予算特別委員会速記録第二号

   午後三時二十七分開議

○高橋副委員長 休憩前に引き続き委員会を開きます。
 質疑を続行いたします。
 林田武理事の発言を許します。

○林田委員 平成二十三年東京都予算特別委員会に当たり、都議会自由民主党を代表して総括質疑を行います。
 質問に先立ちまして、一言申し上げます。
 昨日、ニュージーランドのクライストチャーチ市で発生した大地震に遭遇し、語学研修中の専門学校生等多くの方々と連絡が途絶えているとの状況であります。この家族の方々のご心配はいかばかりかとお察しいたしますが、ぜひ、被災に遭った方々の無事を願うばかりです。と同時に、被災都市の皆様の安全と一日も早い復興を願いたいと思います。
 東京都といたしましても、今回のニュージーランド大地震の被災に対して、可能な限りの支援を行っていただきたいとお願いいたします。
 さて、今定例会の初日、石原知事は、知事の思いを込めた施政方針の中で、国民におもねる政治では日本は沈むと申され、さらに、国政がこうしたていたらくなら、危機が最も先鋭的にあらわれる大都市東京から日本を変えていかなければならないと、強烈に発信されました。全く同感であります。今の国政は、外交、内政ともに迷走を続け、まさに国民不在といっていい状況であります。与野党のねじれ、与党内の亀裂は、政権の末期的な状況であります。
 国の政治が先行きの見えない中、東京都は、二十三年度も、そして十年後の東京をしっかり見据えて政策を展開し、都民の生活の安心・安全を構築していくことが何よりも大切なことだと思っております。冒頭にそのことを申し上げ、質問に入りたいと思います。
 まず、二十三年度予算に関連して伺います。
 さきの代表質問で我が党の三宅幹事長が質疑したように、都が来年度予算で投資的経費を増額し、必要なインフラ整備を着実に進めることを我が党は高く評価いたします。
 大きく落ち込んだ税収が回復しない中での増額は、本来非常に難しいものであります。どうして増額が可能になったのか、その背景をひもとくことで、都の財政運営の取り組みとその成果が明らかになるのではないかと考えます。
 まず初めに、どういう考えに基づいて投資的経費を増額したのか、また、そのために、厳しい財政環境の中でどのように財源を確保したのか、お伺いいたします。

○安藤財務局長 都には、東京港や外環道の整備など、投資効果の高いインフラ需要が存在しており、東京が我が国の成長を引き続き牽引していくためにも、都市インフラの整備を推進することは不可欠であります。
 また一方で、既存の都有施設の老朽化という問題にも直面しており、質の高い行政サービスを継続的に提供していくためにも、これらの施設の改築、改修を計画的に進めなければならないところであります。
 このように、都市インフラや都有施設を中長期にわたって着実に整備、更新していくことで、日本の成長のエンジンであります東京の都市機能をさらに発展、成熟させることが極めて重要であります。
 来年度予算におきましては、こうした視点に立ち、雇用や経済への高い波及効果も踏まえながら、一つ一つの事業を検証し、その上で、都債や社会資本等整備基金を充当するなど、これまで培ってきた財政対応力を適切に活用することなどによりまして財源を確保して、必要な社会資本整備を着実に進めているところであります。

○林田委員 インフラ整備を通じて、東京の潜在力を最大限に引き出さなければなりません。また、施設の維持更新も、今行わないと、将来に大きなツケを回してしまいます。
 今回の予算は、経済波及効果にも配慮しつつ、本当に必要な事業はしっかりと進めています。同時に、いざというときのために力を備えていたから、投資的経費を増額できたことも明らかになりました。
 そこで、厳しいときに備えるべく、これまでどのように財政運営に取り組み、どのような成果を上げられたのか、具体的にお伺いいたします。

○安藤財務局長 石原知事就任以降の都財政は、大きく三つに区分ができると思っておりますが、まず、毎年のように財源不足に直面した財政再建期、次に、財政再建達成後の比較的税収が堅調だった時期、そしてここ数年の大幅な税収減に直面している時期の三つでございます。
 平成十二年度から十八年度までの財政再建期では、二次にわたる財政再建推進プランに基づき、職員定数削減などの内部努力を初め、徹底した施策の見直し、再構築などを行い、約八千億円の財源を生み出し、十七年度決算で黒字に転ずることができました。同時に、この間、基金残高を六千億円以上確保し、都債残高の縮減にも取り組んだところであります。
 財政再建達成後は、それまでの成果を踏まえ、時代状況の変化に確実に対応できる強固な財政基盤をいかに構築するかという点が大きな課題となったわけでありますが、このため、新たに事業評価制度を立ち上げ、事業の検証機能を強化するとともに、十九年度、二十年度の税収増も活用して、いわゆる隠れ借金を解消し、基金もさらに九千億円を積み増しをいたしました。
 こうした一連の取り組みによりまして、ピーク時に七兆七千億円ございました都債残高は、二十年度末で五兆九千億円まで減少し、基金残高につきましては、十一年度末の八百六十九億円から、二十年度末には一兆五千億円を超える水準となり、都の財政体質は大きく改善をいたしたところでございます。
 二十一年度以降については、再び厳しい環境のもとでの財政運営となっておりますが、すべての施策を厳しく検証し、これまで培ってきた財政対応力を活用することで、財政の健全性を確保しながら、引き続き都政の使命を積極的に果たす予算を編成してございます。
 これこそは、まさにこの間一貫して堅実な財政運営を続けてきた成果であるというふうに考えてございます。

○林田委員 東京都のこれまでの並々ならぬ努力で投資的経費を増額する体力を身につけたことがわかります。
 一方、国の来年度予算では、公共事業を大幅に削減しております。これは、公共事業に対する認識の違いもありますが、そもそも増額できない懐事情があるのではないかと考えております。
 つまり、成長力の引き上げに不可欠な道路、治水、空港などの公共事業を国が軒並み減額させざるを得なかったのは、危機的といわれる財政状況の中で、子ども手当など、マニフェスト施策に限りある財源を回したからであります。
 国や地方の財政状況は、結果として我々一人一人の負担にのしかかるものであります。それはどの程度なのか、重要なことですので、確認しておきたいと思います。
 都と国の財政状況の比較について、住民負担の観点から、わかりやすく例示していただきたいと思います。

○安藤財務局長 都と国で申し上げますと、国の財政規模がはるかに大きいために、財政状況を単純な数値の大小で比較することは難しい面もございますけれども、将来の住民負担をはかる一つの切り口として、この十年余りで住民一人当たりの借金の残高、すなわち公債残高の推移を比較いたしますと、都は、平成十年度において六十万円でございますが、二十三年度ではその二割減の四十六万円となっております。
 一方、国は、十年度において二百三十三万円であるのに対し、二十三年度ではその二・二倍の五百二十四万円となっておりまして、都と異なって著しく増加をしております。

○林田委員 余力のない国、底力を蓄えてきた東京都、その違いは歴然であります。事業仕分けのようなパフォーマンスでは、ばらまき施策の財源を賄えないことは明らかであります。都は引き続き日本をしっかりと牽引していかなければなりません。
 ただ、今は健全な都財政も、未来永劫安泰というわけではありません。
 そこで、これから視点を変え、都財政の将来を議論していきたいと思います。特に、財政の根幹である都税収入に着目したいと思います。
 何よりも憂慮されるのは法人事業税の暫定措置であり、来年度予算では千八百億円もの減収という影響を都財政に与えております。この不合理な措置の即時撤廃に向け全力を尽くしていかなければなりません。
 もう一つ、私が注目しているのは、都の可処分所得の状況であります。
 今回の予算で都税は小幅ながら増額しており、好転したようにも見えますが、都税の中には、その一定割合を区市町村に交付しなければならないものがあります。そこで、都の実質的な手取りが前年度からどれほどふえたのか、お伺いいたします。

○安藤財務局長 ご指摘の税収の手取り額でありますが、都税と地方譲与税を合計した額から特別区財政調整交付金などの税連動経費を除いた額を実質的な都税収入としてございます。
 この推移を見ますと、まず、来年度予算における都税と地方譲与税の合計額は、今年度から四百三十七億円増加している一方で、控除する税連動経費も、対象となる税の増収に伴い、三百一億円増加しております。このため、都の手取りベースでは、差し引きで百三十五億円の増となり、これは都税などの増収分全体の三割程度にすぎなくなります。
 したがいまして、手取り額としては、二十二年度予算とほぼ同水準にとどまっているということでございます。

○林田委員 二十三年度予算でふえた都の手取りは、収入がふえたうちのわずか三割程度とのことであります。税収増がそのまま手取り増になるわけではない。見落としがちですが、非常に重要な事実であります。
 加えて、先を見ても、繰越欠損金など、税の仕組み、成長戦略に欠ける現政権の混迷ぶりなど、そもそも税収が劇的に回復する要素は乏しく、今の厳しい財政環境が当面続くものといわざるを得ません。
 そうした状況においても、都政がみずからの役割を果たしていくには、将来を見据えた財政運営が一層重要になります。
 今回の議論を通じて、これまで知事がいかに先見の明を持って都財政のかじ取りを行ってきたか、改めて痛感いたしました。投資的経費を増額することができたのも、その成果の象徴であるともいえます。
 そこで、知事に、将来を見据えた財政運営はどうあるべきか、お伺いいたします。

○石原知事 就任以来、この十年余、議会の皆さんの協力を得ながら、瀕死の状況の都財政を何とか立て直すとともに、その後も手綱を緩めることなく、強固な財政力を培うことに努力をしてまいりました。
 これは、景気動向のみならず、少子高齢化の進展や都市機能の更新など、先々をしっかり見通し、いかなる状況にあっても、都民の負託に確実にこたえていくことが都政を預かる者の大きな責任であると考えたわけでありまして、こうした信念に基づきまして、一貫して進めてきた、新しい公会計制度や事業評価などによる徹底した事業の見直し、さらには、都債の発行抑制、基金残高の確保など、あらゆる努力がまさに将来を見据えた財政運営そのものであると思っております。
 後先のことを全く考えていない国にも、もう少し基本的に物を考え直して、例えば、事業仕分けも結構かもしれませんが、そもそも公会計制度が、先進国の中で日本だけが単式簿記。見回してみますと、このアジア周辺でも、日本と同じ非常にこっけいな、非常に不自由な会計制度をやっている国は、北朝鮮とフィリピンとパプアニューギニアだけでありまして、なぜとにかく発生主義・複式簿記を採用しないかよくわかりませんが、こういったものも、いろいろ大蔵省の抵抗もあるかもしれませんけれども、やはり政権をとっている政府は、一番肝心なことをとにかく考え直してまいりませんと、事業仕分けのようなたどたどしい作業で結局結果を何も得ないということになりかねない。
 これから先もまだまだ厳しい環境が続きますが、こういうときこそ、今日の強固な財政力を維持するためにも、確かな手だてをいかに講じていくかがかぎとなると思います。
 基金、つまり貯金をつくるのは並大抵のことではありませんでしたが、皆さんの協力で成就いたしましたけれども、これは使うのは簡単でありますから、そこのところはやはり私たち心を締めて対処していかなきゃならぬと思います。
 都政に課せられた使命を確実に果たしていくためにも、これまで都議会の皆さんとともに進めてきた堅実な財政運営という基本に改めて立ち返りまして、これを堅持していくことが重要であり、同時に、これが将来の東京というものを造成していくための責任の履行にほかならないと考えております。

○林田委員 私から申し上げるまでもなく、石原知事が平成十一年に青島前知事からこの都政を受け継ぎまして、極めて厳しい財政状況の中で財政再建をなし遂げてきた。これはだれも都民がみんな理解しているところだと私は思っております。
 次に、大規模震災対策についてお伺いいたします。
 まず緊急輸送道路沿道建築物の耐震化についてですが、東京都は、人口や建物が高度に集積しているだけではなく、首都として、政治、行政、経済の中枢機能を担っております。一たび大地震が起こればその被害は甚大で、国内外への影響もはかり知れません。
 耐震化促進のため、耐震診断の義務化まで踏み込んだ内容の条例案が本定例会に提案されたことは大きな意義があると思います。
 まず初めに、このような条例の提案に踏み切った知事の所見をお伺いいたします。

○石原知事 昨日も突然ニュージーランドで大地震が起きまして、多くの邦人が巻き込まれている状況でありますが、一刻も早い救出を願っております。
 報道によりますと、地震の規模の割には被害が大きいようでありますが、私も一度行ったことがありますけれども、あのまちも相当古いまちで、現代的な耐震性のある建物が少なかったんじゃないかという気がしますが、都としても早急に原因の把握に努めて、今後の都にとっての耐震化施策に反映することが必要だと考えております。改めて、必ず来る大地震に備えて万全の準備をしておくことが必要だということを痛感いたしました。
 考えてみますと、日本という国は、アラスカ、アリューシャンから、カムチャッカから発してマリアナに至る世界最大の火山脈の上にありまして、国土の中だけじゃなしに、少し東方になりますけれども、日本列島に沿って、これは日本人が発見したわけでありますが、たくさんの海底火山がありまして、その最初の名前が神武、綏靖、安寧と、何でも江戸時代の天皇の名前まであるぐらい海底火山が並んでいるわけですが、そういった地政学的な条件というものを私たちは決して忘れてはならないと思いますし、いつも地震というものを意識して暮らすべきだと思いますが、しかし、国の法律が、建物の耐震化をその建物の所有者の意思にゆだねていることが壁になっているわけでありまして、耐震化の重要性にかんがみれば、このまま手をこまねいているわけにはとてもいかないと思います。
 そこで、緊急輸送道路沿道建築物の耐震化に不可欠な、まずその耐震診断を義務づけるということにいたしました。都独自の新しい条例をこの定例会に提案したわけでありますが、従来の発想や国の法律の限界にとらわれない全国初の取り組みを通して、耐震化が進まない状況をせめて少しでも東京から打破していきたいと思っております。

○林田委員 今回の条例は、隗より始めよの例えのごとく、全く新しい取り組みだと思います。知事の英断を高く評価したいと思います。
 しかし、オフィスビルや分譲マンションといった個々の民間建築物の耐震化を実際に進めていくことは容易なことではなく、さまざまな手だてを講じていく必要があると考えます。
 我が党は、かねてから、費用負担を軽減すべきであると主張してまいりました。先般の代表質問において、耐震診断の義務づけにあわせて、診断費用の所有者負担をなくす助成制度を創設するとの答弁がありましたが、具体的にどのような内容なのか、お伺いいたします。

○河島東京都技監 今回、耐震診断の義務づけにあわせて創設する助成制度は、特に重要な緊急輸送道路の沿道建築物を対象といたしまして、耐震化に必要不可欠な耐震診断を沿道全体にわたって早急かつ一体的に進めるために、診断費用の所有者負担を大幅に軽減するものでございます。
 具体的には、対象建築物のほぼすべてを占めている一万平方メートル以下の建築物及び面積にかかわりなくすべての分譲マンションにつきまして、所有者負担がなくなる制度といたします。
 今回の助成は、平成二十五年度までの時限措置といたしまして、この間に、所有者の迅速な取り組みを促してまいります。
 さらに、従来の制度における区市町村負担分につきましては、都がすべて負担することにより、建築物の立地する、どこにあるかという、そういう区市町村にかかわらず、所有者に対する助成に差が生じないようにして、路線全体にわたって一体的かつ迅速に耐震診断が進められるようにいたします。

○林田委員 新たな条例と、こうした手厚い支援策が相まって、耐震診断の実施が加速され、耐震化が促進することをご期待申し上げます。
 しかし、診断した結果、耐震性能を満足しない建物が放置されたままでは意味がありません。耐震化を進めるためには、診断結果をいかに耐震改修につなげていくかが重要なポイントだと思いますが、所見を伺います。

○河島東京都技監 耐震診断は、個々の建築物の正確な耐震性能を明らかにするものでありまして、所有者が耐震化の必要性をみずからの問題として認識し、耐震改修に向けて主体的な取り組みを促していく原動力となります。
 特定緊急輸送道路の沿道建築物を耐震診断した結果、耐震改修が必要となった場合の改修費用につきましては、それを実施することの公共性、緊急性が特に高いことから、都が負担割合をふやすことにより、改修費用の所有者負担分を現行の三分の一から最大六分の一まで半減させることといたします。
 さらに、情報提供や相談への対応など、さまざまな機会をとらえ、診断結果に基づく効果的な改修工法等について具体的な助言を積極的に行ってまいります。
 これらのさまざまな取り組みを重層的に行うことにより、耐震改修の速やかな実施につなげてまいります。

○林田委員 支援策が十分に活用され、耐震改修が進むようお願い申し上げます。
 今回の条例は、耐震診断の義務づけなど、踏み込んだ内容であるだけに、行政から都民への一方通行ではうまく進まないと思います。条例の施行に当たっては、所有者の理解と協力を得られる進め方が重要であると考えますが、どのように条例を施行していくのかお伺いいたします。

○河島東京都技監 今回の条例は、新たに耐震診断を義務づけるものであることから、所有者の理解を得ながら進めていくことが必要不可欠と考えております。そのため、条例の内容に応じて段階的に施行することにしており、まず本年六月を目途に、あらかじめ区市町村や都民の意見を聞いて、特定緊急輸送道路を指定し、その後、所有者に対して十分に周知を図った上で、耐震診断の義務づけ等の規定を平成二十四年四月から、二十四年度当初から施行いたします。
 一方、できるだけ早く所有者に耐震診断、改修の取り組みを開始していただくため、助成制度の拡充につきましては、義務化に先行して、平成二十三年度から実施いたします。
 新たな条例に基づく耐震化施策を着実に推進し、災害に強い首都東京を実現してまいります。

○林田委員 一方で、万一大地震が起こった場合、東京は全国から緊急輸送道路を使用して、警察、消防、自衛隊の救援隊や災害派遣医療チームなどが駆けつけるとともに、避難生活に必要となる膨大な物資が届くと思います。大地震から都民の生命、財産を守るためには、沿道建築物の耐震化により緊急輸送ルートを確保するとともに、発災時に救援活動が迅速に行われるよう、全国からの救援隊の受け入れ体制を整えておくことは極めて重要であります。
 昨年の予算特別委員会における我が党の要望を受け、現在、都は、四万人を超える救援隊や緊急物資などの受け入れ体制を定めた計画について具体的な検討を進めているとのことですが、計画策定に当たっては、発災後のさまざまな事態に対処できるよう、より実践的なものにすることが重要だと考えます。現在までの検討状況と今後の取り組みについてお伺いいたします。

○比留間総務局長 首都直下地震が発生した際、海外を含めた全国から集まる救援の受け入れ体制について、現在、実践的な計画の策定を進めております。
 具体的な内容といたしましては、第一に、警察、消防、自衛隊の各部隊の配置や、DMATが活動する医療機関の指定など人的な救援の受け入れ、第二に、食料や毛布、燃料など、緊急物資を区市町村の拠点等へ輸送する体制の確保、第三に、救援活動で使用する緊急輸送ルートの選定の三点を柱として、発災時に全国からの救援が総合的に力を発揮できるよう検討を行っております。
 今後、三月に、関係する防災機関や各局が参加する図上訓練を実施し、救援の受け入れに必要な情報の収集伝達体制などについて総合的に検証を行った上で、六月に開催する予定の東京都防災会議で計画を決定してまいります。

○林田委員 あらゆる場面を想定し、大地震から都民の安全や首都機能を確保するために万全を尽くしていただきたいと思います。
 次に、救急医療についてお伺いいたします。
 本定例会の代表質問で、東京ルール開始後の救急医療の状況について質疑を行いました。福祉保健局長の答弁によれば、昨年実施した搬送調査の結果では、救急搬送患者に占める軽症患者の割合が減少するなど、東京ルールの効果が数字となって明らかになりました。同時に、搬送時間については、患者の背景が大きく影響しているとも答弁されました。
 そこでまず、どのようなケースが搬送時間を要し、それに対してどのように対応していこうとしているのかお伺いいたします。

○杉村福祉保健局長 先日公表いたしました救急搬送実態調査結果では、精神疾患や路上生活者、ひとり暮らし高齢者、泥酔状態等の場合、平均搬送時間が長くかかっており、こうした背景がない患者と比べ七・六分長くなっております。これは、受け入れをちゅうちょする医療機関が多いためと考えられ、その理由として、症状が回復しても、退院後の受け入れ先の選定が容易でないことなどが挙げられると考えております。
 こうした課題を解決していくためには、医療機関に加えまして、福祉事務所や地域包括支援センター、警察など、地域全体で取り組んでいくことが必要でございます。
 そのため、都は、東京都地域救急医療センター運営連絡会におきまして、関係機関の連携方策を協議いたしますとともに、医療圏ごとに開催する地域救急会議におきまして、地域の実情に応じた仕組みづくりを検討してまいります。

○林田委員 確かに、首都東京は救急搬送件数が多く、さまざまな患者がいることから、医療分野だけでは対応が困難なことも多いと思います。しかし、中には、医療分野だけで対応が可能なものもあり、その典型が精神疾患患者の身体合併症医療です。
 身体合併症医療は、その名のとおり、精神疾患と身体疾患の両方で入院治療が必要な救急患者に対応するもので、精神科と内科など一般診療部門との連携が欠かせません。
 都では、精神科救急医療体制の中で、当番制で受け入れていますが、近年、総合病院における精神科の縮小、撤退傾向もあり、担い手となる病院が減っているとも聞いております。
 こうしたことから、身体合併症のある救急患者への対応強化が必要と考えますが、今後の取り組みについて所見をお伺いいたします。

○杉村福祉保健局長 都では来年度、東京ルールによります搬送調整の対象となった救急患者で身体合併症を有する精神疾患患者に対応するため、こうした患者を積極的に受け入れる医療機関を都内に四カ所指定いたします。このうち一カ所は、患者を必ず受け入れる受け入れ医療機関と位置づけまして、常勤の精神科医を配置いたしますとともに、二床の病床を確保することとしております。
 また、これら四つの医療機関には、初期治療が終了した患者が円滑に他の病院に転院できるよう、患者への説明や病院間のコーディネートを行う精神保健福祉士等を配置することといたしております。

○林田委員 今後とも、医療、消防などの関係機関、そして東京都民と力を合わせて、救急医療体制の充実に努めていくよう要望いたします。
 近年、ハイリスク妊婦や、低出生体重児の増加によって周産期医療体制の充実が求められる一方で、産科、産婦人科を標榜する医療機関数は大幅に減少しております。
 このため、都立病院の役割は一層増大していますが、これまで都立病院は、多摩総合医療センター及び小児総合医療センターの開設や、産科と小児・新生児科と緊密な連携による一貫性のある周産期医療の提供に努めてきました。
 産婦人科医師不足が深刻化するなど、厳しい環境下に置かれていながらも、都立病院が周産期医療の充実に取り組んできたことは、これを推進してきた我が党としても評価するものであります。
 そこで、都立病院における周産期医療体制の整備状況についてお伺いいたします。

○川澄病院経営本部長 これまで都立病院改革を通じて医療機能の向上に努めてまいりましたが、その中でも周産期医療体制の充実は、都立病院の重要な責務であると認識しております。
 平成二十一年十月に大塚病院が、二十二年四月に多摩総合医療センター及び小児総合医療センターが総合周産期母子医療センターの指定を受け、診療体制の充実と地域医療連携の推進を図っているところでございます。
 さらにこの二月には、両センターが母体救命対応総合周産期母子医療センター、いわゆるスーパー総合周産期センターの指定を受け、多摩地域における母体救命に対応すべく、体制強化を進めているところでございます。
 今後とも、都立病院は、リスクの高い妊婦や新生児に対する医療を重点的に担うなど、周産期医療の充実強化に取り組んでまいります。

○林田委員 総合周産期母子医療センターの機能を発揮するためには、限りある医療資源を最大限に活用する必要があります。特に、多摩総合医療センター及び小児総合医療センターが一体となって運営する総合周産期母子医療センターは、地域の中核となるとともに、いわゆるスーパー総合周産期センターとしての役割を担うことで、多摩地域における母体救命に大きく寄与することが期待されております。
 地域の診療所とリスクの高い分娩を扱う総合周産期母子医療センターとが妊産婦の状況に応じて役割を分担することは、出産の安全性確保や、医療機関と妊産婦相互の負担軽減から見て大変重要であります。このため、都立病院がこれまで進めてきた周産期地域医療連携のさまざまな取り組みをなお一層推進することが必要だと思います。
 そこで、都立病院の総合周産期母子医療センターにおける地域医療連携の推進について、取り組み方針をお伺いいたします。

○川澄病院経営本部長 総合周産期母子医療センターの機能を発揮するためには、お話のとおり、一次から三次までの機能に応じた役割分担と連携を推進する必要がございます。
 このため、大塚病院における産婦人科地域医療連携システム、いわゆる大塚モデルの地域を拡大するほか、福祉保健局が実施している周産期医療ネットワークグループの構築において、区東部ブロックでは今年度より墨東病院が、多摩ブロックでは二十三年度に多摩総合医療センター及び小児総合医療センターが中核となり、ブロック内の医療機関等に参画を呼びかけ、会議や研修を開催いたします。
 また、各病院の地域特性に応じ、日ごろから地域医療機関との情報交換を密に行い、顔の見える連携体制を築くことにより、引き続き安心して地域で子どもを産み育てることができる環境づくりを進めてまいります。

○林田委員 次に、保育サービスについてお伺いいたします。
 都は、待機児童の解消に向けた取り組みを強力に推進していますが、経済情勢の悪化等により、平成二十二年四月現在の待機児童は過去最大の八千四百三十五人となっております。待機児童を解消するためには、保育施設の新設はもちろん、現状に工夫の余地があれば、すぐにでも取り組むべきであります。
 その一つとして、国は、認可保育所の設備、運営基準を都道府県等の条例に委任し、さらに、待機児が多く地価の高い東京等の一部の地域においては、一時的に保育所の居室面積基準の緩和を認めることとしております。条例委任の法案自体は、国会審議の見通しが立っていない状況でありますが、認可保育所を運営している事業者からは、入所している児童への影響を懸念する声も聞こえてまいります。
 そこで、保育所の面積基準緩和に関する都の考え方をお伺いいたします。

○杉村福祉保健局長 都はこれまで、保育所の設備、運営基準につきまして、大都市に見合った面積基準の設定など、運営上の創意工夫が可能となるよう、自治体の裁量の拡大を国に提案要求してきており、現在、国会に上程されている法案の内容は、都の主張が一部認められたものと認識をいたしております。
 都におきましては、既に認証保育所において、年度途中における面積基準を弾力化しており、認可保育所における弾力化も、地域の保育ニーズに応じた既存施設の柔軟な活用を可能にし、待機児童解消に向けた即効性のある取り組みにつながるものと考えております。
 現在、学識経験者、保育事業者、区市町村が参加する児童福祉審議会の専門部会におきまして、最低限確保すべき面積基準について検討を進めておりまして、その中で、都は、ゼロ歳児、一歳児について、現行の認可基準と同じ一人当たり三・三平方メートルとすること、ただし、国が指定する地域において事業者が年度途中に定員の弾力化を行う場合は、これまでの認証保育所の運営実績も踏まえ、二・五平方メートルとするという考え方を示しております。
 今後、専門部会でさらに検討を進め、その意見を十分踏まえながら、都としての基準を策定してまいります。

○林田委員 都の基本的な考え方、そして関係者の意見を聞きながら検討を進めていくことはよくわかります。
 一人でも多くの子どもたちが入所できるよう、既存の施設を最大に活用することは確かに即効性が期待できますが、実施に当たっては、現場で保育サービスを担う事業者の理解と協力が絶対に必要であります。現在、児童福祉審議会の専門部会で検討を進めているとのことでありますが、この中で十分な議論をぜひ行っていただきたいと思います。よろしくお願いを申し上げます。
 次に、中小企業等の支援強化対策について伺います。
 将来の産業発展のためには、足元の対策にも万全を期すことが必要であります。
 特に中小企業に対する金融支援においては、リーマンショック以降、都は、我が党の要望を受け、数次にわたる補正予算を編成し、国の緊急保証制度に対応して創設した経営緊急を中心に、中小企業の資金繰り支援に取り組んでまいりました。
 さらにこの間、我が党が国に対して直接働きかけなどを行った結果、緊急保証の対象業種が大幅に拡大し、多くの中小企業の資金繰りの道を開いてまいりました。
 しかしながら、民主党政権は、この緊急保証制度を今年度末で終了させ、信用保証協会の一〇〇%保証の対象になっていた業種も、来年度、特に十月以降は大幅に減少することとなっております。これはまさに、紛れもなく国の中小企業金融支援策の後退であり、都内中小企業への影響が危惧されておりますが、都の認識についてお伺いいたします。

○前田産業労働局長 都内の中小企業を取り巻く経営環境は、円高の長期化も相まって依然として厳しい状況にございます。
 このため、都は、昨年秋に緊急保証制度の延長など、中小企業者の資金調達の円滑化の確保のため万全の措置を講ずるよう、国に要望を行いました。しかし、国は、本制度を続けると国民負担の増大が避けられないとして、緊急保証制度を今年度末をもって終了するとしております。信用保証協会の一〇〇%保証の対象となる業種につきましても、現在およそ千百業種とほぼ全業種が指定されておりますが、この四月からは七百余りの業種に縮小するとしております。これにより、例えば、飲食料品小売業や理容業、美容業などの業種が指定から外れることになります。さらに、十月以降は、なお指定業種が縮小されることが見込まれております。

○林田委員 びっくりいたしております。これまで多くの企業が緊急保証制度により支えられてまいりましたが、中小企業の経営者からは、まだまだ経営環境は厳しいという声を聞きます。昨年夏以降の円高は長期化の様相を示しており、先行きの不透明感が増大しております。
 都内中小企業の依然として続く厳しい経営環境を考えれば、緊急保証制度終了後においても、中小企業の資金繰りに不安が生じないように中小企業をしっかりと支えていくことが求められております。
 都は、来年度、都内中小企業への金融支援にどのように取り組んでいくのか、お伺いいたします。

○前田産業労働局長 国の緊急保証に対応する都制度融資のメニューでございます経営緊急ですけれども、これは、国の信用保険制度に基づくものでありまして、国が緊急保証制度をやめた場合、都としてもこれは終了せざるを得ない状況にございます。
 そのため、都は、来年度、制度融資に円高対応融資メニューを創設するほか、既存の融資メニューにつきまして、融資期間などの融資条件を拡充いたしますとともに、小規模企業者の負担軽減を図るため、保証料の二分の一補助を継続するなど、セーフティーネット融資を重点的に推進してまいります。

○林田委員 依然として厳しい状況が続いておりますが、今までも中小企業は、七〇年代のオイルショック、九〇年代のバブル崩壊といった幾たびの難局をみずからの努力で乗り越えてまいりました。今回も、特に製造業では、成長著しいアジア市場での販路確保を重点的に行ったり、この時期だからこそ高い競争力を持つ技術開発に取り組もうとする積極的な経営を進める企業の話を耳にする機会もふえております。
 こうした中小企業の製品の競争力を高めるためには、マーケットのニーズ等をより正確にとらえて、その内容を技術開発の面にしっかりと反映していくことが重要となってまいります。
 今後、都は、ものづくり企業が競争力のある製品を生み出せるよう、どのように取り組んでまいるのか、知事にご所見をお伺いいたします。

○石原知事 東京のものづくり企業が国内外の厳しい競争を勝ち抜いていくためには、持ち前の技術力の高さを生かして、競争力のある製品を、実際にタイムリーにつくって売り出さなければならないと思います。
 しかし、その中小企業が非常にすぐれた技術を持っていても、あるいはすぐれた発想や着想を持っていても、現況下、これを市場で通用するような製品にすることは非常に容易でない状況にあります。
 かつて私の選挙区でもありました大田区は、非常にすぐれた中小企業の密集地でありますが、福井県の松浦機械という、これは湾岸戦争のときにアメリカはこのおかげで戦争に勝てた。水上浮舟型の戦闘機の部品をどこの国もつくれなかったのが、この会社がつくって供与したことでアメリカはあの戦争に勝ったんですが、その会社の社長が大田区に来まして、すばらしいとこだ、しかし政府は一体何をしているんだろうかということで、最初は彼が私財を投じてある施設をつくってくれました。そこで中小企業の人が集まって情報を交換する会館のようなものをつくってくれました。それがもとになりまして、後に蒲田に、情報交換したり技術をそこでテストするような施設を都がつくりました。
 さらに加えて、あちこちに、特に重要な技術面からでは、本年の五月に都立産業技術研究センター新本部を江東区にも開設して、製品の設計、試作から認証評価まで切れ目なく支援する機能を備えるなどして、完成度の高い製品開発を後押ししております。
 こうした産業技術研究センターを核として、産学公の連携も強化しまして、東京に集積する中小企業や大学の技術や知識を結集していきたいと思っております。
 また、海外進出で問題となる模倣品の被害、つまりそのパテントを盗まれるケースが多々ありますが、こういったものも援助し、それから、何といっても中小企業の方々の一番の致命的な問題の相続、つまり事業継承をしようとしても、過重な税が課されてとても稼業が続かないというケースがよくありますが、こういったものにも、商工会議所などと協力して、いろいろノウハウをお伝えして中小企業を守っていこうと思っております。
 今後とも、企業現場の多様なニーズに的確に対応できる施策を総合的に展開しまして、東京のものづくり企業を強力に支援していきたいと思っております。

○林田委員 まさに知事のおっしゃるとおりだと思います。すぐれた技術を持った企業においても、市場の動向を見きわめて、みずから進出すべき将来の成長分野を定めることは容易なことでなく、行政や社会経済の動きを幅広く把握した方向性を提示する必要があると考えます。
 特に高齢者の介護など、都政における重要課題については、まさしく中小企業の技術力を活用することによって、効果的な対応が可能になります。
 さらに、例えば介護などのサービス事業者の視点から、そのサービス提供に必要となる製品や技術の開発に向けた支援を行うことも効果的であると考えます。
 都としては、こうした考えを踏まえ、成長産業の育成にどのような取り組みを進めていくのか、ご所見をお伺いいたします。

○前田産業労働局長 将来に向け成長が期待できる産業分野で、都内の中小企業がすぐれた技術を十分に発揮できるようにすることが重要であります。
 そのため、都は今年度より、今後の成長分野で必要となる技術開発の方向性を示し、東京が直面する諸課題への対応につなげます、都市課題解決のための技術戦略プログラム事業を開始いたしました。
 今年度、平成二十二年度は、環境分野での技術開発に向けて、省エネ機器など四つのテーマを示した技術戦略ロードマップを作成いたしました。現在は、これに沿った産学公連携による技術開発や、中小企業の製品開発と事業化を、庁内各局と連携して支援しております。
 二十三年度は、医療や介護分野を含めた安全・安心の確保をテーマとしたロードマップを作成いたしまして、重点的な支援を行う予定でございます。
 また、医療や福祉などの分野における新たなビジネスの創出のためには、都内の中小サービス関連事業者が、新たな質の高いサービスを効率的に提供していくことも重要でありまして、これらの事業者が都内中小企業の技術を活用して行います研究開発についても支援を開始いたします。
 このような取り組みを展開することにより、成長産業の育成を的確に行ってまいります。

○林田委員 新しい成長産業として、例えばロボットなどの分野も期待されております。ロボット分野は高度な技術が必要であり、研究機関や大学など知識やノウハウを組み合わせて十分に活用することが大切です。そのため、都立産業技術研究センターや首都大学東京が連携して、技術水準の向上に取り組むようお願いしておきたいと思います。
 こうした高度な技術に基づき、性能のよい製品を生み出すことはもちろん重要ですが、これが売れる製品となるためには、営業戦略や販路開拓など、販売面でのノウハウも重要となってまいります。
 また、新たな製品を市場に送り出すためには、国内外の各種の規制をクリアし、一定水準の性能を満たしていくことの証明が必要となります。そのための必要な費用など、中小企業の負担となっていることの話もお伺いいたします。
 こうした中、新たな製品の開発に取り組む中小企業が、着実かつ円滑に事業化を実現するために、都はどのような支援に取り組んでいくのかお伺いいたします。

○前田産業労働局長 都内中小企業のすぐれた技術力をより生かしていくためには、市場のニーズを的確にとらえた商品を企画するとともに、それを販売に結びつける力を高めることが重要でございます。
 都は、来年度から企業の開発や営業の担当者を対象に、マーケティングや商品の企画から販路開拓に至るまでの一連の知識やノウハウを提供いたしますセミナーや、あるいは製造現場でのアドバイスを実施してまいります。
 さらに、商品を海外で販売するためには、例えばヨーロッパの安全規格でありますCEマークなど、世界各国の厳しい基準や規格を満たすことが求められております。このため、商品に対するさまざまな性能評価や認証を受ける際に必要な経費の助成を行いますとともに、技術面からのサポートとして、都立産業技術研究センターの新本部で国内外の規制に対応した試験の態勢を充実し、国際的に通用する試験証明書の発行が可能となるよう手続を進めてまいります。既に昨年開設いたしました多摩テクノプラザでは、国内外の規格に適合した試験場としての認定を受けております。
 こうした取り組みを通じて、中小企業が新技術や新製品により、その活路を切り開いていけますよう、効果的な支援を展開してまいります。

○林田委員 東京には、金属加工機械機器など、産業機械製造が多く集まる城南地域、印刷関連、光学産業が集まる城北地域や、電子精密機器関連の事業所が集中している多摩地域など、各地域において特色ある産業の集積というべきものがあります。都内の各地域での産業の集積を効果的に活用し、新たな産業を生み出す拠点として育成したり、企業や研究機関を誘致して、技術開発など連携を深めていく努力が必要と考えます。
 こうした取り組みについては、地元の自治体や企業の自主性や積極性が不可欠ですが、広域的自治体としての都による支援も必要と考えますが、所見をお伺いいたします。

○前田産業労働局長 各地域の特徴ある産業の集積を高めていくためには、それぞれの産業特性を踏まえた区市町村の主体的な取り組みとともに、東京都によります広域的な視点に立った施策の実施が不可欠だと考えております。
 このため都は、創造的都市型産業の集積の創出や活性化に取り組む区市町村に対しまして、最大三年間、経費の二分の一を助成いたしまして、その取り組みを積極的に支援しております。
 これまで、精密機器分野など最先端のものづくり地域を目指して企業誘致に取り組んでおります八王子市や、アニメ産業の国際的な交流を進める練馬区など、八つの区市を支援してまいりました。来年度はさらに、研究開発型企業の集積や、地元に誘致した大学との連携強化等を目指す足立区など、四区に対し新たな支援を行います。
 今後とも、都と区市町村が連携し支援を行うことで、地域における新産業の集積と創出を図り、東京の将来を支える都市型産業の振興を図ってまいります。

○林田委員 次に、都立多摩職業能力開発センターの移転、開設についてお伺いいたします。
 職業訓練を通じて多くの求職者を就職させるとともに、中小企業の人材育成を支援してきた多摩職業能力開発センターが、本年四月、産業サポートスクエア・TAMAに移転、開設することになりました。これにより、我が党が早期実現を目指してきた産業の支援拠点が、名実ともに実現することとなりました。
 この移転を機に、産業支援機関と十分に連携し、これまで以上に機能を充実させていくべきですが、今後どのように事業を展開していくのか、お伺いいたします。

○前田産業労働局長 多摩職業能力開発センターの移転、開設によりまして、既設の多摩テクノプラザや中小企業振興公社、農林総合研究センターなど産業支援機関が集積いたします産業サポートスクエア・TAMAが完成することになります。
 これを機に、新たな多摩職業能力開発センターでは、施設の大規模化や訓練科目の見直しなどによりまして、多様な職業訓練を実施し、求職者への支援を強化してまいります。
 また、多摩テクノプラザの最先端機器の活用や各施設間の相互利用などによりまして、これらの支援機関が連携を強化することで、職業訓練を一層充実していくほか、地域の中小企業の幅広い人材ニーズにもこたえてまいります。
 こうした取り組みを通じて、従前にも増して多摩地域の求職者や中小企業の方々の役に立つ施設となりますよう、持てる機能を十分に発揮してまいります。

○林田委員 次いで、雇用対策についてお伺いいたします。
 都が二月二日に東京国際フォーラムで開催した合同就職面接会には、百八十六社の企業が参加し、求人数は全体で千四百四十二人分あったといいます。今春卒業予定者だけでこれだけの求人があるということは、採用意欲があっても人材を確保できずに、いまだに採用活動を継続している中小企業が数多くあるという一例だと思います。
 学生の大企業志向が依然として強いことや、採用活動に要するコスト負担が大きいなどの事情が考えられますが、これらの企業の現状については、都内の経済団体がそれぞれ把握し、独自の取り組みをしていると思います。今後、都として、経済団体と一層連携し、中小企業の採用の取り組みを支援していくことも必要なのではないでしょうか。
 また、過去最低の内定状況の中、卒業まで一カ月余り、待ったなしの状況にある新卒者にさらに機会を提供するためにも、都が経済団体と連携しての緊急対応が求められると考えますが、ご所見をお伺いいたします。

○前田産業労働局長 新卒者の就職環境は厳しく、もう二月の半ばを過ぎましたが、いまだ就職が決まっていない学生も多数おります。
 さらなる支援が必要でありますことから、都は、今回新たに、東京商工会議所と連携いたしまして、合同就職面接会を緊急に開催することといたしました。
 この面接会は、大学生など新規学卒者等を対象に、三月十一日に池袋サンシャインシティで実施いたします。参加企業は五十社を予定しており、会員企業の状況をよく知っております東京商工会議所が選定し、各社のPRなど企業情報を学生にわかりやすく提供いたします。
 このように、都と経済団体が直接に連携した新たな面接会の実施は、ご指摘のとおり、中小企業の人材確保と新卒者の就職支援の両面において意義あるものと、このように考えておりまして、効果的に実施してまいります。

○林田委員 大学生の就職内定率は、昨年十二月時点で六八・八%と過去最低となるなど、新卒者の採用状況は深刻な状況であります。
 一方、昨年十二月の都内の介護職種の有効求人倍率は二・四五倍で、介護分野では依然として人材が不足しております。介護ニーズの増加が見込まれる中で、介護人材確保策を講じることは喫緊の課題だと思います。
 都は来年度、新卒者等応援緊急介護人材育成事業を実施するとのことですが、どのように進めていくのかお伺いいたします。

○杉村福祉保健局長 お話しの事業は、都内在住または在学で就職活動中の学生を対象として、無料でホームヘルパー二級の養成研修を行い、その就職を支援する事業でございまして、来年度は二千名の規模で実施する予定でございます。
 事業の具体的な内容は、まず、大学、高等学校等から紹介、推薦を受けた学生を対象に、通学または通信の養成研修を実施する。資格を取得した後は、福祉人材センターで就職相談や福祉、介護職場への就職のあっせんを行う。さらに、都内の介護施設等に就職した場合には、キャリアアップのために介護福祉士資格の取得も支援する。
 今後、四月から事業が開始できるよう、大学等の就職担当部門や東京しごとセンター、ハローワークなどと調整を進めてまいります。

○林田委員 新卒者の就職先拡大と介護人材確保の両方が図られる、時期をとらえた事業と考えますので、しっかりと進めていただきたいと思います。
 次に、新銀行東京についてお伺いいたします。
 今から三年前、新銀行東京が深刻な経営悪化に陥った際、我が党は、取引先である多くの中小企業のことを最優先に考え、追加出資に賛成いたしました。だからこそ、これまで一貫して新銀行東京の再建の取り組みに重大な関心を払ってまいりました。
 この問題で何よりも重要なのは、新銀行東京が、再び中小企業に役立つための体力を取り戻すことであります。都が出資しているとはいえ、新銀行東京は、常に他の民間金融機関との競争にさらされております。その中で活路を見出し、再建を果たしていくためには、銀行経営の本筋を踏み外すことなく、目標を定めて、地道に経営努力を重ねていくことが必要であります。
 去る二月四日に発表された新銀行東京の平成二十二年度第三・四半期決算は、直近三カ月間で、本業の収支である実質業務純益が開業以来初の黒字となりました。決算にあらわれた数字は、きちんと中身を検証し、曇りなき目で評価を下す、それが議会の役目であります。
 そこで伺いますが、今回、実質業務純益が黒字化を果たすまでに至ったのは、新銀行東京のどのような取り組みによるのでしょうか。また、通期決算の見通しについてもあわせてお伺いいたします。

○前田産業労働局長 銀行経営にとりまして重要なことは、コストとリスクを最適に管理しながら業務を展開することにあると考えます。
 新銀行東京は、現経営陣のもとで、与信審査や与信管理体制の強化を図りますとともに、システムの見直しなどによる営業経費の圧縮や資金調達コストの削減など、徹底した低コスト構造化に取り組み、堅実な経営を行ってまいりました。
 中小企業支援につきましては、リスケジュールの強化など、顧客に対してきめ細かく対応するとともに、新規顧客の開拓を地道に行い、中小企業向け融資残高が増加に転じるなど、顧客対応の強化と収益力の向上に努めてまいりました。
 現経営陣のこうした努力によりまして、直近の平成二十二年度第三・四半期では、引き続き当期利益を確保するとともに、これまで課題としてまいりました実質業務純益につきましても、開業以来初めて黒字となったところでございます。
 通期決算につきましては、現在のところ、当期利益が引き続き黒字、実質業務純益はマイナスを見込んでおりますが、新銀行東京は、今後も努力を重ねることによりまして、実質業務純益の通期での黒字化も視野に入ってきているとしております。都としても再建が着実に進むよう、引き続き監視と支援に努めてまいります。

○林田委員 銀行経営は、経済金融環境の影響を受けるなど、外部環境に左右されることもあり、予断を許しません。追加出資の四百億の重みを忘れることなく、今後とも経営努力を怠らず、再建を果たしていただきたいと思います。
 次に、水道の国際展開について伺います。
 水道局では、昨年一月に東京水道サービスを活用した海外展開を打ち出し、積極的に取り組んでおります。
 我が党は、世界の水問題への貢献はもとより、日本経済の活性化にもつながることから、昨年の第一回定例会以降、この取り組みを本会議で毎回取り上げ、水道局とともに現在の枠組みをつくり上げてまいりました。さきの代表質問では、一年間の総括を伺い、水道局からマレーシア、ベトナム、オーストラリアで具体的なプロジェクトとして動き始めたことが明らかにされました。しかしながら、事業の実施までにはまだ課題も多いのではないでしょうか。
 そこで、これらの国における取り組み状況と課題、今後の事業展開についてお伺いいたします。

○尾崎水道局長 マレーシアとベトナムの案件につきましては、国などに対する要請が実り、JICAの資金を引き出し、東京水道サービスと民間企業から成るグループが連携して、無収水対策や新たな施設整備などの事業化に向けた調査を実施することになりました。
 同グループでは、今後一年かけて、東京水道の強みである漏水防止技術や、どのような水質にも対応可能な浄水処理技術などを生かし、プロジェクトの実現のための詳細な提案を行ってまいります。
 また、オーストラリアの案件につきましては、本年三月に日本企業グループが経営主体となる新体制が整うとの報告を、同グループの構成企業である三菱商事株式会社から受けております。体制整備後は、東京水道サービスが現地の水道の状況を把握するための基礎調査を実施した上で、事業運営に対する改善提案を行っていくことを予定しております。
 当局としましては、これらの三カ国に対し、引き続き現地政府や事業体などからの情報収集や働きかけを積極的に行うなど、東京水道サービスと民間企業による取り組みを強力に支援してまいります。

○林田委員 JICAから資金を引き出すなど、東京水道の影響力の大きさを改めて実感いたしました。このように国内外に大きな影響力を持つ東京水道の支援があれば、事業運営の実績がないために海外での参画が困難な日本企業にとっても、大きな力になると考えます。
 昨年の第四回定例会で、我が党は、都が接着剤となり企業連合を後押しするべきであると提案し、水道局からは積極的に支援していくとの前向きな答弁をいただきました。また、知事の所信表明では、都が触媒となり企業連合を形成すると発言がありました。ぜひとも民間企業のニーズに合致した仕組みを早急に整備し、企業を強力に後押ししていただきたいと思います。
 そこで、企業連合の形成について、課題は何か、また、いつからどのような支援を行っていくのか、具体的にお伺いいたします。

○尾崎水道局長 日本企業による海外の水道事業運営への参画が進まない理由として、事業運営のノウハウや実績が不十分であることや、企業の業域が細分化していること、情報が個々の専門分野に限定されていること、長期間の契約に対するリスク負担に足踏みしていることなどが挙げられます。
 このような状況を打開するためには、第一に、事業運営ノウハウを持つ東京水道サービスの活用、第二に、企業間のマッチングの促進、第三に、各国から寄せられるニーズや政策、水事情などの情報提供、第四に、政策金融支援の充実などに向けた国への政策提言、こうしたことなどを行うことによって、企業を強力に後押ししていくことが極めて有効と考えております。
 現在、当局ではこうした支援を総合的に推進するため、企業連合、すなわちコンソーシアムの形成を支援する仕組みづくりを進めております。今後、民間企業のニーズに合致した仕組みとするため、企業の具体的な意見や要望などを把握し、本年六月を目途に、枠組みを固めた上で参加企業の公募を行っていく予定であります。
 また、この仕組みを通じて得られた声は、ミッション団の派遣や国への提案要請などの取り組みにつなげていくとともに、その成果を参加企業にフィードバックしてまいります。
 こうした取り組みにより、民間企業との連携を一層強化し、海外展開を積極的に支援してまいります。

○林田委員 この取り組みは、まさに今後の海外展開の成否に大きくかかわる重要な枠組みといえますので、ただいまの局長の答弁のとおり、しっかり推進していただきたいと思います。
 次に、ポリ塩化ビフェニル、PCBについて伺います。
 PCBといえば、カネミ油症事件で毒性が問題となった有害物質ですが、高濃度のPCBは現在、無害化処理が進められております。
 これとは別に平成十四年、トランス等の絶縁油をリサイクルする過程で汚染された微量のPCBを含む電気機器の存在が明らかになりました。この微量PCBの存在が明らかになってから八年以上たって、今も処理が始まっておりませんが、都は微量PCB処理のために、これまでどのように取り組み、現在どのような状況になっているのかお伺いいたします。

○大野環境局長 都は微量PCBの無害化処理体制を速やかに構築するため、国に働きかけまして、平成十九年から国が設置した専門委員会にも参加をしてまいりました。この結果、平成二十一年十一月、国がようやく微量PCBを処理できる施設を認定する制度を創設いたしました。
 この制度の創設を受けまして、昨年の十一月、東京臨海リサイクルパワー株式会社、略してTRPと呼んでおりますが、TRPは、臨海部のスーパーエコタウンにあります処理施設で微量PCBの無害化処理を行う認定を申請しまして、現在国で審査が行われております。
 この間、都はTRPに対しまして、認定の申請に必要な焼却実証試験や設備改善について指導を行ってまいりました。
 TRPでは、親会社の東京電力と、それ以外の都内の事業所が保有している微量PCBの機器の双方を処理することとしておりまして、本年の夏前に見込まれる施設の認定によりまして、都内の微量PCBの処理が開始されることとなります。

○林田委員 国への働きかけやTRPへの指導等に努め、微量PCB処理の見通しがついたことは大変評価したいと思います。
 TRPでは、東京電力とそれ以外の都内の事業者が所有している微量PCBの双方を処理するということですが、微量PCBは都内に大量にあるため、計画的な処理が必要と考えますが、都の見解をお伺いいたします。

○大野環境局長 都内にある微量PCB汚染電気機器の台数は約十万台と推計しておりまして、その多くは現在も使用中でございます。この十万台のおおむね半数を東京電力以外の事業者が占めておりまして、このうち、大規模工場や電鉄会社等の大手企業、官公庁が約七割を占めております。中小工場やテナントビルなどにおきまして、中小企業が約三割を保有していると推定されます。
 都は、東京電力の微量PCB機器とともに、他の大手企業や中小企業の保有する機器の処理も進むように、協定を結びまして、これに基づきまして、東京電力とそれ以外の事業者などの処理割合を毎年度決めるということにしております。
 また、大手企業や官公庁に対しましては説明会を開催するとともに、事前に処理計画を提出していただきまして、それに沿って処理が進むように指導する予定でございます。
 こうした取り組みによりまして、東京電力や大手の企業、中小企業の保有する微量PCB汚染機器が並行して処理されるように調整を図ってまいります。

○林田委員 都は都内の微量PCBが混乱することなく円滑に処理されるよう、しっかりと調整していただきたいと思います。
 次に、中小企業の微量PCB処理についてですが、さきの四定代表質問で我が党が指摘したとおり、微量PCB汚染電気機器の処理には、PCB濃度分析、電気機器からの油の抜き取り、収集運搬、焼却処理、それぞれ専門業者に依頼する必要があり、その手続が煩雑である上経費もかさむため、中小企業の負担が大きくなります。
 都は、平成二十三年度予算案に中小企業への補助を盛り込んでおりますが、中小企業に対してどのような支援をし、その支援策を多くの中小企業に利用してもらうためには、どのように周知するのかお伺いいたします。

○大野環境局長 中小企業の負担軽減のためには、機器の絶縁油に含まれますPCBの濃度分析から焼却処理までの手続の簡素化と、それから、経費負担の軽減の双方が必要でございます。
 都は、処理手続の簡素化のために、微量PCB機器を保有しています事業者が専門業者に一度申し込めば処理が完結する仕組み、いわゆるワンストップサービスを、TRPでの処理開始までに提供できるよう、現在準備を進めております。
 また、経費負担の軽減のためには、来年度補助制度を創設いたします。
 この補助制度では、五年間にわたりまして中小企業、学校法人、マンション管理組合などに対しまして、微量PCB絶縁油の無害化処理経費と、微量PCBを含まない普通の絶縁油の処理経費との差額の二分の一を補助することとしております。
 これらの支援策につきましては、東京電力や、電気機器の保守点検をしております関東電気保安協会と連携し、個々の中小企業に対しましても周知を図ってまいります。
 こうしたさまざまな取り組みを通しまして、都内にある微量PCBを速やかに処理してまいります。

○林田委員 環境局長、よろしくお願いいたします。
 次に、道路整備についてお伺いいたします。
 都市基盤整備には必要な財源確保は不可欠であります。その地方自治体の都市基盤整備の重要な財源となっている社会資本整備総合交付金について、国は平成二十三年度の予算から、その一部をいわゆる一括交付金の対象とするとしております。制度の設計次第によって、各事業の重要度や効果について考慮されずに、人口や財政力など、外形的な基準によって算定されれば、大都市に不利な補正が行われ、東京への予算配分額が大幅に削減されることが懸念されます。
 こうしたことから、昨年十二月、都議会自民党を初め、都議会としても、国に対して一括交付金に関する意見書を提出いたしました。来年度の政府予算案において、地域自主戦略交付金として創設することは決定されましたが、都にとって不合理な制度とならないよう、ましてや地方間の財政調整の手段とならないよう、国に強く対峙していただくことを要望いたします。
 近年、アジア諸国の急速な成長の中で、我が国の国際競争力を高めていくためには、首都圏の陸海空の交通物流ネットワークの強化が不可欠であり、都市基盤整備の中でとりわけ道路整備が、都市の活力を向上させ、東京が日本を牽引する上で重要な役割を果たしております。
 我が党はこれまでも幾度となく、東京の道路整備の重要性を主張してまいりました。そこで改めて、東京の道路整備の必要性とその取り組みについてお伺いいたします。

○村尾建設局長 東京の道路整備は、最大の弱点である交通渋滞を解消し、環境の改善や防災性、安全性の向上を図るとともに、首都圏のみならず我が国の経済を活性化させ、国際競争力を強化するためにも必要不可欠でございます。
 このため、外環を初めとする三環状道路や、都市の骨格を形成する区部環状、多摩南北方向の幹線道路の整備、連続立体交差事業などを重点的に実施しております。
 これまで、首都高速中央環状新宿線を初め、環状八号線、多摩南北主要五路線の一つである八王子村山線を全線開通させるとともに、連続立体交差事業においても、JR中央線三鷹-立川間の高架化を完了させ踏切を除却するなど、着実に整備を進め、幹線道路ネットワークの充実を図ってまいりました。

○林田委員 都では、三環状道路を初めとする幹線道路の整備や連続立体交差事業など、着実に進めているということでありますが、具体的な整備効果についてお伺いいたします。

○村尾建設局長 道路整備の効果としては、例えば、中央環状新宿線の三号渋谷線から四号新宿線までの区間の開通により、首都高速東京線のピーク時における渋滞長が、開通前と比較して約二割減少しています。渋滞が緩和したことで、新宿から羽田空港までのリムジンバスの所要時間が最大三割短縮され定時性が向上するなど、空港へのアクセス機能も高まったと考えております。
 あわせて、環境面でも、この区間の整備だけで、山手線内側の半分の面積に相当する森林が吸収するCO2の削減効果がございます。
 また、連続立体交差事業につきましては、京急本線で、環状八号線に唯一残っていた踏切を除却したことにより、最大七百十メートルあった渋滞が解消したほか、JR蒲田駅から環八経由で羽田空港に乗り入れをするバス路線が新設されました。
 さらに、JR中央線では、小金井街道などの渋滞が解消するとともに、武蔵小金井駅南口で再開発事業などによる駅前広場整備やまちづくりが進められております。

○林田委員 これまでご答弁いただいたとおり、東京の道路整備による効果は非常に高く、計画的かつ重点的に取り組むべきであり、国においても、事業の重要度や効果を適切に評価し、必要な財源措置を行うべきであります。
 都においては、厳しい財政状況の中でも、道路整備を初めとする投資的経費を伸ばしてきており、そのことは高く評価できますが、道路整備の着実な推進に向けた決意についてお伺いいたします。

○村尾建設局長 東京が持つ可能性を引き出し、新たな成長につなげるためには、厳しい財政環境が続く中にあっても、中長期的な視点に立ち、道路整備を着実に推進していくことが必要と考えております。
 このため、空港、港湾へのアクセス向上を図る外環や中央環状品川線、都心と臨海部を結ぶ環状二号線、都市間連携を強化する多摩南北道路などの広域的な幹線道路の整備を初め、小田急小田原線など連続立体交差事業を重点的に実施し、効率的、効果的な幹線道路ネットワークの形成を図ってまいります。
 また、山間・島しょ地域につきましても、多摩川南岸道路など、都民の生活や経済活動を支え、災害時には都民の生命と財産を守る道路整備を着実に推進してまいります。
 さらに、無電柱化の推進、街路樹の充実、快適な歩道や自転車、歩行者空間の確保などにも積極的に取り組み、成熟した都市にふさわしい緑豊かな景観にもすぐれた道路空間を創出してまいります。
 今後とも、必要な財源を安定的に確保できるよう、国に強く求めていくとともに、日本を牽引する首都東京の道路整備に全力で取り組んでまいります。

○林田委員 引き続き、なお一層の道路整備の推進を要望いたします。
 次に、首都高の料金についてお伺いいたします。
 国は、昨年十二月の新料金案の基本方針を踏まえ、首都高料金の割引について今月十六日に公表いたしました。
 都議会では、首都高速道路公団の民営化に際し、均一料金制から対距離料金制への移行を議決し、平成二十一年には移行時期を平成二十三年度以降とすることを議決しております。
 料金見直しに対し、都議会は環状道路の利用促進、長距離利用者の負担軽減、会社間の乗り継ぎ割引について、平成十九年に国へ意見書を提出いたしました。さらに我が党は、交通、とりわけトラック協会を初めとする物流に十分に配慮して取り組むべきであると求めてまいりました。また、業界からも要望がたくさん来ております。
 そこで、今回公表された首都高速料金見直しの概要と今後の対応についてお伺いいたします

○村尾建設局長 首都圏の高速道路ネットワークの機能を十全に発揮させていくためには、現在の入り組んだ料金体系を、渋滞解消に役立ちかつ利用者にわかりやすいものに改めることが必要でございます。
 このため、都は、環状道路の利用を促進する政策的な料金の導入や将来的な料金の一元化など、首都圏の高速道路の料金体系を関係自治体と連携して提案してまいりました。その実現を国に強く主張してまいりました。
 首都高速料金の見直しに当たりましては、高速道路網の充実やETCの普及に伴い、公平性の観点から、利用者が走行距離に応じて負担する対距離料金制を導入することとなっておりますが、国が発表しました新料金案では、普通車が、現在で東京線七百円の均一料金を、五百円から九百円を上限とする料金圏のない対距離料金制に移行することとしております。
 また、乗り継ぎ割引や中央環状線迂回利用割引の新設、物流事業者向けの割引の拡充など、国に対し都議会から提出された意見書や都がこれまで要望してきました内容も盛り込まれております。
 今後とも、利用者の利便性が向上し、高速道路ネットワークの機能を十全に発揮させる料金体系を構築するよう、関係自治体と連携し国に強く求めてまいります。

○林田委員 料金見直しに当たっては、引き続き利用実態を検証しながら、地域経済の活性化に特段に配慮したものになるよう要望いたします。
 次に、京王線の笹塚駅からつつじヶ丘駅間の連続立体交差化及び複々線化の計画についてお伺いいたします。
 この計画は、二十五カ所のあかずの踏切を除去することにより、交通渋滞や地域分断を解消し、地域全体の利便性や安全性を向上するとともに、ラッシュ時の混雑緩和や所要時間の短縮を図るなど、京王線沿線に広く効果が及ぶ計画であります。
 都は、在来線を高架化し、複々線化のために必要な増線を地下化する、いわゆる併用方式を都市計画案として現在手続を進めております。
 一方、一部には、騒音や日影等の環境面から、事業費が高くても全線を地下方式にすべきという声があると聞いております。
 そこで改めて、この区間における構造形式の選定の考え方と都市計画案の環境に及ぼす影響についてお伺いいたします。

○河島東京都技監 京王線の笹塚-つつじヶ丘駅間の構造形式につきましては、高架方式、地下方式、併用方式の三案につきまして、地形的条件、計画的条件、事業的条件から比較検討を行っております。
 地形的条件につきましては、三案とも同等でございますが、計画的条件につきましては、高架方式と併用方式ではすべての踏切が除却可能となるのに対しまして、地下方式では、既存の高架橋から地下に潜り込む間に、鉄道施設が三本の交差道路を遮断して通行できなくなってしまうという問題が生じます。
 また、事業的条件につきましては、地下方式では事業費が他の二つの方式と比較して約八百億円高額となります。
 こうしたことなどから、地下方式を除いて、高架方式と併用方式を比較し、都市計画変更により新たに区域を加える範囲が小さく、影響の少ない併用方式を最適案といたしました。
 この併用方式案に対して、環境影響評価法に基づき予測、評価を行ったところ、周辺環境に及ぼす影響につきましては、支障がないものと判断しております。
 今後、都市計画案などについて、本年三月十六日から二十八日にかけて地元説明会を行うなど、平成二十四年度の都市計画決定に向け、鋭意取り組んでまいります。

○林田委員 次に、八ッ場ダム事業についてお聞きいたします。
 民主党は、政権交代に当たって、八ッ場ダム建設の中止を根拠もなく一方的に表明したものの、今では上げたこぶしをおろせなくなっているのが現状だと思います。
 一年半の間に担当大臣が三人もかわり、現在の大畠国交大臣は、就任後、馬淵前大臣が示した方針を堅持するといいつつ、予算委員会では有識者会議の報告書の本編を読んでいないという旨の驚くべき答弁をしております。
 その後、十三日に大畠大臣は八ッ場ダム建設予定地を訪れ、大澤知事や地元町長らと会談いたしました。この場で地元は、政府の対応を信頼できないと強く批判をいたしました。
 民主党幹部は、馬淵大臣の中止の方向性に言及しないという発言を、地元と話し合いをしていくためにこのような表現をとらざるを得なかったと述べておりました。これは、大臣の発言が単なる方便だったということになるのではないでしょうか。このような無責任な対応を続けている結果、地元住民はいつまでも先の見えない生活を強いられているのです。
 我々は、八ッ場ダムは必要不可欠な施設であり、検証の結果を早急に出し、直ちに建設に着工すべきと考えておりますが、八ッ場ダムの完成に向けた対応についての見解を伺います。

○河島東京都技監 昨年十二月、馬淵前大臣は、八ッ場ダムの検証の結論が、当初予定としていたことし秋より一刻も早く得られるよう努めると明言いたしました。
 国は、今月初め開催された関係都県との検討の場において、検証作業の一環として、数多くのダムの代替案を提示しました。しかし、この中には、多くの住民が移転を余儀なくされる堤防の市街地側への移設や、節水型の洗濯機の奨励等、ダムの代替案としては到底現実的とは受けとめられない案も含まれていたことから、関係都県は、むだな時間を費やさず早急に検証の結果を出すべきと強く主張いたしました。
 また、大畠現大臣は、先ごろ国会において、建設を進めるという判断に至った場合、ダムの完成が平成三十年になると答弁いたしました。ダムの中止を一方的に表明し、検証をいい出したのは国であります。国は、工期を短縮する責務があるにもかかわらず、そうした努力を全くせずに、みずからつくった空白期間を単純に加えて、完成が三年おくれると受けとめられるような軽々しい発言は、共同してこの事業を進めてきた自治体の立場からは到底認められません。
 八ッ場ダム建設は、利根川水系における治水、利水の安全度を高める対策として、最も現実的かつ確実に効果を見込める事業であります。国は、馬淵前大臣が明言したとおり、一日も早く検証結果を出すべきであります。
 都は引き続き関係県と連携し、基本計画どおり、平成二十七年度までに八ッ場ダムを完成させるよう、国に強く求めてまいります。

○林田委員 いつまでもマニフェストにこだわっている現政権に、心からご批判を申し上げます。
 次に、がん対策についてお伺いいたします。
 がん診療連携拠点病院は、高度ながん医療や緩和ケア、相談や情報提供などの、地域のがん医療の中核を担うものであります。がんにかかったときに最善の治療を受けたいということは都民共通の願いであります。これにこたえるには、がん医療の中核を担う拠点病院を一層拡充していくことが必要であります。
 都は現在、拠点病院と、拠点病院と同等の機能を有する独自の認定病院制度により、都民のがん医療ニーズに対応していますが、都として必要な拠点・認定病院の規模と、来年度のがん医療提供体制についてお伺いいたします。

○杉村福祉保健局長 拠点病院や認定病院が、高度ながん医療の提供やきめ細かな地域連携など、その役割を十全に果たしていくためには、人口やがん患者数などに見合った規模が必要でございます。
 こうした観点から考えれば、全国の十分の一の人口を抱え、十五万人を超えるがん患者がいる東京におきましては、三十四カ所程度、がん診療の拠点となる病院が必要と考えております。
 来年度は、先日開催されました、国のがん診療連携拠点病院の指定に関する検討会の結果を受けまして、新たに四病院が拠点病院として指定されることになっております。また、都も二つの病院を認定病院として新たに認定することとしております。
 その結果、四月から拠点病院が二十、認定病院が十四となり、合わせて都内三十四カ所の病院が、拠点病院、認定病院としてがん医療を提供する予定でございます。

○林田委員 都として望ましい拠点・認定病院の規模が来年度達成されることは喜ばしいことだと思います。
 しかし、地域の中核となるべき病院は、本来、国制度である拠点病院により担われるべきだと考えます。今回の拠点病院の指定では四病院が認められたとのことですが、国の二次保健医療圏に一カ所という整備要件には変更はなく、いまだ地域の特性に合わせた拠点病院の整備が十分にはできてない状況にあります。
 都における今後のがん医療提供体制の整備の方向性について所見を伺います。

○杉村福祉保健局長 都といたしましても、本来、拠点病院が地域におけるがん医療の中核としての役割を担うべきであり、将来的には、三十四カ所すべてが拠点病院として整備される必要があると考えております。
 現状では、拠点病院と同等の診療機能を有する病院を都道府県が独自に認定しても、診療報酬上の評価は行われず、機能強化のための補助金も対象となっておりません。このため、引き続き国に対しまして、地域特性に応じた指定を行うよう提案要求を行い、認定病院から拠点病院への移行を促進してまいります。

○林田委員 がん医療提供体制を一層充実し、都全体のがん医療水準の向上に努めるよう要望いたします。
 次に、在宅医療の推進についてお伺いいたします。
 今後、ひとり暮らしの高齢者や高齢者のみの世帯がふえる中で、高齢者の在宅生活を支え続けるには、医療と介護の連携が最重要課題となります。
 国では、介護保険制度の改正に向けて検討の中や、中央社会保険医療協議会においても協議が行われております。
 都では、関係機関のネットワークや、病院を拠点とした後方支援など、在宅医療を推進するためのモデル事業を実施してきましたが、今後はこれらの成果を生かし、地域が一体となって、患者と家族を支える仕組みをつくることが必要だと思います。
 都は、現在、モデル事業の検証と今後の方向性を検討していると聞いておりますが、医療と介護の連携強化についてどのように取り組んでいくのか、お伺いいたします。

○杉村福祉保健局長 都は今年度、新たに在宅療養推進会議を設置いたしまして、モデル事業の検証とあわせて、病院と診療所の連携や、医療と介護の連携の方策など、今後の方向性について検討を行っております。
 来年度は、その中で得られた成果や議論を踏まえまして、地域包括支援センターや医師会等に区市町村が窓口を設置いたしまして、病院やかかりつけ医、介護事業者間の調整等を行う取り組みを支援してまいります。あわせて、地域連携を推進する在宅療養支援員の養成や、医療、介護関係者を対象に、多職種の連携を円滑に進めるための研修も開始し、医療と介護の連携を一層強化してまいります。

○林田委員 次に、高齢者施策についてお伺いいたします。
 我が党は、本会議代表質問において、高齢者施設の防火安全体制について質問し、都は、認知症高齢者グループホームへのスプリンクラー設置を、独自の補助等により促進し、今年度末には九五%の設置率を達成する見込みであるとのことであります。一方、自主事業として、高齢者を宿泊させるデイサービスセンターでも、東京消防庁と連携して立入検査を実施していると答弁がされました。
 デイサービスで行う保険外の宿泊サービスについて、介護保険法上の基準は設けられていません。都は昨年度から、認知症デイサービスセンターで、早朝、夜間の延長サービスや宿泊サービスなどを提供するモデル事業を実施してきましたが、どのように実施してきたのかお伺いいたします。

○杉村福祉保健局長 都は平成二十一年度、二十二年度の二年間、北区と西東京市におきまして、利用者が通いなれた認知症デイサービスセンターで、早朝、夜間の延長デイサービスと宿泊サービスを提供するモデル事業を行い、事業化に向けた体制や、サービス提供後の利用者や家族の変化など、その効果を検証してまいりました。
 その実施に当たりましては、介護保険法上の基準が設けられていないため、利用者の安全を確保するため、スプリンクラー等消防設備を設置すること、プライバシーに配慮するため、一人当たり七・四三平方メートル以上の宿泊スペースを確保すること、また、サービスの質を担保する観点から、一日当たりの利用定員を二名以内とすることといった、都独自の基準を設けて実施をしてきました。

○林田委員 都のモデル事業と同様、保険外の宿泊サービスについても基準等を設けるべきですが、国が必要な措置をとるまでの間は、都が利用者の安心・安全を確保する手段を講じる必要があります。
 本会議において、国の法整備を待つだけではなく、都独自の基準等について早急に検討すると答弁されましたが、どのような基準を設けるのか所見をお伺いいたします。

○杉村福祉保健局長 宿泊サービスを実施いたします通所介護事業所に対して求める都独自の届け出基準は、高齢者の尊厳の保持と火災時等の安全確保を基本といたしまして、都が実施した認知症デイサービスセンターにおけるモデル事業の検証結果などを踏まえ、策定することとしております。
 具体的には、責任者、利用定員、サービス提供場所といった基本的な届け出項目に加えまして、夜間の職員配置など人員に関する基準、消防法の遵守、一人当たり床面積など設備に関する基準、健康管理や緊急時対応など運営に関する基準などを主な内容とする予定でございまして、今年度中に取りまとめることといたしております。
 来年度は、この基準に基づき、事業者に対して届け出を指導するとともに、届け出情報について公表してまいります。

○林田委員 次に、多摩・島しょ地域についてお伺いいたします。
 多摩地域には多くの先端技術産業や大学、研究機関等が集積し、日本が誇るものづくりを支えるとともに、豊かな森林は、二酸化炭素の削減や水源の確保など、都市機能の保全に大きく貢献しております。
 また、島しょ地域は美しい自然や動植物など、島ごとに個性あふれる観光資源により観光客を魅了するとともに、広大な排他的経済水域を擁しております。国家的見地からも大きな役割を果たしていると思います。
 都が先般公表した「十年後の東京」への実行プログラム二〇一一でも、将来への指針の中で、多摩・島しょ地域の近未来の姿を描いておりますが、今後も東京が成長していくためには、多摩・島しょ地域の発展を欠かすことはできません。ますますその重要性が高まっている多摩・島しょ地域の潜在力、可能性について、知事の見解をお伺いしたいと思います。

○石原知事 東京は、二十三区部だけではなくて、都市機能と自然環境が融合した多摩、そして、あの豊かな海洋に恵まれた、しかもそれぞれの島が違った個性を持つ島しょの三地域が、それぞれの個性を発揮しながら相互に補完し、連帯、調和することで、世界に類のない大都市圏を形成していると思います。
 私も何年か置きに、各国の大使をヘリコプターに分乗させて、島に行き、最後は奥多摩の温泉に入れる、そういう接待といいましょうか、ピクニックをしていますけれども、どの国の大使もみんな、行くたびに驚嘆しまして、こんなに変化の激しい、変化の美しい、自然に富んだ首都というのは見たことないというんですが、とりわけその多摩地域には、多くの大学や研究機関が立地しているとともに、昨年は産業サポートスクエア・TAMAが開所しまして、最先端の産業も集積しつつあります。今後、ビジネスジェットの受け入れを契機として、横田飛行場の軍民共用化が実現しまして、幹線道路等都市交通ネットワークの整備がさらに進みますと、我が国を代表する物流拠点やものづくり産業拠点になることが期待されます。
 加えて、多摩・島しょ地域には、来訪者が年間三百万人を超える高尾山や世界自然遺産登録を目指す小笠原諸島に代表されるような、実に多種多様な観光資源が存在しております。
 また、我が国は陸地面積では世界で六十一番目の狭小な国ですが、領海と排他的経済水域では世界第六位の広さとなるわけであります。その四割を占めているのが東京なんです。広大な海底には、例えば南鳥島のような、レアメタル等の資源がほとんど手つかずのまま眠っておりまして、国際的にも大きな注目を集めております。
 今後も引き続き、多摩・島しょ地域の魅力を高めながら、両地域の潜在力を引き出し、東京のさらなる進化につなげていきたいと思っております。

○林田委員 石原知事の多摩・島しょへの思いをお聞きいたしまして、これからの施策をよろしくお願い申し上げます。
 多摩の市町村が長年にわたって招致活動を行い、その開催を待ち望んでいた平成二十五年の東京国体、スポーツ祭東京二〇一三の開催まで二年余りとなりました。
 多摩・島しょ地域を中心に東京都全域で開催するこの大会は、区市町村が競技会を実施する主役となり、地域の住民が全国から集まるアスリートたちの力とわざを間近に観戦するという、またとない機会となりました。
 また、国体は、地域で大会を盛り上げ、選手や観客に対するおもてなしなどにより、東京にある多様な魅力を全国にアピールしていくという、地域活性化の起爆剤となる事業であります。
 都においては今後、区市町村との連携により、全都を挙げた開催への取り組みをどのように進めていくのかお伺いいたします。

○笠井スポーツ振興局長 スポーツ祭東京二〇一三は、多摩・島しょの豊かな自然や歴史、文化など、東京の多様な魅力を全国に発信する絶好の機会でございます。開催時には、全国から多くの関係者や応援団が東京を訪れるため、区市町村と連携いたしまして、地域の観光資源をアピールし、東京ならではのおもてなしを工夫して、訪れる方々をお迎えしたいと思っております。
 また、国体における郷土文化の普及事業といたしまして展開する文化プログラムも活用するなど、単なるスポーツイベントにとどまらない祭典としても開催をしたいと思っております。
 今後、区市町村との一層の連携を図り、開催機運の醸成につながる広報活動を積極的に展開するなど、開催準備に万全を期し、スポーツ祭東京二〇一三を契機として、地域の活力を高めていきたいと思っております。

○林田委員 東京で国体を開催するのは五十四年ぶりということでもあります。各区市町村では、国体で地元を盛り上げていこうという強い意欲を持っております。こうした機会に競技施設の整備を行うとともに、競技団体との交流を深めて、実施競技が地域で愛されるスポーツとなるような取り組みが進められるべきだと思います。
 例えば、私の地元の福生市では、地元シニアソフトボールチームが全国大会でも活躍しており、実施競技であるソフトボールが一層地元に定着していくことが期待されております。
 区市町村が主役となって開催する国体を契機として、競技の普及が進み、東京全体でスポーツ振興が一層促進されるよう取り組むべきと考えますが、ご所見をお伺いいたします。

○笠井スポーツ振興局長 国体におきましては、四十の正式、公開競技と、五十のデモンストレーションとしてのスポーツ行事を、都内の全六十二区市町村で実施してまいります。
 この機会に、みずからが開催する競技が地元に定着し、大会終了後にも普及が進むならば、それは地域の大きな財産となるものでございます。
 そこで、都におきましては、平成二十三年度から二十五年度までの三年間、会場地区市町村が競技団体と協力して行うスポーツ教室などの競技に関連する事業や、競技の普及につながるPR事業等を対象といたしまして、区市町村に対する財政支援を実施することにいたしました。この事業の活用によりまして、都民のスポーツへの関心を高め、スポーツ都市東京の実現に向けた歩みを一層加速してまいります。

○林田委員 次に、林業振興について伺います。
 我が党は、都と歩調を合わせ林業振興を進めてまいりましたが、林道などの森林整備を初め、木材加工施設の充実、さまざまなイベントでの積極的なPR活動などにより、都民の間でも多摩産材が認識され始めました。
 都の山の木の多くが植林後約五十年を経過し、利用可能となった今、適正な森林整備を進めていくには、多摩産材の利用拡大に向けたさらに一層の取り組みが必要です。
 そこでまず、多摩産材の利用拡大に向けたこれまでの取り組みと、今後の予定を伺います。

○前田産業労働局長 多摩の森林では、お話しのとおり、植林後五十年を超える木が多いことから、伐採、利用、植栽、保育という森林の循環を再生する上で、多摩産材の利用拡大が不可欠でございます。
 都はこれまで、品質向上と新たな需要開拓に向けて、木材乾燥機などの施設整備とともに、モデルハウスや都民に身近な場所であります商店街のベンチの設置を支援しますなど、多摩産材の利用を進めてまいりました。
 こうした取り組みの結果、平成二十二年度の多摩産材の原木出荷量でございますが、平成十八年度の四倍に当たる約一万二千立方メートルになる見込みでございます。
 昨年、公共建築物木材利用促進法が施行されましたことから、来年度は、新たに民間へのPR効果が高い図書館などの、公共木造施設を整備する区市町村に対して支援を行いまして、多摩産材の利用を進めることを予定しております。
 今後とも多摩産材の利用拡大に積極的に取り組み、林業の振興につなげてまいります。

○林田委員 利用拡大に向けた取り組みを着実に行っていただけることはよくわかりましたが、他県では、県産材の利用拡大を図るため独自の施策を展開しております。例えば群馬県では、地域材を使った一般住宅を新築、改築するなどの場合に、施工主や購入者に補助を行っていると聞いております。都もこうしたよい事例を参考にしていただきたいと思います。
 さらに、将来にわたり多摩産材の活用を続けていくには、急峻な多摩の山における木材搬出のコストを下げ、安定した供給を実現する林道などの路網整備が不可欠です。
 現在、林道整備予算が平成二十年度と比べ約二・五倍に伸びていることに感謝しておりますが、全国レベルから見ると、林道密度はまだまだ中ほどであります。さらなる促進が必要と考えます。
 そこで、多摩における林道や作業路の路網整備の現状と、今後の取り組みについて伺います。

○前田産業労働局長 ご指摘のとおり、林道や作業路等は森林整備に欠くことのできない基盤施設でございます。都はこれまでも積極的に整備を実施してまいりました。
 平成二十一年度末までに、基幹となります林道について、多摩地区で三百二十キロメートルを整備するとともに、森林の所有者が行います林道の枝線に当たる作業路等の整備を支援してまいりました。
 来年度は、予算を今年度より約一億四千万円増額いたしまして、約十三キロメートルの林道等を整備する予定でおります。
 今後とも林道等の整備に積極的に取り組み、より広範な森林整備を可能とし、持続的な木材生産を実現することで、東京の森林の経済的な価値を高めてまいります。

○林田委員 次に、多摩ニュータウン事業についてお聞きいたします。
 多摩ニュータウンは昭和四十一年から整備が進められ、現在では人口二十一万人の緑豊かな多摩の核都市に成長しております。
 この間、経済環境の変化により、平成二十三年度末を期限とする多摩ニュータウン事業会計を設置するとともに、都債を確実に償還するための方策を講じるなど、収支改善に取り組んできました。
 会計の終了が間近となる中、会計設置後の経過と取り組みの成果についてお伺いいたします。

○河島東京都技監 都は、高度成長期の人口集中に伴う住宅難の解消と核都市育成のため、多摩ニュータウンの整備に取り組んできたわけでございますが、この間、経済状況の激変により宅地販売が困難となったことから、平成十三年度に、お話の事業会計の設置を含む事業の再構築を行いました。
 その後も不動産市況の低迷が続いたことなどもあり、平成十八年度から、一般会計からの繰り入れも行いながら都債償還を進めることとなり、宅地販売にさらなる努力を重ねてまいりました。
 この結果、平成十七年に約一千億円と見込まれた繰入金を約八百億円まで圧縮して、都債の償還を予定どおり完了する見込みでございます。
 また、会計終了時には、一般会計からの借入金約六百三十億円と、宅地等の資産約四百三十億円は一般会計に引き継がれる予定でございます。

○林田委員 都の収支改善に向けた努力は評価いたします。何よりニュータウンという財産を残したことは、大きな成果だと思っております。
 次に、国旗、国歌の指導についてお伺いいたします。
 先月二十八日の東京高裁判決において、都教育委員会が平成十五年十月二十三日に出した、入学式、卒業式等における国旗掲揚及び国歌斉唱の実施についての通達を、違憲、違法とした一審判決を取り消し、都及び教育委員会の主張が全面的に認められました。
 いうまでもなく、教員は教育公務員として、法令や学習指導要領に基づき、入学式や卒業式を適正に実施するために出した校長の職務命令に従う義務があることからすれば、極めて当たり前の判決であると考えます。しかし、一審原告の教職員は二審判決を不服として上告をいたしました。
 今回の東京高裁判決についての所見と、入学式、卒業式等における国旗掲揚及び国歌斉唱の実施について、改めて都教育委員会の決意をお伺いいたします。

○大原教育長 今回の東京高裁判決において、都教育委員会の主張が認められたことは当然のことであると考えております。
 都教育委員会は、学習指導要領及び通達に基づき、校長の権限と責任のもとに、入学式や卒業式が適正に実施されるよう、各学校を指導してまいりました。
 また、通達に基づく校長の職務命令に違反した教職員には、懲戒処分を課するとともに、服務事故再発防止研修を実施してまいりました。
 今後とも学習指導要領や通達に基づき、入学式、卒業式等における国旗掲揚及び国歌斉唱が適正に行われるよう、引き続き各学校を指導してまいります。

○林田委員 ぜひよろしくお願いいたします。
 次に、学校におけるスポーツの振興について伺います。
 先月のサッカーアジアカップにおきまして、日本チームが激戦を勝ち抜き、決勝戦では延長の末見事優勝しました。スポーツの明るい話題は、多くの人々に勇気や元気をもたらすものだと痛感いたしました。この延長戦の最後に得点した李忠成選手は西東京市出身であり、都立田無高校の出身と伺いました。今後ますます活躍することを期待いたします。
 また、先月京都で行われました全国都道府県対抗女子駅伝では、全国の中学生の中でトップの記録で走ったのは、昨年度の中学生東京駅伝で個人第一位だった町田市の中学三年生であり、将来のマラソンランナーとして嘱望されていると聞いております。
 東京都には、この中学生のようにすばらしい成績をおさめている子どもたちが他にもたくさんおり、称賛に値すると思います。子どもたちのスポーツにおけるすぐれた成果の顕彰は、他の児童生徒への相乗効果も期待できるものとして重要と考えますが、都教育委員会の取り組みについて伺います。

○大原教育長 都教育委員会は、昭和五十九年から毎年、児童生徒の著しい活動成果や他の模範となる善行を表彰し、広く都民にお知らせしてまいりました。
 平成二十二年度は、小中高校等の百二十五件を二月に表彰し、そのうちスポーツで顕著な成績を上げた児童生徒は約四割の五十三件でございました。例えば、水泳、体操競技、サッカーの全国大会で優勝した児童生徒やチーム、リトルリーグ世界選手権大会で優勝した少年野球チームなど、いずれも称賛に値するものでございました。
 都教育委員会は、今後ともスポーツや運動部活動で著しい成果をおさめた児童生徒の努力をたたえることにより、他の児童生徒の励みや目標とし、スポーツの一層の振興に努めてまいります。

○林田委員 次に、学校におけるスポーツの普及について伺います。
 平成二十五年には、スポーツ祭東京二〇一三を、平成二十六年にはインターハイを南関東四都県で開催することになりました。このため、子どもたちにはもっとスポーツのよさや楽しさ、そして努力することや困難に打ち勝つことの大切さを学んでほしいと思います。
 そこで、都教育委員会は、子どもたちがこうしたスポーツのよさを実感し、アスリートたちの生き方を学ぶことができるよう、どのように学校におけるスポーツ振興に取り組んでいくのか、所見を伺います。

○大原教育長 都教育委員会は、公立小中学校二百七十校をスポーツ教育推進校と指定しまして、授業前ランニング、縄跳びやボール投げ等の奨励により体力向上を推進してまいりました。
 さらに平成二十二年度には、児童生徒が直接アスリートの生き方や考え方に触れ、夢や希望を抱いて学校生活を送れるようにするために、オリンピック出場のトップアスリート十七人を一日校長先生として学校に招聘し、体育やスポーツ活動を充実させてまいりました。
 一方、都立高校では、これまで部活動予算の重点配付等により部活動の振興を図ってまいりましたが、しかしながら、全国大会に出場する運動部が少ないことから、スポーツの名門校づくりの一環として、平成二十三年度から、全国大会出場の常連を目指す七つの運動部を強化拠点として指定し、都立高校全体の競技水準の向上に努めてまいります。

○林田委員 子どもの体力向上の観点からも、健全育成の観点からも、子どもたちのスポーツの振興には引き続き努力していただきたいと思います。
 さて、次の日曜日、二月二十七日には、東京マラソン二〇一一が開催されます。
 都市型大規模マラソンの先駆けとなる東京マラソンは、五回目を迎え、三十三万人を超える申し込みがあるなど、我が国を代表するスポーツイベントに成長いたしました。チャリティーランナーを含む三万六千人のランナー、大会を支える一万人のボランティア、そして、百六十万人を超える沿道の観客が一体となる東京マラソンは、まさに「東京がひとつになる日」として定着してまいりました。これはまさに知事の情熱とリーダーシップのたまものであり、石原知事なくしてはなし遂げられなかった平成の偉業であります。
 そこで、大会を四日後に控え、改めて東京マラソンへの思いを、創設者であり大会会長である石原都知事にお伺いいたします。

○石原知事 マラソンはおっしゃるとおり、参加して走る人が今回は三万六千人、それから、いろいろ整理をしてこれを支える人が一万人、そして観客としてこれを応援する人がおよそ百六十万人の予定ですけれども、それが一つになって、この東京に住んで集う人々に高揚感をもたらして、都市の姿を一変させる力を持っております。
 こうした力で社会に漂う閉塞感に風穴をあけて、東京から日本全体に強い風を送りたいなと思って、東京マラソンを創設しました。
 ことしで五回目の大会となりましたが、わずか数年間でゴールドラベルを獲得しまして、世界のメジャーマラソンと肩を並べるまでに成長しました。今や単なるマラソン大会の枠組みを超えて、この東京を舞台とした一大イベントとなってまいりました。
 経済効果もなかなかのものでありまして、二百億円以上と見込まれております。
 そうした経済面だけではなくて、この東京マラソンを通じて、国や民族、世代などを超えた人と人のつながりの大切さ、そして我々人類が大きな負担をかけている地球環境の問題など、世界に向けて非常に大事なメッセージを発信してきましたし、また、いきたいと思います。
 さらに、今度の大会では、日本で初めて本格的なチャリティーを導入しまして、一人一人の社会に対する思いを東京マラソンが集めてつなぐことで、寄附文化を我が国に根づかせるよすがとしていきたいと思っています。
 今後も、年一回のマラソン大会だけではなく、年間を通じて多彩な事業を展開するなどして、常に新しいチャレンジを続け、東京マラソンを名実ともに世界最高峰の大会に進化させていきたいと思っております。
 ちなみに、最初の年は申し込みは九万五千人でありました。今回はそれをはるかに超えて、三十三万五千人の方々が応募してくださいました。

○林田委員 ぜひ、天気もよさそうですので、大会を成功させていただきたいと思います。大いに期待を申し上げまして、私の総括質問を終了させていただきます。ありがとうございました。(拍手)

○高橋副委員長 林田武理事の発言は終わりました。
 この際、議事の都合により、おおむね三十分間休憩いたします。
   午後五時三十二分休憩

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