予算特別委員会速記録第四号

○山下委員長 ただいまから予算特別委員会を開会いたします。
 これより付託議案の審査を行います。
 第一号議案から第二十八号議案までを一括して議題といたします。
 昨日に引き続き総括質疑を行います。
 早坂義弘委員の発言を許します。
   〔委員長退席、高橋副委員長着席〕

○早坂委員 まず、耐震化について伺います。
 東京にマグニチュード七クラスの地震が発生する可能性は、今後三十年以内に七〇%まで切迫していると政府は発表しています。私は、これまで議会の場で耐震化施策の充実を何度も訴えてまいりました。
 平成二十年の予算特別委員会で、翌日の朝方までかかった日がありました。その日の質問で、私は、阪神・淡路大震災の被災現場からのラジオ中継を聞いていただきました。倒壊した建物の下敷きになった息子さんに火が迫り、おやじ、逃げてくれの言葉を受け、結果として息子さんを目の前で見殺しにせざるを得なかった父親の悲痛な叫びを、石原知事はきっと覚えていてくださると思います。
 私の主張は二つです。
 第一に、地震による死亡原因は、家屋倒壊や家具転倒に起因する圧死、窒息死がほぼすべてであり、生死が決するのは地震発生から数分以内だということ。
 第二に、備蓄食料や避難訓練はあくまで生き残った人のための施策であって、地震から命を守るために必要なことは、建物の耐震化と家具の転倒防止に尽きることであります。
 建物の耐震化こそが地震防災の本丸ですが、一方で、所有者の私有財産である建物の耐震補強を税金を使って行うことには議論があります。本議会に提案されている特定緊急輸送道路の沿道建物の耐震化については、直接的に住民の生命と財産を守るものではありませんが、重要な内容を含んでおりますので、細かく伺ってまいります。
 まず、緊急輸送道路とは、区役所や病院などの指定拠点を相互に結ぶ道路や他県との連絡に必要な道路を指します。阪神・淡路大震災でも、幹線道路沿いのビルやマンションが倒壊し、救急車両や救援物資の搬送の妨げになったことは記憶に新しいところです。
 そこで、予防の観点から、特に重要な道路は、地震が起きても道路をふさぐことがないよう、あらかじめ沿道建物を耐震化しておくという防災まちづくりこそが、この施策の趣旨であります。
 緊急輸送道路の沿道には、旧耐震で建てられ、かつ道路を半分以上ふさいでしまうおそれのある建物が一万二千棟あります。その中で、今回の新たな施策の対象とするのが、特定緊急輸送道路であります。どれをこの特定緊急輸送道路に指定するかは、本年六月をめどに決まります。その指定に当たっては、警視庁が震災時に交通規制を行う緊急交通路や、道路管理者が応急補修を優先的に行う緊急道路障害物除去路線など、他の施策との整合性を図り、また区市町村の意見も聞いて実施していただきたいと思います。
 さて、阪神・淡路大震災の教訓を踏まえ平成七年十月に定められた耐震改修促進法では、診断と改修は建物所有者の努力義務であり、やる、やらないは所有者の意思にゆだねられています。
 これに対して、東京都は、平成二十一年度から、診断費用のうち最大で五分の四の補助事業や改修費用に対する低金利融資制度を行ってきました。加えて、沿道建物の所有者への意識啓発として、総延長五百五十キロメートルの建物所有者に対し個別訪問を行ってまいりました。
 しかし、この三年間で診断を行ったのは、対象一万二千軒のうちわずかに三十九軒、〇・三%です。さらに、改修に至っては実に三軒のみ。耐震化は全く進んでいません。四千軒の個別訪問までして、東京都がこれだけ力を入れてきた事業の成果が、実は〇・三%であります。
 心理学の用語に正常化の偏見というものがあります。これは、自分にとって都合の悪い情報を、まさか自分がと無視したり、過小評価したりする心のあらわれのことです。例えば、これほどおれおれ詐欺が社会的問題になっていても、いまだにだまされる人がそのいい例であります。耐震化が進まない理由には、この正常化の偏見が物すごく大きいのだと思います。
 話は少し脱線しますが、パニック神話という言葉もあります。例えば、混雑した駅やデパートで非常ベルが鳴ると、みんな慌てて一斉に避難し、パニックが起こりそうなものですが、現実には、どうせ誤報だろうとか、まさか自分が火事に巻き込まれるわけがないと思う正常化の偏見がそれぞれに働き、結果、逃げおくれるケースが実はたくさんあるようです。韓国での地下鉄火災がまさにそうでありました。つまり、非常事態に直面した際にパニックが起きるというのは神話にすぎず、むしろどうやって目の前の危険を重く見てもらうかが大切だというのです。
 話を戻します。沿道建物の耐震化に対して、東京都はこれまでさまざまな施策を行ってきましたが、それが実を結ぶことにはなりませんでした。
 そこで、新たな規制策がこれまでのものとどう違うか、どう実効性を持たせるのか、その内容について伺います。

○河島東京都技監 都はこれまでも、緊急輸送道路沿道建築物に対して、耐震診断、改修に対する補助のほか、所有者に対する普及啓発や個別訪問などを行い、耐震化の促進を図ってまいりました。
 しかし、現在の法律では、お話のとおり、耐震診断、改修とも努力義務にとどまり、その実施を所有者の意思にゆだねていることから、具体的な行動になかなか結びついてこなかったというのが現実であります。
 このため、今回、新たな条例案を提案し、特に重要な道路を特定緊急輸送道路として指定し、その道路に面する建築物の所有者に対して耐震化に必要不可欠な耐震診断を義務づけることといたしました。
 これに合わせ、診断費用について、平成二十五年度までの間、原則として所有者の負担がなくなる新たな助成制度を整備することにより、容易に義務履行ができるようにいたしました。これにより、路線全体にわたって建築物の耐震性能を早期に明らかにし、耐震改修に結びつけてまいります。
 今後は、診断技術者の紹介、相談への対応などの技術的支援を一層きめ細かく行い、所有者の主体的な取り組みを促していくとともに、耐震診断が自発的に行われない場合には、条例に基づく指導助言等を行い、必要に応じて公表や命令などを適切に実施し、条例の実効性を確保してまいります。

○早坂委員 新たな規制策の基本的枠組みは三段階です。
 まず、対象となる建物の所有者に耐震化状況報告書の提出を義務づけます。すなわち、これまで診断や改修を行ったことがあるかどうか。既に行った場合には、その結果を東京都に報告してもらいます。
 次に、その上で必要なものに対し耐震診断を義務づけます。
 最後に、結果報告書に基づき、耐震改修等の実施が努力義務として定められています。
 この耐震改修等の等でありますが、倒壊の危険性をなくすためには、補強工事を行う以外に、新しいビルに建てかえる、あるいは更地にするという方法もあります。建物所有者に対して診断を義務化するところまでは社会の合意が得られても、倒壊の危険性ありと診断された建物を、補強するのか、建て直すのか、あるいは更地にするのかの強制はできず、したがって、こちらは努力義務にとどめるということでしょうか。
 いずれにしても、耐震化のスタートである診断からゴールの改修までいかにつなげていくかが重要となります。診断により建物の耐震性能を明らかにすることが、耐震化に向けた所有者の動機づけになるだろうと思います。それを後押しするためには、東京都と区市町村が連携して、耐震化に向けた取り組みを強化させることが必要だと考えます。
 先ほどご答弁にありましたとおり、実効性を高めるためには、診断の義務化と、それにかかる費用の自己負担ゼロをセットにしたところが新しい制度の特徴です。しかし、私有財産である建物の耐震化は、私有財産の所有者本人が行うべきという議論があります。そこに税金を投入するからには、どんな公益性があるのか、ご見解を伺います。

○河島東京都技監 建物の所有者は、みずからの生命と財産を守るだけではなく、建物利用者や周囲への被害を生じさせないよう建築物の耐震性能を確保する社会的責務を負っております。
 そのため、耐震診断や改修など耐震化に要する費用については、これまでも基本的には所有者の責任で対応することを原則としつつ、老朽化した木造住宅が特に密集している地域など、防災対策上の必要性が高い場合には一定の助成を行ってまいりました。
 今回の特定緊急輸送道路の沿道建築物の耐震化は、震災時における広域的な救援活動や復旧、復興の大動脈を一刻も早く確実に確保し、大地震から都民の生命と財産を守るとともに、首都機能の低下を防ぐことを目的とするものであり、極めて公共性、緊急性が高い施策でございます。
 このため、全国で初めて条例に基づく耐震診断の義務づけを行うとともに、確実に実行されるよう、原則として所有者負担がなくなる新たな助成制度を整備することといたしました。
 さらに、耐震診断の結果に基づき耐震改修が着実に進められるよう、改修費用の助成を拡充して、所有者負担分を現行の三分の一から最大六分の一まで半減させることといたしました。

○早坂委員 条例は、状況報告書の提出と耐震診断の実施を義務づけています。それを耐震化にどうつなげていくのか、伺います。

○河島東京都技監 今回の条例は新たに耐震診断を義務づけるものであることから、所有者の理解を得ながら進めていくことが必要不可欠と考えております。
 そのため、条例の内容に応じて段階的に施行することにしておりまして、まず、本年六月を目途に特定緊急輸送道路を指定し、その後、耐震診断や改修を実施しているか否かなどを把握するため、本年十月から三カ月の間に耐震化状況報告書の提出を所有者に義務づけます。また、所有者に対して条例の内容や支援策について説明し、十分に周知を図った上で、耐震診断の義務づけ等に関する規定を平成二十四年度当初から施行いたします。
 一方、できるだけ早く所有者に耐震診断、改修の取り組みを開始してもらうため、助成制度の拡充につきましては、義務化に先行して平成二十三年度から開始し、耐震診断は平成二十五年度まで、耐震改修は平成二十七年度までの時限措置とすることで、所有者に早期の取り組みを強く促してまいります。
 このように、条例の施行手順につきましても工夫を凝らして、新たな条例に基づく緊急輸送道路沿道建築物の耐震化施策を着実に推進し、災害に強い首都東京を実現してまいります。

○早坂委員 ありがとうございました。
 これまでさまざまな施策を行っても、耐震化は一向に進展しませんでした。今般、特定緊急輸送道路の沿道建物に限ってではありますが、耐震化状況の公表や診断の自己負担ゼロなど、これまで類を見ない、相当踏み込んだ内容になっています。今度こそ成果を出していただきたいと思います。
 ところで、東京都が進めてきた耐震化施策の一つに、公立の小学校、中学校、高等学校、特別支援学校の耐震化があります。これまでの取り組みと耐震化の状況について伺います。

○大原教育長 学校施設の耐震化の緊急性、重要性にかんがみまして、都では、都立学校の耐震化を推進するとともに、区市町村立学校の耐震化に対して、国庫補助金に加え、平成二十年度から独自の財政支援及び人的支援を行っております。
 都立学校の耐震化は、特別支援学校は平成二十一年度、高等学校は二十二年度までにすべて完了いたしました。区市町村立小中学校の耐震化は、この耐震化支援事業開始前の平成二十年四月一日現在七六・七%でございましたが、この耐震化率が、平成二十二年度末には九三・〇%となる見込みであり、「十年後の東京」への実行プログラム二〇一一で目標として掲げました平成二十四年度末の耐震化完了に向けて着実に進歩しております。

○早坂委員 では、私立の小学校、中学校、高等学校の耐震化についてはいかがでしょうか。

○並木生活文化局長 私立学校におきましても、公立学校と同様に、耐震促進は児童生徒の安全を確保する上で重要でございます。
 都では、私立学校の耐震化率九〇%の達成を目標とし、特に、私立小中学校につきましては平成二十五年度末までに一〇〇%の耐震化を目指してございます。このため、都は平成十五年度に私立学校における耐震補強工事に対する補助の開始、その後、補助対象の拡大や補助率の引き上げなどを行い、補助制度の充実を図っております。
 その結果、平成二十二年四月一日現在の私立学校の耐震化率は、小学校が約八七%、中学校が約八五%、高等学校が約七五%に達し、補助制度導入前の平成十四年度末から二〇ポイント以上の向上が図られております。

○早坂委員 それでは、救急医療機関の耐震化に対する取り組みと状況について伺います。

○杉村福祉保健局長 都は、救急医療機関の耐震化を促進するため、昨年度、国の交付金を活用した事業を創設するとともに、今年度から都独自の補助事業を実施いたしております。平成二十一年度、二十二年度合わせて十六施設がこれらの事業を利用する予定でございます。
 昨年十月現在で見ますと、東京都の指定二次救急医療施設二百五十六施設のうち、耐震化に取り組んだ施設は約八割となっております。今後とも積極的に耐震化を働きかけてまいります。

○早坂委員 耐震化について、るる伺ってまいりました。この質問原稿を準備していた今月二十二日、ニュージーランドで大震災が発生しました。耐震化が進んでいないことによって、またしても多くの命が失われました。犠牲者の冥福をお祈りするとともに、耐震化を進めていく立場にあるみずからの職責の重さを改めて痛感しました。
 今のままでは、東京が大地震に襲われたら多くの命が失われてしまう。しかし、決してそうさせないために、私は防災をテーマに東京都政に臨んでいます。
 政治の役割は、国民の生命と財産を守ることにあります。私は、東京都議会議員として、石原慎太郎知事とご一緒にこうして建物の耐震化を進めていることを、我が人生の誇りに思います。ありがとうございます。
 次に、東京における医療観光について伺います。
 平成十五年、小泉総理により訪日外国人観光客の倍増を図るビジット・ジャパン・キャンペーンがスタートしました。当時、年間五百二十万人だった訪日外国人観光客を、平成二十二年には一千万人に倍増させるという目標です。その後、鳩山内閣では、将来的な目標を年間三千万人とふやしています。
 昨年の訪日外国人は、過去最高の八百六十万人に達したものの、目標であった一千万人には達しませんでした。国を挙げてのキャンペーンは、我が国の人口減少を訪日外国人の消費で補おうというのが最大のねらいです。ちなみに、七人の外国人観光客が、定住人口一人の年間消費額百二十一万円と見合うという計算です。
 さて、菅内閣の新経済成長戦略のメニューの一つに、医療観光、メディカルツーリズムがあります。その定義は、治療を受ける目的で外国を旅することであります。東京でもこの医療観光を推進しようという動きがありますが、私からすれば、大きな幻想に踊らされており、かつそれは都民のためにはならないと考えます。
 以下、その理由について述べてまいります。
 海外で医療を受けようとする人の目的は、先端医療を受ける、待機時間をなくす、費用を安く上げるの三つに代表されます。このうち費用に関する優越性から、タイ、インド、シンガポールといったアジアの国々が医療観光の先進国だといわれています。
 タイを例にとると、医療にかかるコストは欧米の五分の一です。では、そのレベルはというと、タイ語の医学書が未整備だったということが逆に幸いして、医学部の学生は英語で勉強する。したがって、最新の知見を身につけることができ、かつアメリカに留学する学生がとても多い。そして、そのアメリカで高い医療技術と流暢な英語を身につけた学生が帰国し、タイ本国の医療の担い手になっているという状況があるようです。
 国際的に有名なバムルンラード国際病院では、欧米の高級ホテルにも負けない設備とホスピタリティーを提供し、かつ料金は、タイ国内最高級といっても、欧米からすればはるかに安いものでおさまります。この病院だけで、年間四十万人の外国人患者を受け入れています。
 一方、我が国では、医療観光はこれからスタートしようという段階です。昨年、ある大手旅行代理店が、四泊五日で百万円という医療観光のツアーを外国人対象に売り出しました。年間の目標は、バムルンラードの実績四十万人に対し、二百人だそうです。
 医療観光推進の目的は、海外の富裕層を我が国に呼び込んで消費拡大を図ることにありますが、現実には、我が国より物価の安い国々がはるかに先行しています。また、日本が医療観光のお客さんと考えている中国、韓国、台湾といった国々では、逆に日本人を医療観光のお客さんとして受け入れる設備、態勢を既に整えています。つまり、世界の医療観光の現状を知らない人が、我が国も門戸を開けばどんどん外国人患者が押し寄せてくるという勝手な幻想に踊らされているだけなのです。
 一方で、我が国では医師不足が大きな問題になっています。海外の富裕層よりも、まず我々日本人患者の命をどう守るかを考えるべきであります。また、海外の富裕層を相手にするということは、健康保険を利用する我々と所得によって享受できる医療に格差が生じ、ひいては国民皆保険制度の崩壊につながります。つまり、我が国の医療観光の議論が経済成長の視点からしかとらえられておらず、国内の医療に与える影響を全く考えていないことに問題があります。
 そこで、医療観光という新しい流れも踏まえて、東京あるいは我が国の医療のあり方について、石原知事のご見解を伺います。

○石原知事 今日、我が国が停滞から脱するためには、目覚ましく発展しております間近なアジアの国々の活力を、日本の経済成長にさまざま取り組んでいく必要があると思います。
 そうした中で医療観光というアイデアも生まれてきたのだと思いますが、世界一の長寿国を支えております我が国の医療技術、加えて日本の四季や多彩な食文化など、さまざまな観光資源を組み合わせるならば、新たな可能性も開けるものとは思います。
 例えば、日本に随所にあります温泉の使い方も、日本では画一的でありますけれども、私も行ったことがありますが、ヨーロッパのカルルスバートとかマリエンバートという有名な保養地は温泉地でありまして、その使い方もちょっと日本と変わっておりますけれども、こういったものも加味すれば、新しい観光、医療を兼ねた産業が興るかもしれません。
 しかしながら、現在の東京の医療需要を考えますと、医師不足、とりわけ小児周産期治療の確保が急務でありまして、また、救急医療体制の強化、がん対策の一段の加速の必要性、また、ある種の薬品や手術に関する日本独特の閉鎖性などの焦眉の問題が山積しております。
 いずれにしても、医療政策の根本に据えるべきものは、あくまでこの都民、国民の安全と安心の確保でありまして、医療観光という新しい動きには注視しつつも、何よりも都民、国民のために、今まさにやらなければならない手だてを揺るぎなく講じていきたいと思っております。

○早坂委員 救急、小児、精神など、東京の医療に課題が山積する中、限られた医療資源を医療観光に振り分ける余裕はありません。その点をしっかり理解した上で、東京都は医療観光に臨んでいただきたいと思います。
 次に、太陽エネルギーについて伺います。
 温暖化や化石燃料の枯渇など、地球環境問題は今日の大きな課題であります。その環境対策の一つに太陽エネルギーの活用があります。その利用方法は大きく二つ、太陽光と太陽熱です。また、太陽の熱で暖められた大気熱の活用も注目されています。
 一つ目の太陽光は、太陽の光を、半導体を利用して電気エネルギーに転換し発電するものです。平成二十二年、昨年の第四回定例会の一般質問で、私は、都営住宅の建てかえの際に太陽光発電の屋上設置が標準仕様になっていることを取り上げ、建てかえのみならず、これを既存の都営住宅七千棟にも設置していくよう求め、現在、その計画が進展しています。二年前のデータでは、東京都内での太陽光発電の導入は五年間で五倍と急激に伸びています。
 二つ目の太陽熱は、太陽の熱で水を温め、その熱利用を行うという、仕組みとしては至極簡単なものであります。家庭でのエネルギー消費の半分以上が暖房、給湯といった熱需要であり、また、太陽光発電に比べ、導入コストや設置面積が半分以下という大きなメリットがあります。また、エネルギーの変換効率が、太陽光発電は一〇%程度なのに対し、太陽熱利用はその四、五倍ということも、今回、太陽熱利用が注目されている理由です。
 ここで、太陽熱利用システムの普及の歴史を振り返ってみると、第二次オイルショック後の一九八〇年代に全国的な普及が進みました。では、今日の太陽熱利用の普及状況と、これまでの東京都の取り組みについて伺います。

○大野環境局長 ご指摘のとおり、太陽熱機器は第二次オイルショック後の一九八〇年に全国で八十三万台を販売したのをピークに普及が進みました。しかしながら、その後、石油価格の下落やメンテナンスの不十分さなどの問題が生じまして、大幅に減少いたしました。ここ十年余りは、石油価格が再び上昇したにもかかわらず、一たん縮小した太陽熱の普及が回復せず、年間五万台から六万台という低い水準にとどまっております。
 こうした太陽熱市場の再活性化に向けまして、東京都は、機器の品質認定制度やグリーン熱証書制度の創設など導入拡大のための基盤整備を進めるとともに、機器メーカーにも、製品開発やデザイン性の向上、価格の見直しなどを働きかけてまいりました。
 こうした取り組みを受けまして、昨年二月にはマンションのバルコニーに設置する新しいタイプの製品が市場へ投入されるなど、太陽熱機器メーカーの取り組みは活発になってきておりまして、太陽熱市場の再生への展望がようやく切り開かれつつあると認識しております。

○早坂委員 先ほど申しましたとおり、エネルギーの変換効率の観点からも太陽熱利用の再評価が行われてしかるべきと考えます。
 今般、東京都は、太陽熱利用に関する新たな補助事業を予算案に計上しています。これは従前の補助事業とは異なり、新築の集合住宅を対象に、個人ではなくディベロッパーやハウスメーカーなどへの補助となっています。
 そこで、なぜ新築の集合住宅なのか、なぜ個人ではなく住宅供給事業者への補助なのか、その考え方について伺います。

○大野環境局長 現在の太陽熱機器の需要は、既存の住宅におけます買いかえによるものがほとんどでございます。太陽熱利用の本格的な普及に向けました新しいうねりをつくり出していくためには、新築住宅の建設に合わせた設置を進めることが効果的であると考えております。
 東京におきましては、新築住宅の約七割は集合住宅が占めていることから、今回の補助制度は集合住宅を主なターゲットとしております。また、新築マンション等への太陽熱利用機器の導入をエネルギー効率の高いものとするためには、設計の早い段階から建築計画に組み込むことが必要でございますので、これを可能とするために、住宅供給事業者に直接補助を行うこととしたものでございます。

○早坂委員 つい先月には、東京都の主催で太陽熱テイクオフ大会が開催されました。その内容について伺います。

○大野環境局長 先月末に開催しました太陽熱テイクオフ大会では、都と住宅メーカー、太陽熱機器メーカー等事業者とが、太陽熱の普及拡大に向けて連携していくことを確認いたしました。
 具体的に申し上げますと、太陽熱機器メーカー主要五社から、五年後の目標としまして、昨年度の都内の販売数の六倍以上に当たります四千五百台の販売を目指すことや、機器の価格を半減させることなどの意欲的な宣言が打ち出されました。
 都は、本年夏前には今回の大会に参加しました住宅メーカーや太陽熱メーカー等とともに太陽熱利用促進協議会を立ち上げる予定でございます。これらのメーカーとともに新たな製品開発の促進や機器の普及を進めまして、本格的な太陽熱利用を東京から実現してまいりたいと思っております。

○早坂委員 当日の資料を拝見すると、太陽熱テイクオフ大会では、ご答弁の内容以外にも元気のいい議論がたくさん出されたようです。例えば、太陽光、太陽熱を車の両輪として、日本の住宅の屋根すべてを太陽エネルギーで埋め尽くすとか、太陽熱給湯の導入で二〇一一年からは省エネ足す創エネなど、大会の熱が感じられるようです。ここしばらく足踏みをしていた太陽熱利用のてこ入れも含め、太陽エネルギーの活用に東京都が大きな役割を果たすことを期待いたします。
 次に、高齢者の住まいについて伺います。
 世界でも類を見ないスピードで高齢化が進んでいる我が国において、介護サービスなどを必要とする高齢者の住まいの確保が急務となっています。行政の高齢者福祉サービスとして設けられている特別養護老人ホームは、入居条件が厳しいものの入居費が比較的安く、待機者の増加が最大の課題です。申し込みから入居まで数年待ちとか、待機者が入居者と同じくらいいるともいわれています。
 そのような中、平成二十三年度の特別養護老人ホーム施設整備費補助の予算額は、前年度と比べ二倍近くふえています。また、都有地だけでなく区市町村が所有する土地を活用した整備事例がふえています。
 そこで、特別養護老人ホームの整備状況と、公有地の活用について伺います。

○杉村福祉保健局長 平成二十三年度の特別養護老人ホーム整備予定は、新規分が十六カ所、継続分が十三カ所でございます。これによりまして、平成二十三年度末の特別養護老人ホームの定員は、三万八千四百六十名となる見込みでございます。
 また、都有地を初めとする公有地の活用を促進しており、特別養護老人ホームを都有地活用の対象に加えた平成十八年度から今年度までの着工分について見ますと、四十六カ所中、公有地を活用した整備は二十三カ所となっております。
 今後とも多様な手法を用いまして、特別養護老人ホームの整備を促進してまいります。

○早坂委員 自治体や社会福祉法人が設立する特別養護老人ホームは、設置費用の多くが補助金で賄われています。来年度の整備件数は今年度よりはふえていますが、待機者はいまだ多く、引き続き整備が必要です。
 そこで、多少お金を払っても今すぐに入れてもらいたい、あるいは、元気なうちから入って、もし介護が必要になっても最期までそこでみとってほしいと希望する高齢者の受け皿になっているのが、民間の有料老人ホームです。平成二十二年十一月現在の入居者数は、特別養護老人ホームが三万五千人、有料老人ホームは二万五千人ですが、伸び率から見ると、近くこれが逆転すると思われます。
 有料老人ホームは、入居の際の契約金に当たる入居一時金が一千万円を超えるところが全体の三分の一を占めています。また、入居一時金のほかに毎月の利用料がかかります。
 平成二十二年、昨年の第四回定例会の一般質問でも指摘したとおり、ごく短い期間で退所した場合でも入居一時金のほとんどを返さないなど、一部の悪質な業者が業界全体の健全な発展の妨げになっています。これに対処するには強制力を持った措置が必要だと考えます。ご見解を伺います。

○杉村福祉保健局長 有料老人ホームにつきましては、入退去時などのトラブルが増加しており、これらに的確に対応するためには、これまでの老人福祉法、そして介護保険法に基づく指導に加えまして、消費者契約の観点からの取り組みが必要であると考えております。
 このため、都は、消費者に一方的に不利な契約を押しつけるなど、事業者の不当行為に対しまして、改善の申し入れや訴訟を提起できる適格消費者団体との間で相互連携及び協力に関する協定を本年三月に締結し、事業者へのさらなる指導強化に努めてまいります。

○早坂委員 ご答弁では、東京都は、被害を受けた高齢者本人にかわって訴訟を起こすことができる適格消費者団体との連携を深めるとのことであります。
 東京の高度経済成長を支え、長年納税者だった人たちがこれから安心して有料老人ホームに入れるよう、東京都はそのようなNPOに協力するにとどまらず、東京都自身が支援と規制を行うべきと考えます。
 次に、駅前広場整備事業について伺います。
 駅前広場は、まちの来訪者を迎える玄関であり、地域の顔であります。その駅前広場の整備は、まちのにぎわいを創出し、商店街の活性化にもつながる波及効果の高い事業であると考えます。
 私の地元、杉並区の荻窪駅は、JRと地下鉄のターミナルとして、一日の乗降客数は二十四万人に及びます。北口には十三系統もの路線バスが乗り入れていますが、駅前広場は狭く、大変ふくそうしています。その結果、朝のラッシュ時には、停車したバスの間をくぐり抜け、広場を横切って駅に向かう利用者も多く、大変危険な状況でしたが、五十年以上も改良工事が着手されないままでした。
 この事業は、東京都が施行者として、これまで地元調整等にかかわってきたものであります。このほど東京都は、この駅前広場の整備にようやく着手し、間もなく完成の運びであります。
 そこで、この荻窪駅北口の駅前広場整備事業について、長年、着工できなかった理由、東京都が整備する経緯、事業の効果について伺います。

○河島東京都技監 荻窪駅北口駅前広場は、昭和二十一年に戦災復興計画として都市計画決定、二十七年には国の事業として事業決定されました。その後、四十七年には国から都施行事業として移管されたものの、事業区域における不法占拠の土地の明け渡し裁判が最高裁まで及ぶなどの理由により、長年にわたり工事に着手できない状況でございました。
 裁判所の和解が一昨年に成立したのを受け、都は昨年七月に着工し、工事は杉並区などの協力により順調に進捗しておりまして、来月には完了の予定でございます。
 駅前広場には、車道と分離した歩道やバス停留所、タクシープール等が適切に配置され、人々が集うスペースも整備されます。これらにより、周辺交通の混雑緩和を初め歩行者の利便性や安全性が大幅に向上するとともに、駅周辺のにぎわいの創出にもつながることが期待されます。

○早坂委員 駅前広場の完成を荻窪の住民は皆とても歓迎しています。しかし、整備後においてもバスの停留所は駅前広場だけではのみ込めず、青梅街道沿いにも設置せざるを得ないため、道路渋滞がこれによって解消されるわけではありません。
 また、駅前広場に隣接した場所には、今も大きな木造密集地域が残っています。昨年十二月には、その木造密集地域で全焼火災が発生しました。火元となった建物がたまたま表通りに面していたため、消火活動には支障がありませんでしたが、木造密集地域のクリアランスという課題は依然として残されたままです。
 JR中央線が東京、神田、お茶の水と始まって終点の高尾まで、現在でも南北自由通路が整備されていないのは荻窪と高尾の二カ所だけです。駅前広場の持つポテンシャルを生かし切れていないという意味で、荻窪駅は、さらなる発展の余地をふんだんに残しています。
 地元杉並区では、荻窪駅を中心とした新たなまちづくりに向けて、来年度から専門の部署を区役所内に設置し、年度内にまちづくりの基本方針を取りまとめる予定です。
 そこで、荻窪駅周辺の新たなまちづくりの動きに対して、東京都はどのように対応する考えなのか伺います。

○河島東京都技監 荻窪駅周辺につきましては、JR中央線、地下鉄丸ノ内線のほか、多くのバス路線が発着する杉並区内最大の交通結節点でございまして、地域の拠点としてのポテンシャルを有しております。東京の都市づくりビジョンでは、交通結節点の機能を生かし、充実した商業施設を初め、オフィスや住宅が複合した魅力ある市街地を形成することをまちの将来像としております。
 間もなく完成する荻窪駅北口駅前広場の整備を契機として、地元杉並区では、来年度から駅周辺の持つ潜在能力を十分に生かし、商業の活性化や生活の利便性向上など、都市機能をさらに高めるまちづくりに取り組むこととしております。
 これは、都市づくりビジョンに掲げた将来像と方向性が合致するものでございまして、都は、こうした地元区が行う新たなまちづくりへの取り組みに対して、技術的な支援を積極的に行ってまいります。

○早坂委員 以上で私の質問を終わります。ありがとうございました。(拍手)

○高橋副委員長 早坂義弘委員の発言は終わりました。

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