予算特別委員会速記録第二号

   午後三時二十六分開議

○鈴木(あ)副委員長 休憩前に引き続き委員会を開きます。
 質疑を続行いたします。
 鈴木隆道理事の発言を許します。

○鈴木(隆)委員 それでは、平成二十四年東京都予算特別委員会に当たり、都議会自民党を代表して総括質問を行います。
 まず最初に、東日本大震災から丸一年が過ぎました。改めてお亡くなりになられました皆様方に心からご冥福を申し上げるとともに、多くの被災した方々に衷心よりお見舞いを申し上げます。
 この大震災を乗り越え、日本の再生を導き出すことが政治の果たすべき使命と考えております。今、この東京から日本の再生を牽引していくことこそ、まさに求められていると考えます。
 先ほど入った情報でありますが、福島県の被災地の応援ツアー、一泊三千円の補助の件でありますが、きのう受け付けをしたところ、その日のうちにすべて予定の人たちから応募があり、満杯になったということであります。
 極めて私にとってはうれしい情報でございまして、できればこういうことも含めて、被災地支援に対して温かい、そういうような対応を都に望みたいということを申し上げて、質問に入ってまいりたいと思います。
 都税収入が五年連続で減収となる厳しい経済状況のもとで編成された平成二十四年度予算は、知事が強い意思を持って歳出総額を抑制する一方、都が直面する課題の克服に向けた方策には、重点的に財源を配分されたとのことであります。
 厳しい財政環境の中、こうした予算編成ができるのも、この間、知事の強力なリーダーシップにより、国に先駆けて職員定数の削減や給与関係費の見直しなど、血のにじむような努力を徹底して進めてきたからにほかなりません。
 そこでまず、石原知事就任前の平成十一年度予算と比べ、都の給与関係費の状況がどのようになっているのか、国との比較を交えてお答えいただきたいと思います。

○安藤財務局長 都は、平成十一年度から二次にわたる財政再建推進プランを策定し、職員定数の削減や、当時としては全国で最も厳しい給与カットなど、内部努力に努めるとともに、施策の見直し、再構築を徹底しまして、約八千億円の財源を生み出してまいりました。
 こうした取り組みによりまして、給与関係費については、十一年度の一兆八千七百七億円から、二十四年度は一兆五千四百六十三億円と一七・三%の減少となっております。
 これとは対照的に、国の人件費は、十一年度の四兆二千七百六十四億円から、最新の時点となる二十三年度で四兆千二百七十五億円と、三・五%の減にとどまっているところであります。

○鈴木(隆)委員 答弁をいただきました。
 二点目には、投資的経費について伺いたいと思います。
 今の答弁で、都が給与関係費の約二割の削減をしてきたのに対し、国はわずか三%程度の削減にとどまっています。ようやく七・八%の削減を行うことが決まりましたが、まさに国は周回おくれの状況にあるわけです。
 こうした内部努力の差が予算の中身にもあらわれています。都の二十四年度予算は、これまでの努力の成果に立って、厳しい財政環境の中でもしっかりとした財源を確保し、少子高齢対策や雇用対策を初め、中小企業支援など、都民の安心を取り戻し、東京の活力を高めていくための施策を着実に推進するものとなっています。そして、とりわけ注目すべきは、投資的経費を八年連続で伸ばしている点であります。
 そこで、歳出総額を抑制する中にあっても、あえて投資的経費を増額した理由を改めてお伺いをいたしたいと思います。

○安藤財務局長 東京外かく環状道路や東京港などの整備を推進することは、国際競争力の強化の観点からも不可欠でございます。また、大震災を踏まえまして、建築物の耐震化や老朽化した施設の計画的な改築、改修を進め、災害に強い都市づくりを加速させていかなければならないところでございます。
 来年度予算におきましては、こうした視点に立ちまして、歳出総額は厳しく抑制する一方、新たな雇用や需要をも創出することから、投資効果の高い投資的経費には、限られた財源を重点的に配分することとしたものでございます。

○鈴木(隆)委員 ただいま投資効果に関するお話がありました。過去に都市整備局が公表した秋葉原地区の土地区画整理事業については、投入した事業費三百四十六億円に対し、民間ビル建設等による波及効果を合わせると、投資金額の約十倍、三千六百六十億円の効果があったと試算をされています。
 日本を覆う閉塞感を打ち破るには、こうした波及効果を持つ投資的経費をふやすことにより、都市の魅力を高め、景気を刺激して東京を新たな成長軌道に乗せていくことが重要であります。
 一方、国の予算は歳出の膨張に歯どめがきかなくなっています。提言型に形を変えた事業仕分けは、昨年と同様、さしたる結果も出せず、みずから身を切る取り組みは一体どこまで進んでいるのでありましょうか。
 歳出構造を根本から見直す努力もせず、国家百年の大計で取り組むべき社会資本整備を放棄し、公共事業関係費を削減し続けているという現状があります。
 そこで、政権交代以後、国の一般会計における公共事業関係費の推移がどのようになっているのかお伺いをいたします。

○安藤財務局長 国の予算は、政権交代前の平成二十一年度予算と二十四年度予算で比べますと、歳出全体がこの間伸びている中にありまして、公共事業関係費について申し上げれば、二十一年度が七兆七百一億円であったのに対し、二十四年度では四兆五千七百三十四億円と、二兆四千九百六十七億円、三五・三%の大幅な減となっているところであります。

○鈴木(隆)委員 政府は、とうに破綻しているマニフェストに拘泥をし、財源を捻出するためには、理念はおろか、真に必要な公共事業とは何かといった基本的認識もなく、削減をし続けているわけであります。ここまで確認したように、都と国の対応は極めて対照的であります。
 知事は、就任後初の平成十一年第二回定例会の所信表明でこう述べられました。巨大な都庁組織では、その身体の大きさゆえに滅びたマンモスや恐竜のように、柔軟で機敏な都政運営が難しくなっております、時代の変化を敏感に察知し、新しい時代を先取りできる体質に改善していかなければ、首都東京としての存在意義を問われかねないものとなりますとおっしゃっております。
 残念ながら、国にはこのような危機感が決定的に欠如しているといわざるを得ません。都財政を取り巻く環境は大変厳しいものとなっておりますが、石原知事が常に先を読み、次なる手を打ち、財政の対応力を培ってきたことが、まさに今、功を奏しているわけであります。
 これまで都債や基金をバランスよく活用し、荒波を乗り越えてこられた知事に、今後の財政運営の考え方を改めて伺います。

○石原知事 都政を預かる者としては、いかなる状況にあっても、都民の負託にこたえていく必要があります。そのためには、何よりも金ですな。要するに、何よりも強固な財政力を培うことが必要であると思います。
 こうした原理的な考えに基づいて、都は、組合もよく協力してくれていたと思いますよ、国より先んじて人件費を切り詰め、人も二万八千人減らしました。新たな公会計制度や事業評価も活用しながら、徹底的に施策を見直すなど、血のにじむような努力を重ねてきました。
 これ、世間は余り気がついてないというか、評価してくれませんが、あなたみたいに著名な経済人であった小坂徳さんの秘書もしてらしたからよくおわかりだと思いますけれども、日本の経済人もこのことに気がついていないんですね。単式簿記なんていう大福帳にも及ばないばかな会計制度をやっている国といったら、世界じゅうで日本の周りでは北朝鮮とフィリピンとパプアニューギニアだけですよ。どの国も発生主義で複式簿記をやっているの。
 これは、何も今の政権だけではなしに、自民党の、要するに歴代の政権の責任でもある。そこと違って--今の政府はもっと危ない。それに比べれば、東京都の自民党というのは協力してくれて、会計制度を変えましたよ。だから、国は相変わらずばかなことをやっていますから、とにかくこの国はバランスシートがない。
 それから、お客さんがこの会社の株を買おうかとか、株を持っている人がこの会社は危ないから株を離そうかなと、その判断になる財務諸表がこの国にはない。一切ない。だから、今の政権がやっているみたいに、事業仕分けみたいなあほなことをやって、何の結果も出ない。
 こういったことを財界の人も知らないんですね。私は、歴代の豊田章一郎、それからキヤノンの御手洗さん、今の、何だっけ、あの人、タヌキみたいな人、何ていったっけ(「米倉」と呼ぶ者あり)ああ、あの人にはいったんですけど、知らないんだ。
 とにかく経団連の会長が、日本の政府がやっている会計制度が単式簿記だなんてことを知らない。政党に金を出すのも結構だけれども、こういうことに口を出して、経済界が注文をつけたらいいと思うんですね。じゃないと、この国はいつまでたっても財務省が金を隠して、あっぷあっぷした財政が続きますよ。
 いずれにしろ、皆さんの協力をもとにこういう取り組みを通じて、何とか貯金もふやしましたし、都債の発行も抑制するなど、将来を見据えた財政運営に腐心をしてきました。
 この先も税収の好転はなかなか期待できませんし、厳しい財政環境が続きますが、堅実な財政運営という基本に改めて立ち返って、都政の自己改革を揺るぎなく継続するとともに、とらの子の積立金については、これを大切に大切に活用していきたいと思っております。
 こうした取り組みが、東京の将来をつくり上げていく上で、責任を履行するすべとなるものと考えております。

○鈴木(隆)委員 大変貴重な意見を聞かせていただきまして、ありがとうございました。私は全く同感であります。
 続いて、電力の値上げについて伺いたいと思います。
 中小企業に大きな影響があり、都民の最大の関心事である電気料金の値上げ問題であります。
 本年一月、東京電力は、大口需要家の電気料金を四月一日から値上げすると唐突に発表をいたしました。
 我が国の産業を支える中小企業は、原材料の高騰や円高などの荒波にさらされており、ここでの値上げはぎりぎりの経営に追い打ちをかけることになります。いや、倒産する企業すら出る可能性がある。このことを踏まえて我が党は、いち早く総理大臣や東京電力等に電力の安定供給や中小企業、医療、福祉系への配慮を要望したことに加え、幾度となく東京電力から聴取をし、さらなるコスト削減も申し入れを行いました。
 今般、東京電力から中小企業に関する値上げ緩和策が示されました。これは、一連の我が党の活動の成果と受けとめてはおりますが、緩和策の内容はまことにもって不十分といわざるを得ません。
 特に、東京電力の内部努力によるコスト削減は徹底したものとは到底いえず、これは日々の経営に血のにじむ努力を続けている多くの中小企業からすると全く容認しがたいもので、東京電力に対しては、引き続き徹底した内部努力を強く求めるものであります。
 さらに、電力の問題は、決して余裕があるとはいえない今夏の需給も考えなければなりません。
 そこで、値上げが強行された際には、節電対策の観点から、行政としても何らかの中小企業支援をすべきと考えますが、所見を伺います。

○前田産業労働局長 ご指摘のとおり、電力の問題につきましては、電力料金の値上げへの対応ということと、ことしの夏の電力確保の両面から考える必要がございます。
 先ごろ、東京電力が値上げの緩和策として発表いたしました中小企業向けの料金割引のメニューも、その中身を見ますと、電力使用がピークとなる夏の節電に協力することが条件となっております。
 現実問題として、中小企業が電力の使用量を効果的に減らす節電の取り組みについて、都として適切に支援することが重要であると考えております。
 そこで、都は、昨年設置いたしました中小企業向け電力自給型経営促進支援事業の基金を活用いたしまして、中小企業がこの夏の節電により値上げの影響の少ない料金の適用対象となるよう、的確にサポートを行うことを検討しております。
 また、電力の確保等に役立つ自家発電設備の導入促進につきましても、引き続き前向きに検討してまいります。

○鈴木(隆)委員 電力問題は、先ほど申しましたように国のかなめであります。我が党は、既に東京電力に内部努力の上積みや料金の見直しを求めておりますが、引き続き国には確固たるエネルギー戦略を、東京電力には利用者本位の経営を強く求めていく決意を表明して、次の質問に移ります。
 それでは、防災対策の推進について順次伺ってまいります。
 いつ起こってもおかしくない首都直下地震にどう備え、高度防災都市への歩みを加速させるか、我が党の本会議の代表質問に対し、執行機関からは多くの具体的な取り組みと力強い決意が答弁をされました。本日は、予算審議の観点からさらに掘り下げてまいりたいと思います。
 まず、防災対策の基本となる地域防災計画の修正についてであります。
 より具体的で実践的な内容へと見直すとの答弁がありました。前提となる地震がどのようなもので、どの程度の被害が見込まれるのかを踏まえる必要があります。
 先般公表された文部科学省の研究プロジェクトの成果報告によれば、首都直下のプレートが従来の想定より十キロメートル程度浅く、最大震度が七となる可能性があり、マスコミも大きく取り上げたところであります。
 都は現在、首都直下地震等の被害想定を行っていますが、科学的、客観的な視点からしっかりとした想定を行うとともに、都民にわかりやすく伝え、その結果を対策に十分に活用しなければなりません。
 都は、首都直下地震等の被害想定をどのように取りまとめ、示していくのかお伺いをします。

○笠井総務局長 今後の被害想定に当たりましては、最新の科学的知見に基づき、起こり得るリスクを冷静に検証することが重要でございます。
 このため、東京都防災会議の地震部会では、お話の研究プロジェクトの成果など、最新の知見を取り入れ、より正確な地震像に基づき震度分布や津波高などを推計し、死傷者や建物倒壊、ライフライン被害などの被害想定を四月に取りまとめる予定でございます。
 この結果に基づき、建物の耐震化や初期消火力の向上など、自助、共助の取り組みを促すとともに、公助としての予防対策や応急復旧対策の充実強化を図ってまいります。

○鈴木(隆)委員 都の防災会議の委員は、地震や津波など各分野における第一人者がそろっているとお伺いをしています。専門家の科学的な視点に基づいた適切な想定をお願いしたいと思います。
 次に、新たな条例が提案されている帰宅困難者対策についてであります。
 先週、国や民間団体等を構成員とする帰宅困難者等対策協議会で中間報告があったとお聞きいたしました。報告では、一斉帰宅の抑制に伴う企業従業員の施設内待機や、大規模な集客施設等での利用者保護の手順の考え方等が盛り込まれていると伺いました。条例の具体化に向けて、官民挙げた検討をさらに進めていただきたいと思います。
 その中で、帰宅困難者を受け入れる一時滞在施設の確保が課題となっています。条例でも都は、都立施設を一時滞在施設に指定するとしておりますが、施設が機能するためには、必要な物資の備蓄や家族との安否確認手段の確保も必要となります。
 都が確保する一時滞在施設について、どのような整備を行うのかお伺いをいたします。

○笠井総務局長 一時滞在施設の確保には、官民を挙げた取り組みが不可欠でございます。このため、都は、都庁舎や都立学校はもとより、監理団体が運営する体育施設や文化施設も含め一時滞在施設を幅広く指定し、水、食料、毛布など必要な物資の備蓄や家族との安否確認を行うための災害時特設公衆電話の設置などの整備を行ってまいります。
 また、発災時には速やかに施設を開放し、帰宅困難者への休憩場所の提供、備蓄品の配分、災害関連情報の提供などを行ってまいります。
 こうした都の率先した取り組みを国や区市町村、民間事業者に広く求め、一時滞在施設の拡充を図ってまいります。

○鈴木(隆)委員 一時滞在施設は、帰宅困難者が安全に帰宅できるようになるまでとどまる施設として重要な役割を担っています。ぜひ万全な整備を求めたいと思います。
 次に、燃料の確保について伺います。
 発災時の応急活動において、さきの震災で課題となったものの一つが燃料の確保であります。特に拠点病院などの施設が停電した場合、命をつなぐ救命救急に甚大な影響をもたらします。緊急時に出動する各種車両の燃料も確保しておく必要があります。
 我が党は、昨年の第二回定例会以来、この問題を一貫して提起をしてまいりました。このたびの予算で一定の措置が講じられたことは高く評価をしたいと思いますが、問題は足りないところに確実に届けることができる実効性のある方策であります。
 都は、災害時の救命救急活動に必要な燃料をどのようにして確保していくのかをお伺いいたします。

○笠井総務局長 発災時の初動対応を確実に行うため、都はこれまでも業界団体との協定により、災害拠点病院や緊急通行車両などに優先的な燃料供給を受けることとしてまいりました。
 しかしながら、東日本大震災では、発災後の混乱により一時的に極度の燃料不足となったことから、発災時の燃料の調達方法を見直す必要が生じました。このため、都が、災害拠点病院や緊急通行車両が使用する燃料をあらかじめ確保した上で、発災時には、最も近いガソリンスタンドから確実に供給できる新たな仕組みを業界団体と連携して導入し、発災時の燃料確保に万全を期してまいります。

○鈴木(隆)委員 現場を預かっている業界団体と特に密接に連携をした取り組みを求めておきたいと思います。
 次に、木密地域不燃化十年プロジェクトについて、端的に三点伺います。
 都は先般、実施方針を公表し、いよいよプロジェクトが動き出しました。この一環として、木密地域の現地に出向き、地震の怖さやまちづくりの重要性を伝え、住民の生の声を聞く集会を始めたとのことでありますが、そこではどのような意見が出されたのかをまず最初に伺います。

○飯尾都市整備局長 住民の方々の生の声を聞くため、先月十四日の葛飾区を皮切りにいたしまして、地域密着型の集会をこれまで五地区で実施いたしました。
 集会では、阪神・淡路大震災当時、神戸市消防局の職員でございまして、その後復興まちづくりにも携わられました講師の方から、発災当時の状況をみずからの体験をもとに語っていただきまして、地域住民の方々と意見交換を行いました。
 住民の方々からは、建てかえ時の建築規制を緩和してほしい、防災まちづくりのために、あいている都有地を有効活用すべき、個々の建物を建てかえるだけでなく、行きどまり道路を解消するような地域全体の計画を考えるべきといったさまざまなご意見をいただきました。

○鈴木(隆)委員 答弁にあったように、さまざまな意見が出ているというふうに私たちも認識をしています。
 木密地域の整備に当たっては、地元区を取り込み、都と区が一体となって施策に取り組んでいくことが最重要だというふうに思います。不燃化特区などの新たな施策の具体化に当たっては、区に対して都の考え方をしっかりと説明するとともに、区の意見を十分に聞くことが重要と考えます。
 これまで区からはどのような意見が出されたのかを伺います。

○飯尾都市整備局長 都はこれまで、区長会や実務担当者に対する説明会におきまして、プロジェクトの基本的な考え方や不燃化特区制度などの具体的な取り組みにつきまして説明を行うとともに、区の意見を聞いてまいりました。
 区からは、安定的、継続的に取り組める制度の構築、区独自の取り組みをより進めるための財政面も含めた支援、執行体制への支援などを求める意見や要望が出されております。

○鈴木(隆)委員 続いて、プロジェクトの核心である不燃化特区制度を実効性あるものとするためには、こうした住民や区からの意見を生かしていかなければなりません。その点を踏まえ、今後、制度構築にはどのように取り組んでいくのかを伺います。

○飯尾都市整備局長 都は、不燃化特区制度の構築に当たりまして、これまで区が木密地域の現場で培ってきた経験やノウハウを活用するためにも、制度の先行実施を行うことといたしました。
 先行実施では、区からの提案を受けまして実施地区を選定し、都と区が共同で整備計画を作成することなどを通じまして、区の考えも十分に聞きながら制度を構築してまいります。
 あわせて、地域密着型集会を来年度も区と連携して開催するなど、木密地域の住民の方々の生の声を聞いてまいります。
 こうした取り組みなどにより、現場の声をくみ上げ、不燃化特区の特別の支援策や建築規制のあり方などを具体的に検討し、より有効に機能する制度構築を目指してまいります。

○鈴木(隆)委員 今後もしっかりと区と連携をし、実効性ある制度をつくり、木密地域の改善に取り組んでいただきたいと思います。
 次に、道路整備の推進について伺います。
 我が国が大震災を乗り越え、活力を取り戻すためには、アジアのヘッドクオーターとしての地位を確立していく必要があります。さらに、首都直下地震などの切迫性が危惧される中、高度防災都市を実現し、国際的な信頼性を高めていくことが不可欠であります。
 このためには、空港や港湾を結び、物資輸送や緊急救援活動のかなめとなる高速道路や、これを補完する幹線道路を有機的に結合させ、平常時、災害時にかかわらず、物流機能などが十分発揮されるネットワークを充実強化することが喫緊の課題であります。
 そこで、道路ネットワーク形成による高度防災都市の実現に向けた取り組みについて伺います。

○村尾東京都技監 我が国の経済の活性化や国際競争力の強化とともに、災害時に交通や物流を確保し、首都の中枢機能を堅持するためにも、東京の道路ネットワーク形成は極めて重要であります。
 このため、首都圏の陸海空の要衝を連結するとともに、日本の東西交通の分断を防ぐかなめとなる外環や首都高速中央環状線など首都圏三環状道路の整備を促進いたします。
 あわせて、円滑な緊急物資輸送や迅速な復旧、復興活動を支える環状第二号線や調布保谷線を初めとする骨格幹線道路などの整備を推進いたします。
 今後とも、高度防災都市の実現に資する道路ネットワークの充実強化に向けて全力で取り組んでまいります。

○鈴木(隆)委員 首都東京の広域的な道路ネットワークの充実強化に加えて、それぞれの地域が災害に対し強靱さを持つことが重要であります。それを支える道路整備についても、今後重点的に取り組む必要があります。
 そこで、地域の防災性向上に資する道路整備について改めて伺います。

○村尾東京都技監 都内には、震災時に火災の延焼による被害が懸念される地域や大雨による通行どめなどで孤立化するおそれのある地区などが残っており、災害から都民の生命や財産を守る道路整備が重要であります。
 このため、木密地域において、延焼遮断帯を形成する都市計画道路や山間、島しょ地域における災害時の代替ルートとなる道路などの整備に積極的に取り組んでまいります。
 今後とも、国に対して、必要な公共事業に対する財源を安定的に確保するとともに、その配分に当たりましては、日本の再生を牽引する東京の道路整備の重要性を正当に評価し、確実に財源を措置するよう、あらゆる機会をとらえて強く求めてまいります。

○鈴木(隆)委員 引き続き、なお一層の道路整備の推進を要望し、次の質問に移ります。
 道路と同様に、都市機能を維持するために不可欠なのはエネルギーであります。高度防災都市に重要なエネルギー政策について順次伺います。
 東日本大震災から一年が経過しました。国は、いまだ今後の電力の安定供給の確保に向けた道筋を示せない状況にあります。国民や企業が限られた情報の中で先の見えない不安を抱えている今、何よりも重要なことは、国が徹底した情報開示に努め、スピード感を持ち、明確な方針を打ち出し、わかりやすく丁寧な説明に努力すべきことであります。
 こうした認識のもと、我が党はさきの代表質問で、都が自立分散型で低炭素なエネルギー源の確保に向けた戦略をいち早く打ち出したことを評価いたします。
 省エネと執務、居住環境の快適性を両立するスマートな省エネモデルを東京から発信するよう求めました。これに対し都は、東京の活力の源泉であるオフィスビルを中心に、中長期的な行動方針を作成し、東京発のエネルギーマネジメントのモデルを提示するとの方針を示しました。
 この行動方針の中では、実践的な省エネ、節電対策項目の提示に加え、都がこれまでキャップ・アンド・トレード制度や地球温暖化対策報告書制度等を運営する中で蓄積した事業所ごとのデータを活用して、都独自の指標を作成し、公表し、事業者の積極的な行動を促すべきと考えますが、見解を伺います。

○大野環境局長 ご指摘のとおり、今必要なことは電力の安定供給も含めた明確なエネルギー政策の方向性を打ち出し、国民、また都民に対してわかりやすく説明することであると思います。
 都は、ことしの春に策定する方針の中で、導入が始まっております先進エネルギー技術の紹介を盛り込み、運用、設備導入の両面から継続的な取り組みを促進していきます。
 また、都は、これまで大規模事業所のデータを分析しまして、事業所間の比較を可能としてまいりましたが、今後、都が保有します三万を超える中小規模も含む事業所データを活用して、中小規模事業所に係る業種ごとの省エネの指標、ベンチマークを作成し、みずからの事業所の評価が可能となる仕組みを構築してまいります。
 このベンチマークを事業所に提供し、国の制度にはない、地域の事業所の実情に最も精通した都ならではの情報発信を行い、事業者の自発的な取り組みを促進してまいります。

○鈴木(隆)委員 続いて伺います。
 昨年夏の経験を踏まえ、都内の事業所では、低炭素で高効率なエネルギー利用のあり方を追求する動きが加速しています。
 都内には、卓越した環境性能を有する低炭素なオフィスビルが多数誕生しており、持続可能な都市の実現という世界の大都市における共通課題の解決に向けたモデルになるものと考えられます。
 都は、こうした民間の先進的な取り組みと連携し、環境性能のすぐれたオフィスビルの普及拡大を図り、世界の諸都市をリードしていくべきと考えますが、見解を伺います。

○大野環境局長 都内では、先進的な省エネ技術を導入しましたカーボンハーフビルがことし春に竣工するほか、再生可能エネルギー等の大胆な活用も視野に入れましたゼロエネルギービルを目指す動きも開始されております。
 昨日、都が開催したシンポジウムにおきましては、オフィスの省エネと快適性を両立する最新技術や、テナント参加型の需給調整などのすぐれた取り組み事業が都市開発事業者から紹介されましたけれども、今後都は、スマートエネルギーシティーの実現に向けまして、こうした優良事例の導入を加速化させてまいります。
 また、ことし六月には、国連持続可能な開発会議、いわゆるリオプラス20が開催されますことから、こうした場も使いまして、東京発のグリーンビルディングのモデルを提示して、そのノウハウを世界の諸都市に提供してまいります。

○鈴木(隆)委員 次に、新築、既築を問わず、事業所単位の低炭素、省エネ化が重要なことは当然でありますが、これらを面的な取り組みに拡大し、地域全体でのエネルギー需給の最適化を図る取り組みも重要であります。
 都は現在、日本有数の業務集積地域である大・丸・有地区を対象として、大規模なエネルギーマネジメントの事業化に向け、大手都市開発事業者との共同調査を行っていますが、その成果を今後どのように生かしていくのか、端的に伺います。

○大野環境局長 今回の調査は、コージェネレーション設備の導入に加えまして、電気、熱の一体管理により防災力の向上を図りながら、テナント参加型のエネルギー需給調整を行う点などで、国が行っている調査にはない特徴を持っております。
 また、本調査によりまして、地域内のエネルギー需給の両面の情報を統合し、制御を行うエネルギーマネジメントシステムの運営主体を確立することが、エネルギー需給の最適化に向けたかぎになることがわかってきております。
 そこで、都は、こうした運営主体のあり方も含めた具体的な事業スキームの構築と事業収支の検証など、事業化に向けた詳細調査を来年度に実施し、その成果を広く公表して、他の再開発エリア等への拡大を誘導してまいります。

○鈴木(隆)委員 続いて伺います。
 首都圏の電力需給の安定化に向けては、需要抑制が重要であります。需要家側がコージェネレーション設備等の自立分散型電源を整備し、一定のエリア内で電気と熱の双方を上手に活用することも有効であります。
 現在、都では、昨年十一月に東京都技術会議の中間のまとめで公表したリーディングプロジェクトの具体化に向け、鋭意検討を進めていると聞いています。
 そこで、大都市における自立分散型電源の確保に向けたモデルともいうべき取り組みを、具体的にどのエリアで、どのような課題の解決に向けて進めているのかを伺います。

○大野環境局長 具体的に申し上げますと、臨海副都心のモデル事業では、既存の共同溝に独自の送電網を整備しまして、天然ガスコージェネレーションにより、公的なビルや青海コンテナふ頭に電力を供給すると同時に、発電により発生した熱を既存の地域冷暖房に供給して、排熱の有効利用を図ります。
 いかにエネルギー効率を高め、採算性を確保するかが課題であるために、将来の排熱利用量を考慮した上で、発電規模や運転方法を決定していく必要がございます。
 また、自家発電設備の故障時に備えて必要となります自家発補給契約や電気事業法の規制など、プロジェクトの実現に向けた制度上の課題につきましては、国に抜本的な制度改革を求めていきます。
 このモデル事業を実現することによりまして、臨海地区でのエネルギー確保の自立性と防災力の向上を図り、都市としての魅力を高めてまいります。

○鈴木(隆)委員 続いて伺います。
 自立分散型電源の普及拡大に向けては、再開発時等において民間事業者の主体的な取り組みを誘導することも重要であります。初期費用負担をいかに抑制するかが課題であります。
 そこで、この課題をどう克服し、民間都市開発への普及拡大を図っていくのか伺います。端的な答弁を求めます。

○大野環境局長 平成二十四年度予算案に盛り込んでおります新しい補助制度では、施設の一部を帰宅困難者の受け入れ施設などとして提供する事業者を対象として、天然ガスコージェネレーションの設置に必要な経費の二分の一を補助することにしております。
 このような補助制度を通じまして、民間都市開発と連動し、大規模なオフィス等へのコージェネレーション発電の普及拡大を図り、低炭素型であるとともに、災害時に強いまちを目指してまいります。

○鈴木(隆)委員 都がこれまで気候変動対策で国をリードしてきたように、現場を持つ都がエネルギー政策の分野でも具体的なプロジェクトを確実に実行し、国をリードしていくことを強く期待して、次の質問に移ります。
 さらに、安全・安心の観点から、放射性物質対策について伺います。
 都内における放射性物質の問題が最初にクローズアップされたのは水道水でありました。このとき都は、測定値を速やかに公開し、即刻ペットボトルを配布いたしました。素早い動きは、都民のパニックを防ぎ、東京都はやってくれるという信頼を都民に抱かせたことと思います。
 その後も、都はさまざまな対策を重ねてまいりましたが、都民の関心が高いのは食品を通じた内部被曝であります。改めてこの点について確認をしておきたいと思います。
 まず、都内産の農林水産物についてはどういう検査をしているのかお伺いいたします。

○前田産業労働局長 都は、福島第一原子力発電所の事故を受け、昨年三月二十日から独自に都内産農林水産物の検査を実施いたしました。
 四月四日には、国から農林水産物については生産地で検査を行うという考えが示されましたので、都は収穫時期等を勘案した計画的な検査や他県で規制値を超える品目が出た場合などに、必要に応じた緊急的な検査を実施してきております。
 この三月九日現在で、都内産農林水産物四百十四検体を検査し、結果はすべて公表しております。これらのうち四百十検体については、暫定規制値を超える放射性物質は検出されておりません。規制値を超えた四検体につきましては、いずれも市場に出荷されておりません。
 この四月からは放射性物質の新しい規制値が適用されますが、都内産農林水産物の安全・安心の確保と風評被害防止の観点から、今後とも放射性物質の検査を継続して実施し、結果を公表してまいります。

○鈴木(隆)委員 ただいまの答弁から、都内産農林水産物については、幅広く継続的に調査が行われていることがわかりました。
 私もいろんな資料を都からいただいて全部読ませてもらいましたが、確かにこれだけ細かく幅広く調査をしていると。こういうことをやっぱりなるべく多くの都民の方に、また多くの方々に知らせていく義務が私はあるような気がしていますが、そのところも検討をお願いしたいと思います。
 ところで、東京は大消費地であり、全国から食材が集まります。都内流通食品についてはどのような検査を行っているのかを改めて伺います。

○杉村福祉保健局長 都では、健康安全研究センター等の検査機器を増強いたしまして、現在、小売店に流通する食品について、都民が日常的に摂取する野菜類や子どもが継続的に摂取をいたします乳製品などを中心に幅広くモニタリング検査を実施いたしております。
 その結果につきましては、速やかに都のホームページで公表いたしておりまして、これまでに実施をいたしました四百八十八の検体から、暫定規制値を超える放射性物質は検出されておりません。
 四月には、より厳しい基準値が施行される予定でございまして、今後とも、健康安全研究センター等の検査体制や情報発信機能を強化してまいります。

○鈴木(隆)委員 少し見解を述べさせていただきたいと思っています。
 流通食品についても、しっかりとした調査が行われていることがわかりました。短期間で検査体制を整備し、流通段階での検査を行ってきたことは率直に評価をいたします。
 さらに、来年度、健康安全研究センターの体制が強化されます。放射性物質の検査を着実に行い、結果をスピーディーに公表することが、都民の冷静な対応につながっていくことと考えます。
 私も、健康安全研究センターのホームページを見て、そこにあるQアンドAも読みましたが、先ほども申しましたように情報が大変充実をしています。局に伺ったところ、既に一億件ですよ、一億件を超えるアクセスがあったそうであります。
 さまざまな情報が飛び交い、何を信じたらいいのだろうという思いも都民にあることは事実であります。今後もニーズに合わせて内容をさらに充実していくべきと考えます。
 放射性物質の不安は、都民、国民にとどまらず、海外にも広がっております。しかし、我が国は、食品について先進国の中で一番厳しい基準を定め、それをクリアしていこうとしています。国は、この点をもっと明快に、国民にも世界にも説明すべきであります。
 現場を預かる都も、その事実を広く伝えてほしいと思います。そうすることで、東京が世界で一番安全で安心な都市であることを示すことになると考えます。
 日本は国民のモラルが高く、勤勉なことや良好な治安もあって、世界で最も安全で安心な国でありました。しかし、今回の原発事故にあっては、国の対応や発信される情報の信頼性について、世界から、また国民から批判や疑問の声が上がったのも事実であります。こうしたことが今の風評の一因であると考えます。
 日本の技術やまじめな国民性は、世界から信頼、信用を得てきました。放射性物質対策も、科学に即して万全を尽くし、情報を包み隠さず発信していくことで、世界からの信頼をかち得ていけると確信をしています。
 東京からそうした取り組みを進めることで、安全・安心な東京、安全・安心な日本をぜひ世界に示していってほしいと思います。そうした観点に立って都の取り組みを特に要望をいたしておきたいと思います。
 次の質問に移ります。産業振興施策について伺います。
 最初に、最も重要な中小企業対策ですから、その中でも産業の空洞化対策に関してお伺いをしたいと思います。
 企業の海外進出には、海外市場を積極的に獲得する目的のものもありますが、昨今の海外移転は、国内に立地し続けたいところを、やむにやまれず企業が外に流出するものであり、これが無秩序に進むことは何としても避けねばなりません。
 空洞化の危機は、円高の長期化に伴い、海外との相対的な立地コストの差の拡大が大きな要因の一つであります。まずは、国がしっかりとした対策を打つべきであります。
 しかし、製造業は地域経済や雇用の重要な担い手であり、自治体の空洞化対策も重要であります。都も効果的な対策を講ずべきです。
 本定例会の我が党の代表質問に対し、空洞化の危機に対処していくとの答弁がありましたが、どのような対策を進めていくのかを改めて伺います。

○前田産業労働局長 都内の中小製造業は、高い技術力を生かしたものづくりを展開し、そこで多くの人が働くなど、東京の活力の源泉となっております。
 しかし、今回の歴史的な円高水準のもとで空洞化が無秩序に進行すれば、こうした活力が失われかねません。これに対し、地域の産業構造や立地特性を踏まえ、多面的な取り組みを早急に講じることが重要であります。
 このため、まず中小製造業の新製品、新技術開発を支援し、高付加価値化による競争力の強化を図ります。また、来年度、ベンチャーファンドを創設し、新たな産業の担い手をふやしてまいります。さらに、ものづくり産業集積強化支援事業を開始いたしまして、区市町村と連携して基盤技術の集積の確保を支援いたします。
 こうした取り組みにより、ものづくり産業の維持発展を図ってまいります。

○鈴木(隆)委員 多面的な取り組みによって、空洞化の危機に対処していこうとする考えは理解ができるところであります。
 それでは、今答弁があった取り組みの中で、平成二十四年度の新規事業について具体的な内容を聞いていきたいと思います。
 先日の本定例会で、我が党は空洞化対策として、製造業の集積の維持と発展という切り口で支援のあり方を質問いたしました。
 空洞化対策は待ったなしの緊急課題ですから、支援するエリアを絞り込んで、重点的な対応を思い切って行うことは重要であります。
 そうした中で、都内で操業を続けたい、もしくは始めたいとする企業へのインセンティブを確保し、周辺の地域との調和まで配慮するという答弁で示された考え方は、製造業の要望にかなったものとして評価をしたいと思います。
 こうした施策について、都として具体的にどのような内容を考えているのかを伺います。

○前田産業労働局長 円高による空洞化の危機に対して、東京の中小製造業の集積を確保するため、設備の改良、更新や工場周辺との調和を図る環境整備など、操業の継続を支援いたしますとともに、都内に新たな工場の立地を促していくことが重要と考えております。
 このため、都は来年度から、ものづくり産業集積強化支援事業によりまして、区市町村が地域の産業集積の確保に向け、特定のエリアを設定して重点的な対応を図る取り組みを幅広く支援してまいります。
 具体的な例示ですが、都内で生産を継続する上で必要な設備投資の負担の軽減や新たな工場の誘致に役立つよう、固定資産税等の納付額に見合う額の助成も対象といたします。
 また、周囲の住宅と騒音や振動などの問題を生ずることのないよう、工場の環境整備の支援なども幅広く対象とする考えであります。
 都は、これらの事業に必要な経費の半分につきまして、最大で年間一億円を最長三カ年まで助成いたします。
 こうした取り組みにより、東京の基盤技術の担い手である中小企業の集積の維持を図ってまいります。

○鈴木(隆)委員 次に、ベンチャー企業への支援であります。
 空洞化対策においては、創業の促進も重要です。将来有望なベンチャー企業に資金を供給し、ものづくり産業の新たな担い手を育成しなければなりません。しかし、都のベンチャーファンドは、今年度で運用が終了すると聞いています。このため、来年度、都が新たにファンドを創設することは、ベンチャー支援の継続という点では大きな意義があると考えます。
 そこで、新ファンドでは、ベンチャー企業に対する成長支援をどのように充実させていくのか伺います。

○前田産業労働局長 産業の空洞化に対応するためには、創業を促進するということも必要であります。ベンチャー企業の支援は重要な課題であり、ファンドは資金供給だけでなく、経営支援もあわせて行うことが特徴でありますので、ベンチャー企業の支援に効果的な取り組みであると考えております。
 来年度創設いたします新たなファンドでは、支援対象を事業拡大期に多額の資金が必要となる企業にも広げまして、経営戦略に対する助言など、きめ細かい支援を行うとともに、ファンドに出資いたします民間事業者との事業連携を促進する仕組みなどを取り入れることを考えております。
 これにより、販路拡大等の成長支援や企業価値を高める出口戦略の多様化など、具体的な支援を充実し、ベンチャー企業を成長させてまいります。

○鈴木(隆)委員 続いて伺います。
 中小製造業の集積の維持や発展に加えて、個々の企業の競争力の強化も欠かせません。技術水準を高め、新製品をいち早く開発すれば、競争力が高まり、都内での生産活動も継続できます。
 都が新製品や新技術の開発の助成を空洞化対策の柱の一つとして位置づけているのは、全くもって同感であります。ぜひしっかりと取り組んでほしいと考えます。
 同時に、さまざまな製品の生産の過程に不可欠な基盤技術のレベルアップも重要であります。加工下請を行う中小企業は、専門の研究部門を持つことができない中で、技術水準の向上をどう実現するかは大変大きな課題となっています。
 こうした中、国は、自民党政権時代に設けたものづくりの技術力を高めるための補助金制度を、民主党政権は事業仕分けといって、いとも簡単に廃止をしてしまいました。これでは、基盤技術を持つ企業の競争力を高めることもできず、日本の企業の存亡すら危うくするものであります。
 昨年我が党は、中小企業団体からの切実な声を受け、都に対して支援策の実現に向けた緊急要望を行い、その結果として、受注型中小製造業競争力強化支援事業がスタートいたしました。この事業のこれまでの取り組みの成果と今後の対応について伺います。

○前田産業労働局長 東京のものづくりを支える基盤技術を担う中小製造業が技術開発力を高め、その競争力を強化することは産業振興の重要な課題の一つであります。
 このため、都は今年度から、ただいまお話のありました受注型中小製造業競争力強化支援事業によりまして、東京都中小企業団体中央会と協力いたしまして、中小製造業の基盤技術のレベルの向上や高品質の部品生産に結びつく研究開発を支援しております。
 具体的には、開発に必要な設備の導入経費等の半分を対象に、最大で一千五百万円の助成を行いまして、加工の難しい金属素材であるチタンを切削する装置の製作を初め二十九件の支援実績を上げております。
 来年度は、事業費の総額を二億円から三億一千万円に拡充いたしまして、引き続き中小製造業の競争力の維持と発展に取り組んでまいります。

○鈴木(隆)委員 次に、海外の販路開拓について伺います。
 国内市場の成熟化に伴って、中小企業は将来に向けて大きな伸びの期待できるアジア市場での取引を広げたいと考えています。
 私自身も、かつて貿易実務を海外での商取引で経験をしているだけによくわかる点がありますが、やはり商談をスムーズに進める上でポイントとなるのは、現地の商習慣や法制度、さらにはマーケットのニーズなど、多面にわたる正確な情報の確保であります。
 こうした情報を把握するのは、中小企業単独では大変な作業になります。やはり行政として、海外での情報収集の仕組みを活用し、そこから得られる正確な内容を国内の中小企業に伝えるようなサポートは欠かせないことであります。
 また、海外市場での取引が進むにつれて、問い合わせのレベルも高くなり、やりとりの時間も長くなるものと思います。海外での取引の重要性が確実に増していく中、行政として相談対応の体制づくりが後手に回ることのないように、その充実に向けて十分に意を用いてほしいと考えます。
 こうした中、海外取引に乗り出そうとする中小企業へのサポートについて、どのような施策を拡充していくのかを伺います。

○前田産業労働局長 成長著しいアジア市場で販路開拓を行おうとする中小企業を支援するため、現地の情報を収集し、適切なアドバイスを行う仕組みを充実することが重要であります。
 これまで都は、海外取引経験の豊かな商社のOBを海外販路ナビゲーターとして配置し、中小企業からの相談に対応してまいりました。アジア各国で多くの商談が期待できる機械や金属などの分野で百件を超す製品の販売に向けた支援を行ってまいりましたが、相談の申し出はふえ続け、内容も専門性の高い複雑な事例が多くなってまいりまして、相談体制の充実が必要となっております。
 そのため、来年度から海外販路ナビゲーターを八名から十名にふやしまして、よりきめ細かく相談に対応するとともに、海外の展示会に同行する機会の拡充を図ることで、中小企業の海外販路開拓を的確に後押ししてまいります。

○鈴木(隆)委員 都としては、企業の海外販路の開拓を縁の下の力持ちとして支えることは大変重要であります。
 しかし、その一方で、時には行政としての顔が見えるようなサポートも実は大変必要なこととなります。私の長年の経験からも、海外での取引において、国や自治体などの公的機関が関与することで、商談がよりスムーズになったり、日本の企業に有利に運んだりする傾向があるように思います。
 海外との文化交流やスポーツ交流も経済交流を基礎に展開されます。経済協力も経済交流があってこそ実現をいたします。二十二年予特で、私の質問に際して知事は、トップセールスで海外市場に東京の企業の技術力を売り込むとの意気込みを示しているわけでありますから、海外販路の開拓支援のような取り組みはしっかりと進めてほしいと思います。
 次に、海外との取引で、近年、重要性を増しているのは知的財産の問題であります。
 外国の企業に模倣品を販売されたり、商標を無断使用されるなど、マスコミでもしばしば耳にいたします。また、すぐれた技術を持つ企業でも、技術の流出を不安に感じて、せっかくのビジネスチャンスを逃すことが多いのも現実であります。
 知的財産を保護するため、さまざまな国に特許の出願を一度に行う必要がある場合もふえています。その費用や事務負担は、中小企業にとってかなり重いものとなっています。
 また、みずからの知的財産を守り抜くという受け身の発想だけでは、海外市場の競争を生き残ることは難しく、さまざまな侵害に備えつつ、むしろ特許を積極的に活用して、ライセンス収入に結びつけていくような戦略性のある取り組みも実は重要になってまいります。
 こうした中、中小企業の知的財産の保護や活用に向けて、都として支援の充実にどのように取り組んでいくのかを伺います。

○前田産業労働局長 お話のように、海外取引を行う企業の技術等を知的財産とし保護し活用する必要性は高まっております。そうした中、その対応を独自の力で行うことの難しい中小企業を支援することは重要であります。
 このため、都は、知的財産総合センターで、中小企業の海外特許出願等の費用の助成を行うとともに、知的財産の戦略的活用に向けた支援を行ってまいりました。
 今や海外の多くの国で商品を販売する企業がふえており、意匠や商標の権利の保護が重要となっております。出願は国ごとに行う必要がありますことから、その経費の助成限度を来年度三十万円から六十万円に増額いたします。
 また、中小企業が知的財産を活用し、海外企業から技術の使用料を確保する取り組み等を支援するため、高度な相談に対応するアドバイザーも増員いたしまして、体制の充実を図ってまいります。
 こうした取り組みを総合的に展開いたしまして、海外における販路開拓の充実を図ってまいります。

○鈴木(隆)委員 さらなる中小企業支援策の充実を求めて、次の質問に移ります。
 次は、地域力の向上に関してであります。
 中小企業の活力とともに、地域の町会や自治会などの活発な活動が東京には重要であります。
 そこで、地域の底力再生事業助成の再構築についてお伺いをいたします。
 町会、自治会が主体的に地域力の向上に取り組む活動を支援するため、我が党が提案し実現した地域の底力再生事業助成が、モデル事業として開始され五年目を迎えました。
 町会、自治会からは、日ごろの活動を支える制度として大変に喜ばれています。
 そこで、これまでの成果を伺うとともに、モデル事業を通じて明らかになった課題について伺います。

○井澤生活文化局長 地域の底力再生事業助成は、これまでの五年間で延べ八百十六件の活用実績があり、この助成を契機として、地域ぐるみでの防災訓練の実施や住民による高齢者や子どもの見守りパトロールなど、さまざまな地域活動が実施され、地域力の向上に大きな成果が上がりました。
 一方、課題といたしましては、町会、自治会から、助成対象となる事業区分が複雑でわかりにくい、あるいは単年度助成のため、事業効果が出るまでに時間のかかる取り組みには使いづらいなどの意見が寄せられております。

○鈴木(隆)委員 続いて伺います。
 東日本大震災を契機として、地域における人と人とのきずな、ご近所同士が力を合わせ助け合う、知事もよくいわれますが、近助の重要性が再認識される中、我が党は、昨年四定で、地域の底力再生事業助成をこれまで以上に活用し、町会、自治会の活動を支援していく必要があるとして、事業の再構築を要望いたしました。
 今、答弁のあった成果と課題を踏まえ、来年度はどのように本事業を改善し、地域活動の支援を強化していくのかをお伺いいたします。

○井澤生活文化局長 来年度からは、町会、自治会を中心とした共助の取り組みをより一層推進するため、モデル事業として実施してきた地域の底力再生事業助成を、これまでの成果と課題を踏まえてその制度を見直し、本格実施いたします。
 具体的には、これまでは事業分野を限定した上で、他の地域のモデルとなる先駆的な取り組みを助成の対象としておりましたけれども、今後は、地域の課題解決のための取り組みであれば幅広く助成の対象といたします。
 また、補助率は原則二分の一として、同じ内容の事業であっても、希望があれば次年度も継続して実施できるようにするなど、より使いやすい制度となるよう改善を図ります。

○鈴木(隆)委員 答弁がありましたように、モデル事業から本格実施に移行することは大変大きな前進であると思います。これにより、町会、自治会は、今後ますます自主性を生かした、より広範な活動を行うことができ、これまで以上に地域を支えてくれるものと思います。
 一方で、町会、自治会には、地域に密着した団体として都の施策の一翼を担う役割も期待されております。多くの町会、自治会がそうした課題に積極的に取り組み、行政を支える活動を進めていくには、本事業について、さらに一歩踏み込んだ工夫が必要と思いますが、所見を伺います。

○井澤生活文化局長 助成対象となる事業のうち、地域の防災、防犯、高齢者の見守り、青少年の健全育成など、都が取り組む特定施策の推進につながる取り組みにつきましては、初年度の補助率を十分の十とし、より多くの町会、自治会が活用できるようにいたします。
 また、特定施策でなくても、これまで一度も本助成を利用したことがない町会、自治会に対しましては、これを契機としてその活動を活性化していただくために、初年度の補助率を十分の十といたします。
 このように改善した本事業を積極的に周知いたしますことによりまして、広く町会、自治会にご活用いただき、一層の地域力の向上と地域社会の活性化が図られるよう努めてまいります。

○鈴木(隆)委員 改めていうまでもなく、都政を進めていく上で、町会、自治会は重要なパートナーであり、今回の制度改正は、町会、自治会の活動促進にとって大きな意義があると思います。
 より多くの町会、自治会に本事業を積極的に活用していただけるよう、我が党としても各地域におけるPRに力を入れてまいります。
 都としても、区市町村や町会連合会等と連携を密にして、この事業を通じてさらに地域のきずなが深まり、地域力が向上するよう一層の努力をお願いし、次の質問に移ります。
 こうした東京の元気を支えてくださる都民の福祉、保健、医療対策について伺います。
 まず、高齢者の在宅療養であります。
 都は、在宅療養の重要性についていち早く着目し施策を展開してまいりました。国も来年度予算案で重点項目と位置づけるなど、ようやくその重要性を認識したところであります。
 高齢者の在宅療養を支えるには、医療と介護が連携し、おのおのが機能を十分発揮してサービス提供を行う必要がありますが、医療面から三百六十五日二十四時間の安心を推進するためには、在宅医療に携わる医師、いわゆる在宅医の確保が重要であります。
 加えて、身近な地域で高齢者を支える訪問看護ステーションの整備が不可欠であります。都は、平成二十二年度から、訪問看護ステーション本体との一体的な運営により、柔軟な人員配置などが可能となるサテライト型事業所の整備費に補助を行ってまいりました。
 来年度予算においては、新たに、都として訪問看護ステーションの拡充に取り組むことを明らかにいたしました。
 在宅療養を支える拠点が身近な地域で整備されることは望ましいことであります。実際にどのようにして充実を図っていくのか、具体的な内容をお伺いいたします。

○杉村福祉保健局長 都はこれまで、訪問看護ステーションにつきまして、老人保健施設等に併設する場合の整備費やステーション本体と一体的に運営するサテライト型事業所の開設経費等を独自に補助してまいりました。これに加えまして、来年度からは本体を単独で開設する場合に要する経費も補助し、より一層設置を促進いたします。
 また、人材の育成や定着を支援するため、来年度、有識者による検討会を設置いたしまして、訪問看護に初めて従事する看護師に対するOJTの手法や訪問看護に必要な対人援助の技術などを盛り込んだ人材育成マニュアルを作成し、その普及を図ることといたしております。
 こうした取り組みによりまして、基盤整備と人材の育成、定着の両面から支援を充実いたしまして、訪問看護ステーションの整備を進めてまいります。

○鈴木(隆)委員 ぜひ地域における訪問看護ステーションの整備を進めていただきたいと思います。
 次に、先ほども述べましたが、在宅療養における三百六十五日二十四時間の安心を推進するには、在宅医を確保することが重要であります。
 国は、今回の診療報酬改定で、所属医師数やみとり実績等、機能を強化した在宅療養支援診療所に対して評価を行うとのことであります。
 一方、平成二十一年度に都が実施したアンケート調査では、都内全診療所のうち、在宅医療を行っている診療所は全体の四分の一にとどまっています。その理由としては、在宅療養支援に必要な二十四時間の診療体制の確保が困難であるということが考えられます。
 このような状況では、在宅療養支援診療所の強化に頼るだけでは、在宅療養に携わる医師のすそ野の広がりは期待することはできません。
 在宅医を確保するための新たな支援策が必要と考えますが、所見を伺います。

○杉村福祉保健局長 これまで都は、地域における医療職と介護職の相互理解を深める研修などを通じまして、多職種が連携して在宅療養患者を支えるネットワークづくりを進めてまいりました。
 こうした取り組みに加えまして、今後は一人一人の医師の負担を軽減し、在宅医療への参加を促進するため、複数の在宅医がお互いに補完をし、訪問看護ステーション等と連携をしながら、チームを組んで二十四時間体制で訪問診療を行う取り組みに新たな支援を開始いたします。
 来年度、東京都医師会など関係団体と協力をいたしまして、五つの地区医師会のエリア内で実施する予定でありまして、こうした取り組みを通じて在宅医の確保に努めてまいります。

○鈴木(隆)委員 在宅医の皆さんは、現場で懸命に頑張っておられます。在宅療養には、在宅医の皆様が不可欠でありますので、着実に進めるよう強く要望をしておきます。
 次に、保育サービスについて伺います。
 都は、これまで保育サービスの拡充に努めてきましたが、長引く景気低迷の影響等から、認可保育所の入所申込者はなお増加をし、昨年四月の待機児童は七千八百五十五人となっています。また、就労形態の変化などにより、ニーズも多様化をしています。
 知事の施政方針表明において、来年度からの三年間で保育サービスを二万四千人分ふやすとのことでありますが、保育サービスの拡充に当たっての都の基本的な考え方を伺います。

○杉村福祉保健局長 都は、保育サービスの拡充に当たりまして、保育を必要とする人がそれぞれのニーズに応じて利用できますよう、実施主体である区市町村が認可保育所、認証保育所、認定こども園、家庭的保育など、地域のさまざまな保育資源を組み合わせて整備していくことを基本方針といたしております。
 こうした方針のもとに、都内における保育サービスの整備を促進するため、安心こども基金の活用に加えまして、区市町村や施設整備を行う事業者の負担を軽減いたします都独自の支援策を実施いたしております。
 また、来年度からは、新たに家庭的保育の共同実施や病児保育の充実などにも取り組みまして、都民の多様な保育ニーズに適切に対応してまいります。

○鈴木(隆)委員 ぜひ認証保育所など地域の資源をフル活用して進めていただきたいと思います。
 続いて、保育サービスを一層拡充するには、地価の高い大都市東京の特性を踏まえた創意工夫が必要であります。都は、未利用の都有地を認可保育所用地として貸し付ける事業を実施しており、実績が上がりつつあるとのことであります。
 これに加え、民間が所有する土地、建物についても活用を促進し、待機児童の早期解消を図るべきでありますが、見解を伺います。

○杉村福祉保健局長 都は、未利用の都有地を保育所用地として減額して貸し付ける事業を実施いたしますほか、空き店舗等の賃貸物件を活用いたしました保育所整備への補助や保育所用地の定期借地に要する費用への補助などを実施し、地価の高い都市部での保育サービス基盤の整備に努めております。
 来年度は、定期借地利用に対する補助につきまして、事業者が活用しやすくなるよう、契約期間をこれまでの五十年以上の定期借地から十年以上五十年未満の事業用定期借地まで対象を広げますほか、民間ビルの所有者が保育事業者に貸し付けるために行うビルの改修工事も支援対象とするなど、民間の土地、建物の一層の有効活用に積極的に取り組んでまいります。

○鈴木(隆)委員 地価の高い大都市東京の特性を踏まえ、しっかりと取り組んでいただきたいと思います。
 次に、利用者が安心して保育サービスを利用できるよう、ニーズに応じた多様なサービス整備も重要であります。
 とりわけ切実なニーズがあるのが病児保育であります。私は、子どもを保育所に預けている親から、子どもが病気のとき、仕事が終わったらすぐに迎えに行けるように、通勤途中の場所に子どもを預けられる施設が欲しいという声をよく聞きます。
 こうしたニーズにも配慮をし、地域の子育て支援策として欠かせない病児、病後児保育事業を拡大することが必要と考えますが、都の取り組みを伺います。

○杉村福祉保健局長 病児、病後児保育事業につきましては、平成二十一年度に策定をいたしました東京都保育計画におきまして、平成二十六年度末時点で百四十カ所での実施を目指し、病児保育施設間のネットワークづくりやサービス内容に応じた運営への支援を行っておりまして、現在、百九カ所まで整備が進んでおります。
 こうした取り組みをさらに進め、多様な都民ニーズにこたえるために、来年度からは保護者が送り迎えしやすい場所での設置が促進されますよう、駅前での設置に要する建物賃借料への補助や、親の迎えが困難なときに、保育施設が病児保育施設に児童を送迎する場合への補助を試行的に実施してまいります。

○鈴木(隆)委員 お子さんの顔を早く見て安心したいという保護者の皆さんの声に少しでもこたえられるよう、着実に事業を進めることを要望しておきます。
 次に、児童虐待対策についてであります。
 昨年度、児童相談所が受理した児童虐待の相談対応件数は四千四百五十件、区市町村が受理した件数が七千七百八十二件、いずれも前年度と比べて一・三倍を超える増加となっています。
 児童虐待の問題は、こうした表面化した事例だけではありません。気軽に相談できる方が身近にいない、子どもの一時預かりなど子育てに関するサービスの利用方法がわからないなど、育児に不安を抱えつつも、必要な支援に結びついていない方もいるのではないでしょうか。
 少し前なら、同居する祖父母や近所の人たちなど、子育てを手伝ってくれる人が身近にいましたが、核家族化が進み、地域の人間関係も希薄になり、必要な助けを得ることが難しくなっています。
 私も先日、知人から子育てに疲れ、心ならずも我が子に手を上げてしまったという相談を受け、三人の子どもを育てた親として大変心を痛めました。
 児童虐待を未然に防止するためには、子育て家庭が孤立しないよう、地域全体で見守り、支える体制を構築することが大切であります。
 私の地元、目黒区の医師から、助産師が宿泊できる施設を活用して、育児不安を抱える母子に対し、二十四時間サポートをすることが児童虐待の未然防止に有効であるのではというお話を伺いました。
 保育所や学校などの地域の関係機関が密接に連携することで、危機の芽を早期に発見し、必要な支援につなげていくことが重要だと考えますが、都の取り組みについて伺います。

○杉村福祉保健局長 区市町村では、子ども家庭支援センターが乳児家庭に対する全戸訪問事業を実施いたしますほか、保健所や保健センターが母子健康手帳の交付や新生児訪問などを行っておりまして、こうしたさまざまな機会を通じて地域の子育て家庭の状況把握に努めております。
 また、これらの機関は、保育所や学校など、地域の関係機関とも連携をしながら、保護者や子どもの状況について情報を共有し、支援が必要な家庭に対しましては、子ども家庭支援センターにおきまして、心理などの専門家による個別相談、子育てに悩みを抱える親同士の交流機会の提供、育児支援ヘルパーの派遣など、保護者の育児不安を解消するための取り組みを進めております。
 都は、こうした区市町村のさまざまな取り組みを包括補助事業等により支援をいたしております。

○鈴木(隆)委員 区市町村の関係機関による取り組みが着実に進められていることがわかりました。今後もより一層進めていただくことを期待したいと思います。
 私は、このような関係機関の中でも、保健所、保健センターや、産婦人科、小児科などの医療機関が特に重要であると考えます。
 保健機関は、母子健康手帳交付時や乳児健康診査などを通じて、また、医療機関は、日ごろの健診や診療を通じて出産前後から、子育て家庭と接点を持っており、要支援家庭を早期に発見できる立場にあります。
 そこで、都として、これらの機関がそうした機会を十分に活用できるよう具体的な支援をすべきと考えますが、所見を伺います。

○杉村福祉保健局長 お話のように区市町村の保健所、保健センターや医療機関は、出産前から子育て家庭との接点がございます。
 そのため、区市町村では、支援が必要な家庭を早期に発見できますよう新生児訪問や乳幼児健診等の際に、産後うつ病や要支援家庭を把握するための専用の問診票を活用したスクリーニングに取り組んでおりまして、都は、包括補助事業により支援をいたしております。
 また、かかりつけ医などの医療機関に対しましては、診療や健診を通じまして、虐待の兆候を早期に発見できますよう、都として、虐待のリスク要因や傷の見分け方などに関する研修を行いますとともに、二次、三次医療機関においては、児童相談所が訪問研修等を行い、院内虐待対策委員会の立ち上げを働きかけております。
 今後とも、こうした保健機関や医療機関の取り組みを積極的に支援してまいります。

○鈴木(隆)委員 ぜひ関係機関が連携して地域全体で子どもの健全な育成を支えるような仕組みづくりが必要であると思います。
 子どもを地域で産み育てることは少子化対策の重要な柱であります。都としても引き続き支援をいただくよう強く要望しておきます。
 また、今いった院内虐待対策委員会の立ち上げ、または保健機関、医療機関等の取り組みを積極的に支援するとおっしゃっているわけでありますが、私も実は十二月十九日に孫ができまして、やはり子育ての現場を改めて、自分の子どものときは余りしなかったんで怒られていますが、じいちゃんになってそういうふうなことをしていますと、育てている母親が非常に大変だなということを改めて実感して、大変な思いをしているなと思います。
 特に核家族化の中で、本当にそういう中で、お互いが心を結べないようなところがあるようなところをやはり補完できるような、そういうシステムを都でやっぱり僕は考えていくべきだと思うんですね。
 決して親が子どもを虐待したいとは思っていないわけです。ただ、そういうような状況に陥ったケースが間々あるように聞いています。ですから、未然にそのことを防ぐ努力を我々は最大限して、やっぱり子どもを産み育てていけるような環境をつくっていくということが大切なような気がしますので、ご努力のほどお願い申し上げたいと思います。
 次に、子どもたちに夢を与え、東京、日本全体を元気にするため、オリンピック・パラリンピック招致についてお伺いをいたします。
 来年九月七日にブエノスアイレスにて、二〇二〇年大会の開催都市が決定するまで一年半となりました。
 前回の二〇一六年大会の招致活動を振り返りますと、東京は、開催能力の高さを最大限に打ち出した計画を策定し、他の都市に負けない完成度の高いプレゼンテーションを行いましたが、それでも残念ながら二回目の投票で選に漏れました。
 招致をかち取るためには、半数以上のIOC委員の票を獲得しなければなりませんが、そのために最も力を入れるべきことは、国際プロモーション活動であることは言をまたないところであります。
 そこで、まず、石原知事に、前回の招致活動における国際プロモーション活動を振り返った感想、そして、今回の二〇二〇年大会の招致に向けた決意を改めて伺います。

○石原知事 前回のオリンピック招致運動では、複雑な力学がさまざまに働いておりまして、それを余り熟視せずにかかった節がございまして、苦汁をなめさせられました。
 先日来日した、今度のロンドン・オリンピック組織委員会委員長のセバスチャン・コー、これはかつての中距離の選手でありますけれども、なかなか気難しい男で取っつきが悪い人ですけれども、彼が日本が敗れたことが決定的になったコペンハーゲンでの総会の直後にわざわざ日本のブースにやってきてくれまして、東京のプレゼンテーションは最高だったと思うと。ロンドンという、非常にうらやましい節が多々あるがなといって肩をすくめて帰りました。非常に印象的でした。
 オリンピック招致は、国と国とのまさに熾烈な戦いでありまして、言葉は悪いかもしれませんが私の印象ではまさに魑魅魍魎の世界という気がいたします。
 だからこそ、日本人がいかに外交が拙劣であるとはいえ、社会全体でスクラムを組んで総力戦をもって臨まなければなかなか勝つのは難しいという認識を新たにしております。
 今回、東京は、前回の計画にさらに磨きをかけまして、最高の計画を提出するつもりであります。また、四千億円を超える基金も準備しておりますから、勝利に向けた万全の体制を整えているつもりであります。
 JOCは先頭に立って、投票権を持つIOCの委員に対して働きかけてもらいたいものだと思います。
 その際、東京の強みをアピールできる非常に存在感のある、馬力のある国際的な人物を活用するなど工夫を凝らすべきだと思います。
 ただ、一つ私が気がかりなのは、先日、メーンスタジアムを国がつくることになりまして、今ある国立競技場を変えるということでありますけれども、そのための有識者会議に出ました。
 ちょっと顔ぶれ見ても不安な気がしたんで、国交省と文科省の審議官に出ろといって同席させましたが、これに非常に熱心な元総理の森君は、彼はラグビーの会長をしていますけれども、オリンピックを私たちが目指す八年後の一年前の七年先に、その新しいスタジアムでラグビーの世界大会をやりたいということですが、これは非常に難しいですね。
 東京の人間ならよくわかることですが、あそこは新宿区、渋谷区、港区という三つの区がちょうどぶつかっているところでして、それぞれの区が恐らく開発計画を持っていると思いますが、相当な区画整理というものをしませんと、これはなかなか実現しにくい。
 単にスタジアムを建てるだけじゃなしに、それをつくるために用地の拡大とかその他ありましてということで、これは生半可なことじゃ時間間に合わないから、先日、野田総理に会いまして、これは閣議決定しておいてもらわぬと、決して皮肉じゃなしに、あなたもそう長いことやっているわけじゃないだろうから、総理大臣もくるくるかわるんで、これは国事としての決定をしておかないと、途中でぶつぶつ切れて、いろんなバリアができてきてスムーズにいかないよということで、ぜひ今回の内閣で、これは国家として行う事業だということで、しかも国立競技場を再生するということは国事なんだから、これはぜひ閣議決定をして、継続性というものを確保しておいてくれということを申しました。
 今の政府がどの程度これについて熱心かわかりませんが、民主党の諸君もいますので、東京のため、日本のためにも、やはり今の内閣がこの問題について閣議決定するようにあなた方も努力していただきたい。

○鈴木(隆)委員 知事、ありがとうございました。国際的に通用する招致の顔ともいうべき人物が、私も大変重要だというふうに思っています。
 実際、前回の招致をかち取ったリオデジャネイロでは、コペンハーゲンで私も一緒におりましたが、サッカーの神様と呼ばれた世界で大変有名なペレ氏が招致の顔として、もうほとんどのIOC委員とハグをして、非常に活躍をしていたという場をもろに見せられたわけでありまして、国際プロモーション活動を、そういう面では非常に大きな役割と、また、そういう活動をしていたというふうに感じています。
 今回の招致では、この国際プロモーション活動期間は、ロンドン・オリンピック期間を除き、わずか八カ月しか認められていません。とすれば、これから人脈をつくるのでは遅いのは明らかだと私は思っています。
 投票権を持つIOC委員や、IOC委員に影響を持つ国際競技団体の有力者との間で既に良好な関係を構築し、国際的に認められた人物を招致の顔として招き、活動することが重要だというふうに考えます。
 三月九日にお別れの会がしめやかに行われました松平康隆さんは、まさにその一人であるというふうに思います。私、先ほど知事がいった小坂の秘書の時代から三十数年、実は松平さんとおつき合いをさせていただいておりまして、松平さんとコペンハーゲンで十八年ぶりにお会いして、奥様ともいろんな話をさせていただきました。
 先日もちょっとご自宅の方にもお寄りして奥様と話してきましたが、松平さんがそのときにおっしゃったということは奥様からもお聞きしました。やっぱりオリンピックを招致するためには、国際的な、そういう活動を十分にして、それだけの長い、そういうようなつながりを持っている人が、そういう中でそのつながりを大切にして、お互いに貢献して、お互いに理解をしてきた、そういうものが非常に大きいものなのだということをいわれておりました。
 ですから、私たちは、松平さんは亡くなりましたが、やはり松平さんのような招致の顔となり得る人材をこれからも求めていく、また、積極的に活用すべきと考えます。所見を伺いたいと思います。

○細井スポーツ振興局長 委員ご指摘のとおり、松平康隆さんは、その人柄、実績とも申し分なく、世界に通用する貴重な日本人の一人でございました。
 先月二十八日、JOCは、国内全競技団体の代表者を集め、二〇二〇年招致に向けた会議を開催いたしました。
 その中で、国際競技連盟、IFの役員となっているなど、特に国際的に活躍している方々を中心に、国内競技団体も国際プロモーション活動を積極的に推進していくこと、また、アテネ・オリンピック、ハンマー投げ金メダリストである室伏広治さんがIOCアスリート委員に選出されることを目指し、総力を挙げて取り組むことも確認されたところでございます。
 今後、これら国際的に活躍される人物が、JOC竹田会長や招致委員会水野専務理事とともに招致の顔として投票権を持つIOC委員に対し、日ごろの人脈、関係を生かしまして、東京での開催の意義、有意性を説得力を持って訴え、支持や共感を獲得していくことが必要だと考えております。

○鈴木(隆)委員 スポーツ界が前回大会の招致活動以上に本気で取り組むとのこと、大いにこれは期待をするところであります。
 スポーツ界だけに任せておけばまたいいというものでもありません。招致はいうまでもなく都市間の競争です。この競争を勝ち抜くためには、東京がいかに世界に貢献しているかということを広く世界にアピールすることも重要であります。
 知事がやっているアジア大都市ネットワークは、私は、ある意味で物すごく大きなアジアの中で力を与えていると。やはり今まで行ってきたその十一年の歴史というようなものは、アジアのそれぞれの都市から非常に大きなものを受けているというふうに、実際に行かせてもらったそれぞれの都市の方からも私は聞いておりますし、そういうようなものがやはり非常に大事だというふうに思います。
 そのためにはスポーツ界に加え、都議会、国会、さらには財界なども含めてオールジャパンの総合力で、例えばロンドン・オリンピックにチャーター便で乗り込むなど、国際プロモーション活動を展開していくべきと私は考えます。
 我々都議会も直接、間接にさまざまなネットワークがあり、国や各国大使館の細やかな人脈を当たっていけば、必ず有効なものはあるはずであります。
 また、多くの先人たちが世界の荒波に出ていき、世界じゅうで貴重な人脈をつくり、日本の信頼をつくり上げてきました。こうしたあらゆるチャンネルを駆使して、個々のIOC委員や各国のオリンピック委員会の委員にアプローチしていくことが招致をかち取るためには何よりも重要であると考えます。
 我が党としても、勝つためには全力を尽くしてまいる所存であります。このように、戦略的かつ効果的に国際プロモーション活動を推進すべきと考えますが、見解を伺います。

○細井スポーツ振興局長 委員ご指摘のとおり、戦略的かつ効果的な国際プロモーション活動を推進していくためにはオールジャパンの取り組みは欠かせません。
 そのため、今回の招致活動においては、早々に東京都と招致委員会が、共同して在外公館を初めとする国や、大手商社が加入しております日本貿易会などの経済界に対し、東京の招致活動に対する協力の働きかけを行いまして、それぞれ全面的な支援の約束をいただいております。
 今後、招致委員会においてさまざまなチャンネルを通じまして有機的に情報を収集、集約すると同時に、招致の顔となる最前線のスポーツ界の方々が最も効果的に活動できるようにバックアップできるような体制を整えてまいります。
 その際には、都議会の皆様のお力もぜひおかしいただき、効果的な国際プロモーションを実現したいと考えております。

○鈴木(隆)委員 オリンピックに関してはまだまだいいたいことはいっぱいあるんですが、またの機会でいわせてもらいたいと思います。
 次に、スポーツ祭東京二〇一三について伺います。
 さきの都議会第四回定例会の我が党の代表質問で、スポーツ祭東京二〇一三を成功させるためには、大会の開催機運を都内全域で盛り上げていく必要があると指摘をいたしました。
 いよいよ本年四月からは、各区市町村において競技別リハーサル大会が開催されるなど、大会本番に向けた期待も高まっています。
 ところで、私の地元、目黒では、デモンストレーションとしてのスポーツ行事として、ミニバレーという生涯スポーツが行われます。このミニバレーは北海道の大樹町で起こったスポーツであります。出会い、触れ合い、分かち合いをスローガンに考案されたものであります。
 競技は、バドミントンのコートを利用し行われる四人制バレーで、やわらかいビニール製のボールや簡単なルールの採用により、年齢や性別を超えて気軽に楽しめるすばらしいスポーツであります。
 北海道では、障害を持った方も健常者の人と一緒にしているスポーツでもあるわけです。区内では、老若男女問わず、ミニバレーが盛んに行われ、健康づくりにも役立っております。
 スポーツ祭東京二〇一三が、このように、都民のだれもがスポーツに親しむきっかけとなることも期待されるところであります。
 開催一年前となる本年は、スポーツイベントのみならず、さまざまな場で積極的なPR活動を展開し、都民の大会への関心をより一層高め、開催機運の醸成を図っていく重要な一年となります。
 「二〇二〇年の東京」への実行プログラム二〇一二では、我が党の提案を受け、大会の開催に当たり、区市町村による地域の魅力の再発見や、多摩東京移管百二十周年の記念の年に行われる大会の記憶を後世に残す取り組み等を支援し、開催機運を高めていくとしています。
 都は、それに基づき、区市町村に対して、スポーツ祭東京二〇一三を盛り上げていくため、新たな補助制度を立ち上げたと聞いておりますが、そこで改めてお伺いします。本補助制度の内容についてお聞きをいたしたいと思います。

○細井スポーツ振興局長 都は、新たに平成二十四年度から二年間にわたりまして、スポーツ祭東京二〇一三機運醸成、開催記念事業費補助制度を設けることといたしました。
 本制度は、都内全域においてスポーツ祭東京二〇一三の開催機運の醸成を図ること、また、その開催を長く伝えることを目的とし、競技会の運営ボランティアの育成、開催一年前イベントの実施、開催記念碑の設置など、区市町村が行う事業に対し補助するものでございます。
 競技数などに応じて区市町村ごとの補助上限額を算定し、その範囲内で区市町村がその特色を生かし、工夫を凝らした事業を行える仕組みとしてございます。
 この制度を活用し、全区市町村での開催機運を一層盛り上げるとともに、スポーツ祭東京二〇一三が都民の方々の心にいつまでも深く残るような大会としてまいります。

○鈴木(隆)委員 競技会を開催する各区市町村が本補助事業を大いに活用し、あと一年と迫ったスポーツ祭東京二〇一三を都内全域で一層盛り上げ、ぜひとも成功につなげていきたいということを希望いたします。
 次いで、教育の諸課題について伺います。
 いうまでもなく教育は百年の大計であり、連綿と続く真摯な改良の積み重ねの上に真の教育というものは成り立つものと考えます。
 しかし、日教組を中心とする戦後教育は、この改良の道を大きく踏み外し、行き先のないまま迷走を続けてまいりました。
 日本独自の伝統と文化を重んじる教育は軽んじられ、国を牽引する人材の育成もないがしろにされてきたのであります。
 さらに、教育の根本的責任を担うはずの国は、ゆとり教育などといった安直で陳腐な教育行政を推し進め、その混迷にさらなる拍車をかけてきたといっても過言ではありますまい。
 教育は、日本の将来を左右する、いわば日本の礎であります。国際社会の中で、日本の力が期待をされ、尊敬され続けるためには、夢と希望を持って、日本人としての誇りを持ち、世界を視野に入れて行動する気概に満ちた人材を輩出することが必要であります。
 戦後六十年、この間に日本の教育が抱え込んだ混乱と閉塞感は、まことに深刻な状況にあります。これを再生するためには、恐らく同じ時間と、想像を超えた知恵と努力が必要に違いありません。
 しかし、現下の日本の状況を見れば、あすを担う人材の養成は何事にも優先される緊急、喫緊の課題であると考えます。
 これまで都政におけるさまざまな改革に取り組んでこられた知事は、残された課題として、破壊的教育改革を掲げ、教育再生・東京円卓会議での議論に着手をされています。
 そこで、改革が目指す先にある日本の将来を担う人材の姿をどのようにとらえ、そのためにどのような改革を行おうとなされているのか、知事の所見を伺います。

○石原知事 これは実に遠大、重大な質問でありますが、いずれにしろ、いつの時代、いかなる国家社会においても、最も重要な社会資本はまさにこれは人材であると思います。
 中世において世界で一番繁栄したのは、この日本の首都東京の前身である江戸でありまして、あの江戸時代には、元禄という時代には、寺子屋を入れますと、日本に五万以上の学校があったと。そこですばらしい教育を行われたわけであります。
 それに、あの時代には、ニュートンやライプニッツにはるかに先んじて微分積分を考えた関孝和のような数学者も出ましたし、あるいは酒田の豪商でありました、名前は何といいましたかな、三代目は光丘さんという、光丘神社という神社に祭られておりますけれども、この人たちがイギリス人にもはるかに先んじて先物買いという手形とかデリバティブというものを考えて、日本の経済を繁栄させたと。
 いずれにしろ、そういう世界に誇るべき天才をたくさん生んだわけですが、しかし、どうも戦後の教育を日教組の主導か何か知りませんが、強く支配してきた結果の平等主義は、結局子どもたちから個性を摘み取り、非常に横並びの人間をつくり出すしか功がなかったという気がいたします。
 こうした今日の日本の教育の混乱というか停滞というかをよみがえらせるためには、やはり相当大きな転換をしないと私は子どもたちはよみがえってこないと思います。
 要するに、子どもたちのいろんな欠陥を指摘できるでしょうけども、先ほど申しましたが、私はやっぱり対人関係の中で自分の個性というのをしっかり踏まえて、はっきり人と対峙することのできる強い自我を持った子どもを育てるためには、今の教育制度ではだめだと思いますな。
 これはいずれかの政府に、高校を卒業した年代で二年間ぐらい組織生活をさせる、警察に行く、消防に行く、あるいは兵隊に行く、せいぜい海外協力隊に行くという経験をさせることで、私はやっぱり世間というか世界というものを子どもたちが体感できると思いまして、それぐらいのことをやらなきゃだめですけど、これはちょっと東京が持ち出しても決まる問題じゃありませんね。
 これから先、どんな政府が、だれが執政できるかわかりませんが、やっぱり国がその気になってやらぬとだめだと思います。そのためには、やっぱり文部省なんていうくだらぬ役所を踏みにじるぐらいの政治家が出てこないとだめだと思います。

○鈴木(隆)委員 ありがとうございました。大変示唆に富んだ答弁をいただきましてありがとうございます。
 次に、中高一貫教育校について伺います。
 中等教育の六年間は、生徒にとって夢や希望を抱きながら自分の人生を考える大切な時期に当たります。
 中高一貫教育は高校受験がなく、六年間落ちついた環境の中で生徒同士が切磋琢磨し、互いを認め合うことで厚い友情をはぐくみ、生涯の友を得る重要な機会であります。また、六年間を見通した計画的な、継続的な教育活動や異年齢間の交流なども可能であります。
 こうした中高一貫教育システムのよさを生かし、都教育委員会はどのような教育を目指しているのか改めて伺います。

○大原教育長 都立中高一貫教育校は、使命感、倫理観、社会貢献意識や我が国と郷土に対する愛着と誇りなど、日本人として持つべき資質を備え、社会のさまざまな場面、分野で信頼されるリーダーとなり得る人間の育成を目指しております。
 このため、各校では、生徒が六年間継続した学校生活を通して、学校行事や部活動などにより、同級生はもとより、先輩、後輩と交流し、互いに切磋琢磨する機会を設け、豊かな人間性と社会性をはぐくんでおります。
 また、教養教育を重視した特色ある教育活動により、生徒の個性や創造性を伸ばしております。具体的には、日本の伝統文化理解教育や地球規模の環境問題と国際協力についての学習など、文化と自然、社会について深く学ばせる教育活動に取り組んでおります。

○鈴木(隆)委員 昨年度、都立の中高一貫教育校として最初にスタートいたしました白鴎高校が初めて卒業生を輩出していますが、東京大学など難関大学に多数合格している進学実績は大きな成果といえるでしょう。
 しかし、私は進学だけではなく、さまざまな特徴ある、特色ある教育活動により、学力偏重ではないバランスのとれた人材が育成されているということを聞き、都立中高一貫校の利点が十分に生かされていることがわかりました。
 私の地元でもあり、先日、記念すべき一期生の卒業式が行われた桜修館中等教育学校では、本校主催の「ようこそ小学生」による小学生との交流を初め、地域の清掃活動やイベントへ参加するなど、積極的にボランティア活動に取り組み、地域との交流を盛んに進めています。
 また、学習面でも、国語や数学を通した論理的思考力の育成や、研究論文の作成により、生徒の思考力、判断力、表現力を養う教育が実践されています。
 卒業式には残念ながら出席することはできませんでしたが、入学式のときには心身ともに幼さが見てとれた生徒たちが、この六年間で立派に成長し、自分の道を着実に歩み出していることと思います。
 他の都立中高一貫教育校でも、こうした生徒一人一人の個性に応じて高い目標に挑戦させる取り組みがなされていると聞いています。
 そこで、都立中高一貫教育校のこれまでの成果と取り組みについて教育委員会の所見を伺います。

○大原教育長 都立中高一貫教育校では、ホームステイによる海外語学研修、校外での調査研究活動、英語、漢字の検定試験の受検など、生徒の意欲を引き出し、生徒がみずから目標に向かって挑戦していく教育を展開しております。
 その成果の一つとして、小石川中等教育学校の生徒が、ポーランド科学アカデミー主催の物理論文コンテストにおきまして、世界で数名しかいない受賞者の一人となり、研究生として招待をされました。このほか、各校の生徒が多くの全国大会等で顕著な成績を上げております。
 今後とも、各校において、生徒の挑戦意欲を喚起し、一人一人の資質や能力を最大限に伸ばすよう、都教育委員会は、中高一貫教育校の特性を一層生かした教育課程の編成などにつきまして適切に指導してまいります。

○鈴木(隆)委員 次に、来年度から実施する次世代リーダーの育成についてお伺いをいたします。
 多感な時期にある若者にとって海外への旅は、いわば自分探しの旅でありましょう。海外で多様な文化や価値観に直接触れる経験をすることは、個性や感性を磨き、自分の夢や希望を見つけ、それを実現することで、将来さまざまな分野のリーダーになっていく大きなきっかけになると確信をいたします。
 また、日本の伝統や文化に対する理解を深め、時として、みずからの常識と世界の常識との乖離に気づかされるなど、真の国際感覚をはぐくむ上で絶好の機会となり得ます。
 そのため、私は、都内の高校生全員に在学中に一度は海外を体験させてもいいのではないか、例えばチャーター機を使って世界じゅうに子どもたちを送るぐらいの壮大な事業があってよいのではないかと思います。
 知事は、先ほど十八歳以上の若者たちに対してのことをいわれましたが、私は、やっぱり中学生、高校生ぐらいのときに意外と海外を経験しておきますと、それから海外に自分で行くというのをもう自然と、要するに、ちょっと大阪へ行ってきます、ちょっと京都へ行ってきますという感覚で行くような感覚に僕はなるというふうに思うんです。
 私自身も、十八のときにちょっと浪人をして、父親からロンドンとパリに行ってこいといわれて、今から四十年前ですか、十日間行ってきましたが、そういうものを通して、それからもう気楽に海外に行くというようなことがごく普通にできるようになったという現実がやっぱりありますので、こういうこともある点で考えていただければと思います。
 また、これも奇抜なことかもしれませんが、私は、高校生の中でひきこもっている人がいるでしょう。ああいう人も、もしできたらそういうプログラムにのせて海外に送っちゃっていいのかなというように思っているんですよ。
 それから、障害者の人たちもそうですね。やっぱり幅広く、もう高校生にサービスしないで、みんなが海外に行って、それぞれの海外体験を通して、何かそこから感じて、逆に日本のよさを感じることもあるでしょうし、また改めて自分の親というようなものの再発見ができるかもしれませんし、そして日本人のよさもわかるでしょう、足りなさもわかるでしょう。
 そういうことを通して、高校生、中学生の多感な子どもたちがそういうものを体験していくことの必要性というのは、私は非常に大きなものがあると思いますので、あえてこれは何度でもいわせていただきたいというふうに思っています。
 私はさきの定例会でも申しました。多くの若者が海外に出る大きな流れを創出する突破口を、国に先駆けて東京都がつくることを要望しました。来年度予算案に、次世代リーダー育成道場として高校生を海外に派遣する事業が計上されたのは、第一歩として高く評価をしたいと思います。
 海外での経験を有意義なものにするためには、国際社会で生きる高校生として当然身につけておくべき自国の伝統や歴史や文化等を理解するとともに、海外で日本人としての誇りを持って、各国の生徒たちと切磋琢磨していくことが重要であります。
 そこで、来年度から実施する次世代リーダー育成道場では、留学を真に価値あるものにするために、どのように我が国の伝統や文化、歴史等の理解を深めさせていくのかお伺いをいたしたいと思います。

○大原教育長 次世代リーダー育成道場では、日本人としての自覚と誇りを持って留学に臨ませるための取り組みを実施いたします。
 まず、事前研修では、文化や歴史に関する研究成果を英語で発表させるゼミナールを実施し、我が国についての理解を深めさせます。また、歌舞伎や能楽等の伝統芸能に直接触れさせ、生徒自身の感動体験を通して自国に対する誇りを高めさせます。
 さらに、留学先では、異なる文化や生活習慣の中で自国の特色に気づかせるとともに、文化や歴史、産業等、さまざまな日本の姿を紹介する機会を経験させまして、改めて日本の価値を確認させます。
 これらを通しまして、世界の中の日本を実感させて、国際社会で活躍できる素地を持った人材を育成してまいります。

○鈴木(隆)委員 次に、歴史教育について質問いたします。
 私は常々、現代の日本の若者に健全な歴史観を醸成し、日本人としての自覚を持たせるためには、我が国の歴史を、特に我が国が欧米諸国に伍して、国際社会において重要な役割を担ってきた近現代の歴史を、高校生の段階でしっかり学ばせるべきだと考えていました。
 それゆえ、都教育委員会が東京都独自の日本史科目「江戸から東京へ」を開発するなどの準備を進め、私も今ここに持っておりますが、すべての都立高校での日本史必修化を来年度から完全実施することは、現代の若者に健全な歴史観を持たせる第一歩であると高く評価をしています。
 私もこれを読ませていただきました。「江戸から東京へ」、非常にとらえ方がおもしろいですね。それぞれの設問に対して、「学びの窓」という項目を設けています。
 例えば、幻の東京オリンピック。ここには、なぜ東京オリンピックを中止することにしたのでしょうかというような設問があるわけですね。ですから、それぞれのページを見て、それぞれの人がここから何かを調べるとか、またはもっと自分たちが持っているいろいろなものを議論したりする場ができるような、示唆に富んだ提案をしているというようなことで、私も見ていて、これは非常におもしろい切り口を持って、また子どもたち、高校生が、こういうものがあれば、こういうものから興味を引かれて、それぞれがもっと自分で歴史を、いろいろな本を読んだりして深めていくようなことがあるような気がしました。
 だから、東京大空襲の日は、「学びの窓」のところに書いてあるのは、太平洋戦争は東京の人々にとってどのような影響を与えたのでしょうかと。こういう設問ですと、今いったように、みんなで議論ができて、またちょっと調べてみようよと。お互いがそういうことを持ち寄って勉強していくようなものがここから広がっていくような、そういう切り口にしたこの本というのを、私は非常に感慨深く読みました。
 しかも、順序が非常によくできていて、それを一つ一つ読んでいくと、今いった日本の近代史が非常によく克明に見えてきます。
 今いったように、そこから歴史を自分が学んでいこうという意欲を育ててくれるような、そんなようなこれは題材だと私は思いますので、これをぜひ一人でも多くの高校生が手に、もちろん必修科目だから、これを手にとることになるんでしょうけども、こういうものを通してもっと歴史観、自分たちのこの日本を、日本に生まれてよかったといえるような、日本人として誇りを持っていますといえるような、そういう若者を育てていくようなことを教育の現場からも、お互いにまた家庭の中からも本当はしなきゃいけないと思いますが、特に教育現場はそういうことを私はしていくべきだというふうに思います。
 単なる自虐的な歴史観だけを教えるのではなくして、やはり健全な歴史観を持つためには、まずは事実を、そして、お互いがそれを究明していくような、そういう努力をしていくということの、そういうような価値観を持つことのすばらしさを、こういう本を通して、ぜひ高校生の人たちに教えていただければ大変ありがたいというふうに思います。(石原知事「共産党にも読ませてやれ」と呼ぶ)はい。
 そこで、都立高校における日本史学習、特に日本の近現代史に関する学習の充実に向けた都教育委員会の取り組みについて伺います。

○大原教育長 近現代史の学習では、単なる知識の習得だけでなく、歴史的事象の因果関係を考察させ、正しい歴史認識を身につけさせていくことが重要でございます。
 そのため、都教育委員会は、昨年度作成いたしました教科書「江戸から東京へ」に、さきの戦争に至った我が国の歴史的背景を客観的事実から探求させるページや、我が国の領土についての記述を加えるなどの改訂を行い、内容の充実を図ったところでございます。
 また、地域の史跡等を授業に活用できるデジタルコンテンツを作成いたしますとともに、実践事例や歴史的事象の解説等を盛り込んだ指導書を作成いたしました。
 来年度は、歴史地図帳、ワークブック等の教材作成などを進めまして、都立高校での日本の近現代史学習を充実させて、生徒に正しい歴史認識と日本人としての自覚と誇りを身につけさせてまいります。

○鈴木(隆)委員 どうもありがとうございました。
 次に、理数教育の推進について伺います。
 現在、人類社会は、環境問題、エネルギー問題などの世界規模の問題に直面をしています。かけがえのない地球を後世に残すためには、科学技術の発展がかぎを握っており、我が国はさらに科学技術の水準を向上させ、世界に先駆けてこれらの問題の解決に挑むべきであります。
 しかし、若者の理工系離れが進む一方で、優秀な技術者や研究者が退職年齢を迎え始め、科学技術分野での人材不足が懸念されています。ちょっと心配な点があるのは、この退職した人たちが海外にヘッドハンティングされて、いろんなそういう知恵、またはそういうすばらしい人材が流出することも懸念をされているということであります。
 今後、理工系分野での技術者や研究者を継続的に育成するために、学校教育においては、科学技術の土台である理数教育を充実させ、我が国の将来の科学技術や学術研究を担う理数好きの子どもを育成する必要があります。
 そこで、東京都における今後の理数教育振興のための施策について伺います。

○大原教育長 理数好きの児童生徒を育成するには、科学への興味、関心を高める必要がございますために、研究校を小中学校合わせて十五校指定いたしまして、知的好奇心や創造性をはぐくむための指導方法等を開発してまいります。
 また、都立高校では、生徒の科学的な素養を養うために、推進校を五校指定いたしまして、教育活動全体を通して、系統的、探求的な理数教育のカリキュラム等を開発してまいります。
 加えて、理系を得意とする生徒の資質等を一層伸ばしますために、十二校の科学部等を支援し、さまざまなコンテストに挑戦させるなど、理数系部活動等の活性化を図ってまいります。
 さらに、理数教育振興に係る委員会を設置いたしまして、これらの取り組みの状況や学校と関係機関との連携のあり方等につきましても検証、検討して、成果等を全都に普及してまいります。

○鈴木(隆)委員 今、教育長さんから、理科好きの児童生徒を育成するには、科学への興味、関心を高める必要があるとの答弁がありました。そのためには、幼いころから家庭で、または地域で自然に親しみ、発見する喜びやつくる喜びというのをはぐくむことが大切であると考えます。
 その上で、小学生の段階では、理科の楽しさや大切さを実感させる教育を行うことが重要であり、こうした教育を行うことができるかどうかは、教員の指導力によるところが私は大きいと思います。
 中学校や高校では、理科を専門的に指導する教員が配置をされていますが、小学校では学級担任が全科を担当しており、教員の中には必ずしも理科の授業を得意としない先生もいると聞いております。
 子どもたちに、自然の事象に目を向け探求する能力や態度を育てるためには、指導力と専門性のある教員の確保、また育成が必要だと考えますが、都教育委員会の所見を伺います。

○大原教育長 都教育委員会は、平成二十四年度に実施いたします小学校教員採用選考から新たに理科コースを設けまして、小学校教員免許だけでなく中学校または高校の理科免許をあわせ持つ教員を毎年五十名程度採用してまいります。
 これに加えまして、既にこういった理科免許を持つ千三百名程度の教員がおりますが、これら小学校教員など理科指導にすぐれた者を理科教育推進教員として各小学校に配置して、観察や実験の校内研修などを担わせます。
 また、来年度から、小学校教員採用予定者全員を対象に観察、実験や飼育に関する講座を開催するとともに、現職教員を対象とした実習に関する研修を充実いたしまして、小学校教員全体の理科指導力を向上させてまいります。

○鈴木(隆)委員 私は、自然の事象に興味を持つ子どもたちをふやすことが、将来の日本のものづくりの発展に寄与することになるというふうに考えています。
 今、教育長さんもいろいろいわれましたが、子どものときというか、私もそうでありますが、小学校のときに出会った先生が非常におもしろくて、たまたま理科の先生で、何かいたずらしたらどなられて、怒られて、殴られて、だけれどもその先生が好きで、やっぱりいろんなことを、その先生の後をついてカエルの解剖をしたりいろんなことをやっていく中で過ごしたような記憶があります。
 そのときの人との出会いとか、または場所との出会い、それから、もう一つ大きいのは、本とかそういうものとの出会いが、その子の将来にわたる自分の興味を育てていく、または自分の趣味になるとか、自分の進むべき方向を決める意外と要素になる。そうなると、私は、教育が果たしていく役割の中に、多くの子どもたちが経験できる、体験できる引き出しを用意することが最大の教育の一つのあり方のような気がしているんです。
 その引き出しというのは、子どもたちが興味を持てるようなもの、そして私学では建学の精神がありますから、非常に多くの引き出しを用意して、子どもたちのニーズ、また親のニーズにこたえていこうということをしています。
 ですから、公立校の中であってもそういう心を持って、ひとつ子どもたちに多くの場の経験、そして多くのものを知り得る知識がまた得られるような場を、きちっとした引き出しを設けて、多くの引き出しを設けて、ぜひ子どもたちに、将来の夢、希望をかなえられるような、そんな教育の場であってほしいなということをあえてここで申させていただきたいというふうに思います。
 教員の皆さんには、ぜひ日本の将来支える人材をつくるという気概を持って理科の指導に当たることを願っておりますし、期待を申し上げたいと思います。
 次に、公立の教育と並んで重要なのが私学の教育であります。
 特に、幼児教育は、地域によって公立幼稚園が少なく、私立幼稚園が大変重要な役割を担っています。その私立幼稚園に関する就園奨励費補助についてお伺いをいたします。
 国の幼稚園就園奨励費補助については、民主党政権が平成二十二年度に最大の所得階層である年収三百六十万円を超え六百八十万円以下の世帯の補助単価だけを減額し、一部の階層のみに負担増を押しつける制度改悪を行いました。国の来年度予算においても、補助単価の見直しが行われはしたものの、当該階層においては負担増が残されたままであります。
 これは本来、国の責任で対応すべき問題であります。この負担増による保護者の痛みを和らげるため、我が党はやむなく復活要望を行い、私立幼稚園就園奨励特別補助が都の来年度予算案にも反映をされました。
 そこで、この改悪が行われた後、国はどのような対応をしてきたのか、また、今後の都の対応について伺います。

○井澤生活文化局長 国は、平成二十二年度に、全体の約七割を占めるお尋ねの階層の補助単価を一万八千六百円減額いたしました。平成二十三年度には三千二百円、二十四年度予算案では三千円の補助単価増を行いましたが、なお当該階層には一万二千四百円の負担増が残されております。
 国の制度変更による保護者負担増につきましては、本来、国の責任で是正すべきものでございます。しかし、保護者負担軽減の重要性にかんがみ、都の財政状況等も勘案しながら、負担増の三分の二の補助を継続することといたしました。
 都といたしましては、今後もすべての階層区分において負担増を解消するよう、国に対し強く補助制度の改善を要望してまいります。

○鈴木(隆)委員 今答弁がありましたように、二十二年度の制度改悪後、国は二回の補助単価の見直しを行いましたが、この二回の見直しはいずれも全所得階層での一律の単価増を行ったものであり、むしろその財源を用いて負担増となっている階層に対して、制度改悪前の補助水準に即刻戻すべきであります。
 我が党は、責任ある政党として、現場の実態を踏まえ、真に子どもたちのことを考え、保護者負担の軽減、私学振興のために引き続き最大限努力していくことを改めて表明しておきたいと思います。
 私はここで特にいいたいのは、まじめに働いている人が一番報われない政策だと私は思っています。子どもを二人、三人持って幼稚園に行かせて、本当に子どもを育てようとしている所得の方々が、この階層の人が一番このところに当たっています。弱者といわれる人に対する政策も大切かもしれませんが、やはりまじめに働いて額に汗している若者たちが報われる社会でなければならない。やっぱりそのことが民主政治の私は基本だと思っています。
 そのためには、真っ当に働いて、そして汗をかいて、そして、そういう若者たちが夢と希望を持てるような社会にしていく。それがやはり責任政党として果たすべき道だということあえて申し上げさせていただいて、本年の東京都予算、厳しい財政状況下にありますが、この国のほころびを補い、日本再生を牽引する重要な予算であることを改めて確認して、私の質問を終わらせていただきます。
 ありがとうございました。(拍手)

○鈴木(あ)副委員長 鈴木隆道理事の発言は終わりました。
 この際、議事の都合により、おおむね三十分間休憩いたします。
   午後五時三十二分休憩

ページ先頭に戻る