予算特別委員会速記録第五号

○山下委員長 ただいまから予算特別委員会を開会いたします。
 これより付託議案の審査を行います。
 第一号議案から第二十八号議案までを一括して議題といたします。
 この際、部局別質疑について申し上げます。
 去る二月二十五日に議長を通じ各常任委員長に依頼してありました部局別質疑につきましては、お手元配布のとおり報告がありました。ご了承願います。
 これより締めくくり総括質疑を行います。
 順次発言を許します。
 増子博樹理事の発言を許します。

○増子委員 都議会民主党の締めくくり総括質疑を行います。
 まず初めに、東京の自治について伺います。
 国は、この夏にも首都移転問題の担当課を廃止する予定です。これまで首都移転に対しては、都議会と都、区市町村、七県市などが連携して断固反対の活動を行ってまいりましたが、いよいよ最終決着となったと思っております。
 東京は、国の統治機関や外国機関、経済の中枢機能、教育、文化施設などが集積し、日本、そしてアジアを代表する都市として発展してきました。国も首都圏を東京都の区域及び政令で定める周辺地域を一体とした広域とも定めており、その役割を認識してきたものと考えております。
 政権交代後は、国の経済政策の方向性を具体的に示した昨年六月の新成長戦略においても、我が国の成長の牽引役としての東京などの大都市の役割をより重視しています。
 一方、都制度は、戦中の府市合併に基づき、帝都の行政体制として定められましたが、戦後の地方自治法によって広域的自治体に位置づけられていった歴史的、沿革的な背景を持っています。
 最近は、大阪や名古屋から都構想が、新潟では州構想が提起されていますが、それぞれの大都市、そして地域のあり方を、府県と市がともに見詰め直し、議論を深めていくことは重要と考えております。
 東京は、首都そして大都市、広域的自治体の三つの姿を持ち、国と直結するとともに、その関与は他の地域と比べてより強くなっています。日本における首都東京のあり方について、知事の所見を伺います。

○石原知事 今日の東京は、過去の豊穰な歴史や文化の堆積の上に、先進的な技術、多彩な人材など、日本のいろんな力が集中、集積しております。また、人口も千三百万人、そして昼間人口は、東京で働き東京を機能させるための方々が近隣からたくさん来られて、三百万人が昼間人口として増加し、これを支えるインフラも、まだ未完な部分はございますが、一応整然と機能していると思います。
 国家にも匹敵し、世界に比類のない巨大都市東京は、まさに日本の頭脳、心臓でありまして、この国の行く末を左右するものだと思います。
 それゆえにも、東京に先鋭的にあらわれる我が国の危機に対しては、議会と協力しながら果敢に、過去にも挑み、日本の新しい発展につながる取り組みを重ねてきたつもりであります。
 九都県市とも連携して、典型的な広域行政として、ディーゼル車の排気ガスの規制、あるいは羽田や環状道路など国家的インフラの整備を進め、官のむだを徹底して省くための公会計制度改革や、地球温暖化対策を全国に波及させるべく取り組んでまいりました。少子高齢化という日本の未来に直結する問題に、区市町村とも協力し、先進的な施策を進めております。
 国政がいささか混迷している今こそ、現場で鍛え磨いた発想やノウハウで、活路を切り開いていかなければならないと思っております。今後の我が国の羅針盤ともなる気概で、首都東京から、二十一世紀にふさわしい成熟した社会の姿を体現していく必要があると思っております。

○増子委員 活力があって、しかも暮らしやすい、そういう首都東京を目指していかなければならないのだというふうに思っております。
 東京は、人口や各種機能が複合的に集中、集積する首都として発展してきました。日ごろ知事は、東京を成熟を遂げた都市へと進化させ、世界の範とさせると意気込みを語っておられます。
 平成十八年、都は、ロンドン・オリンピック招致を成功させたイギリスの首都ロンドンと初めて都市政策協定を結び、大都市に共通する課題解決に向け、六つの分野で緊密な協議を行うことといたしました。私たちは、アジアの首都との連携、アジア大都市ネットワークにおける各事業も含め、その取り組みともたらされる成果に期待をしてまいりました。
 それでは、都は、同じく各種機能が集積、集中する首都ロンドンと何を協議し、それらの成果を東京の政策にどのように反映をさせてきたのでしょうか。所見を伺います。

○秋山知事本局長 ロンドンとの政策協定は、両都市が直面する大都市特有の共通課題に対しまして、共同してその解決を目指したものでございまして、都市再生、交通政策、環境問題、治安対策、スポーツ振興と観光振興、それから文化交流の計六つの分野につきまして協定を結び、種々の課題解決に向けた取り組みを行ってきたところでございます。
 その成果の一例を挙げますと、都は環境問題の分野で、政策協定をした同じ年、東京の環境施策に期待を持つロンドン市長からの呼びかけにこたえ、世界大都市気候先導グループ、いわゆるC40に運営委員会のメンバーとして参加し、世界の大都市とともに地球温暖化対策への取り組みを開始いたしました。
 その後、都では、C40の活動を実際に具体的な成果につなげていくという観点から、専門家や実務者を集めたC40気候変動東京会議を提案、開催し、現場に根差した施策を具体化するための十三の共同行動について参加都市の合意を得るなど、政策協定をきっかけとした取り組みが着実に成果を上げてきております。
 また治安対策では、ロンドンにおける官民連携の防犯システムを参考に、行政と民間事業者、地元住民等が連携してパトロールや訓練、テロ情報ネットワークの構築に取り組むテロ対策東京パートナーシップ事業を都内全域で展開しておりまして、昨年のAPEC開催に伴う都内警備体制の一翼を担うこととなったものでございます。
 さらに文化交流では、ロンドン芸術大学の若手クリエーターを交えたワークショップを東京で開催し、また、東京とロンドンの若手アーチストを相互に派遣することなどによりまして、文化の相互理解を深めてきたところでございます。

○増子委員 ロンドンが掲げますソーシャルインクルージョンのように、都民生活を守っていこうという、東京の社会的包容力を高めるような取り組みをぜひ進めていただきたいと思っております。
 今月、超党派の国会議員らが道州制懇話会を立ち上げる予定となっているなど、国主導による道州制導入への動きが出てきています。一方、地域のことは地域が考えるべきと、全国で広域行政を推進する取り組みが始まるとともに、首都圏連合などの構想が提起されています。
 昨年十二月、国が出先機関の原則廃止に向けたアクションプランを決定する一方で、同月、関西、中国、四国地方の七府県が関西広域連合を発足させ、七つの分野の広域事務に取り組み始めました。九州七県では、国の出先機関を丸ごと受け入れるとの意欲を示し、仮称九州広域行政機構の設置を検討しています。長野や静岡、山梨を含めた十都県の関東地方知事会も、全国知事会におけるプロジェクトチームの議論を出発点とし、国の出先機関の廃止に向けた広域連携のための協議会を設置、議論を始めました。
 都は、かつて首都圏メガロポリス構想を策定し、九都県市首脳会議においても、環境や廃棄物、地震防災対策など、首都圏の広域的、あるいは大都市共通の行政課題にも取り組んできました。都は、将来を展望し、分権を積極的に受け入れていくべきと考えるのですが、関東地方発の東京、首都圏を超えた広域行政の取り組みをどのように進展させようと考えているのでしょうか。所見を伺います。

○秋山知事本局長 交通機関や通信手段の発展などによりまして、生活圏や経済圏が拡大し、交通、環境、防災などの行政課題について広域的な対応が必要となってきておりますが、都ではこれまで、首都圏の具体的な広域的行政課題を解決するため、九都県市の連携によりまして、ディーゼル車排出ガス規制を初め、災害時の相互応援協定の締結や、京浜港全体の国際競争力の強化などに成果を上げてきたところでございます。
 さらに、新しい公会計制度を全国に発信しながら、導入に意欲的な自治体を支援するとともに、都のキャップ・アンド・トレード制度の全国展開に向けて、地球温暖化対策全国自治体会議を開催するなど、首都圏の枠組みを超えた連携も行ってきております。
 今後とも、都は、こうした具体的課題に応じた実質的な広域行政を積極的に展開してまいります。

○増子委員 地域が主体的に行動していくように、広域連携を積極的に進めていただきたいと考えております。
 東京をめぐる地方自治制度改革について検討してきた東京自治制度懇談会は、大都市制度や道州制における広域的自治体のあり方とともに、東京における大都市制度のあり方について議論をまとめました。都は、これらの議論を、区市町村との分権、そして住民自治の推進の議論に生かしてきました。これらの取り組みは、東京の地域主権の推進に大きな意義があると考えます。
 地方の行政形態を二層制と考え、分権を進める上で、東京にある地方公共団体の組合、一部事務組合三十二団体や広域連合一団体についても考える必要があります。清掃工場やし尿処理場、火葬場、病院などの設置管理運営、競馬や競艇などの収益事業、職員の人事及び厚生に関する事務などの幅広い種類の共同処理事業を行う、区市町村とは別団体で議会もある特別地方公共団体について、どのような議論をしてきたのでしょうか。住民サービスの受益と負担、また住民自治の観点からも含めて、一部事務組合を自治制度の中でどう位置づけてきたのか、伺います。

○秋山知事本局長 一部事務組合は、普通地方公共団体がその事務の一部を共同して処理するために設ける特別地方公共団体でありまして、これまで区市町村を中心に活用されてまいりました。
 しかし、お話にございました東京自治制度懇談会などにおいても指摘されておりますように、一部事務組合には、構成団体間の調整に時間を要し、迅速な意思決定が難しくなる傾向があることや、構成団体とは別の団体を設けることなどから、効率的な行政の観点からも課題があるものとされております。
 なお、国におきましては、組織の簡素化を図るため、一部事務組合に議会を置くことにかえまして、構成団体の議会がその役割を果たす制度について検討されていることから、今後とも都としてその動向を注視してまいります。

○増子委員 今、組織の簡素化というお話がございましたけれども、都民から見える形というのをぜひ目指していただければ結構だなと思っております。
 国における地域主権改革一括法案の成立を見据え、一月、都は、都内六十二区市町村を対象に、四車線以上の市町村道や十ヘクタール以上の公園緑地などの都市計画決定、社会福祉法人の定款認可などの権限移譲に関する説明会を開催しました。また、都と特別区は、都区のあり方検討委員会において、事務移管と配分の検討対象とされた四百四十四項目の評価整理を終え、今後の運営方針を協議しています。
 私は、都が基礎的自治体の人口と移譲すべき事務との関係、そして、結果、住民満足度がどう高まるのかといった相関関係についても検討していくべきではないかと考えております。都は、区市町村への分権や都区制度改革にさらに取り組み、東京の自治確立に努めていかなければなりませんが、これら改革の目的は、住民サービスの向上による都民満足度を高めることにあります。都民の立場に立った分権や都区制度改革が一層求められていると考えますが、都の所見を伺います。

○比留間総務局長 都から区市町村への分権に当たりましては、住民ニーズに的確にこたえ、地域の実情に応じた行政運営を実現することが重要でございます。
 このため、都は、区市町村と協議を行いながら、建築確認事務や騒音規制に関する事務など住民に身近な事務、権限を移譲してきました。また、いわゆる地域主権推進一括法の成立により予定されている権限移譲を円滑に進めるため、都は区市町村に対して、人材育成や業務に関する技術的助言など、必要な支援を行ってまいります。
 都区制度改革では、本年一月、都区のあり方検討委員会幹事会で、四百四十四の事務事業について、大都市の一体性を確保しつつ住民サービスをより充実させていく視点から整理を行いました。同委員会の検討課題が、事務配分、特別区の区域のあり方、税財政制度であることを踏まえ、これからの進め方などについて区と真摯に協議をしてまいります。
 今後とも、都民の立場に立った住民サービスの一層の向上と東京のさらなる発展に向けて、分権の推進に努めてまいります。

○増子委員 制度改革の議論というのは、ともすると行政サービスの受け手である住民が置き去りになってしまうというようなことがよくあります。住民が何を求めているのか、改革によって住民に何がもたらされるのかなど、都と特別区がよく把握に努めながら、改革の議論を進めていただきたいと思います。
 次に、新しい公共について伺います。
 新しい公共という考え方が提唱され、国においてもその取り組みは始まっています。
 新しい公共型社会とは、公共を担うのは専ら官であるという考え方から脱却し、日本に古くからあった支え合いの仕組みに加え、新たな社会を支え合う仕組みをつくり上げることです。具体的には、個人の自由な意思に基づいて公的な活動をするさまざまな団体、あるいは営利企業であっても公的、社会的な活動をする場合、これらが新しい公共の担い手になり得るということです。
 こうした担い手にはさまざまな団体があり、医療、福祉、教育、子育て、まちづくり等の身近な分野での活動が期待されています。
 また、新しい公共の担い手は、新たな公共サービスを創造する側面も持っています。福祉の分野では、その社会化が急激に進み、官では対応し切れない、しかしニーズとしては大きな部分を民間が事業化し、大きな流れをつくり、社会的に認知される、それを官が制度化するという現象が起こっています。子育てやまちづくり等の分野では、公共的、社会的な取り組みを政策提言するNPO等もあらわれています。こうした団体は、これまでの行政の下請け的な存在から、仕事のパートナーという位置づけで行政側もとらえていかなければなりません。
 一方、これらの団体は、これまでその資金確保等の問題で十分な活動ができないという問題も抱えています。こうした中、国では、新しい公共の基盤を支える制度整備を進めています。その一つとして、市民公益税制があります。寄附の促進を図ることを目的に、寄附金税額控除が導入されます。
 そこで、初めに、新しい公共型社会の主な担い手となるNPO法人と国や地方公共団体とのかかわりについて伺います。
 政府の市民公益税制案の中に、認定NPO法人の認定事務を国税庁から都道府県に移管するといったことが盛り込まれています。現在の都の権限として、NPO法人の認証があるようですが、認定と認証は何が違うかなど、NPO法人に関する制度は複雑です。
 そこで、整理するために、認証の権限などを初めとした、NPO法人に対する都や国のかかわりが現在どのようになっているのか、伺います。

○並木生活文化局長 まず認証とは、ボランティア活動を初めとする特定非営利活動を行う非営利団体が、NPO法に定められた基準に適合する場合に、その団体に対して法人格を付与するものでございます。
 これに対し認定とは、認証を受けたNPO法人が租税特別措置法に定められた要件を満たすことを認定し、寄附金控除等の税制上の優遇を受けられるようにするものでございます。
 都は、都内のみに事務所を置く非営利団体の認証に係る事務を行っており、約七千のNPO法人を所管しております。一方、国は、二以上の都道府県に事務所を置く非営利団体の認証と、すべてのNPO法人の認定にかかわる事務を行っており、現在認定されているNPO法人は全国で約百九十、このうち都が認証しているNPO法人は約七十でございます。

○増子委員 税制上の優遇措置を受けられる認定NPO法人の認定要件の一つに、経常収入金額に占める寄附金等収入金額の割合を示すパブリックサポートテスト、いわゆるPST要件がありますが、これに絶対値基準による判定方式が導入されることで要件に達しやすくなります。また、地方公共団体が、その域内に事務所を有するNPO法人のうち、条例において個別に指定したものはPST要件の免除等をするという案が検討されています。
 現段階で、独自に個別指定し、PST要件の免除等ができることに対して、都はどのような見解をお持ちか、伺います。
 また、この法案が通った場合、独自に個別指定する基準が必要かと思われますが、どのような対応が必要か、現段階での見解を伺います。

○並木生活文化局長 今回の制度改正に関して、草の根の寄附を推進し、市民活動の担い手であるNPO法人を税制面から支援するという理念には賛同するものでございます。
 また、個別指定することによりPST要件が免除されることにつきましては、認定NPO法人をふやすための一つの方策として認識しております。
 しかしながら、条例による個別指定には、事務所が複数の都道府県にあるNPO法人について、一つの自治体が個別指定をすると、他の自治体の認定の際にPST要件が自動的に免除されてしまうなど、制度的欠陥があり、全国知事会においても再考を求めております。
 条例による個別指定につきましては、改正法案の成立後制定される関係政令等の内容を精査し、他の道府県の動向等も勘案しながら、今後、その基準等を検討してまいります。

○増子委員 認定NPO法人の認定事務を国税庁から都道府県に移管し、要件も緩和するとした政府の制度改革法案に、東京都が異議を唱えていると新聞報道で取り上げられておりました。どのような点が問題と考えておられるのか、伺います。

○並木生活文化局長 現在、全国知事会に対して示されている法律案の骨子には、認定NPO法人に対する都道府県の立入調査権や報告徴収権、会計に対する税理士等の関与の義務づけ、国税庁からの滞納情報等の提供など、認定NPO法人の適切な監督指導に必要な事項が盛り込まれておりません。
 また、認定事務の移管に当たって発生する大量の事務に対して、必要となる交付金等の財政措置が明確に示されていないことや、先ほどお話ししたとおり、条例による個別指定に制度的欠陥があるなど、さまざまな問題が存在しております。
 これらの問題につきましては、昨年十二月に猪瀬副知事が全国知事会議において問題提起をし、これまで二回にわたって審議されてきました。他の自治体におきましても課題と認識しており、全国知事会とともに、国に対してこれらの課題の解決を求めてまいります。

○増子委員 新聞報道によりますと、自治体には不正を見抜く国税庁のようなノウハウも情報もなく、事件を起こすような悪質なNPOまで認定してしまうというおそれがあるとのことですが、例えば活動報告等のチェックなど、認定後の動向のチェックを徹底していくことで防げるのではないかと思います。目的は、できる限り多くのNPO団体に認定のチャンスを与えることができるということです。手間はふえるかもしれませんが、その目的達成のためにどうすべきかを考える方が得策なのではないかと思いますが、見解を伺います。

○並木生活文化局長 認定NPO法人に対して適切な事後チェックを行うためには、国税庁の所有する権限やノウハウ等が必要でございますが、法律案の骨子にはその点が明示されておりません。
 また、国税庁におきましては、現在でも約百九十の認定NPO法人に対し、一定の人員を配置して事務処理等を行っていると聞いております。今回の制度改正によりまして、仮に、現在都が認証しています約七千のNPO法人のうち、一割が新たに認定されるとしても、非常に大きな事務量が発生するため、これに対応することは、組織にとっても大変な負担となります。
 NPO法人の活動を支援し、その活性化を図ることは重要な課題であり、こうした問題点を含め、都道府県が適切にその権限を行使できるような制度の構築を国に求めてまいります。

○増子委員 PST要件を満たさなくても仮認定を受けられる制度の導入について、認定基準が緩和されることで、これまでハードルが高くて認定を受けられなかった団体も認定対象になりやすくなります。
 NPO団体からは、設立する際に、東京都は他府県に比べ認証が厳しいのではないかという話を耳にすることがあります。仮にそうだとすれば、都の現行の取り組みとは逆行するということになりますが、仮認定の仕組みについて、どのような見解をお持ちか伺います。

○並木生活文化局長 都の認証事務が他の道府県に比べて厳しいとのことでございますが、都におきましては、認証の申請件数そのものが多く、不認証の件数もかなり多くなっております。都では、法の基準にのっとって適正に認証事務を行っており、他の道府県と相違はないと考えてございます。
 また、仮認定制度につきましては、認定要件の緩和により、より多くの法人が認定を受けられる反面、寄附金税額控除を悪用される懸念などもあり、制度創設に当たってはこれらの課題を解決できるよう、全国知事会とともに国に働きかけております。

○増子委員 NPO法人への寄附金についてですが、個人住民税の寄附金税額控除において、都道府県や市区町村が条例で指定したNPO法人への寄附金を個人住民税の寄附金税額控除の対象とすることや、控除対象寄附金の適用下限額の引き下げが検討されています。
 都内の寄附が活性化するために、都として積極的に寄附控除を行っていくべきと考えますが、都民税における寄附控除についてどのような見解をお持ちか伺います。

○荒川主税局長 個人都民税における寄附控除の対象となるNPO法人を条例によって新たに指定する場合には、既に現行制度で控除の対象となっている法人との公平性に配慮しまして、例えば、NPO法人の事業活動内容の適正さ、控除を行うにふさわしい公益性の存在等を確認することが必要でございます。
 このような前提はございますが、NPO法人に対する寄附控除の拡大は、地域社会における寄附文化の醸成やNPO法人の支援育成につながるものでございます。
 現在、この新たな制度について具体的な検討が進められておりますけれども、その動向を踏まえながら、関係局とも連携を図り、NPO法人の活動を税制面から支援してまいります。

○増子委員 さきの代表質問で、寄附金募集の広報に関しては、新しい公共支援事業基金を利用した多様な媒体による広報を検討するとお聞きしました。寄附すればどうなるのか、これだけ税の控除があり、そしてこんなすばらしい社会が実現する、または行政のコスト削減になるといった、都民が想像しやすい有効な広報が実現していくことを期待します。
 個人住民税の寄附控除が拡大することになった場合には、都民がその情報を知らなければ効果が出ないのは当然のことですが、都民税の控除に関する広報において、都はどのように対応を行っていくのか、所見を伺います。

○荒川主税局長 現行制度に基づく寄附金の税額控除については、既に主税局のホームページや広報誌などによりまして、制度の概要や手続をお知らせしております。
 今後、新たに条例指定のNPO法人への寄附控除が実施されることになった場合は、新しい制度の趣旨や控除の仕組みなどにつきまして、個人都民税の窓口となっております区市町村等と連携して、都民に対し十分に広報を行ってまいります。

○増子委員 次に、NPO団体等による政策提言と協働型評価のルールについて伺います。
 行政の下請や依存型ではない自立したNPO団体が、新しい公共型社会では目指されています。そのためには、NPO団体等が行政や都民に対し、政策提言を積極的に上げられるような仕組みも必要と考えます。現に、新しい公共をつくる市民キャビネットといわれる団体組織が昨年一月に結成され、子ども部会、環境部会、金融部会など、幾つかの部会に分かれ、政府に対し政策提言を行っている例があります。また、岩手県では、公と私の中間的な役割を担うNPO等の民間組織が、県の施策に対し、行政とともに多面的、補完的に協働して評価を行い、政策形成を行って、県民協働型評価結果の施策への反映状況報告書としてまとめています。
 このように、都においても、NPO団体などがただ行政の下請を行うのではなく、都全体の政策を決定するセクションに対し、NPO団体などの独自の視点からの政策提言を行える機会を設け、よりよい政策を実現していくことを検討すべきと考えますが、所見を伺います。

○秋山知事本局長 これからの都政の展開に当たりましては、行政がその責任を確実に果たしますとともに、都民、企業を初め、さらにはNPO法人など、東京に集積する多様な主体と協働して、ネットワークを広げながら一体となって取り組みを進めていくことが重要であるというふうに考えております。
 そのような中にありまして、NPO法人は設立が比較的容易で、原則として入会制限も設けないなどの特質がございますが、そのことが長所短所両面を形成しているものというふうにも考えております。
 今後とも、施策の形成に当たりましては、NPO法人に限らず、都政にかかわりを持つ多くの方々から幅広く意見を伺いながら進めてまいります。

○増子委員 新しい公共型社会の理念に関しては都も賛同していると。先ほどもお話がございましたけれども、新しいことを始めるには、当然のことながらさまざまな課題が出てまいります。もちろん我々も協力をさせていただかなければならないと思いますが、一つ一つ着実に課題解決を行っていただくことをお願いするとともに、新しい公共型社会の実現に向け、都の横断的な取り組みを期待させていただきたいと思います。
 次に、景観行政について伺います。
 平成十八年十月の東京都景観条例の改正により、翌年四月から、大規模建築物等の建築等に係る事前協議制度が運用されています。
 この制度は、特定街区や総合設計など、都市開発諸制度を適用する建築物が大規模で周辺の景観に与える影響が大きいことから、事業化にあわせて、統一感のある街区の形成、歴史的建造物の保存や再生、公開空地や緑地の整備など、良好な景観を形成するよう、計画を適切に誘導することを目的としてつくられたものです。
 そこでまず、制度の開始から間もなく四年が経過しようとしていますが、この事前協議制度のこれまでの運用状況について、事前協議が不調に終わった例があるのかないのかについても含めて、お伺いいたします。

○河島東京都技監 都は、景観条例に基づく独自の仕組みとして、都市開発諸制度等を適用する大規模建築物等の建築計画につきまして、事前協議を行う制度を設けております。これは、都市計画等の手続を行う前の早い段階から、事業者と景観に関する協議を行い、まち並みと調和した質の高い計画への誘導を図るものでございます。
 平成十九年四月に本制度の運用を開始してから昨年末までの三年九カ月間の協議件数は、全部で百五十三件でございます。
 この事前協議において、都は建築計画への反映が容易となるよう、構想段階から景観形成の方針等を示し、事業者も良好な景観の実現に向けて積極的に対応していただいていることから、これまで不調となった事例はございません。
 今後もこの制度の運用を通じて、良好な景観形成を図ってまいります。

○増子委員 このような大規模建築物等の建築等に係る事前協議制度など、景観条例に基づく取り組みのほかに、都は良好な景観形成を図るため、地域の意欲や創意工夫を生かしながら、魅力あるまち並み景観を一体的に形成することを目的として、東京のしゃれた街並みづくり推進条例に基づく街並み景観づくり制度を運用しています。
 この制度は、東京都が指定した街並み景観重点地区を対象に、地域のまちづくり団体が、その地区における建物の配置やデザインなどを定めた街並み景観ガイドラインを作成し、そのガイドラインに沿った景観づくりを地元まちづくり団体にゆだねることによって、地域の自主的な景観づくりを促進するものであります。
 この街並み景観づくり制度は平成十五年十月から施行されており、運用開始から七年余りが経過しているわけですが、現在までの運用状況と成果について伺います。

○河島東京都技監 お話のように、都は、歴史的、文化的な特徴を継承している地区などにおいて、地域が主体となった景観づくりを推進するため、東京のしゃれた街並みづくり推進条例に基づく街並み景観づくり制度を活用し、個性豊かで魅力ある景観の形成を図ってまいりました。
 これまで本制度に基づく街並み景観重点地区に指定した十地区のうち、葛飾区柴又帝釈天周辺地区、板橋区常盤台一・二丁目地区、港区の汐留西地区及び赤坂九丁目地区の四地区においては、現在、地域で活動するまちづくり団体がみずからの手で定めた街並み景観ガイドラインを自主的に運用することにより、地域の景観づくりに取り組んでおります。
 例えば、汐留西地区においては、地元地権者を中心とするまちづくり団体が、イタリアのまち並みの雰囲気を醸し出すような外壁のデザインなどをガイドラインとして定め、魅力的なまち並み景観の形成を目指しております。
 また、これら四地区のうち、柴又帝釈天周辺地区については、今年度、都市景観大賞の美しいまちなみ特別賞を受賞するなど、本制度による取り組みは着実に成果を上げております。

○増子委員 さて、東京都は、歴史的なまち並み景観の形成を図る新たな取り組みとして、昨年七月、財団法人東京都防災・建築まちづくりセンターに設立された東京歴史まちづくりファンドに対して五千万円を資金拠出するとともに、このファンドを通じて、都選定歴史的建造物の保存や修復を支援していくことになりました。
 この東京歴史まちづくりファンドでは、総額二億円を目指して都民や企業の皆様から寄附を募っているわけですが、集まった寄附金は、現在どのような状況になっているのか伺います。

○河島東京都技監 都選定歴史的建造物は、東京の歴史や文化を今日に伝え、まち並みを形成する都民共有の貴重な景観資源であるため、社会全体で建造物の保存や修復を支援することが重要でございます。
 このため、今年度創設した東京歴史まちづくりファンドでは、都などからの資金だけではなく、都民や企業からの寄附金についても財源とする仕組みといたしました。
 こうした考え方を踏まえ、ファンドを紹介するリーフレットの配布やホームページへの掲載などにより、ファンドの趣旨を周知するとともに、まちづくり等に係る講演会など、多様な機会をとらえて募金への働きかけを行うことにより、今日までに五百万円を超える寄附をいただいております。
 ファンドの総額としては十年間で二億円を目指しており、そのうち一億円を寄附金で賄う予定であることから、これまでの取り組みに加えて、助成を受けた建造物の保存や修復の事例を広く紹介することなどにより、都民や企業からさらに一層の賛同が得られるよう努めてまいります。都議会の皆様にもぜひご協力を賜りますよう、よろしくお願いいたします。

○増子委員 このファンドでは、民間所有の都選定歴史的建造物の保存に必要な修繕や補修に係る経費の一部を、助成対象経費の二分の一以内、かつ一件当たり一千万円以内という内容で、建造物の所有者に対して助成することになっています。
 ファンド設立からまだ半年余りしかたっていないのですが、ファンドによる助成金の交付に係る実績と今後の取り組みについて伺います。

○河島東京都技監 ファンドにおける助成事業の実施に当たりましては、都選定歴史的建造物の保存の必要性だけではなく、歴史的建造物を活用したまちづくりなど、地域への貢献度合いについても評価を行い、助成する建造物を決定しております。
 今年度は既に、江戸の食文化を現代に伝える千代田区神田のいせ源や、葛飾区の柴又帝釈天題経寺大客殿など四件の建造物に対して、外壁や屋根の補修などに要する費用について助成を行うことといたしました。
 来年度以降も、地域のまちづくりや観光施策との連携を図りながら、ファンドによる助成事業を実施することにより、歴史や風格を感じることのできる魅力ある東京の実現に取り組んでまいります。

○増子委員 まだ始まったばかりの取り組みですので、ぜひもっと周知を図って皆さんに活用していただけるように頑張っていただきたいと思います。
 次に、この四月三日で石づくり二連アーチになって架橋百周年を迎える日本橋再生について伺います。
 日本橋の保存やその周辺のまちづくり、景観に関する論議は、昭和四十年代半ばあたりから行われていると聞いております。平成十五年には、日本橋みちと景観を考える懇談会が学識経験者、地元代表により組織され、首都高の移設や地下化を含む、日本橋周辺の景観形成に関して総合的に議論されていたように記憶しています。
 一方、平成十七年十二月、四名の委員から成る有識者会議、日本橋川に空を取り戻す会、通称日本橋みち会議が発足しました。日本橋地域における首都高の撤去、移設、地下化等について議論が行われ、平成十八年九月に、総理大臣あてに、日本橋地域から始まる新たなまちづくりについてと題する提言が出されております。
 提言の内容は、民間主導によるまちづくりを先導する、まちづくりによる首都高移設費用を低減する、最終的に首都高を地下などに移設、再構築することにより日本橋川の再生を図るなどといった内容であったと認識いたしております。
 そこでまず、この有識者会議の提言の後、日本橋再生をめぐり地元でどのような動きがあったのか、また提言の中の首都高速の地下化についての所見を伺います。

○河島東京都技監 有識者会議による提言後の動きにつきましては、まず地元中央区が事務局となって、まちづくり団体や町会代表者などによる日本橋再生推進協議会が立ち上げられ、水辺の再生を主な議題として、本年二月までに十回の協議会を開催したと聞いております。
 また、国が事務局となり、都や区なども参加して、日本橋再生に向けた事業手法等を検討するため、容積移転型都市再生事業研究会が立ち上げられ、制度上の課題整理や地元の意見調整などを行っておりましたが、平成二十年十二月の第四回以降、開催されていない状況でございます。
 提言の中にあります首都高速道路の地下化についてでございますが、都としては、東京の最大の弱点である渋滞を解消するため、現時点では何よりも三環状道路の整備が先決であると考えております。
 美しい都市空間の創出は、これからの都市づくりに当たって極めて重要でありますが、日本橋を再生するため、首都高速道路を地下化することにつきましては、事業費や事業手法など、さまざまな課題があると認識しております。

○増子委員 有識者会議の検討の中では、私の認識するところでは、都心環状線の撤去案について、三環状道路のうち中央環状線だけが完成した後の廃止しか検討していないと思います。
 また、さきの平成十五年からの懇談会での議論も、国土交通省に設置された学識経験者による委員会が、平成十四年三月に都心環状線の撤去はあり得ないと結論づけた、東京都心における首都高速道路のあり方についての提言の内容を前提として行われていますが、その提言内容は、同じく中央環状線だけが完成した後の廃止を検討したものであります。
 しかし、都が進める三環状道路の整備が進めば、都心部の渋滞解消が図られるということですから、これは「十年後の東京」の中でも示されているところでございます。もしそうであれば、三環状道路の完成によって都心部の交通に余裕ができた暁には、さまざまな手法を組み合わせて都心環状線そのものを撤去することも可能ではないかと考えます。
 ちなみに、既にご存じの方もおられるのではないかと思いますが、元東京都技監を含む都の技術系職員OBの方々が立ち上げたNPOが独自に調査検討を行い、その結果、三環状道路の完成と交通需要マネジメント、いわゆるTDMの実施などを前提として、都心環状線を日本橋付近の上空からだけ取り除くのではなく、将来的に全廃してはどうかという提案を、平成十八年三月に都心環状線のあり方についての提言として行っており、なるほどと共感する部分もございます。
 この提案時期は、日本橋みち会議、有識者会議の議論がスタートして間もなくのことだったわけですが、この提案についてご存じのことと思いますので、その内容をお伺いいたしたいと思います。

○河島東京都技監 お話のとおり、都心環状線のあり方という提言は、平成十八年三月に、東京都のOBから成るNPO道づくり・川づくり・街づくり研究会が行ったものでございます。
 その内容は、三環状道路の完成を前提に都心環状線を廃止すること、中央環状線以内の放射線はおおむね環状三号線付近までのロングランプとして存置すること、中央環状線の内側で、ロードプライシングによる交通需要管理を実施すること、都心環状線廃止後の空間を水の都再生のために活用することなどでございます。

○増子委員 私も読ませていただきましたけれども、NPOの提言では、都心環状線を撤去すべきとする根拠が三つ挙げられています。
 一つは、都心環状線の交通量が中央環状線などの完成後著しく減少すること、また、都心環状線は、もともと高速道路網構成の観点から、世界の都市の中でも異例の存在であるということ。
 二つ目は、都心環状線を存続させるためには、その供用年数、老朽化の状況から、近い将来再構築する必要があるが、再構築に際しては、用地の選定や財源の確保、都市景観との調和など、解決すべき難問が山積していること。
 そして三つ目は、東京圏における高速道路への投資は、三環状の建設など、おくれている既定高速道路網計画の早期完成や、首都高七号小松川線と中央環状線との接続など、不完全な既存高速道路網の改善強化のために集中すべきであるということになっています。
 私も、このような中央環状線だけでなく、外環道や圏央道も含めた三環状完成後の撤去案は、道路投資、道路行政、都市景観、あるいはまちづくりといった各観点からもよく検討されており、合理的だと思いますし、都心環状線の撤去はあり得ないとする提言から四年後の、有識者会議の議論がスタートした時期に改めて提案されているという時期的なことからも、現実味があるのではないかと思っております。
 東京都心における首都高速道路のあり方についての提言から九年、NPOの提案からも既に五年が経過しようとしており、この間、中央環状新宿線の全線開通など、都内の道路交通の状況も大きく変化してきています。
 実際、一昨年に行われたパーソントリップ調査の結果を見ますと、十年前と比較して、地域別には若干の差はありますが、都市圏全体としては、世帯当たりの自動車保有台数は減っています。また、自動車利用トリップ発生集中量も一部地域を除いて減っており、特に東京区部では、トリップ数がふえているにもかかわらず大幅に減少しています。
 こうしたことも踏まえ、三環状道路完成後の都心環状線撤去案について、一度都としても検討してみる価値はあるのではないかと思いますが、所見を伺います。

○河島東京都技監 我が国の政治、経済、文化の中枢として、多様な機能が高密度でコンパクトに集積した東京の都心部において、渋滞のない円滑で効率的な交通を実現することは、国際競争力を備えた首都東京の維持発展のために極めて重要でございます。
 三環状道路が完成すれば、都心環状線を含む既存の道路ネットワークと相まって、都心部の渋滞が大きく改善され、円滑な交通の実現が可能となります。このため、都としては、まず三環状道路の完成に全力を尽くすことが重要であり、都心環状線のあり方については、その後の社会経済情勢や首都高を取り巻く状況、一般道への影響等を慎重に見きわめた上で検討すべき長期的な課題であるというふうに認識しております。

○増子委員 もちろん長期的な課題だというふうに私も思いますし、三環状道路の完成を優先させるということも当然だと思っておりますが、道路環境も年々変化していきますので、一定の研究は必要なのではないかということだけ申し上げておきたいと思います。
 次に、伊豆、小笠原諸島の航路について伺います。
 現在、伊豆諸島航路には、東京-神津島間、東京-八丈島間に「かめりあ丸」と「さるびあ丸」、小笠原諸島航路には、東京-父島間に「おがさわら丸」が、父島-母島間には「ははじま丸」が就航しています。また、各小離島への航路にも四隻の貨客船が就航し、本土と離島を結ぶ交通、物流手段として、島民にとっての生命線となっています。
 しかし、航路が長距離、長時間にわたることや、需要が限られることにより、運航収支は厳しく、また、いずれの船も外洋を航行することから、船舶の老朽化が進行しています。中には、既に耐用年数も過ぎ、使用限界の目安となる時期が近づくとともに、島民の間には安定的な運航に対する懸念も生じており、新船の建造に対する期待の声も聞こえてきております。また、新船の建造には、設計から竣工までおよそ二年を要するとのことであり、時間的な余裕はないと考えられます。
 そこで、伊豆、小笠原諸島航路の確保に対して、都はどのように関与していくのか、見解を伺います。

○中井港湾局長 伊豆、小笠原諸島の離島航路については、その維持活性化を図るため、昨年五月、国が事務局となり、都や関係町村、航路事業者等で構成される東京都離島航路改善協議会を設置し、運航方法の見直しや船内サービスの向上などについて協議を行ってきております。
 本協議会においては、現在運航している船舶にかわる新船の建造についても検討課題の一つとしており、船の現在の使用年数や国の補助制度の動向なども踏まえた検討を行っているところであります。
 離島航路は、各島にとって欠くことのできない交通手段であり、島民生活の安定と産業振興のため、都は、航路事業者を初めとする関係者とともに十分に協議を行い、引き続きその維持確保に努めてまいります。

○増子委員 東京の島しょ地域にとって、安定的な交通路確保は、生活面での最も大きな課題となっています。船舶の問題に限らず、小離島にあっては、港の整備等もまだまだ不十分な状況です。今後とも、離島の交通路の確保については、広く地元の皆さんのご意見を伺いながら、実態に即した効率的な事業の実施をぜひお願いを申し上げておきます。
 次に、水循環について伺います。
 まず、水需要予測についてです。
 国では、ことしの秋を目標に、八ッ場ダムの必要性についての再検証を進めることとしています。これに対して都は、最大限早い時期に結論を出すよう強く求めています。
 しかし、その一方で、都は先日の本会議一般質問において、将来の水道需要の見通しについて、平成二十三年度中に策定を予定している水道施設の再構築に向けた基本構想の中で示していくとの答弁をしました。つまり、現在、国は、都が平成十五年に予測した古いデータをそのまま用いて利水面での検証作業を行っているのです。これでは、誤った結論が導き出されるおそれがあります。
 一方では再検証を早くしろといいながら、そのための検証材料は古いままです。このようなことでは、都の主張と行動は全く矛盾しているといわざるを得ません。
 私たちは、二十三年度中に策定する基本構想の中で将来の水需要予測を示すなどといった悠長な作業をするのではなく、今すぐにでも、八ッ場ダムの必要性の再検証のため、まず先に、国に対して新たな水需要を示すべきと考えますが、所見を伺います。

○尾崎水道局長 八ッ場ダムは、一都五県と国との合意に基づき建設を進めてまいりましたが、一昨年九月、当時の国土交通大臣が一方的に中止を表明し、その後、国が一方的に検証を行っております。
 いうまでもなく、都の水源は、将来のみならず、現在、既に極めて脆弱な状況にあることから、首都東京の安定給水のためには八ッ場ダムは必要不可欠であり、基本計画どおり完成させるよう国に強く求めてきております。
 水道需要につきましては、予測の基礎となる一日平均使用水量は、その約七割を占める生活用水が長期的に増加傾向にあり、現在においても、計画値と実績値との間に大きな乖離が生じておらず、妥当なものでございます。
 将来の水道需要の見通しにつきましては、間もなく浄水場等の大規模施設が一斉に更新時期を迎えることから、施設の耐用年数である五十年から百年先を見据え、気候変動などのリスクを十分考慮した水道システム全体の安全度を検討し、水道施設の再構築に向けた基本構想を策定する中で示してまいります。
 水道は、首都東京の都民生活と都市活動を支える重要なライフラインであり、現在はもとより、将来にわたる安定給水の確保に向けて、全力で取り組んでまいります。

○増子委員 一日平均使用水量の計画値と実績値との間で大きな乖離はないといったご答弁ですが、私たちはそのことをいっているわけではなくて、平成十五年当時に、一日平均配水量と一日最大配水量を算定する際に用いた予測有収率と予測負荷率が、その後の蓄積データを用いることで変化し、結果、予測一日最大配水量六百万立方メートルとしてきた数字が下方修正される可能性があるのではないですかという点を指摘し続けているのです。その点を明らかにせず、古い予測値のままで再検証を早くしろというのはおかしくないでしょうかということを、改めて申し上げておきます。
 次に、豪雨対策についてです。
 雨水浸透ますなど雨水流出抑制施設の設置は、水害対策のみならず、地下水の枯渇への対策、地球温暖化対策、ヒートアイランド対策、合流式下水道への雨水流入の軽減、そして発展的には、緑の創出などの環境の保全や地盤沈下の抑制といった、都が抱えている環境問題の多くの分野で効果が上がる事業でございます。
 都は、総合治水対策事業のため、区市が行う個人住宅への雨水浸透施設設置事業に対して、その費用の一部を補助していますが、都内で圧倒的シェアを占める民間施設での雨水流出抑制対策は極めて重要と考えます。
 また、今年度、豪雨対策の一環である流域対策を推進する観点から、都議会民主党の二十二年度の復活予算要求は、新規に雨水浸透施設の設置指導等強化事業として、区市町村への普及等を支援する経費三千五百万円がつき、来年度予算でも、同事業について引き続き同額予算が計上されています。
 そこで、個人住宅を含む民間施設での流域対策の現状と、復活予算を含む今後の見通しについて所見を伺います。

○河島東京都技監 都は、平成十九年に豪雨対策基本方針を策定し、個人住宅を含む民間施設の流域対策について、区市町村と連携して雨水貯留浸透施設の設置促進に取り組むことといたしました。
 こうした取り組みなどにより、平成二十一年度末における民間施設の雨水対策量の累計は、約二百九十万立方メートルとなっております。
 平成二十二年度には、流域対策をさらに進めるため、個人住宅における浸透ますの設置助成の対象エリアを、これまでの神田川など四流域から、野川などを加えた七流域に拡大しておりまして、その結果、設置助成件数は昨年度に比べ約二・六倍にふえる見込みでございます。
 お話のあった、今年度の雨水浸透施設の設置指導等強化事業につきましては、目黒区や練馬区において、総合治水対策計画策定に対する補助を行っております。引き続き、こうした区市の行う計画策定を支援するとともに、貯留施設見学会開催などの普及啓発活動を充実することにより、雨水浸透ますの設置促進を図るなど、民間施設の流域対策を推進してまいります。

○増子委員 大変地道で時間のかかる事業だと思いますが、ぜひその取り組みに期待をいたしたいと思います。
 次に、自動二輪車対策について伺います。
 近年、大型スクーター等の普及により、繁華街や駅前の歩道空間を中心に多数の自動二輪車が放置され、歩行者の通行が著しく妨げられるなど、自動二輪車の違法駐車が大きな問題となっています。
 平成十八年六月から、放置車両確認事務の民間委託等を含む新たな駐車対策法制が施行され、違法駐車に係る取り締まりが強化されたほか、同年十一月からは、自動二輪車の駐車場の整備を促進し、道路交通の円滑化を図る等の目的から、自動二輪車を自動車の定義に加えた改正駐車場法が施行されるなど、自動二輪車の駐車対策の構築に向けた環境が整備されてきております。
 自動二輪車の駐車場数、収容台数は増加傾向にはありますが、依然として絶対数が不足していることは明らかであり、いまだ問題解決には至っておりません。
 日本二輪車協会の調べによりますと、都内における自動二輪車駐車場は約二万台弱となっております。また、保有台数千台あたりの駐車場整備台数について、自動二輪車は自転車の七分の一、自動車の八分の一の水準にすぎないというデータもあります。
 バイク利用者の方々は、今も大変困っておられることと思いますが、そこでまず、都民の声総合窓口に寄せられているバイク利用者からの意見や要望について、バイク愛好家としても有名な並木生活文化局長に、思いも含め伺います。

○並木生活文化局長 平成二十一年度に都民の声総合窓口に寄せられました自動二輪車にかかわる都民からの意見は、駐車できる場所の確保を求めるもの、それから、違法駐車の取り締まり強化を求めるものが大半でございました。
 そのうち、駐車場の確保に関する具体的な意見といたしましては、自動二輪車は自転車に準じた生活必需品であり、専用の駐車場をつくるべき、自動二輪車の駐車スペースがなさ過ぎる、駅近くなど都内各所に駐車場ができれば本当に便利になるなどでございます。
 なお、自動二輪車は、自動車に比べ燃費もよく、地球環境にも優しい乗り物であり、そうした自動二輪車の駐車対策は重要であると、私も認識しております。

○増子委員 大変、バイクはエコな乗り物だということでお話をいただきました。
 では具体的に、東京都としての、バイク駐車場整備に向けたこれまでの取り組みと課題について伺います。

○倉田青少年・治安対策本部長 都は、平成十九年度から、多摩地域の自動二輪車駐車場整備に対する補助金交付事業を三カ年にわたり実施するとともに、駐車場施設の整備を都有地の活用により支援してまいりました。
 さらに、自動二輪車駐車場の整備促進を図るためのさまざまな対策を実施する手引として、平成二十一年に自動二輪車駐車場整備促進アクションプログラムを、警視庁、区市、業界団体等とともに策定し、各区市町に配布しました。
 自動二輪車の駐車場をめぐる状況は地域によって異なっており、ユーザーの入庫習慣が十分でないなど、自動二輪車の駐車場整備にはさまざまな課題があると認識しております。

○増子委員 ただいまのお話でも、自動二輪車駐車場の整備を促進するために、アクションプログラムを各区市に配布しているとのお話がありましたけれども、都の取り組みはもちろん大事ですけれども、各区市のまちづくりの中での積極的な取り組みが重要と考えます。
 区市が駐車場整備計画を策定する際などに都の関与があると聞いていますが、そうした機会に、都は、区市などに対して自動二輪車駐車場の整備促進を働きかけるべきと考えますが、所見を伺います。

○河島東京都技監 平成十八年に駐車場法が改正され、自動二輪車が駐車場の受け入れ対象車両として位置づけられました。
 都はこれを受け、従来は乗用車などを対象に整備されてきた都市計画駐車場に自動二輪車も駐車できるよう、区市を含む管理者に対して働きかけておりまして、これまでに約千台分の駐車スペースを確保しております。
 また、平成十九年に総合駐車対策マニュアルを策定し、その中で自動二輪車駐車施設の整備事例や国等の支援措置を紹介し、対策の普及に努めてまいりました。
 さらに、区市が駐車場整備計画を策定する際には、自動二輪車についても計画に位置づけるよう働きかけておりまして、例えば新宿区では、新宿駅周辺地区などを対象とする検討委員会に都も参画し、自動二輪車対策を盛り込んだ計画の改定作業が進められております。
 引き続き、自動二輪車の駐車施設の整備を促進するため、区市などに働きかけを行ってまいります。

○増子委員 都内では、駅周辺に駐輪場を整備しても、その立地環境などから、自転車利用者が余り利用していないというケースも見受けられます。
 自転車法では、五〇ccを超える自動二輪車は対象外とされていますが、昨年、国土交通省は、自転車駐車場における自動二輪車の受け入れについての通知を出し、駐輪場への自動二輪車の受け入れを積極的に推進することを求めております。
 せっかく確保した駐輪スペースを有効活用するためにも、余り利用されていない自転車駐車場に自動二輪車を積極的に受け入れさせるべきと考えますが、所見を伺います。

○倉田青少年・治安対策本部長 ご指摘の国土交通省通知につきましては、全区市町村に速やかに周知しております。
 都の調査によりますと、自転車駐車場を設置している区市町四十九団体のうち、二十二団体で自動二輪車が駐車可能となっております。これに民営を含めますと、駅周辺の自転車駐車場で約四千六百台の自動二輪車の駐車が可能となっております。
 都は、毎年自転車駐車場の調査を行って、各区市町村の状況を把握し、その結果を全団体に配布しており、こうした調査も参考にして区市町で地域の実情に合わせて対策が進むよう、今後とも情報提供等を実施してまいります。

○増子委員 ぜひよろしくお願いいたします。
 大型バイク用の駐車場の不足も深刻な問題となっております。都内では、駐車場そのものが不足している状況の中、せっかく整備された自動車駐車場を大型バイクが利用し、自動車をとめることができないといったようなケースも見かけております。大型バイク用の駐車場の整備に向けた今後の取り組みについても所見を伺います。

○倉田青少年・治安対策本部長 自動二輪車は、排気量等により法制度上の区別が存在しており、道路交通法では排気量四〇〇ccを超えるものを大型自動二輪車としております。駐車場法では五〇ccを超える二輪車すべてを一括して自動二輪車としており、自動二輪車の駐車場対策に当たっては、道路交通法にいう大型自動二輪車も含めて実施するものでございます。

○増子委員 自動二輪車駐車場整備に関する助成制度として、二十三区内では、財団法人東京都道路整備保全公社が助成事業を実施しており、平成十六年度から二十一年度の六カ年で二千五百五十五台分の支援実績があります。また、多摩地区では、平成十九年から二十一年までの三カ年、東京都により自動二輪車駐車場整備に対する市町村補助金制度が実施されていましたが、その支援実績はわずかに九十五台に終わっております。
 私は、自動二輪車駐車場整備に対する財政措置を含めた支援策を拡充すべきと考えますが、所見を伺います。

○倉田青少年・治安対策本部長 区部におきましては、東京都道路整備保全公社が、都区共同で拠出した駐車場整備基金の果実を活用し、二十三区を受付窓口として、民間事業者等による自動二輪車の駐車場整備に対して助成を行っております。
 助成を開始した平成十六年度からの六年間で約二千五百台、金額にして四億円を超える助成実績を上げ、自動二輪車駐車場の整備促進に貢献しております。都は、引き続き公社が区と連携して、積極的に助成事業を推進するよう働きかけていくこととしております。
 多摩地域におきましては、都が平成十九年度から二十一年度までの三カ年、補助対象、補助率等、区部と同一の条件で市町村補助金交付事業を実施しました。実績は十九年度七十五台、二十年度二十台、二十一年度は申請がございませんでした。こうしたことから、多摩地域では区部とは状況が大きく異なると認識しておりますが、今後とも市町村の意向やニーズを確認してまいります。

○増子委員 東京都では東京都駐車場条例を有しており、これにより附置義務駐車場の整備台数等が規定されていますが、自動二輪車駐車場については附置義務を課していません。
 都は、附置義務に関する条例は、建築主に対し新たな負担を義務化するものであることから、それが必要な地域と不必要と考えられる地域が存在する中で、都内全域を対象とした東京都駐車場条例の改正は適当ではないとの考え方から、自動二輪車駐車場の附置義務化については、必要に応じて駐車場法に基づく区市による附置義務条例の制定、または区市独自条例による附置義務条例の制定で対応する方針と聞いています。
 この考え方は理解できますが、交通政策上の観点から、都として特に必要と判断した地域については、当該市区に対して、自動二輪車駐車場の附置義務化を促すように働きかけていただきたいと、これは要望にさせていただきたいと思います。
 次に、医療行政について伺います。
 東京ルールの導入や、救急への医師確保策などが立ち上げられ、その効果を見守ってまいりましたが、搬送時間は残念ながらトータルでは延びております。
 一方で、昨年秋の一週間の搬送案件を詳細に分析した平成二十二年度東京都救急搬送実態調査結果の速報では、軽症者の割合は七・八%減、受け入れ先決定までに要した照会回数六回以上や十一回以上は減少、しかし、平均救急搬送時間は平成二十年調査と比較して三・四分延びています。
 救急搬送時間に影響を及ぼす背景はどのようなものか、伺います。

○杉村福祉保健局長 救急搬送実態調査結果では、患者の背景や救急隊の活動環境が救急搬送時間に大きな影響を及ぼすことが改めて明らかになりました。主な要因としては、患者の背景では、ひとり暮らし、精神疾患、泥酔状態などが挙げられ、また救急隊の活動環境では、医療機関における院内調整や患者、家族への説明などが挙げられます。

○増子委員 救急現場においては、ひとり暮らし、あるいは精神疾患、泥酔状態などさまざまな背景によって、搬送先選定に時間がかかっているということですけれど、その件数と全体に占める割合及び患者の背景別の主な内訳、また、こうした背景を持つ患者への対応策について、あわせて伺います。

○杉村福祉保健局長 調査対象の総件数一万一千四百五十六件のうち、例えばひとり暮らしの患者など、搬送時間に影響を及ぼす何らかの背景があったものが二千九百五十二件、全体の二五・八%を占めておりました。そのうち、ひとり暮らしは八百二十二件、二七・八%、精神疾患が五百十五件、一七・四%、泥酔状態が三百八十件、一二・九%となっております。
 こうした患者の受け入れを円滑に行うためには、退院後の受け入れ先の確保等が課題でございまして、そのため、医療圏ごとに開催いたします地域救急会議に、福祉事務所や警察などの関係機関の参画を得まして、地域の実情に応じた仕組みづくりを検討してまいります。
 また来年度は、身体合併症を有する精神疾患患者に対応する医療機関を、都内に四カ所指定いたします。

○増子委員 そのほかの部分の状況は改善しているかどうかといったことや、また背景別の状況と疾病等の種類別の状況をクロスするなど、さらなる分析をしていただいて、有効な対策をぜひ立てていただきたいと思います。
 一方、軽症者の割合は減少はしているものの、依然五四・一%もあり、明らかに不要と思われるようなケースでは、引き続き、シャープ七一一九での事前トリアージ、現場トリアージにより、自己通院での対応を求めていくなどの地道な取り組みも重要です。
 現場トリアージは、患者や家族の説得に時間がかかるケースもあるようですが、搬送にかかる時間や病院側の負担、その間に、真に緊急な救命を必要とする方のもとに向かうことができることも考えると重要な取り組みと考えます。東京ルールⅡとⅢの評価と今後の取り組みについて伺います。

○杉村福祉保健局長 救急医療の東京ルールは、患者を地域で受け入れることを目指して三つのルールで構成されておりまして、ルールそのⅡでは、救急医療の必要性などを判断するトリアージの実施について、また、ルールそのⅢでは、救急医療の適切な利用に関する都民の理解と参画について定めております。
 今回の調査結果では、軽症患者の割合は東京ルール開始前と比べ減少しており、一方、シャープ七一一九の救急相談件数は、平成二十年の約三万四千件から二十二年は約六万七千件に増加いたしております。これらは東京ルールの取り組みの成果と考えております。
 しかしながら、軽症患者は依然として五割を超えており、今後とも限られた社会資源であります救急医療を守るため、東京都医師会や東京消防庁と十分連携し、東京ルールの普及啓発に努めてまいります。

○増子委員 東京消防庁においては、現場急行支援システム、いわゆるFASTへの参画により、現場到着時間や搬送時間の短縮を図ると聞いております。これは青信号を長くするなどの信号を調節するもので、交差点におけるスムーズな通行や車両の安全が確保できるとともに、一定速度を保てるため、加速減速による救急車両の揺れを低減させ、傷病者への負担軽減にもなるといわれております。
 他県では、スマートフォンを活用した救急搬送システムにより、搬送先選定や受け入れ調整のコール作業をスムーズにする効果を発揮している事例もあります。個々には小さなことかもしれませんが、一件一件の救急搬送をより安全に、また迅速に実施するためのさまざまな改善を積み重ねていくことが重要であると考えます。
 こうしたよりよい資機材の整備など、より安全迅速に搬送を行うための取り組みについて所見を伺います。

○新井消防総監 東京消防庁では、救急活動の安全性と迅速性を確保することが、都民の安全と安心にとって重要であると認識しております。
 こうしたことから、救急隊と同時に消防隊を出動させるPA連携活動を初め、東京DMATとの連携や、一一九番通報と同時に救急ヘリの運用などを行っております。また、迅速な医療機関選定のために救急隊が活用しております救急医療情報システムを改良し、心臓血管外科、脳卒中などの診療科目を追加しております。
 さらには、お話にありましたFASTへの参画や救急車に積載されております消防・救急デジタル無線端末に地図表示し、車両運行を行っているほか、傷病者や事故の状況をいち早く把握するため、救急現場へ向かう途上でPHSを活用し聴取を行っております。
 一方で、大規模建築物の新築時には、傷病者を搬送するストレッチャーの利用が容易となるように、廊下の幅員の確保と、ストレッチャーが収容できるエレベーターの設置指導などを進めております。
 今後とも救急活動の実態を精査し、より安全で迅速な救急搬送に努めてまいります。

○増子委員 一方、急性期病院の救急搬送の受け入れ体制にも影響してくるのが、急性期を脱した後の医療や介護へのスムーズな移行です。
 退院日が迫ってくる中、転院先、入所先探しに苦労するという家族は絶えません。私が最初にこのことを取り上げた平成二十年の一般質問当時、都は、退院調整を行うメディカルソーシャルワーカーのレベルアップに取り組むとの答弁をしました。
 頼めば単に空き状況を問い合わせるだけという例もまだまだあり、医師とよく連携して受け入れ先を見つけるような例は貴重な存在と感じます。患者ごとに千差万別な状況に対して、必要な対応はさまざまであり、メディカルソーシャルワーカーが積極的に対応できる力をつけるためには、みずから担当した事例や、ほかの方が取り扱った事例を通して学ぶピアレビューなどの効果的な方法で、個人のレベルアップをより一層支援していくことが大切です。
 メディカルソーシャルワーカーが、退院等調整に一層力を発揮できるように、個人のレベルアップに取り組む必要があると考えますが、所見を伺います。

○杉村福祉保健局長 都はこれまで、退院調整の中心を担います病院のソーシャルワーカー、いわゆるMSWのスキルアップを図るため、研修会やグループワークを開催いたしております。
 研修会につきましては、今年度三回実施いたしておりまして、先月開催しました看護師等と連携した退院調整をテーマとする研修会におきましては、四百四十名の参加がございました。また、グループワークにおきましては事例検討を行い、その内容を事例集にまとめ、都内の病院や福祉施設などに配布いたしております。
 今後とも、これらの取り組みを通じまして、ソーシャルワーカーの資質の向上に努めてまいります。

○増子委員 メディカルソーシャルワーカーのレベルアップに効果的な取り組みを強化していっていただきたいというふうに思います。
 ただ個人の頑張りだけではどうにもならない面が大きいのも事実です。転院問題を解決していくには、病院が他の病院などと連携し、患者が切れ目のない医療、療養、介護生活ができるように取り組むという組織としての意志、携わるスタッフの役割開発、組織変革など、さまざまな要件が考えられます。
 その中でも、医療連携パスは、連携として機能する有効な取り組みです。人間同士のかかわり合い、協力関係を基盤として、病気の治療だけでなく、病気を抱えて生きる患者へのサポート体制が構築されていくためです。
 平成二十年においては、まだ医療崩壊が今ほど叫ばれておらず、病院同士がお互いの専門性を出し合うような関係は、ごく限られた特定の関係病院間のものだったのではないでしょうか。ほんの数年間ですが、この間のダイナミズムを感じているところです。
 その後、連携パスは心筋梗塞、脳卒中、糖尿病など、各分野で有効な医療連携ツールとして広がりを見せています。特に脳卒中の場合、継続的なリハビリテーションが必要な方も多く、一貫した方針でサポートする上で連携パスの役割は大きいため、都として一層の普及を図るべきと考えますが、どのように取り組んでいくのか伺います。

○杉村福祉保健局長 都内では、地域の医療機関が連携し、現在、十を超える脳卒中の地域連携パスが作成されておりまして、パスを活用する医療機関数は、延べ約八百に上っております。
 都は、平成二十一年度から、これらのパスの周知と円滑な運用を図ることなどを目的として、医療機関等を対象に合同会議を開催し、さまざまな事例を紹介するなど、情報の共有化を図っております。また、今年度は、パスの活用を一層進めるため、パスの標準様式について検討いたしております。

○増子委員 特定の地域内や幾つかの病院同士でつくられるパスも数多いということですが、都の医療資源の配置状況、都民の受療行動との関係で、都がかかわって標準化するなどを推進するケースは、重篤な疾病や連携に基づく迅速な診療が生命や予後に大きく寄与するものになってくるわけです。
 中でもがんの医療連携手帳、いわゆるがん手帳の取り組みは、我々は東京マニフェストにも盛り込み、東京都がん手帳の策定、発行を求めてまいりました。東京都のがん手帳、東京都医療連携手帳は、全国でもトップレベルの病院がある東京の地の利を生かし、がん医療を牽引するような医師が参加して作成し、施行されております。
 拠点、認定病院については、都は合わせて三十四病院に拡大を図るとのことでしたが、拠点病院等と地域医療機関の双方が、治療経過等きめ細かい情報を共有し、シームレスながん医療を提供するためにはこの手帳が大きな役割を果たします。東京都がん手帳は、その活用いかんによって医療機関同士、医師同士の緊密な連携に加え、患者自身が治療を理解したりセルフチェックしたりと、記録することを通じて自分らしいがんとの向き合い方を考えることにも役立つものであり、しっかりと活用されるようにしていただきたいと思います。
 平成二十二年二月の試行開始後の活用状況について、お伺いいたします。

○杉村福祉保健局長 都においては、患者、かかりつけ医、専門病院の情報の共有化を図るため、都内共通の地域連携クリティカルパス、東京都医療連携手帳を平成二十二年二月に策定いたしまして、十月現在、二千を超える医療機関が活用いたしております。この手帳は、診療予定や診療情報などを記載するものでありまして、これを活用して、専門医とかかりつけ医は適切な診療のために情報を共有し、患者は、自分自身の病気や今後の治療計画に対する理解を深めております。
 今後とも手帳の一層の普及に向けまして、がん診療連携拠点病院等において、地域の医療機関を対象とした説明会を開催いたしますとともに、がん診療連携協議会において、患者、医療機関、それぞれに対する活用マニュアルを策定いたします。

○増子委員 救急搬送時間は、傷病者の救命率に影響を与えるものでございます。これに関連するあらゆる体制、取り組みを一層充実強化し、さらなる救命効果の向上を図っていただくよう求めておきます。
 次に、障害者施策について伺います。
 都の障害者の就労支援・安心生活基盤整備三か年プランが、二十三年度で最終年を迎えます。まずは障害者グループホーム等のこれまでの実績と、計画達成に向けた取り組み等を伺います。

○杉村福祉保健局長 都は、障害者の就労支援・安心生活基盤整備三か年プランに基づきまして、整備費の事業者負担を軽減する特別助成を実施し、障害者の居住の場の整備を促進いたしております。プランでは、平成二十三年度末までに、グループホーム等の定員を三年間で千六百四十人ふやし五千五百十四人にすることとしておりまして、昨年十二月現在で四千八百三十二人分を整備いたしております。最終年度となる来年度は、目標の達成に向けまして、事業者への働きかけをさらに強化するとともに、整備が十分でない区市町村に対しまして重点的な働きかけを行ってまいります。

○増子委員 国もようやく障害者グループホームの整備促進に資するため、家賃助成一万円を導入しました。土地なども高い大都市である東京都では、先行して家賃助成を実施していますが、国の新しい助成制度を都制度の財源として取り込んでしまうのではなく、さらなる負担軽減のために活用すべきと考えますが所見を伺います。

○杉村福祉保健局長 都は障害者の地域生活を支援するため、グループホーム等の利用者の収入が一定基準以下の場合に、家賃の助成などを行う市町村に対しまして、包括補助事業により独自に支援を行っております。国は、平成二十三年十月から、市町村民税非課税世帯の利用者に対しまして、月額一万円を上限とする家賃助成を行うこととしておりますが、現時点では詳細が示されておりません。都の支援のあり方につきましては、国の制度と整合性を図る必要がありますことから、今後、国の動向を注視してまいります。

○増子委員 助成対象範囲が都制度より広がるということも考えられるため、なかなか簡単にはいえませんが、この新しい事業の趣旨はグループホームの設置促進ということです。低所得者に特化した助成単価アップなど、いろいろな方策が考えられると思いますので、国補助金が入った分は、障害者の地域生活向上に使うような形で検討されるように、ぜひ強く求めておきたいと思います。
 高齢者の住まいについては、都営住宅でさまざまな取り組みが始まっています。障害者についても、都営住宅においてグループホーム等を積極的に設置していくべきと考えます。東京都における都営住宅敷地での子ども、高齢者、障害者、生活相談や見守り拠点整備など、福祉的機能の整備に関する考え方、実績を伺います。

○河島東京都技監 都営住宅におきましては、老朽化した都営住宅の建てかえを推進して、建物や設備を更新しバリアフリー化などを図るとともに、建てかえに伴い用地を生み出し、福祉施設などの整備を初め、地域のまちづくりに活用することが重要と認識しております。
 こうした観点に立って、これまで地元区市と連携し保育所や学童クラブ、高齢者在宅サービスセンターや特別養護老人ホーム、障害者のグループホームや通所施設等の整備を行っております。

○増子委員 都の三カ年計画の達成見込みでは、千六百四十人分のグループホーム定員増加、合計で五千五百十四人分になり、障害者の地域生活基盤整備は進捗しています。しかし、必要十分の整備が完了したわけではなく、来年度半ばには次の展開を示し、引き続き障害が重い方の入所施設、グループホーム等の整備をしていかなければなりません。
 都内では、高額な地価、地代、住宅が密集していることなどから、障害者のグループホーム等整備には困難が伴います。
 公営住宅は、もともとは厚生省の所管であったのが建設省に移管されました。時代を経て、一昨年、高齢者居住安定確保法が、改正に合わせて国交省、厚労省の共管となり、高齢者等の住宅確保に寄与するハード、ソフト両面合わせての取り組みが、これまで以上に促進されていくことと認識いたしております。
 都営住宅は、都内にあってまとまった敷地を有し、建てかえにあわせて用地の創出が可能なタイミングがあります。そこを逃さずしっかりと整備を進めていくためには、地元区市町村における福祉部門と住宅部門との協力はもちろんのこと、東京都においても、高齢者のみならず、障害者のための施設確保についても、今後は関係部局と連携して整備に取り組んでいくべきと考えますが所見を伺います。

○河島東京都技監 都営住宅の建てかえに当たっては、これまでも創出用地などを活用して、江戸川区小松川三丁目第二アパートにおける障害者の自立訓練等を行う施設や調布市国領町八丁目アパートにおける障害者グループホームなどの整備を支援しております。
 今後とも地元区市の意向を踏まえ、関係局とも連携しながら障害者支援のための施設を含め、福祉施設の整備に向け取り組みを進めてまいります。

○増子委員 ご答弁にもありましたように、今のところまだ数カ所というところです。今後は、同じ都庁内の地主である都市整備局と福祉施策の所管局である福祉保健局がさらに密に情報を共有して、都営住宅の敷地を活用して、もっと多くの障害者グループホームやサービス拠点が整備されるという結果が出ますように、今以上の連携をお願いいたしておきたいと思います。
 次に、更生保護事業について伺います。
 初めに、東京都地域生活定着支援センターについて伺います。
 先日の代表質問では、基本的な機能などについて伺いました。この事業について、つい先日、応募が締め切られたところと聞いております。応募状況と今後の流れを確認させていただきたいと思います。

○杉村福祉保健局長 地域生活定着支援事業における受託事業者の公募につきましては、先月二十五日の締め切りまでに、社会福祉法人を中心に七法人から申し込みがございました。今後、保護観察官や区市の代表を含めた運営事業者選定委員会におきまして、受託法人の選定を行い、本年四月中の地域生活定着支援センターの開設に向け、準備を進めてまいります。

○増子委員 このセンターについては、大都市への帰住希望の集中があるんじゃないかといったような懸念や、あるいは刑務所所在地自治体からは、所在自治体への集中した場合の生活保護ですとか福祉サービス利用への費用負担などについてさまざまな懸念があったと思っています。そこで、先行して実施している他の大都市の状況はどのようになっているのか伺います。

○杉村福祉保健局長 昨年四月にセンターを開設した愛知県や七月に開設しました大阪府などに確認したところ、本事業の対象となります高齢や障害により福祉的な支援を必要とする矯正施設退所者が大都市圏や矯正施設所在地の自治体に集中したという話は、聞いておりません。

○増子委員 応募についてですが、社会福祉法人を中心に応募があったということですが、満期出所者とはいえ、地域での生活に必要なサービスを適切にコーディネートするためには、福祉的観点からのアプローチ能力に加えて、本人との面談、接遇には更生保護あるいは指導にかかわるノウハウも必要なのではないかと思っております。保護観察所との連携や職員の資質向上についてどのようにお考えか伺います。

○杉村福祉保健局長 センターは、事業対象者の意向や生活歴、心身の状況等を的確に把握するため、保護観察所と協働いたしまして、入所中から本人と面談を行いますとともに、支援内容などを検討する際には、必要に応じて、保護観察所、矯正施設等の関係機関と連携してまいります。
 センター職員の資質の向上につきましては、受託法人の公募に当たりまして、職員の研修計画等の提案も求めているところであり、センター設置後は、こうした法人の自主的な研修のほか、国が実施する研修会への参加などを促し、職員のレベルアップを図ってまいります。

○増子委員 この事業は、福祉的支援が必要であってなおかつ帰住先のない満期出所の障害者や要介護高齢者が対象ということですが、福祉サービスを継続して利用して地域に定着していくことで、社会とのきずなを回復し、再び罪を犯すことのないようにしなければならないと思っております。
 その中で、障害などがあっても、少しでも社会貢献、社会参加していけるよう、障害者雇用、就労支援など、当該対象者に適したサービスを選択していくことが重要です。この事業の受託事業者のみならず、区市町村やサービス提供者においても、こうした視点を持って地域生活への定着を支援しなければならないと考えますが、所見を伺います。

○杉村福祉保健局長 対象者が社会とのつながりを持って地域で安定した生活を送っていくためには、個々の状況に応じて適切な支援を受けられることが重要でございます。このため、都が実施いたしますセンターでは、区市町村、社会福祉施設、保護観察所、更生保護施設などの関係機関と幅広く連携しながら、対象者の地域生活への定着を支援してまいります。

○増子委員 ぜひよろしくお願いしたいと思います。
 次に、更生保護サポートセンターについて伺います。
 都は、東京の将来を担う青少年が、犯罪を犯した後に、少年院から出院し、その多くが立派に更生を果たしている一方で、その約四分の一が五年以内に犯罪を再び犯して施設に収容されていることから、非行少年の立ち直り支援策に取り組み始めました。立ち直るとの決意を持って少年院を出たばかりの青少年に対して、地域社会が支援を行っていくことは、再犯を防止するだけでなく、将来の犯罪抑制、そして青少年を再び地域社会の一員として迎え入れる地方自治体にとっても大変重要な課題となっています。
 そもそも青少年の矯正や更生保護は司法手続に密接につながるため、専ら国で制度が組み立てられていますが、その更生保護のかなめである民間ボランティア、保護司の皆さんの活動を、都はどのように認識しているのでしょうか、所見を伺います。

○倉田青少年・治安対策本部長 青少年の健全育成の一環としまして、都におきましては、非行少年の立ち直り支援に取り組んでおります。犯罪や非行を犯して刑務所や少年院に入り、仮出所、仮退院の後、保護観察を受けている方々などの立ち直りを、地域において非常勤の国家公務員として無償で支えている保護司の活動につきましては、非行少年の立ち直りを図る上で大きな役割を果たしているものと認識し、深い敬意を抱いております。

○増子委員 東京都内の保護司三千六百三十五人は、東京保護観察所や更生保護女性会員などと更生保護の諸活動を展開しております。
 一方、国は、対応が難しい保護観察対象者がふえるとともに、地域社会における連帯感などが低下していることから、保護司個人のみに頼った更生保護活動には限界があると判断をいたしました。そこで、保護司を組織的に支援する必要があると考え、更生保護活動サポートセンターを全国的に設置していくとしました。
 二十年度、二十一年度の二年をかけ、国はパイロット事業として、全国に二十一カ所のサポートセンターを設置しました。東京都内には、大田区保護司会が運営する大田更生保護活動サポートセンター、町田地区保護司会の方々が運営します町田更生保護活動サポートセンター、日野・多摩・稲城地区の保護司会によります、日野・多摩・稲城更生保護活動サポートセンターが設置されております。
 今後、国は、全国に八百八十三ある保護司会すべてにセンターを設置したいとは考えていますが、まずは必要性が高いところ、事件などの地域事情や会の規模などから検討し、全保護司会の約五割に当たる四百二十五カ所に新たに設置する方針を決定いたしました。
 更生保護活動サポートセンターは、保護司会の更生保護活動の拠点となります。企画調整保護司が週五日常駐し、保護観察中の人やその家族と面接したり、福祉や医療、学校等の機関、団体と処遇に関して協議する、そして保護司会議を開催するということになっております。国や保護司会としては、面接ができる場所を確保したい、センターは大体占有スペースを持っている、会議を行うので共有会議室で予約がとれるとよいなどといった構想を持っております。現在、全国二十一カ所のセンターは区市町村の施設を使用していますが、私は都道府県の協力も必要だというふうに考えております。
 今後、都内に更生保護活動サポートセンターが設置されていく中で、保護司会等からの施設貸与の協力要請があるならば、都は対応していくべきと考えますが、都の所見を伺います。

○倉田青少年・治安対策本部長 更生保護活動サポートセンターにつきましては、国の事業でありますことから、まずは国の責任において施設の確保を進めることが原則であると考えます。都有財産につきましては、都有財産が都民全体の共有財産であり、都民全体の効用に資するという観点から、適切かつ有効な利活用を図るべきものであることにかんがみ、都有施設を地域住民の利用に供する場合には、当該施設の都における利用予定の有無や地元自治体の考え方等を踏まえて、適切な対応を図っております。
 したがいまして、更生保護活動サポートセンターの設置に関し、保護司会等から具体的な要望があった場合には、都有財産の利活用の原則を踏まえつつ、地域の実情や当該施設の管理のあり方等も考慮しながら検討することとなります。

○増子委員 また、更生保護サポートセンターの活動、そして都の協力は、結果として都内の青少年の立ち直りや各地域の安心・安全に寄与していくものと考えますが、その点についても都の所見を伺っておきたいと思います。

○倉田青少年・治安対策本部長 地域における保護司の活動拠点としての更生保護活動サポートセンターの設置により、保護司の更生保護活動が活発になることで、保護観察を受ける非行少年の立ち直りが円滑に進むことは、非行少年の立ち直り支援や再犯防止、ひいては地域社会における安全・安心に寄与する側面もあり、都としても好ましいことであると考えております。

○増子委員 この保護観察という刑事政策の一翼を民間人である保護司が無給で担うという制度は、世界には類を見ない、我が国が誇るべき制度だというふうに思っておりまして、幾つかの国が何とかチャレンジをしておられるんですけれどもなかなかうまくいかないということでございます。
 一方、ただ、対象者と保護司間でいろんな問題があったり、あるいは保護司の制度全体にも課題があったりするような状況もありますので、東京都が率先して保護司活動を支援するとともに、立ち直りと自立を目指す青少年を東京の社会全体で支えていくといった取り組みを行うように要望させていただいておきます。
 次に、教育行政について伺います。
 初めに、情報リテラシー、情報モラル教育における肖像権について伺います。
 小学校、中学校における肖像権に関する指導について、昨年の文教委員会の事務事業質疑で、岡田議員が質疑を行いましたが、新規に情報モラル、情報リテラシー教育事業が予算案に入ったことを受け、改めて伺います。
 親が幼い我が子の画像や映像を売買目的に使用しているといった現状があります。こうした画像、映像は、一回出回ってしまうと回収が難しく、幼い子どもが大きくなってから取り返しのつかない犯罪事件に巻き込まれるといった可能性があります。肖像権に関する学校の子どもへの指導をどのように行っていこうと考えているのか、新規事業が予算に組み込まれましたので、改めて所見を伺います。

○大原教育長 現在、各学校では、カメラやビデオを用いて人物を撮影して作品化する場合は、相手の了解を得て行うなど、肖像権についても配慮するといった、情報を扱う上での基本的なマナーの指導を発達段階に応じて行っております。
 しかしながら、昨年度来実施してきましたネット監視の結果では、自他の個人情報を不用意にネット上に公開している事例が依然として多いことから、都教育委員会では、肖像権を含めた情報モラル、情報リテラシーに関する指導を一層充実するため、今年度末までに監視結果に基づく指導事例集を作成、配布いたします。また、来年度、新規事業として、児童生徒が肖像権についても学習できる啓発用DVDを作成、配布するなどして、学校の取り組みを支援してまいります。

○増子委員 京都大学の不正入試が問題となっておりますが、携帯電話やインターネットの便利さが入試に悪用されたゆゆしき問題であり、早急な対策が必要です。大学関係者においては、入試を受けるに当たっての規則等をどうするか、今後の対策が練られていることと思いますが、一方、教育においては、児童生徒の基本的なルール、マナー、規範意識をはぐくむことを再度徹底すべきだと思います。
 新学習指導要領では、法教育が新たに盛り込まれ、各地の小中学校で取り組みが開始されています。例えば北区の小学校では、行政書士の方々が立ち上げた法教育プロジェクトで、法教育出前授業を行っており、法といういわば近寄りがたいものを身近なものとしてわかりやすく、かつレベルを落とさないよう授業に取り組んでいるようです。法律の専門家が出前で授業を行うことで、子どもたちに、より内容の濃い充実した授業を行っていく、すばらしい取り組みであると思います。
 都教育委員会としても、法律の専門家と連携するなど、法教育の充実に向けて取り組んでいくべきだと考えますが、所見を伺います。

○大原教育長 法教育におきましては、児童生徒に法や決まりを守ることを知識として教えるだけではなく、法や決まりの目的や自由と責任、権利と義務の関係などを、新しい学習指導要領に基づき、系統的に学ばせることが大切でございます。
 そのため、都教育委員会では、平成二十年度に全国に先駆けまして、学校関係者はもとより、法曹関係者等を構成員とした研究協議会を設置し、法に関する教育の趣旨について協議するとともに、平成二十一年度からは、法曹関係者等を交えた公開授業やシンポジウムを実施し、学校における実践的な取り組みについて普及啓発を行ってまいりました。
 今後とも、都教育委員会は、区市町村教育委員会と連携し、関係機関の情報を提供するなどして、法に関する教育の推進に努めてまいります。

○増子委員 ぜひ取り組んでいただきたいと思いますが、一部の法律関係の団体に偏ることなく、わかりやすく法教育を子どもたちに伝えたい、基本的ルールやマナーを子どもたちが学び、規範意識をつけてもらって、社会をよりよくしていきたいという熱意のある法律の専門家に出前授業の機会が多く与えられますように、ぜひ対応をお願いいたしたいと思います。
 次に、築地市場移転問題について伺います。
 まず、土壌汚染対策について、平成二十三年度東京都中央卸売市場会計予算案には、豊洲の土壌汚染対策工事として十億四千二百万円が計上されており、平成二十四年度以降の債務負担行為と合わせると、その費用は五百七十一億一千三百万円となっております。現在は土壌汚染対策の詳細設計を委託で行っており、納期の三月十八日にはその内容も明らかになると思いますが、この間の技術会議の議論を見れば、五百八十六億円とされていた土壌汚染対策費も大きく圧縮されることが予想されます。
 しかし、その対策のレベルで都民の理解が得られるのかは疑問です。二月二十三日の予算特別委員会の総括質疑において、東京都は、土壌汚染対策をしても土壌汚染対策法の形質変更時要届け出区域の指定は残ると答弁をし、三月二日の経済・港湾委員会の田の上議員の質問に対しても、指定区域の解除を目指すつもりがない旨の答弁をしておられます。
 しかし、自然由来とはいえ、環境基準を超える砒素や鉛が残ったままの汚染地に、生鮮食料品を取り扱う中央卸売市場をつくることについては、今なお疑問が残ります。なぜ区域指定を残すのか、東京都は指定区域の解除に向けて努力する意向はないのか、改めて確認をいたします。

○岡田中央卸売市場長 お話の指定区域の解除につきましては、操業由来の区域は汚染物質をすべて除去し、地下水汚染が生じていない状態を二年間継続して確認することで解除いたします。
 一方、自然由来の区域につきましては、後ほどご説明させていただきますが、二重、三重の封じ込めを行うことで土壌汚染の摂取経路を完全に遮断しており、健康被害のおそれがなく、直ちに措置を講ずる必要がない形質変更時要届け出区域としての指定が残りましても、改正された土壌汚染対策法が求める対策レベルをはるかに上回るため、市場用地としての安全性には全く問題はありません。
 豊洲新市場予定地における土壌汚染対策は、専門家会議が自然由来の物質の存在につきましても考慮に入れ、科学的知見から提言したものでございまして、都がこの対策を確実に実施することで、人が生涯この土地に住み続けても健康への影響がなく、生鮮食料品を取り扱う市場用地としての安全・安心を確保するものとなってございます。
 その内容は、まず、各街区周辺、周りでございますが、遮水壁を設置することで市場予定地と周辺地域との地下水の移動を遮断し、その上で操業由来の汚染土壌を掘削除去するとともに、地下水につきましても環境基準以下といたします。
 次に、操業由来、自然由来の汚染の有無にかかわらず、操業地盤面から深さ二メートルまでの土壌をきれいな土ですべて入れかえまして、さらに二・五メートルのきれいな土による盛り土とアスファルトの舗装などを行います。その結果、敷地全域が四・五メートルのきれいな土などで覆われることとなります。
 さらに、地震時の液状化による砂の噴き出しを防ぐため、阪神・淡路大震災で効果が確認されております液状化対策工事を行い、市場の開場後におきましても、地下水の水位と水質を監視していくなど、総合的で万全な対策となってございます。
 したがいまして、繰り返しになってしまいますが、自然由来の区域につきましては、形質変更時要届け出区域としての指定が残りましても、市場用地としての安全性には全く問題はございません。

○増子委員 区域指定を残すような対策で安全宣言ができるのかという疑問はありますが、仮に土壌汚染対策を実施するにしても、その前提として、東京都と東京ガスとの費用負担のあり方についても明らかにしていく必要があり、協議結果や負担額などについてあらかじめ議会に報告するなどして、都民の理解を得るための努力をすべきだと考えます。
 東京ガスとの協議状況及び都民に対する説明について、見解を伺います。

○岡田中央卸売市場長 土壌汚染対策費の一部負担に関する東京ガス株式会社の協議につきましては、現在、同社との間で早期の合意に向けまして具体的な話し合いを行っておりまして、協議が調った段階で都議会へご説明するとともに、合意内容を公表してまいります。

○増子委員 さて、市場会計予算案には、豊洲市場の建設工事実施設計委託として一千万円、平成二十四年度以降の債務負担と合わせ十二億七千万円が計上されています。三月四日には、基本設計の委託業者が日建設計に決まり、仮に予算案がこのまま可決すれば、六月三十日が期限となっている基本設計の取りまとめを受け、日建設計が特命随契で十二億七千万円の実施設計の委託を設けるということになります。
 しかし、基本設計の期限が六月三十日とはいえ、それまでに業界と合意を得ることは可能なのでしょうか。また、その後の実施設計の途上において設計変更を強いられることはないのでしょうか。
 三月二日の経済・港湾委員会の佐藤広典議員の質問では、昨年末に提出された東京魚市場卸協同組合の要望書、例えば、柱位置の変更を初め、スロープや通路の設置などを求める十三項目の要望があることを例に出し、これらはすべて反映されているのですかということを質問させていただいております。これに対して、東京都は、意訳をすると、すべての要望にこたえられないが、六月までに合意が得られるよう努力をしていく旨の答弁をしています。
 しかし私は、現時点において業界団体からの要望にもこたえ切れず、ましてや中央区からの要望などもある中にあって、実施設計に踏み切ることは、強引とのそしりを免れないものと考えます。基本設計の期限である六月三十日までに業界団体の意見をすべて反映させていくと考えていいのか。また、その後の実施設計において設計変更の要望があった場合は対応が可能なのか、伺います。

○岡田中央卸売市場長 都は、築地市場の移転を決定しました平成十三年十二月以降、豊洲新市場基本構想、基本計画、実施計画を順次策定し、その間、業界団体と協議を重ね、合意した施設規模や街区ごとの建物配置など、施設に関する基本的な事項を平成十八年に取りまとめいたしました。この取りまとめ以降も、物流の効率化などの観点から、都と業界との間で施設内容について継続的に協議、検討を行ってきております。
 今回の基本設計におきましても、業界からの意見及び要望につきましては、法令や建築構造上の理由から反映することが難しい課題があるものや、業界間相互の調整が必要なものなど、さまざまな事項が含まれておりますが、都といたしましては、業界と十分な協議、調整を行い、理解を得ながら、可能な限りこたえてまいります。
 また、実施設計発注後における業界からの意見及び要望につきましても、同様に協議、調整を重ね、可能な限りこたえてまいります。
 このように、都と業界団体は、平成二十六年度の開場に向けまして、産地や消費者から信頼され、かつすべての市場関係者にとって使い勝手のよい市場をつくるため、双方が真摯に調整を行っており、強引に進めているものではございません。

○増子委員 実施設計の内容については、中央区との要望なども踏まえれば、大きな変更が予想されますが、その地元中央区との合意についても得られる見込みがありません。特に築地場外市場の事業者の意向について、東京都は二月二十三日の総括質疑において、地元区に対しても適時説明していくと答弁していましたが、同日の中央区議会において、矢田区長は、東京都が行ってきた調査について中央区は把握しておりませんとも答弁をいたしております。
 二十三年度予算案にある、築地地区を中心とした将来のまちづくりの検討について、東京都は、当然に地元中央区の意見も聞いていくと答弁していますが、このような東京都の姿勢では、中央区からの意見もただ単に聞きおくだけになりそうです。
 中央区の要望を踏まえれば、築地も豊洲も並び立つ、築地の将来像が早期に示されるべきです。また、築地のまちづくりについて、例えば東京都と中央区など、関係者の理解に向けた協議の場ができるのであれば、それも一考です。
 現在、こうした関係者と話し合いさえもされていない状況ですが、今後こうした関係者と築地のまちづくりをどのように考えていくのか、伺います。

○岡田中央卸売市場長 都はこれまで中央区に対しまして、豊洲新市場の整備に関して、節目節目で情報提供や説明を行うとともに、双方で意見交換を行ってまいりました。
 先月の中央区議会におきまして、中央区長から、今後移転が決定されれば、東京都による築地地区のまちづくりの検討に地元や関係者の意向が反映されるよう、区としても強力に働きかけていくとの発言がありました。
 こうした状況を受け、都といたしましても、豊洲に新市場を整備した後の築地のまちづくりにつきまして地元中央区など関係者とも協議を行いながら、速やかに検討を進めてまいります。検討に当たりましては、築地の歴史、文化を尊重し、これまで築地市場と場外市場が一体となってはぐくんでまいりました食文化の拠点としての活気とにぎわいをどのように引き継ぐかという観点からも行ってまいります。

○増子委員 今、ご答弁にありました、築地市場と場外市場とが一体となってはぐくんできた食文化の拠点としての活気とにぎわいを引き継ぐという観点から、中央区など関係者と協議を行うとのご答弁は、一歩前進ではありますが、合意に至るまでにはまだ時間がかかりそうです。
 また、水産仲卸業者との合意について、意向調査の必要性を求める私たちの質問に対して、東京都は、移転相談窓口で丁寧に耳を傾けるなどの取り組みが、結果として意向調査の趣旨に沿った対応になると答弁していますが、移転を拒んでいる事業者が移転相談窓口にどれほどやってくるのでしょうか。仮に東京都と中央区など、関係者の理解に向けた協議の場ができるのであれば、築地という選択肢を示していくことも可能なのではないでしょうか。
 今後、さまざまな方策を示しながら、事業者の意向を聞いていくべきだと考えますが、移転しない事業者への対応について見解を伺います。

○岡田中央卸売市場長 豊洲への移転を具体的に進めていくためには、一人一人の市場業者の置かれた状況ですとか課題などに対しまして丁寧に耳を傾け、安心して市場移転ができる環境を整備することが重要でございます。都は、既に築地市場内に移転相談窓口を設置し、その体制を整備しております。
 今後、早急にすべての市場業者を対象にした個別面談を実施し、移転の意向を確認するとともに、それぞれが抱える具体的な課題などを把握してまいります。
 今後、都は、移転を希望する事業者、移転を希望しない事業者における、そうした具体的課題の解決に向けまして、最大限努力してまいります。

○増子委員 私たち都議会民主党は、昨年十月三日の市場特別委員会で、用地取得費を除く予算の一部執行を認めるなど、現実的かつ柔軟な対応をとり、話し合いによって事態の打開に向けて取り組んできました。しかしながら、その後の議会審議途中での石原知事の豊洲移転決断宣言などにより、今年度の付帯決議に基づく話し合い路線は残念な結果となりつつあります。
 この間の一部の方々のご努力は多としたいと思いますが、関係者の合意というには不十分であるなどの理由から、本日の締めくくり総括を踏まえ、私たち都議会民主党は、土壌汚染対策費及び建設工事実施設計費を削除する修正案を提案いたしたいと考えています。私たちのメッセージを十分にしんしゃくしていただいた上で、執行機関側の最大限のご努力を強く要望するものです。
 最後に、商店街の振興について伺います。
 商店街は地域のコミュニティの核であり、地域住民にとってサービスや商品を提供する身近な存在です。これら商店街の振興策についてはこれまで何度となく議論されてきたところですが、今回改めて確認の意味も込めて、何点か質問したいと思います。
 まず初めに、新・元気を出せ商店街事業についてです。
 商店街等が行うイベント事業、例えば七夕祭りや納涼盆踊り大会、クリスマスフェア、スタンプラリーなどに対して、新・元気を出せ商店街事業では、東京都が三分の一、区市町村が三分の一の補助を行う仕組みで、総額が百万円以下の小さな事業では、東京都が二分の一、区市町村が六分の一の補助率での支援となっています。
 こうした事業を実施するに当たって、地元の商店街からもう少し使い勝手がよくならないかという話をよく聞きます。例えば、イベントなどでつくったはっぴや装飾品などを有効に活用できるよう、商店街から複数年にわたり実施するイベント計画を提出してもらって、一度作成したものも、その計画のためであれば利用可能とするような事業上の工夫があってもよいかと考えています。
 私は、こうした問題意識を、以前の経済・港湾委員会で明らかにもいたしました。都として、新・元気を出せ商店街事業で複数年にわたるイベントなども助成対象として支援を行うべきものと考えますが、所見を伺います。

○前田産業労働局長 商店街が行うイベントは、高い集客の見込まれる時期や内容を柔軟に取り決めて開催することが効果的であります。そのため、都では、区市町村の策定した商店街振興プランに沿って、商店街が年度ごとに申請するイベントについて、開催の時期や内容を特定して必要な支援を行っております。このイベントの柔軟性を確保するため、複数年にわたる計画を承認する考えはございません。
 新・元気を出せ商店街事業におけるイベント事業の補助は、当該イベントで使用するものに限定しております。なお、イベントで使用した後に廃棄することになった消耗品を、商店街のにぎわいの創出につなげる他の取り組みで再利用することは差し支えないと考えております。

○増子委員 廃棄した消耗品を再利用することは差し支えないというご答弁ですが、それでも一部、むだに思える部分もありますので、さらなる工夫をお願いをいたしておきたいと思います。
 次に、商店街への加入促進についてですが、新・元気を出せ商店街事業などの実施では、当然、商店街及び商店街の連合会などはその事業費に三分の一を負担することになりますし、イベントや清掃などを実施する際は人的な負担も伴います。しかし、商店街に加入していないお店に対しては、商店街が実施するイベントなどに費用や人手を出すこともなく、お客だけを持っていってしまうという批判も聞きます。
 東京都は、新・元気を出せ商店街事業の中で、商店街の連合会等が行う商店街への加入、協力促進を図るため、商店街活性化条例を施行している自治体には支援を手厚くするような対応もしています。やはり商店街で営業するあらゆる店舗が商店街に加入して、しっかりと責任や義務を果たすような雰囲気や環境を醸成していくことが重要だと考えます。
 こうした中、都は個別の商店が商店街にどの程度加入しているのかを改めて正確に把握しておくことが重要であると考えます。加入状況については、都が平成十九年度に実施した商店街実態調査でもある程度は明らかになると思いますが、最近では、商店街の全国組織である全国商店街振興組合連合会でも、百貨店、チェーン店等の協力状況の調査をしていると聞いています。
 商店街への加入状況について、それぞれの調査結果はどのようなものであるのかについて伺います。

○前田産業労働局長 平成十九年度に行いました東京都商店街実態調査では、チェーン店の商店街への加入率は六四%でございました。これに対して、全国商店街振興組合連合会が実施いたしました調査では、百貨店、チェーン店等の商店街振興組合への加入率は、平成二十年二月時点で七〇%となっております。
 ちなみに、先ほども冒頭申し上げましたが、十九年度の東京都商店街実態調査によりますと、八〇%以上の個店が加入している商店街は、全体の約五割となってございます。

○増子委員 商店街への加入の状況について、全国レベルのデータも含めて、調査結果の数値の示している意味を十分に分析していくことが大切かと考えます。加入の状況が改善していることを示すデータを探して、その地域の自治体で何らかの効果的な対策が実施されているのであれば、東京都としても参考にしていくべきです。
 例えば、全国商店街組合連合会によれば、平成二十二年四月二十六日現在、東京都内では三十二の区市で商店街加入促進等に係る条例を制定しているとのことです。東京以外でも、大分、神奈川、奈良、栃木、大阪の五府県で同様の条例を制定していることから、東京都としても条例化を検討していくことも可能なのではないでしょうか。
 さらに、条例の制定がなくても、都道府県が率先してスーパーやコンビニ、居酒屋などのチェーン店の本部などに対して、商店街等への加入や地域貢献などについて働きかけていくことなども考えられます。埼玉県では実際にそうした取り組みをしているとも聞いています。
 そこで、商店街への加入促進に向けた都としての今後の取り組みについて、見解を伺います。

○前田産業労働局長 都は、平成二十年度から組織力強化事業を開始いたしまして、各区市町村が制定しました条例に沿って、商店街が加入促進を図る活動等を支援しております。これにより、既に都内各地域で加入促進に向けたマニュアルの作成やイベントの開催などの取り組みが行われてございます。こうした取り組みによりまして、今後とも引き続き商店街への加入促進を支援してまいります。

○増子委員 次に、平成二十三年度予算の新規事業である環境対応型商店街活性化事業について伺います。
 この事業は、商店街の街路灯のLED化だけでなく、太陽光や風力発電を活用した街路灯の設置など、商店街による環境対策の取り組みを支援するものです。平成二十年十一月当時、まだ実績がほとんどゼロであった商店街のLED街路灯の設置支援の充実を求めたものとして、こうした事業を高く評価いたしたいと思います。
 しかし、当事業の実施期間が三年間とされていることから、街路灯の柱が耐用年数を過ぎていない商店街などからは、いずれ不公平だという声が上がってくるのではないかと懸念をしています。また、特定施策推進型商店街事業のように、五分の四の補助率ではなく、三分の二の補助率であることから、自己負担が大きく、不公平という声が出てくるだけでなく、財政基盤の弱い商店街では、実際は事業を行うことができずに終わることも想定をされます。
 そこで、環境対応型商店街活性化事業の実施に当たっては、これらの課題に対してどのように対応していくのか、見解を伺います。

○前田産業労働局長 都は来年度から、環境対応型商店街活性化事業によりまして、商店街において、LEDや太陽光を活用した街路灯などを整備し、地球温暖化対策の必要性を地域社会にPRすることを支援してまいります。こうした環境問題については、都民のご理解とご協力を速やかに得ることが重要でありまして、同事業を短期間に集中して展開することでその効果を高めてまいります。
 また、LEDのランプ交換はCO2削減に直接結びつくものでありますため、特定施策推進型商店街事業により、事業費の五分の四を助成することとしております。

○増子委員 東京都が二十一世紀商店街づくり振興プランを策定したのは平成十三年三月ですから、既に十年がたちました。この間、オンラインショッピングや電子マネーは一般化し、温暖化対策など、環境問題に対する都民の関心もさらに高まっております。また、買い物難民に象徴されるような、少子高齢社会の進展に対してどう対応していくかなどの課題が取りざたされるなど、商店街を取り巻く状況は大きく変わりつつあります。
 さらに、地方主権と声高に叫ばれるように、区市町村の主体的な取り組みがより一層求められております。
 このような状況を踏まえれば、商店街施策のあり方について改めて検討していくべき段階が既に到来していることは確かだと思います。さらには、商店街だけでなく、中小の商工業者全体を幅広く対象にして、政府が制定した中小企業憲章の趣旨を踏まえ、東京都としても、中小企業振興条例の制定などにより、総合的な商工政策を展開していくべきだということを強く要望をさせていただきまして、私の質問を終わらせていただきます。
 ご清聴ありがとうございました。(拍手)

○山下委員長 増子博樹理事の発言は終わりました。
 この際、議事の都合により、おおむね十五分間休憩いたします。
   午後三時十三分休憩

ページ先頭に戻る