予算特別委員会速記録第四号

○酒井委員長 宇田川聡史委員の発言を許します。
   〔委員長退席、服部副委員長着席〕

○宇田川委員 築地市場の豊洲移転については、土壌汚染以外にも幾つかの課題があると認識をしております。
 しかし、その一つ一つをきちんとクリアし、関係者がそろって移転後の新たな市場形成にご尽力をいただきたい。そのための状況、土台をつくり上げていくことが市場設置者としての東京都の責務と考えます。
 三年前の平成十九年、予算特別委員会のこの場で、築地市場の移転整備について質問させていただきました。当時、市場長からは、十分な対策を講じるため安全性に問題はない、石原知事からも、手厚い土壌処理を施し、万全の対策を講じていくとした上で、さらに、疑問があれば解明し、都民全体に安心していただくよう説明していく、こういった答弁でありました。
 これを受ける形で、その後、豊洲市場予定地における土壌汚染対策等に関する専門家会議、豊洲新市場予定地の土壌汚染対策工事に関する技術会議を経て、先週発表された汚染物質処理に関する実験についての中間報告へとつながってきたわけでございます。
 実験の中間報告を受けて、土壌処理については、安全・安心の確保に向けて大きな前進をしたと私は思っておりますが、まず見解をお伺いいたします。

○岡田中央卸売市場長 豊洲新市場予定地の土壌汚染対策で採用した技術、工法は、実証データや豊富な施工実績に裏づけされた、技術として既に確立されているものでございます。
 こうした技術を、新市場予定地の汚染土壌と汚染地下水の除去、浄化に対し、実際の土壌汚染対策工事と同様に適用することで、確実に無害化が可能であることを具体的なデータにより確認する実験を今行っているわけでございます。
 これまでの実験で、洗浄処理及び中温加熱処理につきましては、汚染物質が環境基準以下になったことを確認いたしました。
 中間報告ではありますが、これら処理技術の対象となる汚染土壌が、処理土量の大半を占めることから、技術会議が定めました汚染物質除去技術の有効性を改めて確認することができたと考えてございます。
 引き続き実験を進めまして、六月末の最終報告で、すべての処理技術の有効性を確認いたしまして、この対策を確実に実行し、人が生涯この地域に住み続けても健康への影響はなく、生鮮食料品を取り扱う市場用地としての安全・安心を十分確保してまいります。

○宇田川委員 さて、土壌汚染対策については、今お話がありましたとおり、結論を導くための基礎がしっかりとでき上がり、六月になされる実験の最終結果をもって、まさに安全・安心の確保がなされることになる、こう思っております。
 しかし、このこと以外にも、豊洲移転について、市場関係者の一部からは不安や不満の声が聞こえてまいります。
 私は、この土壌汚染の状況が表面化するその以前から、反対されている多くの方々よりその声を耳にしておりまして、実は、この安全面対策以外の問題にこだわっておられる方も多いんだと思います。だからこそ、このことの解決をしっかりと図っていくことも大切だと考えます。
 個々の細かい点を挙げれば切りがないことですが、三点についての声が大きい、その三点についてこれから質問していきたいと思います。
 一点目は、計画案についてでございます。
 豊洲新市場における施設配置は、三つの街区から成り立っておりまして、それぞれが幹線道路によって分断をされています。特に水産卸の七街区と水産仲卸の六街区、これが幅四十メートルの補助三一五号線によって分断をされている、こういう計画になっております。
 卸と仲卸が分断されていて仕事になるわけないじゃないかと。私は、これ、当然のことだと思います。物流の確保はどのようになされるのか、お伺いいたします。

○岡田中央卸売市場長 豊洲新市場では、六街区と七街区に分かれております水産の卸と水産の仲卸が一体的な市場として機能するために、補助三一五号線を高架化いたしまして、その下に四本の連絡通路を設け、円滑に往来できる場内の物流動線を確保いたしました。
 この連絡通路の運用を使い勝手のよいものにするために、連絡通路内では、歩行者と搬送車両とを分離して通行することで安全性を確保いたします。
 また、各通路にレーンを設置することによりまして、車両などがふくそうすることなく、一分間に最大約八十台のターレットが通行でき、スムーズな荷の搬送が行えるようにしてまいります。
 さらに、施設面におきましては、連絡通路を売り場と一体とした閉鎖型といたしまして、温度管理を行い、荷の品質、衛生管理の徹底を図ってまいります。
 今後も、連絡通路の具体的な運用方法につきまして、模型などを使いながらわかりやすく説明し、理解を求めまして、市場業者の方々の場内物流の不安解消に向けて取り組んでまいります。

○宇田川委員 今ご答弁にありましたとおり、閉鎖型で一体化されるというお話は、実はわかっていない方が大変多いわけでございまして、今後しっかり説明を果たしていただきたいとお願いをしておきます。
 二点目は、移転に対する支援についてお伺いいたします。
 流通環境は厳しさを増しており、金融危機以来の景気低迷の中、多くの市場業者は、日々の営業や今後の事業継続の先行きにさまざまな悩みを抱えることだと思います。
 その上で、移転に伴う引っ越し費用や新たな設備投資などの一時的な資金、また、賃料を含んだランニングコスト等に対しては大きな不安感が募っていく、そのことはうなずけることであります。
 こうした不安を払拭し、市場業者が安心して新市場に移転できるようにすることも、開設者である東京都の責務でありまして、市場業者の要望に対し、十分に配慮した支援策を都の責任としてきちんと果たしていくことは大変に重要だと考えております。
 先日も公明党さんより同様の質問があったところですが、質問の切り口が少々異なっておりますので、改めて見解をお伺いいたします。

○岡田中央卸売市場長 都は、昨年の夏から各業界団体との意見交換会を行いまして、移転支援などについての意見や要望を伺ってございます。
 さらに、本年の一月からは、水産及び青果の仲卸業者を対象に個別面談を実施しております。個々の経営の実態や支援に対する要望などの実態把握に努めているところでございます。
 この個別面談などにおきましては、顧客の減少、後継者難、新規事業立ち上げの困難さなど、さまざまな経営上の課題が明らかにされる一方、新市場の設備や使い勝手に対する要望ですとか、支援の内容、貸付条件などに対して多くの意見が出されるなど、都の支援に対する強い期待も示されました。
 都はかつて、大田市場への移転に際しまして、利子補給や移転資金貸付を実施いたしましたが、今後、これらの支援策も参考に、個別面談等で把握した実態を踏まえ、移転に伴う費用負担や事業の継続などの課題に対応し、市場業者が安心して移転に臨める支援策を検討してまいります。

○宇田川委員 お話がありましたとおり、個別面談などを実施して実態把握に努めている等の答弁があったところですが、ぜひとも丁寧に業者の意見、また要望をしっかりとらえ、移転のための支援をしていただくことをぜひともよろしくお願いをいたします。
 三点目は、いわゆる築地ブランドについてでございます。
 豊洲で新たなブランドを醸成するためには何が必要なのか。私は二つあると思っております。施設の整備、そして人であります。
 かつて青果が神田から大田に移転した際、反対関係者から声が上がっておりました。神田のやっちゃ場として親しまれたブランドを失うことを危惧しての声だった、そう聞いております。
 しかし、平成元年に神田より移転をし、広大な敷地で効率的な物流を目指して整備した大田市場は、開場して以来、取扱量は増加傾向でありまして、全国一の取り扱いを誇る拠点市場となりました。だからこそ、遠くから、よりよい商品を求めて大田市場に買いに来る買い出し人が非常に多いとも聞いております。
 また、私の地元でありますが、葛西市場において、平成の時代に入って、取扱高、取扱量、減少傾向に一向に歯どめがかからない状態だったんです。
 しかし、平成十九年に卸売場や荷さばき場などを大幅に低温化したことによって、翌年には前年比一・四倍という著しい取扱量の増加があったということであります。
 したがって、広い敷地での効率的物流の確保や最先端技術による品質管理の向上が確実に見込まれる豊洲においては、狭隘で老朽化が進んでいる現在の築地市場より取扱量が減少に向かうということは考えにくく、むしろ増加へ向かうのではないか、そうした考えは決して私はいい過ぎではない、そう思っております。
 一方、人についてでございますが、食材に対する知識、食材を取り扱うノウハウ、そして食材のよしあしを判断する力、つまり、河岸行きの皆さんの目きき、このことによって、より早く、より安く、より安全な食材として流通をさせてきたんです。このことは、築地ブランドを醸成してきた大きな要因だと私は確信をしております。決して場所や名称じゃないです。顧客ニーズに沿った設備とわざを持った人がそろえば、ブランド消滅などという不安は決してない、私はそう思っております。
 そこで伺います。
 ブランドというものについて、都はどのような認識を持っておられるのか。豊洲移転によってブランド力は失われてしまい、豊洲ブランドの醸成はしがたいものなのでしょうか。
 また、日本橋の魚河岸が築地に移った後も、日本橋のブランドはその生命力を維持し、そして高めてきた、こういう歴史が示すように、築地ブランドも移転によって廃れるのではなく、東京の貴重な財産として、さらにその価値を高めていくことに知恵を絞ることこそ大切だと考えますが、あわせて見解をお伺いします。

○岡田中央卸売市場長 お話の、いわゆる築地ブランドとは、築地市場で扱います生鮮食料品に対する信頼に培われた、他に類のない魅力でございます。
 このブランドは、国内外からの多種多様な品ぞろえ、目ききによる品質の信用、プロの買い出し人が認めるプロの評価など、築地市場の持ちます本来の機能や市場で働く人々の活力からつくり出されていると考えてございます。
 しかし、築地市場は、老朽、狭隘化が著しく高度な品質管理が困難など、深刻な課題を抱え、このままでは市場自体の活力が衰退し、ブランドとしての魅力も失われてしまうおそれがございます。
 そのため、一刻も早く豊洲に移転し、低温施設の整備や効率的な物流の実現など、時代のニーズに対応した市場機能の強化を図っていく必要がございます。
 移転することでブランドがなくなってしまうとの意見も一部にはございますが、築地の信頼を担ってきた卸、仲卸など市場業者が移ることで、築地市場が築いてきた活気と伝統が引き継がれます。
 市場業者からは、我々がブランドそのものだ、我々が移るのだから、多少時間はかかるかもしれないが、必ず豊洲でも新しいブランドはできるので心配ない、こうした話を伺っております。
 日本橋から築地に移転した際に、日本橋も引き続き栄え、築地も栄えた歴史に学び、新たな豊洲の地に移転しても、双方の地域を発展させていきます。

○宇田川委員 私は、この質問の冒頭で、関係者がそろってご尽力をいただきたい、そう申し上げました。
 最新設備が整い、円滑な流通確保をする。その上で、卸も仲卸も、水産も青果も、すべての関係者に豊洲へ移っていただきたい。皆さんが誇りに思っている目きき、これを豊洲で発揮していただく。それができれば、豊洲ブランドという新しいブランドを築くことに大して日数はかからない、私はそう信じております。
 現在の築地市場を今のまま放置しておくわけにはいかないんです。このことに反対する意見はないはずです。どんな形であれ、早期に新市場整備を行う必要性も否定できません。市場関係者の大多数は、今の状況に悲鳴を上げ、一日も早い整備を求めているのです。だからこそ、無意味な先延ばしや、ためにする議論ではなく、建設的な議論を相当なるスピード感を持って進まなければならないのです。
 市場を通らない取引が増加し続けている今、このままでは市場の発展など望むべくもなく、衰退の途をたどるのみです。すべての関係者のためにも、消費者のためにも、豊洲移転を遅滞させることなく進めていくことを願っております。
 そのためには、土壌汚染問題を解決していくこと、そしてもう一つは、市場関係者が直面しているさまざまな課題を一つ一つ解決する道筋もまた、新市場整備にとって不可欠なことだと考えます。
 知事には、関係者がそろってご尽力をいただけるような新市場整備を進めることについて、強い決意を持って臨んでいただきたい、私はそう申し上げておきます。
 改めて、新市場整備を進める意義と実現に向けた知事の決意を、この問題の最後にお伺いをさせていただきます。

○石原知事 そもそも、現在地再整備なるものは、巨費を投じた末に挫折しまして、かんかんがくがくの議論の上で、築地を豊洲に移そうということが決まっていたわけであります。
 この問題を難しくしたのは、突然露見した高濃度の土壌汚染でありました。
 しかし、今、日本に存在する最高水準の技術を使ってすれば、これは解決できるということで実験を行っておりますが、六月末にはその実験の結果が判明します。
 その結果は、日本の最高権威であります学者の先生たちで構成される技術会議で検証してもらいまして、都民にもわかりやすく公開するつもりであります。これを見てもらえば、土壌汚染の不安は一掃され、豊洲移転に反対する理由はなくなると思います。世間も十分納得すると確信しております。
 このまま手をこまねいていたならば、老朽化した築地がとてももたないのは明白でありまして、築地は流通から取り残される。本体が廃れたらブランド価値もあったものじゃないと思います。
 おっしゃったとおり、豊洲も築地も、ともにブランドとして並び立つような妙案をみんなで考えればよろしいと思います。
 そのためにも、業界一人一人の声に耳を傾けることはとても重要だと思います。現場には、さまざまな思いや切実な願いが積み重なっていると思います。
 土壌汚染対策には万全にも万全を重ねるとともに、市場が直面している現実の課題を克服しながら、早期に、できるだけ早期に、都民のために新市場整備を進めていきたいと思っております。

○宇田川委員 万全の上にも万全を重ねていただく、そういうお話もございました。ぜひ知事には今の思いをしっかりと確保していただいて進めていただきたいと思いますし、我々もしっかりと応援をさせていただきたいと思います。
 次に、特別支援学校についてお伺いさせていただきます。
 江戸川特別支援学校、当時は江戸川養護学校という名称でございましたが、その寄宿舎閉舎の計画を受けて、平成二十年でありますが、第一回定例会の場において、子どもたちにとって宿泊を伴う生活訓練の意義や重要性を訴えさせていただき、指導の場をきちんと確保していくべきだと提案をさせていただきました。
 これに対し、当時の教育長からは、障害のある子どもたちの基本的生活習慣の確立、自立や社会参加に向けた教育は重要な指導内容であり、江戸川特別支援学校においては、校内に宿泊可能な設備を有する生活訓練室を新たに整備し、生活指導や宿泊行事の内容充実を図っていく、こういう答弁をいただいたところであります。
 今後、小岩特別支援学校と発展的統合を進め、仮称ですが、江戸川地区特別支援学校として平成二十六年度に開校すると聞いておりますが、工事の関係で、生活訓練室の整備はそれ以降だと、ちょっと残念な話を聞いてしまったところでございます。
 質問のときから二年が経過をしたわけでございますが、整備に向けた準備はどの程度なのでしょうか。その準備状況をお伺いするとともに、さきの答弁でありました生活訓練の内容充実にどのように取り組んでいかれるのか、お尋ねいたします。

○大原教育長 江戸川地区特別支援学校(仮称)の整備に向けまして、現在、校舎等の施設の基本設計に着手しております。
 お尋ねの生活訓練室につきましては、その基本設計の中で、規模、配置、動線、基本設備等の具体的な整備内容を決定してまいります。
 また、整備完了後は、その生活訓練室を活用して、これまで寄宿舎生に限られていた指導の対象を、在籍するすべての児童生徒に拡大しますとともに、日常生活に必要な一人での着がえ、洗面や歯磨き等の身の回りのことなどを自分で行う力を向上させる指導を計画し、継続して取り組んでまいります。

○宇田川委員 ぜひハード、ソフトの両面から指導の充実を図っていただきたいと思います。
 加えて、統合による校舎建設との関係で、先ほども申し上げたとおり、どうしても時間に空白が出てしまう。このことは十分に理解をしているわけでございますが、生徒や保護者の皆さんにとっては、待ち望んだ施設をせっかく整備していくわけですから、一日も早い完成と、その空白時間における指導内容が低下しないよう、最大限の努力を重ねていただくよう要望しておきます。
 障害のある子どもたちにとって、宿泊を伴うさまざまな学習機会は大変重要な生活訓練の場であり、大きな成果を上げてきております。だからこそ、特別支援学校において、こうした自立や社会参加に向けた教育を充実させる必要があるわけです。
 知的障害と肢体不自由の特別支援学校においては、通常、生活訓練室が整備されているようですが、今後、寄宿舎が閉舎される学校があった場合には、生活訓練ができる場をしっかりと学校内に整備をし、今のお話のとおり、ハード、ソフトともに充実した教育を施していくべきだと考えますが、教育長のご所見をお伺いいたします。

○大原教育長 現在、特別支援学校には、重い障害のための身辺の介助や医療的なケアを必要とする児童生徒から、一般企業への就労を目指す児童生徒まで、多様な障害の児童生徒が在籍しています。
 こうした児童生徒の実態を踏まえまして、今後、寄宿舎を閉舎する学校では、ハード面では、障害の特性に応じて、生活訓練室などの場の確保に努めてまいります。またソフト面では、例えば障害の重い児童生徒には、自分でできる身の回りのことをふやす取り組みを、また、将来の社会的自立を目指す障害の軽い生徒には、ひとり暮らしに向けた生活体験ができる取り組みを工夫するなど、児童生徒一人一人の障害や能力の程度に応じた指導の充実を図ってまいります。

○宇田川委員 寄宿舎の閉舎につきましては、いろんなお話が出てきております。閉舎するのは反対だというご意見もかなり多く出てはあると思います。しかし、そもそも寄宿舎というのは通学困難者のための施設であると。そもそも論に立ち返れば、閉舎されていくのはいたし方ないのかなと、そう思っていますが、しかし、だから反対、反対と騒いでいれば済むことじゃないと私は思います。
 今申し上げたとおり、こうした宿泊可能な設備を有する生活訓練室、こういうものをしっかりと整備をしていただいて、障害者の皆さんがしっかりとした学習ができる場所、そして機会を与えていただくこと、これが大事だと思いますので、これからもご尽力をお願いしたいと思います。
 次に、精神障害者施策についてお伺いいたします。
 精神障害者が地域で安定した生活を送るためには、治療を継続し、安心して生活していけるような仕組みづくりが重要であると考えております。東京都は、我が党の要望を踏まえ、来年度予算案に、地域における精神科医療のネットワークづくりや、困難事例に対応する訪問型支援事業のモデル実施などを盛り込みました。
 事業の実施に向けては、精神保健福祉センターの機能を転換することとしておりまして、同センターの病室及びホステルを見直し、そのノウハウを訪問型支援事業に活用すると、こう聞いております。早急な対応と、見直し後の施設の有効活用が必要だと考えております。
 同センターの機能転換の基本的な考え方、それとあわせまして、病室及びホステルの見直し時期、それに、その後の活用をいかにしていくのか、ご所見をお伺いいたします。

○安藤福祉保健局長 精神障害者施策が入院医療中心から地域生活中心へと大きく転換する中におきまして、精神障害者が地域で安定した生活を送るためには、適切な医療を継続して受けることが重要であります。
 しかし、医療の中断により入退院を繰り返すなどの困難な事例も生じており、地域における対応力の強化が課題でありますことから、精神保健福祉センターは、地域の関係機関への支援をより一層重視する方向に機能転換することといたしました。
 その一環として、平成二十二年度から、区市町村や保健所との密接な連携のもと、困難事例に対応できる医師、保健師等の専門職チームが地域に出向き支援を行う訪問型事業をモデル実施いたします。
 また、これまで精神科病院からの退院時に生活訓練等を行ってきましたセンターの病室及びホステルについては、地域への移行支援やグループホーム等の地域生活基盤の整備が進んできましたことから、来年度末に廃止することとし、そのノウハウを訪問型事業の本格実施に活用してまいります。
 見直し後の施設につきましては、症状の悪化などにより一時的に地域生活が難しくなった場合に短期的に利用できる施設として活用することを検討してまいります。

○宇田川委員 続きまして、島しょ振興についてお尋ねをさせていただきます。
 さきの一月の都議会補欠選挙におきまして、我が党の三宅正彦議員が、川島忠一先生の意思をしっかりと引き継ぎ、当選を果たさせていただきました。我々自由民主党は、島民の皆さんの民意をしっかりと受けとめ、その期待にこたえるべく、全員が一丸となって島しょの振興に力を尽くしてまいります。
 さて、平成十二年七月から始まった三宅島の火山活動は、島全体に大きな被害をもたらし、全島避難に至ったわけでございます。関係機関、関係者のご尽力によって、平成十七年二月に避難指示が解除され、ことしで帰島五周年を迎えたわけです。帰島後、三宅村は復興に向けた努力を続けておりますが、いまだに居住制限を受ける地域が残っているなど、完全復興までは道半ばの状況にあります。
 そこで、島民の要望が強い災害対策事業について確認をさせていただきたいと思います。
 島民生活の基本である安全対策として、噴火直後から、緊急的、集中的に島内各所で火山災害関連の砂防事業が実施をされてきましたが、これまでの砂防堰堤などの整備状況はどうなっているのか、お伺いいたします。

○道家東京都技監 三宅島火山災害への取り組みは、有害火山ガスの絶え間ない発生という特異な状況に加えて、泥流、離島という条件が加わったことにより、過去に類を見ない極めて特殊で困難な条件下での噴火災害復旧工事となりました。
 島の砂防については、都は、平成十二年の発災後、直ちに大型土のうによる仮設流路の設置など応急対策により被害の拡大を防止し、その上で、緊急対策として砂防堰堤などの整備を進め、泥流対策に取り組むことといたしました。
 緊急対策としては、学識経験者などによる伊豆諸島土砂災害対策検討委員会の提言に基づき、泥流被害の危険性が高い四十一渓流を整備することといたしました。
 事業の実施に当たりましては、泥流による住宅被害の著しい地区を初め、空港や道路などの公共施設を保全する砂防堰堤を優先的に整備することとし、帰島の始まる十七年二月までに、激甚災害対策特別緊急事業などにより三十六基を完成させてきました。
 引き続き整備を進め、二十一年度末までに、一カ所の砂防堰堤の幅が七百七十メートルに及ぶ榎木沢など合計五十七基の砂防堰堤と、延長四・七キロメートルの流路が完成いたします。
 これらの整備により、検討委員会で示された当面の整備目標をおおむね達成し、その結果、泥流のはんらん想定区域が四分の一以下に減少いたします。
 島民からは、泥流の心配がなくなり、帰島を果たすことができたとの声も伺っており、三宅島の安全確保に大きな役割を果たしてまいりました。

○宇田川委員 大変丁寧なご答弁をいただきまして、ありがとうございます。
 計画的に進められてきた泥流対策などの砂防事業によって、島民生活に一定の安全性が確保されたということは、今のご丁寧なご答弁でよくわかりました。
 少しずつ緑地などの自然回復が見られてはいるようですが、今なお火山ガスの噴出は続いておりまして、山腹は荒廃したまま放置をされている状況であります。島民の安全確保のためには、引き続き砂防事業の推進は不可欠だと考えておりますが、今後の取り組みについて、丁寧なご答弁をよろしくお願いします。

○道家東京都技監 島民のさらなる安全を確保するため、これまでの整備に加え、平成二十二年度は、空港などの重要公共施設や道路などの生活基盤に影響を及ぼす渓流を中心に、厚木沢や鉄砲沢などで砂防堰堤や流路の整備を進めてまいります。
 また、立ち枯れによる流木を含んだ泥流被害の発生を防ぐため、これらをためる遊砂地を川田沢支川に整備するなど、三宅島に戻り生活再建に向けて取り組んでいる島民のさまざまな期待にこたえられるよう、さらなる復興を目指し、着実に砂防事業を実施してまいります。
 東京都の地勢は、多摩の急峻な山地、区部東部に広がるゼロメートル地帯、伊豆や小笠原諸島などの外洋の離島など、極めて変化があり、課題のある地理的条件のもとにあります。さらに地震や火山被害も発生し、台風や集中豪雨にもたびたび襲われるなど、厳しい自然条件のもとにもあります。
 そのような中、これまで我々は、大規模な噴火火災災害や水害などに、技術力、組織力を最大限に発揮して対応してまいりました。災害発生時には直ちに現場に駆けつけ、現場を預かる行政の技術者として、これまで培ってきた知識と経験を駆使しながら、被害状況を把握し、初動対応をとるとともに、応急対策を講じつつ、事業計画を策定し、手順を踏んで、確実かつ速やかに対策を実施してまいりました。
 今後とも、こうした知識、経験、技術力、組織力を継承しながら、都民の命と暮らしを守る河川、砂防、海岸事業に全力で取り組んでまいります。

○宇田川委員 お気遣いいただきまして、区部東部ゼロメートル地帯にまで触れていただき、ありがとうございました。
 三宅島においては、引き続きの砂防事業推進による安全の確保はもとよりですが、砂防堰堤などの整備に当たっては、観光の一助となるような国立公園にふさわしい景観配慮もすべきだと考えております。また、多量の降雨などで土砂が海に流れ込むといった状況によって、海産物への影響も懸念されていると聞いております。こうした地域の声にこたえられるきめ細やかな対策も必要です。
 いずれにいたしましても、復興が軌道に乗るまでの公共事業が果たすべき役割は非常に大きく、島民の都に対する期待ははかり知れないほどであります。完全復興まではもとよりのことでございますが、復興後も、島の活力を維持するためには、同様の支援が必要だと思います。島を支えている農業、漁業振興や観光振興などとともに、公共事業が果たす役割は非常に大きいわけですから、継続的な都の支援をぜひとも重ねてお願いをしておきます。
 また、三宅島のみならず、いざ災害発生時には都が組織的に対応されている、このこともよくわかりました。技監を初めとする皆さんのご尽力は、都民の一人として大変心強く思い、お礼を申し上げたいと思います。
 今後も、東京で発生する災害に対して、ぜひ迅速かつ万全な対策を期待しております。
 最後に、景観まちづくりについてお伺いいたします。
 本年一月発表の「十年後の東京」への実行プログラム二〇一〇の中に、東京らしい美しい都市景観の創出のために、まちづくりと連携して無電柱化を加速すると、このようにうたわれております。
 これからの東京における魅力ある都市づくりのために、美しい景観を創出することは大変重要かつ意義のあることだと考えます。その中でも、道路から電柱をなくしていくことは、景観の改善に大きな効果を及ぼすとも考えます。
 「十年後の東京」への実行プログラム二〇一〇においては、新規の施策が示されておりまして、面的な無電柱化を推進するとしております。私の地元である江戸川区内、瑞江駅西部地区で実施されている都施行の土地区画整理事業の中で、区画道路の無電柱化を推進していくと打ち出しておりますが、その内容はいかなるものか、具体的に教えていただきたいと思います。

○河島都市整備局長 無電柱化を進めることは、美しい景観の形成に加えまして、快適な歩行空間の確保や防災機能の強化等の観点からも、それから、今お話のございました魅力的な都市づくり、まちづくりを進める上でも大変重要であるというふうに認識しております。
 都施行土地区画整理事業におけます区画道路の無電柱化につきましては、これまで、汐留、秋葉原等で実施した例はございますが、周辺区部においては、導入空間となる区画道路の幅員が狭いことから生じる技術的課題が多く、これまで実施に至らなかった実態がございます。
 このため、区や関係機関とともに実現に向けた検討を進めてまいりましたが、その検討をもとにして、このたび、地元江戸川区の協力も得まして、瑞江駅西部地区を先導的なモデル地区として試行することとなりました。この試行に当たっては、通学路や災害時の避難経路となる区画道路など十八路線、延長二・七キロメートルを対象路線として選定いたしまして、来年度から、電線共同溝方式による工事を行う予定でございます。

○宇田川委員 しっかりとした取り組みを続けていただきたいと思います。
 このような先導的な取り組みによりまして、瑞江駅西部地区の景観が大きく改善されることはもとよりですが、より安全・安心に配慮されたまちとして生まれ変わることに大いに期待をしているところでございます。
 また、今までセンター・コア・エリア内を中心に行われてきたこの無電柱化の推進事業でありますが、周辺区部では初の試みとなること、そして、従来の幹線道路沿いだけにとどまらずに面的に施行される事業であることなど、非常に有意義な一歩を踏み出したと私は考えております。
 今、都内数カ所で土地区画整理事業が行われておりますが、他の地域においても幅広く展開していくべきだと考えますが、ご所見をお伺いいたします。

○河島都市整備局長 今回、瑞江駅西部地区で行います試行では、地上に設置いたします機器のスペースの確保や、水道、ガス等、他の埋設管との位置の調整を初めといたしまして、区画道路の無電柱化に伴うさまざまな技術的課題を検証することとしております。その結果を踏まえ、都が施行する他地区の土地区画整理事業におきましても、今後の実施について検討してまいります。
 さらに、区市町が施行する土地区画整理事業でも区画道路の無電柱化が進めば、魅力的な地域のまちづくりを進めていく上で大きな効果が期待できます。このため、今回の試行で得られる知見をもとに、今後、区市町における幅広い展開に向けて、技術的な支援に取り組んでまいります。

○服部副委員長 宇田川聡史委員の発言は終わりました。(拍手)

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