予算特別委員会速記録第七号

○酒井委員長 ただいまから予算特別委員会を開会いたします。
 これより付託議案の審査を行います。
 第一号議案から第二十九号議案までを一括して議題といたします。
 この際、部局別質疑について申し上げます。
 去る三月十五日に議長を通じ各常任委員長に依頼してありました部局別質疑につきましては、お手元配布のとおり報告がありました。ご了承願います。
 これより締めくくり総括質疑を行います。
 順次発言を許します。
 和田宗春副委員長の発言を許します。

○和田委員 初めに、平成二十二年度予算について伺います。
 二十二年度予算は、堅実な財政運営に努めつつ、救急医療体制の充実など、都議会民主党が昨年の都議選で掲げた施策がおおむね反映されています。
 来年度予算は、いわば石原都政の集大成としてだけではなく、次の知事にバトンを渡す、将来に向けた布石ともいうべきものでなければなりません。一兆円を超える基金残高を積み立てるなど、将来にわたる強固な財政力を確保したことになります。
 国にあっては、中期的には景気の一部に明るい兆しが見えるものの、依然としてデフレや雇用など、なお懸案材料が存在しております。また、長期的に見ましても、人口減少社会という社会構造の大きな変化を迎えつつある中にあって、税収の大きな伸びを期待することができません。
 東京都にあっては、社会保障や都市基盤施設を新しくするといった諸課題が山積しており、都民の不安を払拭する必要があります。
 こうした状況を踏まえ、都は二十二年度予算でどのような手だてを講じたのか、幾つか論点を絞って質問をしてまいりたいと思います。
 まず、国や地方自治体の財政状況が厳しさを増せば増すほど、基金残高のこれのみをとらえて、東京都が財政的に豊かであるという東京富裕論が展開されるおそれもあります。改めて、都財政にとって一兆円の基金残高を確保したことの意義を伺うものであります。

○村山財務局長 過去二十年間の都税収入の変化を見ますと、三度にわたり大幅な減収に見舞われております。一度目は、平成三年度から六年度の三年間で一兆円の減少でございました。二回目が十三年度から十五年度の二年間で四千億円の減、そして三度目が今回でございまして、二十年度から二十二年度の二年間で一・一兆円の減ということになってございます。これは、いわば都財政の宿命ともいえる構造的特質でございます。
 また、都は地方交付税の不交付団体でございまして、また、首都機能を維持発展させるためのインフラの整備、更新需要への対応という必要性などを踏まえますと、現在はもちろん、将来においても都がなすべき役割をしっかりと果たしていくためには、しかるべき規模の基金残高を確保していることが不可欠でございます。
 だからこそ、二十二年度予算におきましても、苦労しながら一兆円の基金残高を確保したものでございます。仮に、このことをもって東京が富裕であるというご指摘があるとすれば、それは都財政の特質を全く理解していないものであると考えております。
 また、現在の残高につきましても、今後も財政環境の変動が予想される中、これでよしというふうには思っておりませんので、引き続き、財政の対応力をより高めるために堅実な財政運営を行ってまいります。

○和田委員 私が申し上げた基金残高の額の問題は、地方自治体もそうですし、国もそうですが、やはり額だけを見て、なるほど、これだけ一兆円あるんなら豊かじゃないのという短絡的なお考えをされる向きも多いわけです。それは都民にもあります。そのところをより具体的な形で、このためだよと、今私どもに説明したような形で、その説明を都民にするという工夫をぜひお願いしておきたいというふうに思います。
 次に移ります。
 どこよりも急速に少子高齢化が進む我が東京において、都民の命と生活を守るためには、先ほど答弁のあった大都市特有の課題にもしっかりと対応していくことが求められていることは間違いありません。
 来年度予算において、東京の福祉サービスの水準を維持発展させていくために、どのような具体的な策を講じたのか、お伺いをいたします。

○安藤福祉保健局長 都民の将来の安心を実現するためには、少子高齢化への積極的な対応を図っていく必要があり、平成二十二年度予算案ではさまざまな工夫を凝らした取り組みを進めることとしております。
 まず、少子化打破緊急対策として、子育て支援分野では、認証保育所の補助単価の見直しによる定員拡大の促進や、パートタイム労働者等にも利用しやすい定期利用保育事業の創設など、待機児童解消に向けた取り組みを図るとともに、民間事業者の参入を促して、開所時間を延長する都型学童クラブを創設いたしました。
 さらに、医療分野では、子ども救命センターの創設や小児医療ネットワークを構築するなど小児救急医療体制の強化を図るとともに、NICUの増床に向けた支援を充実するなど周産期医療体制の強化を図ってまいります。
 また、老後の不安に対しましては、住まいPTの検討を踏まえ、ケアつき住まいの整備や、要介護度の比較的低い低所得の高齢者が利用できる小規模な軽費老人ホームの整備を図るとともに、在宅の高齢者を二十四時間体制で支援するシルバー交番を設置いたします。
 こうした取り組みに加え、低所得者対策、障害者の地域生活支援や新型インフルエンザ対策などを講じており、将来にわたって都民の安全と安心をより確かなものとしてまいります。

○和田委員 今、答弁にありましたとおり、年齢や環境を超えて幅広く二十二年度予算には目配りがされているというふうに我が会派も評価するものですが、それにつけても、いろいろな課題が年度間を通じて出てまいりますので、柔軟にこれに対処していただく。年度で決めたことだから、それ以外仕事はしないよということではなくて、ぜひ柔軟な対応を求めておきたいと思うんです。
 次に参ります。
 新たな雇用を生み出し、すそ野の広い税源を育てていくためには、新分野の産業を育成すること、これが東京の成長力をより高めていくことであると私は考えているんです。
 来年度予算において、どのような東京の産業の将来像を掲げて具体的な施策を講じようとしているのか、お伺いをいたすものであります。

○前田産業労働局長 東京には、多種多様な産業と、これを支える高度な技術を持つ中小企業やすぐれた人材が集積するという強みがございます。こうした強みを生かし、東京の産業を将来に向けて持続的に発展させていくためには、中小企業の経営基盤をより強固なものにするとともに、環境、医療を初めとする成長性の高い産業分野を育成し、新事業を創出していくことが重要であり、雇用の創出にもつながるものと認識しております。
 都は、このうち成長性の高い産業分野について、「十年後の東京」計画に基づき、東京の将来を支える創造的都市型産業として重点的かつ戦略的に育成することとしております。来年度は都市課題解決のための技術戦略プログラムを実施し、都市課題の解決にも資する環境などの産業分野において、中小企業の新技術、新製品の開発や事業化を支援してまいります。
 こうした支援を行うことにより新事業の創出を図り、東京の成長の産業へつなげてまいります。

○和田委員 次に参ります。
 昭和三十年代、いわゆる高度経済成長期に整備されている東京都の社会資本がいよいよ耐用年数を迎えつつあります。首都としての機能を維持するとともに、安全性をより高めること、これも大きな課題となっているのであります。
 来年度の予算では、こうした膨大な一気に噴出してくる道路や橋梁を維持し、更新していくため、どのような考えを持って対処されようとしているのか、伺うものであります。

○道家東京都技監 都はこれまで、道路施設の管理に当たりまして、道路の舗装や橋梁、トンネルなどの定期的な健全度調査を行い、その都度、適切な補修、補強を実施することで安全を確保してまいりました。
 しかしながら、都が管理する橋梁の多くは、高度経済成長期に集中して建設されたため高齢化が進み、このままでは、近い将来、一斉に耐用年数を迎えることから、更新時期の平準化と総事業費の縮減を図るとともに、より安全性を高めるため、平成二十年度に橋梁の管理に関する中長期計画を策定いたしました。
 この計画に基づき、資産運用の手法であるアセットマネジメントを活用した予防保全型管理を進めており、二十二年度は、隅田川にかかる著名橋の白鬚橋や、環状七号線の神谷陸橋などで長寿命化工事を実施いたします。
 今後、予防保全型管理を橋梁以外の施設にも拡大し、安全・安心を確保しながら、既存のインフラを最大限活用した環境負荷の少ない成熟した都市づくりを推進してまいります。

○和田委員 それぞれの局長から、つかさ、つかさの来年度に向けての抱負を述べられました。
 ここで、知事にあるいは知事本局にお伺いいたしたいと思うんですが、二十二年度は石原知事最後の一年となります。知事としては、都政のどこに最重点を置いて任期を全うされようとしているのか伺うものであります。

○石原知事 私があずかる都政の今度の予算は集大成とおっしゃいましたが、三期目の予算はまだもう一回ございます。またいろいろご協力賜りたいと思いますが、いずれにしろ、就任以来、財政の健全化に取り組んで、本当に議会の協力もありまして、財政再建を何とかやってこれたと思います。
 あわせて、国に先んじて、先進国のどこでもやっている公会計の制度も変えました、複式簿記・発生主義ということで。そういうことで、また外部監査もそれに合わせて厳しく行ってもらいました。行財政運営の本質的な改良を行ってこれたと思います。
 二十二年度予算におきましても、これまで培ってきた、そうした財政基盤を生かしまして、地球環境問題や少子化対策、日本の競争力を強化するインフラの整備など、将来を見据えた取り組みを進めていきたいと思っております。
 いずれにしても、三期目の最後の年ということでなしに、これまで同様、今なすべきことを果断に確実に実行していきたいと思っております。東京をさらに変革することで、我が国を混迷から再生へとよみがえらせていきたいと思います。そのためにも、これからも渾身の努力をするつもりであります。

○和田委員 任期を全うするまでしっかりやるという強い意思を受け取ったわけでありますが、ぜひぜひその決意を緩めずに、最終最後までお願いを申し上げたいと思います。
 次に、特別区、市町村行政について伺います。
 平成十九年度には、都市計画公園整備事業における面積要件が一ヘクタール以上となりました。二十一年度では交付金額は百九十億円までに引き上げられていますが、まだまだ不十分と考えているのであります。
 特別区都市計画交付金は、もともと都市計画が特別区の区域では都税とされている中で、特別区の都市計画事業の財源とされています。
 そこで、特別区の主張である、都区双方の都市計画事業の実績に見合った配分にすべきであると考えますが、いかがでありましょうか。

○中田総務局長 特別区が実施します都市計画事業につきましては、大規模、臨時、特例的な事業はお話の特別区都市計画交付金で、それ以外の特別区がひとしく行う事業につきましては特別区財政調整交付金で対応するという考え方に基づきまして、円滑な事業促進を図ってまいりました。
 都市計画交付金の財源でございます都市計画税は、地方税法上、都市計画法に基づいて行う都市計画事業、または土地区画整理法に基づいて行う土地区画整理事業に要する費用に充てるために都が賦課徴収する目的税でございまして、都が実施する都市計画事業に充当することが義務づけられております。
 したがいまして、都市計画税は、都区財調における調整三税のように、法律により特別区にその一定割合を配分することとされている税とは制度上の性格が異なるものでございまして、都としては、都市計画税を都区双方の都市計画事業の実績の割合で配分するという考え方はとっておりません。
 いずれにしましても、都はこれまでも、区の都市計画事業の実施状況等を見きわめつつ、交付金の予算額の確保に努めてきたところでございまして、今後とも適切に対応してまいります。

○和田委員 特別区も大きく成長してまいりました。都区のあり方の相互の検討委員会などもあったりして、それぞれの主張を突き合わせる機会も多くなっているのです。したがって、昔のようなか弱い特別区という扱いではなくて、年々成長してきている特別区の自治権、そういうものに対して、もっと東京都は温かい目を向けていくべきだというふうに私は考えているものですから、筋論は筋論としてわかるんですよ。しかし、そこの辺のところが制度突破の大きなきっかけになるということが、区長会などの意見になっているということをよく知っておいていただきたいと思うんです。
 次に、交付対象事業や面積要件などの基準を取り外して、すべての都市計画事業を対象にすべきではないのか、枠を取り外したらどうなんだということについての見解を伺います。

○中田総務局長 現在の都市計画交付金の対象事業は、都市計画道路整備事業、都市計画公園整備事業、連続立体交差化事業など七事業でございまして、うち都市計画公園整備事業につきましては、面積一ヘクタール以上十ヘクタール未満という面積要件を設けております。
 先ほど申し上げました特別区の実施します都市計画事業の財源に関する考え方、大規模、臨時、特例的な事業は都市計画交付金で、それ以外のひとしく行う事業につきましては財政調整交付金で対応する、こういった考え方の趣旨にかんがみますと、現行の対象事業や面積要件につきましては適切なものと認識しております。
 今後とも、特別区におけます都市計画事業の実施状況や動向等を勘案しつつ、適切に対応してまいります。

○和田委員 頭を柔軟にということだけにとどめておきたいと思うんです。
 また、区施行による都市計画道路や連続立体交差事業、これは大変な問題でありますけれども、この整備を促進するために、平成十六年に策定した区部における都市計画道路の整備方針あるいは踏切対策基本方針に基づいて急ぐこと、すなわち整備を早急化させるということが必要と考えますが、平成二十二年度の取り組みに向けて、その方針を伺うものであります。

○河島都市整備局長 都市計画道路の整備方針や踏切対策基本方針は、人や物の流れの円滑化、地域のまちづくりなどを目的といたしまして、優先的に整備すべき箇所を計画的、効率的に推進するため策定したものでございます。
 現在、これらの方針等に基づき、区が事業認可を得て施行している都市計画道路は、木造住宅密集地域である東池袋地区の補助一七五号線など八十一カ所、延長約二十九キロメートルとなっております。
 また、区施行による連続立体交差事業では、都内で初めてとなる足立区の東武伊勢崎線竹ノ塚駅付近につきまして、平成二十二年度内の都市計画決定を目指し、諸手続を進めているところでございます。
 都は、これらの事業を円滑に進めるため、必要な財源を確実に配分するよう、国に対し強く求めるとともに、技術的な支援に努めるなど、区施行事業の一層の推進を図ってまいります。

○和田委員 踏切事業は、救急車やパトカーでもそこに来るととまらざるを得ない、そういう究極の一つの障害になっているんですね。当たり前のことでありますが、それによって貴重な財産や生命が失われる可能性がそこに存在するわけでありますから、そういう喫緊のテーマであるということをぜひご認識いただきたいと思うんです。
 次に移ります。
 この三月二十四日でありますが、埼玉地裁で一つの和解が成立をしました。それは、障害者自立支援法をめぐる違憲訴訟であります。和解条項には、国は障害者世帯の実態調査をせず応益負担を課して混乱を起こし、障害者の尊厳を傷つけたことを反省するというのが和解条件になっているんです。これに関連して質問いたします。
 障害者自立支援法が施行されたことに伴う市町村の超過負担についての都の財政負担であります。法律によりますと、障害程度区分と支給決定手続の導入、国、都の負担義務化と負担上限額の設定、統合補助金としての地域生活支援事業への移行が実施されているんです。
 これらの制度変更によって、東京都の市町村の心身障害者児はもとより関係者は、心身障害者児の通所訓練等事業、あるいは精神障害者共同作業所、通所訓練事業で使用されている施設が地域活動支援センターに移行した場合、サービスが低下するんじゃないかという不安をいつも我々に訴えてくるんです。
 この心配を解消するためにも、都単独の補助金を上乗せする、こういうことを考えるわけでありますが、いかがでありましょうか。

○安藤福祉保健局長 お話の地域活動支援センターは、地方交付税及び国庫補助事業である区市町村地域生活支援事業により区市町村が実施しておりまして、都は補助事業に関し、法定負担割合の四分の一を負担しております。
 地域生活支援事業は、国から事業実施に必要な額が交付をされておりません。このため、区市町村に超過負担が大きく生じておりますことから、都は国に対しまして、十分な予算措置を行うよう要望しております。今後も引き続き働きかけてまいります。

○和田委員 超過負担に目を転ずると、そこに実像が浮かび上がってくるんですね。そこのところをしっかり直視をしていただきたいというふうに要望しておきます。
 次に、公契約制度について伺います。
 石原知事は、平成二十二年度予算に当たって、雇用対策を重視している見解を述べています。これは、都がかかわりを持った職場で、いわゆるワーキングプアをなくしていく、これを率先するということではないでしょうか。私はそう理解したんです。
 厳しい経済状況を背景に、国や都を初めとする地方自治体の公共調達においては、公共サービスの効率化、コストダウンの要請が高まるとともに、激しい受注競争の中で公共工事や委託事業における低価格、低単価の契約、発注が増大しています。そのために、受注先企業の経営悪化、労働者の賃金、労働条件の著しい低下を招くというこの連鎖を発生しているわけであります。事業を受託した企業や事業体も、仕事の確保を優先する余り、低価格での契約を締結せざるを得ない状況なのであります。
 一方で、行政や公共サービスに対する国民の要望も高まっており、質を落とすことなく、さらに効率化が求められているのが現状であります。公共調達においては、効率化原理のみが優先されるのではなく、公共性や普遍性の原理が併存されるべきであります。すなわち、価格だけでなく、品質や労働者の適正な労働環境などの確保が図られるべきであると考えますが、都の見解を伺います。

○村山財務局長 東京都の入札契約制度におきましては、コストのみならず、透明性、競争性、品質確保の三つの要素のバランスがとれた契約の実現を目指しております。そのため、都では、技術力などを評価する総合評価方式を導入するなど、入札契約制度の改革によって品質の確保を目指しているところでございます。
 労働環境についてでございますが、我が国においては、賃金や労働条件は、法制度上、各企業ごとに労使の間の交渉により自主的に決定される仕組みとなっております。国がそれを下支えするために、最低賃金法や労働基準法などで基準を定めております。
 東京都の契約に当たりましても、こうした我が国の法制度にのっとり、最低賃金法や労働基準法などの法令遵守を義務づけることによりまして、労働環境の確保を図っているものでございます。

○和田委員 現状では、単に最低賃金などの、ただいま答弁のあった法令遵守を求めるだけでは、自治体がかかわる、いわゆるワーキングプアは解消できないといわざるを得ません。
 私は、公契約は民間契約とどこが異なるのかと。それは、住民の税金を使う公共事業で利益を得ている企業、事業者は労働者に人間らしい労働条件を保障するべきであり、発注者たる公的機関は、それを確保するための責任を負っていると考えているのであります。
 そうしたことからいえば、公契約は、低賃金や労働条件を低下させる圧力をかけさせないだけでなく、より適正な賃金や労働条件を確保するための手段でなくてはならないはずであります。
 都が十二兆円に上る予算を持ち、雇用、景気回復の原動力であるとみずからが認識したとき、よりよい労働条件を企業や事業者に義務づける公契約制度が今こそ必要と考えるのでありますが、都の見解を求めます。

○村山財務局長 ただいま申し上げましたとおり、我が国においては、賃金や労働条件は、各企業ごとに労使の間の交渉により自主的に決定される法制度となっておりまして、東京都の入札契約制度はこうした法制度に立脚しております。
 お話の公契約制度のコンセプトは、こうした我が国の制度的な前提を超えて、受注した各企業が労使交渉で合意し決定した賃金とは異なる水準の賃金の支払いを、契約により受注者に対して義務づけようとするものと理解しております。
 この考え方をめぐりましては、各企業が労使間で決定した賃金をさらに上回る賃金を発注者である国や地方自治体が企業に強制することの是非や、賃金を最低賃金を上回る水準に設定する際に、いかにしてその合理性、適正性を確保するか、さらには、そうした賃金水準が企業の経済活動にどのような影響を与えるかなど、労働政策や産業政策の観点から整理、検討すべき課題が少なからず指摘されております。
 同時に、契約制度の側面から見ても、発注者が設定する賃金水準によっては、技術力があるにもかかわらず経営余力が十分でないために賃金水準を高くできない中小企業が結果的に入札から排除されてしまうおそれもございまして、入札の公正性の観点から検討すべき点もございます。
 したがいまして、お話の公契約制度につきましては、今後の我が国の労働政策や産業政策のあり方の基本に立ち返って、立法措置上の問題として十分に検討した上で、国家として判断すべき問題であると考えております。
 都の入札契約制度にも影響がございますことから、今後とも国の検討状況を注意深く見守ってまいります。

○和田委員 局長の答弁は、国のやるのを見ましょうよというようなお考えであります。
 一方で、千葉県の野田市などは完全に実行しているという自治体もあるんです、規模はともかくとして。ここができて、ここができないというのは不可思議だなと思うのでありますけれども、とりあえず注目をしながら、国の動きあるいは他国の動きなどというふうに私も理解いたしましたけれども、積極的に公契約とは何ぞやというところにぜひ注目をして検討いただきたいというふうに思うんです。
 次に、築地市場の移転問題について伺います。
 今定例会では、この間、本会議の代表質問や一般質問、予算特別委員会あるいは経済・港湾委員会において、さまざまな議論をしてまいりました。特に私たちが予算修正の対象だと考えている用地取得費の一千二百六十億円については、東京ガスの費用負担のあり方など、かなり細かい質疑をしてまいりました。確認の意味を込めて何点か伺います。
 私たち民主党がマニフェストで築地市場の強引な移転に反対している理由の一つは、移転予定地の安全性が確保されていないことであります。このことは、表現の違いこそあれ、石原知事も私たちも同様の認識ではないかと考えています。
 豊洲予定地は、かつて東京ガスが、平成十四年に東京都と協議しながら当初計画を上回る土壌汚染対策費を、あるいは対策を実施し、平成十九年には完了届を提出し、東京都もそれを受理しているわけであります。しかし、その後の調査で環境基準の四万三千倍のベンゼンが検出されたことであります。このことなどを踏まえれば、専門家の提言あるいは実証実験の結果だけをもって豊洲が安全だというのは、都民の理解は得られないのではないでしょうか。
 東京都にとりましても、新しい市場の開場に当たっては安全が確保されることが大前提であると考えますが、まず、その認識について伺います。

○岡田中央卸売市場長 卸売市場は食の流通機能を担う重要な施設であり、中でも築地市場は、国内外から大量かつ多品種の商品が集まる首都圏の中核的な拠点市場として、都民の豊かで安定的な食生活を支えております。
 また、世界に冠たる築地の水産は生の食材を取り扱うことから、その流通過程におきましては、衛生管理や鮮度管理の徹底が不可欠なものとなってございます。
 開場させるに当たりましては、汚染された土壌が無害化され、安全な状態になっていることが前提と考えております。

○和田委員 安全の確認が前提ということは私どもも全く同じ、当たり前のことを当たり前にするということが、やはり行政の大きな要諦だと私は考えているんです。
 私たちは、豊洲の安全を確保するためには、土壌汚染対策法に基づく手続を踏まえるべきだということを再三述べてまいりました。
 そこで、東京都のいう無害化された安全な状態というのはどういう状態を指すのでしょうか、見解を伺います。

○岡田中央卸売市場長 土壌の汚染が環境基準以下になることを指すと考えております。

○和田委員 ただいまの、これまた当たり前の答弁でありますが、当たり前にそれを守っていくことがいかにつらいことで厳しいことか、今の答弁はこれからの市場問題を考える上で大変重要な発言であり、そしてまたそれは、それをしっかり守るということが、大きな私どものお互いの契約というか、お互いの認識ということを理解させていただくものであります。
 次に移ります。
 また、私たちは、関係者の合意が得られないことも強引な移転反対の理由というふうにしてまいりました。今後、仮に晴海への仮移転案や機能分散化案などの現在地再整備を検討するにせよ、また逆に、豊洲の安全性が確認されて実際に移転するにせよ、いずれにしても、市場で働く事業者の合意を得るために、ひたすら努力をしていかなければなりません。
 そこで、新市場の整備を検討するに当たっては、事業者の合意形成がなされるべきと考えますが、見解を伺います。

○岡田中央卸売市場長 卸売市場は生鮮食料品の流通施設であり、その整備に当たりましては、そこで営業する多くの事業者の状況や意見を十分に踏まえる必要があります。
 築地市場の豊洲への移転は、業界団体との協議におきまして最終的に意見集約されたものではありますが、それぞれの事業者は、事業や経営上の課題、後継者問題などに直面してございます。このため、本年一月から、水産及び青果の仲卸業者を対象に個別面談を実施し、一人一人の声に丁寧に耳を傾けているところでございます。
 事業者それぞれの状況や意見に即して、新市場整備を納得していただけるよう努力することは、行政にとって重要なことであります。今後とも、引き続き理解を得られるよう努力してまいります。

○和田委員 理解を得るように進めていくことは重要だというご答弁もいただいたわけでありますけれども、ぜひぜひその趣旨をしっかりかみしめて実行に移していただきたいということを求めておきます。
 さて、私たち都議会民主党が求めているのは、現在地再整備を改めて検討することであり、やみくもに市場機能をとめようと思っているわけではありません。もし仮に市場機能がとまるようなことがあれば、その責任は、築地市場を取り巻くさまざまな状況が変わっている中で、再検討さえしようとしない石原知事、あなたにあるのであります。
 都議選後、石原知事は、必要なら専門家を入れてもう一回検討したらいいと述べていらっしゃいます。私たちは、都議会の中に立ち上げた築地市場の移転・再整備に関する特別委員会において、積極的に現在地再整備を検討していきたいと考えています。
 議会における検討結果については、知事も重く受けとめるべきと考えますが、見解を伺うものであります。

○石原知事 現在地再整備は、平成三年から八年まで六年間に及んで四百億円という膨大な経費を投じて実施しましたが、結論はノーでありました。その後もさまざまな検討を行い、議論を尽くした結果、関係者の大多数が、経済性も考え、最も合理的な選択として最終的に豊洲移転を決定したわけであります。
 しかし、議会として、現在地再整備についても改めて検討した上で、業界の大多数が納得し得る案を検討していくことは大変結構だと思います。その結果については真摯に受けとめたいと思います。

○和田委員 知事も真摯に受けとめたいという答弁で結ばれました。この言葉もしっかり受けとめてまいりたいと思います。
 また、現在地再整備の検討について、議会で行うことはもとよりでありますけれども、執行機関側も、みずからの立場に立って現在地再整備について検討すべきであります。
 そのための組織を設けるべきと考えますが、その見解を伺います。

○石原知事 議会において現在地再整備の検討がなされる場合には、議会の検討への協力のためにはもとより、執行機関としてこれを対応するためにも、現在地再整備検討の組織を設けていく必要もあると思います。

○和田委員 組織を設ける必要もあるというふうに、知事も明確にご答弁をいただきました。
 次に移ります。
 私たち都議会民主党は、現在地再整備の検討を担保するためには、豊洲新市場予定地の用地取得費の削減が必要であると考えてまいりました。したがって、議会での検討結果が出され、その必要性が認められるまで、当然にして予算の執行についても凍結すべきと考えます。
 新市場の整備に当たっては、議会の合意を踏まえて対処すべきと考えますが、石原知事の見解を伺います。

○石原知事 二元代表制のもとにおいては、長と議会は独立、対等の関係に立っておりまして、相互に協力して自治体運営に当たる責任を持っております。こうした観点から、議会の合意に示された議会の意思については、これを尊重していきたいと思っております。

○和田委員 二元代表制、そして議会の意思を尊重するという知事の答弁を得たものであります。
 総括いたしますと、本日、石原知事は、議会と執行機関それぞれが現在地再整備を検討していく組織を立ち上げる、このように明言した上で、土地取得の予算執行については議会の合意を尊重すると約束されました。
 平行線をたどってきた今までの議論が、知事の方針の大転換によって、本日ようやく交わり、新市場の議論は新たな局面に入ったと私は断ずるものであります。今後は、議会、執行機関双方が、真に都民の利益となる新市場に向けて、ともに努力をして励んでいくということを申し上げておきたいと思います。
 次に、新銀行東京について伺います。
 新銀行東京については、設立当初からその手続に疑問が呈されておりました。
 その直前まで考えていないと答弁していた四百億円の追加出資にいたしましても、多くの都民からの反対の声が寄せられたのは、新銀行東京そのものが石原知事のトップダウンによる政治銘柄であることに対する一種の都民の拒否反応ではなかったのでしょうか。
 そこで、まず、二十年度の追加出資について伺います。
 四百億円の追加出資が盛り込まれた平成二十年度決算は不認定とされました。地方自治法二百三十三条第六項によれば、地方公共団体の長は、決算の認定に関する議会の議決などを総務大臣に報告しなければならない、こう規定されています。また、その解説書では、議会が決算の認定をしない場合には、六項の規定による報告に、議会が認定しない旨と、これに対する長の意見、この場合には石原知事ですけれども、添付する必要があるとされています。
 そこで、石原知事は、決算を不認定とする意見として、どのような資料を添付して総務大臣に報告したのか伺うものであります。

○新田会計管理局長 地方自治法におきまして、決算にあわせて総務大臣に報告するものとして義務づけられておりますのは、認定に関する議会の議決及び監査委員の意見のみでございます。
 都では、この地方自治法の規定に基づいて決算を報告しておりまして、お話にございました決算の不認定に対する知事の意見は付しておりません。

○和田委員 議会が決算の認定をしない場合には、六項の規定による報告に、議会が認定しない旨と、これに対する長の意見を添付する必要がある、先ほど申し上げたのと同じようなことでありますけれども、改めてその見解を伺うものであります。

○新田会計管理局長 長の意見の添付につきましては、地方自治法に関する参考文献の中にそうした記載があるにすぎず、法令上、義務づけられているものではございません。
 都では、地方自治法の規定に基づきまして、適正に決算を総務大臣に報告しており、既に受理されております。

○和田委員 私は、この決算不認定の昨年の決算委員会の最前線にいましたから、最終的にどのように処理されているのかということに関心を持っていたんです。
 私のいう解説書というのは、事務次官等が、権威ある解説書として書いてあるものであり、地方自治を勉強する人は必ずこれを読むといわれているような権威ある解説書であります。これが東京都によって無視されたというようなことは大変残念であるということを申し述べておきたいと思います。
 次に、新銀行東京と信用金庫との関係について伺います。
 新銀行と信用金庫とは、開業以来、信金協調保証として、実行件数で七千二百二十一件、金額で九百七十四億円の保証実績を上げてまいりました。しかし、追加出資の議論に、東京都は、二百八十五億円の債務不履行のうち、信金協調保証の債務不履行は五百六十件、六十五億円と答弁し、これが全体の二三%を占めていることが明らかになりました。
 そもそも平成十六年三月十八日の財政委員会において、都議会民主党が、保証するのは簡単だが、信用金庫のモラルハザードを招いてしまっては意味がない、この質問をいたしました。これに対して東京都は、信用金庫にもリスクの負担をしてもらう一部保証であるために、モラルハザードが起こる可能性は極めて低いと答弁しておりました。
 そこで、現在における信金協調保証における債務不履行の件数と額について確認するとともに、信金協調保証でなぜ六十五億円の債務不履行が生じてしまったのか、そもそも東京都の制度設計が間違っていたのではないか、東京都の認識を伺います。

○前田産業労働局長 新銀行東京は、信用金庫などの地域金融機関との間で、中小零細企業への支援を効果的に行うため、さまざまな局面で幅広く協調することとしており、今お話しの信金協調保証もその一つでありました。
 こうした理念は正しかったと思いますが、結果として想定を大幅に上回るデフォルトが発生いたしました。これについて、昨年二月に新銀行東京が公表いたしました外部調査報告書では、旧経営陣により、信金協調保証を含む小口定型三商品について想定を大幅に上回るデフォルトを発生させるような融資や保証が行われ、また、危機的なデフォルトの発生状況に対して抜本的対策が講じられなかった、この旨、指摘されております。
 なお、信金協調保証を含めまして、デフォルトの件数及び金額につきましては、競争上の地位を害するおそれがあるため、新銀行東京は他の金融機関と同様に公表しておりません。

○和田委員 決算でもお伺いしたんです。一定の時間が過ぎたデフォルトについては、やはりこれは一種の情報公開でありますから、ご自分の、我々の銀行の、皆さんの銀行の都合の悪いことは伏せて、いや、収益は十億円入りましたよということだけを報ずるというのは、私は情報の公開の偏りではないかと思うんです。そのことだけを申し上げておきます。
 この信金協調保証の反省に基づいて、再建計画では新型保証という商品を打ち出し、相互に信頼できる金融機関に限って提携していくとの方針を答弁していました。つまり、信金協調保証では信頼できない信用金庫があったということであります。
 十二月の代表質問で、再建計画で二百億円と見込んでいた新型保証の実績がゼロであることについて、東京都は、経済情勢の急激な悪化の影響などにより商品化には至っていない、先ほどと同じですけれども、そう答弁していました。しかし、再建計画が提案されたのは、既にサブプライムローンに端を発した世界金融危機後のことであり、全く理由にはなりません。まさに再建計画自体がいいかげんなものであったと、こういえるのではないでしょうか。
 新型保証の現在の実績をお尋ねするとともに、商品化の見通しについて確認をいたします。

○前田産業労働局長 一昨年、平成二十年九月の、いわゆるリーマンショックに端を発しました米国発の世界的な金融危機による環境の急激な変化などにより、各金融機関は経営体力が低下し、新たなリスク負担に慎重になっております。
 お尋ねの新銀行東京の新型保証につきましても、こうした状況により、現在までのところ、商品化には至っておりません。
 なお、再建計画についてのお話がございましたが、新銀行東京は生きた経済の中で経営を行っているため、項目一つ一つについて見れば、平成二十年二月に策定された計画と相違を生じるものも出てまいりますが、経済情勢の変化を踏まえ、柔軟に対応しております。
 その結果、新銀行東京は、平成二十一年度第三・四半期決算で十四億円の当期利益を計上するなど、全体としては計画を上回って推移しておりまして、再建は着実に進んでいるものと考えます。

○和田委員 商品化に至っていないと、すっと、こうおっしゃるんですが、もともとはそれをしますよというふうに方向を示されたわけでありますから、今のようにするっといわれると、あれ、どこへ行ったのかなというふうな気がするんです。もう少し責任を持った態度と答弁をお願いしたいと思うんです。
 次に参ります。
 しかし、新銀行の実質業務純益はいまだに赤字です。また、計画を上回る利益を上げていれば、その中身が議会に説明したものと全く変わっていても問題がないんだという認識は納得できません。
 また、ことし一月、都内四つの信用金庫が、信金協調保証で焦げついた肩がわり分の支払いを新銀行が拒否しているとして、新銀行を提訴していると報じられました。そのうちの既に一件は信金が勝訴し、新銀行が控訴中ということであります。これから察するに、新銀行にとって大事なパートナーであったはずの信用金庫との関係がこじれているのではないでしょうか。
 相互に信頼できる金融機関に限って提携していくといっていた新型保証も商品化させる見通しも見えない中で、東京都は、新銀行と信用金庫との関係についてどのように考えているのか、見解を伺います。

○前田産業労働局長 先ほどの保証のお話でございますが、民間金融機関の商品でございますので、金融環境等に応じて経営陣が判断するというものであることを、まずご理解いただきたいと思います。
 次に、ただいまのご質問でございますが、新銀行東京は、信用金庫など地域の金融機関と協調しながら中小零細企業支援を進めていくという基本的な考えに変わりはございません。
 新銀行東京は、現在も提携金融機関である信用金庫と協調し、融資返済に苦しむ企業に対して、与信期間の延長などの条件緩和対応を実施しているところでございます。

○和田委員 局長答弁がありました。しかし、結局のところ、新銀行東京は、協調するべき信用金庫などにも見限られた、絶縁をされた。そしてまた、三月十八日に旧経営陣との訴訟に入っていますね。新銀行の存在意義は、もはや失われてしまったと私は思うんです。そこで、既存の制度融資の充実などを図るべきであります。
 私は、都民の税金がさらにむだに使われることのないように、東京都は、事業譲渡や株式の売却などを含め、新銀行から早期に撤退すべきと改めて再び強く申し上げておきます。
 次に、オリンピック・パラリンピック招致について伺います。
 都議会民主党は、二〇一六年オリンピック・パラリンピック東京招致に賛成を表明いたしました。しかし、それは決して無条件の賛成ではありません。未来への責任も含めた議論を大いに行っていく姿勢に立ったものであります。そして、議会で提案や検討を行い、大会の招致実現に向け活動を推進してまいりました。
 国際プロモーション活動においても、我が党の鳩山総理が、政権発足後間もない時期でありながら、すべてのIOC委員あてに親書を送るとともに、首相として初めてIOC総会に出席、IOC委員へのプレゼンテーションを行い、環境に配慮する日本の姿勢を強くアピールしたものであります。
 また、コペンハーゲンにも都議会議員を派遣し、文部科学副大臣も現地に赴きました。我が党は全面的に協力してきたつもりであります。
 このようなことを考えますと、今さらながら、知事が、大体、民主党はなどと責め立てられる理由は、筋合いは全くないと考えますが、知事の見解を伺います。

○石原知事 とにかくですね、民主党も何党も一緒になって、やがて近い将来、日本にオリンピックを引っ張ってこようじゃないですか。
 今回のオリンピック招致は、平和や環境の大切さを訴え、若者たちに未来に立ち向かう力を贈りたいという思いから取り組んだものでありまして、バンクーバーで開催された冬季大会を見ても、勇気を持った若者たちは少なくないと思います。今後も我が国が招致に再挑戦する意味と価値は非常に大きなものだと思います。
 昨年、コペンハーゲンのIOC総会に鳩山総理もわざわざ出席してくださったのも、こうした思いに賛同し、ともに日本での開催という夢を実現したいからだと受け取っております。
 招致は国を挙げた総力戦でありまして、これから先、これをさらにいつか夢として成就するためにも、民主党も、どうしたら招致をかち得れるかということを一緒に積極的に考えていただきたいと思います。

○和田委員 一緒にやりましょうという知事の要請は、こちらも受けさせていただきますが、私どもの方からも、一緒に汗をかきましょうという提案を申し上げたいと思うんです。
 まず、失敗から何を学ぶか、こんなことからスタートをともにしてまいりたいと思うのであります。
 次に参ります。
 この予算議会では、二〇一六年、オリンピック・パラリンピック招致の敗因の総括を行っていますけれども、いまだ多くの都民が納得するものには至っていないのではないでしょうか。招致失敗に対する深い分析が問われているのであります。そのためには、都は、なぜ東京が再び世界最大のスポーツ競技大会、オリンピック・パラリンピックを招致するのかといった理念、その方針、都民、国民、そしてIOC委員など多くの人から理解が得られるかどうか、そのことを総括する必要がありますけれども、都の見解を伺います。

○荒川東京オリンピック・パラリンピック招致本部長 東京が二度目の開催を目指しましたのは、一九六四年の東京オリンピック大会で国際デビューを果たしました東京、日本が、再びオリンピックの力を通して、ただいま知事からも答弁がございましたけれども、今日、地球規模で大きな課題となっております平和のとうとさ、環境の大切さを世界じゅうの人々に訴えたいと、こういう願いからでございます。
 この主張は、評価委員会やIOC総会での最終プレゼンテーションにおいて高い評価を得ることができたと認識しております。しかし、残念ながら東京は招致をなし得ませんでしたが、それは、リオデジャネイロの南米初というインパクトと、マドリードを強力に推すスペイン出身のIOCの実力者の影響力がまさっていたからだというふうに考えております。
 一方で、都民、国民については、最後の段階で大きく盛り上がりを見せましたけれども、冒頭申し上げました意図が、わかりやすい形で十分には伝え切れなかったところがあったというふうには思っております。全力でさまざまな取り組みはいたしましたけれども、短期間に理念やコンセプトを伝え切るには、東京一都市の活動ではやはり限界がございました。
 このことを踏まえ、今後は、早い段階から国やスポーツ界、経済界などの協力を得て、各界の持つ全国ネットワークをフルに活用するとともに、あわせて、これは重要なことですけれども、常日ごろから地域でのスポーツ振興を図り、スポーツクラブや競技大会等を通じて、幅広く、かつきめ細かな普及啓発活動を積み重ねていくことで、オリンピック・パラリンピックを含めたスポーツの価値、有効性に対する都民、国民の理解と賛同が一層得られるものというふうに考えております

○和田委員 率直に反省点を述べられたということは、私どもも共鳴、共感するものです。そこからともにスタートしていこうということから、再起を期していきたいと思うのです。
 さて、知事は、日本のスポーツ界がIOCや国際競技連盟の要職に強力な人材を送り込み、国際的な影響力を高めていかなければ、招致の獲得は非常に不可能と述べられています。そのためにはどのような取り組みが必要で、将来の展望をどのように描いていらっしゃるのか、都の見解を伺います。

○荒川東京オリンピック・パラリンピック招致本部長 日本の国際的な影響力を高めていくために、国やスポーツ界では既に取り組みを開始しております。
 その取り組みの第一は、国際スポーツ界との交流の場を東京、日本につくり出す、あるいはこちらから乗り込んでいくことでございまして、そういう場で日本人アスリートや国際競技連盟の日本人役員が積極的に発言して、影響力を発揮していくことをねらうものでございます。
 具体的に申し上げますと、JOCでは、昨年シンガポールで開催しましたアジア・オリンピック評議会、OCAの総会を、来年の夏、日本で開催し、アジア地域との関係強化を図ることを計画しております。
 また、世界各国のオリンピック委員会と人材交流や情報交換などを目的としたパートナーシップ協定の締結を、現在十六カ国ですけれども、それをさらにもっとふやしていくということで、現在、各国の委員会と交渉を行っております。
 取り組みの第二は、国際的な発言力、交渉能力を身につけ、将来は招致の顔ともなる新たな人材を育成していくことでございます。これは、早速、JOCにおいて国際人養成事業として着手をしております。そして、このJOCの事業で養成した人材をIOCや国際競技連盟などに派遣する事業を、国が来年度から開始をいたします。
 これらのほかにも、競技団体レベルでさまざまな取り組みを始めておりまして、また都政レベルでも、アジアとのスポーツ交流を進め、国際的な結びつきを強めておりますけれども、特に国やスポーツ界が密接に連携して日本の国際力の強化や人材育成を積極的に進めていくことになりましたのは、今回の招致の経験を踏まえた知事の指摘ですとか、あるいは招致活動報告書の総括がきっかけになったものでございまして、こうした取り組みは、将来のオリンピックを初めとした国際スポーツ大会の日本招致に大きく寄与するものと考えております。

○和田委員 再起のためには、国際スポーツ界との十分な関係構築が求められると思います。都は、二〇一六年招致を終えて寄せられた提言、要望などやマスコミの全国世論調査など、はかばかしくない東京招致に対する意見や調査結果など、二〇一八年冬季オリンピック開催都市の選定の仕方など、あるいは行方など、さまざまな国内外の情勢も把握する必要があります。
 また、知事が招致で体験した、理念にかかわりない力学などを勘案して、知事は、次の招致に勝算があると考えていらっしゃるのでしょうか。見解を伺います。

○石原知事 勝算を抱くためには、今、招致本部長が申しましたように、さまざまな試みを積み上げていく必要があると思います。
 再三申してきましたように、招致はライバル都市との競争でありますけれども、その決定のメカニズムは極めて複雑でありまして、開催計画のよしあしだけではなくて、IOCの中の政治力学というものがさまざまな形ではね返ってくるので、得るべき情報を十分得て戦わなければ、勝負にならないと思います。理念、理想を掲げて走るだけでは、そういう純情だけではなかなかおぼつかないということを今度は熟知いたしました。そういった体験を踏まえて、いろいろな準備をしてかかることが勝算につながると思います。
 今後の再挑戦には、都民、国民の意向を十分にそんたくし、都議会での議論を踏まえて結論を出していくべきでありますが、先日の東京マラソンの盛況ぶりや内閣府の世論調査などを見ましても、都民、国民のスポーツに対する関心は非常に高まってきていると感じます。
 招致の本質は、国対国の情報戦でありまして、都民、国民はもとより、スポーツ界、経済界を初め各界各層が総力を挙げて、戦うための情報を結集して世界に挑むことが勝敗を決するものと考えております。

○和田委員 次に、公文書管理について伺います。
 平成二十一年、国で公文書のライフサイクル全体を包括する公文書管理法が制定され、平成二十三年四月から施行されることになっています。国だけでなく独立行政法人の文書についても、国の文書に準じた管理を義務づけられているのであります。この法の施行が近づく中で、都の文書管理の現状、そして課題を取り上げてまいります。
 都は、地方自治の本旨に基づき、保有する文書は、現在、そして将来の都民の知的財産、知的資源であると考えているのか、このことについてどのように見解をお持ちか、お伺いをいたします。

○中田総務局長 知的財産の定義は多様なものであると理解しております。いずれにしましても、都が保有する文書等は、行政活動を行う上で基本的かつ不可欠なものでございます。
 また、適切な文書管理は、情報公開制度と相まって、都民にとって、都政に関する情報を迅速かつ容易に得ることや、都政への参加を進めるために重要であると考えております。
 さらに、貴重な公文書は、歴史的資料として後世に伝えられるべきものであるとも考えております。
 このため、都では、文書管理規則等におきまして、意思決定を文書等によることとするとともに、その作成、保管、廃棄などの取り扱いにつきまして詳細に規定しております。

○和田委員 二〇一六年のオリンピック招致の総括が行われている現在、鉄腕アトムがオリンピックの聖火をともす構想など、科学技術の粋を集めた大会であるなどと記載されていたオリンピック基本構想懇談会議事録、これは既に廃棄されているのです。なぜ招致の総括が始まる前に、この文書は廃棄されたのか。都民の知る立場から見て、そしてオリンピック招致、レガシーを検証する上で、今後も利用価値が高いと考えるこの議事録は、文書管理規則第四十八条第二項により、保存期間を延長すべきではなかったのか、見解を伺います。

○荒川東京オリンピック・パラリンピック招致本部長 基本構想懇談会議事録につきましては、東京都文書管理規則をもとに、保存年限を三年と定めました。懇談会で重ねた議論は、平成十八年二月に取りまとめました懇談会報告書に集約され、お話の鉄腕アトムが聖火をともす構想は、斬新で未来を予感させる演出として記述をしております。
 議事録そのものにつきましては、二十一年二月の立候補ファイル作成まで保存し、その間、十分に活用したこと、また、意思形成過程の文書であることから、保存期間を延長してまで保存する必要はないとの判断で廃棄したものでございます。

○和田委員 そういうことを前提に、また再起、挑戦しようということですから、過去の記録、ドキュメントをもう少し大事にしてほしいなということだけ申し上げておきます。
 また、東京都の職員が職務上作成したメモなどの記録等も公文書に当たるんですね。今議会では、豊洲市場予定地の用地取得費一千二百六十億円をめぐり細かい議論がありましたけれども、経済・港湾委員会の質疑では、東京都と東京ガスとの交渉過程の記録等の保存について、その完璧さを求めてきたところであります。東京ガスとの交渉は極めてデリケートで、場合によっては、今後、さまざまな事態の進展が想定されます。
 そこで、私は、東京ガスとの交渉過程を記した記録等についても保存し、必要な場合には公開していくべきだと考えますが、見解を伺います。

○岡田中央卸売市場長 都はこれまで、築地市場の豊洲地区移転に理解と協力を求めるために、豊洲新市場予定地の地権者であります東京ガス株式会社と協議を重ねてまいりました。これら協議の記録などにつきましては、文書管理規則などに基づきまして、各局におきまして適切に保存、管理をしてございます。
 また、情報公開条例に基づきまして公文書の開示請求がございました場合には、個人情報ですとか東京ガス株式会社の事業活動に関し条例上非開示とすべき情報などを除きまして開示しております。
 今後とも、条例に基づきまして公文書開示請求があった場合には、その規定に従いまして、適切な情報開示に努めてまいります。

○和田委員 都民との共有資産というような意識をぜひ持っていただきたいと思うんです。
 公文書管理法では、独立行政法人等についてもその対象に含ませているのであります。
 三月十一日の総括質疑で都議会民主党は、新銀行東京の旧経営陣が税務協会と契約し、この契約が執行役の候補を前提としていたという議論を行いました。この契約書について、産業労働局は、引き継ぎは受けていないと答弁しています。税務協会を所管する主税局は、お尋ねの文書管理については税務協会で行っていると答えているのです。
 そこで、主税局に伺いますが、東京税務協会と新銀行との契約については、確実に保存されているのですか。また、顧問契約の内容は、産業労働局が答弁した内容と一致しているのですか、伺います。

○熊野主税局長 お尋ねの文書につきましては、東京税務協会から、保存年限を過ぎたため、既に廃棄済みであるとの報告を受けております。そのため、内容については確認できません。

○和田委員 行政にとって利益、不利益というのじゃないんですね。中立公正なドキュメントの保存ということが公文書管理法の趣旨なんです。私も昨年九月、アメリカの公文書館に行って調査をしてきましたけれども、極めてシンプルに、簡単に情報はとれる。百枚まではコピーはただなんです。そんなことも含め経験してきて、東京都の公文書管理は、石原知事、随分おくれています。ぜひそのことに意を用いていただきたいと思うのです。
 私は、東京都の公文書管理のあり方について、今まで述べてきたようなさまざまな課題があると思います。都政に必要な文書の廃棄などを防ぐために、公正で透明な都政を推進していかなければなりません。都民の都政への参加を促すため、都の保有文書を分類する文書総合管理システムに記録した文書などの一覧や、公文書館における文書の管理状況の概要を都民に公表すべきと考えますが、見解を伺います。

○中田総務局長 都の各局で保有します文書につきましては、決定年月日や作成部署、公文書の公開件名、保存期間などの文書総合管理システムに記録されている情報を、情報公開の検索システムを通して提供しております。
 また、歴史的価値があり、東京都公文書館に引き継がれました文書等につきましては、毎年、年報を発行しまして、所蔵公文書の件数や引き継ぎ状況等を公開しております。
 さらに、今年度から公文書館では、緊急雇用創出事業を活用いたしまして、貴重な歴史的文書の電子画像化を進めるとともに、所蔵文書等の目録のデータベース化を推進することとしております。
 今後とも、それぞれの文書等の性質に合わせまして、都民にわかりやすく文書等の情報を提供してまいります。

○和田委員 まだ保存年限前に文書を廃棄する文書管理規則第五十三条第二項の規定がありますけれども、あえて年限前に廃棄するといったようなこの規定は必要ないと考えますが、見解を伺います。

○中田総務局長 文書管理規則第五十三条第二項の、保存期間が満了する前に文書を廃棄しなければならない特別の必要とは、例えば、時の経過による劣化が進み、判読も修復も不可能になり、資料としての価値が全く見出せなくなった文書につきまして廃棄を認めるような場合が想定されております。条文としても必要であると考えております。
 廃棄に当たりましては、特別の理由を明らかにするなど、条文としても厳格な手続を求めているところでございまして、乱用されるおそれはないと考えております。

○和田委員 あえて廃棄する前の規定を書く必要はあるのかなというふうに思います。これは後の条例化の問題についても触れますので、意見は差し控えます。
 さて、都の文書管理そのものを組織的及び効率的に維持管理していくためには、既にある、都の職員で構成する文書管理における会議が効果的に運営されなければならないと考えますが、見解を伺います。

○中田総務局長 各局におきまして文書事務を所管する部署に対しましては、説明会の開催などによりまして、定期的に文書事務につきまして連絡調整を実施しております。
 さらに、文書事務の手引の作成や研修等の充実も図るなど、これまでも公文書の管理を適切に行うための取り組みを行ってまいりました。
 今後とも、文書事務や公文書の引き継ぎに関する研修、説明会の充実や、全庁的な連絡会議を通じた文書事務の連絡調整を行うなど、効果的な運用を図ってまいります。

○和田委員 東京都は、内部規則としての文書管理規則にとどまることなく、文書のライフサイクル全体を見渡して、文書が現存し、そして将来の都民の知的財産、知的資産であることを明確にするためにも、公文書管理のためにも条例化を検討していくべきだと私は強く訴えたいと思うのでありますが、都の見解を求めます。

○中田総務局長 文書等の適切な管理は、情報公開制度と相まって、都民の都政に対する理解や信頼の確保、都政への参加などを促す上で前提となるものと認識しております。
 このため、都では、情報公開条例におきまして、公文書の適正な管理の必要性を規定するとともに、文書の発生から廃棄までを統一的なルールで統制するため、執行機関においては、知事決定に基づく規則等を整備しております。
 さらに、これらの文書等のライフサイクルを管理するためのツールとして、文書総合管理システムの構築などを国に先駆けて行ってまいりました。
 今後とも、都民が必要な情報を迅速かつ容易に得ることができるよう、文書管理の仕組みを適切に運用してまいります。

○和田委員 次に、環境対策について伺います。
 我が会派の本会議の代表質問では、温室効果ガス排出量の削減に向けた都の取り組みとして、化石エネルギー利用からの転換、再生可能エネルギーの利用促進、これについて質問をいたしました。ここでは逆に、利用するエネルギーの総量を削減するための取り組み、いわゆる省エネ化について質問をいたします。
 「十年後の東京」への実行プログラム二〇一〇では、新規施策として、私立学校や社会福祉施設が地球温暖化防止活動推進センターの省エネ診断を踏まえて実施する省エネ設備等の導入に関して支援を行うということを挙げられています。
 私立学校の省エネ設備等の導入に対する支援について、これまでの状況と今後の具体的な取り組みを伺います。

○秋山生活文化スポーツ局長 地球温暖化対策として、CO2削減に寄与することなどを目的といたしまして、省エネ設備及び再生可能エネルギー設備を導入する私立学校を支援するため、既に今年度から、私立学校省エネ設備等導入モデル事業を実施しているところでございます。
 このモデル事業は、東京都地球温暖化防止活動推進センターが実施いたします省エネ診断で提案された改善内容を踏まえまして、私立の小中高等学校が省エネ設備等を導入する場合に、その経費の二分の一を補助するというものでございます。
 今年度の実績見込みでございますが、中学校五校、高等学校十校の計十五校でございまして、具体的には、省エネ型照明器具や空調設備のほか、太陽光発電設備の導入などがございました。
 来年度も引き続きモデル事業を行い、その実施状況を検証しながら、本格実施に向けた検討を進め、私立学校における省エネ設備等の導入促進を図ってまいります。

○和田委員 生活の中から省エネという思想も体験させていくという意味では極めて貴重な施策と思いますので、推進をお願いするところであります。
 福祉保健局予算では、社会福祉施設省エネ設備等導入モデル事業費補助が都の単独事業として三千万円、新規に計上されていますけれども、具体的な取り組みについて伺います。

○安藤福祉保健局長 本事業は、省エネ診断を受けた社会福祉施設を対象として、省エネ型照明器具、空調設備等の導入経費への補助や、施設における取り組み方針の策定、目標値の設定などへの支援を行い、ハード、ソフトの両面から省エネルギーを進めるとともに、その効果を検証し、広く施設関係者に紹介するものであります。
 来年度のモデル事業の実施状況を検証しながら、本格実施に向けた検討を進め、社会福祉施設におけるCO2削減に向けた取り組みの促進を図ってまいります。

○和田委員 取り組み促進は、エネルギッシュにぜひお願いをしておきたいと思います。
 次に、小笠原諸島の自然について伺います。
 ことしの一月、小笠原諸島の世界自然遺産登録推薦書がユネスコに提出されました。また、この夏には、ユネスコの諮問機関が現地視察を予定しています。小笠原の自然が世界に誇るべき価値としては、まず、この地球上で大陸がどのように形成されたかを示すボニナイトという岩石が、陸上で唯一見られることが挙げられているのであります。
 世界遺産登録に向けて、小笠原独自の固有種をはぐくんでいる独自の生態系を守るため、都としても、外来種対策を積極的かつ着実に進めていくべきであります。世界遺産登録はゴールではなく、登録後も、遺産としての価値である小笠原独自の生態系をしっかりと守っていく必要があります。
 登録推薦書に合わせて管理計画が作成されたわけでありますけれども、その中には、各種事業での環境配慮の徹底、自然と共生した島の暮らしの実現、さらにはエコツーリズムの推進などが盛り込まれています。
 管理計画についての関係者の深い理解と積極的かつ主体的な協力が不可欠でありますが、都としては管理計画をどのように推進していくのか、所見を伺います。

○有留環境局長 管理計画は、世界的にも貴重な小笠原諸島の自然環境を人類共通の資産と位置づけまして、よりよい形で後世に引き継いでいくため、その保全と管理の適正かつ円滑な推進等に関する基本的な方針を明らかにしたものでございます。
 その推進を図るためには、島民や観光客の理解と協力を得ることが不可欠でありますので、島民に対しては、全戸に自然環境に関するパンフレットを配布するなど普及啓発を進めるとともに、事業者には、環境配慮指針に従って公共工事等を実施するよう求めております。
 また、観光客には、東京都版エコツーリズムの徹底やビジターセンターでの展示等による普及啓発、東京都レンジャーによる自然観察ルールの指導などを行っております。
 さらに、外来種の除去に当たりましても、ボランティアを募り、体験活動を通じて自然の保全意識を高める取り組みを進めております。
 今後も、管理計画に基づきまして、都は先頭に立って、島民や観光客の理解と協力のもと、自然環境の保全や外来種対策を適正かつ円滑に進め、小笠原諸島の貴重な自然を守ってまいります。

○和田委員 私ども都議会民主党も、この四月からおおむね一週間余をかけて現地を踏査してまいります。何よりも、世界自然遺産を獲得するために課題となっている問題を直接見聞しながら、持ち帰って検討し、環境局にも具申をしてまいりたいという姿勢であります。
 次に、医療について伺います。
 まず、がん対策であります。
 民主党としても求めてきた拠点病院の整備など、高度かつ専門的な治療ががん患者に適切に提供される体制整備が進んでまいりました。拠点病院等での専門的治療の後には、地域のかかりつけ医等で診察や検査などを受けることも多くなってきていると聞いております。
 患者が病状に応じた治療を受け、安心して療養生活を送るためには、いつ、どこで、どんな診察、検査を受ければよろしいのか、今後の診療計画を知り、安心して診療を受けることが大切であります。
 また、がん患者、家族の実際の経験から求められる施策、課題の解決策が必要であり、その意味で、がんの地域連携でありますクリティカルパス、がん手帳は極めて重要な取り組みであると評価をいたします。がん手帳については、民主党の代表質問でも取り上げました。まずは、このがん手帳について伺います。
 都内拠点病院の医師と医師会等が参画してつくり上げた試行、これが終わった後、次の段階として、この手帳を地域のかかりつけ医等と患者の間を連携させる手段として考えていくべきであると思いますけれども、この課題について取り組みを伺います。

○安藤福祉保健局長 都は、すべての拠点病院、認定病院や東京都医師会等の協力のもと、都内医療機関が共通に使用できる地域連携クリティカルパス、東京都医療連携手帳の整備を進めておりまして、このたび試行版を作成し、本年二月から運用を開始いたしました。
 都におけるがん診療につきましては、医療圏を越えた患者の受療行動が多く見られることから、患者やかかりつけ医、専門病院が都内共通の手帳を活用し、情報を共有することが特に重要でございます。
 今後、この手帳が、かかりつけ医を初め多くの医療機関で活用されるよう、研修会や連携会議などさまざまな機会をとらえて働きかけを行い、拠点病院を中心としたネットワークを構築してまいります。

○和田委員 ただいまの答弁で、これから拠点病院と医師会とが、地域連携の一環として理解を得て活用していくというふうに答弁されました。この手帳が普遍的な存在として、都内のがん患者ががんと闘い、つき合っていくための手段として有用でもあります。患者の視点からの改善をしながら本格版をつくり上げて、患者にも積極的に活用していただきたいと思うのです。
 都として、患者の立場から、活用についてどう配慮していくのか伺います。

○安藤福祉保健局長 東京都医療連携手帳には、診療予定表や診療情報などがわかりやすく記載をされておりまして、患者がかかりつけ医や専門病院と一冊の手帳を通じて情報を共有するとともに、今後の診療計画を知り、安心して治療に臨むことができるという特徴がございます。このため、患者が手帳の意義を十分に理解し、医療機関受診の際には常に提示するように、医師が直接、丁寧な説明を行っております。
 本格実施に向けて、患者や医療機関の意見を聞くなど、運用状況を把握し、よりきめ細かい連携や患者の安心につながりますように、手帳を工夫、改善してまいります。

○和田委員 インターネットなどに玉石混交の情報はたくさんあるんです。しかしながら、その人に適合した正しい情報を得るためには、気軽に話せる相談、これなどが必要だと思うんです。患者団体やボランティアが病院内で活動したり、相談に乗るなどの働きがさらに活発に行われていくことも有効な方策と考えます。
 患者が孤立しないための取り組み強化として、ピアカウンセリングや相談電話などが重要ですけれども、都における相談支援体制の拡充に向けた取り組みを伺います。

○安藤福祉保健局長 拠点病院、認定病院では相談支援センターを設置し、患者や家族の不安や疑問に対し、電話や面談による相談や情報提供を行っております。昨年十月からは、日中仕事を持つ患者や家族の利便性にも配慮し、相談支援センターにおける休日、夜間相談をモデル実施しております。
 また、患者団体の協力を得て、がん体験者がみずからの経験を生かし、患者、家族が抱く不安や悩みについて親身に受けとめ、不安の軽減と心のケアを行いますピアカウンセリング事業を実施しております。
 今後とも、拠点病院、認定病院において、個々の患者に対する相談のみならず、患者団体との交流も進めるなど、さまざまなニーズに応じた支援を充実してまいります。

○和田委員 日本医療政策機構が三月に発表した、がん患者アンケートというのがあるのです。そこによると、世帯年収が二百万ないし三百万が最も多くて、治療費等の金額が平均百三十三万円に上ることがわかっているのです。昨年十月から十二月にかけて、がん患者団体を通じて患者、家族千六百十八人から回答を得た結果であります。治療費用の負担が、とても重いとした人は約三〇%、やや大きいとした人が四一%で、余り負担でないという人は二〇%にすぎません。七〇%以上の人が負担感を持っているのです。がん患者は、病気による苦痛や不安のみならず、経済的な負担を初め、さまざまな悩み、苦しみを抱えています。
 都ががん対策推進計画を策定し、施策を進めていることは評価するところでありますけれども、さらに高い目標を掲げ、条例を制定して、がん患者に対し、都は絶えず支援していくんだ、しているんだというメッセージを発し、励ますことも必要と考えます。がん対策推進計画に加え、条例を制定して取り組むべきと考えますが、見解を伺います。

○安藤福祉保健局長 都は、がん対策基本法に基づき、患者団体等の意見も聞きながら、がん対策の総合的な計画であります東京都がん対策推進計画を平成二十年三月に策定いたしました。
 本計画では、がん対策の基本方針や全体目標を定めるほか、分野別施策、都民や医療機関、行政の役割など、具体的な内容を示しているところであります。
 計画に基づき着実に施策を推進し、都民と一体となって、がんに負けない社会を実現することが何より重要と考えております。

○和田委員 答弁では、条例の必要性に、あるいは不必要性も含めて深い言及がありませんでした。私ども都議会民主党は、議員の有志を募って、条例化に向けての一大運動を展開していくという用意もあることを申し上げておきたいと思うんです。
 次に、都立病院における東洋医学について伺います。
 現在、医療といえば、根拠に基づき個々の疾患に向き合う、いわゆる西洋医学でありますけれども、一方で、伝統的な東洋医学も存在します。現に、大学でも東洋医学の講座を持っているところが幾つかあります。有効性も認められています。患者にも一定のニーズがあるものでありますから、これも事実であります。都立病院でも、昨年度までは大塚病院が取り組んでいたことがあると聞いています。
 患者の多面的な治療機会を確保するためにも、都立病院において東洋医学を活用していくべきと考えますが、所見を伺います。

○中井病院経営本部長 都立病院では、慢性疾患の増加等による疾病構造の変化に伴う対応として、かつて豊島病院などで東洋医学の専門診療を手がけてきました。その後、豊島病院の改築に伴い、大塚病院で専門外来を開始しましたが、昨年度に医師が退職したことを契機に、現在は専門的医療を行っていない状況にあります。
 このように、いずれの都立病院にも、現在は専門の医師はおりませんが、症状等に応じて漢方エキス製剤等の投与は行っております。
 今後とも、東洋医学を取り入れた医療については、患者さんの状況に応じた適切な対応を行ってまいります。

○和田委員 患者の意向に沿って、適切に都としては取り組んでまいりたいということでありますから、可能性を信じて、次に移りたいと思います。
 次に、自殺対策について伺います。
 三月と九月は自殺予防月間であります。我が国では、平成十年に三万人を超えて以来、毎年三万人以上が自殺で亡くなっております。都内でも、平成九年の二千十四人から、翌年二千七百四十人へと急増して以来、平成二十年の二千七百七十六人まで高い水準です。いわゆる自殺都市東京といった感があります。毎日、全国で八十人、東京都で七人以上が亡くなり、この十年間だけで、全国で三十万人、東京でも三万人弱が亡くなっていることになります。
 平成十三年より自殺に関する心理学的分析の方法が研究され、平成二十年には自殺実態の千人調査結果がまとめられ、自殺時に抱えていた危機要因は、一人平均四つあることなどが明らかとなりました。経済問題や職場の悩み、家庭の悩みが複合的に折り重なって、最終的にうつ病に至り、自殺しているようであります。
 逆にいえば、危機要因ごとに事前の介入が可能であるわけでありますから、関係機関における対応について、どのように対策を講じているのか伺います。

○安藤福祉保健局長 自死遺族を対象としました調査では、自殺された方のうち約七割が相談機関を訪れており、そのうちの約六割の方は、亡くなる一カ月以内に相談に行っております。
 また、お話のように、自殺の背景にはさまざまな要因が複合的に絡み合っております。
 このため、都は、労働問題や消費生活、いじめなど、多様な分野の相談機関の参画によるこころといのちの相談・支援東京ネットワークにおきまして、どの窓口を訪れても、各機関のきめ細かな連携により、自殺の要因となり得るさまざまな問題に適切に対応できる仕組みづくりに取り組んでいるところであります。
 今後も、相談機関の職員を対象としたスキルアップを図るための研修や、情報共有、連携強化のための連絡会を開催するなど、自殺の未然防止に向けた取り組みを強化してまいります。

○和田委員 七割が何らかの相談機関に行かれているということであります。何とか危機介入をし、支援に結びつけることが必要でありますけれども、残る三割の方については、身近な人がその予兆に気づくことも重要であります。要するに、一般都民にも知識の普及啓発を行わなければなりません。
 私は、人の死に直面できる組織として自殺対策本部を設置、都としても本腰を入れていくという強くメッセージを発してほしいと思っているのです。すべての都民が自殺は社会的な問題であると受けとめ、気づく、見守る、そして支援するという姿勢のあらわれとして、レッドリボンバッジのような自殺対策のシンボルを定めることも有効だと考えています。
 一般都民に向けて、自殺予防についての普及啓発を積極的に行うことが重要と考えますが、見解を伺います。

○安藤福祉保健局長 お話のように、毎年、九月と三月の年二回を自殺対策強化月間として、自殺防止東京キャンペーンを実施しております。この三月のキャンペーンでは、講演会や特別相談、都民から募集した標語の表彰等、さまざまな取り組みにより普及啓発を行っているところでありますが、引き続き、区市町村や民間団体等とも連携しながら、自殺予防について都民一人一人の関心が高まるように普及啓発を推進してまいりたいと思います。

○和田委員 東京都は、平成十九年に自殺総合対策東京会議を設置しています。その組織はあるんですけれども、自殺者は減っていません。都は、平成二十八年までに二〇%減という目標を立てていますけれども、さらにスピードアップして、早期に平成九年の水準の自殺者に持っていく、そして段階的に自殺者を数の上で低減させていくことが大切だと私は考えています。
 例えば、亡くなった場所ごとの集計を内閣府発表の資料から見ますと、北区では百六十二人の自殺者があり、八十九人、五四・九%が自宅で亡くなっています。港区では、二百三十五人のうち自宅は五十九人、二五・一%で、同じ東京都内でも、かなり様相が異なっている事実もあるのです。自殺者三万人時代を迎えて、自殺対策がいわれるようになって十年がたちました。私は、東京都の行っているこころといのちのネットワークのような取り組みが各市区町村でもつくられ、気になる方を見守る、あるいは気づく体制が網の目のように張りめぐらされることが大切と考えます。
 二十二年度予算では、地域自殺対策緊急強化基金事業一億二千三百万円により、区市町村及び民間団体等への補助を行うとしています。より個人に目の届きやすい各区市町村ごとに効果的な対策が行われるよう、都として強力に取り組みを働きかける必要がありますけれども、見解を伺います。

○安藤福祉保健局長 地域自殺対策緊急強化基金では、区市町村が地域の自殺の現状を把握、分析した上で、実情を踏まえた事業を実施するということになっておりまして、創意工夫によりさまざまな取り組みを行うことが可能であります。
 現在、区市町村におきましては、来年度の事業実施に向けた検討が進められておりまして、都としても、地域特性に応じた取り組みが一層強化されるよう、先進的な事例について情報提供するなど、積極的に働きかけてまいります。

○和田委員 自殺にも地域特性があるという科学的な分析が出始めているんです。もちろんプライバシーの問題もあるんですけれども、ここのところにフォーカスをして、より細かな自殺予防というものに取り組んでいく時代が来ている、このことを強く申し上げておきたいと思います。
 次に、動物愛護について伺います。
 環境省は二月に、住宅密集地での犬、猫の適正な飼育についてのガイドラインをまとめています。都においては、既に推進計画を定めて取り組んでおりますけれども、ガイドラインにも都の基本方針や施策が反映されているようであります。
 犬、猫等の致死処分数の減少には、飼い主が生涯にわたり適正に飼うという、果たすべき責任を徹底する必要がありますが、都は、どのような取り組みを行っているのか伺います。

○安藤福祉保健局長 動物販売業者は、購入者が動物を適正に飼養できるよう、動物愛護管理法に基づき、販売時に動物の特性や飼育上の留意点等を文書で説明することが義務づけられております。これに加えまして、都では、独自の説明事項を定め、動物の一生に責任を持つことや、飼養には経費負担が伴うことなどについても購入者に確認することを販売業者に指導をしております。
 また、区市町村や関係団体を通じて適正飼養についてのパンフレットを配布するなど、広く周知を図っておりますが、引き続き区市町村とも連携し、飼い主の果たすべき責任が徹底されるよう、さまざまな取り組みを行ってまいりたいと思います。

○和田委員 販売者、いわゆる販売業者の中には、生き物を扱う責任感のない人もいるんですね。安易に売りつけることのないように厳しく監視していくべきだと考えますけれども、都は、販売業者に対してどのような指導をしているのか伺います。

○安藤福祉保健局長 平成十八年に販売業を初めとする動物取扱業の登録制度が導入された際に、都は、都内全業者に立入検査を行い、施設基準や動物の適正飼養管理について必要な指導を行いました。
 動物取扱業の登録申請時には、動物取扱責任者の選任が必要でありますが、都では、条例によりまして、事前に責任者研修を受講することを義務づけ、動物取扱業者の質の向上を図っております。また、定期的に立入検査を行うとともに、都民からの情報等に基づき、問題のある事業所には、速やかに立入検査を行っているところであります。
 今後も、あらゆる機会を通じて、動物取扱業者に対し適切な指導を行ってまいります。

○和田委員 定期的には三年に一回というサイクルがあるようですけれども、それにこだわらず立入検査をしているということを聞いております。そういう意味で、犬とか猫とか動物の命というものを大切にするという思想普及も含めて、当局のより一層の奮闘を願うところです。
 致死処分をなくすためには、その多くを占める子猫の対策が必要となるのでありますけれども、都は、どのような取り組みをしているのか伺います。

○安藤福祉保健局長 都では、飼い主責任の徹底や、収容した動物等の譲渡事業の推進などにより、致死処分数の減少に努めてまいりました。その結果、収容動物のうち処分したものの数は、平成十年度、一万五千三百十四頭から、平成二十年度は五千六百八十六頭に減少いたしました。
 お話のとおり、処分数の約七割は、飼い主のいない猫が産み落とした出生後間もない子猫でありまして、育成困難なため、譲渡ができないものであります。このため、みだりに繁殖させず、飼い主のいない猫をふやさない各種対策に取り組む市区町村に対しまして、都は、包括補助制度を活用して支援を行っているところであります。

○和田委員 包括補助制度という一つの奨励的な施策を打っているということは、大変評価をいたします。
 譲渡動物をふやして致死処分ゼロにするためには、現在行われている民間団体と東京都の連携した取り組みを拡大することが必要でありますけれども、都の取り組みを伺います。

○安藤福祉保健局長 飼育経験が豊富で譲渡活動に実績のあるボランティア団体との連携によります譲渡の仕組みを、東京都では構築しております。現在、二十四の団体と連携しており、平成二十年度は、譲渡いたしました動物の約四分の三が、これらの団体を通じて新たな飼い主に渡っております。
 引き続き、より多くの団体との連携を深めまして、円滑な動物の譲渡に努めてまいります。

○和田委員 自発的な二十四団体だと思うのですけれども、奨励して、それを二十四から三十にふやしていくということで、地域ネットワークが細かく張れるということにもつながるわけでありますから、その奨励の方もよろしくご努力いただきたいと思うんです。
 さきに挙げた環境省のガイドラインでも、都が力を入れている地域猫を評価しています。
 そこで、地域猫の適切な愛護、管理、そして望まれない繁殖を避けるための取り組みを拡大していくべきと考えますが、都の見解を伺います。

○安藤福祉保健局長 都は、地域住民が主体となり、ボランティアや区市町村等と共同して、飼い主のいない猫を地域において適正に管理するための取り組みを、都内二十地域でモデル事業として実施をいたしました。この結果を踏まえまして、ガイドブックを作成して区市町村等に示し、地域における活動の促進に努めております。
 今後とも、飼い主のいない猫対策を行っている区市町村への財政的支援を実施するとともに、取り組みが始まったばかりの地域や効果的な対策が見出せずにいる地域に対しましては、研修会への講師派遣などの支援を行ってまいります。

○和田委員 何しろ東京都の動物愛護政策は、環境省が見習うようなところにまで、レベルの高い一つの水準にいるということは認められるのです。したがって、それに安心せずに、より高い目標に向かって努力をしていただきたいということを申し上げておきます。
 次に、土地信託について伺います。
 予算特別委員会資料の第三十一号には、土地信託五カ所の一覧が明示をされています。土地信託は、バブル経済の中、民間の活力活用をもって地価高騰を顕在化させない、都有地あるいは都にかかわるその活用方針であります。また、二十年間の信託期間が終了すれば、東京都に土地などが戻ってくることもメリットの一つとして挙げられていました。
 そこで、まず、土地信託を導入した当時の目的について伺います。

○村山財務局長 当時は、オフィスビルの需要増加に伴い、不動産価格が激しく高騰するなど、地価高騰への対策が行政の最優先課題となっておりました。一方、東京都におきましては、淀橋浄水場跡地などの大規模な都有地の活用という課題がございました。
 こうした状況下で、仮に都有地を売却してしまいますと、当時の状況下においてさらなる土地高騰の呼び水となりかねず、地価高騰を抑制する立場にある都がこれに拍車をかけることには問題がございました。
 また、貸し付けの手法をとることは、この地価対策の面ではメリットがございますが、当時の法制度のもとでは、借り手に、以後、永続的に使用されてしまう可能性もございまして、都民の貴重な財産である都有地を将来的に制約しかねないという問題がございました。だからといって、行政が直接ビルを建ててオフィス床などを供給することは、ノウハウ等も乏しく、民間との役割分担の問題もあり、適切に運営していくには難しい問題もございました。
 こうした中、昭和六十一年の地方自治法改正により制度化されました、新たな土地活用手法としての土地信託方式が着目されたものでございます。この制度は、土地所有者が土地を信託銀行などに信託をいたしまして、銀行側がそこにみずから建物を建て管理運営するものでございまして、メリットとして、土地の売買を伴いませんので、地価の高騰を招くおそれがないこと、信託期間終了後には、お話のございましたように当該土地と建物が確実に返還されること、さらに、財源負担を伴わないで民間の知識、経験を利用して有効な土地利用ができることなどがございました。
 都としては、当時の社会経済情勢を踏まえ、地価高騰の要因とならないこの土地信託方式を採用することによりまして、都民の貴重な財産である都有地の有効活用を図ろうとしたものでございます。

○和田委員 目的はわかりました。では、結果はどうか。これから申し上げますけれども、土地信託で最初に二十年の契約満了を迎えるのは新宿モノリスです。地上三十階、地下三階、九万平米の広がりがあります。ことしの七月に契約満了を迎えるんですね。新宿モノリスの土地信託に関する当初の事業計画では、二十年間の予想信託配当は二千四百十六億円となっていたのです。しかしながら、これまでの実績は、何と五百十九億円にすぎません。予想を大きく下回るものとなっているのです。
 また、東京都健康プラザは、平成五年四月竣工なので、あと三年で信託期間が終了しますけれども、予想配当は幾らかというと、千六百八十一億円でありましたけれども、平成二十一年度までの十六年間の信託配当は十億円にもなっていないのです。
 そのほかの信託についても、予想信託配当を大きく下回るものばかりであります。これでは、土地信託は失敗といわれても仕方がありません。
 そこで、新宿モノリスを含めた土地信託の評価について伺います。

○村山財務局長 土地信託方式は土地の売買を伴わないため、地価の高騰を招くおそれがないなどの種々のメリットがありますが、一方、この方式は、信託受託者が建物建設費を金融機関などから調達し、賃料収入の中から諸経費や借入金返済額などを差し引いた残金を信託配当として受益者に支払うというスキームでございますので、信託期間内において安定的に賃料収入を確保していくことが制度の前提となっております。
 したがいまして、人件費や支払い金利など、コストがある程度固定化している状態においては、収入である賃料が大幅に下落することは基本的に想定されていないスキームというふうにいわざるを得ません。
 事実、当時、地価は、オイルショック直後の四十八年に一度下がったことを除けば、一貫して上昇し続けておりまして、まさに土地神話が形成されておりまして、地価が大きく下落するということを予想する人は余り多くはなかったという状況でございました。実際の地価の動向はご存じのとおりでございますが、バブル経済の崩壊により、こうした土地神話が崩れまして、区部商業地での平均価格は、平成二年から比べますと、これまでの間に最低で六分の一の水準まで落ちまして、若干持ち直した平成二十一年時点でも、当時の約四分の一の水準となっております。
 そうした中にありまして、率直に申し上げまして、土地信託事業は非常に厳しい経済環境の中で運用されてきておりまして、他の自治体等におきましては、信託配当が全く得られないケースや、あるいは事実上破綻してしまうというケースも起きております。
 東京都におきましては、東京という都市の高いポテンシャルにも支えられまして、当初想定していた配当予想に比べれば相当大幅に減少したわけでございますけれども、五件の信託事業すべてにおきまして毎年利益を上げており、これまでに、全体として五百四十億円余りの信託配当を得てきております。
 とはいえ、この方式の総括、評価というものをしっかりすることが必要でございます。したがいまして、既に専門家チームを発足させまして、現在、この方式のトータルな総括、評価に取り組んでおります。

○和田委員 ほかの自治体では配当がゼロだからというような、何か自己肯定されるような答弁は決していただけません。都民の立場から見て、当時のバブルをいかに下げるかということも、公の皆様方としては当然考えられるべき姿勢ではなかったのでしょうか。
 すべての信託事業で毎年配当を得ているとおっしゃっても、健康プラザに対して東京都は、賃料、共益費で年間三十一億円余を払っているんですよ。配当予想は千六百八十一億円に対して、十億円という結果なんですよ。これはどういうわけなんですか。
 さきに挙げた新宿モノリスの供用開始は平成二年七月一日であり、本年七月には信託契約が切れるんです。
 地方自治法第二百三十八条の五の解釈によれば、信託しようとする土地に既存の建物がある場合で、当該土地及び建設の管理処分のみを目的とする場合には、これを信託することはできないとしています。
 つまり、二十年間の信託期間が終了した場合、この土地には既にモノリスという既存の建築物があるわけでありますから、これを管理処分する場合は信託することができないのではないかという懸念もあるのです。
 モノリス以外にも、墨田区の両国が平成二十四年、新宿区歌舞伎町のハイジアが平成二十五年、それぞれ信託期間が満了するほか、渋谷区のコスモス青山、中央区の勝どきについても順次満了してまいります。今後は、信託事業の継続も含めた事業のあり方等について検討していく必要があると思われます。
 そこで、モノリスを含めた土地信託事業の今後のあり方について見解を伺います。

○村山財務局長 本年秋にモノリスが二十年間の信託契約が満了するのを皮切りといたしまして、これから平成二十八年度にかけまして各信託ビルは満了期を迎え、都としては、信託事業を継続するのか、他の活用方法に切りかえていくのか、判断をする必要がございます。
 その際に留意すべき点といたしましては、一つは、土地をめぐる制度的な変化でございます。借地借家法の抜本的な改正によりまして、定期借地などの手法ができたことなど、所有権移転以外の多様な手法が可能となっております。
 また、経済的、文化的にポテンシャルの高い東京におきましては、土地活用のメリットが高く、土地信託も含めた多様な手法が開発されてきておりまして、それらをとり得る可能性も広がっております。
 一方、リーマンショック以降、金融機関の間には、長期のリスクを背負うこととなる土地信託方式について逡巡するムードがあることも事実でございます。
 そこで都は、先ほど申し上げましたとおり、既に、法律、会計、土地鑑定などに精通いたしました専門家などを招きまして専門家チームを設置いたしております。このチームでは、契約満了期を迎え、土地活用をめぐる環境に大きな変化が起きていることを踏まえまして、土地活用手法としての土地信託方式について、その手法のありよう、あるいはマネジメントのあり方などを含め、トータルに総括、検証し、その結果を踏まえ、都としての出口戦略を今、検討しているところでございます。
 こうした検討作業を進めながら、まず、終期を迎えるモノリスの取り扱いについて方針を定める予定でございます。そして、引き続き、個別の都有地それぞれにつきまして、関係部局とも連携いたしまして、収益面のみならず、多面的に都民にとって最も有効となるような利活用の方法を構築していく方針でございます。
 なお、モノリスについて申し上げますと、土地信託方式を終了させて所有権を都に戻し、他に活用する方法が一つございます。また、信託を延長するという選択肢もありますし、あるいは信託期間終了前に管理処分型に切りかえて信託をするという方法もございます。
 そういったさまざまな選択肢も含めまして、可能性をいろいろなことを追求しながら、既に総合的な検討を始めているこのチームを活用いたしまして、しっかりとした出口戦略をつくってまいります。

○和田委員 お聞きすると、バブル逃れのバブル倒れといったような気がするんです。専門家チームの精力的な一つの努力に注目してまいりたいと思いますが、ぜひぜひこの処理についてはしっかりとした責任を果たしていただきたいと思うんです。
 次に、雨水浸透ますの設置拡大について伺います。
 先日の総括質疑において、我が党は、雨水浸透の状況とその重要性に対する認識について質問しています。環境局長は、これまでの不浸透面積率の調査によれば、東京においては都市化が進み、地表が舗装や建築物で覆われ、雨水が地面にしみ込みにくくなっている状況が継続していること、そして豪雨対策の一環としての雨水浸透の推進は、地下水の涵養や湧水の保全対策のみでなく、下水道への雨水の流入抑制にも寄与するなど、水循環の重要な構成要素であると認識していると答弁されました。
 我々は、都議選の際に掲げた東京マニフェストにも、ゲリラ豪雨の対策として、この雨水浸透ますの設置促進を掲げました。
 そこでまず、都内の浸透ますの設置状況と、浸透施設全体の対策量がこの十年間でどのように推移しているのか、具体的に伺います。

○河島都市整備局長 河川整備や下水道整備に加え、雨水浸透ますなど雨水の流出を抑制する浸透施設の設置は、豪雨が生じた場合の対策として有効でございます。
 雨水浸透ますは、平成十一年度から平成二十年度末までの十年間で約二十四万個設置されておりまして、平成十年度以前のものと合わせて、合計約五十万個となっております。
 また、雨水浸透ますや浸透トレンチなど、浸透施設により流出抑制される雨水の対策量は、同じく十年間で約百三十三万立方メートル増加しておりまして、合計約二百五十二万立方メートルとなっております。
 このように、雨水浸透ますの設置個数と浸透施設による対策量は、それぞれこの十年間で倍増しておりまして、着実に対策が進んできております。

○和田委員 都の平成二十二年度予算案では、雨水浸透ますの設置助成地域が四つの流域から七つの流域に拡大される方針です。流域を一つのブロックとしてとらえ、一体的に取り組むことには意義があります。より大きな雨水流出の抑制効果が期待されます。
 さらに、都議会民主党の復活予算要望により、雨水浸透施設の設置指導等の強化事業として、区市町村への普及等を支援する経費として三千五百万円の予算が実現いたしました。
 そこで、雨水浸透ますの設置助成の対象流域の拡大及び新たな復活予算により実施される事業に期待される具体的な効果について伺います。

○河島都市整備局長 都は、平成十九年八月に東京都豪雨対策基本方針を策定いたしまして、神田川など四流域において、区市が実施する個人住宅への雨水浸透ます設置費用の助成事業に対しまして補助を行ってまいりました。
 さらに、平成二十二年度からは、野川など三流域を補助対象に加える予定でございまして、これらの流域でも雨水の流出抑制が進むことになります。
 また、新たな事業として、区市の豪雨対策に資する計画や指導要綱等の策定に要する費用を補助する予定でございまして、区市の取り組みの充実が図られ、雨水浸透施設の設置促進が期待できると考えております。

○和田委員 都の個人住宅への助成実績は、平成十九年、二十年では年間の平均設置助成件数が三百九十四件となっています。一方、都の目標は、平成二十一年で千件、平成二十二年で千九百件とされています。
 我々都議会民主党は、その目標を一年間に三千件と、さらに大幅に拡大して取り組むべきと考えています。執行率を上げていくための今後の取り組み方針と設置目標の数について見解を伺います。

○河島都市整備局長 雨水浸透ますの設置拡大を図るためには、事業主体となる区市におきまして助成制度等を整備することが必要でございます。
 このため、まず、事業の対象となる七流域の区市のうち助成制度がいまだ整備されていない七区市に対しまして、制度の創設を働きかけてまいります。
 さらに、助成制度が既に整備されている区市で新たに補助対象となる三流域の住民に対しては、制度の周知徹底を図るとともに、七流域全域につきまして、都と区市が連携し、雨水浸透ますの設置拡大に向けて普及啓発活動を強化してまいります。
 引き続き、こうした取り組みを通じまして、実行プログラムに掲げた数値目標の達成を目指してまいります。

○和田委員 次に、東京国体に関連して伺います。
 平成二十五年に多摩・島しょを中心として開催される東京国体は、地域を挙げた競技会の盛り上げによるコミュニティの活性化や競技施設の整備など、地域のスポーツ振興につながるものとして期待されています。
 五十四年ぶりに首都東京で開催される国体を成功させるため、都ばかりでなく、区市町村や多くの都民の参加により大会を盛り上げていかなければなりません。
 そこで、これまでの国体の開催準備状況と今後の予定について幾つか伺います。
 昨年、我が党が予算特別委員会において、草の根から東京国体を盛り上げていく観点から、デモンストレーションとしてのスポーツ行事の活用策を質問し、都においても都内全域で取り組んでいく旨が答弁されました。
 その後の進捗状況とこうした行事の活用などにより、今後どのように国体を盛り上げていくのか、都の見解を伺います。

○中田総務局長 東京国体におきましては、身近に親しまれているスポーツの一層の普及と都民総参加の国体を目指しまして、数多くのデモンストレーションとしてのスポーツ行事、これはウオーキングですとかドッジボール、こういった行事でございますが、これを実施することとしております。
 先月、準備委員会におきまして第三次の会場地選定を行い、全部で五十二の区市町村で五十の種目を実施することとし、正式競技、公開競技と合わせますと、都内の全六十二区市町村で何らかの競技、種目を実施することとなりました。
 このように、都民が気楽に参加できる行事を実施するほか、大会運営を支えるボランティア活動に参加していただくなど、多くの方々が国体にかかわれる機会を設け、東京全体で国体を盛り上げてまいります。

○和田委員 東京国体は、環境に優しい国体を特色としております。先ごろ環境指針も発表されました。さまざまな取り組みが挙げられているようでありますけれども、策定に当たっての考え方と特徴的な取り組みにはどのようなものがあるのでしょうか。都の見解を伺います。

○中田総務局長 平成二十年七月に策定しました開催基本構想におきましては、環境への配慮を一つの柱と位置づけており、国内最大のスポーツ大会でございます国体の開催に当たりまして、最大限の環境配慮に取り組み、環境最優先の大会とするため、そのガイドラインとして環境指針を策定いたしました。
 具体的な取り組み内容でございますが、エコ製品の積極活用やリユース、リデュース、リサイクルの推進、公共交通機関への誘導など大会運営全般にわたっており、施設整備に際しましては環境配慮型施設への転換を推進することとしております。
 また、二酸化炭素の排出量や削減量といった、環境負荷と削減努力を見える化するなど、東京ならではの先駆的取り組みも行ってまいります。
 このような取り組みを、都のみならず、区市町村や競技団体を初め、大会を支える多くの方々とともに推進してまいります。

○和田委員 次に、武蔵野の森総合スポーツ施設、仮称でありますけれども、この整備計画におけるサブアリーナの整備について質問いたします。
 平成二十四年度から全国の中学校で武道が必修化されます。現在、都立の武道場は、足立区の綾瀬にある東京武道館しかありませんが、多摩地区に武道場ができることによって、武道の広がりに大変貢献できるのではないかともいわれているところであります。
 例えば、武道の段位審査を行うに当たって、剣道の四段と五段の審査は都道府県単位で行われますが、会場は綾瀬の東京武道館だけのために、多摩地区からわざわざ遠く綾瀬まで行くことになります。
 もしも多摩地区に武道場ができることが可能であれば、そこを審査会場やけいこ場として利用できることになるわけであります。大変な利便となります。
 そこで、サブアリーナを創設するに当たり、そのような利点が生まれ、武道が盛り上がっていくこと、それを期待するわけでありますが、都はそのサブアリーナの機能に関して、武道的な役割をどのように認識して計画しているのか、お伺いをいたします。

○秋山生活文化スポーツ局長 都では、地元三市との協議や都民ニーズ等の調査を踏まえまして、昨年四月、武蔵野の森総合スポーツ施設基本構想を策定いたしました。
 この中で、サブアリーナにつきましては、メーンアリーナの補完的役割を担う施設としての機能に加えまして、剣道や柔道などの武道大会やその練習会場として使用することができる施設として整備をすることとしております。
 具体的には、柔道などの武道種目にも対応するため、畳を常備いたしますほか、地域の武道大会の開催が可能になる数百席程度の観客席を設置する計画でございまして、多摩地域の武道振興にも寄与するものと考えております。

○和田委員 スポーツ万能というよりも、武道こそスポーツと併存していくべきだという今の答弁に、私は心強いものを感じたわけであります。
 次に、中学校武道必修化について質問いたします。
 平成十八年十二月、六十年ぶりに教育基本法が改正されました。教育の目標に、伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた国と郷土を愛するとともに、他国を尊重し、国際社会の平和と発展に寄与する、この態度を養うことが位置づけられ、学校教育法も改正されました。
 こうしたことを受け、平成二十年一月、中央教育審議会答申においても、保健体育科における武道の指導を充実し、我が国固有の伝統や文化により一層触れることができるように、これが大事だという指摘があったわけであります。
 平成二十年三月の学習指導要領の改訂により、中学校で武道必修化となり、東京都でも、国立、公立、私立の八百二十二校が武道必修化になるわけであります。
 二十四年度から完全実施となりますが、この中学校武道必修化の具体的な内容と、これまでの都教育委員会の取り組みについて伺います。

○大原教育長 現行の中学校学習指導要領では、武道の領域は、第一学年においては、武道及びダンスのうちから男女とも一領域を選択して履修できるようにすること、第二学年及び第三学年においては、球技、武道及びダンスのうちから二領域を選択して履修できるようにすることとされておりまして、必ずしもすべての生徒が武道を学習することにはなっておりません。
 平成二十年三月の中学校学習指導要領の改訂によりまして、平成二十四年度からは、男女を問わず、中学生は武道及びダンスが必修となり、とりわけ武道の授業では、柔道、剣道、相撲の中から一つの種目を学習することとされました。
 都教育委員会は、これを受けまして、直ちに平成二十年度から、区市町村教育委員会や中学校に対し、武道必修化の意義やねらいを周知し、指導面や施設設備面等の安全対策を働きかけてまいりました。
 さらに、平成二十一年度には、保健体育科教員を対象とした柔道の指導者講習会の開催や、児童生徒用の武道実技のDVD視聴覚教材の制作を行ってまいったところでございます。

○和田委員 都内の国立、公立、私立八百二十二校が必修化になるということであります。今回の改訂によりまして、平成二十四年度から全中学校において武道の学習が開始されますけれども、今まで選択制であったこともあり、保健体育科の教諭でも武道の指導経験のない人が多いのであります。
 学校において、今後、武道が必修となることに伴い、武道の価値を生かした指導の充実を図るため、教員の指導力の向上が当面の課題であると考えますが、都教育委員会はこの課題にどのように取り組むのか伺います。

○大原教育長 生徒が武道の学習を通して、我が国固有の伝統や文化に触れ、伝統的な考え方や行動の仕方を大切にし、自分で自分を律する克己の心等を身につけていくことは、日本人としてこれからの国際社会をたくましく生きていくために必要であり、心豊かな青少年を育成することに寄与するものであると考えております。
 武道は専門的な指導力を必要といたしますことから、平成二十二年度、都教育委員会は、教員のための指導事例集の作成、配布や、平成二十一年度の柔道実技に引き続き、剣道等の指導者講習会の開催により指導力の向上に努めてまいりますとともに、競技団体等と連携を図り、地域の有段者など外部の専門家の力を活用したモデル事業を実施することとしております。

○和田委員 いわゆる外部指導員の充実がないと、今の体育の先生は、サッカーもできる、テニスもできるけれども、柔道の乱どりもできない、剣道の正面打ちもできない、こういう方が多いわけでありますから、外部指導員の育成こそがかぎだということを私は指摘しておきます。
 ただいまの答弁で、武道の精神的価値について述べられました。私が所属している都議会武道議員連盟では、先月、高円寺の駅におきます、線路にホームから転落した女性を救出した若者を表彰いたしました。彼は無我夢中で助けたということでありますけれども、みずからの命を顧みず人を助けたという点で、武道精神に通ずるものがあると感じたからであります。
 また、先月の日本経済新聞で、柔道家で元金メダリストの山下泰裕さんの記事がありました。中学校に入るまでは周囲に手をやかせた彼は、柔道に出会い、相手を敬い、礼に始まり礼に終わるといった柔の道を恩師から教わり、社会のために役立つ人間にならなければならないと考えを改めたとのことであります。この山下さんのケースのように、武道は子どもたちの心に公共心と正義感を根づかせることができると思うのであります。
 次に、交通政策について伺います。
 地下鉄の建設に当たっては、莫大な初期投資が必要であり、建設財源を調達するために多額の企業債を発行しますが、それに伴う利子負担や減価償却費が都営地下鉄の経営を圧迫してまいりました。
 私が公営企業委員会の委員でもあった平成十四年度の高速電車事業会計の決算は、経常収支で約二百九十億円の赤字でありましたけれども、二十年度決算では、経常収支で約百四十億円の黒字となっています。
 このたび策定した東京の交通局の新しい経営計画の収支目標を見ても、三年間黒字を計画するなど、都営地下鉄の経営状況は着実に改善してきています。しかし、いまだ多額の累積欠損金や長期債務があり、今後、これを着実に解消、縮減していく必要があります。
 そこで、都営地下鉄の累積欠損金の解消や長期債務の縮減に向けた今後の取り組みについて伺います。

○金子交通局長 都営地下鉄は、長い間厳しい経営状況が続いてまいりましたが、大江戸線開業のネットワーク効果などによる乗客数の増加や減価償却費の減少、これまでの効率化努力などが実を結びまして、平成十八年度に黒字転換して以来、累積欠損金も減少するなど、経営状態は着実に改善しております。
 しかし、今後、人口減少社会を迎え、長期的には乗客数の増加が見込めない中で、大江戸線へのホームさく設置など、より高いレベルでの安全対策や質の高いサービスの提供、さらには環境問題への対応など、高度で多様な役割を果たすことが求められております。
 今後、新しい経営計画を着実に実行し、乗客ニーズや社会的要請にこたえつつ、増収や効率化など一層の経営努力を行うことで利益を生み出し、将来を見据え、計画的に累積欠損金の解消、長期債務の縮減を目指してまいります。

○和田委員 公営企業は、大きな黒字を出すことも、そして大きな赤字を出すことも私は必要ないと思うんです。あくまでも公営でありますから、ほどほどの黒字とほどほどの赤字の間をうまく調整していく、そういう経営方針こそが私は大切だというふうに考えています。
 したがって、黒字黒字、運賃値上げといったようなものではなくて、また働く人々の賃金の抑圧というのではなくて、やはり公営企業体としての一つの姿勢をしっかり哲学として持っていただきたいということを申し上げておきます。
 引き続き、財務状況の改善に努める一方で、大勢の利用者がある都営地下鉄の安全確保については万全を期さなければなりません。
 交通局では、経営効率化のため事業の委託を進めていますが、鉄道業界では、重要な保守点検業務などは事業者みずからの責任で行うか、経営効率化のために委託する場合でも、安全の確保と事業のノウハウが他社に流れ出してしまうことを防ぐため、グループ会社に任せるのが一般的な一つの傾向だと聞いています。いわゆるノウハウの他社への流出、これに大いに注意を払っているということであります。
 この点について、交通局の新たな経営計画を見ますと、東京交通サービス株式会社を監理団体化することなど、関連する団体について、交通局グループとしての一体的な事業運営に努めるとしてあります。これは、従来の経営計画ではうたっていなかった斬新な姿勢だと私は思っているのです。
 そこで、今後、どのように関連団体や監理団体を活用していくのか、伺います。

○金子交通局長 交通局ではこれまで、経営の効率化を図るため、保守業務などの委託を進めてまいりました。
 今後、一層の安全・安心の確保と経営効率化の両立を図り、かつ、これまで蓄積された経験と技術力を維持、継承していくために、より積極的に人的交流を図るなど、関連団体との連携を強化し、適切な役割分担のもとで一体的に事業を運営していくことといたしました。
 具体的には、都営地下鉄の保守業務におきましては、事業運営の根幹に係る施設、設備の保守整備計画などのいわゆるコア業務は交通局直営とし、監理団体となる東京交通サービス株式会社には、局職員と同等の知識や経験を要する検査、確認、監督といった準コア業務などを委託することにより、安全・安心の確保と効率化の推進及び技術の継承を図ってまいります。

○和田委員 以上で私の予定した質問を終わるわけでありますけれども、質問を閉じるに当たり、今回の質問の大きなポイントは、築地市場にかかわる現地再整備といったような問題が、知事の答弁によって大きく転換されたということであります。
 私どもは、真摯にこの知事の姿勢を受けとめながら、議会人としての責務を十全に果たしてまいりたいということを申し上げ、私の予算委員会の総括質疑を終わらせる次第であります。(拍手)

○酒井委員長 和田宗春副委員長の発言は終わりました。
 この際、議事の都合により、おおむね十五分間休憩いたします。
 午後五時十六分休憩

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