもと、発達障害の児童生徒が社会生活を送る上で抱えるさまざまな困難を克服するため、学習環境や指導の工夫が必要と考えますが、ご見解を伺います。
○大原教育長 発達障害の児童生徒が抱える困難を克服するためには、本人に対する個別の指導だけではなく、授業への集中力を高めるための環境の整備を行うとともに、同じ学級の児童生徒や保護者に障害に対する正しい理解を促すなど、発達障害の特性等に配慮することが重要でございます。
そのため、都教育委員会は、小中学校や高校等の教員に対しまして、発達障害の児童生徒に配慮した座席配置、掲示物、教材、教具などの工夫、さらには学級での人間関係の形成等について指導資料の配布や講習会の開催を通して理解の促進を図っております。
○田の上委員 ぜひ医療だけではなく、環境づくりという側面からもご支援をお願いいたします。
発達障害の児童生徒は、小中学校だけでなく、都立高校にも相当数の生徒が在籍していると推測されます。都立高校では、特別支援教育推進体制の整備のため、平成二十年度以降、すべての都立高校で特別支援教育コーディネーターの指名と校内における委員会の設置が行われました。
一年前の一般質問で、都立高校での特別支援教育の充実について質問したところ、東京都特別支援教育推進計画第三次実施計画では、チャレンジスクール等の中からモデル校を指定し、適切な指導、支援のあり方について実践的研究を行うとのことでした。
そこで、今後、都立高校における実践的研究がどのように進められていくのか伺います。
○大原教育長 今年度は、教育庁関係者や都立学校長から成る検討委員会を設けまして、都立高校における発達障害の生徒に対する特別支援教育を一層推進するための体制のあり方について検討してまいりました。
平成二十四年度には、モデル校として、チャレンジスクール、エンカレッジスクール及び昼夜間定時制高校の中からそれぞれ一校を指定し、実践的な研究を進めていきます。
具体的には、心理の専門家による巡回相談の活用や進路指導の充実、都立特別支援学校及び外部専門機関との連携のあり方等について、特別支援教育コーディネーターと校内に設置した特別支援教育に関する委員会が中心となって研究を進めまして、その手法や効果について検証してまいります。
○田の上委員 ぜひ実践的研究とともに、一刻も早く都立高校の現場の教育に生かしていただきたいと思います。
先ほど障害者雇用の質問をしましたが、発達障害の研究は教育分野のみならず、就業においても発展途上です。平成二十三年四月から十二月のデータでは、都内ハローワークでの精神障害者の雇用が知的障害者の就職件数を上回りましたが、ここに含まれているであろう精神障害で認定を取得した発達障害の方々の数字はわかりません。
発達障害も多岐にわたりますが、障害についての知識や理解がますます必要になってくることと思います。福祉、教育、労働など関連する分野での局の連携と施策の向上にご努力されることを改めて要望いたします。
次に、豊洲新市場の土壌汚染対策についてです。
土壌汚染対策の方法については、今までにも議論を重ねてまいりました。今回の工事に当たっての底面管理の調査も行われ、不透水層と呼ばれてきたYc層の深部にも汚染が発覚いたしました。
砒素と鉛については、二深度とも基準超過を確認している地点が五十五地点中五十三地点とのことです。砒素と鉛について、土壌溶出量が環境基準値の十倍以下、かつ全量分析値が国の施行通知の目安の範囲内のものを自然由来としていましたが、Yc層内部で砒素、鉛が環境基準の十倍を超えた箇所は何地点、何検体あったのでしょうか。
○中西中央卸売市場長 今回行いました不透水層、いわゆるYc層内の土壌汚染対策範囲を確定するための底面管理調査におきましては、九十三地点、百九十一検体を調査いたしました。そのうち、砒素を対象にしたものは五十三地点、百六検体、鉛を対象にしたものは三地点、五検体でございます。
調査の結果、砒素と鉛については、Yc層内において、土壌溶出量が環境基準値の十倍を超過した箇所もあったものの、環境省から出された通知に示された自然由来に関する判定方法に照らし、ガス工場の操業由来の物質ではなく、自然由来と判断しております。
具体的に、超過した地点数につきましては、砒素では十二地点、十三検体であり、鉛では基準値の十倍を超過したものはございませんでした。
○田の上委員 底面管理の調査では、深さ方向で二メートル、一メートルずつでございますが、すなわち二深度続けて汚染がないことを確認する二深度確認が行われます。二深度続けて汚染が出なくなるまで掘り進めるものです。
ところが、砒素、鉛は基本的に自然由来と判断され、Yc層内での二深度確認は行われず、二深度のみの調査でとまってしまいます。一律自然由来として二深度確認が行われないのはなぜでしょうか。
○中西中央卸売市場長 今回の底面管理調査におきまして、Yc層内で検出された砒素、鉛につきましては、環境省から出ております通知による判定方法及び専門家の見解から、ガス工場操業に由来するものではなく、自然由来と判断いたしました。
環境省の判定方法に照らしてみますと、第一に、砒素、鉛はいずれも自然由来の可能性が高い物質に該当すること、第二に、全量分析による含有量が、砒素は自然由来の上限値の目安、一キログラム当たり三九ミリグラムに対しまして、最大でも一三ミリグラム、鉛は一キログラム当たり一四〇ミリグラムに対しまして八ミリグラムであり、いずれも目安値を大きく下回っていること、第三に、分布特性にガス工場使用履歴場所等との関連性を示す局在性が認められないこと、こうしたことから、自然由来の判定方法に合致することを確認したものでございます。
したがいまして、Yc層内で検出された砒素、鉛につきましては、いたずらに掘削を進めYc層を傷つけることや、汚染を拡散させないという観点から、二深度分の調査にとどめたものでございます。
○田の上委員 自然由来の判定方法は、まず土壌溶出量で環境基準の十倍以下、そして、先ほどもご説明いただきましたが、土壌含有量の上限値の目安は砒素一キログラム当たり三九ミリグラム、鉛で一キログラム当たり一四〇ミリグラムです。種類、含有量の範囲等、分布特性の三つの観点から判断をいたします。
今回の調査の濃度計量証明書を見ると、O-28、P-27、P-28というあたりで集中的に溶出量が十倍を超え、かつ底面管理、二深度確認でございますが、できていない地点が、私が数えたもので六カ所ほどございます。
これは、市場がホームページに出しているものでございます。五街区の図になりますが、今回、底面管理調査を行ったところ、そして赤いところが二深度確認で汚染がないことが未了の地点でございます。私が示したのがこのあたり、ちょうどこのあたりになります。
二深度確認が未了の地点が、五十四地点のうち五十二地点、砒素でございますので大体このあたりということになります。
詳細調査の結果で見てみると、土壌含有量でO27-9というところ、ここは一キログラム当たり五〇ミリグラム、P27-8は地下水で一リットル当たり〇・三一ミリグラムの値を示しています。
地下水汚染が突出して高い、三十一倍です。また、P-28では、東京ガスの調査時点で、表層土壌溶出量四十倍を超え、六メートル連続で十倍を超え、そして、含有量において一キログラム当たり一九三ミリグラムという数字も出ています。
砒素汚染が見つかっており、周囲の分布を見ても突出したエリアであるといえます。こういった地点も自然由来として対策を行わないということでしょうか。
○中西中央卸売市場長 ガス工場操業に由来する人為的な汚染は、操業地盤面から下へと汚染が浸透していくことから、汚染が土壌に混入いたします操業地盤面の濃度が高く、深くなるほど濃度が低くなる傾向となります。
ところが、ご指摘の区画周辺における帯水層内の砒素につきましては、深さ方向の濃度にばらつきが大きく、人為的な汚染が上から不透水層まで浸透したとは考えにくい状況でございます。
先ほどご答弁いたしましたとおり、自然由来の判定方法や専門家の見解から、不透水層内における砒素と鉛は自然由来であると判断しているところであり、ご指摘の区画周辺において、砒素の土壌溶出量は十倍を超えているとは申しましても、十一倍か十二倍と著しく超えているものではなく、さらに、十二倍の箇所における全量分析による含有量を見ると、一キログラム当たり一〇ミリグラムと、自然由来の目安値である三九ミリグラムを大きく下回っております。
こうしたことから、今回の調査地点における不透水層内の砒素と鉛は、ご指摘の区画周辺も含め、自然由来と判断し、掘削除去などの対策は行わないことといたしました。
なお、念のため申し上げますが、委員からは、底面管理調査の状況といたしまして五街区のマップをお示しいただきましたが、五街区だけを見ますと一部に汚染が集中しているもののように見えますが、市場用地全体、特に七街区などの状況をごらんいただければ、一部に特在しているわけではないことをご理解いただけるものと思います。
○田の上委員 以前の調査でしっかりとした数字が出ている、そういったことも含めて考えていくべきではないかと思います。あくまでも環境省が示しているものは目安であり、それを判断するのは東京都であります。専門家の方の意見も聞いているのであれば、その報告書も提出していただきたいというふうに思います。
環境基準の十倍を超える、操業に由来する疑いのある汚染が、汚染されている深さの確認もしないままYc層内に残されるということになるかと思います。ぜひ検討していただきたいと思います。
そして、先ほど、調査が途中であって、全体を見ないとわからないというような向きのご答弁がありましたけれども、ぜひ途中経過ではなくて、しっかりしたものを見て判断をさせていただきたいと思いますので、今後の調査結果を心待ちにしております。
帯水層は厚いところもあれば、かなり薄いところもございました。土壌汚染対策法では、難透水層の連続性や五十センチ以上の厚さを有するという条件がございます。以前質問したときには、百本程度、水道局やゆりかもめのものも含みますが、ボーリングデータによって不透水層が連続的にあると確認しているというご答弁でございました。
今回の汚染対策工事を行うに当たって、今までのボーリング調査等以外に不透水層の上端、すなわち帯水層の底面を確認されたのでしょうか、伺います。
○中西中央卸売市場長 帯水層の底面、すなわち不透水層の上端につきましては、その存在と連続性は既に確認されていると認識しており、専門家会議からも同様の見解をいただいております。
具体的には、百本を超える地質調査ボーリング結果に加え、一千四百七十五地点で行いました絞り込み調査など、敷地全体を対象とした汚染状況を把握するこれまでの調査と、河川から運ばれてきた土砂が長い年月をかけて堆積した地層の成り立ちから、この不透水層の存在と連続性を確認しております。
以上のことから、土壌汚染対策工事で行います調査において、改めて不透水層の上端を調査する必要はございません。
○田の上委員 土壌汚染対策工事に当たっては、新たに不透水層の上端を確認するという調査は行わないということでございました。
以前にも申し上げましたが、六街区の絞り込み調査でも、地層が五十センチ未満のところや、中には十センチというようなところもございました。また、同じく平成二十年の絞り込み調査で不透水層が確認できなかったという箇所が二カ所ありました。これは先ほど、砒素で土壌溶出量や含有量が高いという、私が示しました五街区のエリアの近くになります。確認をせずに進めていくことに懸念を示すものです。
どんな方法で汚染対策をするにせよ、残った汚染を封じ込めるから大丈夫というのが今までの市場のスタンスでした。
意見が食い違うかとは思いますが、AP二メートルより下の部分において汚染が発覚しているところは掘削されますが、土壌汚染対策法は百平米に一カ所の調査であり、汚染をすべて見つけるということは困難です。また、概況調査で発覚しなかった汚染物質は深度方向に調査しないので、表層で見つかった物質しか処理プラントで処理されないということになります。
地下水や震災による液状化で汚染箇所が移動している可能性もあります。また、自然由来の砒素と鉛が残置されることは市場当局も認めているところです。
いずれにいたしましても、汚染は残り、それを前提として申し上げますが、この封じ込めにおいて懸念するのは大きく二つです。一つは液状化、もう一つは地下水の管理です。今回は、液状化について質問します。
国の地震調査委員会では、首都圏で境界型以外も含めて、マグニチュード七クラスの地震が今後三十年以内に起きる確率を七〇%と予測しており、また、東京大地震研究所の酒井准教授は、直近のデータを踏まえると、今後三十年間で九八%になると予測しています。
第十五回技術会議では、液状化対策をレベル一と発表しています。レベル二、レベル一とある中で、レベル一とはどの程度の地震の大きさを設定しているのでしょうか。
東日本大震災の東京湾沿岸部での揺れを想定した場合、耐えられるものなのか伺います。
○中西中央卸売市場長 土壌汚染対策工事の詳細設計におきましては、港湾の施設の技術上の基準・同解説に基づきまして、豊洲地区近傍の地震動に現地の土質データを加味した実態に合った設計を行っておりますことから、震災時における市場用地に必要な耐震性は十分確保できると考えております。
平成十九年に改訂されました港湾の施設の技術上の基準・同解説は、地震動の実態に合わせ、それまでの最大加速度、これはガルという単位を用いますが、これのみを使用する方式から、地盤特性等を考慮した地震動を設定する、より合理的な方式に改められました。
なお、レベル一の地震動は、施設の供用期間中に発生する確率が高い地震動であり、詳細設計においては、最大加速度に百四十四・六ガルという数値を使用しております。
また、液状化は地盤に地下水がある場合に起きる現象でございますが、豊洲新市場では、地下水位をAP二メートルに管理し、その上に液状化を生じない層を少なくとも四・五メートル確保することとしております。
さらに、液状化対策の工法につきましては、臨海副都心や浦安などにおきまして、東日本大震災においても効果が確認されました砂ぐい締め固め工法や格子状固化工法を採用しておりますため、同じような地震があったとしても問題はございません。
○田の上委員 独立行政法人防災科学技術研究所発表による、昨年三月十一日、東日本大震災時の東京湾の地震の大きさ、先ほど、ガルとおっしゃってました、最大加速度は東雲で百六十八ガル、辰巳で二百二十四ガルでした。しかも、今までの波形より長かったわけです。首都直下はもちろんですが、昨年と同じような地震、東京では震度五強だったと思いますが、そのような地震が起こったら耐えられないのではないかと懸念いたします。
先日発表された底面管理の調査では、Yc層、すなわち不透水層内でも汚染が見つかりました。平成十八年の地盤解析データでは、Yc層やEs層--江戸川層といいます。Yc層よりさらに深いところです--にも液状化判定が出ていることは以前より指摘させていただいております。液状化判定の出ているすべての箇所を対策するのでしょうか、伺います。
○中西中央卸売市場長 今回の土壌汚染対策工事で実施いたします液状化対策の範囲は、先ほど申し上げました平成十九年の港湾の施設の技術上の基準・同解説の改訂を受けまして、昨年度実施いたしました詳細設計の中で改めて液状化の判定を行い、技術会議委員にも相談の上、決定しております。
具体的に申し上げますと、Yc層より上部で液状化する可能性があると判定された層については、すべて対策を実施いたします。Yc層より下部で液状化する可能性があると判定された層につきましては、五街区の西側を除きまして、その上部に液状化しない層が十分にあることから、特に対策は必要ないと技術会議委員より見解をいただいております。
五街区の西側につきましては、Yc層内の対策にも適したコンクリートぐいにより締め固める工法を採用することで、Yc層も含めた対策を実施いたします。
このように、豊洲新市場の実態に合った合理的な液状化の判定に基づき対策を講ずることで、地震の際にも市場用地の安全・安心は十分確保してまいります。
○田の上委員 今いろいろ難しいご説明がございましたが、実際に不透水層で液状化対策をとられるのは五街区の西側、つまりボーリングナンバー七番とのことです。その他の部分は不透水層より上部のみの対策となります。
港湾の施設の技術上の基準・同解説の改訂を受けて液状化の判定を実施し、技術会議委員等にも相談をして、いろんな範囲を決定したということでございます。改訂では、施設に要求される性能のみを規定し、設計方法などの仕様を定めない性能規定への改訂などということで、つまりは十八年の資料に比べて低く設定されているかと思います。
土壌汚染対策法は最低限の基準、調査ということでございますけれども、それに比べて手厚い対策を今まで施していると市場は主張してまいりました。それは、やはり食を扱う市場だからということでございました。しかしながら、専門家会議を経て、そして今回のそういった改訂も受けて、対策レベルが低くなっているのではないかと懸念をいたします。
何度も申し上げていますが、土壌汚染対策か液状化対策かをしっかりやらなくてはいけません。土壌汚染対策が万全とはいえない。万全になることは大変難しいです。汚染が残るのなら液状化対策は万全にしなくてはならないということです。
市場の安全性については、消費者の立場を常に忘れてはなりません。今まで議会で明らかにならなかった土壌汚染対策の内容は、先ほど来何度も出てきていますが、詳細設計に基づいて工事を始めているはずです。また、今まで議会に説明してきたものと変更した部分もあるのかもしれません。そうであれば、詳細設計についてもできる限りわかりやすく公開をすることが必要であると考えます。
また、都民との継続した意見交換の場をつくるなど、リスクコミュニケーションを怠るべきではないと考えますが、見解を伺います。
○中西中央卸売市場長 豊洲新市場予定地におけます土壌汚染対策工事の詳細設計につきましては、その成果でございます工事内容を技術会議で確認いただくとともに、説明資料をホームページで公表しております。
また、工事の進捗や工事に伴う各種調査結果についても広く都民に公開いたしまして、積極的な情報提供を行っております。
さらに、仮設土壌処理プラントの整備が完了し、処理結果をお示しすることが可能となる時期には、現場見学会を開催するとともに、市場関係者や学識経験者などを構成員といたします協議会を設置し、汚染土壌の処理状況について情報の共有化を図っていく予定でございます。
こうした取り組みを行うことにより、都民の理解と信頼を得ながら確実に工事を進め、首都圏三千三百万人の食の安全・安心を支える市場を整備してまいります。
○田の上委員 平成二十二年一月の経済・港湾委員会の参考人でおいでくださった専門家会議の平田座長が、安全だけでなく、安心のためには、データはすべて開示するということが基本原則である、また、安心を担保するために管理そのものに一般市民も含めて参加をする。場合によっては解析もする、そういう集いが必要であるとおっしゃっていました。まさにそうした仕組みをつくり、都民に対するリスクコミュニケーションを図らなければ、この新市場に対する懸念は軽減されていきません。情報公開及びリスクコミュニケーションへのさらなるご努力をお願いいたします。
次に、緊急輸送道路沿道建物耐震化についてです。
緊急輸送沿道建築物の耐震化を推進する条例により、四月から対象建築物の耐震診断が義務化されます。耐震診断を確実に実行するため、分譲マンション及び延べ床面積一万平米以下の建築物では、原則として所有者負担がなくなる助成制度となっています。
耐震診断の費用は、建築物の床面積に応じて計算し、床面積当たりの補助単価を、一千平米以内は一平米につき二千円、一千平米を超え二千平米以内は、一平米につき千五百円等々と設定されています。しかしながら、単純に床面積だけで耐震診断の費用を計算することは適切ではなく、フロア当たりの面積が小さく、複層階になっている建物は自己負担が発生し、耐震診断が進まないのではないかと考えます。
面積が三千平米未満のときは、階数に十五万円を乗じた額を加算することになりましたが、このような小規模の建築物について、都ではどのように対応してきたのか、また今後、どのように対応していくのか伺います。
○飯尾都市整備局長 小規模な建築物の耐震診断を行う場合、国の助成単価設定では実勢に合いませんことから、都は、条例施行に合わせまして、現地調査など必要な経費を加算する、都独自の助成制度を整備いたしました。
さらに、診断技術者の団体とも連携いたしまして、診断方法のマニュアル化や手続の簡素化を行うことによりまして、耐震診断に要するコストをできる限り抑えております。
こうした取り組みによりまして、図面が全くない場合など一部の特殊な例外を除きまして、所有者の自己負担なしで診断が実施されております。
今後とも、関係団体と連携し、円滑な耐震診断の実施に向け取り組んでまいります。
○西岡副委員長 田の上いくこ委員の発言は終わりました。(拍手)
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