予算特別委員会速記録第四号

   午後三時二十一分開議

○高橋副委員長 休憩前に引き続き委員会を開きます。
 質疑を続行いたします。
 菅東一委員の発言を許します。

○菅委員 初めに、財政について伺います。
 私は、都議会議員として、他県の議員さんと話をする機会がありますが、東京都は財政的に恵まれて、うらやましいですねとよくいわれます。私は、いやいや大変ですよというのですが、先方は決まって、でも交付税もらっていないでしょう、こういうわけです。確かに、都は、交付税制度創設以来、財源が余っているとされて、一度も交付税を受けていない唯一の団体であります。しかし、私の認識している都財政は、こうした交付税の算定結果とは全くかけ離れたものではないかと思っております。
 財政再建団体転落の一歩手前まで来たときもありましたが、知事と我々都議会が手を携え、財政再建をなし遂げました。その後に、税収増となった際も、みだりに歳出をふやすこともなく、基金を積み立て、都債についても、将来の負担を見据えて発行してまいりました。私は、都財政に対して、激変する環境の中、財政のかじ取りに苦労しながら、何とかやりくりをしてきたと思っておりますし、ここにいらっしゃる皆様方も、そう思われているのではないでしょうか。
 こうした私たちの認識と、交付税の算定によって財源が余っているという結果とが、どうしてこう違うものになってしまうのか、なかなかわかりにくいところであります。
 そこで、本日は、地方交付税について幾つか質問を行いたいと思います。
 初めに、地方交付税の仕組みと、今年度は都はどのように算定されたのか、確認のため伺います。

○安藤財務局長 地方交付税は、自治体間の財源の不均衡を調整し、すべての団体が一定水準の行政サービスを提供できるよう財源を保障することを目的とするものでございまして、所得税、法人税など、国税五税の一定割合を原資として、国が各自治体に配分するものであります。
 算定の仕組みといたしましては、国が一定の基準に基づき、各団体ごとに標準的な需要と収入を見積もり、財源の過不足を算定した上で、団体ごとの地方交付税の金額が確定をいたします。
 なお、都につきましては、地方交付税法の特例によりまして、都と特別区とが一つの団体とみなされ、合算された上で交付税額が算定をされております。
 都における今年度の算定は、急激な景気悪化や、法人事業税の暫定措置の影響などに伴う都税の大幅な減収があったものの、約四千億円の財源超過があると算定されまして、引き続き不交付団体となっております。

○菅委員 交付税制度は、とにかく複雑でわかりにくいものでありますが、今の答弁のポイントは、第一に、算定は国が行っていること、第二に、算定の結果が、都と区を合算したとはいえ、四千億円もの財源が余っていると算定されたこと、この二点だと思います。
 今年度の都税は、二十年度から一兆円も落ち込んだ二十一年とほぼ同じ水準の厳しいものであります。都と区を合算したとはいえ、今年度の収支で四千億円も余っているというのは、幾ら何でも多過ぎると、私は、算定結果に疑問を感じざるを得ません。
 都は、実際に、本当に財源が余っているんでしょうか、見解を伺います。

○安藤財務局長 そもそも地方交付税の算定は、限られた交付税の総額を各自治体に配分するため、国が定めた基準に基づきまして、個々の団体の収入や需要を算定するものでございまして、個々の自治体の財政の実態をそのまま忠実に積み上げるという性質のものではございません。
 例を挙げますれば、実際には、東京の昼間流入人口は三百万人以上存在するわけですけれども、交付税算定の基準では、その約二割の七十二万人分しか需要として算定されておりません。こうしたことなど、東京特有の膨大な財政需要の実態を適切にとらえたものとはなっていないというふうに思っております。
 また、先ほども申し上げたとおり、都の交付税額は、都と二十三区を合算した二十四団体分で算定されておりまして、その点でも、都の実態をあらわすものではないと思っております。
 このように、都の財源超過額は、あくまでも交付税制度における配分技術上の数字にすぎないものでございます。この結果をとらえて、都の財源が余っているとの指摘は、全く当たらないというふうに考えております。

○菅委員 要するに、交付税の算定結果は、都財政の実態をあらわすものではない、いわばバーチャルなものだと、こういうことがわかりました。
 今の都財政は、財源が余っているなどとは、とんでもない話でありまして、先日の我が党の林田議員の質疑でも明らかになったように、厳しい財政環境の中にあって、事業評価や、都債、基金の活用などによって必要な財源を確保したというのが本当の姿ではないかと、こう思います。
 それでは、なぜ、国の算定結果と都財政の実態が異なるのか。交付税の総額は限られているので、実態に合わせた算定を行ってしまうと、交付税が足りなくなるのではないでしょうか。実態を踏まえた算定を行うべきであるということは当然であります。しかし、どうやらこの問題は、生の地方財政、すなわち、今、地方財政は一体どうなっているのかということを理解しなければ、なぜ交付税が足りなくなるのかという本当の理由はわかりません。
 そこで、地方財政の中で地方交付税は一体どういう状況に置かれているのか、お尋ねをいたします。

○安藤財務局長 平成二十三年度におきましては、国税五税の一定割合を地方交付税の原資として確保できました額は約十一兆円でございます。一方、地方における歳入と歳出のギャップ、つまり歳出の超過する額でございますが、約二十五兆円にも上りますので、その差の約十四兆円の財源が不足することとなりました。
 このように、交付税総額が足りない場合には、本来は、国において、交付税として配分する割合の引き上げなど、総額をふやす抜本的な対策を講じなければなりませんけれども、国家財政が厳しいことなどを理由に、来年度におきましても、国が地方に赤字債などを発行させることで不足分を肩がわりさせているのが現状でございます。
 こうした地方が肩がわりしている借入金の残高は、少なくとも、二十三年度末で約七十兆円を超えると見込まれまして、その返済は、後に交付税で全額補てんされるルールとなってございますけれども、これは、いわば将来の交付税を先食いしているにすぎないということであります。
 そもそも、交付税総額については、国は、増額するどころか、この間、三位一体の改革の名のもとに、むしろ大きく削減をしておりまして、二十三年度では、ピーク時の平成十二年度から約四兆円減少している現状でございます。

○菅委員 ただいまの答弁を聞きますと、地方交付税は完全に制度疲労を起こしており、将来、このままやっていけるのかという疑問を抱かざるを得ません。地方交付税制度のあり方について、都はどのような認識を持っておるのか、伺います。

○安藤財務局長 地方交付税制度そのものは、自治体間の財源の不均衡を調整するという財政調整機能を有しておりまして、地方財政にとって、極めて重要な制度であるというふうに考えてございます。
 しかし、ただいま申し上げたように、この間、三位一体の改革などを通じまして、地方交付税総額が削減されたことにより、この機能が低下をし、地方の困窮を招く一因となっております。こうした現実があるにもかかわりませず、国は、みずからの責任を棚上げにし、意図的に都市対地方の財源配分の問題にすりかえて、地方を助けるとの名目で法人事業税の暫定措置を導入し、私ども東京を初めとした都市の財源を不合理に奪っているというふうに思っております。
 こうした経緯を見ても、暫定措置は即時に撤廃し、地方の実態を踏まえた適正な財政需要に基づいて、必要かつ十分な交付税総額を確保することにより、交付税制度が持つ財政調整機能をこの先も堅持していくことは、私ども都財政にとっても極めて重要であるというふうに思っております。

○菅委員 地方交付税は、存在意義が問われるどころか、逆に、充実を図らなければならないものであることがわかりました。
 それにしても、法人事業税の暫定措置が導入された背景には、地方交付税の機能低下がかかわっていることは見逃すことができません。確かに、国も、地方も、金がなくなった。金のありそうなところに目をつけて、そこから回せばよいという議論は、とんでもない話ですが、一見わかりやすいからこそ危険だと、こう思うのであります。
 こうした点から考えますと、架空の姿にすぎない交付税算定結果が、あたかも都財政の実態のようにとらえられていることは、かつての東京富裕論の再燃につながりかねない、ゆゆしき問題だといわざるを得ません。
 東京は、首都として日本をリードしていく使命があります。そして、地方を疲弊から救うすべは、法人事業税の暫定措置のような、大都市から財源を奪うことではありません。今問われているのは、地方税財政制度を抜本的に改革し、地方が自立して自治体の役割を果たし得る仕組みを、いかにしてつくっていくかであります。
 国では、社会保障と税の一体改革という名目で、税制改革に向けた議論が進められています。ここでは、国の財源不足だけがいわれて、どうも地方が置き去りにされているようであります。対国民という視点でいえば、国と地方は、さまざまな場面で密接に絡み合っております。現場のサービスの多くは地方が担っているのです。国にはぜひとも幅広い観点に立って、暫定措置の撤廃はいうまでもありませんが、地方税財政の抜本改革を進めていただきたい。都議会の一員として強い思いを表明しておきたいと思います。
 次に、技能継承について伺います。
 私の地元板橋区は、工業製品出荷額が二十三区内で第二位の一大ものづくり産業の集積地であります。ここに集う熟練技能者が、巧みな技能を駆使してすぐれた製品を生み出し都民生活を豊かなものにしてきたことは、板橋力として地域の誇りであります。
 しかしながら、熟練技能者の高齢化が進んでおり、今まで培ってきた技術、技能が地域から失われてしまうのではないかとの懸念が広がっております。地域力の象徴であるすぐれたわざを、次世代を担う青年技能者に承継し、ものづくり産業を支え得る熟練技能者として育てていく取り組みが不可欠であります。
 そこで、ものづくりを支える青年技能者への技能継承について、都の取り組みを伺います。

○前田産業労働局長 都立職業能力開発センターでは、板橋校を初めとする五校で、東京ものづくり名工塾及びさらに高度な技能者を目指すスーパー名工塾を実施しております。
 この事業は、中小企業の推薦を受けました二十代、三十代の青年技能者を対象に、民間の高度熟練技能者等の指導により、汎用旋盤等のさまざまな熟練技能を体系的に習得させ、技能の継承を図っているものでございます。
 平成十三年度の事業開始以来、これまで十年間で約三百五十名の方が修了し、それぞれ、地域のものづくりを支える企業現場で中核人材として活躍されておりまして、技能の継承に貢献しております。
 今後とも、こうした事業を通じて、青年技能者への技能継承が着実に行われますよう支援してまいります。

○菅委員 高度熟練技能者のわざを青年技能者に継承する取り組みを進めていると伺いまして、安心いたしました。今後とも、名工塾を着実に実施していただければと思います。
 さて、昨年秋に、若手技能者が技能日本一を競う技能五輪全国大会が開催され、都代表は、金賞四名を含む十六名が入賞するという、輝かしい成績を上げたと聞いております。
 しかしながら、足元では若者の高学歴志向、普通科志向がますます高まり、若者のものづくり離れは深刻化の一途をたどっており、ものづくり人材を将来にわたって確保していくことが困難になると懸念されております。
 また、熟練技能者が持つ知恵と経験に裏打ちされた、研ぎ澄まされた技能が見過ごされ、価値を見出されることなく埋もれてしまうようでは、東京の産業を支える基盤そのものに大きな影響を与えかねません。
 私は、多くの若者がものづくりに興味を持ち、誇りや希望を胸に技能者の道を歩み始めるためには、地域の貴重な財産である熟練技能者のわざを評価し、社会的地位の向上を図ることが重要であると考えます。
 知事の所見を伺います。

○石原知事 答弁の前に、さきに地方交付税の本質的矛盾について、よき質問とご指摘をいただき、ありがとうございました。
 仄聞しますと、現内閣の総務大臣は、前の鳥取県の知事でありますけれども、東京都富裕論の先鋒者でありまして、東京の財源というものを、要するに国が収奪すべきだという論だそうですが、一方、事務次官の方は、どうもそれに反対の立場をとっているようで、そこにも一つ今の政府の混乱が見られるような気がいたします。
 次いでご質問に答えますが、小惑星探査機の「はやぶさ」のエンジン部品や、これは私の選挙区におられます有名な削りの名人ですけれども、岩井さんといいますが、この人などは夫婦二人でやっている小さな工場で、某大会社の孫請で原子炉の軸を削っているという、そういうすばらしい職人さんがおられます。
 東京のものづくり産業の基盤を確保していくためには、現場に息づく熟練技能が途切れることなく継承されて、それを担う人材が大きく評価され、尊重され、尊敬されるという社会を築くことが重要だと思います。
 このために、技能技術者の卓越したわざに光を当てて、東京マイスターとして表彰しておりますほか、わざを極めた技能者が、東京ものづくり名工塾における後進の育成などで活躍する場も設けております。また、すぐれた技術者の育成に成果を上げた中小企業に対し、表彰を行っております。
 こうした熟練技能者のわざを伝えることによりまして、未来のある若者のものづくりへの挑戦を引き出し、東京のものづくり産業を将来に向けて発展させていきたいと思っております。

○菅委員 どうもありがとうございます。
 次に、都立産業技術研究センターについてお伺いをいたします。
 現在城北地区にあります産業技術研究センターが、本年五月に臨海副都心に移転しますが、新たな本部では、最先端の機器が設置され技術支援が充実されるということですので、しっかり取り組んでいただきたいと思います。
 さて、城北地区には、光学精密機械や印刷関連業など、高度な技術を有する企業が集積しております。こうしたポテンシャルを生かし、板橋区と北区とが協力して、地元の大学病院や企業とともに、健康、医療、福祉産業の活性化を目指すKICCプロジェクト事業を進めております。
 この事業には、産業技術研究センターも参加し、他の研究機関や大学、企業との間でネットワークが形成され、活発な交流により企業間の協力関係もでき上がり、共同で質の高い製品開発が進められております。
 そこで、産業技術研究センターの新本部においては、そうした経験やノウハウを生かし、企業同士の連携や企業と大学研究機関との連携を積極的にふやしていくことが重要と考えますが、いかがでしょうか、お尋ねをいたします。

○前田産業労働局長 中小企業が、技術力を高めて競争力のある新たな製品を開発するためには、自社にない技術を有するほかの企業や、大学、研究機関との交流の機会をふやしまして具体的に連携し、それに結びつけることが効果的でございます。
 このため、本年五月に開設する都立産業技術研究センターの新本部には、移転後も引き続き産学公連携コーディネーターを配置いたしまして、中小企業と大学等による共同研究や共同開発を推進してまいります。
 これに加えまして、中小企業の多様な連携の機会を拡大するため、新本部の中に、大学等との交流を支援する場所になります東京イノベーションハブを新たに設置いたします。
 具体的に、同イノベーションハブでは、異業種交流や大学と企業との交流イベント、中小企業と研究機関の合同技術展示会など、交流事業を企画し開催してまいります。
 こうした取り組みによりまして、中小企業の技術開発に向けた交流の機会や場を充実し、産産連携あるいは産学公連携を促進してまいります。

○菅委員 東京には、すぐれた技術を持つ中小企業が多くありますが、こうした企業は、独自のコア技術を開発し、必死に新製品を生み出しております。また、研究開発を専門とするベンチャー企業が、新製品の開発にしのぎを削っている例も見受けられます。
 一方で、国際間の商取引が広がり、新たなビジネスチャンスもふえておりますが、開発した製品をスピーディーに市場に送り出すことが重要となっており、開発期間の短縮を重視する中小企業が多くあると聞いております。
 こうした激しい開発競争が行われる中、中小企業のスピーディーな製品開発に向けて、産業技術研究センターではどのように支援していくのか、伺います。

○前田産業労働局長 中小企業が新しい製品を市場に先行して投入し、取引を有利に展開するためには、製品開発を迅速に行う、こういうことが必要でございます。
 このため、五月に開設いたします産業技術研究センターの新本部では、製品の企画、設計から高速造形機を使った試作品の製作までの一連の工程を総合的に支援するとともに、安全性などの製品評価に関する各種試験をワンストップで対応するなど、迅速な技術支援サービスを提供してまいります。
 また、中小企業が研究や実験を行うスペースを低廉な価格で使用できます製品開発支援ラボを十八室設けまして、速やかな開発をサポートしてまいります。ラボの入居者につきましては、同センターの研究員が技術アドバイスを身近で行うとともに、研究の成果を速やかに評価することなどによりまして、開発に必要な期間を短縮し、そのコストを縮減することが可能になると考えております。
 こうした取り組みを通じて、競争力のある製品の開発を効果的に後押ししてまいります。

○菅委員 国内市場に今後大きな伸びは期待できないといわれる中、東京の中小企業も、海外、特に成長著しい新興国に向けた販路の開拓がより一層求められます。
 一方で、海外市場に進出した日本企業が知的財産を侵害されたという事例は枚挙にいとまがなく、今後の中小企業は、海外でもしっかりと知的財産を保護し、戦略性を持って活用することが重要であります。
 都ではこれまでも、知的財産総合センターにおいて、企業の海外進出を知的財産面から支援してきましたが、さらに体制を充実する必要があると考えます。見解を伺います。

○前田産業労働局長 海外進出で販路の開拓を目指す中小企業がふえる中、お話のように、企業の知的財産を守り、その戦略的な活用に向けた支援を充実することが重要でございます。これまでも都は、知的財産総合センターで、海外の知財戦略に関する相談を行ってまいりましたが、近年、対象となる国が、新興国を初め多様な広がりを見せておりまして、国ごとの制度の差異を踏まえたきめ細かい対応が必要となっております。
 このため、平成二十三年度から同センターの体制を拡充いたしまして、これまでの相談員に加え、必要に応じて、相談を受けました相手の国に対応した外部専門家を適時適切に活用して相談に応じる、新たな仕組みを導入することといたしました。
 こうした相談体制により、中小企業の知的財産の保護と戦略的な活用を支援してまいります。

○菅委員 次に、まちづくりについて伺います。
 板橋区の大山駅は、池袋駅から東武東上線で五分という近い距離に位置しておりまして、東側には遊座大山商店街、西側にはハッピーロード大山商店街という活気ある商店街があります。駅の北側などには、豊島病院や板橋区立文化会館などの施設が立地しております。
 そこで、このあたりの補助二六号線について見ますと、東武東上線の東側は整備が完了しており、また、川越街道の西側では現在整備が進められており、完成も間近になってまいりました。
 したがって、未整備の部分は、東武東上線と川越街道に挟まれた四百十メートルの区間でありますが、商店街を横切っていることから、さまざまな経緯があり、これまで事業化されてこなかったのであります。
 しかし、一昨年六月、地域住民による協議会が発足し、補助二六号線を含むまちづくりについて検討がなされております。
 そこで、都において来年度予算案に、大山中央地区における補助二六号線に関する調査費を盛り込んだと聞いておりますが、その具体的な内容について伺います。

○河島東京都技監 板橋区の大山中央地区は、「十年後の東京」への実行プログラム二〇一一におきまして、道路整備と沿道まちづくりを一体的に進め、防災性の向上を図る地区として位置づけられました。本地区においては、地元の協議会によるまちづくりの検討が進むなど、機運が高まってきたこともあり、来年度、補助二六号線に関する新たな調査を行うことといたしました。
 本調査では、補助二六号線とその周辺道路におきまして、現況調査、自動車、歩行者等の交通量調査などを実施するとともに、コーディネート業務を地元区へ委託し、沿道の商業者や地権者などの意向調査を行います。
 都は、地元区と連携を図りながら、これらの調査を実施し、補助二六号線の整備と沿道のまちづくりの具体化に向けて積極的に取り組んでまいります。

○菅委員 調査の内容はよくわかりました。
 今回、調査費が予算案に盛り込まれたことは、地元のまちづくりにとって大きな意義があるものと思います。都は慎重に地元の声を聞きながら、しっかりと調査を進めてほしいと要望しておきます。
 さて、もう一つの大山地区の長年の課題は、東武東上線の踏切問題であります。
 駅の南北には、あかずの踏切が点在しており、歩行者などの利便性や回遊性が損なわれております。板橋区議会では、昭和六十二年に東上線立体化に関する特別委員会を設置し、検討を重ね、関係機関へ早期実現を要請してきたところであります。
 また、大山駅には、駅前広場や補助二六号線からのアクセス道路がないため、交通利便性が損なわれております。さらに、当地区は木造家屋が密集しており、防災性の向上も課題であります。こうした中、先ほどお話しした地元協議会において、駅前広場や木造住宅密集地区、そして道路と鉄道の立体化について検討がなされております。
 そこで、大山駅付近の道路と鉄道の立体化とまちづくりについて、都はどのように考えておられるのか所見を伺います。

○河島東京都技監 東武東上線の大山駅付近は、踏切対策基本方針において、鉄道立体化の検討対象区間と位置づけられておりますが、その立体交差化に当たりましては、補助二六号線の整備や、この計画道路が横断する商店街の再編など、まちづくりの課題がございます。
 まちづくりを進めるためには、まず地元において、こうした課題への対応も含め、まちの将来像が共有されていることが必要でございます。大山駅付近では、これまで住民による協議会によって地区一帯の将来のまちづくりに関する検討が行われてきておりまして、近く基本構想を発表する予定と聞いております。
 また、地元区の支援を受けて商店会や町会が中心となって、駅周辺の商店街や基盤施設のあり方について検討が進められております。
 都は、これらの動向も勘案しながら、道路整備と沿道のまちづくりを一体的に進める方策や、二六号線と鉄道の立体交差化のあり方について、地元区と連携して検討を進めてまいります。

○菅委員 ぜひ前向きに、しっかりと頑張っていただきたい、こう思います。
 次に、向原住宅におけるモデル事業についてお尋ねいたします。
 先日、我が党の代表質問において、公社の少子高齢化社会に対する取り組みについて質問をいたしました。その答弁の中で、今後、公社では、団地の建てかえなどにあわせ、サービスつき高齢者賃貸住宅や子育てに適した住宅などを供給するとともに、建てかえにより創出した用地を活用して、高齢者施設や子育て支援施設の誘致を図るなどの取り組みを進めていく予定であり、これらの取り組みを板橋区の向原住宅など三団地においてモデル事業として実施する旨のお答えがありました。
 そこでまず、向原住宅におけるモデル事業について、現段階における具体的な検討内容についてお尋ねをします。

○河島東京都技監 公社では、現在行っている向原住宅全体の建てかえ事業の中で、少子高齢社会対応に向けたモデル事業として、建てかえにより創出した用地にサービスつき高齢者賃貸住宅約五十戸とともに、保育所やデイサービスなどを行う高齢者施設を一体的に整備する予定でございます。
 高齢者賃貸住宅においては、サービススタッフが緊急通報対応や安否確認、家事代行サービス事業者の紹介などを行う生活支援サービスとともに、必要な場合には、併設する高齢者施設により介護サービスを提供してまいります。
 今後、公社では、モデル事業の内容についてさらに検討を進めるとともに、施設の運営事業者を公募するなど、具体化に向け精力的に取り組んでまいります。

○菅委員 さらに詳細な計画については、今後、段階を踏んで詰めていくことになると思いますが、向原住宅は非常に大きな団地であり、建てかえによる地元への影響も大変大きいと思われます。せっかく少子高齢社会対応のモデル事業として取り組むということでありますので、地元の要望もきちんと吸い上げて、計画に反映させながら進めていくべきと考えます。
 そこで、今後、向原住宅のモデル事業を進めていく上での公社の基本的な取り組み姿勢についてお尋ねをします。

○河島東京都技監 大規模団地の建てかえは、単なる住宅の更新にとどまらず、地域のまちづくりそのものでもありますことから、公社では、モデル事業は、地域の状況やニーズに沿った内容としていくことが重要であると認識しております。
 このため、向原住宅でのモデル事業におきましては、周辺地域における高齢者及び待機児童の増加という状況を踏まえ、高齢者向け住宅に高齢者施設や保育所等を併設し、多世代交流を促進することを事業の柱として考えております。
 また、災害発生時の避難場所となるオープンスペースの確保や、緑豊かな歩道状空地の整備など、地元自治体とも協議しながら、住環境の向上を図っていくこととしております。
 今後とも、公社では、地元自治体のまちづくりや福祉施策とも連携し、地域のニーズを十分に踏まえ、事業を展開してまいります。

○菅委員 どうもありがとうございます。どうぞよろしくお願いします。
 次に、水道事業について伺います。
 昨年十二月、板橋区内の川越街道で大きな漏水事故がありました。広い範囲で冠水して驚きましたが、関係者の迅速な対応によって事故の拡大を防ぐことができ、ほっとしております。かつてはこのような事故が多かったと記憶していますが、最近はめっきり見かけなくなりました。
 漏水Gメンといわれる職員が、専門の機器を駆使して漏水箇所を的確に突きとめている様子をテレビなどでも取り上げられていますが、こうしたことができるのは、まさに経験の積み重ねと、さらには新しい機器の開発などを組み合わせた、高い技術力が備わっているからだと考えております。
 そこで、ここまで漏水率を低減させた水道局の高い技術力とはどのようなものか、お尋ねをします。

○尾崎水道局長 漏水防止技術は、漏水発見手法と予防対策に大別されます。
 まず、漏水を効果的に発見する手法として、漏水の多い区域を絞り込むための夜間最小流量測定法を確立するとともに、漏水箇所を特定するために、漏水音を聞き分けるたくみの分野からコンピューターを用いるハイテクの分野まで、さまざまな漏水発見機器を開発、改良してまいりました。
 また、漏水の予防対策として、管の材質を強度に富むステンレス管などを採用するとともに、道路荷重や振動を吸収できる波状管への改良などを積み重ねて、漏水しにくい管路への更新を実施してまいりました。
 これらの技術を組み合わせて、現場の状況に応じた最適な漏水防止対策を実施することによって、漏水率三%まで低減させてきたところであり、こうした長年にわたる水道の管路の管理の中で蓄積してきた高い技術力を有しております。

○菅委員 水道局の高い漏水防止技術が、多様な取り組みから成り立っていることがよくわかりました。
 一方、海外に目を転じますと、漏水を含む無収水率の削減に悩む国も多く、大変深刻な問題となっております。そこで、今お答えをいただいたような東京のさまざまなすぐれた技術が、現在、水道局が進めている新たな国際貢献における最大の力になると私は考えております。
 そして、このような国の水事情の改善に役立てていくことこそが、国際都市東京の使命であると思います。
 水道局では、昨年夏から五カ国へミッション団を派遣しましたが、最大のアピールポイントでもある都の漏水防止技術を、訪問国にどのように提案をしてきたのか、また、その評価はどうであったのか伺います。

○尾崎水道局長 ミッション団の派遣国の多くは、深刻な水不足への対応が迫られており、漏水量の削減などが大きな課題となっております。このため、相手国政府や自治体関係者に対し、これまで当局が取り組んできた漏水率低減策などの技術力を中心に、提案を行ってきたところでございます。
 具体的には、計画的な管路の更新、材質の改善、地下の漏水発見などにより、戦後八〇%にも及んだ東京の漏水率を、世界のトップレベルまで低減させた実績などを強くアピールしてまいりました。
 また、漏水率の低減が新たな水源開発に匹敵することや、エネルギー削減にもつながることなど、具体的な効果を提示してまいりました。
 こうした提案に対し、相手国からは、当局が進めてきた体系的な漏水防止策やすぐれた技術に強い関心が示されるともに、具体的な支援を求められるなど、高い評価を得られたところでございます。

○菅委員 ミッション団の訪問国において、都の高い漏水防止技術に強い関心と期待が示されたとのことですが、まさに、漏水防止を初め、都が持っている多様な水道技術をもってすれば、今後、さまざまな課題を抱える各国の水事情にマッチした技術提供が可能なのではないかと私は思っております。
 そこで、国際貢献ビジネスを進める中で、都が持っているすぐれた技術をどのように役立たせていくのかお尋ねをいたします。

○尾崎水道局長 アジアの途上国において、水事情の改善を図っていくためには、各国の実情に応じた適切な対応策を取捨選択していくことが重要であります。
 しかし、こうした国では、管路の現状などを正確に把握していない状況が多く見られるため、まず詳細な調査分析を行い、実情を把握してまいります。
 その上で、東京水道が長年の経験で培ってきた豊富な技術力やノウハウを生かして、相手国が抱えている漏水量削減などの課題解決に向け、計画、施工、維持管理などの各段階に応じて、適切な取り組みを選択し、改善策を示してまいります。
 今後、国際貢献ビジネスを展開していくに当たっては、こうした提案を積極的に行うなど、途上国における水事情の改善を実現してまいります。

○菅委員 都と監理団体が一体となって行うという画期的な仕組みによって、これまで都が地道に取り組んできた施策の一つ一つが、今後具体的に国際貢献に生かされていくのだということがよくわかりました。都の持つ技術が、アジア各国で花開き、実を結び、その種がさらに多くの国々で芽吹くことを期待いたしております。
 次に、浸水対策について伺います。
 現在、雨季を迎えている南半球のオーストラリアなどでは、記録的な豪雨が発生していることは記憶に新しいところであります。
 東京においても、近年の局所的な集中豪雨にはすさまじいものがありますが、都民の生命、財産を守るためには、浸水被害を軽減させることが重要であり、下水道の着実な整備が不可欠であります。都内には、道路の下に下水道管が張りめぐらされており、雨水の排除や貯留という役割を果たすことで、浸水被害の軽減に貢献してきたものと思います。
 しかし、最近のゲリラ豪雨による浸水被害の状況を考えますと、浸水対策のなお一層の強化が求められます。
 そこで、まず浸水被害軽減に向けた浸水対策事業の今後の進め方について、お尋ねをいたします。

○松田下水道局長 浸水被害の軽減を図るため、浸水の危険性が高い二十地区について対策促進地区として重点化し、平成二十九年度までに、一時間五〇ミリの降雨に対応できる幹線やポンプ所などの基幹施設の整備を計画的に進めてまいります。
 整備に当たりましては、地盤の高低差など、地域特性をきめ細かに考慮する設計手法を活用し、効果的に行ってまいります。
 さらに、頻発する局所的集中豪雨に対し、近年たびたび被害が発生している石神井川など三流域については、緊急豪雨対策として貯留施設などの整備を前倒しして進めてまいります。

○菅委員 質問を用意させていただきましたけれども、時間がないようでありますので、この次、また機会がありましたら、ぜひお尋ねをしたいと思います。
 これで終わります。(拍手)

○高橋副委員長 菅東一委員の発言は終わりました。

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