予算特別委員会速記録第三号

○高橋副委員長 斉藤あつし理事の発言を許します。
   〔高橋副委員長退席、委員長着席〕

○斉藤(あ)委員 それでは、私の方からは、まず生活保護について伺います。
 長い景気の低迷で、資料四四ページにありますとおり、新しい生活保護世帯というのはふえ続け、平成二十二年十一月では全都で十九万七千四百三十世帯に達しております。都が負担しているのは、居住地のない世帯への保護費分だけですが、それだけでも平成二十三年度予算で二百二十五億四千二百四十六万円です。
 過去にないほど身近になってしまいました、この生活保護の課題について質問をいたします。
 まず、受給について伺います。
 保護世帯には相応の保護の根拠があるわけですが、それでも私どもには、あの人、生活保護をもらって毎日パチンコをしているのよというような声とか、病気が治っているのに、働かずに保護費をまだもらっているとか、そういった声が寄せられます。
 東京都は、福祉サービスを必要に応じて積極的に提供する義務もありますが、同時に、納税者に理解される適切な福祉を遂行する責任もあります。
 同時に、保護費受給者にも納税者に納得されるような使い方をする義務があると私は思います。保護スタート後の受給者の収入や生活についての調査、この方法、頻度、各自治体での調査職員の確保の実情について教えていただきたいと思います。

○杉村福祉保健局長 生活保護受給中の収入状況を把握するため、生活保護ケースワーカーや査察指導員が、収入の有無にかかわらず、毎年、最低一回、被保護者全員から収入申告書の報告を求めまして、課税台帳と突合し、申告内容の確認を行っております。
 また、必要に応じまして、金融機関や生命保険会社等に対し、預貯金等の状況について調査を実施いたしております。
 これに加えまして、年金の受給権の調査などを専門的、効果的に行うため、国の補助金を利用した資産調査員の配置を進めておりまして、平成二十二年度は十六区九市で五十名配置いたしております。

○斉藤(あ)委員 調査をしているということですが、ぜひそれを都民にわかるよう広報していただくこともお願いしておきます。
 一方、自治体についてです。昨年十月二十日、全国の十九政令指定都市でつくる指定都市市長会が、国に生活保護制度の抜本改正を要望いたしました。働くことができる人の受給に五年の期限を設けることや、資産の確認目的での金融機関の回答義務のほか、事務費を含めた全額国費対応、さらには医療費の一部自己負担などを提案したものです。これは、各市が保護費の四分の一を負担していますので、大変大きな負担になって膨らんでいるということを何とか改善したいという趣旨です。
 また、この要望については、方針として、年齢や健康状態に支障がない労働可能な人に対する就労支援強化を軸として、保護回避、または保護からの脱出を最優先にするというのがあります。これについては、社会福祉士でもあります私にとっても賛成できるものであります。
 東京都はこの市長会に入っておりませんけれども、都は、国に対して生活保護制度の改善についてどのような要望をふだん行っているのか伺います。

○杉村福祉保健局長 都はこれまでも、生活保護制度の改善について、毎年、国に提案要求を行っております。
 平成二十二年度におきましては、居住地のない者などに係る生活保護費を全額国の負担とすること、都市の生活実態を踏まえた保護基準の見直し、福祉事務所の体制強化に関する措置、そして無料低額宿泊所の設置基準等の法的整備について提案要求を行っております。
 これに加えまして、平成二十一年末の年末年始の生活総合相談等の結果を踏まえまして、生活保護制度や生活、雇用に関する第二のセーフティーネットなど、生活困窮者対策を整備充実するよう、昨年二月と六月に緊急提案を行っております。

○斉藤(あ)委員 東京都の方は、各市のかわりとして提案をしている部分があると思いますが、しかしながら、市の方にも問題があります。市役所職員の水際作戦として知られるもので、例えば、申請しても入金が遅いから余り意味がないよといった、保護費の市負担を抑制するための、正直いって、うだうだいって保護申請をあきらめさせる手口、これがまだ横行しているということです。
 都は、市区に比べ負担が小さいので、この申請の権利を守るということを、恐らく、実行すること、旗を振ることはできると思いますが、保護の申請権確保に努めているのか、そこを確認したいと思います。

○杉村福祉保健局長 生活保護の申請権は、生活保護法第二条の無差別平等の原則、そして同法第七条の申請保護の原則の規定によりまして、国民の権利として保障されております。
 また、具体的な事務処理基準として、厚生労働省事務次官通知におきまして、生活保護は申請に基づき開始することを原則としており、保護の相談に当たっては、相談者の申請権を侵害しないことはもとより、申請権を侵害していると疑われるような行為も厳に慎むことと示されております。
 都では、こうした法の基本認識に立ちまして、従前より指導検査や生活保護関係会議等を通じ、都民の申請権を保障するよう、福祉事務所に対する助言指導を行っております。
 したがいまして、ご指摘のありました水際作戦というように呼ばれるものについてはないと考えております。

○斉藤(あ)委員 しかしながら、思うんですけれども、こんな、職員と受給者が互いに、これほど面倒な腹の探り合いをして調整しなくてはならないような現行制度ならば、やはりとっとと改善策を考えなければならないというふうに思っております。
 また、このようなやりとりが、ただでさえ多忙なケースワーカーを疲弊させているとも思います。現行制度が現状とそぐわないゆえに改正が必要と東京都は考えているのか、そこを確認したいと思います。

○杉村福祉保健局長 ここ数年、雇用環境の急激な変化や経済状況の低迷などを背景といたしまして、六十五歳以下の稼働年齢層にある者の保護申請が急増し、結果として地方自治体の財政負担の増大とともに、業務に必要な職員の確保などの課題が生じております。
 都としては、最低限度の生活保障と自立の助長という、生活保護法で定める二つの目的を実現するため、保護費の全額国庫負担の実現、そして若年層の自立支援の強化に加えまして、いわゆる第二のセーフティーネットなどの充実が急務であるというふうに認識をいたしております。

○斉藤(あ)委員 私の方から、ぜひ力を入れてほしいこととして要望するんですが、生活保護の不正受給、または不正継続を防ぐためには、多くの都民に正しく制度を理解してもらうことが必要だと思います。
 例えば、下肢障害者だから通勤用に車を持っていてもいいというふうなことがわかれば、温かく見守ることはできますし、その一方で、よく耳にすることがあるんですが、これ以上働くと保護費が減って損だという受給者がいるようなんですが、これを間違っていると、間違った考え方だと指摘するような周囲の目があれば、安易な方向へ走る受給者の発想を許さないという雰囲気をつくっていけるんではないかと思っています。制度の広報の必要性について、所見を伺います。

○杉村福祉保健局長 最後のセーフティーネットであります生活保護制度は、被保護者に限らず、都民が正しく制度を理解することで成り立っている制度であると認識をいたしております。
 生活保護制度についての広報は、実施機関である区市での取り組みが重要でございます。各区市では、広報誌などにより住民に制度を周知するとともに、保護開始時におきましては、保護を受けるに当たっての権利、義務などについて詳細に記載した生活保護のしおりを配布し、説明を行っております。
 都としても、ホームページや冊子などで、制度の概要や都内の被保護世帯等の現状について情報提供を行っております。

○斉藤(あ)委員 それでは最後に、これは知事に伺います。都営住宅などもそうなんですが、これは福祉サービスにもいえることなんですけれども、保護受給者が貧困から脱すれば、次の困っている家族にその席を譲っていくという道徳、これをしっかり社会に根づかせるべきだと私は思います。
 現在の社会における生活保護制度について知事はどのように考えているか、そこを伺いたいと思います。

○石原知事 いろいろご指摘のとおり、現況の社会保護制度については、何とはない不本意さを感じている人が実に多いと思います。私もよく、ある人などは軽自動車に乗って生活保護をもらいに来たけど指に小さなダイヤの指輪をしてたとか、そういうエピソードというのをあちこちで耳にしますけれども、この制度も、やはり受給者というものと国家の方の信頼関係といいましょうか、相手の善意というものを前提にして行う制度のはずでありますけれども、しかし、一回もらってしまったら、とにかく返さぬというか、条件が変わっても、要するに、あなたのおっしゃるようにほかの人に席を譲るという、そういう傾向は私は非常に少ないと思いますね。
 どうも今の状況を眺めますと、生活保護を受けていると、下手をすると月収三十万円のような人たちよりも生活の状況がいいという非常に皮肉な現象も現実にあるわけでありまして、いずれにしろ、これは私たちが努力してこの社会を築いてきた、その一つの成果だと思いますが、同時に、経済状況が低迷する中で受給者が増加しているのも、こういったセーフティーネットの機能が有効に働いているという一つの証左であると思います。
 しかし、この制度に甘えてもらっても困るわけでありまして、これはやっぱり、制度として創設以来六十年以上経過しているわけでありますから、なかなかいろんな課題が噴出しているという気がいたします。
 ただ、これはやっぱり国がつかさどる問題でありまして、結局、自治体というのはその走り使いといいましょうか、手先で動いているわけでありまして、何といいましょうか、みんなが支え合っている制度でありますから、こういったものの運用のために、国がもう少し厳しい規律といいましょうか、しっかりした規律を設けていく必要があるんじゃないかと私は思っております。

○斉藤(あ)委員 ありがとうございました。
 それでは、続きまして、ひきこもりについて、話題を変えたいと思います。資料6が参考になります。
 ひきこもり対策については、国では内閣府や厚生労働省が取り組んでまいりましたが、昨年五月に、過去の蓄積データと研究から医療的な視点を重視した、ひきこもりの評価・支援に関するガイドラインを発表いたしました。
 この新ガイドラインの中心となった齊藤万比古医師は、ひきこもりが不登校も含めて全年代に発生すること、そして、多くのひきこもりに発達障害を含む広義の診療、治療をまだしていない精神障害が関与しているというふうにいっております。
 さて、このひきこもりについては、東京都では、青少年・治安対策本部が都内二・五万人のひきこもりのために対策に長年取り組んでおり、新ガイドラインとは違う角度で、先月、ひきこもり等の若者支援プログラムをまとめたそうであります。
 この柱について、それはどのようなものか教えていただきたいと思います。

○倉田青少年・治安対策本部長 ひきこもり等の若者支援プログラムは、NPO法人等がひきこもり等の状態にある若者に対し、就労支援や就学支援の前段階の支援を行う枠組みでございます。
 支援員がひきこもり等の若者の自宅を訪問し、支援機関の紹介や外出の促し等を行う訪問相談支援、自宅以外に安心できる居場所を提供して、グループ活動等を行う居場所の提供、ボランティアなどの社会体験活動を行う社会参加への準備支援の三種類のプログラムで構成されております。
 このような支援を行うことにより、自信が持てず、就労や就学に一歩踏み出せないような若者の生活習慣の改善、コミュニケーション能力の向上、自分が社会において役立つ存在であるという自信の向上などを目指すものでございます。

○斉藤(あ)委員 それでは、この青少年・治安対策本部では、NPO法人等との協働事業、若者社会参加応援ネット、コンパスというものをやっているんですが、二十二年度末にこれは終了するということです。
 二十三年度予算ではどのような施策の展開をそれならば用意をしているのか、そこを確認したいと思います。

○倉田青少年・治安対策本部長 東京都若者社会参加応援ネット、コンパスは、ひきこもり等の若者支援プログラムを確立するため、NPO法人等との協働により三年間実施した事業でございます。
 今年度、支援プログラムが確立したことに伴い、コンパスは終了いたしますが、平成二十三年度からは、支援プログラムに基づく支援を実施できるNPO法人等を登録する制度を開始するなど、都内でひきこもり等の状態にある若者を支援するNPO法人等に支援プログラムの普及、定着を図り、質の高いNPO法人等を育成することとしております。
 このような取り組みにより、ひきこもり等の状態にある若者やその家族が安心して支援を受けることができるNPO法人等が社会基盤となるよう支援してまいります。

○斉藤(あ)委員 つまり、青少年・治安対策本部のプログラムについては、NPO法人等による支援を対象とするもの、そして、一方で、先ほど出た国の新ガイドラインについては、精神保健、福祉、医療などによる支援を対象とするものと、役割分担があるということですね。
 そのことを踏まえて、私の方から二つ本部の方には要望したいんですが、現場のNPOの後押しというのは私もいい方法だと思います。民間の方にやれることを任せる。しかしながら、一方で、やはりそうなりますとなかなか現場の状況というのがつかみづらくなりますので、今後も、予算を四千万円程度かけているということもありますので、きちんと現場の経験からのひきこもりの原因と対策手法について情報収集を行っていってほしいということ。
 そしてもう一つ、十五年以上といった長期のひきこもりの方、また、就労した後ひきこもったという方が最近は大変ふえております。
 結果、この青少年・治安対策本部が管轄をしている三十四歳までを想定した、実際には弾力的に対応しているというふうに聞いているんですが、そのひきこもり対策、しかしながら、増加しているのは、青少年とはくくりづらい四十歳代、五十歳代のひきこもりという方がいらっしゃいます。
 そしてまた、高齢化する親のことも含めて、今後、そういった高い年齢の人たちに対する対処をどうするかということについて、都側の方も整理が必要と私は思いますので、ぜひそこを頑張っていただきたいと要望しておきます。
 さて、冒頭に紹介をした国の新ガイドラインについて話題を移していきます。
 (パネルを示す)これは、ひきこもりに対して医療的診断を第一段階としてまず行い、そのトリアージによって医療の必要な精神疾患と、そして、生活環境の改善や生活訓練に対応するものを人によって分けて対応する流れを示したものであります。
 どういう比率でひきこもりには医療を必要とする原因が入っているのでしょうか。二枚目の、精神保健福祉センターのひきこもり相談百二十五事例を精神医学的に診断して分類したグラフを示します。
 これについては、発症したから引きこもった場合と、引きこもっているうちに発症した場合があると思うんですが、軽度の人も含めて九五%、その他の五%以外の九五%が医療支援を必要とする障害を伴っているということを示しております。
 もう一つグラフがございます。これは不登校の背景障害ですけれども、いわゆる広汎性発達障害、そしてADHD、注意欠陥多動性障害を含む破壊性行動障害というのが二つあります。この緑のところと青、オレンジのところですが、合計で三五%、約三分の一を占めています。
 つまり、ひきこもり改善をメンタルヘルスの角度から対応し、精神疾患や発達障害の改善を目指した支援の有効性は、多くの医療機関で認められているということです。これが今回ガイドラインの中に生かされています。
 疾病ならば即治療を開始し、発達障害ならばそれに合わせた指導を計画する。一方、疾病でなければ、それはそれでよかったとして生活訓練に移っていく。ボランティアなどをして社会参加をしていくというのもありでしょう。恐らくこのあたりに先ほどの青少年・治安対策本部のNPO事業が存在していくというふうにいえると思います。
 ぜひ、皆さんにわかっていただきたいことなんですけれども、医学的、科学的要素を入れることで、ひきこもりを単純に若者の弱体化として、原因も改善目標も明確にできずに、社会不安をあおる一因にしてしまったり、親が甘やかしたからだとか、教師の差別で不登校からひきこもりになったとか、そういってだれかを悪人にしてひきこもりを責め続けるだけの時代はもう終わろうとしているというのが去年のこのガイドラインの非常に大きな節目なんですね。
 先ほど、他会派の質問の中でひきこもりの例示がありましたが、慎重な発言が必要だというふうに私は念を押しておきます。
 では、ここで、ひきこもりになる事例もあるとして紹介した発達障害についてちょっと話題を移したいと思います。
 注意欠陥障害、または多動性障害、ADHDと呼ばれるもの、そしてアスペルガーや学習障害、LDと呼ばれるもの、これらの障害の一部または総称を発達障害といいます。平成十七年に発達障害支援法が施行されて、制度整備が始まった新しい障害です。
 出現率については、文部科学省が〇二年六・三%といっていますが、これについては諸説ありますけれども、恐らく、私の周りにもおりますし、皆さんの周りにも実際にはいるはずです。
 そして、もともと繊細な神経細胞の集合体である脳の微妙な個体差によって生まれるともいえるこの発達障害は、他人への配慮が難しいなどの人間関係の不調がある一方で、極度の集中力を発揮する天才肌が大変多いとされています。
 医師によっては、脳の発達がアンバランスな症候群というふうにいう人もいます。そしてまた、多くのドクターが書いた著書の中では、推測されるだろう歴史上の有名人もかなり紹介をされております。
 そして、残念ながら、他者への配慮のなさや物事の優先順位のつけ方が他者と異なることから、人間関係のトラブルを起こす人が多いのも特徴で、サリ・ソルデンの著作で邦題「片づけられない女たち」で紹介されているのも、主にADHDの人たちであります。
 彼ら彼女がなぜ引きこもるかということについては、学生時代までは何とか友人同士の融通がきいた人間関係の中で、小さなトラブルは起こしていたけれども、それで済んでいた人が、社会人になって仕事の面でトラブルを起こし続け、そして退職を余儀なくされてしまう場合が多いためです。
 発達障害が子どもの問題と考える人はまだ多いようなんですが、実際にはこのように社会人になって発覚する人も多く、また再就職がうまくできず、結局、自宅に引きこもってしまい、そのままうつになるという場合も多いようです。
 もともと生きづらさから精神疾患を併発しやすいので、不景気でリストラが多くなると失職しやすく、ひきこもり化しやすいようです。
 ではどうしたらいいのか。発達障害について対応に踏み込んだ平成二十二年十一月教育庁発表の東京都特別支援教育推進計画第三次実施計画では、発達障害を視野に入れた計画が多数含まれており、大変これに対する家族の関心というのは高いものがあります。発達障害に対応する情緒障害等通級指導学級の利用者は著しい増加傾向にあって、平成三十二年度までには倍増するとも予測されています。
 計画では、全小中学校に特別支援教室の設置を目指しており期待するところですが、質問ですけれども、都教育委員会が第三次実施計画で打ち出した今後の取り組みなど、発達障害の程度に応じた教育環境の整備のあり方について伺います。

○大原教育長 特別支援教室は、発達障害のある児童生徒に対する指導の充実を図るために、すべての小中学校に設置するものであり、専門性の高い教員が巡回指導することにより、発達障害の児童生徒は在籍校を離れることなく対人関係の改善等に向けた指導を受けることができます。また、巡回指導を担当する教員と学級担任との連携が強まり、学級担任の指導力の向上も図ることができます。
 都教育委員会では、今後、区市町村との連携により、平成二十四年度から三カ年計画で特別支援教室の導入に向けたモデル事業を実施する予定であり、この事業を推進する中で、発達障害の程度に応じた重層的な支援体制の整備についても検討してまいります。

○斉藤(あ)委員 それでは、もう一つ伺います。
 特別支援教室で指導に当たる教員については、かなり高いスキルが求められるんじゃないでしょうか。そこで、特別支援教室構想の実現に向けて、専門性の高い人材の確保と育成に向けた取り組み、これを確認したいと思います。

○大原教育長 特別支援教室を巡回して指導を行う教員には、発達障害のある児童生徒の指導だけでなく、巡回先の学級担任への指導力向上に向けた助言なども求められるため、巡回指導を行う教員の確保と専門性の向上は重要でございます。
 そのため、特別支援教室の導入に向けて実施するモデル事業の中で、指導力向上のための研修や人事交流のあり方などに関する研究、検証を行い、専門性の高い人材の確保と育成に努めてまいります。

○斉藤(あ)委員 ぜひスピーディーな実施と、そして予算確保、これをお願いいたします。
 では少しこの発達障害について大人の場合に話を移しましょう。実際、私も個人的にかかわった四十代の男性で、アスペルガー症候群と診断されている方がいました。大卒で就労意欲もありましたけれども、残念ながら生活保護で単身生活を送っていました。
 不衛生な感じのために地域生活でも支障がありましたけれども、ヘルパーが家事援助に入ったときに、干した洗濯物の取り込みが早過ぎて生乾きの状態でいつも取り込んでいることに気がつきました。そこで、雨でない限りは五時に取り込むというルールにしたところ、生乾きから来るカビ臭さがなくなり、周りに好感を持たれるようになりました。
 これはほんの一例ですけど、このように計画的にヘルパーが指導に入るだけで生活改善がかなり図れるというふうにいえます。この場合は自立支援法に基づく訪問でしたけれども、まだ少ないですけれども発達障害の治療に取り組む医師というのがおりますし、その人たちの受診によって、場合によっては、これは患者にもよりますけれども、短気な面をデパケンやハロペリドールといった薬の治療で改善する方法や、もしくは職業の選び方で適性を考慮した働き方を選んだり、周囲に理解を求めるなど改善の方向もかなり示されております。
 そこで、今度は福祉保健局に伺うんですが、局の事業として、発達障害のみならず精神障害全般に及ぶ事業展開をふだんしておりますので、おのずと対象にはひきこもり状態の人を含むことになるでしょうし、結果として、アウトリーチといった訪問支援も行うことになると思います。
 発達障害者の支援に当たっては、小さいうちからの早期発見、早期支援が重要といわれていますけれども、その取り組み状況について福祉保健局に伺います。

○杉村福祉保健局長 都は、平成十九年度から二十一年度まで、発達障害に対する有効な支援手法を確立するため、五つの区市においてモデル事業を実施いたしました。この事業では、乳幼児期における支援といたしまして、臨床心理士等による保育所への巡回指導を実施し、保育士による早期の気づきや支援力の向上など効果が見られました。
 こうしたモデル事業の成果を普及するため、子ども家庭支援センターや保健センターなど地域の支援機関に医療、心理、福祉等の専門職員を配置し、発達障害の早期発見、早期支援に取り組む区市町村に対しまして、平成二十二年度から包括補助事業により支援を行っているところでございます。

○斉藤(あ)委員 それでは、早期発見、早期支援と並行して重要なのが成人期の支援です。自立生活に困窮している発達障害者に対しての支援活動について、平成二十三年度の予算ではどのように取り組んでいくのか伺います。

○杉村福祉保健局長 都は、平成二十二年度、当事者団体や教育、労働など関連分野の専門家も交えた発達障害者支援体制整備推進委員会を立ち上げまして、乳幼児期における取り組みに加え、医療機関、NPO法人などと連携した就労支援など、成人期の支援について意見交換を行っております。
 また、発達障害者を支援するためのシンポジウムを開催し、その中で区市町村の先駆的事例を紹介するなど、その取り組みを促すとともに、支援の担い手となる医療や福祉などの専門職に対する研修も実施いたしております。
 平成二十三年度からは、包括補助事業を活用し、支援を要する成人の発達障害者に対し、社会参加や就労などに関する先駆的な取り組みを行う区市町村を支援してまいります。

○斉藤(あ)委員 ぜひ頑張っていただきたいと思います。
 ちなみに、私の地元の小平市の方からも、都の発達障害支援センター、TOSCAが都全体で区に一個というのは大変不十分という気がしますので、ぜひそのあたりも強く増設を要望させていただきます。
 さて、平成十七年度に支援法が施行され、その後、急速にクローズアップされて事業展開をされたこの発達障害ですけれども、むしろそれは、今まで家族や当事者に対して待たせ過ぎてしまったことに対して、追いつくための必要なスピードアップじゃないかと私は思っております。私自身も、たまたま先ほどのケースに出会って関心を持ったという次第であります。
 昨年十二月の法改正で、発達障害が自立支援法において障害として明示されまして、今後、発達障害者と認定をされ、支援を必要とする人々がふえてくると思います。このような国の動きにも対応して都として支援策を進めていく必要があると思いますが、いかがでしょうか。

○杉村福祉保健局長 今回の法改正を受けまして、現在、国では、発達障害者に対します精神障害者保健福祉手帳の交付などに関し、発達障害の症状等をより適切に把握して、判定が容易になるよう、診断書の様式及び判定基準の改正の準備を進めているところでございます。
 都としても、これらの改正に対応し、発達障害者の方が円滑に認定を受けられますよう、都民や区市町村、医療機関等の関係機関に周知を行ってまいります。
 また、この法改正により社会における発達障害に対する認識が高まり、支援ニーズが増加すると見込まれます。都は、区市町村が実施する早期発見、早期支援の体制整備や、成人期の社会参加や就労支援などの取り組みを積極的に支援してまいります。

○斉藤(あ)委員 積極的な支援という言葉をいただいたところで、ぜひ頑張っていただきたいと思います。恐らくひきこもりについては、このような医学的、科学的な根拠に基づいて対応するというのが皆さんにもわかっていただけたんじゃないかと思います。
 それでは次に、独居高齢者の安全・安心についてです。
 東京消防庁に伺います。昨年義務づけになった住宅用自動火災警報器ですが、昨年三月時点で七五%普及率ということです。現在の普及率と、そしてどのような調査方法だったのか伺います。

○新井消防総監 直近での消防に関する世論調査における住宅用火災警報器等の設置状況は七九・四%であります。
 この調査は、今後の消防行政施策の基礎資料とすることを目的に、毎年、当庁管内に居住する満二十歳以上の男女三千名を無作為に抽出し、調査用紙の配布、回収を郵送する方法で行っているものであり、回収率は五三・五%でございます。

○斉藤(あ)委員 それでは、かつてないほど普及に広報したと思いますが、この警報器の普及の防災効果、どのようなものだったか伺います。

○新井消防総監 住宅用火災警報器の普及に伴い、住宅火災の件数及び火災による死者数は、ここ数年、減少傾向にあります。また、居住者や近隣の方などが警報音に気づいたことにより、火災に至る前に対処できたもの、就寝中に避難ができたもの、早期の初期消火や一一九番通報等により被害が軽減されたものなどの奏功事例は、平成二十二年中四百五十九件把握しておりまして、前年と比較して約八〇%増加しております。

○斉藤(あ)委員 今、近隣の通報の話が出ましたので、最近ちょっと、うちの小平団地の方から聞かれた疑問を伺います。
 電話にも出ない高齢者、中にいるはずだというところで一一九番をした方がいい、かぎを壊して中に入って確認した方がいいという場合がありますが、なかなかためらわれる。もしも誤報になってしまったらどうしよう、そしてまた、これは先ほどの住警器の話もそうでしょうし、また児童虐待の通報なども同じように、ためらわれる善意ある第三者がいるんじゃないでしょうか。
 こういった善意の第三者の災害発生が疑われる場合の一一九番通報について、誤報の際の責任ということを踏まえて、東京消防庁の見解を確認いたします。

○新井消防総監 隣の家の警報音が聞こえる、あるいは呼びかけに応答ができなくなったなど、火災や急病人の発生が疑われる場合は、迷わず一一九番に通報していただきたいと考えております。東京消防庁では、こうした場合でも、通報の内容に応じて消防隊、救急隊などを現場に急行させ、状況の確認を行っております。
 結果として火災や急病人の事実がなかったとしても、通報者が緊急性があると判断して通報した場合に、責任を追及することはございません。また、通報者の氏名等の個人情報につきましては、本人の同意がある場合以外、出場先の関係者に対しても明らかにしておりません。

○斉藤(あ)委員 ありがとうございます。
 では最後に、市町村総合交付金について簡単に伺います。
 今回、十三億円増の四百四十八億円という総合交付金、大変、多摩地域の一人として喜ばしいニュースであり、また、ちょっと早い話ですが、ぜひ二十四年度もお願いしたいなというふうに内心思っております。
 さて、そうはいっても、市の方は小平市も含めて大変厳しい状況であります。一方で、行革なども、職員定数や給与の見直しなども行っていますけれども、ケースワーカーなどは先ほど申しましたようになかなか足りない状況ということで、行革もできる範囲が限られています。
 総合交付金については各市町村の行革努力を算定する経営努力割がありますが、これが職員削減のようなこと一本やりだと、行き過ぎてしまう場合が時としてあります。実際、行革にはさまざまな方法がございますけれども、個々の市町村の実情に基づく行革の取り組みについても支援を行うことが重要であると考えますが、見解を伺います。

○比留間総務局長 市町村総合交付金は、市町村の財政状況、経営努力、地域振興という三つの観点から各市町村の行政運営を支援しております。
 このうち経営努力につきましては、都が示している職員定数や給与水準などの取り組みなどを対象としておりますが、あわせて市町村の主体的な努力や創意工夫が十分に発揮されるよう、市町村のさまざまな独自の行政改革についても評価し、算定をしております。
 具体的には、公共施設の利用率向上を目指した指定管理者制度の運用改善や、携帯電話を利用した納税システムの導入といった、行政運営の効率化や住民サービスの向上に資する独自の取り組みを幅広く対象としております。
 今後とも、このような市町村の実情に基づいた主体的な行政改革が進むよう支援を行ってまいります。

○斉藤(あ)委員 それぞれの市町村について置かれている環境、抱える課題、いろいろでございます。市町村への包括的な財政支援制度である総合交付金の果たす役割は、その点、大きいものがありますが、そこで最後に伺います。
 市町村の自主性、市町村会の要望にあるような財政状況を初め、市町村の実情を十分勘案した弾力的、効果的な配分が重要であるというふうに考えるんですが、見解を伺います。

○比留間総務局長 市町村総合交付金の運用に当たりましては、各市町村の実情をきめ細かく把握するため、年間を通じ綿密な意見交換を行い、それを交付金の算定に反映させております。
 例えば、市町村の要望を踏まえ、年度途中に財政状況の大幅な悪化が見込まれ、その結果、事務事業の円滑な実施に影響を与えるおそれがある場合などに、必要な財政支援を行ってきました。また、台風などの自然災害などによる突発的な財政需要に対しても、機動的かつきめ細かな支援を行ってまいりました。
 今後とも、各市町村の実情に即した交付となるよう、それぞれの財政状況や事業動向を十分把握し、弾力的かつ効果的な財政支援に努めてまいります。

○斉藤(あ)委員 丁寧な答弁ありがとうございました。今後とも市町村にぜひともご支援いただきますようよろしくお願いをいたします。
 以上で質問を終わります。ありがとうございました。(拍手)

○山下委員長 斉藤あつし理事の発言は終わりました。

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