予算特別委員会速記録第四号

○酒井委員長 高木けい理事の発言を許します。
   〔委員長退席、服部副委員長着席〕

○高木委員 私は、まず、都政と都民生活に与える影響の大きい、国政と関連の深い諸施策について取り上げたいと思います。
 現政権は、衆議院選挙のマニフェストの中で、高等学校の無償化、子ども手当の支給、高速道路無料化、農家に対する個別所得補償、国民への直接的な給付や負担軽減策を来年度の予算に盛り込んだわけであります。
 例えば、次代の社会を担う子ども一人一人の育ちを社会全体で応援する、そういう考え方で、所得制限を設けずに、高等学校の無償化あるいは子ども手当の支給という政策を打ち出したわけであります。
 その中でまず、高等学校の無償化について、特に都政と関連の深い私立高校生への就学支援金制度についてお伺いしたいと思います。
 現在、国では、公立学校で授業料を徴収しないで、私立学校の生徒には就学支援金を支給する、いわゆる高校無償化法案が審議されています。これによりますと、私立高等学校等の生徒は、所得制限なしにすべての高校生に一律十二万円、年収二百五十万円から三百五十万円未満程度の世帯の高校生には一・五倍の十八万円、そして、年収二百五十万円未満程度の世帯の高校生には二倍の二十四万円が支給をされる、こういうことになっているようでございます。
 私は、所得の階層に程度という、今、言葉をつけたんですが、実はこれはまだ明らかになっておりませんので、しっかりした金額が出されていない。ですから、程度というお話をしました。
 東京では、現実に高校生の約六割が私学に通っておりまして、東京の公教育における私学の役割は、まさに特筆に値する。これは、全国の中で東京は特筆に値するというふうに思っています。
 したがって、私たち自由民主党は、学校の存立こそ重要であって、公私格差を是正する観点から、何よりもまず、学校運営に対する支援が不可欠であるという考え方を今まで政策の柱にしてきたわけであります。
 海外では、高校無償化が進学率の向上に寄与した例もあるというふうに聞いていますが、我が日本では、進学を希望する中学生のほぼ全員が高校に進学をしています。パーセンテージでいうと九八%というふうにいわれています。
 保護者負担の軽減という考え方もあると思いますが、財源が湯水のごとくあるわけではない。所得にかかわりなく一律に支給をしてしまう。そうしたことから、私学の場合は、支援が必要な対象層に十分な支援が行われずに、その結果、政策効果がきちんと発揮されないのではないか、そんな指摘もあります。
 先日、実は三月二日の東京新聞に出た話ですが、こういう記事が出ました。高校無償化の点数はということで、ここで、日本私立中学高等学校連合会の会長であります吉田晋先生がこういうことをおっしゃっております。
 私立高生で一番苦しい世帯は、年収三百五十万円から五百万円。財源の問題でここが支援できないのなら、公立の高所得層の分を私立の低所得層に回せばいいではないか。この制度は全員一律にお金を出す、公立の年収一千万以上の世帯でも対象になってしまう、こういう問題点を指摘しておりまして、最も支援が求められるのは年収三百五十万円から五百万円の世帯なんだということをおっしゃっているわけであります。
 この法案は、あすの衆議院本会議で議決をされて、参議院に送られる予定となっていますが、もう一つの問題として、今、マスコミ等でも取り上げられておりますけども、朝鮮学校を初めとする一部の各種学校等を支給対象に含めるかどうか。閣僚のさまざまな発言があって、随分と混乱が生じているわけであります。
 結局、第三者機関により教育内容を検証した上で文部科学省令で定めるようでございますが、こうした支給の範囲については、さまざまな角度から十分に検討した上で、法案というものは基本的に提出されるべきだというふうに私は思います。
 いずれにしても、現場の実態を踏まえた上で、公私格差の是正を初めとする政策の効果や財源問題、そして全体像が十分に説明されているとはいいがたいと思っています。
 そこで、東京の私学行政を担う立場から見て、今回の高等学校の無償化にかかわる就学支援金の支給をどう評価をするのか、お伺いいたします。

○秋山生活文化スポーツ局長 ただいま、高木理事からるるお話がございましたとおりでございまして、都では、高校への進学率が約九八%となっている中で、生徒の約六割が通学しております私立高校が公教育に果たす役割は大変重要であるという認識でおりまして、経常費補助による学校運営への支援が不可欠であるという立場から、これまでも私学行政に当たってまいりました。
 また、保護者負担軽減の観点からは、平均的な所得以下の保護者を対象に、所得に応じて授業料の一部を補助する、いわゆる特別奨学金制度をこれまで実施してきたというのが実態でございます。
 今回の国の就学支援金制度は、世帯の所得に関係なく、私立高校生に対して一律に支援金を支給するということとともに、年収三百五十万未満の世帯に限定して支給額を増額するという内容でございます。
 しかしながら、先ほどご紹介ございましたけども、私学関係者は、私立高校生で一番苦しいのが年収三百五十万から五百万円程度の世帯だと。財源の問題でここが支援できていないのは、公立高校とのバランスの面からも不十分という声も我々にも届いております。
 保護者負担の軽減に関しましては、国が新たに大きな制度を創設するに当たりましては、既に都道府県が実施しております授業料負担補助事業の実態や私学関係者の声、いわば現場の声をきちんと把握し、制度の目的や効果を丁寧に説明した上で、政策効果が十分に発揮されるような制度をつくることが必要だろうというふうに考えております。
 都といたしましては、今後とも、経常費補助を初めとして、特別奨学金や育英資金などの幅広い施策を総合的に活用して、公私格差の是正も含め私学振興に努めてまいります。

○高木委員 次に、子ども手当について伺います。
 平成二十二年度は、子ども手当、予定されていたものの半額の一万三千円、月々ということ、そして来年度以降は月額二万六千円というふうに聞いております。
 子ども手当の支給に当たっては、財源が不足するということが主な理由になっているんだと思いますが、児童手当のうち、これまで地方が負担していた部分をそのまま残して子ども手当を導入することとしたようでございます。
 児童手当の部分が残っているということは、当然、事業主負担というものも入るわけでございまして、そうした観点からいえば、東京都としては、地方負担を残したまま、この子ども手当を導入するということを国が決めたということに対してどう評価をするのか、見解を伺います。

○安藤福祉保健局長 子ども手当は国策として創設されますことから、その費用については、地方に負担を転嫁することのないよう、都は国に対して再度にわたり要望してまいりました。しかしながら、国は、地方に協議や説明も行わずに、児童手当との併給方式とし、地方負担を残したわけであります。
 国は、今般の方式は平成二十二年度限りのものであり、平成二十三年度以降の制度のあり方については、今後、地方の声も十分に聞きながら検討するとしておりまして、都は、制度の本格実施に向けて、国の責任において確実に財源を確保するよう、国に強く働きかけてまいります。

○高木委員 ほかにも幾つか聞きたいことはあるんですが、個別制度については以上にさせていただいて、全体として、私たちは都民、国民の潜在的なニーズをつかんで、その実現を図ることが政治や行政の大きな使命であるというふうに思っています。
 しかしながら、現政権の今の動きを見ておりますと、残念ながら未成熟なマニフェストを、これも残念ながら金科玉条のように死守をして、いわばパンドラの箱をあけてしまって、どう収拾していいのかわからないというようなものが幾つも見えるような気がしてなりません。
 本来、政策を立案して実行するためには、現場の実態を十分に掌握をして、財源の確保をきちんと図った上で、全体像の中でどのような役割を果たすのかという大局観を持った合理的な説明がなされなければならないと思います。
 子ども手当の地方負担や、あるいは私立学校に対する極めて不十分な無償化制度を見ると、とてもそうしたプロセスを経てきたというふうには、私には思えない。目先のばらまきだけではなくて、将来を見据えた議論、本質論が今ほど求められているときはないと思っています。
 そこで、高校の無償化あるいは子ども手当、先ほど申し上げました、国民へ直接給付をしていく四点セットとでもいうのでしょうかね、そうした政策について、知事は、都政とも関連をする政策でございますから、どのように評価をしているのか、お伺いさせていただきます。

○石原知事 政治にとりまして、国民とのつながりを支えるのはあくまで言葉であって、選挙における言葉の約束は、政党、政治家にとっても極めて重要な意味を持つとは思います。しかし、マニフェストなる選挙の公約が、財政的な裏づけを初めとして完璧なものであるならばともかく、その言葉の絶対視というのは、かえって大きな危険を伴うと思います。
 現政府の今の低迷を眺めていると、その感が非常に強くいたしますが、言葉は、財源というものの担保を得て初めて生きた言葉になってくるわけでありまして、聖書の言葉じゃありませんけど、初めに言葉ありき、マニフェスト、公約ありきということで、現実を直視せずに柔軟性を欠いて粗雑に物事を運んでは、国民の真の納得は得られません。地方自治体に対しても、財政的な問題など、さまざまな極めて悪い影響が及びます。
 鳩山政権は、先ほど局長答弁にもありましたように、高等学校無償化についても、子ども手当についても、地方の声、現場の声にしっかりと耳を傾けて措置すべきだと思います。
 極めて厳しい国家財政の現状を踏まえて、経済への還流ということにも目を配りながら、国家の大計に立った政策展開、政権運営を行ってもらいたいと思います。
 オリンピックにかまけて何度か参りました北欧の諸国は、消費税が二五%、所得税六〇%。そのために外国人でも医療はただ。それから、大学まで学費はただ。ただ、厳密な試験はありますけど。国民はそれを納得して、政権がかわっても、その体制は続いているわけですし、国も安定しておりますね。
 それからもう一つ、やっぱり加えて申し上げたいのは、地方分権から地方主権という非常に強い言葉で打ち出してこられた地方と国家のかかわり合いも、福田内閣のときに、まさに暴挙という財務省の一方的な判断で法人事業税の分割基準をああいうふうに下げて、とにかく東京の財政から四千億むしり取っていく。あれは、大変国会では心強い思いをしたんですけど、当時野党だった民主党は熾烈に反対してくれていたもんですが、どうもどっか行っちゃいましたな、これ。
 いや、この間、菅君に話しましたら、急だったものですから、これから考えますということで、民主党の諸君も、東京のためなんだから、みんな東京のために働いているんだから、あなた方の公約の一つとして、責任として、こういったものは、民主党の政権が続く限り、その限りにおいて、責任を持ってとにかく取り消してもらいたいと思います。

○高木委員 次の質問に移ります。
 歴史教育の重要性についてお伺いをしたいと思います。
 東京都教育委員会は、都立高校における日本史必修化を決定したと聞きました。私は常々、歴史から多くのものを学び、自分の生き方に生かしていくべきだというふうに考えています。健全な歴史観を醸成し、日本国民としての自覚を持つためにも、我々は自国の歴史についてしっかりと学ぶ必要があろうと思います。
 特に歴史を学ぶときに、遠いものではなくて、やっぱり近いものというのが非常に勉強になるというふうに私は思っています。後ほど郷土史の問題にも触れますけれども、実は先日、都議会自民党の中の極めてプライベートなプロジェクトなんですが、都議会の歴史発掘プロジェクトというのを、数人で、プライベートで始めさせていただきました。
 都議会の歴史というのは、その前段の東京府議会にさかのぼるんですが、この東京府議会にさかのぼって都議会の歴史を発掘していきますと、東京府議会は、実は明治十一年に開設をされているんですよ。
 明治十一年というのはどういう時代だったかというと、その前の年の明治十年に西郷隆盛が西南戦争で没している。その前の年、明治九年に熊本神風連の乱があったりという、極めて不平士族の反乱がまだおさまらない状況の中で、東京府議会は明治十一年に第一回の東京府議会議員選挙を行って、そして、翌年の明治十二年の一月になるんですが、第一回臨時府会をここで開設したんですね。
 その後を見てみますと、じゃ、国会開設は何年だったのかといいますと、ご案内のように、これは明治二十三年に、七月に第一回総選挙が行われて、十一月に第一回通常国会の召集ということになっておりますから、都議会が明治十二年に開設をされたとするならば、国会はそれをおくれること十一年、つまり、日本の議会の発祥の地は私たち東京都議会なんだ、こういうことがわかるわけですね。
 ですから、この東京都議会が日本の議会のモデルになったといっても、これは過言でないわけで、この東京都議会の当時の議場の風景というか、絵があるんですけれども、それを見ますと、いや、何と明治の人たちというのは聡明だったのだろうなと。つまり、その議場を見てみますと、まだだれも日本に議会というものを知らなかった時代に、既に一般傍聴席が設けられて、記者席まで設けられて、すばらしい公開をされているんですね。
 ですから、これ、だれが考えたのかわからないんだけれども、つまり、外国の議会を勉強してきた人たちが、議会というのはこういうものだということで東京府議会をつくった、日本の議会のモデルをつくった、こういうことだというふうに思っているんです。
 実は、この東京府議会の開設ということになりますと、じゃ、府議会議員はどうなっていたのか、第一回の選挙はどうだったのかということをちょっと申し上げますと、第一回は、定数四十九名、選挙区は郡区ごとに大小によって五人以下を選出していました。これは純粋な立候補制ではなくて、住民の推薦によって候補者を決めて、それに投票するという人気投票のような、そういう制度だったようであります。
 有権者は地租五円以上納入している二十歳以上の男子、当時の府民のおよそ一・三%の方が有権者であった。ちなみに投票率は七四・九%、成熟した民主社会の投票率という感じが私はいたします。
 さらに申し上げますと、ちなみに東京都芝区、今の港区になるんでしょうけれども、ここで二百票獲得をして、当時、トップ当選をした著名人がいました。これは福沢諭吉であります。福沢諭吉は、その当時四十四歳。ちなみに私も四十四歳。あした誕生日を迎えて四十五歳になる。(「おめでとうございます」と呼ぶ者あり)ありがとうございます。別に、おめでとうございますといってほしくていったわけじゃないんですけれども、そういうことなんですね。
 そのほかの当選者には、私どもの知っている名前では、大倉喜八郎とか、あるいは安田善次郎とか、こういう方々が実は第一回東京府議会の議員になっているんですね。
 これはすごく重要なことで、第一回の臨時府議会で、抽せんで議席を決めた後に正副議長選挙を行って、初代議長には福地源一郎という方、そして、副議長には福沢諭吉が選ばれたんですね。
 ですから、我々のルーツをずっとたどっていくと、実は東京府議会、今の東京都議会というのはすごいところだということに気がつくわけでございまして、これがまさに歴史の発掘であって、歴史というのは私たちに自信をもたらすものでなければならない、私はそう思っています。
 ですから、ここで初めて私は、知事が東京から日本を変えるんだという意味が、まさにこのことにあるんだなというのを実感としてわかりました。つまり、国会は東京府議会からおくれること十一年。今、国会で地方分権だ、地域主権だといっているけれども、我々が先じゃないかと。だから、東京から日本を変えていくんだ、その気概を持つことが、これが歴史の発掘なんだというふうに私は思いました。
 ですから、この東京都議会の歴史発掘プロジェクト、これは、座長として三宅茂樹先生にいろいろご指導いただいているんですが、大変有意義な活動だったなというふうに私は思っています。
 そこで、知事の歴史教育についての考え方については、本会議の我が党の吉原修議員の一般質問でお伺いをしたところでございますので、それを踏まえて、改めて私は、歴史を学ぶ姿勢について、子どもたちへのメッセージも込めて、ぜひ知事のご見解をお伺いしたいと思います。

○石原知事 いや、実に興味のあるお話を伺いました。歴史については、哲学者のヤスパースが、歴史とは非常に複合的なものがあり、さらにそれが重なって堆積した重層構造をなしているといっておりますが、それが歴史という人間の財産の本質であると。いかにもそう思います。
 ゆえにも、歴史の重層性を理解せずに歴史を学んでも、物事の表面だけをなめたような薄っぺらな歴史認識にしかならないと思います。それで本当の意味で歴史を学んだことにはとてもならないと思うんです。ですから、歴史の事実を知るというときには、すべての価値観を捨てて、まず、つまりそれを事実として正確にとらえるということが必要じゃないかと思います。
 歴史を学ぶ姿勢としても、教え与えられるものをうのみにするのではなくて、正確な事実に基づいて、さまざまな視点でみずから考えて、歴史の重層性を理解し、みずからの歴史観や国家観を次第に形成していくことが必要だと思います。
 実は先日、上野でやっております長谷川等伯の展覧会を眺めてきました。大入り満員でありました。昨年ですか、行われました琳派の大回顧展も大入り満員でありました。つまり私たち日本人は、今、本当の歴史というものを知りたい、自分が何であるかというのを知りたいと思って、その取っかかりがないままに、過去のああいった国宝の羅列された展覧会を眺めることで、過去について触手を伸べて、一生懸命、つまり自分の歴史を知ろうとしているんじゃないかという気がいたしました。
 という反面は、私たちはろくな歴史の教育を受けてこなかったために、つまり、ある意味で自信をなくしているんじゃないか。それを取り戻すための一つの大きな展覧会であったなという気がいたしました。
 そういう姿勢で歴史を学んでこそ、国や郷土、先祖同胞のすぐれた人材の価値を愛情を持って理解できるようになるとともに、みずからを顧みて、日本人としての自覚と誇りをようやく持つことができるようになるんじゃないかと思います。
 いずれにしろ、人間としても、国家としても、みずからが何であるかということを総体的によく知らなければ、真の独立も繁栄もないと思います。

○高木委員 知事からも大変含蓄のあるお言葉をいただきました。一度、ぜひ歴史発掘プロジェクトの講師として知事にお話しをいただければありがたいかななんて思っております。
 さて、先ほどちょっと触れましたけれども、郷土史の問題というのは、だからこそ重要なんだと思っています。自分の身近なところにどういう歴史があるのか、そのことによって、自分自身がやはり、歴史上の偉人、自分の身近に、こんなところにいたんだな、そんなことも感じられるんだろうと思っています。
 例えば、私は地元北区でございますが、日本の近代産業の父であります渋沢栄一は北区飛鳥山に居を構えておりましたし、それから日本の、あるいは世界の戦争の歴史を変えたともいわれている、今、「坂の上の雲」で話題でございますけれども、日露戦争のあのときに戦艦の火薬として使われた下瀬火薬、あれは実は、かつて北区にありました東京外国語大学のところでつくられておりまして、あそこで発明されたんですね。今でもあそこは坂がありまして、下瀬坂という名前がついているんです。
 ですから、そういうのを発掘していくと非常に興味深くて、私たちの先祖がどういうことをしたのか、どういうつながりがあるのか、それはまさに私は魂の連続だというふうに思っているんです。ですから、その魂の連続なくして日本人の将来は私はないと思いますし、だからこそ、多面的で重層的な歴史をしっかりと学んでいく一つのツールとしての郷土史というのが大事なんだろうというふうに思います。
 そこで、小中学校において、自分たちの住む地域の歴史についての学習がどのように行われているのか伺います。

○大原教育長 小中学校の学習指導要領におきましては、児童生徒の発達段階を踏まえて、社会科の中で自分たちの住む地域を調べる学習が位置づけられております。
 小学校では、身近な地域を調べる学習を通して、人々の生活の昔から今に至る変化、地域の人々の生活の向上に尽くした先人の働きや苦心などを考える学習を行っています。
 また中学校では、地域調査を通して、地域への関心を高め、地域の歴史的な事象とのかかわりの中で我が国の歴史を理解し、歴史の学び方を身につける学習を行っております。
 このように、義務教育段階におきましては、地域に対する誇りや愛情を育て、ひいては我が国の歴史に対する理解と愛情を深めるよう指導しているところでございます。

○高木委員 児童生徒の発達段階を考えると、小中学校で身近な地域からの歴史を学んで、そして高校では、我が国全体に視野を広げて我が国の歴史をしっかりとやっぱり学んでいくという必要があろうと思っています。
 そのために、すべての都立高校生には、特に我が国の近現代史をしっかりと教えていくべきだというふうに私は思いますが、教育長の所見を伺います。

○大原教育長 都教育委員会は、日本の歴史の価値を十分認識させ、日本人としての自覚を高めるためには、高校生段階においても日本史を継続して学ばせることが必要であると考え、平成二十四年度からの全都立高校における日本史の必修化を決定いたしました。
 これにより、すべての都立高校生は、我が国の近現代史を中心に学ぶ日本史A、我が国の原始、古代から近現代までを総合的に学ぶ日本史Bに加えまして、江戸東京の変遷を切り口として、江戸開幕から現在に至るまでの我が国の近現代史を学ぶ東京都独自の日本史科目のいずれかの科目において、必ず我が国の近現代史を学ぶことになります。
 すべての都立高校生が我が国の近現代史を学習することによりまして、現代の社会が形成された歴史的背景を理解し、国際社会に生きる日本国民としての自覚と資質を高めることを目指してまいります。

○高木委員 今のご答弁にあるように、やっぱり正しい歴史を身につけていただいて、我が国や郷土に対する愛着や誇りを育てることをぜひお願いしたい。そして、健全な国家観と日本国民としての誇りを持って、主体的にまさに国際社会で活躍できる、そういう若者、そういう日本人をぜひつくっていただきたい。要望したいと思います。
 次に、新市場整備について伺います。
 私なりに代表質問から今日までの議論を聞いて感じたことを整理いたしますと、老朽化で築地そのものが待ったなしの危険性がある。過去に四百億円かけて現在地再整備をしようとして失敗した。そして、豊洲へ移転しかないということで業界団体もまとまって、さあ移転に向けて新市場の整備に着手しようというふうに思ったところが、豊洲に高濃度の土壌汚染が出てきた。現在、それを除去するための努力をしている。これがこの問題の現実だろうと思っています。
 一方で、そうした現実は現実といたしまして、理想的な望ましい姿を思い描けば、それは一つには、現在地再整備の可能性の追求、そしていわゆる築地ブランドの維持、もう一つは、土壌汚染のない土地に、業界団体がすべて一つにまとまって市場を開設することになるんだろうと思います。
 この二つの方法は、可能であるならば望ましい姿なんだろうと思いますけれども、現実に、業界団体も我々もこうした理想を追い求めてきたわけであります。しかし、我々は既に現実から目をそらすことができないところに立っておりまして、問題を先送りすることが許されない地点に来ていることは疑いの余地がないと思います。
 民主的に物事を取り決める中では、当然のことながら、立場や考え方の違いが生じます。異なる意見はそれを堂々とぶつけ合って、お互いが切磋琢磨して議論の質を高め、都政を充実させていくことが重要であります。一方で、忌憚のない論戦を展開しながら、その中から懸命な判断を導き出して、都政発展に寄与していくことが我々の仕事であるとも考えます。
 この考え方に立って、以下、具体的に質問をさせていただきます。
 まず、土壌汚染の問題です。
 土壌汚染がない方がいいのは、それはもう当然ですが、改正土壌汚染対策法の厳しい規定に照らせば、残念ですが、豊洲だけでなく、築地もその地歴から見て、恐らく基準を満たすことはできないだろうと思っています。狭い我が国の国土ゆえの埋立地の宿命だと思います。
 そうした中で、知事は、六月末の実験結果が出るまで先に進まない、こう宣言をされているわけでありますから、土壌汚染を理由に反対をする方々も、ここはしばらく静観をしていただいて、異論があるとすれば、実験結果に対して科学的に反論していただくということが建設的だろうと思っています。
 そこで伺いますが、この土壌の浄化は日本の技術力にかかっている問題でありますので、六月末の実験結果については、オープンな形で専門家による科学的検証を改めて行っていけば私はいいのではないかというふうに思いますが、所見を伺います。

○岡田中央卸売市場長 市場は食の安心・安全を担う重要な施設でございまして、土壌汚染を除去することが基本であります。そのため、現行の法律や条例の基準などを上回る土壌汚染対策を講じることとしております。
 技術会議では、日本の最先端の技術、工法を活用した信頼性の極めて高い対策をまとめていただきました。豊洲新市場予定地でこの技術、工法を適用した実験を行い、その有効性につきましては、さきに発表いたしました中間報告でも確認されました。
 土壌汚染対策の実験の効果が確認されれば、二十六年度中の開場に向け事業に着手していくことになるわけですが、六月末には、この実験のすべての結果が出てまいります。この実験結果につきましては、技術会議に検証してもらうことを予定してございます。

○高木委員 次に、業界団体の問題であります。
 市場は業界なしでは成立をいたしません。その業界がすべて一つにまとまるということはもちろん望ましいわけですが、現実にはなかなかそのようにはいかないようであります。事業者の置かれた状況は多様でありまして、しかも市場が経てきた長い歴史の中で、それぞれの業界あるいは事業者ごとにさまざまな課題も出てきているでしょうし、願いもあるはずであります。にもかかわらず、それが今は、何か築地か豊洲かという対立の構図だけが浮かび上がってしまっています。
 一人一人の事業者があってこその市場であると思います。新市場整備という歴史的転換点に立っている今だからこそ、それぞれの願いや状況に立ち返って、その声に耳を傾けながら、東京の市場機能はどうあるべきなのか、中央卸売市場を今後どうしていくのか、市場事業とはどうあるべきなのか、そうしたことを、それぞれの事業者の将来を、我々議会や行政が努力し、切り開いていくことこそが私は大切だと思っています。
 その一環として、我々は、先月十八日に現在地再整備計画案を発表した二十一世紀築地プロジェクトチームの方々の意見にも耳を傾けるべきと考えて、経済・港湾委員会への参考人としてのご出席をお願いいたしました。現時点ではご出席いただけないようでございますので、大変残念に思っておりますが、我々は、引き続き広く意見をお聞きしていくという、そのスタンスは持っていかなければいけないだろう、そう思っています。
 そこで伺いますが、都は、市場業者のそれぞれが置かれている状況や意向などの声を丁寧に聞いて、それに真摯に向き合っていく姿勢こそが大切であると考えますが、いかがでしょうか。

○岡田中央卸売市場長 そもそも市場は、生鮮食料品の業務施設でございまして、そこで営業活動を行っております業界団体の意向を無視して何も進まないことは明らかでございます。
 既に、築地の大多数の団体がそれぞれ意思決定した上で豊洲移転でまとまっておりますが、今ご指摘いただきましたように、それぞれの事業者ごとに、事業や経営上の課題、後継者問題など、置かれている状況は異なっております。現在行っております市場業者との個別面談を今後とも順次実施いたしまして、把握した実態の分析、検証を新市場の早期整備に活用していきたいと思っております。
 こうしたことを基本にしながら、個別の事業者の状況とか意向などについて丁寧に耳を傾け、これに真摯に向き合っていくことが重要であると考えております。

○高木委員 ただいま市場長の答弁があったように、一人一人の事業者の状況に分け入って課題の整理を積み重ねることによって、実は、東京の、あるいは我が国の流通のあるべき姿というものも浮かび上がってくるんだろうと思います。築地にいたいという気持ち、あるいは築地があってほしいという気持ち、現在地で再整備できるなら、それにこしたことはないという思いなど、それらはむべなるかなという思いもいたすわけであります。
 そういった意味で、我々に残された限られた時間の中で、これまで述べてきたように、市場にかかわる人々の中にさまざまな思いや願いがあるという現実に改めて目を向けていくことも必要であろうと考えます。
 しかし、同時に、何度もいいますが、我々には、現実の市場整備の課題に、行政とともに都議会としても責任があるわけであります。今、もし豊洲移転を否定すれば、それは現在地再整備を含む新市場整備そのものを遠いかなたへと追いやることになりかねません。したがって、現在地再整備を検討するという名のもとに新市場整備そのものを壊してしまうようになるような、そうした議論は我々も受け入れることはできません。
 後から振り返って、歴史的に無責任に問題を先送りしたというそしりを受けることは、私たち都議会としても絶対に避けなくてはなりません。私たちは、今まさに議会人としての真価が問われています。我々一人一人が、現在から将来にかけての都政に責任を持たなければなりません。
 先ほど都議会の歴史を若干披露しましたが、私は、東京都議会というところは本当にすばらしいところだと思いますし、歴史と伝統に照らしても、この議会こそが日本のリーダーだというふうに信じて疑いません。ですから、名誉ある東京都議会議員として、真摯にみずからの職責を全うして、都民、国民のための賢明な判断、最良の選択をしていく必要があると私は考えます。それが本定例会の我々に課せられた大きな役割であることを申し上げて、私の質問を終わりたいと思います。ご清聴ありがとうございました。(拍手)

○服部副委員長 高木けい理事の発言は終わりました。

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