予算特別委員会速記録第三号

○山下委員長 ただいまから予算特別委員会を開会いたします。
 これより付託議案の審査を行います。
 第一号議案から第二十八号議案までを一括して議題といたします。
 昨日に引き続き総括質疑を行います。
 門脇ふみよし委員の発言を許します。

○門脇委員 大きな質問項目は二点でございますけれども、まず、アジア都市との文化交流のことについて、お伺いをいたします。
 これからの私たち東京にとって、最も大切な施策の一つと思われるアジア都市との交流、きょうは、とりわけ台北市や台湾との文化交流等を中心として質問をいたします。
 少し前のことになりますけれども、私たち都議会民主党十六名と、それから、同じく自民党の皆さん八名、合計二十四名で、昨年十月の三十一日から十一月の二日まで、台湾、台北市を訪問をいたしました。
 実は、それに先立って、私たち民主党は、昨年の四月にも三十三名という大きなチームでございましたけれども、台湾、台北市を訪問をいたしました。これは都議会民主党日台友好議員連盟としてでありますけれども、このときも大歓迎を受けております。
 そして、その二度目のときのことでございますけれども、(実物を示す)この旗を持って行ってまいりました。自民党さんと合同で行ったときの話ですけれども、これ、日本の国旗と、それから、台湾、中華民国の国旗が書いてありまして、松山空港、台北、そして、羽田空港、東京、就航記念ということでございます。同僚の議員の皆さんにも割合評判がよくて、表敬訪問をいたしました台北市の副市長さんが、これを見まして、今回の皆さんの訪問準備も大変だったことがよくわかるといっていただきました。たしか猪瀬副知事も、その場に同席をしていらっしゃったように記憶をいたしております。細かいことですけれども、外国との交流というものは、ほんのちょっとしたツールというもので、価値が上がることがあるんだなと思いました。
 さて、当日の出発は、もちろん今の旗にもありましたとおり羽田空港でございました。そして到着は、台湾、台北市の松山空港、ショウザンとも読みますし、現地読みですとソンシャンと発音をいたしますけれども、どちらの空港でも、大変立派な就航記念式典が行われ、私たち一同は、文字どおり大歓迎を受けました。
 つまり私たちは、この記念すべき就航初日の、ここがポイントなんですけれども、第一便で台北市を訪れたわけです。ここはポイントでありまして、就航当日の第一便に搭乗できたということは、実は、台湾当局の大変なご尽力もあったんですけれども、私たち訪台をいたしました都議会議員にとっても、大変意味のあるフライトになりました。
 そこで、早速、最初の質問でありますけれども、東京都技監都市整備局長にお伺いいたしますけれども、一般質問にもありましたので簡潔で結構でございますけれども、松山空港だけではなく、韓国の金浦空港、それから、上海の虹橋空港、そして、ご承知のとおり、数日前にはニューヨークにも羽田から直行便が就航をいたしている現在、羽田の優位性というものは画期的に高まっていることは間違いがないと思います。
 いろいろ聞いてみますと、成田に比べて、今申し上げた各都市にフライトをするには、チケットは間違いなく羽田の方が高いんです。しかし、都市間交流において、あるいは観光でもビジネスもそうですけれども、これからますます羽田を利用される皆さんの数というものは多くなると思いますし、都市間交流における東京の位置づけというものは、羽田を通じて高まっていくことは間違いがないと思います。
 そのことを踏まえて、今後の羽田空港について、就航先の拡大など、さらなる利便性の向上が、どのように図られているのか、お答えください。

○河島東京都技監 羽田空港は、今お話ございましたけど、昨年十月三十一日に国際定期便の就航が始まっておりまして、それから今日まで二カ月で、利用者が約百二十万人に上っております。
 先日、ニューヨークやデトロイト、ロンドンへの就航も開始されまして、現在、十六都市と結ばれているという状況でございます。本格的な国際空港として、既に、その機能を大いに発揮しているといってもいいのではないかというふうに思います。
 平成二十五年度中には、さらに、昼間に国際線発着枠を三万回上乗せして六万回とすることが、既に決まっております。
 国はこれに伴い、深夜、早朝のみならず昼間の時間帯にも、欧州や米国、長距離アジアの主要な都市へ就航させるとしておりまして、観光やビジネスにおける都市間交流をさらに羽田空港を使って活発化させることができるというふうに考えております。
 都はさらに、国内、国際の割り振りがまだ決まっておりません残る二万七千回の発着枠につきましても、極力、国際線に振り向けるよう、国に対して要請をしてまいります。
 これらにより、国際空港としての羽田のさらなる利便性の向上が図られるというふうに考えております。

○門脇委員 ありがとうございます。
 都技監、局長の答弁のとおり、世界の大都市の中では、比類のない便利な国際空港であったことは間違いがないと思います。
 あわせて申し上げれば、ここもポイントの一つなんですけど、実は、相手側の空港にもいえることでありまして、例えば、台湾の桃園空港と今の松山空港、それから、上海の浦東、そのまま読むとホトウと読みますけれども、それと先ほどの虹橋、ホンチャオ空港、ソウルでは、仁川空港と金浦空港なども同様であると思います。これは、私が申し上げるよりも、これらの空港を一度でも利用されたことのある方であれば、十分ご理解をいただけることではないかと思います。
 それから、若干余談になりますけれども、昨年の十二月のことですけれども、私は、警察・消防委員会のメンバーとして、東京空港署を視察をした際のことでございます。きょう、この委員会室には、警消の委員長さんもいらっしゃいますし、また警視庁の種谷総務部長さんもいらっしゃいますけれども、大変お世話になりました。各関係者のご配慮のおかげで、新しく業務を開始した管制塔の上まで登らせていただくことができました。
 幸いにして当日は天気もよく、東京国際空港の全景を把握することができましたし、もちろんD滑走路、これは先ほど申しましたように、十月の三十一日、どこの滑走路から出るのかなと思ったんですけれども、このD滑走路から、第一便出発をいたしましたけれども、こういったことを通じて、私自身は、文字どおり変わり行く羽田、あるいは、東京のダイナミズムというものを感じることができましたし、これは、私の思いだけではなかったと思います。
 アジアにおけるハブ空港の地位を獲得するため、都市整備局を初めとする関係各部局の奮闘、努力を、これからも期待をさせていただきます。
 次に、文化交流ですが、アジア大都市ネットワーク21では、産業、環境、危機管理、人材育成などで成果を出してまいりましたが、正直なところ、いわゆる芸術文化のカテゴリーという部分、舞台芸術の中でも演劇や舞踊などに限定をされております。これはこれでいいんですけれども、東京都が持っている、その財産というものを、もう少し有効利用することも意味があるように思います。
 そのことから、アジアネットの事業であるアジア舞台芸術祭とは異なるのですけれども、東京都交響楽団の活用です。私は、昨年の決算委員会において、この楽団について質問をいたしましたけれども、過去、非常に厳しい組織改革を行い、今日に至っていることがわかりました。もちろん、その際、その対象となったのは、この東京都交響楽団だけではありませんが、みずからの営業活動を強化するという方針からも、アジア地域を中心とした海外イベントなどに積極的に進出し、それにより、文化交流のツールとして役立ってもらうことも大切ではないかと思います。
 また、日本においては、NHK交響楽団、読売日本交響楽団と並んで、いわゆる三大交響楽団といわれているわけですから、その資格は十分にあると思います。その点について、生活文化局長のお考えをお伺いいたします。
   〔石原知事「これは予算なんだよな」と呼ぶ〕

○並木生活文化局長 東京都は、世界の主要都市と競い合える芸術文化の創造発信を目的に、東京文化発信プロジェクトを展開しております。音楽の分野の取り組みといたしまして、東京都交響楽団による海外公演を行っております。平成二十一年には、ソウルとシンガポール、二十二年には、ベトナム、ハノイ、ホーチミンで計五回の公演を行い、地元の新聞でも取り上げるなど、好評でございました。
 海外公演では、単に演奏会を行うだけでなく、例えばシンガポール交響楽団とは、この公演を機に楽団員の相互派遣を始めるなど、各都市との多面的な交流にも積極的に取り組んでおります。
 海外公演の実施には、都響における財源の確保や、相手国との連携など、さまざまな課題がございますが、これまでの成果も踏まえ、今後とも、都響を活用した海外との文化交流のあり方について、引き続き、検討してまいります。

○門脇委員 ありがとうございます。
 今、生活文化局長の答弁の中にもありましたし、答弁の前に石原知事も、予算なんだよなと一言いわれて、そのとおりだと思いますけれども、アジア地域で、もちろん、これ、すべてフルメンバーのフルオーケストラでなくてもよいと思いますけれども、友好親善の視点からも積極的な交流を求めるとともに、そのことによって、楽団員の皆さんのモチベーションというものも、間違いなく高まっていくと思いますので、よろしくお願いをいたします。
 次に、項目が異なりますけれども、大きな意味では文化交流で異なりませんが、東京都美術館のことについてお伺いをいたします。
 ご承知のとおり、現在、東京都美術館は、平成二十四年度中のリニューアルオープンを目指し、大規模改修が進んでいます。首都東京のメーン美術館であり、関係者ばかりではなく、広く都民、国民の皆さんの期待も大きいと思います。また、冒頭お話をいたしました羽田空港の国際化の影響もあり、近隣諸国から、多くの皆さんが来館されることも間違いがないと思います。
 最近の例では、フェルメール展のように、海外の著名な作品による展覧会に、数多くの皆さんが訪れています。そのような展覧会の会場となる展示室は、今回の改修によって、どのように変わっていくのか。また、リニューアルオープンの際には、現在の段階で、どのような企画を考えているのか、お答えください。
 いずれにいたしましても、数十年に一度しかない首都東京のメーンの美術館の全面改装ですから、多くの方々の期待を、これは裏切るわけにはいきませんので、よろしくお願いいたします。

○並木生活文化局長 東京都美術館における今回の改修では、大規模な展覧会の会場となります企画棟については、大型作品の展示に制約がございました天井高を上げ、さらに、照明設備も改善することで、展示環境を大幅に向上いたします。
 また、エスカレーターの新設により、上下階の移動が容易になるほか、休憩用のラウンジを整備するなど、来館者へより良好な鑑賞環境を提供できるようにいたします。
 改修後の東京都美術館のさらなる機能向上を内外に示すために、リニューアルにあわせて、美術的価値が高く、人気のある作品を海外から集めた魅力的な展覧会を開催する予定であり、その具体的な内容につきましては、指定管理者でございます東京都歴史文化財団が、共催団体となる新聞社やテレビ局などと協議を進めているところでございます。

○門脇委員 今ご答弁がありましたように、リニューアル直後の展覧会については、企画が進んでいるとのことですけれども、繰り返しますが、多くの方々の期待にこたえられるようなものを、よろしくお願いいたしたいと思います。
 次に、これはお願いも含めてという質問になりますけれども、ずばり、東京都美術館で、できる限り早く、故宮博物院展を開催してもらいたいということであります。もちろん、この故宮というのは、北京の紫禁城の中にある故宮ではなく、台北市郊外のものでございます。
 過去、私も中国、北京を訪れた際に、その紫禁城の中にある故宮博物院の学芸員は、中国の学芸員の方でも、本当に大切なものは台湾にありますといわれておりました。歴史的な背景は別といたしましても、故宮博物院の展示物の評価は世界的に高く、台湾では、この故宮の院長は大臣ポストに匹敵いたします。
 また、数多くの日本人の観光客が台北に行って、台湾に行って、故宮を訪れない人はほとんどいないといってもいいと思います。
 もちろん、現実的にはさまざまな制約があり、そんなに簡単に院展が開催するとは考えていません。
 まず、中国との関係であります。展示物が海外に出た段階で、差し押さえを求めてくる可能性があります。これについては、先日、駐日中国大使館の要人から、中国としては、一定の条件が整えば、日本で故宮展が行われても差し押さえをすることはない、これは公式見解ととらえていただいて結構だと、私、直接お話をいただきました。
 ちなみに、一定の条件というのは、中華民国という名称を使わない、それから、さっき国旗をお見せいたしましたけれども、青天白日満地紅旗という国旗でございますが、これらを使わないということでございました。このことについては、台湾当局も理解をしているようであります。
 実は、私、これで喜んでしまったんですけれども、実際、これには問題がありまして、今の我が国の法制度によると、確かに国が訴えなくても、日本にいる中国籍の方が裁判所に、展示物は中国のものだと提訴すると、返却が大幅におくれたり、台湾に戻らなくなる可能性があると、今度は台湾筋の高官から指摘がありました。やはり国会での法律整備が必要であるようです。
 しかし、このことは特段に難しいことではなく、既に、アメリカやイギリスなど、世界数カ国の中では、美術品等の差し押さえや没収等を禁止する法律を制定している例もありますし、我が国の国会でも、ほぼ超党派での合意が、既にできていると聞いております。
 そこで、東京都は国に対し、あるいは東京都独自でもそうですけれども、早急に法整備を進めてもらいたいと思いますが、いかがでしょうか。

○並木生活文化局長 大規模な展覧会開催の際には、海外の美術館から著名な美術品等を借り受けることが多くございます。しかし、今、委員ご指摘のとおり、借り受けた美術品等が、戦乱などの歴史的な経緯から所有権を主張する者の請求に基づき、差し押えの対象となる場合がございます。このような差し押さえの懸念は、海外の美術館にとって、国外への貸し出しのちゅうちょにつながり、開催国の側では、質の高い展覧会の開催が困難になるおそれがございます。
 東京都美術館を初めとする都立の美術館、博物館でも、これまで海外から美術品等を借り受けて展覧会を開催しております。美術品等の差し押えを防止することは、非常に重要と認識してございます。
 現在、国会で関連法案が継続審査となっておりますが、都といたしましても、必要な法整備について国に働きかけてまいります。

○門脇委員 ありがとうございました、積極的なご答弁をいただきまして。
 多くの都民や国民が、日本での故宮展を楽しみにしていると思いますし、先ほど申しましたように、中国も一定の制限はありますけれども、異議を唱えることではなく、また国会でも大きな問題点はないという環境の中、もちろんこの規模になれば、関係者の合意が新聞社や、あるいは放送局も含めて単純には進まないこともわかりますけれども、あとは東京都のある意味でのやる気だと思います。
 余談ですが、どうも台湾当局も日本で故宮展が開催可能となれば、その場所は、東京都内でという意向のようでございます。世界的評価と人気がトップクラスである台北の故宮博物院展が、東京で、そして東京都美術館で開催することができれば、各方面のステータスを高めることになります。何も国立何とか美術館とか、何とか博物館で開催する必要はありません。改めて今後の取り組みについてお伺いをいたします。

○並木生活文化局長 委員ご指摘のとおり、故宮博物院の収蔵品は、文化的にも歴史的にも価値の高い世界的な遺産でございます。こうした収蔵品を展示する日本初の展覧会開催が実現できれば、東京都美術館にとっても大変魅力的な企画でございまして、来館者にも喜んでいただけると考えております。
 故宮博物院展のような大規模な企画展の実施に当たりましては、先ほどご答弁しましたけども、差し押さえ防止に関する法整備が実現し、美術品借用の障壁が取り除かれることや、共催団体との協議等、まださまざまな課題がございます。
 今後とも、指定管理者でございます東京都歴史文化財団が、質の高い魅力的な展覧会が開催できますよう、都としても検討してまいります。

○門脇委員 ありがとうございます。
 最後に、台湾との交流についてお伺いいたします。
 まず、昨年の調査で大変興味深い結果が出ておりますので、皆さんにご紹介させていただきたいと思います。それは、台湾における対日世論調査というタイトルで、実施したのは財団法人交流協会です。
 ご存じのように、我が国と台湾との間には国交はありませんけれども、実質的に大使館の役割を担っている組織があります。日本では台北駐日経済文化代表処であり、台湾においては交流協会であります。二つの組織の代表者は、大使とは呼びませんけれども、両国ともにハイクラスの人物を配置いたしております。
 それで、その調査結果ですけれども、多岐にわたっておりますので一点だけお伝えしますけれども、向こうの台湾の方に聞いた結果ですけれども、それは、台湾を除き、あなたの最も好きな国、地域はどこですかという質問に対し、日本が五二%で圧倒的に第一位、次にアメリカですけれども、わずか八%、次に中国ですけど、三%、これが実態なんですね。
 私たちにとっては、別に反中国ということではありませんけれども、これが台湾の皆さんの民意だと私は思います。
 これまで東京都と台北市は、アジアネット加盟都市としてさまざまな交流を行い、成果を上げてまいりました。知事みずからも、陳水扁総統の就任式、これはたしか二回だったと思いますけれども、馬英九さんの総統式一回、いずれも就任式に参加をされております。
 市民交流を行う上での重要な要素は、トップ同士の交流も必要なことはいうまでもありません。今回のこの調査数字を見ても、台湾の人たちと都民との交流を望む気持ちが伝わってくると思います。
 そこで、これからの台湾との交流について、将来につなげることができるという意味で、知事に率直な思いをお伺いいたします。

○石原知事 羽田空港の国際化によって、東京と台北が短時間で結ばれたことは、大変喜ばしいと思っております。この時点で、私、振り返ってみまして、なかなか思いが多いのですが、かつて、成田が建設中のときに中国が日本に接近してきて、日中友好協会なるものをつくり、その最初の会長の廖承志、それから、孫平化という人が日中友好協会の会長という名目で日本に来まして何をしたかというと、成田の建設に反対している過激派に金ばらまいて、あなた方反対は非常に日中友好のために好ましいといって、宣伝あおって、結果は、過激派はあそこで、ある時点では管制塔に忍び込んであそこを破壊して、開港が一年おくれました。警官隊は、数人があそこで非常に痛ましい形で殉職もしました。
 成田が完成しましたら、中国は何をいってきたかというと、この空港を台湾に使わせるなということで、国際空港になった成田から台湾は締め出されたわけです。
 その間、やはり外国への航路でありますから、羽田に仮小屋のようなターミナルビルをつくって、そこから台湾線が飛んで行ったわけですが、中国も大人になり、日本も少しは中国に対する腰も強くなってきたのか、成田も台湾が使用できるようになりましたが、羽田があいたことで、従来と同じように、かつてと同じように台湾線が羽田から飛ぶということは大変結構なことだと思います。
 もともと台湾という国は日本に非常に深いかかわりを持っていまして、かつては後藤新平というすぐれた政治家が、あそこの責任者になって、受けまして、インフラの整備をして、台湾の近代化に努力をしたわけでありまして、その結果、市民の意識や教育水準も非常に高く、民主政治が行われて、かつては蒋介石が、中国で、大陸で敗れた後、あそこに移ってきて残虐なことをしましたが、その後、李登輝さんというすぐれたリーダーがあらわれることで淘汰されて、今日の台湾になったわけであります。
 いずれにしろ、民主的な政治が行われ、非常に安定した市民社会というものを築いている希有なる存在だと私は思います。
 私が提唱して始まりましたアジア大都市ネットワーク21も、当然、台湾が、台北市が加盟しておりまして、いろんな協力をしておりますが、毎年東京で行います災害対策の大演習にも、練習を兼ねて台湾の特殊部隊が、救助隊が特別参加して協力をしてくださっております。
 また、台北市は都の「十年後の東京」計画から学んで、台北市長期発展綱領なるもの、すなわち十年後の台湾、台北を昨年策定しました。
 この計画は、水と緑に包まれた台北の近未来像を、具体的に目標値を設定して、非常に東京の計画に似て市民にわかりやすく示しております。現場を持つ都市同士が、具体的な連携を重ねながら、双方の国に強固な橋をかけ合っているということは大変好ましいことだと思います。
 今後も台北市、そして台湾との交流を積極的に推進してまいります。

○門脇委員 それでは、次の質問に移ります。
 まず、タイトル的には疲弊する東京都の病院についてという、これは私がつけたタイトルですけれども、都立、公社病院の経営内容についてお伺いいたします。
 昨日も、私どもの政調会長がこのことについて指摘をさせていただきましたけれども、私自身も昨年、厚生委員会の委員長といたしまして都立、公社病院の視察等を行いまして、厳しい経営環境下にあっても、現場を中心とした経営努力というものはうかがえたところであったと思います。
 例えば、多摩北部医療センターの小児科では、地域の医師会と協力をし、夜間帯の小児初期救急医療を協力して実施していること、あるいはそのほかにもございます。また、都立の多摩総合医療センターでは、多摩地域の十三の医師会の皆さんと定期的な会議を行って、いろいろな有効な手だてを考えてくれております。やっぱり医療従事者同士の顔と顔が見えないと、お互いにこれ信頼ができないだろうというところもありまして、私は大変よい取り組みだろうと思っております。
 これはこれで一方で進めていただきたいんですけれども、限られた医療資源というものを効果的に利用するためには、申し上げるまでもなく、経営改善への不断の取り組みが必要です。
 早速質問ですけれども、都立病院、公社病院では、今日までどういった経営改善に取り組んできたのか、お伺いをいたします。

○川澄病院経営本部長 都立病院、公社病院では、医療連携の推進による新規来院患者数の増加、DPCの導入、在院日数の適正化などに取り組み、収入の確保に努めているところでございます。
 また、救急医療に関する加算や感染防止対策加算のほか、医薬品安全情報等管理加算や栄養指導に関する加算など、さまざまな診療報酬の加算の取得にも努めております。
 さらに、薬品や診療材料の共同購入による材料費の節減、ESCO事業の実施による光熱水費の節減など支出の縮減を図り、収入支出の両面から経営の効率化にも努めてまいりました。
 今後も診療報酬の改定に迅速かつ的確に対応し、新たな加算を取得するなど、収入の確保に努めるとともに、支出については不断の見直しを行い、経営基盤の強化を図ってまいります。

○門脇委員 そのことについてのコメントは飛ばしまして、よろしくお願いをいたします。
 こうした経営改善努力というのは、いわゆる民間病院でも当然行っていることでありまして、例えば私の住んでいるある病院では、地域医療支援病院の承認を受けまして、一年間に約七千万円の収入を上げております。また、病院から連携するクリニックに紹介すると保険診療点数がつきますので、その病院は、患者さんを抱え込まず、地域のクリニック、診療所にも積極的に患者さんを帰すという医療連携にも工夫を行っております。
 医療連携をすることになった診療所については、その病院のホームページからリンクをされて紹介をされておりますし、今、一例で申し上げたのは、実に百二十六カ所の診療所と提携をいたしております。
 もう一つは、例えばの話なんですけれども、地域医療支援の中でメーンとなる病院が、こういった登録証というものをつくって、それで各開業医の先生方の診療所に張り出しておくという、これも私は有効なツールではないかと思っております。
 民間病院は、こうした経営努力を一つ一つきめ細かく積み重ねて収支が均衡するように努力をしております。
 しかし、これに対して、それだけ見たらどうなんだろうというところもありますけれども、昨日も話題になりましたように、都立病院では平成二十三年度ベースで約四百六十五億円の一般会計繰入金、二十二年度ですと約五百億円ということになりますが、大変大きな金額となっております。
 また、公社病院についても、二十三年度中ですと約百二十億円ぐらいの補助金が計上をされております。
 そこで、都立病院、公社病院が都から補助金あるいは負担金を受け入れている、その理由を改めてお伺いをいたします。

○川澄病院経営本部長 都立病院は、法令等に基づき対応が求められる医療や、社会的要請から特に対策を講じなければならない医療である感染症医療や周産期医療、精神科救急医療などの行政的医療を主として提供することを基本的な役割としております。
 この行政的医療は、現行の診療報酬制度では不採算性が高く、診療報酬だけでは対応しがたいものであるため、都立病院の経営を継続的に安定して行えるよう、補助金や負担金を受け入れているところでございます。
 一方、公社病院は、地域の中核病院として緊密な地域医療連携を確立するとともに、地域に不足する救急医療やがん医療、脳血管疾患医療等の医療サービスを提供していることから、都立病院と同様に診療報酬だけでは対応しがたく、都から補助金を支出しているところでございます。

○門脇委員 都立、公社病院では、行政的医療など、不採算性の高い医療を地域に提供しているということは、よくわかります。本会議でも、昨日の質疑でもありました。診療報酬だけでは対応しがたいことから、都から補助金を受けているということで、そのことはわからなくはないんですけれども、行政的医療というのは、繰り返しますけれども、民間病院でやっていないということはないわけですよね。
 現実問題として、都立病院と公社病院の数では、東京都民の行政的医療を賄えない。大体病床数でいうと、どうでしょう、五%ぐらいですか、七千八百床、七千二百ですか、失礼しました。七千二百床ということですね。それで、民間病院も行政的医療を行っているのは、これは十分に都としてもご承知いただけると思います。
 話を戻しますけれども、診療報酬で対応しがたい部分、つまり赤字が出ている部分というのは、行政的医療など医療機能面だけではないと思います。にもかかわらず、民間病院には、都立病院、公社病院のような大きな金額の補助金は出ておりません。きょう、ちょっと残念ながら時間がないんで、計算した資料があるんですけれども、それはまた別の機会にお示しいたしますけれども、東京の病院は、土地代、人件費が高い状況にあります。
 一方、ここは一番の問題ですけれども、全国一律の診療報酬点数、確かに第一級地域、人事院の規定による二十三区だと一日十八点の加算があることはありますけれども、十八点ですから百八十円ですね。そういう仕組みになっていないというところが、これが私は一番の問題点ではないかと思います。
 東京都病院協会の経営資料によりますと、平成二十一年度の決算が黒字と答えた病院は五〇%、大体これはここ数年で見ても、歴年で半分黒字、半分赤字というのが実態でございます。私の調べた限り、若干この数字の誤差もあるんですけれども、東京は地方と比較して赤字率が、土地代や人件費のこともあって高いのは明らかであります。これはすなわち、地道な経営努力をいたしましてもなかなか黒字にならない。繰り返しますけれども、診療報酬制度というものが問題なんだとは思います。
 そのため、都内にある病院が地方の病院に買収されたり、あるいは中国の余剰資金によって買収されたりというようなうわさも聞いております。
 そこで、厳しい経営環境にある民間病院の運営に対して、都は支援をすべきだと思いますが、東京都というか、福祉保健局のお考えをお聞かせください。

○杉村福祉保健局長 病院の運営に係る経費につきましては、基本的には診療報酬によって賄われるべきものでございますが、がんなど高度専門医療や救命救急、周産期、僻地医療など、行政的医療を安定的に確保するための経費につきましては、財政的な支援を行っております。
 また、都では地域医療の確保の観点から、医療機関に対しまして、施設整備に係る補助や救急医療に携わる専門医の養成研修などを行っており、来年度からは、院内感染対策や看護師確保の取り組みへの支援も充実いたします。
 診療報酬につきましては、医療機関の経営実態を踏まえまして、より一層充実を図る必要がございますことから、入院基本料に対する地域加算などにつきまして、大都市の地域特性を詳細に把握した上で必要な改善を図るよう、引き続き国に働きかけてまいります。

○門脇委員 ありがとうございます。
 特に三番目については、感謝申し上げます。
 そうなんですね。やっぱり入院基本料に対する地域加算というところが一番重要なんだと思います。局長答弁のとおり、大都市の地域特性を詳細に把握した上で必要な改善を図る、私たちも微力ですけれども、このことについて推し進めていきたいと思います。
 都市部、とりわけ東京の民間病院が再生できるかどうかは、まさにここにかかっているといってもいい過ぎではないと思います。
 中医協の診療報酬改定も来年だったでしょうか、そろそろその準備が始まると思いますので、改めてよろしくお願いをいたします。
 最後の時間を利用しまして、一点だけご要望をさせていただきます。
 「十年後の東京」で、病院の一〇〇%の耐震化を掲げております。災害拠点病院、二次救急医療機関などでは、国の補助もありますけれども、それ以外のところは、なかなか巨額な費用がかかるため、自分で費用を捻出することができません。クリアしなければいけない幾つかの問題があります。
 このことについても三年間でよいので、本予算をつけていただくよう、東京都からも準備期間の問題も含めてお願いをさせていただきたいと思います。
 いずれにいたしましても、東京都民の医療を安定して供給することが大切だと思います。東京都にはぜひ東京の病院に対する支援を真剣にお願いいたしまして、やはり人の命を救う、その命を救う側の疲労がたまっては仕方がありませんので、お願いをいたしまして、私の質問をこれで終了いたします。ありがとうございました。(拍手)

○山下委員長 門脇ふみよし委員の発言は終わりました。