予算特別委員会速記録第四号

   午後六時三十五分開議

○ともとし副委員長 休憩前に引き続き委員会を開きます。
 質疑を続行いたします。
 斉藤やすひろ委員の発言を許します。

○斉藤(や)委員 生物多様性への都の取り組みにつきまして質問をいたします。
 平成二十一年第四回定例会一般質問で、私は、都における生物多様性について質問をさせていただきました。
 昨年の十月に、生物多様性条約締約国会議、いわゆるCOP10が名古屋市で開催されることを受けまして、環境先進都市東京として、世界の諸都市に先駆けて、生物多様性への取り組みを宣言していただきたいとの思いからでございます。
 一般的な発想からいたしますと、都市化とは自然へのマイナス作用であり、生物多様性とは反対のベクトルを有しているはずだということで、並び立たないものだと思われがちです。
 しかし、東京は、大都市でありながら、奥多摩の森林や小笠原の海まで豊かな自然に恵まれている一方、都心部にも大規模な公園があります。私の地元目黒区にも、菅刈公園という自然の残る公園があり、多くの野鳥も集まり、ビオトープには蛍のえさとなるカワニナもいます。こうした都市の貴重な自然は、多くの区民や子どもたちに親しまれております。
 東京都には、こうした生物にとって多様な生息空間があります。都市に暮らす私たちには、衣食住のすべてにわたり生物多様性の保全が必要です。私たちは、その第一歩として、身近な地域の生物多様性に気づき、その保全に取り組まなければならないと考えます。
 そこで都は、大都市東京の生物多様性への取り組みについてどのような認識を持っているか、お伺いします。

○大野環境局長 東京は、世界の都市の中でも飛び抜けて経済規模の大きな都市でございまして、その都市活動は、世界じゅうの広範な地域の多様な自然の恩恵を受けて成立をしております。こうした地球規模の自然とさまざまな形でつながる東京が、生物多様性への取り組みを進める意義は大きいものと認識をしております。
 一方、東京自体の自然も、都民の憩いの場であるだけでなく、貴重な観光資源として、また、魅力的な都市景観を形成する空間として、さらには、身近な農産物の生産の場としてなど、東京の都市活動に多様なかかわりを持っております。
 都はこれまでも、庁内の各局が連携しまして、こうしたさまざまな役割を持つ東京の自然をより豊かなものにしていくために取り組みを進めておりまして、生物多様性の保全にも同様に取り組んでまいります。

○斉藤(や)委員 生物多様性条約の事務局長のアーメド・ジョグラフ氏は、地球上の生命のための戦いは、都市がその勝敗を決すると述べておりましたが、私も全く同感でございます。今、東京都が策定中の、二十三年度中に発表されるでありましょう生物多様性地域戦略に期待をしているものでございます。
 ところで、私は、東京都内で生物多様性を実感できる場所として、日本で最も歴史のある上野動物園を初め、多摩動物公園、そして葛西臨海水族園を訪問いたしました。大変に楽しいだけでなく、まさに生物多様性の重要性を学ぶ生きた教室だと実感いたしました。都立の動物園、水族園は、自然の少ない東京では、野生動物を間近に体感できる貴重な場所だと思います。
 それ以上に私が感動したのは、教育の場としての動物園、水族園の取り組みであります。葛西臨海水族園では、このようなオリジナルの教育活用ガイドブック、これはまさしく園でつくったものでございますが、こういった教材集を作成し、子どもたちが魚などの生息環境への理解を深め、命の大切さを学び、豊かな心をはぐくむ教育普及活動を一生懸命に展開されておられました。
 中には、特別支援学校の盲学校向けに、スイミーの仲間たちと題して、教科書の小学国語に登場する海の生き物を実際にさわって、本物の質感、大きさ、形を体感させる学習プログラムがございます。都立ならではの、都立の水族園ならではの取り組みだと思います。上野動物園も多摩動物公園も同様に、園の特徴に合わせてさまざまな教育普及事業を行っています。
 そこで、都立動物園、水族園の教育普及の取り組みにつきましてお伺いいたします。

○村尾建設局長 都立動物園、水族園は、種の保存、調査研究、教育普及、レクリエーションといった機能を有しており、教育普及の取り組みについては、将来を担う子どもたちへ、動物や自然のすばらしさ、大切さを動物との触れ合いを通じて伝えることが重要と認識しております。
 これまでも、毎年千人規模の参加者がある小学生向けのサマースクールの開催や、中学生を対象に動物飼育などの職場体験を実施しております。さらに、現場に立つ教員のサポートとして、小学校教員に向けた、毎年五百人規模で、理科等の授業に役立つ研修会や講座を実施しております。
 今後とも、生き生きとした野生動物の展示、家畜との触れ合い、職員の専門知識に裏打ちされた研修会などにより、教育普及の場として、都立動物園、水族園の機能を充実してまいります。

○斉藤(や)委員 建設局が教育の場を提供されている、大変すばらしいことだと思います。それを受けて、今度は教育委員会が、まさに子どもたちのいる教育の現場に、それをどう生かしていくかが重要でございます。
 特に、学校の現場で児童生徒の前に立つ教員は、書物や資料などで得た知識だけをもとに授業をするのではなく、これらの施設で実際に体験することを通して、生き物に対する感動などの実感を伴いながら、より深く学び、みずからの言葉で児童生徒に伝えてもらいたいものと思います。
 現在、都立の動物園、水族園では、主に小学校の教員を対象とした夏休みの教員対象セミナーなど、教員向けプログラムを用意し、実施していますが、そこで、児童に直接指導する小学校及び特別支援学校の教員が、積極的に都立の動物園、水族園が実施する取り組みを活用すべきであると考えます。都教育委員会の所見を伺います。

○大原教育長 小学校の学習指導要領では、理科の学習において、児童が観察、実験などの体験を通して、自然の事物、現象についての実感を伴った理解を図ることとしております。
 そのため、現在、各小学校では、第五学年の理科で、メダカ等の魚を育て、卵を観察する活動を通し、動物の発生について学ぶなど、生き物とかかわり、生命を実感する活動を取り入れた学習を行っております。
 今後、都教育委員会は、関係局との連携を一層図り、都立動物園や水族園の取り組みに関する情報について、新たに指導主事を対象とした連絡会や校長会等で説明するとともに、都教育委員会のホームページへの掲載を行い、各小学校等が児童の実態等に応じ、このような取り組みを選択して活用できるよう、情報提供に努めてまいります。

○斉藤(や)委員 ぜひとも現場の子どもたちに、その感動を伝えていくようなご努力を教員の皆様にお願いしたいと思います。
 次いで、教育庁では、都独自に、平成二十二年三月に、このような立派な環境教育カリキュラムというものをみずから作成されまして、都内の小中学校へ配布するとともに、その普及啓発のため、平成二十二年度から環境教育実践推進校を指定して、環境教育カリキュラムを活用した授業研究を進めていると聞いております。
 内容につきましては、自然・生命、まだ生物多様性という言葉は、そのようなジャンルにはなっておりませんけれども、そのような文言もございます。ごみ・資源、エネルギー・地球温暖化、この三つの分野に分けて、各教科の学習内容を指導することにより、同時に、あわせて環境教育につながるといった具体的な指導例が凝縮されているわけでございます。
 都立の動物園、水族園の活用を通して、子どもたちが実感を伴いながら、多様な生き物につきましてより深く学ぶことは大切なことだと思います。
 そこで、生き物とのかかわりを通した環境教育をより推進するため、都立の動物園、水族園を活用した指導事例を新たに作成し、教員に示すことが必要であると考えますが、教育委員会の所見を求めます。

○大原教育長 環境教育カリキュラムは、自然・生命、ごみ・資源、エネルギー・地球温暖化という三つの分野の視点を踏まえた授業を通して、児童生徒がかけがえのない地球について学ぶことができるように作成しております。
 児童生徒に環境についての理解を深めさせるためには、各学校においてさまざまな体験ができる学習を取り入れるなど、環境教育カリキュラムをより効果的に活用していくための工夫が必要でございます。
 今後、都教育委員会は、動物園等の活用が児童生徒に生命の営みを実感させ、多様な生き物の生息環境への理解を促すものとなることから、その活用に関する指導事例を開発してリーフレットにまとめて、公立小中学校へ配布し、普及啓発を図ってまいります。

○斉藤(や)委員 私は、葛西を訪れたときに、マグロが巨大な水槽を回遊している、そういう一番人気のあるコーナーがありましたが、水槽の大きさでしかマグロは生きることができないということをそこで教えていただきました。できれば、できるだけ大きな、三メートルぐらいにマグロは成長するようですけれども、まだ一メートルちょっとしか成長できない水槽だそうですが、建設局にぜひ、その現場のお声もいただきながら、よりよい水族園、動物園の建設をお願いしたいと思います。
 次いで、野生生物の保全について質問します。
 都立動物園、水族園の事業活動の柱の一つ、野生生物の保全事業について質問します。
 保全活動には、希少動物の飼育繁殖など、生息地の外で行う生息域外保全活動というのがあります。
 環境省の保護増殖事業にも協力し、東京都は、佐渡島のトキを多摩動物公園で、そして、ツシマヤマネコは井の頭自然文化園でそれぞれ保全に取り組んでおります。また、希少動物の生息域内で保全を行う生息域内保全活動、こういったものもございます。これは、イモリやメダカなどの東京産の野生動物の保全に取り組むほか、国内外での保全活動を行う団体などと連携していると聞いております。
 持続可能な野生生物の保全のためには、安定した財政力が必要です。国とは異なり、財政再建を実現したからこそできる都立の動物園、水族館ならではの保全活動でございます。
 先日、多摩動物公園内の野生生物保全センターを訪問させていただきました。ホルモン分析やDNA解析、そして、冷凍動物園とも名づけられた配偶子の凍結保存などのバイオ技術を駆使しまして、希少動物の人工繁殖のため、一般の入園者、都民には見えない場所で黙々と働いておられる研究員の方々がおられました。
 国連は、二〇一一年から二〇二〇年を国連生物多様性の十年と定め、この十年間が、多くの野生生物と人間、都民が真剣に向き合う大事な時期となります。この十年のスタートに当たりまして、都立の動物園、水族園がいち早く一月に生物多様性保全活動宣言をしております。
 そこで、都立の動物園、水族園ならではの中長期的なビジョンとして、この野生生物の保全、ズーストック構想を策定すべきだと思います。今後の希少野生動物の保全につきましての都の見解を伺います。

○村尾建設局長 現在、地球上の野生生物は、かつてないスピードで絶滅の危機に瀕しており、希少な野生動物を多く展示している都立動物園、水族園では、繁殖と生息地保全の取り組みにより、種の保存への貢献が強く求められております。
 繁殖の取り組みについては、日本を代表する動物園、水族園として優先的に繁殖させる五十種を平成元年に定め、希少な野生動物の計画的な繁殖に率先して取り組んでまいりました。
 その結果、ニシローランドゴリラやユキヒョウなど三十八種の繁殖に成功し、さらに、誕生した個体を国内外の動物園と交流し、増殖させるなど、国際的な種の保存にも貢献しております。
 また、生息地保全の取り組みとして、絶滅危惧種オランウータンの生息地ボルネオでは、多摩動物公園のオランウータンのスカイウオークで培った飼育技術を生かし、伐採により分断された森林間に消防ホースで編まれたつり橋をかけ、野生オランウータンの移動を助けることに成功し、孤立化した群れの解消に貢献しております。
 今後とも、高度な飼育繁殖技術を生かし、希少動物の保護増殖と野生生息地の保全の取り組みを積極的に進めていくことで、日本の動物園、水族園のリーダーとしての役割を果たしてまいります。

○斉藤(や)委員 どうかよろしくお願いします。この首都におきまして、これだけの多様な動物園、水族園、そして植物園もそうですが、こういったものを有している都市というのは東京が随一でございまして、他の都市の追随を許さないすばらしい施設が都立でございますので、こういったことも都民の方によくご理解いただいて、都民一体となった生物保全活動に取り組んでいくことが大事であると思います。
 次いで、東京都の自転車政策について質問します。
 警視庁の交通年鑑によりますと、二〇〇九年に都内で発生いたしました自転車事故総数は二〇〇〇年より二割減少しましたが、交通事故全体に占める割合がふえております。三六・九%で、二〇〇〇年の二九・〇%から年々高くなっているわけでございます。この数字は、全国レベルでは二一%なのと比較しますと、極めて高い率だといえると思います。中でも自転車と歩行者の事故は、二〇〇〇年から二〇〇九年までの比較では一六%増加しています。
 事故の例でございますが、五十五歳の女性が横断歩道を渡る際に、信号を無視した時速三十キロか四十キロぐらいの会社員の自転車にはねられまして、亡くなりました。また、六十歳の男性が、やはり横断歩道で、ブレーキ装備のない競技用の自転車にはねられて死亡するという痛ましい事故もございました。
 最近では、賠償能力のない中学生、高校生が加害者になってしまうケースも目立っております。十五歳の男子中学生が、夜間に歩行中の六十二歳の男性と衝突した事故では、裁判所は中学生に三千万円の支払いを命じたわけでございます。
 こうした自転車事故の増加の原因は、まさに自転車ユーザー、運転する人のマナーの欠如、これはもとよりです。自転車のための社会資本整備の対応が不十分であったのではないか、また、超高齢社会の姿がそこにあらわれているのではないかというふうに専門家は指摘しております。
 自転車専用レーンなど歩行者と自転車の分離、これは理想的なことですが、こういったことを政策的に明確にしてこなかった結果、歩道上で歩行者が自転車から危険にさらされているということでございます。そこで、自転車走行空間をいかにふやすかが問題となります。
 私の住む目黒区では、南北に環状六号線、環状七号線が通り、北部からは淡島通り、野沢通り、駒沢通り、目黒通りが中部から南部に走っております。目黒川を挟んで、坂が多いこの環状六号線の沿線でございますが、特にその坂を猛スピードで自転車が下ってくる。交差点で、歩行者が非常に危ない、そういう危険な状況に陥らされている、ぶつかりそうになる光景は珍しくありません。特にお年寄りや子どもが危険にさらされております。
 環状六号線は、今、豊島区から中野区、新宿区、渋谷区内におきまして、地域内の声も反映して、自転車走行空間を含めた歩道の整備がされるなど、沿道環境にも配慮していると聞いております。
 そこで、環状六号線の豊島区内から渋谷区内までの整備状況と、これに続く目黒区内の整備について伺います。

○村尾建設局長 環状第六号線は、放射方向の交通を分散させ、交通の円滑化を図るだけでなく、防災性向上などにも資する重要な骨格幹線道路でございます。
 渋谷区から豊島区までの約八・八キロメートルの事業中区間においては、計画幅員四十メートルに拡幅しております。
 この区間では、安全性や快適性に配慮し、約九メートルの歩道に自転車走行空間と歩行者空間の整備を行うとともに、緑豊かな植樹帯を設置しております。
 方南通りから北側の区間はほぼ整備が完了しており、南側の区間についても、平成二十三年度末の完成を目指し、着実に整備を進めております。
 これに続く南側の目黒区内では、約四キロメートルの区間のうち、完成していない概成区間である上目黒地区など一・二キロメートルで計画幅員三十メートルに拡幅する事業を進めております。
 幅員を考慮し、安全な歩行者、自転車空間の整備を、地元の意見も聞きながら行ってまいります。

○斉藤(や)委員 この自転車走行空間の創出というのは大変難事業でございまして、専門家から見ると、道路は非常に狭い。街路樹もございます。人と自転車を分離するのは理想でございますが、今、一生懸命努力をされているというお話でございました。
 したがいまして、そういったことと並行しまして、マナーの欠如、この教育、これをしっかりやっていかなければならないという観点も重要です。交通安全教育がとても重要になっています。
 特に、子どものときに、自転車の安全な利用の仕方や交通法規の遵守など、交通安全教育について、各学校が、家庭が、そして地域が、関係諸機関との連携を図りながら十分な指導をすることが、今後の自転車における交通事故を大きく減らしていく決め手となると考えられます。時間はかかっても、教育が重要でございます。
 都教育委員会は、平成二十一年度より、このような全国で初めてとなる安全教育プログラムを作成し、交通安全教育を含めた安全教育を推進しています。成果を上げていると伺っております。
 特に、高校生となると、自転車で通学している方も多くなります。自転車が軽車両であるという認識を持てるような学習や、自転車事故では自分が加害者になってしまうかもしれないという、そういった学習も掲載されております。各学校の取り組みに温度差とか学校差が生まれないように、安全教育プログラムを通じまして情報を共有していくことが大事でございます。
 そこで、自転車にかかわる交通安全教育の取り組みで、特に成果を上げた具体的な事例と、今後の教育委員会の取り組みにつきましてお伺いします。

○大原教育長 中学校においては、安全教育プログラムに基づいた交通安全の学習で、地域の自転車危険箇所マップを作成することにより、生徒自身が事故発生の要因を分析することができ、危険を予測し、回避する力を高めている事例がございます。
 また、高等学校においては、安全教育プログラムに基づき、交通安全教室だけでなく、加害者責任の学習等を行うことにより、自転車の安全な乗り方に対する意識が一層高まった事例がございます。
 今後も、自転車を含めた交通安全のすぐれた実践事例を、子どもの発達段階に応じて安全教育プログラムに掲載するなど、交通安全教育の一層の充実に努めてまいります。

○斉藤(や)委員 学校で学んでいく、とてもすばらしい取り組みだと思いますが、高齢者の方の安全教育、これもまた大変重要でございます。これは教育委員会の所管を離れるわけでございますが、そういった安全、ルールの教育が重要であると思います。
 そこで、都は、平成十九年の一月に自転車の安全利用推進総合プラン、これはすばらしいプランです。これを策定しております。これだけの総合的なプランを策定したにもかかわらず、なぜ自転車の事故の割合はふえ続けるのか、ここが問題なわけでございます。
 それは、課題はわかっているわけです。課題に対して責任を持って解決案を示すべき実施主体や、それがあいまいであるということ、そしてかつ、目指すべき目標が明確に示されていないというのが実効性に欠ける原因になっているんじゃないかと私は思うわけでございます。
 そこで、都としての自転車政策を総合的に再構築し、自転車に対する各責務と政策目標を明らかにした東京都自転車条例をつくるべきだと考えるわけでございます。
 先日の代表質問で中嶋幹事長からその質問をさせていただきまして、そのときの答弁の中に、都としても、まず、官民の関係機関が連携して、自転車をめぐる諸問題を解決するため、条例制定についての課題も含め、自転車の総合的な政策の検討を行っていくというご答弁もいただいております。
 この都の自転車総合プランには、自転車は、鉄道、自動車、徒歩と並ぶ都市における主要な交通手段の一つであって、その利用を促進するための環境を整えるとまで明記されています。
 さらに、自転車は、近距離移動に大変すぐれておりまして、経済的かつ環境への負荷も少ない都市の有効な交通手段の一つであります。健康増進の観点からも注目されています。
 自転車の利用といっても一様ではございません。ロードレーサー、すごくスピードが出る自転車ですけれども、こういった自転車は、自動車を意識しながら、対抗するような感じで車道をすごい速いスピードで走行していくわけでございますが、通勤などに利用している方もいれば、身近な地域で頻繁に乗りおりを繰り返しているような方も大勢おられるわけです。このような自転車の利用の仕方の違いにも注目して、課題を再整理することも大事だと思います。
 まちのにぎわい空間や身近な生活の路上で起きている危険な自転車走行の問題は、地域の問題、課題ともなっております。その対策には、区市町村の役割が大きいと思います。また、民間団体の意見を聞き、協力体制を構築していく、そういったことも有効だと考えます。
 自転車施策の再構築に当たっては、区市町村と民間が積極的にそこの中に入っていただいて、巻き込んでいってはどうかと考えますが、都の見解を伺います。

○倉田青少年・治安対策本部長 自転車の総合的な施策の検討に当たりましては、地域に密着して自転車施策を展開している区市町村の意見や、自転車利用の実態を把握している民間団体の意見を参考にすることが必要であります。こうした方々と協力体制を構築することは、施策の実効性を確保する上で大切であると考えております。
 このため、区市町村、自転車販売や安全普及にかかわる民間団体の参加を得て、検討を進めていきたいと考えております。

○斉藤(や)委員 このテーマの最後になりますけれども、再構築への体制づくりが重要でございますが、お伺いをしたいと思います。
 自転車施策の再構築に当たって、今この質問でご答弁をいただいた建設局、教育庁、青少年・治安対策本部以外の各局の協力も必要でございます。
 例えば、自転車利用促進は、健康増進にも関係する点で福祉保健局、渋滞解消や環境負荷の軽減効果の点からは環境局、まちづくり、区市町村との連携に密接な都市整備局、自転車業界の振興や観光振興の観点からは産業労働局、また、サイクルスポーツとしてはスポーツ振興局、そして何よりも、取り締まりを厳しくしてくださいという都民の声は大変多く届いていると思いますが、交通秩序の維持取り締まり、違反取り締まりの観点からは警視庁、そして予算財源、大事でございます、財務局など、これはもう全局を挙げて取り組むべき大きな課題でないかと考えております。
 自転車施策の再構築には、都庁全体、区市町村、民間との調整力が不可欠と考えますが、この横断的な検討の場を設置すべきだと思います。都の見解を伺います。

○倉田青少年・治安対策本部長 自転車施策の再構築には、まず現在あります自転車の安全利用推進総合プラン、これのフォローアップを行い、施策の成果や課題を検証していくことが重要であります。
 その上で、自転車をめぐる諸問題の解決には、さまざまな関係機関にまたがる多くの調整を要することから、関係機関、区市町村及び民間団体とともに検討することが必要でございます。このため、都庁内部の連携はもとより、区市町村、民間団体と連携する場を設置し、自転車の総合的な施策の検討を始めることとしております。

○斉藤(や)委員 具体的な取り組み、しっかり推進を応援してまいりたいと思います。
 最後のテーマでございますが、内部障害者への理解について質問いたします。
 内部障害者、これは体の内部に障害を持つ方のことで、外からは見えないために、周囲の人たちから理解を得にくく、日常生活でさまざま不便、つらい思いをされております。
 身体障害者手帳交付者数のうち、平成二十二年三月末現在の内部障害者数は十一万六千六百三十五人、これは身体障害者手帳交付者の約四分の一に当たる割合となっております。
 この内部障害の種類としましては、心臓機能障害、腎臓機能障害、呼吸器機能障害、膀胱または直腸機能障害、小腸機能障害、ヒト免疫不全ウイルスによる免疫機能障害、重い肝臓機能障害の七つがありまして、これらが総称されて内部障害といわれます。
 私が内部障害者について関心を持ちましたのは、中央区にお住まいのご婦人を紹介されたことがきっかけでございました。
 彼女は、一九九九年に膠原病と診断され、さらに心臓から肺に血液を送る肺動脈の血圧が上がる難病の肺高血圧症を併発した内部障害者の方でした。
 彼女は、NPO法人ハート・プラスの会の理事として、仕事を失い、閉じこもりがちになりがちな内部障害者が多いことから、病気を抱えながら頑張っている自分たちの存在を認めてほしいとの思いで東奔西走されました。
 ハート・プラスの会の皆さんが、自分たちの存在を社会に知ってほしいとの思いから、その内部障害者であることをあらわすマークを、ハート・プラスマークというものを新しく作成したわけでございます。これがそのマークでございます。
 障害者をあらわすマークといいますと、車いすをモデルにしたマークが国際シンボルマークとなっています。そのために、身体障害は可視的なもの、肢体不自由だというふうな認識が広がっているわけなんです。それだけじゃないんです。内部に持っている方も身体障害でありますので、その独自のマークを作成したわけでございます。(発言する者あり)ありがとうございます。
 マークを作成いたしましても、そのマークが内部障害者を示しているということが都民に広く知られていないと、認識されていないと、そのマークをつくった意味がないわけでございます。都民が広くそれを認識することが必要だと思います。
 そのために、例えば、多くの都民が日常的に集まってこられます都庁舎、それから、都営地下鉄や都営バスの施設や車内、学校の掲示板とか、都民啓発の場として活用させていただけないでしょうか。さらには、都が提供するテレビ番組を利用することも検討するべきである、こういったことを平成二十一年の第四回定例会で私は取り上げさせていただきましたが、その後、都はどのように推進されたでしょうか。
 私は、内部障害者の存在を都民に啓発する場として、ユニバーサルデザインの先進都市を掲げる東京が、みずから有する施設の活用が有効であると考えます。
 そこで、まず、内部障害者が施設設備を利用しやすくするため、ハート・プラスマークを福祉のまちづくり条例の施設整備マニュアルへ記載する必要があると考えますが、都の見解を伺います。

○杉村福祉保健局長 福祉のまちづくり条例施設整備マニュアルは、事業者等が建築物等を設計する際に踏まえるべき施設整備の考え方や整備基準等を解説するとともに、エレベーターのマーク、あるいは非常口のマークなど、施設や設備の情報をわかりやすく表示した図や記号についても参考として記載をいたしております。
 お話のハート・プラスマークなど、障害等の特徴をあらわすマークにつきましては、こうした図や記号と組み合わせて掲示することで、施設設備等の適正利用を促す効果が見込まれます。
 このため、ハート・プラスマークを初め、妊産婦マークでありますとか、あるいは乳幼児連れマークなどにつきましても、その趣旨が正しく理解され、活用が図られますよう、説明等を工夫いたしまして、今後、マニュアルに掲載をしてまいります。

○斉藤(や)委員 大変大切なご答弁を賜りました。例えば、今のこのマニュアルに掲載されたということを前提ですが、内部障害者の方は、車をよく利用されます。とてもつらいお体ですから。駐車場に車をとめる際に、大変な苦労があるということでございまして、車いすのマークの駐車場にとめようとすると、健常者と間違われまして、誤って注意される。なぜあなたは普通の体なのにそんなところにとめるんだ、ルール違反じゃないか。時には限られた駐車スペースをめぐって、肢体不自由の方と障害の大変さをいい争いになってしまうようなトラブルも起きるケースを聞いております。これは、障害が見えないことがもたらす誤解なんです。
 そこで、都有施設にあります駐車場に、内部障害者が利用できる旨とハート・プラスマークを設置すべきと思います。まずは、多くの都民が利用する都庁舎について、ぜひとも駐車場スペースに内部障害者マークと内部障害者が駐車できる旨の表記をしていただきたいと思いますが、都の見解を伺います。

○安藤財務局長 都庁舎では、障害者対応の駐車場として、来庁者向けに十一台分の専用スペースを設置しております。内部障害者の方がこれら障害者用スペースを円滑に利用できるよう、現在の車いすマークに加え、ハート・プラスマークを表示し、あわせて、内部障害者も利用できる旨を表記いたしたいと思います。速やかに実施をいたします。

○斉藤(や)委員 速やかという言葉は、障害を持った方にはもう本当にありがたくとらえられていると思います。いち早く整備をお願いしたいと思います。(「パーキングパーミットもついでにやってください」と呼ぶ者あり)はい、それはパーキングパーミットにそのマークもまた生かされることになると思いますので、ぜひともお願いいたしたいと思います。
 そして、これも内部障害者の方から聞いた話ですが、通勤電車の中で優先席に座っているときに、外見から障害があることがわからないために、周囲の方から、そこに座っていますと厳しい視線を向けられて、あなた、若いんだから譲りなさいよといわれることも多々あるとのことです。
 また、若い内部障害者の女性が優先席に座っていたときですが、つえをついた方が--そこは誤解です--つえで足を突きながら、そこは私が座る席だよというようなことをいわれて、大変つらい思いをしたということもございました。
 現在、公共交通機関の優先席につきましては、いろんなマークがございますので、交通エコロジー・モビリティ財団がその統一デザイン、内部障害者を含む優先席の図記号の組み合わせ表示を今作成中と聞いております。しかし、いましばらく時間もかかるようでございます。
 そこで、ぜひとも、百周年を迎える都営交通の各駅の掲示板や地下鉄の車両、都営バスのスペースに、内部障害者の啓発やハート・プラスマークを掲載したポスターなどの掲示をしていただきたいと思います。ご見解をお伺いします。

○金子交通局長 内部障害者の方が都営交通を安心して利用していただけるよう、交通局では、これまでもホームページやパンフレットなどを活用して、内部障害者の方への配慮を呼びかける広報活動に努めてまいりました。
 ただいまお話のありました啓発ポスターにつきましては、今後関係局と連携し、駅や都営地下鉄、都営バスなどの車内での掲出に協力してまいります。

○斉藤(や)委員 きょうは学校まではということはちょっと乱暴ですので、教育の現場、これは教育の内容じゃなくて、いろんなことをお知らせする掲示板、こちらの方にもぜひともお願いしたいという気持ちがございます。
 これはマークが大事なんじゃないと思うんです。内部障害を持った方をみんなで思いやっていくという社会をつくっていくということがその根本でございまして、デザインとか、そういった細かいことではなく、そのマークに込められた思い、これを受けとめていっていただきたい、このように思っているわけでございます。
 先日も、心臓に拡張型心筋症という難病をお持ちの方にお会いしてまいりましたが、見た目は本当にお元気なのですが、実際は重篤な心臓疾患で、いつ体調が急変するかわからないということです。その方はいつもお別れする際に、次にお会いする約束ができません、いつ倒れるかわかりませんと、真剣な面持ちで応対されるわけでございます。
 先ほど財務局長、速やかにというお言葉がございましたが、この重篤な疾患を持っておられる内部障害者の方々は、毎日毎日、砂時計の砂を見詰める思いで都の施策の実現を待っておられます。
 関係各局の皆様、どうか一刻も早い施策の実現を強く要望させていただきまして、私の総括質疑を終わらせていただきます。ありがとうございました。(拍手)

○ともとし副委員長 斉藤やすひろ委員の発言は終わりました。

ページ先頭に戻る