予算特別委員会速記録第三号

○高橋副委員長 山口拓委員の発言を許します。
   〔高橋副委員長退席、泉谷副委員長着席〕

○山口委員 それでは、まずは、少子化対策についてお伺いをしたいと思います。
 都は、この少子化打破緊急対策事業費として、平成二十三年度予算に百五十四億円の予算を計上されました。私はこれまで、都は率先をして、この少子化対策に努めるべきと質疑を重ねてきただけに大変うれしく思っているところであります。
 そもそも、この少子化対策については、これが万能という対策は実はございません。むしろ議論が尽くされてきたからこそ、今何が必要なのかを整理していくことが重要であると思います。
 さて、そこで、少子化が解消され、出生率が回復をするための社会整備、環境整備は改善をされていると果たしていえるのでしょうか。だれもが安心をして産みたい、育てたいと思えるような環境整備というのは、少子化対策の対策以前の基本整備であって、この対策は、そこに誘導、さらなる保障を担保していくことこそが本当の対策なのではないかと私は考えています。
 首都圏においては、就職難、晩婚化、不況、住宅問題などを初め、さまざまな要因が複合的に絡み合いこの少子化という現象が起こっているわけであります。これらのことを前提として幾つか質問をしてまいりたいと思います。
 まず、保育サービスについて伺います。
 保育所の待機児童問題は、いうまでもなく社会問題です。平成二十二年四月現在の都内の待機児童数は八千四百三十五人であり、過去最多となっています。各自治体は、保育サービスの拡充に積極的に取り組んでこそいますが、ことしの四月入園、入所申し込みも厳しい状況が続いていると聞いています。その中でも、入所が厳しく限定されているのが早生まれの子どもであります。
 保育所の新規開設は四月が多く、入所時期も四月が多い。四月入所に向けた認可保育園の申し込みは、十二月までに行われることが多いわけでありますが、受け付け締め切り後に生まれた子どもは、翌年度からの保育の申し込みができなかったり、できたとしても、限られた枠しか残されていないため、ゼロ歳児保育を利用することがほとんどできません。早生まれの子どもも利用しやすいような取り組みを行うべきと考えますが、都の見解を伺います。

○杉村福祉保健局長 早生まれの子どもも保育サービスを利用しやすくするためには、認可保育所におけるゼロ歳児保育の実施率を向上させ、定員拡大を図る必要がございます。都内におけるゼロ歳児保育の実施率は、認証保育所が一〇〇%であるのに対しまして、保育サービスの八割を占める認可保育所の実施率は七八%となっております。
 都は、待機児童解消区市町村支援事業によりまして、三歳未満児の定員拡充に積極的に取り組む区市町村への支援を強化いたしますとともに、ゼロ歳児保育の実施を義務づけている認証保育所の設置促進にも積極的に取り組んでいるところでございます。

○山口委員 生まれた時期に関係なく、平等に保育所に入所できる機会が得られるよう、施策の充実にぜひ取り組んでいただきたいと思います。
 そしてもう一点、サービス利用が限定をされている事例として、休日保育の問題があります。私の知人の商店街でお店を経営する若夫婦は、平日は子どもを保育所に預けているが、日曜日は保育所が休みであるため子どもを預けることができず、店をあけることができないと困っておられます。休日でも預けられるよう、保育サービスの充実も図るべきと思いますが、見解を伺います。

○杉村福祉保健局長 区市町村が実施をいたします休日保育事業につきましては、これまで国庫補助の対象が認可保育所に限られておりましたが、昨年度から補助要件が緩和され、児童福祉施設最低基準を満たす認証保育所等についても対象となりました。
 これを受けまして、認証保育所等の地域の保育資源を活用いたしました休日保育も新たに展開いたしており、現在、都内の二十四区市五十八カ所で実施をされております。
 今後とも、区市町村に対しまして、先駆的な取り組み事例を紹介するなど、休日保育事業の拡充を働きかけてまいります。

○山口委員 今、二点事例を挙げてお話をいたしましたが、近年この保育の利用を希望する人の働き方が多様化をするなど、時代の流れとともにもうニーズが変わってきているわけであります。保育についての考え方も変化をしていると思うわけでありますが、都の認識についてお伺いします。

○杉村福祉保健局長 就業環境の変化や家庭、地域の子育て力の低下などを背景に、保育サービスは、すべての子育て家庭に必要な普遍的サービスとなっております。しかしながら、認可保育所制度は、保育に欠ける要件などの従来の仕組みを維持したままであり、保育を必要とするすべての人が利用できる制度とはなっておりません。そのため、全国画一的な制度である現行の認可保育所制度を、利用者本位の新たな仕組みへと抜本的に改革する必要があると認識をいたしております。
 保育に欠けるなどの要件を必要としない認証保育所制度は、こうした考えに立って創設したものでございまして、国に対しましても、現行制度を抜本的に改革するよう、再三提案要求をいたしております。

○山口委員 この保育を必要としているすべての人が利用できる仕組みにするということは、理念としてはすばらしいんですが、実際にこれ利用ができなければ意味がないわけであります。この保育所制度の改革には、保育サービスの抜本的な拡充というものがこれは不可欠であると思います。その点からいえば、都独自の認証保育制度は、民間企業を含む多様な事業者の参入により設置が進み、都の保育施策の一翼を担っているわけであります。現在の認証保育所の設置状況はどのようになっていますでしょうか、伺います。

○杉村福祉保健局長 認証保育所は、ゼロ歳児保育、十三時間開所など大都市の保育ニーズに対応したものとして、平成十三年度の制度創設以来、都民の広範な支持を得て着実に増加いたしております。本年二月一日現在の認証保育所の設置数は五百六十カ所、定員は一万八千人を超えております。

○山口委員 認証保育所の定員は、認可保育園の定員の十分の一なわけでありますが、三歳未満の低年齢児だけを見てみると、認可保育園の五分の一になるんだそうです。認証保育所制度がなければ、待機児童は今の二倍以上になっていると思います。
 認証保育所制度について、保育の質の低下につながると批判をされる意見もあるようでありますが、認証保育所は、保育室制度のレベルアップを図るために創設をされたという背景はあるわけであります。増大する保育ニーズに対応するためには、一定の質を担保した認証保育所を含め、多様なサービスを組み合わせて、サービスを拡充していく必要が、私はあると思います。待機児童解消に向けて引き続き積極的に取り組んでいただくよう要望して、次の質問に移りたいと思います。
 次に、学童保育について伺いたいと思います。
 保育園で苦労して預けられた方、また預けられなかった方も、次の大きな壁として、小一の壁というのが立ちはだかるわけであります。子どもを保育園に延長保育で預けてきた共働きのご夫婦が、小学校入学に伴って預け先に困り、仕事と育児の両立に悩むといったケース、いわゆるこの小一の壁というものが社会問題となってきています。
 働いている親として、小一になったばかりの子どもには学童クラブは重要であります。親として学童クラブに安心して預けたいと願っているが、夕方の六時ぐらいでは、親が仕事中であり、預ける時間としては早過ぎるという声が大変多く聞かれます。
 そこでまず、都内に学童クラブはどれぐらい設置をされているのか、また、そのうちどれぐらいの数のクラブが夕方六時までの運営としているのか、伺いたいと思います。

○杉村福祉保健局長 昨年五月一日現在、都内で放課後児童健全育成事業、いわゆる学童クラブ事業でございますが、事業を実施しているクラブ数は千六百七十六でございます。このうち、午後六時以前に終了するクラブ数は千二百九十六で、全体の七七%を占めております。

○山口委員 実に全体の七割以上が夕方六時で終わってしまうわけであります。これでは小学校低学年の子どもを持つ共働きの家庭にとっては、場合によっては仕事を続けることができなくなってしまうというほどの、私は問題だと思います。
 平成十九年度の福祉保健局の調査によれば、学童クラブの理想終了時間というものは、夕方六時から七時までと回答した割合が最も多く、これは全体の四割を占めているわけであります。まさにこの六時からのおよそ一時間が、大きな壁となっているわけであります。そこで、この小一の壁に、都として今後どのように対応していかれるおつもりか、お聞かせをいただきたいと思います。

○杉村福祉保健局長 都は、今年度、保護者の時間延長ニーズに対応するため、午後七時以降までの開所とあわせ、指導員に保育士等の有資格者を配置することなどを義務づけた、都型学童クラブ事業を開始いたしました。
 本事業は、民間事業者が運営するクラブに対しまして補助を行うものでございまして、現在、七十を超えるクラブで事業を実施しており、来年度は、実施規模を二百六十五クラブに拡大することとしております。
 今後、区市町村に対しまして、区市町村がみずから運営するクラブも含めまして、開所時間の延長を一層働きかけ、子どもが安心・安全に放課後を過ごせる学童クラブの確保に努めてまいります。

○山口委員 小一の壁もそうでありますが、実は全くまだ対策が練られていないのが小学校四年生、小四の壁といわれるところであります。保育という視点から見ると、この二つの壁は大変厳しい状況でありますし、さらに深刻な課題ともいえるわけであります。
 当然のことながら、それぞれの家庭で最大限の努力をしていただくということは、また、多様化をする放課後にどこまで対応できるかという課題、これはもちろん大きな課題だと認識はしていますが、子ども全員、全体とまではいわないまでも、求められればしっかりとこたえられるぐらいの環境整備というものが急務であると思います。恐らく、近い将来、そう遠くなく大きな課題となる小一の壁、小四の壁というものに、ぜひとも早く対応していただくよう強く要望して、次の質問に移りたいと思います。
 さて、イベントについてお伺いをしたいと思います。
 まず、全国都市緑化フェアについてお伺いをいたします。
 緑は、風格ある都市空間を創出するとともに、都市に暮らす私たちに潤いや安らぎをもたらし、快適な都市環境にとってなくてはならないものであります。緑について、東京都は、緑の東京十年プロジェクトを打ち出し、海の森の整備や、校庭の芝生化など、新たな緑の創出や、昔からある緑の保全を積極的に進めているところであります。
 こうした中、第二十九回全国都市緑化フェアが、平成二十四年の秋に東京都で開催されます。この開催を知らせる公表資料を見ますと、主催者は東京都と財団法人都市緑化基金ということであります。国において、政権交代以降、独立行政法人や公益法人に注目をしており、都においても監理団体の見直しを進めてきているところであります。
 この財団法人都市緑化基金は、ホームページで調べてみますと、都市緑化に関する普及啓発や、市民、企業、行政の参加による花と緑のまちづくりを積極的に支援している団体であるということはわかりました。この財団法人都市緑化基金は、全国都市緑化フェアの開催に当たって、果たしてどのような役割を担われるのか、まずお伺いをしたいと思います。

○村尾建設局長 全国都市緑化フェアは、国、地方自治体、住民等の協力により、都市緑化を全国的に推進し、緑豊かな潤いある都市づくりに寄与することを目的としており、東京都は、開催計画の策定を初め、都市緑化フェアに係る準備、実施運営の全般を行います。財団法人都市緑化基金は、都市緑化フェアの開催ノウハウを有するとともに、緑化等の取り組みで良好な実績を上げている団体を顕彰する緑の都市賞の実施などにより、国内の緑の市民活動や企業活動に通じております。こうしたノウハウ、実績を活用し、都市緑化基金は、東京都開催において、緑化に関する全国に向けた情報発信や市民、企業参加のコーディネートを担ってまいります。

○山口委員 この全国都市緑化フェアの開催では、東京都の緑施策の発信に、都市緑化基金の実績とノウハウを活用するということでありますが、役割をきっちり果たしていただきたいと思うところであります。
 当然、都が主導していくことは確認をするまでもないんであろうと確信をし、信じているところでありますが、東京都での開催に向けては、これまでの全国都市緑化フェアの開催例を参考にするだけではなくて、東京都が積極的に進めてきた緑の施策を踏まえたものにすることも、とてもこれは重要だと私は思います。これまでの都の緑施策を踏まえた全国都市緑化フェアを開催するための都の連携体制について伺っておきます。

○村尾建設局長 東京都は、都立公園や、海の森の整備、街路樹の充実、校庭の芝生化を進めるとともに、規制や誘導により民間の緑を保全、創出するなど、緑の施策として多角的な取り組みを進めてまいりました。こうした都が進める多様な取り組みの成果を発信し、緑あふれる都市東京の実現を図っていく契機とするため、全国都市緑化フェアを開催いたします。
 このため、副知事をトップとする既存の全庁横断的な組織である緑の都市づくり推進本部に、都市緑化フェア推進部会を新たに設置し、関係局の連携により、基本計画の検討、調整など、開催に向けた準備を鋭意進めております。

○山口委員 この全国都市緑化フェアの東京都開催に当たっては、ぜひ次世代を担う子どもたちへの教育的見地も含めて検討していただきたいと考えております。
 都心では、子どもたちが、畑で土に触れ、農作物を収穫する機会というのはなかなか持てるものではありません。都の緑施策のさらなる展開に当たっては、この教育的見地からの取り組みも大変重要ではないでしょうか。
 この全国都市緑化フェアの開催を一過性のイベントとしてではなくて、都の緑の施策をさらに進めていくための一つの契機としてとらえることが必要ではないでしょうか。今回のフェアの開催を、今後の緑の施策の推進にどのようにつなげていくおつもりか、お伺いをしたいと思います。

○村尾建設局長 東京都で開催する全国都市緑化フェアは、上野、井の頭などの都立公園に加え、海の森、国営昭和記念公園を会場として、東京のさまざまな緑の魅力を伝えるとともに、会場内にとどまらず、街路樹の充実や河川の緑化など、東京の緑のつながり、広がりを発信いたします。この開催を契機に、国、地域や都民、民間事業者などとの多様な連携の創出強化を図り、緑のネットワークをさらに広げ、緑あふれる東京の実現に向けた施策を強力に進めてまいります。

○山口委員 詳細についてはこれからということでしょうから、これからまたしっかりと運営やあり方についても確認をしてまいりたいと思います。
 続いて、東京マラソンについてお伺いをします。
 いよいよ東京マラソンが三日後に迫ってまいりました。東京最大のスポーツイベントとして定着したこの東京マラソン、私も含め、多くの都民の方は楽しみにされていることと思います。これほど人気となった大会だからこそ、その運営に当たっては、都民の理解がしっかりと得られるよう透明性のある取り組みとして進めていただきたいと思うところであります。
 特に、今回から、昨年六月に設立をした東京マラソン財団が主催をすることとなっています。財団設立に当たり、都はそのメリットとして、機動的な運営体制の確保や大会運営の透明性の向上などを挙げられました。これらのメリットがどのように具体化をされているか、東京マラソンの将来を見据える上でも確認をしておく必要が私はあると思います。このような観点から、何点かお伺いしたいと思います。
 まず初めに、都は、財団設立の目的として、機動的な運営体制を確保し、大会の魅力を高めることと挙げていましたが、実際に、今回の大会でどのように法人化のメリットがあらわれたのか、お伺いをします。

○笠井スポーツ振興局長 都は、東京マラソンを安定的に運営し、国内外から多くのランナーが集う世界最高水準の大会へと発展させるために、一般財団法人東京マラソン財団を設立いたしました。この財団が大会の主催者となることで、大会運営に当たって、より機動性が確保できることとなり、我が国で初めて、マラソン大会に本格的なチャリティー制度を導入し、社会に直接貢献するという一面を東京マラソンの新たな魅力として加えることができました。
 今後も、財団の機動性を最大限に生かし、年一回のマラソン大会だけでなく、ランニングイベントや講習会を初め、年間を通じて、これまでにないさまざまな事業展開をするなど、東京マラソンの魅力を一層高めていくように取り組んでまいります。

○山口委員 これまでは、任意団体である組織委員会が運営を担っていたわけであります。そのため、情報公開が十分ではなく、その運営状況が都民からよく見えない状況となっていました。本委員会で審議をしている来年度の予算案には、次の二〇一二年大会の予算が含まれています。この予算の使われ方を含め、今後財団運営の透明性をどのように確保していくのか、お伺いをしたいと思います。

○笠井スポーツ振興局長 東京マラソン財団は、都の監理団体として情報公開制度を導入しておりまして、定款、役員名簿、事業計画書、そして都からの分担金を含む収支予算書につきましても、財団のホームページで閲覧が可能でございます。今後、決算情報についても、事業報告書及び収支決算書を同様に公表してまいります。さらに、財団の意思決定機関でございます理事会での議事をメディアに対して原則として公開するなど、財団運営の透明性の確保に努めているところでございます。

○山口委員 透明性の向上とともに、この運営の効率化を図っていく必要が私はあると思います。これまで、この会場設営などの大会運営は、特定の広告代理店が担ってきたわけであります。この東京マラソンという国内で初めてとなる大規模なスポーツイベントの立ち上げ期には、十分なノウハウを有する企業に任せる必要があったということは一部理解はできるわけでありますが、しかし、大会がこれだけ定着をし、ノウハウが主催者に蓄積をされていく中で、今までの契約のあり方を見直す必要があるのではないでしょうか。今後大会運営に関する委託契約の競争性をどのように確保していくのか、お伺いしたいと思います。

○笠井スポーツ振興局長 東京マラソン財団では、二〇一二年の大会に向け、これまでは一括して発注しておりました大会業務を、東京マラソンエキスポの運営業務、本大会の運営業務、そして広報業務の三つに分割し、それぞれ企画提案方式を採用し、複数の企業の競争により委託先を決定することといたしております。
 なお、企画提案の募集に当たりましては、東京マラソン財団のホームページにおいて周知し、広く企業の参加を募っております。

○山口委員 大変いいことだと思います。このプロポーザル方式によって広く公開をしていく、そして、さまざまな企業が参加をできるチャンスが与えられるということは、大変大会にとっても大きな意義があることだと思います。
 さらに、それらの契約について、都民はどのようにチェックをすることができるのでしょうか。どこに委託したかなど、情報はきちっと公開をされるんでしょうか、お伺いをしたいと思います。

○笠井スポーツ振興局長 都の監理団体の契約に関する指導監督指針に基づきまして、契約件名や契約の相手方などを財団の決算に合わせて公表してまいります。さらに、今後財団といたしましても情報公開を進め、都民の理解を十分に得ながら、大会の一層の発展に努めてまいります。

○山口委員 財団に移行されてどのような契約がなされていくかということが、初めてこうして明かされたわけでありますが、今後もぜひ広くしっかりと公開に努めていただきたいと思います。
 先ほど述べたように、東京マラソンは、多くの都民が楽しみにしている一大スポーツイベントであります。今後も都民から愛されるマラソン大会として発展をしていけるよう、運営主体が東京マラソン財団となっても、一層の情報公開を進め、透明性のある運営に努めていただきたいと思います。
 それでは続いて、島しょ振興についてお伺いをしたいと思います。
 まずは、この海中の戦跡についてお伺いをさせていただきたいと思います。
 小笠原の近海には、第二次世界大戦中の輸送船や艦船など百隻近くの船が沈んでいるわけであります。中でも、兄島の滝之浦湾に六隻、航空機一機、父島の二見港の中にも船舶十隻以上、潜水艦二隻、航空機二機以上が潜水等で確認ができるところに沈んでいるわけであります。ほとんどが昭和十九年六月から昭和二十年二月の間に、艦載機などからの攻撃によって沈められたものであります。
 これらの海の戦跡ともいえるこの遺産の情報というものは、これまで、実は調査をされたこともなく、例えば、観光等で案内されるときに提供される情報も、それぞれが用いた情報により、誤った情報が多くあると聞いています。一日も早く、この海の戦跡についても、実態や事実関係などを調査することが必要であると考えます。
 また、こういった遺産を、ご遺族を初め島に訪れる方々に真実として知っていただくことは、大変大きな意義のあることだと考えています。都は、村を初め、あらゆるところと協力をして調査を始め、観光やガイドに生かして進めていくべきと考えますが、所見をお伺いしたいと思います。

○前田産業労働局長 さきの大戦中の攻撃によりまして沈められた船が、小笠原諸島の周辺海域に数多く存在しております。少なくとも四百名を超える戦没者がいるとされまして、この悲しい出来事から六十有余年を経過した今日、その沈没船には、多くの魚が集まることから、優良なダイビングスポットと今なっております。
 現在、小笠原村では、沈没船等のダイビングスポットをガイドするに当たって必要とされる正確な情報を調査収集する予定であると聞いております。しかし、沈没船等は、船の腐食などによる危険があるとともに、戦跡でありますことから、遺族感情への配慮が求められると思います。都としては、正確な情報の把握は必要と考えますが、観光資源としての活用については慎重に取り扱うべきと考えております。

○山口委員 当然、いっていることは、これはもう思っているところは全く同じでありますが、しかしこれは一つ考え方としては、例えば、滝之浦に沈んでいるとされている船団については、実は全く別のところに沈んでいる船団という誤った情報が流れてしまっていたり、さまざまな情報が錯綜している中で、きちっとした調査というものは、これは絶対に欠くことができないわけであります。当然のことながらその提供のあり方や遺族感情というものには当然の配慮をした上で、情報の集積や調査というものは、欠くことができないと私は考えておりますので、これは東京都もあらゆるところと協力をし、一日も早いこういった情報の調査、また公開について努めていただくように要望しておきたいと思います。
 続いて、小笠原諸島が世界自然遺産に登録をされることについて質問したいと思います。
 この自然が、自然景観、地形・地質、生態系、生物多様性という四つの遺産価値のうち、いずれか一つに合致をすることが必要なわけでありますが、そのうち三つが遺産価値として合致をすると小笠原では考えられているわけであります。
 昨年七月の国際自然保護連合による現地調査も無事に終わり、ことし六月に行われる世界遺産委員会の審査結果が待ち遠しいところであります。
 一方で、これからも確実に、かつ慎重に、時として大胆に取り組まなければならない課題が残っているのも事実であります。中でも深刻な問題は、小笠原の貴重な生態系を脅かす外来種の問題であります。都は、これまでも、村とも協力をし、島ごと、また種ごとに、外来種対策の目標を定めて取り組んできているところであります。これについては大変大きな評価をするところでありますが、まだ多くの外来種が存在し、特に北米原産のトカゲであるグリーンアノールは、昆虫類を捕食をし、生態系に大きな影響を与えているところであります。
 そこで、このグリーンアノールの排除について、まずどのような取り組みを進めていくのか、お伺いしたいと思います。

○大野環境局長 世界自然遺産の登録に当たりましては、小笠原の固有種を将来にわたり確実に保全することのできるよう、その生存を脅かす外来種対策を確立する必要がございます。
 このため、小笠原の自然に関する研究者で構成します科学委員会の検討をもとに、管理計画を策定し、取り組んでまいりました。
 グリーンアノール対策につきましては、侵入を防ぐ保護区を設定することで、固有の昆虫種の生息地の保全を図っております。昨年、国際自然保護連合の現地調査におきましても、調査員から、斬新な試みであるというコメントをいただいております。
 都は、二十三年度、新たな保護区を設定し、グリーンアノールの排除と昆虫類の保全をさらに進めていく予定でございます。

○山口委員 ぜひこういった技術のノウハウを、同じように外来種対策で取り組んでいられる国内外の地域の参考になるよう、発信をしていただくことに努めていただくとともに、さらなる情報収集、世界じゅうに私はぜひ発信をして、こういった協力を求めていくことも重要だと思いますので、ぜひとも努めていただければと思います。
 次に、エコツーリズムについてお伺いしたいと思います。
 世界自然遺産登録を契機に、その価値を生かして発展が期待される観光振興に当たっては、南島や石門で実施をされているエコツーリズムのさらなる推進が必要と考えます。
 これらの地域に入るには、東京都認定のガイド同行が義務づけられています。現在、その数は二百五十人いらっしゃるそうですが、島民の方々に伺うと、ガイドの知識などに相当の差が出てきているようであります。
 今後、ガイドの資質向上が重要なかぎとなってまいりますが、都はどのような取り組みを進めていくのか、見解をお伺いしたいと思います。

○大野環境局長 東京都は、小笠原諸島の貴重な自然環境を保全するため、南島と石門におきまして、認定ガイドの同行、ツアー経路の限定などを義務づける東京都版エコツーリズムを行っております。
 このガイドの認定期間は二年間でございまして、登録や更新に当たりましては、講習を義務づけまして、遺産価値と保全策を十分習得させるなど、ガイドの資質向上を図っております。
 また、二十三年度には、小笠原村が予定をしております南島、石門以外の地域のガイド養成と連携しまして、小笠原全体のエコツーリズムの推進に努めまして、貴重な自然の保全と観光の両立を図ってまいります。

○山口委員 認定ガイドとは別に、小笠原地域では父島と母島に三名ずつ、計六名の都レンジャーが配置をされているわけであります。世界遺産登録を目指す小笠原諸島において、外来種の生息状況調査や駆除、観光客による固有種の盗掘等の防止、マナー違反の注意などを行うこの都レンジャーの役割は、私はますます重要になってくると思います。
 しかしながら、この都レンジャーは、専務的非常勤職員のため、どれだけ優秀な人材であっても、経験を積んでも、五年間しか勤務ができないわけであります。小笠原の自然を保全するためにも、長期にわたって勤務ができるように改善をしていただくように強く要望して、次の質問に移りたいと思います。
 さて、この小笠原諸島が世界自然遺産に登録をされると、その存在というものはますます大きくなってくるわけであります。
 一方、小笠原と本土を結ぶ交通アクセスは、週一便、片道二十五時間半の船便に限られており、航空路の開設は、昭和四十三年の返還以来、村民の悲願であります。
 しかし、これまでの航空路案は、平成八年の兄島案、平成十三年の時雨山案と、過去二回計画がとんざをしてきた経過があります。航空路の早期開設を願う村民にこたえるためにも、航空路案の検討を進めていく必要があると考えます。
 この航空路開設について、現在の取り組み状況について、まずお伺いしたいと思います。

○比留間総務局長 小笠原航空路につきましては、平成二十年に都と小笠原村で構成する小笠原航空路協議会を設置し、航空路開設についての検討を行ってきておりまして、現在、硫黄島活用案、水上航空機案、洲崎地区活用案の三案を中心に、実現可能な航空路案の取りまとめに向け、課題の整理を行っております。
 昨年十一月に開催した協議会では、洲崎地区周辺の気象・海象観測調査結果をもとに、空港整備に与える影響について議論するとともに、世界自然遺産登録に向けた取り組み状況や自衛隊機として開発された水上航空機の民間転用に向けた国の検討状況について報告を行いました。
 引き続き、協議会においてこうした調査検討を進めるとともに、航空路開設に必要な手続であるPIの実施に向け取り組んでまいります。

○山口委員 この自然環境というものは、世界的に見ても極めて貴重な資産であり、将来にわたって保全をしていく必要があるわけであります。
 この自然環境との調和は、航空路案を検討する上で大変重要だと思いますが、航空路開設に向けた課題について伺いたいと思います。

○比留間総務局長 航空路の開設に当たりましては、自然環境への影響、費用対効果、運航採算性、安全性の確保など、検討すべき多くの課題がございます。
 とりわけ自然環境については、小笠原諸島は、多くの固有種、希少種が生息、生育しており、世界的にも貴重でかけがえのない自然の宝庫であることから、航空路の検討に当たりましては、空港整備に伴う陸域や海域への影響や希少な動植物の生態に与える影響などについて十分な調査検討が必要と考えております。
 今後とも、実現可能な航空路案の取りまとめに向け、航空路協議会において、自然環境との調和を初め、さまざまな課題について具体的に検討を進めてまいります。

○山口委員 念のためお伺いをしておきたいんですが、航空路開設に向けた検討が行われているわけでありますが、この世界遺産登録に影響を及ぼさないのか不安なところでありますが、見解を伺いたいと思います。

○大野環境局長 小笠原諸島を世界自然遺産に登録するため、昨年一月にユネスコに推薦書を提出しましたが、この推薦書の中でも、航空路開設について現在検討していることを記載をしております。これに関しましては、国際自然保護連合から追加的な情報提出の要請はございませんで、これまで特に問題になっておりません。
 したがいまして、本年六月の世界遺産委員会での登録に関する審議に影響はないものと考えております。

○山口委員 航空路の検討に当たっては、さまざまな課題について十分議論をしていく必要があります。しかし、村民生活の安定を考えると、一日も早く本土との交通アクセスの改善をするべきであります。
 航空路協議会の結論を待つだけではなく、例えば、法改正などの高いハードルがありますが、現在救急搬送で使用している自衛隊機の利用拡大などについて、国の支援、協力を仰ぐなど、できることがあるのではないでしょうか。今後とも、航空路開設に向け、積極的に取り組んでいただきたいと思います。
 それでは、続いて、京王線の連続立体交差についてお伺いをしたいと思います。
 京王線の笹塚駅からつつじヶ丘駅間では、連続立体交差化と複々線化の都市計画手続等が進められているところであります。
 この都市計画の構造形式は、高架方式、地下方式、在来線を高架化し複々線化のために必要な線増線を地下化する併用方式の三案について比較検討され、併用方式を最適案としているわけであります。
 この比較検討では、完成後三十年から四十年を経過した笹塚駅や八幡山駅の高架構造物を使用することを前提として、地下方式では既に高架方式とされている笹塚駅などから地下に潜り込む間に、三カ所で交差道路の分断を生じてきているところであります。
 地元住民の中には、構造物の劣化や耐用年数等を考慮すれば、笹塚駅や八幡山駅の既存構造物を撤去し全線を地下化した方が、交差道路の分断も解消されることから合理的であるとの考え方もありますが、都の見解を伺いたいと思います。

○河島東京都技監 京王線の笹塚駅や八幡山駅付近につきましては、環状八号線など都市計画道路との立体交差化を目的として、既定の都市計画に基づき、鉄道の高架化が既に完成しております。また、既設の橋脚に鋼板を巻く耐震補強が、八幡山駅では平成十九年度に完了し、笹塚駅では現在工事が行われるなど、構造物として適切に維持管理されております。
 こうしたことから、両駅の高架構造物を撤去し、改めて地下化することは、公共事業に対する二重投資となり、合理的ではないと考えております。
 このため、今回の笹塚-つつじヶ丘駅間の連続立体交差化及び複々線化計画につきましては、笹塚及び八幡山両駅を高架式のまま利用することを前提に、高架方式、地下方式、高架地下併用方式の三案に対し、地形的条件、計画的条件、事業的条件の三条件について比較するなど、総合的に検討を行った結果、併用方式が最適案であると判断しております。

○山口委員 それでは、併用式と地下方式について、家屋補償の戸数や事業期間を比較をするとどうなるのでしょうか、お伺いします。

○河島東京都技監 今回、都市計画を定める区域内の土地につきましては、事業実施に当たり、土地の取得や地上権の設定等を行うとともに、必要に応じて家屋補償を行っていくこととなります。
 家屋補償の戸数については、今後、用地測量等を実施した上で確定していくことになりますが、航空測量により作成した地形図をもとに推計したところ、併用方式及び地下方式のいずれも約三百五十棟と、ほぼ同数となっております。
 事業期間については、併用方式が十四年、地下方式が十七年であり、併用方式が優位となっております。

○山口委員 騒音や振動が現況よりも大きくなるのではと、住民の方は大変大きく心配をされているところであります。さまざま環境に関する心配や懸念というものを住民の方は多くされているわけでありますので、丁寧な説明や、今後要望に対しておこたえをしていく必要があると思いますので、都も真摯に受けとめていただき、また、ご要望にこたえていただくよう要望いたしまして、質問を終わります。(拍手)

○泉谷副委員長 山口拓委員の発言は終わりました。
 この際、議事の都合により、おおむね十五分間休憩いたします。
   午後三時二分休憩

   午後三時二十分開議

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