予算特別委員会速記録第四号

○泉谷副委員長 吉住健一委員の発言を許します。
   〔泉谷副委員長退席、高橋副委員長着席〕

○吉住委員 昨年十二月の都議会において、我が党の宇田川議員から、電気自動車は排出ガスがなく、大気汚染対策としてだけではなく、地球温暖化対策としても普及が期待されることについて質問をいたしました。
 走行時にCO2を排出しない電気自動車の特徴の一つに、回生ブレーキを搭載していることが挙げられます。回生ブレーキは、一般的な自動車では失われてしまうエネルギーを、再びバッテリーに回収し、みずからの電気エネルギーとして利用できる仕組みとなっています。
 このため、信号待ち等によって頻繁に加減速が行われている東京では、エネルギーを効率的に利用できる回生ブレーキを持つ電気自動車の普及が非常に有効であると考えますが、見解を伺います。

○大野環境局長 自動車の回生ブレーキのエネルギーの回収は、未利用エネルギーの活用技術の一つでございまして、エネルギーを有効かつ効率的に利用できるため、地球温暖化対策としても有効でございます。
 ご指摘のとおり、交通が高密度に集中する東京のような大都市におきましては、交差点や渋滞など、停止と発進の機会が多く、回生ブレーキの効果がより発揮される状況にございます。
 特に電気自動車は、同じく回生ブレーキを搭載するハイブリッド自動車と比べましてもバッテリー容量が大きく、エネルギー密度の高いリチウムイオン電池を搭載しておりますので、より多くの回生電力を得るように設計されております。
 こうした電気自動車の特性を踏まえまして、東京で適切に普及を図ることは、大きな意義があると考えております。

○吉住委員 普及目標の達成に向け、東京都は、中小事業者に対する電気自動車の買いかえへの補助制度や、急速充電設備の設置に対する補助制度を設けるなどの取り組みを進めていますが、普及に向けた課題は、経済的な負担だけではありません。
 昨年十二月の都議会の質疑の中で、一般的な自動車と比べて年間走行距離が長いタクシーへの電気自動車の普及に向けて、営業実態を把握しながら運用形態の検証を行う必要があると答弁されました。
 電気自動車の導入によるCO2削減効果がより高いタクシーへの普及を、まず目指していくとすることが効果的であると考えますが、走行可能距離の制約や充電時間の確保といった課題を抱える電気自動車のタクシーへの導入をどのようにして進めようとしているのか、見解を伺います。

○大野環境局長 都は、タクシーに利用可能な普通乗用車タイプの電気自動車の市場投入が、昨年十二月に開始されたことを踏まえまして、平成二十三年度から、タクシー事業者の協力を得まして、電気自動車のタクシー、いわゆるEVタクシーにつきまして、実用性等の調査の実施を予定しております。
 この調査では、EVタクシーの走行性能やタクシー事業におけます効果的な運用方策のほか、車両やバッテリーのメンテナンス性、充電設備の利用状況などにつきまして、幅広く調査をしてまいります。
 この調査によりまして、実用性が高い運行方法や使用方法等を明らかにしてまいりたいと考えております。

○吉住委員 電気タクシー、いわゆるEVタクシーの調査による取り組みの内容を明らかにされましたが、この調査を通じて、タクシー事業者がみずからの課題の解決のみならず、東京の道路事情を知り尽くした専門家としてのユーザーの視点から、都内で実際に走行した中で、電気自動車の実用性と課題を明らかにすることができると思います。
 また、多くの都民に対して、電気自動車の乗車機会を提供することを可能とさせるものであり、電気自動車の普及に貢献できる取り組みとなると考えます。
 この調査が、東京の実情に適した電気自動車の普及につながっていくためには、都民に電気自動車のメリットやデメリットを正しく理解してもらうことが必要と考えますが、見解を伺います。

○大野環境局長 本調査で、EVタクシーに乗車することのできる乗客数は約二十万人に及ぶものと推計しております。多くの都民に、電気自動車への乗車する機会を提供するものとなっております。できるだけ多くの都民の方に、実際に電気自動車に乗車し、そのメリット、デメリットを体験してもらえますよう、EVタクシーであることが一目でわかるような表示を行うなど、広く都民にEVタクシーの利用を呼びかけてまいります。
 また、調査の結果を踏まえた広報を積極的に行うことによりまして、都民に電気自動車の利点や課題をしっかりと理解していただきながら、都内での運行に適した用途での普及を進めてまいります。

○吉住委員 電気自動車はこれから本格的に普及していく段階にあり、今後、事業活動や都民生活に定着していくためには、充電インフラの整備等に加え、ユーザーの視点に立った調査や普及活動などのきめ細やかな取り組みを、まずはしっかりと行っていくことが重要だと認識しています。
 タクシー事業者と連携して、しっかりと調査を実施していただき、東京都ならではの電気自動車普及策がスムーズに進むことを期待いたします。
 次に、都市計画道路について伺います。
 都市計画道路は、都市にとって人や物の移動をつかさどる血管のような役割を果たしています。特に、東京のように人口が集中し、商業機能も充実し、さらには首都として外部からの人や物が集中する都市部においては、計画的に道路を整備し都市機能を成熟させていく必要があると考えております。
 新宿区の放射二五号線は、通称抜弁天と呼ばれるところで放射六号線と接続し、多摩ともつながる都市計画道路です。この道路の地下鉄大江戸線若松河田駅近辺について、昨年、都は新たに事業認可を取得したと聞いております。決まった以上は、迅速かつ丁寧に、事業を進めていただきたいと考えております。
 しかしながら、本区間は店舗や店舗併用住宅が多数立地する商店街であることから、整備を進めるに当たっては、生活者の目線を大切にした用地の確保が重要だと考えております。
 そこで、事業認可の取得後のこれまでの経過と、用地取得に当たっての関係権利者の生活再建に対する考え方や取り組みについて伺います。

○村尾建設局長 放射第二五号線は、新宿区新宿七丁目から文京区本郷二丁目に至る延長約四・七キロメートルの区部中心部を東西に結ぶ重要な骨格幹線道路でございます。このうち新宿区新宿七丁目から原町三丁目までの延長八百六十メートルの区間について、平成二十二年十月に事業認可を取得し、同年十一月に用地説明会を実施いたしました。
 用地取得に当たっては、これまでも公正かつ適切な補償を行うとともに、特に移転を余儀なくされる方々の生活再建は重要な課題として、代替地や都営住宅のあっせん、移転資金の貸し付け、不動産情報の提供など、さまざまな対応を行っております。
 特に当該区間は、店舗や店舗併用住宅などが多く、個々の折衝では、関係権利者の生活再建に十分配慮し、きめ細かく取り組んでまいります。
 今後とも道路整備に必要な財源の確保に努めるとともに、地域住民の理解と協力を得て、早期に効果を発現できるよう、積極的に事業を推進してまいります。

○吉住委員 関係権利者の生活再建など、事業への協力者に対する配慮した取り組みが行われていることは理解しました。
 それでは、道路が整備された後のまちづくりについて伺います。
 商店街に面した道路の拡幅では、拡幅の幅にもよりますが、商店街を形成していた店舗が丸ごとセットバックの対象となり、旧来の商店街自体が消滅してしまう場合もあります。商店街のにぎわいを考えれば、余りにも広い道路になったために、再建された商店街が、それぞれの側に寄った二つの商店街のようになってしまう場合もあります。
 中には、住宅地の間を通っていくため、いびつな形で宅地や店舗が残存し、再建に困難さを持ったまちもあると聞いています。
 道路整備後のまちの姿を考える主体は地元の住民であり、その相談に乗ったり、助言をしたりするのは、地元の市区町村ということは理解をしております。しかし、道路整備にまつわる事業計画の説明会や用地測量の説明会では、関係権利者は目の前の課題に集中するため、どちらかといえば、整備後のまちの姿には目が行きづらくなっていると思われます。地元住民が、みずからの意思で将来のまちづくりの展望を描いていくためには、都が有する経験や知識の活用が必要です。
 都では、市街地再整備事業や沿道一体整備事業など、さまざまなまちづくりの事業を実施しており、これまで培われた経験や知識が豊富に蓄積されていると思います。商店街や住宅地において、道路整備にあわせて組合施行の再開発事業などを計画し、地元主体のまちづくりを進めることにより、地域の活力が一層向上すると考えますが、見解を伺います。

○河島東京都技監 幹線道路など、都市計画道路の整備にあわせまして沿道のまちづくりを一体的に進めることは、効率的な土地利用を促し、地域の活性化や防災性の向上に寄与するのみならず、権利者の地域内における生活再建を進める上でも有効でございます。
 例えば、文京区の後楽二丁目西地区では、放射二五号線の整備にあわせて、民間施行の市街地再開発事業により、沿道のまちづくりを行っております。
 また、豊島区の東池袋地区などでは、都市計画道路の整備とあわせて沿道の民間建物の共同化や敷地の統合化を図っております。
 これらの取り組みは、地元の権利者と区が連携してまちづくりを推進してきたものでございまして、都は、これまで蓄積してきた経験やノウハウも活用しながら、技術的な支援などを行ってまいりました。
 都としては、引き続きこうした地元の取り組みを積極的に支援してまいります。

○吉住委員 ただいまご答弁いただきました。どうしても都市計画道路、線を引いてから大分時間たっておりますし、また、実際にその説明会が開かれる段階になるという段階では、既にその後のことの計画も進んでおります。道をつくるということになれば建設局になりますし、まちづくりということになれば都市整備局となります。それぞれ地元の自治体、また住民の方からいろいろご相談もあろうかと思いますが、今後とも積極的なこれまでのような取り組みをお願いしたいと思います。
 続いて、産業振興について伺います。
 先日の本会議の代表質問において、我が党は、若者の就職状況が一層厳しくなる中、やる気のある若者の職業的な自立を促進し、中小企業の発展を促すため、中小企業の人材確保について、これまで以上に踏み込んだ方策を打ち出すよう求めました。
 これにこたえて、石原知事は、若者に現場の魅力をじかに伝える都独自の取り組みを重層的に展開し、東京の産業力を強化していくとご答弁されました。また、施政方針演説においても、東京の中小企業のオンリーワン技術のすばらしさに若者の目を開かせ、秘めたる可能性を肌で感じさせて、双方を結びつけていくと、大変力強く語られました。
 我が国の経済を支えるのは中小企業であり、その源泉は高い技術力と、それを使いこなせる意欲ある人材です。若者が大企業ばかりに目を向けているようでは、我が国の将来はありません。
 中小企業の未来を担う人材を確保するためには、東京の中小企業のオンリーワン技術のすばらしさを若者に知ってもらう必要があります。
 そこで、都は、中小企業の魅力を広く世の中に伝えていくために、具体的にどのような取り組みを進めていくのか伺います。

○前田産業労働局長 中小企業の魅力を若者に広く発信するため、都は、中小企業二百社について、その技術力や若手社員の声を紹介いたします冊子「輝く技術 光る企業」を平成二十年度から作成し、工業系の大学や高校などへ配布するとともに、ホームページにも掲載しております。
 来年度は、加えて、中小企業サクセスロード情報発信事業を開始いたしますが、例えば、小さなまち工場から国際的な大企業に成長してきた事例を、インターネットによる動画配信などを通じて発信することによりまして、中小企業の将来性や潜在的な力を伝えてまいります。
 また、経営者みずからが商業高校や工業高校で講義を行っていただきまして、直接、若者に対して中小企業の魅力を伝える取り組みも開始いたします。
 こうした取り組みにより、中小企業の魅力を若者に発信してまいります。

○吉住委員 さまざまな資料やインターネット、また動画、そして経営者本人にもお出ましいただいて、中小企業の魅力を伝えていくことは大変効果があることだと感じます。スタートとして、まず興味を持ってもらうことが大事だと思います。
 そして、百聞は一見にしかずといいますが、次のステップとして、実際に現場を体験してもらうことが重要だと考えます。
 ものづくりの高度な技術に触れ、そこで生き生きと働く先輩たちに接することで、より一層中小企業を身近に感じることができ、具体的な就職に結びつきやすくなると考えます。
 ふだん何げなく見ている製品が、中小企業で製作されているところを見たり、非常に高度な機械の技術が中小企業で開発されている現場を目の当たりにすることによって、ものづくりの現場の可能性を若者たちに再認識してもらいたいと考えます。
 例えば、美容ローラーというのがありますが、そのもともとの技術というのは、自衛隊の掃海艇のソナーの一部品でした。それを技術転用することによって、そういう製品に使いまして大変ヒットした商品になったんですが、そういうちょっとしたところにいろんなことが隠されています。
 そういう技術の可能性を学生たちに知ってもらう上でも、これまでも企業現場を訪問する取り組みを都は進めていらっしゃいましたが、さらに、さまざまな形で取り組みを進めるべきだと考えます。
 そこで、若者が中小企業の現場を体験する機会の充実に向け、都はどのように取り組んでいくのかお伺いをいたします。

○前田産業労働局長 若者が実際に中小企業の現場を訪れ、仕事をみずから体験することで理解を深め、就職の選択の幅を広げていくことは重要であります。
 このため、都は、学生やその保護者がバスツアーにより中小企業を訪問いたします、仕事体験ツアーを実施しております。今年度は八回開催いたしまして、参加者からの評価が高かったことから、来年度は回数を十二回にふやしまして、現場を訪問する機会の充実を図ることといたしております。
 また、中小企業における若者のインターンシップを推進するため、来年度から、ものづくり中小企業魅力体験受け入れ支援事業を開始いたしまして、企業に対し、若者の受け入れを働きかけるとともに、企業側の方で受け入れに必要な費用の一部の助成を行います。
 こうした若者の現場体験を通じて、中小企業の人材確保を支援してまいります。

○吉住委員 さまざまな取り組みが、また新たに始まることがわかりました。ぜひ取り組んでいただきたいと思います。
 こうした取り組みが、産業振興のみならず、将来を担う若者の育成の観点からも非常に重要なことだと思います。教育庁を初めとする関係各局が連携を密にして、事業を進めていくことを求めてまいりたいと思います。
 さて、日本経済の停滞状況が続く中、ものづくり中小企業にとって、生き残りをかけた厳しい局面が続きます。中小企業がこの厳しい経営環境から抜け出すためには、既存の取引企業からの受注を待つことやコストダウンを重ねるだけでは限界があります。これまで培ってきた技術を武器に、独自の製品を開発し、新たな事業分野を開拓していくことが必要です。
 しかし、今日の技術開発は日進月歩のスピードで進んでおり、すべてを自社の技術を用いて製品開発をしていては、厳しい競争に伍していくことが十分できない状況もあります。
 こうした中、他の企業などの技術を積極的に活用して、迅速かつ効率的にアイデアを具体化し、市場が求める製品や技術を実現する手法が注目されております。
 例えば、都内のある精密計測器の企業が、無線装置をつくるメーカーからの技術協力を受けて、計測した数値を無線で工作機械に送信する機器の開発に短期間で成功したといった事例があります。
 こうした成功事例は、精密計測器の企業が、無線の可能性を認識しつつ、これを得意とするメーカーの技術を柔軟に導入して実現したものと考えます。
 しかし、中小企業が技術開発に当たり、他社への発注などを繰り返しながら開発の可能性を検証していくことは、自社開発と比べ多くの困難があるものと考えます。
 中小企業の技術開発について、他社の技術を導入するための検証の負担を軽減する支援も重要と考えますが、所見を伺います。

○前田産業労働局長 中小企業が外部の技術を導入する、そういうことをします場合には、一定の費用がかかることがありますが、これを行うことで、自社ですべて開発するよりも迅速かつ確実に新たな製品を開発できる場合も多くございます。
 このため、都は、外部の技術を導入して新たな製品を開発しようとする中小企業に対しまして、開発の初期段階で生じる経費の一部を助成いたしますオープンイノベーション促進助成事業を来年度から開始をいたします。
 具体的には、都立産業技術研究センターや東京都中小企業振興公社のコーディネーターが支援いたしまして、技術導入を取り決めた中小企業のすぐれた開発案件に対しまして、開発初期段階における他企業等への委託研究費などの経費の二分の一を、百万円を上限に助成いたします。
 この取り組みにより、中小企業の迅速で効果的な技術開発に向けて支援してまいります。

○吉住委員 さまざまな支援をしながら、中小企業の技術開発について協力をしている姿がよくわかりました。
 ところで、そのものづくりの現場で生産されたものが国際競争に打ち勝っていくためには、輸送手段も整えておく必要があります。
 そこで、海外輸出にかかわりのある港湾の競争力について伺います。
 昨年八月、京浜港は国際コンテナ戦略港湾に選定されました。これから、我が国を代表する港湾として国際競争の舞台に打って出るわけですが、競争に打ち勝つには、選定されたことでよしとするのではなく、地に足のついた現場の課題解決が必要不可欠と考えます。
 一例を挙げれば、足元の東京港は、施設の狭さもあり、コンテナターミナル周辺の交通混雑が日常化しています。東京港の交通混雑にどのように対処するのか、都の見解を伺います。
 また、ふえ続ける輸出入貨物を効率的にさばくには、港湾施設の現状を前提とした取り組みだけではなく、東京港のコンテナターミナルを初めとした施設を増強する中長期的な取り組みが必要ではないか、続けて見解を求めます。

○中井港湾局長 交通混雑解消を図るため、都はこれまで、ITを活用した渋滞情報の提供や予約搬出入の促進により、コンテナターミナル利用時間の平準化を図る取り組みなどを進めてまいりました。
 しかしながら、貨物量が年々増加する中で、用地の制約などによりターミナルの処理能力が限界に近づいており、さらなる混雑解消策が必要となってきております。
 そこで、ターミナル用地の有効活用を図るため、システム制御によって大量のコンテナを荷さばきする立体格納庫を設置し、この四月から本格稼働することとしております。
 また、ふ頭周辺に貨物の保管場所を設置し、コンテナ車がいつでも貨物を搬出入できる仕組みを事業者とともに構築し、現在、その実証実験を行っておりますが、良好な成果が出つつあります。
 今後とも、さらにさまざまな工夫や改善を重ね、交通混雑解消に引き続き努めてまいります。
 また、貨物の効率的荷さばきのための施設整備についてでございますが、増加するコンテナ貨物を適切に処理するためには、委員ご指摘のとおり、コンテナふ頭やこれを支えるインフラ施設を抜本的に拡充していく必要がございます。
 このため、現在、平成二十五年度の完成に向け、中央防波堤外側地区に新たなコンテナふ頭を整備中であり、これを契機に、コンテナふ頭の再編に着手してまいります。
 あわせて、大井ふ頭南側に埋立地を造成し、空コンテナ置き場などターミナルを支援する施設を整備することにより、コンテナふ頭の機能向上を実現してまいります。
 さらに、コンテナふ頭と背後の幹線道路との交通の円滑化を図るため、臨海道路Ⅱ期事業及び新木場若洲線の整備を着実に進めるとともに、臨港道路南北線の早期事業化を図るなど、東京港の物流機能の充実強化に向け積極的に取り組んでまいります。

○吉住委員 よくわかりました。
 それでは、続いて水道事業について伺います。
 さきの本会議において石原知事も指摘しているとおり、世界では、まだ九億もの人が安全な飲料水にアクセスできないといわれています。国連は、平成二十七年までに、安全な飲料水及び衛生施設を継続的に利用できない人々の割合を半減させる目標を掲げていますが、達成に向けた改善は必ずしも順調ではないと、国連みずからが認めています。
 こうした状況を踏まえて、我が党は、水問題への貢献はもとより、停滞する日本経済を活性化する取り組みとして、水ビジネスの重要性を指摘してきました。
 特に私は、昨年の第三回定例会において、都が中心となった自治体との連携協力関係の構築を提言しました。この提言に対して、水道局長から、各事業体が連携できる基盤、プラットホームともいうべき体制を構築していくという前向きな答弁をいただいています。
 そこで、このプラットホームの運営状況と今後の展開について伺います。

○尾崎水道局長 当局では、昨年十二月、国際展開に取り組む全国の水道事業体に呼びかけ、連携して国際展開を進めていくため、自治体水道国際展開プラットホームを設置し、実務担当者による第一回定例会議を開催いたしました。
 参加団体は、都を含む十五都市の水道事業者と社団法人日本水道協会で、今後参加を希望する事業体があれば、順次受け入れを行うこととしています。
 会議では、参加団体間の情報共有の促進や国等に対する共同の政策提言などの活動方針を確認するとともに、各団体の取り組み状況や課題等について活発な議論を行いました。
 今後、都が先導し、本プラットホームを有効に活用した取り組みを進めるとともに、団体相互で課題の解決に当たるなど、国際展開の取り組みを一層推進してまいります

○吉住委員 活発な議論が交わされたとのことですが、水道事業を経営する自治体間の連携は、地に足のついた事業展開や政策提言の土壌となるはずです。プラットホームを通じて、国際貢献ビジネスという東京発の取り組みが、全国に広がっていくことを期待したいと思います。
 アジア諸国の水道は、漏水や盗水が多く、料金収入に結びつかない無収水の比率が高いことが共通の課題と聞いております。
 そこで、アジア諸国における無収水の状況とその削減に向けた都の取り組みについて、マネジメントの面も含めましてお伺いしたいと思います。

○尾崎水道局長 当局がミッション団を派遣したマレーシア、ベトナム、インドネシア、インドでは、無収水率がおおむね三〇%から四〇%程度となっており、各国とも無収水の削減を最大の課題としております。
 都は、こうした国々に対し、長年にわたり蓄積した漏水防止技術を生かして、ニーズに適合した支援を行うことが可能と考えております。
 また、無収水の削減には、老朽管の取りかえなど多額の設備投資が必要であり、途上国にとって資金調達が大きな課題となっております。
 このため、都は国等に対して、政策金融支援の拡充強化や財政措置及び公的保証制度の拡充等の提案要求を行い、JICA等による海外投融資の再開など、要求の一部が実現いたしました。
 今後は、無収水の削減に向け、各国の実情に合わせた技術支援を積極的に行うとともに、途上国の水道インフラ整備に要する資金支援策の充実に向けて、あらゆる機会をとらえて国や関係機関に強く要請し、対応を促してまいります。

○吉住委員 ただいま主なアジア諸国における無収水の比率を伺いましたが、浄水場でつくった水の三分の一から半分近くが収入にならないというのは大変な非効率です。
 途上国では、経済成長に伴う都市への人口集中などにより、水不足が深刻な問題となっていると聞きます。
 一昨日の代表質問では、マレーシアやベトナムのプロジェクトが動き始めたとの答弁がありましたが、こうした国々に対し、東京の経験を生かした改善策は、必ずや役に立つものと考えます。
 こうした東京都の積極的な取り組みに対し、国の方では相変わらず縦割り主義がばっこし、省庁がばらばらで、いまだ役割を果たしているとはいえません。
 さらに、今議会において、共産党は、本会議、予算特別委員会の中で驚くべき主張をしていました。昨日、我が党のきたしろ委員が、共産党の主張は非常に偏り、都の取り組みを曲解していると指摘していますが、私も同感です。
 単なる我欲で、水不足で困っている人に高い水を売りつけ、個人や企業の欲望を満たすのでは推奨できませんが、東京の最高水準の技術を誇りと使命感を持って伝えていき、アジアの同胞を救おうという行為は、都政にかかわる者の一人として歓迎したいと考えています。
 そこで、都が日本の水ビジネスの取り組みを先導していくべきと考えますが、知事の所見を伺います。

○石原知事 国は、おっしゃるとおりです。相変わらず省益優先の縦割りで、すべての物事にスピード感や現場感覚も欠いておりまして、世界の大きな流れを見定める能力も欠落しており、動きは遅々として進まない様相であります。
 ならば、日本のダイナモである東京が、現場の英知を集結して、東京から日本を変えていく必要があると思います。都は、水ビジネスの分野において、国、企業、自治体を巻き込みながら、自治体連携の中核となり、また企業連合形成の触媒となるなど、先陣を切って取り組んでおります。
 この今の一瞬でも、世界の途上国では、何の罪のない多くの子どもたちが、飲み水を原因として命を落としているわけでありまして、今後とも世界最高の東京水道の技術を海外でも活用し、発展途上国の水事情の改善に貢献するとともに、日本の経済の活性化につなげていきたいと思っております。
 なお、何でもかんでも反対の日本共産党は、この問題についても、わけのわからないいいがかりをつけて反対しておりますが、東京のすぐれた水道技術によって救われる命があり、発展する都市があり、日本と相手国の間に水を媒体にして真の友情が芽生えることは、だれの目にも明らかであると思います。
 東京の持つ力を正当に認識せず、また世界の中で果たすべき東京の役割をできないのは困ったことでありますが、これが日本共産党の限界でしょう。商社との提携が本質的に悪だという……(発言する者あり)うるさい。発想は、共産党本家のロシアでも中国でも通用しないんじゃないんでしょうか。

○吉住委員 ただいまの知事のお答えを伺い、大変心強く思いました。
 閉塞感の漂う現在の我が国において、水道を初めとするインフラの輸出は成長が期待できる数少ない分野の一つです。そして、アジア諸国に漏水なき水道インフラを普及すると同時に、高度に洗浄することができる日本の技術を普及させることによって、子どもたちの命を守ることもできます。アジアにおける日本と各国の友情を深めると同時に、日本の将来のためにも、東京発の新しいうねりをとめてはならないと思います。今後も、この意義ある取り組みを着実に進めていただきたいと思います。
 最後に、下水道事業について伺います。
 外堀の合流式下水道の改善対策について、取り組み状況について伺います。
 外堀と申しますのは、江戸城の備えとして、江戸幕府の天下普請の号令で全国の有力大名が力を合わせて築いたものでございます。そして、それは三代将軍家光の時代に完成しました。
 当初の外堀は、東西約五キロ、南北約四キロにわたり、世界最大規模の城郭であった江戸城の外郭を形成していました。東京の都市機能が近代化していく過程で、鉄道建設やまちづくり用地として埋め立てられ、現在では、JR総武線の市ヶ谷駅から飯田橋駅の間で見ることができる市ヶ谷濠、新見附濠、牛込濠と、そして赤坂見附に隣接をする弁慶濠に往時の姿をとどめるのみとなりました。
 現在残る外堀周辺には、水辺や緑がいまだ残っており、都心において安らぎを提供する水辺であるとともに、江戸の歴史を感じさせる貴重な歴史的遺産となっています。
 しかし、弁慶濠以外の外堀では、合流式下水道の吐け口から、雨天時には汚水まじりの雨水が放流されており、同じ江戸城の一角であった内堀と同様に、降雨後に一時的に水質が悪化します。
 内堀については、議会において、我が党の古賀議員、そしてきたしろ議員から、水質改善に向けた取り組みについて質問をさせていただき、現在では、下水道幹線の整備や一部地域で分流化などの対策が既に実施をされています。
 一方、外堀は、雨が降り水位が上昇した場合には神田川に水が流れ出る構造となっていますが、基本的に水が滞留しやすい閉鎖的な水域であることから、下水道の吐け口からの放流水が水質に与える影響は大きくなっています。貴重な水辺であり、歴史的遺産である外堀の価値を考えると、ここも同様に水質改善が必要であり、下水道局の取り組みが重要であります。
 そこで、現在の外堀における合流式水道の吐け口の状況と、これまでの取り組みについて伺います。

○松田下水道局長 外堀にある合流式下水道の吐け口は、市ヶ谷濠、新見附濠、牛込濠の連続する三つの堀に対しまして、新宿区の外堀通り沿い側に七カ所、千代田区のJR総武線沿い側に五カ所、合計十二カ所ございます。
 これまでの取り組みといたしましては、雨天時において外堀へ放流される汚水まじりの雨水の量を減らし、水再生センターでの処理量をふやすための下水道幹線の増強を図ってまいりました。
 また、はけ口十二カ所すべてにおいて、平成十八年度からの四年間で、ごみなどの流出を七割以上削減できる、下水道局で開発をしました水面制御装置の設置を完了いたしました。

○吉住委員 これまで下水道幹線の増強やごみなどの流出を抑制する対策が行われているとのことですが、大雨のときには汚水まじりの雨水が外堀に放流されています。外堀の水質改善には、下水道におけるさらなる対策が必要だと感じています。
 そこで、外堀での今後の合流式下水道の改善対策について伺います。

○松田下水道局長 外堀周辺の地域に大雨が降りますと、下水道管を通じて汚水まじりの雨水がお堀へ流れ出ますが、この放流量を年間で七割程度削減するために、約一万七千立方メートルの貯留施設を計画しております。
 この計画に基づきまして、来年度、まず新宿区側で、雨水を一時的に貯留する下水道管の建設に着手する予定でございます。貯留管の規模は、内径二・二メートル、延長約六百メートル、貯留量約千八百立方メートルで、早期の完成を目指し、鋭意取り組んでまいります。
 その他の貯留施設につきましても、今後、建設に必要な用地の確保などについて関係機関と調整を図り、事業を進めてまいります。
 今後とも、合流式下水道の改善対策を積極的に進め、外堀のさらなる水質改善に取り組んでまいります。

○吉住委員 ただいま合流式下水道の改善対策をいろいろな地下も使いましてさまざまな対策をとっていただいていることのご説明がありました。
 この首都東京の歴史の記憶をとどめ、国際都市東京の観光スポットでもある外堀の水質改善は、地味ではございますが、必要な施策だと思います。地元の住民からも、従来、臭気に対するいろんな話も出ましたり、改善が一日も早く望まれるところでございました。合流式下水道の改善対策をぜひ早急に進めていただき、快適な水辺空間を実現していただきたいと思います。
 首都東京は、これから先、観光立国の顔として、さまざまな外国からのお客様も迎えていく、地方から東京に出てきて江戸城の名残を見ていく、そういうことも大変重要なことだと思っております。これからも、多くの人が行き交う首都東京として、東京の顔として、江戸城の外堀の水質改善に取り組んでいただくよう心からお願い申し上げまして、発言を終わらせていただきます。(拍手)

○高橋副委員長 吉住健一委員の発言は終わりました。
 この際、議事の都合により、おおむね三十分間休憩いたします。
   午後六時一分休憩

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