予算特別委員会速記録第四号

   午後六時十分開議

○和田副委員長 休憩前に引き続き委員会を開きます。
 質疑を続行いたします。
 西岡真一郎理事の発言を許します。

○西岡委員 築地市場の再整備について、これまでの議論を踏まえ、総括的に伺ってまいります。
 まず、私たちの基本的な考え方は、築地市場の強引な移転に反対し、多くの都民が望んでいる現在地再整備について改めて検討するとともに、都民の声を幅広く聞くことであります。これは都民の声でもあります。
 先週の都議会民主党の増子理事の質問に対して、知事は、四百億円もかけた現在地再整備がとんざした後に何ら変化がない、だから今さら現在地再整備など受け付けられないといった旨の答弁をされました。
 知事は何ら変化はないとおっしゃいますが、いうまでもなく、築地市場移転問題を取り巻く状況は、だれが見ても大きく変化しています。それは、豊洲に予期せぬ高濃度の土壌汚染が判明したこと、民間から検討に値する再整備案が出てきたこと、種地が存在していること、物流が変化していること、築地が名実ともに観光資源化したという五点であります。
 まず一つには、豊洲の土壌汚染の問題です。
 この問題は、現在地再整備が中断された以降、判明した問題です。平成十三年の豊洲決定までの間は、大方の関係者は土壌汚染を知りませんでした。また、消費者である都民も同様です。その後、平成十九年に高濃度の土壌汚染が調査により判明したということで、豊洲に対する関係者の感情は大きく変化しています。実態を知ろうとするならば、都は、今すぐにでもすべての関係者への意向調査をすべきであります。そして、都民の声も聞くべきであります。
 見るべきものを見ようとせず、聞くべき声に耳をふさいで変化がないというのが東京都の本意なのか、伺わせていただきます。

○岡田中央卸売市場長 平成十九年十月、高濃度の汚染の検出を公表した後、都は市場業者に対しまして、土壌汚染に関し、これまで説明会を約六十回開催してきました。説明会では、土壌汚染調査や対策を中心に、移転整備の必要性なども含めまして、長時間にわたり質疑応答、意見交換を行い、追加資料の要求にこたえるなど、市場業者から直接、声を聞いてまいりました。
 現在でも、業界団体の大多数は、都が土壌汚染対策に万全を期すことを前提に移転する意思を明らかにしており、これはそれぞれの団体を構成いたします組合員の総意であることから、改めて市場関係者の意向調査を実施する考えはありません。
 一方、都に寄せられます意見では、築地市場の狭隘化や衛生の問題などを理由とする賛成意見と、築地での存続や新市場予定地の土壌汚染などを理由とする反対意見があることを十分把握してございます。
 そのため、都といたしましては、これまでのさまざまな取り組みに加えまして、専門性が高い土壌汚染対策をわかりやすく説明するDVDを作成し、食の安全・安心の観点から、各市場での見学者説明の際に活用すること、また、都に寄せられた質問に対する回答をデータベース化いたしましてホームページに掲載し充実すること、さらに地元説明会を予定するなど、さまざまな方策を積み重ねまして、一層の理解が得られるよう努めてまいります。
 なお、都は、市場業者との個別面談を実施し、それぞれが置かれている状況や意向などの実態把握に努めており、その結果を分析し、新市場の早期整備に活用してまいります。

○西岡委員 今、いろいろと答弁をしていただきましたが、ポイントは、改めて市場関係者全体への意向調査は行わないということであります。大変残念であります。
 市場関係者への個別面談は、水産と青果の仲卸だけと聞いています。実態把握といっても、移転を前提とした面談なのではないでしょうか。また、説明会を開催したといっても、参加者はすべてではなく、あくまでも説明会である以上、最新の意向はいまだに不明ということになります。また、業界団体の大多数が移転の意思を明らかにしているとのことでありますが、水産仲卸の組合が移転を表明していない状況の中で、また、状況が変化したことによる現在の一社一社の業界全体の意向も把握せずに事業が進むこととなります。
 都民には広報を行ったり、地元説明会を行うとのことでありますが、豊洲移転の必要性を訴えることにのみ主眼が置かれた取り組みであり、私たちが求めている現在地再整備も含めた再検討とは正反対の対応と理解いたします。
 都の姿勢では、豊洲移転に疑問を感じている市場関係者の方々や都民の声は生かされないことになります。
 次に新たな変化としては、再整備案が民間から出てきたことであります。
 都はこれまで、種地がない、したがって、ローリング回数も多いため時間も経費もかかるといってきました。しかし、最近記者発表された現在地再整備案、二十一世紀築地プロジェクトでは、種地として晴海を利用することで、現在地再整備の最大の障害となっていたローリングの回数を三回に抑え、工期、経費、営業活動への影響を大幅に軽減できるとしております。まさに種地の利用という新しい要素による打開策であります。
 例えば工期は、都が二十年かかるとしていたのに対して七年でできるとしています。また、費用も三千四百億円とされていたのに対し、およそ半分の一千六百億円から一千八百億円。その上、施設の床面積は豊洲と同等で、狭隘問題も解決しています。
 代表質問でも述べましたけれども、私たちは、この提案は十分検証に値するものと考えています。都は、いまだ説明を受けていないと突き放しますが、この計画は、市場で働く人たちの現在地でやってほしいという願いが込められたものであり、行政がそういった人たちのためにあるとするならば、真摯に受けとめるべきであります。
 この案はまさに画期的なものでありますので、それこそ都が反対する理由はないと思いますが、見解を伺います。

○岡田中央卸売市場長 ご答弁の前に一点だけご説明を。先ほどの個別面談でございますけれども、ことしは青果と水産の仲卸しかやっておりませんけど、順次やっていく予定でございまして、個々の事業者の方々の経営状況等については耳を傾け、お話を伺って、今後の支援策の糧となる資料にしていきたいと、そういうふうに考えてございます。
 ご答弁でございますが、卸売市場は、生鮮食料品などの円滑な流通のために市場業者が営業活動を行う業務施設でありますことから、その整備に当たりましては、業界の理解や意向を踏まえずに行うことはできません。
 先日行われました業界代表者などによります豊洲新市場移転推進パネルディスカッションにおきましても、二十一世紀築地プロジェクトチームの案に対しましては、過去に失敗しており、実現は無理だなどの意見が出されたと私どもは聞いております。
 また、この案につきまして、都は説明を受けていないわけでございますために、詳細は存じ上げませんが、発表された内容だけを見る限りでも課題があると考えてございます。
 例えば工期についてでございますが、過去の事例等を踏まえますと、合意の形成から実施設計に至る作業や手続に少なくとも十年程度を要することが見込まれるほか、土壌汚染調査ですとか埋蔵文化財に関します試掘調査が求められる可能性がございまして、案で示された期間での再整備ができるとは考えにくいところです。

○西岡委員 答弁では否定的な見込みや可能性が言及されておりますが、今後しっかりと検証すべきであります。
 また、パネルディスカッションの例を取り上げておりますが、私たちは、参加した方から、内容も十分に聞かされずに参加した、参加者全員があたかも賛成であるかのような総括があったが、強い怒りを覚えるとの話を聞いているということはお伝えしておきます。
 いずれにしても、都の姿勢では、現在地再整備を検討する民間の声や都民の願いは生かされないこととなります。
 さらに新たな変化としては、晴海の都有地にはオリンピックのメーンスタジアムが建設される予定でありましたが、現在はこの計画はなく、種地としての可能性が広がりました。先日発表された飛行船の発着場も暫定利用ということですので、問題はないと認識しています。
 また、増子理事の質問で、中央卸売市場は、オリンピックスタジアムの建設に当たっては、道路のつけかえ、ふ頭機能の縮小への対応などが必要であり、そのための手続を招致決定後行うこととしていたと認めたものの、現在地再整備に伴う仮移転では実現性がないと切り捨てられました。
 なぜ、オリンピックでできて、築地市場の移転問題ではできないのか、真剣に検討すべきと思いますが、ご見解を伺います。

○岡田中央卸売市場長 今お話しのオリンピックスタジアムと市場施設では、二つの点で大きく異なってございます。
 一つは、オリンピックスタジアムは公園やふ頭機能と共存できる可能性がありますが、市場施設では、市場機能と公園、ふ頭機能を共存させることは困難であります。このため、市場を建設する場合には、公園、ふ頭の施設を廃止するなどの措置をとらざるを得ません。
 二つ目でございますが、オリンピックスタジアムは恒久施設でありますが、市場施設は仮設であるために、都市計画道路ですとか区道につきましては、建設に伴う都市計画の変更や道路のつけかえは極めて困難であります。
 したがいまして、仮移転先として利用可能な用地を十五ヘクタールと想定したことは妥当であると考えてございます。

○西岡委員 オリンピックスタジアムでは公園とふ頭機能と共存できる可能性があるとの答弁で、市場関連となると困難というのは理解できません。常設にしても仮設にしても、真剣な検討が行われれば乗り越えられる課題ではないのでしょうか。
 晴海では十五ヘクタールしか利用できないという考え方が妥当であると結論づけるのではなく、現在地再整備に欠かせない種地、仮移転先候補地としての晴海の可能性を真剣に見出すことが重要と考えます。このことによって、関係者の合意を得られる現在地計画の検討に向けた大きな第一歩になると考えます。
 また、昨今の大きな変化として、物流の変化もあります。
 社会経済構造が大きくかつ急激に変化する中で、物流もまた変化しています。より早く、より大きくを求められている卸と、より細かく、より価値のあるものを求められている仲卸、大きく二極化するニーズに対応するためには、最新の物流の変化にも対応する必要があります。
 二十一世紀築地プロジェクトの案では、機能分離によるツインマーケット案も含まれております。ツインマーケット案は、昨今の物流の変化に着目したもので、競争が激化し、物流を大型化し取引コストを下げなければ生き残れない卸と、高付加価値、多品種小規模な商品を求める消費者のニーズにこたえなければならない仲卸、この双方のニーズを満たそうとする案であります。まさに移転計画と現在地計画のハイブリッドな案といえます。都としても、断固移転、断固現地という対立から一歩踏み出し、より自由な発想で新たな道を模索する余地が残されているのではないでしょうか。
 また、建築技術も、土壌汚染対策同様に向上していると思います。著名な建築家からも、最新の高度な建築技術を用いれば現在地再整備は可能との意見も私たちには届いております。
 現場や民間からのさまざまな声を受けとめ、強引な豊洲への移転は一たん立ちどまり、都は、現在地再整備のさまざまな可能性を真剣に検証するべきと考えますが、改めてご見解を伺います。

○岡田中央卸売市場長 卸売市場の整備を進めるに当たりましては、業界の理解や意向を踏まえて行うことが必要であります。現在地再整備につきましては、平成三年から約四百億円を投じて工事を推進いたしましたが、営業への深刻な影響などから平成八年に中断いたしました。その後、新たな再整備計画の策定に向け業界団体と協議を行い、都の見直し案及び五つの試案に水産仲卸組合が作成した案も加え、さまざまな視点で検討を行いました。
 しかし、いずれの案も合意を得ることができず、再整備は実現困難との結論に至り、業界の大多数は最終的に豊洲への移転に合意したものです。このように、豊洲への移転といいますのは、これまでの再整備を含めさまざまな案を検討した上で決定されたものであります。

○西岡委員 現在地再整備がとんざしたときと今とでは、状況が大きく変化をしているということがなかなか理解されませんが、例えば先ほど申し上げましたように、断固移転、断固現地という対立から一歩踏み出し、より自由な発想で新たな道を模索する余地すらも残されていないということは、極めて残念であります。ツインマーケット案は大いに検討に値する方策と思います。
 都の移転ありきの姿勢に今後も全く変化がないということでは、移転に賛同していない市場関係者や疑問に思っている都民の声は置き去りにされることと理解いたします。都の姿勢では、将来に禍根を残さないために硬直化した事態を何とか打開したいと、そう考える機運すらも生かされないこととなります。
 またさらに、昨今の大きな変化として築地の観光資源化があります。
 平成十二年十二月の地下鉄大江戸線の開通のころから、築地では、場内、場外を問わず、観光客あるいは買い物客が増加しています。場内にあるおすし屋さんに一般の観光客が列をなすような光景は、以前の築地市場では見られませんでした。特に場外市場は、土曜日にもなれば買い物客であふれています。築地を好きな方は、この場外市場の文化を好きな方もとても多いと感じています。そして、築地の文化は、周辺の銀座などのまちと連携して形成されてきたのであります。
 知事は、豊洲に築地が移転して、新しい観光地になったら結構じゃないですかと述べておりますが、交通の便や周辺地域との連携もなく、新しい観光地になるのかどうかは甚だ疑問であります。これは、現在の場外市場の人たちが、場外市場はずうっと移転しませんと看板を掲げているように、多くの場外市場業者が豊洲への移転を希望していないことにもあらわれております。
 都は、場外市場関係者の意向を把握したことがあるのでしょうか。あるとすればどのように把握しているのでしょうか。また、把握していないとすれば今後把握するべきと考えますが、ご見解を伺います。
 また、移転希望がある人たちの支援についてどのように考えているのか、伺います。

○岡田中央卸売市場長 築地の場外市場には、飲食店ですとか小売店などが多数存在する一方で、築地市場で働く方や買い出し人が利用するなど、市場機能と密接にかかわりを持つ店舗があります。このことから、都といたしましては、築地場外市場団体に対しまして、これまで繰り返し説明会や情報交換会などを行っております。
 また、このような情報提供ですとか意見交換を行う中で、豊洲新市場への移転に伴い、出店を希望する方々がいることについて、都としては承知しております。豊洲新市場では、移転を希望する場外市場の方々の事業継続に配慮いたしまして、その要望も視野に入れ、千客万来施設を整備してまいります。
 今後も引き続き、場外市場団体に対しまして情報の提供ですとか意見交換を行ってまいります。

○西岡委員 築地市場と一体となって活動されてこられた場外市場関係者の意向調査は行われていないという答弁でありました。今後も情報提供や意見交換は行うとしておりますが、意向調査は行わないという答弁でありました。都の姿勢では、場外市場関係者においても、賛同できない方々の声は生かされないものとなり、築地の文化やまちを守りたいという都民の願いの声も生かされないこととなります。
 状況が変化していることや都民の声に関して質問してまいりましたが、都の認識は我々の認識とは違います。
 知事は、今さらどういう再整備案が出てくるのか、当時と何の事業がどう変わったのかと、特別委員会の質疑初日に述べられましたが、平成三年以降、四百億円を投入し、その後、現在地再整備案がとんざした当時から比べると、状況はやはり大きく変化しているのであります。
 四百億円を投入し、現在地再整備がとんざしたのは、必要な空地となる種地がなく、十数回もローリング工事を繰り返すこととなったことから、工期に二十年を必要とした計画であり、無理があったことが理由です。そのために、整備費も増大しました。営業への支障ということで業界内の調整も難航しました。それはまさしく、種地を求めたが得られなかったためでありまして、種地なしで計画を作成しなければならなかったため、市場関係者も受け入れざるを得なかったこととなります。しかし、今日においては、種地は晴海にも存在し、この問題の解消は可能であると考えます。
 土壌汚染対策についていえば、十年近く前に現在地再整備案と豊洲移転案が比較検討されましたが、この現在地案では種地がない状態で計画をされました。豊洲案は、後になって発覚した土壌汚染対策費五百八十六億円が存在していない段階での計画でありました。豊洲移転計画を決定したときと比べて、状況は大きく変化していると考えます。
 物流の変化については、市場規模が縮小する一方で、継承されてきた競りの見物が都内随一の観光名所となっております。築地の食文化の発信地としての付加価値と、それを担っている中小零細の仲卸の皆様方にとって、本当に発展性、夢のある再整備とは何かということを、状況が変化している中でじっくりと再検証する必要性があるのであります。
 考えてみれば、数年の検討を行い、平成十三年に最終的に決定された豊洲移転方針そのものが、今日までの時代の変化にそぐわないということからすれば、再検証することは当然のことと思います。
 次に、中央卸売市場は、卸売市場法に基づき、地方公共団体が、農林水産大臣の指定する開設区域内に、農林水産大臣の認可を受けて開設されることとなっております。中央市場の東京都の中央卸売市場の位置の変更には農林水産大臣の認可が必要となります。
 しかし、既に赤松大臣からは、昨年の九月十七日の就任会見において、きちんとした土壌改良をやったにしても、その結果が、本人にとって、あるいは国民にとって安全なものだということが、自分自身が納得できなければ絶対にサインをしないと、今の状況での認可は出せないとの表明がありました。
 また、その後、大臣は、九月二十四日に築地と豊洲を視察し、豊洲の安全が確認できなければ移転を認可しないと慎重な姿勢を示し、都の土壌汚染対策も検証するとした上で、政権もかわったことだし、豊洲に行くか行かないかだけに限定するのではなく柔軟に考えたいとの発言がメディアに取り上げられております。
 私の理解では、安全と合意がなければ認可しないと表明されている以上、都がこのまま進めても理解は得られないと思います。
 都は、今のこの進め方で農林水産大臣の認可が本当に得られると考えているのか、ご見解を伺います。
   〔発言する者あり〕

○和田副委員長 静粛に願います。

○岡田中央卸売市場長 お話のとおり、豊洲新市場の開場は、中央卸売市場であります築地市場の位置及び面積の変更に該当するため、卸売市場法の規定によりまして農林水産大臣の認可が必要となります。
 豊洲新市場に関します赤松農水大臣のこの間の一連の発言は、国として生鮮食料品を扱う卸売市場の安全性に関する考え方を改めて示したものと受けとめております。新市場の開場に当たりまして、安全の確保は当然必要なことでありまして、この認識は国も都も変わりません。
 都といたしましては、豊洲新市場予定地について、技術会議が科学的知見に基づき、あらゆる角度から詳細に検証した信頼性の高い土壌汚染対策を確実に実施することで安全を確保してまいります。こうした安全性に揺るぎのない豊洲新市場を実現していくことで、お話の農林水産大臣の認可も得られるものと考えております。

○西岡委員 安全性もさることながら、これまでの合意形成のあり方や事業の進め方という観点も、当然重要な要素になると私は考えております。
 最後に、築地市場は市場関係者だけのものではありません。都民は、これだけ深刻な土壌汚染が本当に都の対策で大丈夫なのかに不安を感じています。また、場外も含めた都民の台所に愛着を持っています。都民の合意が得られていない状況の中で、豊洲移転にやみくもに突き進むのでは、かえって時間を要し、混乱を来すのではないかと危惧いたします。
 都は、場外市場も含めて、市場関係者一人一人の意向をしっかりと把握すべきですが、既にその意思がないことが答弁されており、極めて残念であります。本当にこのままの状況で強引に推し進めて、反対している市場関係者、不安に思っている都民、国民に理解されますでしょうか。これまでの歴史からも、合意なき計画は何事も成功しません。同じ道をたどるのではなく、これまでの教訓を生かし、現在地再整備も含めて再検討すべきではないでしょうか。
 知事は、まず移転ありきではなく、現在地再整備について検討した上で、都民にとって何が最善であるのか、公平公正に比較検討すべきだと思います。
 築地の問題については、市場関係者や都民の合意形成を図っていくべきであると考えますが、最後に知事のご見解を伺います。

○石原知事 築地市場の問題は、二十年をかけてさまざまな案を検討し、議論を尽くした結果、関係者の大多数が、経済性も考え、最も合理的な選択として最終的に豊洲への移転に合意したものであります。
 その後、この問題に関して起こった一番大きな変化は、観光の対象になった何やは、そんなものは二次的な問題でありまして、まず移転先の豊洲に驚くべき土壌の汚染が発見されたことであります。それも踏まえて、移転に当たっては、市場関係者それぞれの状況に配慮する必要があることは当然であります。
 しかし、それはあくまでも、今までの経緯からいって、まず六月に判明する、日本の先端技術を駆使した汚染除去の可能性の有無というものが結果として出た後であると私は思います。それをまず都民の皆さんに報告した上でのことだと思います。
 いずれにしろ、日本の先端技術を活用した土壌汚染対策の技術、工法について、すべての実験結果が六月末に出るわけでありますから、汚染というバリアが取り除かれた暁には、都民の方にも十分安心いただけると思っております。

○西岡委員 関係者の大多数が合意しているということですが、全く認識が違います。今、多くの方々が豊洲移転に疑問を感じていると思います。また、汚染のバリアが取り除かれれば安心をするということでありますが、移転にちゅうちょしているのは、何も土壌汚染だけではありません。やっぱり営業地として築地であることが重要だと考えている方々が大半なのだと思います。
 我々は、築地市場の強引な豊洲移転にはノーということで、都議選のマニフェストを前面に掲げて戦いました。知事は、都議選での民主党の勝利は築地移転問題で決まったわけではないと記者会見でいっておりましたが、決してそうではありません。これは、我々すべての候補者に共通するマニフェストの最重点の三つのうちの一つが、築地市場の強引な移転には反対というものでありました。首都圏の台所である築地市場問題ということで、都民の関心は十分にあり、その結果が都議選にあらわれたものであります。この結果を真摯に受けとめ、本来なら、都が考え方を改め、都民合意という原点に立ち返り、都議選以降、現在地再整備も含めて検討を行うべきではなかったのかと考えます。
 築地市場は、昭和十年、一九三五年に開設されてからのこの七十五年の間には、さまざまな歴史があり、特に再整備、移転問題には、本当につらく厳しい経過があることは承知いたしております。我々も、今の築地市場が抱えている老朽化、過密化した施設などのさまざまな課題を解決しなければならないことは十分承知をいたしております。だからこそ、築地市場は生鮮食品を扱う首都圏の台所として、長期的な将来にわたって都民の安心・安全が担保され、継続的、安定的に市場が使用できるようになり、そして、そこで懸命に働く方々のためには、築地市場の再整備は禍根を残すことなく、市場関係者、都民、国民の理解を得て整備されなければならないものであると痛感をいたします。
 また、この歴史的な積み重ねの上にある今日の築地市場の持つ、江戸時代から続くすばらしい伝統、はぐくまれてきた築地の文化とまちは、名実ともに大きな遺産でありますが、これは場外市場も一体となって、あの築地の場所で長年培ってきた上に派生した東京屈指のシンボル的な貴重な財産であることも決して忘れてはなりません。
 しかし、都は、まず移転ありきで、この間、一貫して豊洲移転を推し進めてきました。これまでの議論で、この我々の基本姿勢と知事、都の見解は全くの平行線でありますが、幾ら豊洲移転ありきの都であったとしても、現在行われている豊洲地区の土壌汚染対策の最終的な実験結果が出る前から、そして、さまざまな関係者の生の声をきめ細かに意向を調査、把握することもなく、豊洲地区の土地購入費や整備関連経費の予算が市場会計に盛り込まれ、決定しろというのは、到底理解できるものではありません。
 都議会民主党は、予算要望においても、都民的な合意も形成されていない現在の状況では、豊洲移転予算については反対せざるを得ないということを申し上げてまいりました。その上で私たちは、今日までのさまざまな議論を通じた知事の姿勢、都の答弁などを踏まえ、平成二十二年度東京都中央卸売市場会計予算の豊洲移転に関しては、修正案提出の準備に入ることを申し上げておきます。
 次に、新銀行東京について伺います。絞って伺います。
 一月二十九日、新銀行東京から旧経営陣二名への訴訟が提起されました。実に二年間の年月を要しましたが、我々もこの裁判の行方を注視し、この訴訟で、今まで明らかにされなかった経営悪化の要因が公開されることを期待いたしております。
 新銀行東京への都の四百億円の追加出資の議論を行ったのが、ちょうど二年前の予算特別委員会でありました。我々は、新銀行東京の経営悪化の原因を追及していくことが極めて重要であると考え、一貫して議会の場で議論を行ってまいりましたが、新銀行東京の情報開示の消極的な姿勢に阻まれ、新銀行東京の融資以外の損失についても、いまだに原因解明には至っておりません。
 さて、二年前の予算特別委員会では、この経営悪化の原因解明に資するであろう重要な資料として、新銀行東京が行った内部調査報告書の概要版と本編が議論になり、私も知事と議論させていただきました。訴訟に備えるとのことで、議会には限られた情報のみの概要版が示され、本編は示されませんでした。知事も、マスキングをした上で本編の提出に言及したものの、訴訟提起を理由に発言が撤回された経緯があります。
 そこで私は、訴訟に影響のない範囲で本編を提出すべきであると主張いたしましたが、訴訟を理由に提出はできないとのことでありました。
 今回、二年間という時間を要しましたが、訴訟が提起されたことは一定の区切りがついたものと理解をいたします。経営悪化の原因究明は、都議会の一致するところと理解をいたしております。この機に内部調査報告書の本編が提出されるべきと考えますが、ご見解を伺います。

○前田産業労働局長 お話の内部報告書は、平成二十年三月に新銀行東京によって取りまとめられた内部資料でございます。内部調査報告書の全文の公表については、当時、新銀行東京は、本報告書は訴訟に勝つために極めて重要な資料であり、銀行としてこれを公表することは、その有利さを失うことになるため、公表できないとしておりました。
 新銀行東京は、去る一月に、旧経営陣に対し損害賠償請求訴訟を提起したところであり、今後、審理が行われるため、同様に公表できないとしております。

○西岡委員 二年たっていまだに出せないということでありますが、このままでは、原因究明に資する貴重な資料が今後も開示されないこととなります。新銀行東京の大株主は名実ともに東京都であり、都民の税金が一千四百億円も投入された銀行ということは、株主は都民でもあります。この重要な情報がいまだに都民に示されないのでは、この銀行は一体だれのものかという議論になります。
 いつのタイミングで内部調査報告書の本編が提出されるのか、伺います。

○前田産業労働局長 繰り返しになりますが、新銀行東京は、この内部調査報告書は訴訟に勝つために極めて重要な資料であり、これを公表できないとしているところでございます。訴訟は開始されたばかりでありまして、現時点でお答えすることはできないものと考えます。

○西岡委員 資料の提出が訴訟の決着後であるかということも含め、一切答えられず、見通しもわからないということであります。
 新銀行東京に対して、この内部調査報告書の開示を求めることができるのは、大株主である東京都であります。この資料は経営悪化の要因を探る重要な資料であります。訴訟に影響のない範囲で本編の議会への提出を検討すべきであることを申し上げておきます。
 先日、都議会民主党では、会派の会議において、都側から訴訟についてのヒアリングを行い、その後、新銀行東京の経営悪化に対する責任について、新銀行東京の著しい経営悪化については、都も主要な株主であり、監視を含め株主責任はある、しかし、新銀行東京は株式会社であり、実際に経営を行う経営者、重要な方針を決定する取締役会、さらに株主では、経営に関与する度合いはそれぞれ異なる、銀行という公共的な性格により株主の関与が制限された中で、実際に経営のかじ取りを行った旧経営陣の責任は重大であり、まずはその責任が追及されるべきであるとの見解が文書で示されました。
 この責任論となると、これまで私たちは一貫して、銀行の発案者、経営者の任命者、大株主としての監視者としての責任を問うてきましたが、都は、新銀行東京の旧経営陣ばかりに責任転嫁されてまいりました。
 では、株主責任はあるとしながら、まずは旧経営陣の責任が追及されるべきであるとしておりますが、都は、この訴訟の結論が出た後には、次なる責任論として何を想定しているのか、伺います。
 株主責任はあるとした都は、一千十六億円毀損させた具体的な責任として何を想定しているのか、伺います。

○前田産業労働局長 少し長くなりますが、お答えをさせていただきます。
 東京都は、新銀行東京の主要な株主という立場にあります。先ほど引用していただきましたが、企業経営においては、実際に経営を行う経営者、重要な方針を決定する取締役会、さらに株主では、経営に関与する度合いはそれぞれ異なっております。
 銀行法上の制約がある中で、都は新銀行東京の経営監視に努めてきたところであり、平成十八年度の中間決算発表時には、経常損失の一層の改善が必要となったことから、経営の健全性確保と中小企業の支援に向けて抜本的な経営見直しを要請いたしました。さらに、平成十九年六月には、株主としての権利を行使し経営陣を刷新するなど、これまで必要な措置を講じてきました。
 このように、東京都は株主として新銀行東京の経営監視に努めてきたところでありますが、平成十九年三月期決算で深刻な経営悪化に陥ったことにつきましては、結果として監視が十分であったとはいえないと考えております。
 しかしながら、ただいまのご質問で、一千十六億円を損失させた東京都の具体的な責任というご質問でございますが、株主としての都の一つ一つの行為により、その都度、新銀行東京に具体的な損失を生じさせたことはないと考えております。
 改めて申し上げますが、新銀行東京の経営が著しく悪化したことにつきましては、株式会社である以上、その結果に対し、株主としても責任はあるというべきと考えております。しかし、この経営悪化の最大の責任を、旧経営陣について現在新銀行東京は提訴をし、今後裁判が進められてまいります。この裁判を通じて、公正かつ中立な立場から経営悪化の原因と責任が明らかにされることが重要であり、まず最初に求められていることではないかと考えております。

○西岡委員 経営に関与する度合いは違うといっても、銀行の発案者、経営者の任命者、大株主としての監視者としての責任、また、東京都からは新銀行東京への出向者も複数存在していたことなどから考えれば、旧経営陣との間に責任の度合いについては異なるのではなく、都にも大きな責任があるのではないでしょうか。我々と都の間には、責任のあり方という考えにも大きな隔たりがありますが、新銀行東京が開業三年で一千十六億円も毀損し、減資したことの都の具体的な責任というものは、今後、何も想定していないものと私は理解をいたしました。
 これまで都議会民主党は、発案から経営悪化に至るまでの過程、責任論、経営悪化の原因究明、再建計画の検証、中小企業に今も本当に役に立っているのかや融資状況など、幅広い分野で地道に議論を行ってまいりました。しかし、新銀行東京の行く末、出口についての考え方には、再建後のセカンドステージを生み出すとしている知事と早期撤退を掲げる我々との考え方は、全くの正反対であることはよく承知をいたしております。
 再建計画も折り返し地点となり、終了年次まであと二年となっております。では知事は、新銀行東京を今後、一体、具体的にどのような銀行にしようとしているのか、具体的な姿はいまだに見えておりません。当初の新銀行マスタープランがどうなるのか、新たなビジネスモデルが確立されるのか、せめてそれをはっきり示さなければ、なぜ再建計画に四年間も要しながら、本来の役割も発揮することなく、都が銀行業の大株主として存続しているのかという理由をだれも理解できません。その議論は一体どこで行っているのか、全くわかりません。
 来年春には知事の任期もやってきます。知事が考える新銀行東京の具体的なセカンドステージの姿をはっきりと示すべきだと思いますが、知事のご見解を伺います。

○石原知事 新銀行東京の再建は、平成二十三年度までを計画期間としておりまして、現在、現経営陣が懸命に取り組んでおります。恐らくことしは単年度黒字を出してくれることでしょう。
 いずれにしろ、これは小零細企業を支援するという本来の役割を再び十全に果たせるようにするためであります。
 新銀行東京が単年度黒字を達成していけば、信用度も回復し、それを下地として、外国の資本も含むオファーもいろいろ期待されるなど、セカンドステージが開かれます。現に過去にも、再三申してきましたけど、ドイツ、フランスの有力な銀行が、いろいろアイテムを踏まえてオファーをしてまいりましたが、残念ながら、例のサブプライムローンで向こうの銀行がつぶれてしまいました。
 いずれにしろ、セカンドステージの姿についてのご質問でありますが、仕事の手のうちでありまして、事柄の性格上、お答えはできません。

○西岡委員 検討しているが出てこないのか、検討もされていないのか、現在は何もわからない、今の答弁では、わからないと。具体的な姿について伺ったのであります。
 私どもは、早期撤退への道筋をつけることこそが今求められており、その検討を速やかに行うべきであると意見を申し上げます。
 次に、ゲリラ豪雨対策に有効な雨水浸透ますの設置拡大について伺います。
 雨水浸透ますは、ゲリラ豪雨対策に大変有効であります。この雨水浸透ますは大変重要であります。降った雨が下水道などの雨水排水施設から川に排水され、最終的に東京湾に流れていくこととなりますが、昨今、その機能にも限界があり、豪雨の際には大きな水害となっています。その対策の一環として、降った雨がその地表の地下地中に浸透、還元される雨水浸透機能を高めていくことが極めて重要であり、雨水浸透ますの設置拡大は大変効果的であります。
 まずは、都の雨水浸透がどのようになっているか把握する必要があります。これまでの過去の調査で、不浸透面積、雨水が浸透しない面積は、二十三区では昭和五十五年度の七四%に対し、平成十九年度は八四%に増加しています。また、多摩地域においても、不浸透面積は、山地部を除いた多摩台地で、昭和五十五年度の三〇%に対し、平成十九年度は四九%に増加しています。都内では、降った雨水の浸透機能が低下しており、降った雨が地中に戻ることなく下水に流されていくということで、雨水がなかなか地中に還元されなくなっていることが見てわかります。
 そこで、環境局として、雨水浸透の状況とその重要性の認識について伺います。

○有留環境局長 これまでの不浸透面積率の調査によれば、東京においては都市化が進み、地表が舗装や建築物で覆われ、雨水が地面にしみ込みにくくなっている状況が継続しております。
 雨水浸透の推進は、地下水の涵養や湧水の保全対策のみでなく、下水道への雨水の流入抑制にも寄与するなど、水循環の重要な構成要素であると認識しております。

○和田副委員長 西岡真一郎理事の発言は終わりました。(拍手)

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