予算特別委員会速記録第五号

   午後五時四十五分開議

○ともとし副委員長 休憩前に引き続き委員会を開きます。
 質疑を続行いたします。
 長橋桂一委員の発言を許します。

○長橋委員 それでは、都議会公明党を代表いたしまして、締めくくり総括質疑をさせていただきます。
 まず、都市基盤整備という観点から何点か質問してまいりたいと思います。
 初めに、豪雨対策でございます。
 もう豪雨対策については本委員会でも質疑がございましたけれども、私の方からは、豪雨対策に対してどう都市基盤を整備していくのか、そういう観点から質問をしてまいりたいと思います。
 近年、温暖化に伴う気候変動などを背景に、一時間に五〇ミリを大幅に超える集中豪雨が頻発するようになってまいりました。そのデータがお配りしたものにもあるわけでございますけれども、(パネルを示す)このデータが示すとおり、気象庁の資料でございますけれども、およそ三十年前から十年スパンに区切って、一時間の降水量が五〇ミリを超える発生回数が示されております。
 およそ三十年前のスパンだと、一年間に百六十回、それが近年のおよそ十年ぐらいの間には、二百三十三回にふえているわけでございます。そういったことで、大変気候変動の影響が大きく出ている、如実に出たデータではなかろうかと思うわけであります。
 また、被害という点では、昨年七月に、二十三区北部、北区、板橋区、練馬区--板橋区では一〇七ミリを超える集中豪雨があったということで、大変な被害、床上床下浸水があったわけでございます。
 皆さんもご記憶にあると思いますけど、私の地元豊島区でも、この平成二十年、雑司が谷で、大雨洪水注意報の発令からわずか十五分後に、局地的な集中豪雨で下水道工事中の作業員の方が死亡するという痛ましい事故もあったわけでございます。舗装化が進んだこの都市部では、排水機能が大幅に低下をして被害が増加しているわけでございます。
 そこで次に、この被害額について国交省の資料がございます。(パネルを示す)これを見ますと、いわゆる内水はんらん、それから外水はんらんの被害額の違いがございます。
 これを見ますと、ここ最近十年のデータでございますけれども、全国では内水被害が三二%、外水被害のおよそ二分の一でございますけれども、東京は全く逆といいますか、大きく違っています。内水被害が八六%で、外水被害の六倍を超えているわけであります。被害額が十年間で千二百九十億に達しているということで、この東京においては、都市部においては、この対策が大変重要だろうと思います。
 内水被害とは何かというと、大規模な雨によって下水道の排水能力を超えたことによって起こる被害であるということでございます。
 そこでまず、なぜこれほど内水被害が東京で多いのか、下水道局にその原因について説明を求めたいと思います。簡潔にお願いいたします。

○松田下水道局長 内水はんらん被害額の割合が大きい傾向は、東京都と同様に大阪府や愛知県など他の大都市圏においても見られますが、これらの都市は、人口密度が高く、家屋が密集しており、また、地下街や地下鉄、地下を有する建物など、水害に対して脆弱な施設が多く存在しております。
 また、都市化の進展により地表がアスファルトなどに覆われ、雨水の多くが短時間に集中して下水道へ流入することから、浸水が発生しやすくなっております。
 さらに、東京では、ヒートアイランドの影響などによりまして、お話のとおり、局所的集中豪雨が近年頻発をしており、地盤の高低差の大きい河川沿いの低地や坂下など、水の集まりやすい場所を中心にたびたび浸水被害が発生しております。
 これらのことから、東京の内水はんらんによる被害額の割合が大きいものと推測されます。

○長橋委員 まさに大都市特有の被害であることがわかるわけであります。
 先ほども質疑がございましたけれども、東京には多くの地下街、地下鉄も走っておりますし、また、地下を有する建物などもたくさんあるわけであります。さらには、ヒートアイランドの影響も大きくあるということでございますので、そう考えると、東京にあっては、この内水はんらんによる被害をどう軽減していくのか、この対策が大変重要であろうと、このように思うわけであります。
 都はこれまで、一時間五〇ミリの降雨に対応できるよう河川や下水道などの整備を進めてきました。既に区部下水道の整備率は六〇%を完了していると、このように聞いておりますけれども、この五〇ミリ対応については引き続き着実に進めてもらいたいと、このように思うわけでありますけれども、お伺いすると、整備は毎年一%ずつ進む、このように聞いております。ですから、六〇%ということは、五〇ミリ対応を、整備を完成するには、数字で見れば、あと四十年かかるということであります。
 しかしながら、先ほどの近年の集中豪雨の状況を見ますと、五〇ミリを超える対策が必要ではなかろうか、このように思うわけであります。都は既に浸水予想区域図を作成、公表しておりますし、また、区市町村は、都の浸水予想区域図をもとに洪水ハザードマップを作成、公表しているわけであります。これを見れば、明らかに五〇ミリを超えて浸水するところはどこなのか、区市町村もわかっているわけでございます。
 そこで、こうしたデータをもとに浸水被害が多く見込まれる危険地域、どこなのかということでございますけれども、そうした地域については、五〇ミリ対応だけではなくて、七五ミリ対応の整備をするべきではないか。いかがでしょうか。

○松田下水道局長 下水道局では、浸水予想区域図などに基づき、浸水の危険性の高い地区に重点化し、お話のとおり、一時間五〇ミリの降雨に対応できるよう、雨水を排除する能力を増強する下水道幹線やポンプ所などの基幹施設の整備を進めております。
 さらに、浸水被害による影響の大きい大規模な地下街などでは、これまでの整備目標水準を超える一時間七五ミリの豪雨に対応できる施設の整備を進めております。現在、池袋駅周辺などの四地区については対策が完了しており、今後、新橋駅や銀座周辺などの五地区について、雨水を貯留する施設などを整備いたします。
 今後とも、安全・安心なまちづくりに貢献するため、浸水対策事業を着実かつ積極的に推進してまいります。

○長橋委員 大規模地下街では七五ミリ対応を進めていくということでございますので、先ほど質疑もございましたけれども、被害額を考えると、ぜひそうした対策についても力を入れていただきたい、このように思います。
 また、豪雨対策については、雨水の流出を抑える流域対策の強化が大変重要でございます。先ほど、公共施設の対応や、今いった地下街対策の取り組みについてはご答弁をいただきましたけれども、そこで、都は、豪雨対策基本方針によりますと、公共施設を活用した一時貯留施設等の設置促進について区市に調査をしていると都技監からご答弁いただきましたけれども、この調査はいつまでに取りまとめて、そしてまた、どう活用していくのか。
 また、あわせて、公共施設だけではなくて、民間施設の更新も大事であると思います。民間施設も更新時期を迎えていることから、開発行為等に対して雨水流出抑制の指導を行っていない区市町村に対して、設置を指導する要綱や条例等の制定を強く働きかけていくべきだと思っております。その状況と、そして今後の見通し、どうなのか、あわせて答弁をいただきます。

○河島東京都技監 都は、神田川など七流域におきまして、一時貯留施設等の設置促進などの流域対策に重点的に現在取り組んでおります。
 お尋ねの公共施設を活用した雨水貯留浸透施設の調査につきましては、この七流域の関係区市や庁内各局に対して、所管する施設の建てかえ計画や空きスペースの有無などに関するアンケートを、今月末を目途に実施しております。
 その後、結果を取りまとめ、調査により把握された公共施設の活用可能な場所におきまして、一時貯留施設等の設置を働きかけていくとともに、来年度策定予定の貯留施設等を効果的に設置するための指針に反映してまいります。
 また、民間施設の開発行為における流域対策強化のため、平成十九年に策定した豪雨対策基本方針に基づき、雨水流出抑制を指導する要綱や条例がこれまで未制定であった区市町村に要請した結果、二つの自治体で新たに制定をされております。
 引き続き、要綱等が未制定である自治体にその整備を強く働きかけ、民間施設の開発に伴う流域対策の充実に努めてまいります。

○長橋委員 調査については今月中に回収をして、来年度に取りまとめる指針に反映していくということでございます。しっかり取り組んでいただきたいと思いますが、いまだにそうした設置をしていない、区部にもあると、このように聞いておりますので、ぜひ引き続きお願いをしたいと思います。
 豪雨対策に対する都市整備基盤に続いて、今度は情報基盤の整備、情報施策について質問をしたいと思います。
 今日、情報通信技術の発展は非常に目覚ましく、大容量かつ高速の通信を可能とする光ファイバーケーブルが世界じゅうに張りめぐらされつつあります。
 都においても、いよいよ小笠原まで海底光ケーブルの整備が今月完成をいたします。今後、試験運用を経て、七月の地上デジタル化に向けて、光ケーブルを活用したサービスの開始がされるということになっております。
 私も昨年十一月に、都議会公明党視察団の一員として小笠原を訪問いたしました。さまざまなお声を聞いてきたわけでございますけれども、その際に島民の方から、大雨が降るとテレビが映らなくなる、インターネットで画像を見ようとすると速度が大変に遅くなる、学校の授業で使えないなどの声を聞いてまいりました。情報通信に関しても大変に不便を強いられているということがわかったわけであります。
 そこでまず、小笠原への海底光ファイバーケーブルの整備により、島民生活の向上はどのようになるのか、お伺いをいたします。

○比留間総務局長 小笠原村への海底光ファイバーケーブルは年度内に整備が完了する予定であり、大容量の情報を高速かつ安定的に通信できるようになります。
 これにより、高画質の地上デジタル放送の視聴や、ブロードバンドによるインターネットの利用が実現するほか、医療においては、画像伝送の高速化による診療内容の充実が図られるなど、島民生活において、本土との情報格差が大幅に是正されるとともに、利便性が向上いたします。
 また、今後は、小笠原の豊かな自然の魅力を国内外へ広く発信していくことや、産業振興、教育、文化など、島民生活のさまざまな分野で光ケーブルの活用が期待されます。都といたしましては、小笠原の自立的発展に向け、こうした村の多様な取り組みを積極的に支援してまいります。

○長橋委員 今ご答弁いただきました。三月十六日に完成記念式典があると、このように聞いております。ぜひとも島民の方々の期待にこたえるために、引き続き早期の供用開始を目指していただきたいところでございます。
 さて、今、小笠原への海底ケーブルの整備により、いよいよ都内全区市町村でブロードバンドの利用環境が整うことになるわけであります。こうした情報通信基盤を活用することは、民間の創意工夫による多様なサービス提供や、行政サービスの充実が格段に飛躍することが期待されるわけでございます。
 国には、光の道構想というのがございます。平成二十七年までに全国で超高速ブロードバンドの整備率を九〇%から一〇〇%にする、世帯利用率を三〇%から一〇〇%に引き上げる、こういうことでございますので、あと数年の間に一〇〇%を目指すということでございます。
 既に都内では全区市町村でブロードバンドが利用できるという恵まれた環境を生かして、今後は各家庭に引き込んで活用できるようにすることが重要である、このように考えます。
 既に民間企業では、ブロードバンドの高速、大容量の通信を生かして、特徴を生かして、動画や映画の配信、または、先ほど答弁がありました医療などについては双方向の通信など、多様なサービスが展開をしているわけであります。
 そこで、このブロードバンドの活用を民間に任せるだけではなくて、最新のIT技術の活用による住民サービスの向上に向け、都としてこうした民間の事例などを踏まえて積極的に検討すべきだと思いますが、いかがでしょうか。

○比留間総務局長 都と区市町村は、平成十五年度、ITの活用による東京の活性化と都民生活の向上を図ることを目的として、都区市町村IT推進協議会を設置し、行政におけるIT化推進に向けての課題と方策について検討を行っております。
 これまでも地方税の電子申告や、住民に身近なコンビニエンスストアでの住民票交付など、自治体におけるITを活用した住民サービスの向上のための取り組みを協議会において紹介し、その普及に努めてまいりました。
 今後は、民間におけるIT技術の進捗を踏まえ、医療、防災、高齢者の見守りシステムなど、行政のさまざまな分野で、都は区市町村とITの活用方法を検討し、質の高い住民サービスの提供を目指してまいります。

○長橋委員 今ご答弁をいただいて、いわゆる動画や音楽の配信だけではなくて、医療や防災、さらには高齢者の見守りなどにも活用ができるわけでありまして、それについて都として検討していくということでございます。
 ぜひとも首都東京の魅力の向上、何回もいっていますけれども、国際競争力に打ち勝つためには、都市基盤の整備の中に、この情報基盤整備もしっかりと取り組んでいくことが重要であろうと、このように思うわけでございます。
 そうした意味では、この都市づくりの観点から、今ご答弁がありました情報通信技術を活用する、これによって、広く都民に今お話しした医療や災害にかかわる情報を瞬時に伝えることができたり、またはさらに、東京を訪れる外国人などに観光情報などをわかりやすく伝えることができるなど、さまざまなサービスや付加価値、これを生み出すことが可能になるわけであります。そのためには、さまざまな情報を伝達するための基盤を都市の中にしっかりと整備していくことが重要であろうと、このように思います。
 先ほど述べましたけれども、都内の幹線道路には既に民間の通信事業者により光ファイバーが設置をされて、もうブロードバンドサービスが提供されているわけであります。一方で、この情報通信技術の発展のためには、技術開発、または専門的な人材の育成が重要でございます。そのための場となる拠点づくりが必要であろうかと思います。
 拠点づくりに当たっては、都市の更新時期をとらえて、機を逸することなく、情報関係の拠点を形成する都市づくりを進めることが重要であろうかと思います。そのことによって、民間の事業活動がさらに飛躍され、促されるということになろうかと思います。
 そこで、都市の魅力が高まり、東京の活力も一層向上する、こうした取り組みが都市再生に大きく寄与する、このように考えますけれども、ぜひとも都技監の答弁をいただきたいと思います。

○河島東京都技監 お話のように、東京の魅力を将来に向けてさらに高めていくためには、例えばユビキタスなど、高度な情報技術を活用できる基盤を都市の中にしっかりと組み込んでいくことが必要であります。また、情報技術の開発や人材育成などにより、新たな情報関連産業の拠点を形成していくことも重要でございます。
 これまで都は、秋葉原地区で神田市場跡地などを土地区画整理事業により再編し、産学連携機能や情報ネットワーク機能等の集積を進め、情報関連の新産業を創出することなどを目指すIT拠点の形成を図ってまいりました。
 また、竹芝地区では、都有地の活用による都市再生ステップアップ・プロジェクトを立ち上げ、映像ソフト等の制作に対応したオフィスや人材育成のための研修施設を供給し、地区周辺の情報関連産業の集積を生かしたビジネスの拠点づくりに取り組んでまいります。
 今後も、都市の機能更新に合わせ、情報技術に関する拠点づくりに積極的に取り組み、東京の活力と魅力を一層高めてまいります。

○長橋委員 今、都技監から、情報技術に触れて東京の魅力と活力を高めていくと、このような答弁をいただいたわけでございまして、まちづくりの観点、都市づくりの観点からこうした情報技術が重要であると、このような認識もいただいたところでありまして、さらには、竹芝地区では都市再生ステップアップ・プロジェクトを立ち上げて、これを一つの情報基盤といいますか、拠点にもしていく、このようなことでありましたので、ぜひこの取り組みについては積極的に推進をしていただきたいとともに、今のご答弁については大変高く評価をさせていただきたいと思います。
 ですが、都市づくりにあって、このハードの更新に合わせて、こうした情報基盤についてはもっともっと積極的に取り組まなきゃいけないと思うんですが、さらには、この情報というのは、情報基盤、情報技術は手段でございますから、この高度な発達によって、今世界じゅうで大変大きな変化をもたらしているのも事実でございます。
 ご案内のとおり、昨今の中東情勢を見ても、ネットといいますか、情報技術が大変大きな役割を果たしているわけであります。また、国内を見ても、大学入試の問題、先ほども出ましたけれども、携帯電話を使ってカンニングが行われた。とんでもないことでございますし、また、青少年が出会い系サイトと通じて犯罪に遭う。こうした情報を手段とした場合に光と影がある、これも事実であろうかと思います。
 ですが、私としては、この都の情報基盤の整備は乗りおくれてはならないし、きちっと都が主導していかなきゃならないと、このように思いますけれども、この光と影がある、こういうことについて、都政は情報化といかに向き合っていくべきなのか、知事のご答弁をいただきたいと思います。

○石原知事 おっしゃるとおり、インターネットでの呼びかけでアフリカや中東の諸国で独裁体制が崩壊に瀕してきたというのは、本当に瞠目すべき事実だと思います。今日の情報技術の進歩は、人の心、ひいては社会のあり方を決定的に変えようとしていると思います。
 しかし、東京の潜在力を引き出して活力あふれる都市を実現するためにも、この情報技術を活用することは当然でありますが、これはやっぱり今おっしゃったように、光と影の部分というものを私たちは強く意識して、こういった技術を活用しなくちゃならぬと思います。
 ただ、人間というのは、心理的に非常におくれている部分もありまして、要するに文明開化のころの明治で、せっかく引けた電線の下を、人がこうやって扇で頭を隠して過ぎたというこっけいな事態もありますが、そういう点では、私たちはやっぱりこの文明の進歩を忌避するわけにいきませんけれども、いずれにしろ、経済活動や産業を新しく生むだけではなしに、特に障害のある方々や外国人を含めて、だれもが安心して東京のまちを迷わずに歩き、楽しむことができるユビキタスという、何といいましたか、天才の発見されたああいう技術というものも、これから、特に、ご指摘のように、島しょなど遠隔地における医療とか、その他の福祉のためにも、いろんな可能性を秘めていると思います。
 しかし、一方では、こういった情報社会の便利さがかえって我々の生活をあしき形で規制しているとも思います。
 例えば、携帯電話であるとかパソコンであるとかテレビという、いわゆる三つのスクリーンがもたらす過大な情報は、若者たちから実体験を奪ってしまって、彼らの持っている知識なるものは身体性を欠いているがために、本当の教養にならないといううらみがあると思います。
 それで、情報に頼り切るために、思い違いとか勘違いをかえってせずに、思い込みの一つの粋である失恋というものがこのごろ何か姿を消したというのも、これは青春の一つの特徴というものを文明がそいでしまったという実態だと思います。
 いずれにしろ、その結果がどうも今の若者をひ弱にしまして、挫折を知らない、それを避けて通る人間をつくったということも、私たちはやっぱり社会の一つの反省点として心得なくちゃいけないと思います。
 いずれにしろ、文明がもたらす便宜性におぼれずに、これを賢く使いこなしてこそ、人間が自分自身がつくった技術を使いこなすすべだと思いまして、豊かな社会がそれによって実現できるかできないかということは、やっぱり私たちの新しい技術に対する冷静な認識というものが不可欠ではないかと思っております。

○長橋委員 今、知事からご答弁いただきました。まさに情報に踊らされるのではなくて、しかしながら、技術の進歩によって、どうその情報を使いこなしていくのか、使っていくのか。これについては、行政もしっかりとその行く末を含めて取り組んでいただきたい、このように思うわけであります。
 次に、老朽マンション対策について伺いたいと思います。
 今回、条例提案されました緊急輸送道路沿道建築物の耐震化については、これは本会議でも予算特別委員会でもたびたび取り上げて質疑が行われました。
 知事からも、我が党の質問に対して、従来の発想や国の法律の限界にとらわれない取り組みを通じて、耐震化が進まない現状を東京から打破していくというご答弁もいただいたところであります。
 そこで、緊急輸送道路沿道建築物の耐震化を進めていく上で、私は、大変大きな障害となるのがこの老朽マンションの改修や建てかえであろうと思っております。東京都においては、全国に先駆けて、土地の高度利用が進んだ結果、老朽化に伴う耐震性が懸念されるマンションが集中をしております。東京には築四十年以上のマンションが四万四千戸あると、このようにもマンション白書にも記載をされているわけであります。
 また、今お話しした緊急輸送道路に指定されるであろう環七や環八、ここにも老朽マンションが大変に多い、こういう事実もあるわけでございます。
 さらに今後懸念されるのは、老朽マンションがますます資産価値が低下をして適正な管理がなされない場合には、老朽化による課題、いわゆる改修や建てかえがどんどんおくれていく。また、新しいマンションに移ることよって、空室化、これも加速度的に進むわけでございまして、こうしたマンションがふえていくのであれば、東京都の中に、都市の中に脆弱性の高い空間を生み出していくという大変危険この上ないことが起きてくるわけでございます。
 しかしながら、老朽マンションには、管理組合不在のマンションがあります。また、居住者の高齢化によって管理の空洞化も進んでいるわけであります。
 そこでまず、老朽化した分譲マンションの改修や建てかえを進める上で、検討する主体となる管理組合の体制を整えることが大変重要でありますけれども、都として積極的にこうした管理組合に支援をしていくべきだと。いかがでしょうか。

○河島東京都技監 分譲マンションの管理は、管理組合による主体的な取り組みが基本でございますが、改修や建てかえを行う場合に、権利者が多く、合意形成が困難なことなどの課題がございます。
 また、このことから適正な管理が行われず、建物の老朽化等の進行に伴い問題が生じ、周辺の住環境に大きな影響を与えることにもなりかねません。
 このため、都は、平成十七年に適正な管理を行うための手順や留意事項などを示したマンション管理ガイドラインを作成したほか、セミナーの開催による普及啓発やアドバイザーの派遣などを通じ、管理組合の運営を支援してまいりました。
 今後、高齢化による役員のなり手不足など、管理組合運営の困難化も予想されることから、現在、マンション管理の実態調査を行っておりまして、その結果も踏まえ、来年度にはガイドラインの内容を改定し、管理組合の自主的な取り組みを積極的に支援してまいります。

○長橋委員 現在、マンションの実態調査を行っていると。そこから得られる課題について検討して、ガイドラインの内容を改定するということでございますので、ぜひこの新たな施策についても実効性を持って進めていただきたいと思います。
 その上で、老朽マンションの中には、建築後の都市計画や建築基準法の改正、古いマンションですから、その後、新たにこの基準法などが変わる、それによって既存不適格な状態になっているものがあるわけでございます。そうすると、建てかえる場合にも建物を小さくしなければならない、もしくは建てかえを断念するケースも出てくるということでございます。
 また、さらには、老朽マンションには、私の地元にもございますけれども、四階や五階ぐらいの小規模なマンションも多くございます。そうすると、こういう小規模なマンションについては、耐震改修助成の対象になっていないわけであります。
 こうした建てかえが難しい既存不適格のマンション、または今お話しした小規模マンションについても、改修、建てかえを進めないわけにはいかない、このように思うわけであります。
 そこで、こうしたマンションに対して、条件や規制を緩和して進めるべきだと、このように思いますが、いかがでしょうか。

○河島東京都技監 既存不適格マンションについては、平成十四年に創設した共同住宅建てかえ誘導型の総合設計制度を活用し、容積率の割り増しによる建てかえを支援してまいりましたが、昨年九月には、さらに容積を上乗せできるよう、制度の見直しを行っております。
 小規模マンションについては、耐震化を進めるため、来年度から耐震診断や改修についての補助対象を拡充し、これまで対象としていなかった千平方メートル未満のマンションも助成が受けられるようにしてまいります。
 また、都は、住宅を重点的に供給する地域において、マンション建てかえに当たり、共用部分の工事費等の一部を補助する制度を実施しております。
 今後とも、都はこうした取り組みにより、既存不適格マンションや小規模マンションの改修や建てかえが促進されるよう支援してまいります。

○長橋委員 いわゆる小規模マンション、千平米未満のマンションも助成を受けられるようにしていくというご答弁でございました。こうしたマンションをどう建てかえていくのか、重要な課題でございますので、建てかえの円滑化に取り組んでいただきたいと思います。
 さらには、都心の老朽マンションは、狭い敷地に建てられているものが大変多いわけでございます。周りの小規模なビルが共同で建てかえられる中で、老朽マンションだけが取り残される、こうした光景も間々見受けられます。
 このような事例を見て思うのは、分譲マンションも一体となって取り込むことができれば、マンション自体の建てかえもしやすくなるのではないかと思いますし、まちづくりとしても一体的な土地の有効利用が図られることになるわけであります。
 この点については、視点は違いますけれども、さきに我が党の代表質問において、大街区化への取り組み、これを誘導していくべきだと、このような質問に対して前向きなご答弁をいただいたわけでございまして、東京の都市再生の観点からも、こうしたマンションについても取り組みが必要であろうかと思います。
 そこで、狭い敷地に建てられたマンションの建てかえが進むよう、民間事業者などのまちづくりの中で一体的に行われるよう、誘導策を検討すべきではないでしょうか。見解を求めます。

○河島東京都技監 都内には、建築後相当な年数を経過したマンションが多く存在する地域や、マンションだけでなく商業ビル等も含めて、まち全体が更新時期にある地域なども見られます。
 敷地等に余裕がなく、単独での建てかえが難しいマンションでも、お話のように地域のまちづくりと一体的に建てかえを進めることで、敷地の統合や再編整備等により建てかえが可能になる場合もあると考えております。
 現在、住宅政策審議会において、管理や建てかえなどに関するマンション施策のあり方についてご議論をいただいておりまして、今後、この結果も踏まえ、まちづくりと一体となったマンション建てかえの手法についても検討してまいります。

○長橋委員 今ご答弁に、地域のまちづくりと一体となった建てかえの手法についても検討していくということでございます。これは東京都だけの問題ではないと思いますし、大都市それぞれ抱えている問題でもあろうかと思いますけれども、そうしたことについて、住宅政策審議会でも議論されている。ぜひ先駆的にこうした手法を編み出してといいますか、確立して取り組んでいただきたい。なるべく早い時期に取りまとめていただきたいと思っております。
 次に、中小企業の省エネ対策について質問をしたいと思います。
 都は、国に先駆けて、大規模事業所を対象としたキャップ・アンド・トレード制度を開始いたしました。一方で、中小規模事業者からのCO2の排出量は、業務、産業部門約六割を占めることから、中小企業の省エネ対策、これも大変重要でございます。
 そこで都は、今年度から、先ほどのキャップ・アンド・トレードとあわせて、中小規模事業所省エネ促進・クレジット創出プロジェクトの事業を開始したと、このように聞いております。
 この事業は、中小企業が省エネ診断を受けて、それに基づいて省エネ設備--中小企業の省エネ設備といいますと、多いのはやっぱり空調であるとか照明であろうかと思いますけれども、こうした省エネ設備を導入する場合に、CO2削減量をクレジット化する権利を都に譲渡することを条件に、その経費の一部助成をするものでございます。その助成率は、何と四分の三であるということでございます。中小企業にとっては、CO2の削減とともに光熱水費の削減が見込まれることから、大いにこの事業の活用が期待されるところでございます。
 既に、第一回募集の結果が公表されておりますけれども、交付決定件数がわずかに四十一件だったということでございます。都は、この事業によって、事業所のCO2の削減、経費の削減効果とともに、中小クレジットの創出状況を分析、検証していくというふうにしているわけですけれども、この四十一件では余りにも少ないのではないか、私はそういうふうに思います。
 私もこの事業を活用したい、そうした中小の会社から相談を受けまして、附帯条件が厳しい、また、手続が煩雑である、こうした要望を受けたところでございまして、そこで、こうした要望にこたえて、この事業の条件の緩和、手続の簡素化、これを図るべきであると、このように思いますが、いかがでしょうか。

○大野環境局長 中小クレジットにつきましては、中小規模事業所を対象に、これまで説明会を十二回開催しまして、三千八百名を超える方々に参加をしていただきました。これらの説明会におきまして、基準や手続について説明を行ってまいりまして、あわせてヘルプデスクを開設し、個別相談を行うとともに、要望に応じて無料の省エネ相談を行い、現場での相談にも対応してまいりました。
 この結果、クレジット創出プロジェクトは、第一回は今お話したとおり四十一件でございましたが、第二回の応募では倍以上の九十七件と順調に伸びてきております。
 今後、中小規模事業所からの要望を踏まえまして、対象設備の更新年限に関する要件の緩和について検討していくとともに、現在は毎年必要としておりますCO2削減量の検証手続を、原則として初年度だけで済むよう手続の簡素化を図りまして、中小規模事業所がより取り組みやすい仕組みとしてまいります。

○長橋委員 今、ご答弁で、対象設備に関する更新年限の要件緩和、さらには手続の簡素化も図っていくということでございますので、ぜひとも、二十三年度はこの事業が進むよう取り組んでいただきたいと、このように思います。
 しかしながら、この事業は二十二年度と二十三年度の二カ年だということでございますので、ぜひとも、この事業が中小企業の省エネ対策促進の起爆剤になってもらいたいと思いますし、環境局としてもそういう思いであろうと思うわけでありますが、やはり中小企業が、直接、都にこうした申請をするというのは、かなり敷居が高いわけでございます。
 そうした意味では、中小企業は、常日ごろは地元の区市町村とさまざまな連携を図っているわけでございまして、まずは地元の区市町村との連携、これをどう進めていくかということも、環境局としてはしっかりと支援していくべきだろうと、このように思うわけであります。
 そこで、先日、二月二十五日に環境局が報道にプレス発表した資料がここにございます。これは私の地元で恐縮なんですが、都内初、キャップ・アンド・トレードの都内中小クレジットを活用し、豊島区の中小規模事業者と大規模事業者がCO2削減に向け協力ということで、二月二十四日に協定を締結しましたと、こういう報道がございました。
 私も、地元からこの話は聞いておりまして、やはり中小企業の地球温暖化対策、省エネ対策は地元の区市町村との連携が大変重要であるわけでありまして、先日も、協定を交わした大規模事業所、豊島区にあるんですけれども、その社長とお話をしてきましたけれども、ぜひとも地元に貢献したいと、こういうお話を伺ってまいりました。
 そこで、こうした、豊島区と地元事業者が一体となって削減に取り組む、こういう事業に対して、しっかりと都は支援していくべきだろうと思いますけれども、この事業の仕組みと都の支援の内容、どんなものなのか伺います。

○大野環境局長 この豊島区の新たな仕組みでございますが、中小規模事業所の省エネ対策を支援するために、区が省エネビジネス事業者を公募しまして、そのビジネス事業者が中小規模事業所に対して行う省エネ相談や、中小クレジットに関する手続のサポートに対して助成をするものでございます。
 この仕組みを構築するに当たりまして、都は、排出量取引制度の仕組みでございますとか、中小規模事業所のCO2削減対策に関するノウハウを豊島区に提供するなど、早期からスキームづくりに協力してまいりました。今後、地球温暖化対策推進のための区市町村補助制度を活用しまして、財政面での支援も強化してまいります。
 先般、豊島区内で省エネ対策に積極的な中小規模事務所と大規模事業所が、今回の新たな仕組みの活用に努める旨の協定を豊島区と締結いたしました。これによりまして、今回の仕組みには、CO2削減の効果を、いわば地産地消するような新たな意味合いも加わったものと考えております。

○長橋委員 今、豊島区の取り組みを都もしっかりと支援をしていくというご答弁をいただきましたし、財政面でも支援をしていくということでございます。
 先ほどお話しした大規模事業所、一方では都のキャップ・アンド・トレードにも大規模事業所はかかわってくるわけであります。その大規模事業所は、都のキャップ・アンド・トレードにしっかりと取り組んでいこうということで、これについてもクリアをしたい、しっかりとやっていこう、都のこの制度についてもこたえていきたい、それだけで十分なんですけれども、こうした豊島区の取り組みについてはぜひご協力をしたい、こういうことでございますので、こうした企業はほかの区市町村にも当然あると、このように思うわけであります。
 まさにご答弁にあったCO2削減の地産地消の取り組み、これをもっと進めていくべきでありますけれども、ぜひ、この都内初の先駆的な取り組みである豊島区のスキームを他の区市町村にも広げていくべきだ、このように思いますが、いかがでしょうか。

○大野環境局長 中小規模事業所にとりましては、この仕組みは、顔の見える身近な自治体である区が実施する事業であることに加えまして、クレジット発行手続等のサポートが得られるという点におきまして、省エネ対策に極めて有効な取り組みだと考えております。
 また、地域の実情を熟知している区が、日ごろのネットワークを活用しまして、中小規模事業所だけでなく、大規模事業所にも参加を働きかけたものでありまして、区ならではのきめ細かな取り組みとして、地域における地球温暖化対策推進のモデル事例となるものと思っております。
 都は今後とも、豊島区の仕組みを支援するとともに、その取り組みの成果につきまして他の区市町村へ積極的に発信し、中小規模事業所の地球温暖化対策を効果的に推進してまいります。

○長橋委員 この取り組みは大変重要であろうかと思います。他の区市町村にどう発信をしていくのか。やはり豊島区の事例も紹介するでしょうし、単なるホームページで紹介するというようなことだけではなくて、ぜひ、積極的にさまざまな機会をとらえてアピールしていただきたいし、推進をしていただきたい。ぜひ、他の区市町村に広まることを願って、次の質問に移りたいと思います。
 次に、商店街対策でございます。
 この商店街対策について私の前でもございました。昨年の予算特別委員会、この場で、商店街の街路灯のLED化の支援について取り上げました。二十二年度は、補助対象をランプの交換に限定するのは不十分だ、こういう質問をさせていただきました。
 それを受けて、都は、来年度から環境対応型商店街活性化事業を新規事業として創設をされたと、このように思っております。これにより、LED街路灯を整備する場合には、三分の二の助成が受けられることになったわけであります。
 あわせて、従来の、二十二年度のLEDランプの交換は、これまでどおり、元気を出せ商店街事業の中の特定施策推進型商店街事業に引き継がれますから、LEDランプのみについては五分の四の助成が受けられると。
 こうした対応については評価をしたいと思いますし、新たに横出しした新規の事業は十億円--合わせて八億円あるわけでありますから、さらに商店街の環境対策については大きく前進する。これをしっかりと取り組んでいただきたい、このように思うわけであります。
 さて、商店街対策はこうしたハードの整備だけではなくて、従来からのにぎわい創出のためのさまざまなイベントを商店街は展開しているわけでございます。
 しかしながら、私の地元でよく聞く話は、イベントには多くの人手が必要でございますけれども、中には、小さなお店を経営している方は、店をあけることができない、よってイベントにも参加できない、こういう状況があるわけでございます。
 私の地元豊島区の商店街連合会では、こうした対策として、商店街コンシェルジェというイベント協力員が各商店街の推薦により登録されて、必要に応じてさまざまな商店街イベントに派遣できる仕組みを整えているわけでありまして、イベントなんかのにぎわいに大変大きな効果を発揮しております。こうしたコンシェルジェに対する研修経費、これを支援していくことが重要であろうかと思います。
 また、もう一方で、イベントの集客力を高めていく。これは各商店街でも大変悩んでいるところでありますけれども、それを複数の商店街を巡回する商店街循環バス、この取り組みも検討されているところでございます。
 各商店街の自慢の一品であるとか、自慢の店舗をめぐり、また、商店街にある名所なんかも回りながら、ふだんは地元の商店街に行っているわけでありますけれども、そういう方がなじみのない商店街をめぐることで、地元の商店街の新たな魅力を発見できる取り組みであろうかと思います。
 商店街振興のためには、区内の商店街が連携協力して、地域全体の商店街振興を図ること、これも重要であろうかと思います。そこで、こうした商店街コンシェルジェの研修経費、さらにはイベント期間中の商店街循環バスの活用など、こうした取り組みに対しても、都は積極的に支援していくべきだと思いますが、いかがでしょうか。

○前田産業労働局長 各地域の商店街が集客に向けて協力し合うことは、商店街振興に効果的であります。都はこれまでも、新・元気を出せ商店街事業のイベント活性化事業により、商店街同士が共同して実施するイベント事業に対し支援を行ってまいりました。今年度は、百七十件の事業について、全体で七百を超える商店街がそれぞれの地域で連携してイベントを開催することが見込まれております。
 お話のイベント開催時の要員を商店街が補い合う商店街コンシェルジェについて、商店街連合会が研修を行う場合の実施経費を助成することは可能であると考えております。
 また、イベント期間中に区内の複数の商店街が共同して運行する商店街循環バスにつきましても、買い物客の増加などを図る取り組みであり、地元からの要望があれば対応することは可能と考えております。
 今後とも、意欲あふれる商店街の取り組みを支援することで、商店街の活性化を図ってまいります。

○長橋委員 今、二つの事例をお話ししましたが、こうした取り組みについても助成が可能であると、このような答弁をいただきました。
 昨年、東京都の商店街連合会の方とお話をしました。こうした事例を紹介しましたら、大変な興味を示されておりました。複数の商店街が一緒になってやっていこうと、こうした取り組みについても、ぜひ前向きにしっかりと取り組んでいただきたい、このように思います。
 次に、教育問題について伺いたいと思います。
 小学校一年生の三十五人学級の実施でございます。
 今定例会の本会議代表質問でもこれについて質疑がございましたけれども、現内閣は小学校一年生の三十五人以下学級実施を決め、実施にかかわる予算案と関連法案を国会に提出いたしました。
 国はその中で、少人数指導の加配を一部減らすとしているわけであります。少人数指導こそ、基礎学力の向上に配慮し、きめ細かく指導を行っていくことができる有効な教育方法であろうと、私はこのように思っております。
 平成二十二年の文科省の全国学力調査、学習状況調査では、例えば小学校の算数では、都は知識問題で第六位でございました。活用問題では第四位だったと聞くわけでありまして、少人数指導の効果がここにもあったんだろうと思うわけでありますが、このような効果の高い少人数指導であるにもかかわらず、国は、今の政権は、三十五人学級の実施と引きかえに、都から九十六人もの教師を引きはがそうとしているわけであります。
 我が党は、従来から少人数指導の加配、維持を求めてまいりました。仮に小学校一年生で三十五人学級が実施されたとしても、少人数指導は全学年で展開が可能であり有効であります。
 そこでまず、現時点における少人数指導に対する都の見解と、少人数指導の予算はどうなのか、また、今回削減される九十六人分の人件費はどの程度になるのか、ご答弁いただきたいと思います。

○大原教育長 基礎学力の向上を目指し、きめ細かな指導を行っていくためには、教科等の特性に応じた多様な集団を編制できる少人数指導が大変有効であるとの見解は変わっておりません。
 平成二十三年度予算案においては、少人数指導加配二千二百十八人分、約百九十四億円を計上しております。
 また、お話のあった九十六人に相当する人件費は約八億円でございます。

○長橋委員 はがされる九十六人分の人件費は八億円に相当すると。大変な影響でございます。
 さらには、加配が削減された学校においては、少人数指導の実施が原則として、今のご答弁では見解は変わっていないといっておりますけれども不可能になってしまうわけであります。
 現場は、大変混乱するわけであります。クラスをどう編制していいのか、教師の配置をどうするのか、大変な混乱が起きるわけであります。こうした加配に対する都の対応はしっかりと行っていくべきでありますけれども、いかがか、質問をいたします。

○大原教育長 都教育委員会といたしましては、今後の国の動きを十分注視するとともに、少人数指導を実施している小中学校に混乱を生じさせないよう、区市町村の状況を踏まえ、的確な対応を検討してまいります。

○長橋委員 今ご答弁のとおり、的確な対応をしていくということでございますけれども、国がどうなるのか、今の国会の状況を見ると大変心配であります。さまざまな対応があろうかと思いますけれども、今、教育長に答弁をいただいたとおり、しっかりと対策を、さまざまなシミュレーションのもと検討しているかと思いますけれども、お願いをしたいと思います。
 これまでも、我が党が充実を主張し、都教委が推進してきた少人数指導は、現場からも私の友人の教師からも、同じように高い評価を得てきたところでございます。都は、学校現場に影響を及ぼさないよう、しっかりと対策を講じていただきたいと思います。
 次に、今お話ししたとおり、国の動向は全く不透明でありますけれども、都は、少人数指導の教師も確保しながら、我が党の提案を受けて実施した小一プロブレムや中一ギャップに備えた加配措置については、引き続き実施していくべきだろうと思いますけれども、いかがでしょうか。

○大原教育長 今年度から導入いたしました東京都独自の加配措置である小一問題、中一ギャップの予防、解決のための教員加配については、国の動向いかんにかかわらず、平成二十三年度も引き続き実施してまいります。
 今年度は、小学校第一学年と中学校第一学年について、教員加配の算定基準を一学級三十九人といたしましたが、既定の計画によれば、平成二十三年度は、小学校第一学年と中学校第一学年を三十八人、小学校第二学年を三十九人とすることとなっており、これに従って教員の加配を行ってまいります。
 この加配措置については、平成二十四年度も加配の算定基準を一人ずつ逓減しながら、計画的な展開を進めた上で、事業の総括的な効果検証を行うこととしております。

○長橋委員 今、明確に小一問題、中一ギャップの予防、解決のための教員加配については、国の動向いかんにかかわらず、平成二十三年度も引き続き実施をしていくということでございます。都の取り組みは、検証していくということでございますけれども、間違いなく評価されているわけであります。この加配については、引き続き実施を改めて求めておきたいと思います。
 次に、福祉問題についてお伺いをしたいと思います。
 児童養護施設、皆さんもよくご存じのとおり、さまざまな児童がここに入所しております。そこで、この児童養護施設などに暮らす子どもたちの自立支援について質問をしたいと思います。
 近年、家庭や地域の養育力の低下に相まって、児童の虐待や非行など、子どもたちをめぐる問題が大変に深刻になっております。このような状況で、親が育てられない子どもが生活する児童養護施設は、期間によりますけれども、またそのときによりますけれども、満員の状態であると、このようにも聞いております。
 こうした子どもたちこそ心身の傷をいやし、家庭にかわる温かな養育の場が必要であります。都は、児童養護施設に専門的な児童精神科医の配置、または子どもが愛情にはぐくまれて生活できる養育家庭、いわゆる里親でありますけれども、この充実に進めてまいりましたし、我が党もこの課題については取り上げてきたところでございます。
 ことし初めから、タイガーマスク現象ということで、全国各地の児童養護施設にランドセルなどの寄附が相次いだことが話題になりました。世知辛い世の中にあって、心温まるニュースとして話題になりましたし、私もそういうふうに受けとめたわけでございますが、お伺いをすると、都内でも一月で百二十一件の寄附があったと聞いております。
 多数の方の善意が形であらわれたものだと、このように思うわけでありますけれども、そこでまず、知事にこうしたタイガーマスク現象をどのように受けとめるのか、お伺いをいたします。

○石原知事 ご質問の問題ですけれどね、これは私、日本人の善意というものを信じて一概に喜べる問題じゃないと思いますね。これは一種の、私は社会心理学的な分析をしますと、一つのはね返りだと思います。というのは、今までこういうことがあったわけじゃない、去年、ことしになって急にこういった現象が起きましたね。しかし、それは前提があるんですね。
 それは何かというと、最初、東京で発見されましたけれども、生きていれば百十一歳になるおじいさんを弔いもせずに三十年間ほったらかしにしてその年金を詐取していた。これがわかったら、これを調べたら、あちこちの地方自治体で同じケースが出てきたわけですね。
 私は、こういうことをする人間というのは、日本にしかいないんじゃないかと思いますな。ほかの先進国でも、途上国でも、アフリカの蛮地でも、自分の肉親が死んだら、みんな何らかの弔いをしますよ。しないで、その年金を詐取する。ここまで堕落した民族というのは私は--人間は、民族とはいいませんが、これは日本独特のものだと思いますな。
 私は、そういうものに対する非常に反発といいましょうか、不安感といいましょうか、とにかくそういったものを何とか阻止しなくちゃいけないという、我欲が横暴するこの日本、それがしかも、政治家がそれにこびて政策そのものが曲がっていく。
 この財政危機のときに減税を唱える政党が人気を持って、要するに選挙で勝つなんてばかな現象が起こっているわけですけど、私は、こういったものに対する反発が、タイガーマスクと称する人たちのささやかな善意になって起こってきたので、これは非常にありがたい、いいことだと思いますけど、決して喜ぶべき現象じゃない。
 つまり、誠意はありがたいけど、何でこういうことが起こるかということは、その背景に、さっきの答弁でも申しましたけど、毛沢東ではございませんが、大きな主要矛盾があるわけですね。私たちはやっぱり、それを考えませんと、この問題、この福祉の問題について本当の前進、解決というものができないような気がいたします。まず私たちは、これだけ金銭欲、物欲、性欲も含めて、自分の産んだ子どもを新しい男のためにいびって殺すみたいな親が続発する、こういう国はめったにありませんですね。
 こういったものの反省から、私たちは本当の福祉というものを考えませんと、気の毒な子どもたちは本当に救われないと思います。

○長橋委員 知事から、今ご答弁をいただきました。
 今、この日本のそうした弱者に対するといいますか、これを誤るといいますか、余りにも心がなさ過ぎると、このように思うわけであります。そうした中で、私もランドセルを贈るというのが、どんな思いで贈っているのか、それは一人一人はわかりませんけれども、話題を提供したいというような人も中にはいるのではなかろうか。
 相次いだことは、そういうことだろうと思いますし、そうした意味では、小学校に入学する子どもたちへランドセルをプレゼントする、これはこれで好意としては私はいいと思うんですけれども、実は、本当の課題は何かというと、児童養護施設で暮らす子どもたちの最も大きな課題は、施設退所後の問題であろうかと思うわけであります。
 ほとんどの子どもたちは、施設を退所した後、帰る家庭がないんです。もちろん就労しますから、アパートや社宅や社員寮などで生活して仕事をしていくわけであります。どんな思いで仕事をしているのか。就労先の中では、さまざまな問題に直面しているんだろうと思います。だれに相談すればいいんだろうか。このように思いますと、どんな切ない思いがあるのか。
 私の地元にも、里親をやっている家庭がございました。その子どもたちは、自分の子どもと同じように育てているわけでありますけれども、年齢制限の中で、その行く末を心配しておりました。施設にいる間は、この子どもたちを施設が支援しているわけでありますけれども、高校を出て、場合によっては中卒または高校中退で、社会に出て一人で生活し就労していく、これは大変な困難であります。
 そうした中で、児童養護施設の退所児童などをサポートする施設に、自立援助ホームがあるそうであります。私も不明ながら、昨年、この自立援助ホームがあるということをお伺いしました。
 児童養護施設を退所した後、就労したけれども、そうした子どもたちを本当にサポートしていく施設、子どもたちをもう一度、社会の中で生活していけるように、夢と希望が持てるようにサポートしていこうと、これが自立援助ホームでございます。
 このホームは、全国で七十三施設あるそうでありますけれども、都には十八施設あると聞いております。そこでまず、都の自立援助ホームの取り組みについて伺いたいと思います。

○杉村福祉保健局長 児童養護施設等を退所し、就労自立を目指す子どもを支援するため、都は、国に先駆けまして昭和五十九年に自立援助ホームを制度化し、独自に支援策を講じてまいりました。平成十九年度からは、子どもの資格取得にかかる経費や職員が就労支援を行う経費等への補助を実施いたしております。
 国におきましては、昭和六十三年に補助事業として開始され、平成十年には児童福祉法に位置づけられました。また、都の提案要求を受けまして、平成二十一年度からは国の負担が明確化されたところです。
 都内では、直近六年間に十のホームが増設され、ただいまお話がございましたが、現在、全国の約四分の一を占める十八ホームが設置されております。

○長橋委員 ご答弁いただいたとおり、独自に支援策を講じてきた、その結果、最近六年間で十ホームを増設して、現在、全施設の、国全体の中の四分の一を占めているということでございまして、こうした取り組みについては、高く評価をするところでありますし、ぜひこういう子どもたちの支援は、内在的には東京がやっぱり多いんだろうと思います。取り組みをさらに強めていただきたいと思います。
 ところで、この自立援助ホームでは、中卒や高校中退で一たんは就労した後、改めてもう一度、中卒ではまた高校中退ではということで何としても高校は出ておきたい、そうして定時制高校に通う例もあると聞いております。
 しかしながら、仕事と学校を両立するのは大変でございます。そこで、もう一度高校で勉強したい子どもに対してしっかりと支援していくべきでありますけれども、そこで問題なのが、自立援助ホームが児童福祉法の事業であるために支援は二十までとなっていることであります。
 しかしながら、子どもによっては、二十を超えても支援が必要な場合があるわけであります。そうした子どもにも、二十を過ぎても支援していくべきだ、このように思いますけれどもいかがでしょうか。

○杉村福祉保健局長 都は、子どもが自立した生活を安定して継続できるよう、二十を超え自立援助ホームを退所した後についても、生活相談や就職先への訪問などを実施するホームに対しまして独自の補助を行っております。
 また、高校中退後、再出発を目指す子どもたちへの支援につきましては、平成二十一年度から、再チャレンジホーム事業をモデル実施いたしております。本事業では、児童養護施設に子どもを受け入れ、再度の高校進学等に向け進路指導や学習指導、生活指導等、状況に応じた支援を行っており、今後その検証を行いまして、子どもへのより適切な支援のあり方を検討してまいります。

○長橋委員 現在、若者の就職は厳しい中で、高校をきちんと卒業させる支援は、最低限私は必要であると思います。こうした取り組みが全国に先駆けて積極的に取り組まれている、これは高く評価をしたいと思いますし、また今モデル実施を検証していく、こういうことでございました。しっかりと検証して、こうした子どもこそ行政が手厚く支援をしていく、そして、そういう子どもにも間違いなく可能性があると思います。しっかり取り組んでいただきたい、このように思うわけであります。
 ところで、私は自立援助ホームのこと、余り知らなかった、不明でありますけれどもこうした取り組みがなされている、しっかりと地域の方にもお話をしていきたいと思います。こうした取り組みについて私は評価するんですけれども、共産党は今定例会においても、平成十一年度と平成二十年度を比較して、老人福祉費の割合は全国二位から四十七位、最下位に転落したと私もこの耳で聞きました。都の福祉施策が後退したと相も変わらず主張したわけであります。また、高齢者一人当たりの老人福祉費を取り上げ、激減した、このように批判したわけであります。
 これに対して知事からは、平成二十三年度予算案では一般歳出における福祉保健費は九千八十六億円、福祉と保健の予算の割合も二〇・八%と、いずれも過去最高。知事は、自分たちに都合のいい数値のみを取り上げて批判を繰り返すばかりではなく、福祉施策を論ずるには負担と給付のバランスの議論を避けて通ることはできない、どうかこのことを理解してもらいたいと知事は答弁をされました。
 こうした自分たちの都合のいい数字だけを取り上げて論じることは全く意味がない。私はそのように思いますけれども、また、数字で判断することは、本当に気をつけなければならない、このように思うわけであります。
 それでは、先ほど質問しました自立援助ホームを含めて、児童の自立支援に要する経費が含まれる児童福祉費、それから障害者施策などが含まれる社会福祉費一人当たりの金額が全国で何位なのか。平成十一年度と二十年度のそれぞれについて伺いたいと思います。

○杉村福祉保健局長 都道府県の比較を行うには、お話のように行財政制度や各都道府県の人口、地域特性などを十分に考慮する必要があると考えております。
 児童相談所の設置や障害児施策は、都道府県ではなく市の事務とされております。また、人口規模では、人口六十万人の鳥取県から人口一千三百万人の東京まで、さまざまな違いがございます。
 こうしたことを踏まえた上で、あえて単純な一人当たりの決算額でお答えしますと、都の児童福祉費の十九歳以下人口一人当たりの決算額は、平成十一年度は六万九千円で全国三位、平成二十年度は八万一千円で全国二位となっております。
 また、社会福祉費の住民一人当たりの決算額は、平成十一年度が一万四千円で全国二位、平成二十年度は二万四千円で全国一位となっております。

○ともとし副委員長 長橋桂一委員の発言は終わりました。(拍手)

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