予算特別委員会速記録第四号

   午後三時三十分開議

○酒井委員長 休憩前に引き続き委員会を開きます。
 質疑を続行いたします。
 くまき美奈子委員の発言を許します。

○くまき委員 中央卸売市場における食品廃棄物対策について、まず伺います。
 中央卸売市場は生鮮食料品の流通を担う基幹的施設であり、毎日大量の野菜や魚などが取引され、それに伴う廃棄物が排出されています。外食産業では、排出する廃棄物の中には食品の残渣が多く含まれるものの、分別が進まず、食品以外の廃棄物が混在して排出される傾向にあるため、食品廃棄物の再利用は低いレベルにとどまっています。しかし、大量の生鮮食料品を扱う卸売市場の場合は、比較的まとまった量の食品廃棄物が排出されるため、適切に分別がなされれば効果的な再利用が行われると考えます。
 そこでまず最初に、市場から排出される廃棄物はどのように処理され、また再利用されているのか伺います。

○岡田中央卸売市場長 中央卸売市場から発生いたします廃棄物は、一般廃棄物及び産業廃棄物を合わせまして、平成二十年度で約四万トンでございます。これら廃棄物は、いずれも事業者責任として、卸売業者や仲卸業者の市場業者が分別をいたしまして、みずからの費用負担で、約四〇%を資源に再利用し、残りの六〇%が焼却処分などにより適正に処理をしてございます。
 一般廃棄物のうち、荷の傷みや商品の小分けの際に発生する野菜くず、水産加工から生ずる魚の内臓などといった食品廃棄物は、市場外の専門業者によりまして、飼料ですとか堆肥などとして再生利用されております。
 また、産業廃棄物のうち、商品の輸送に利用して破損いたしました木製パレットは、木材チップにして合板などの建築資材、あるいは使用済みの発泡スチロール容器などは、場内で溶融固化した後、容器等のプラスチック製品としてそれぞれ再利用されております。

○くまき委員 循環型社会を形成していくためには、食品廃棄物について再利用を進める必要があります。中央卸売市場の水産部では各市場とも、食品廃棄物全体の約六割から八割と再利用の割合が高いですが、青果部では比較的低いレベルにとどまっており、私の地元でもあります板橋市場など、再利用が進まない市場もあると聞いています。
 再利用が進まない理由と対応状況を伺います。

○岡田中央卸売市場長 水産物部では、比較的再生利用が高いわけでございますが、その理由は、食品廃棄物である魚の内臓等が、ペットフードなどの飼料ですとか魚油の原料として需要が高く、加工、製品化に向けた再生利用のルートが確立していることによります。
 これに対しまして、青果部で再生利用が進まない理由といたしましては、食品廃棄物である野菜くずなどを、家畜の飼料や、あるいは堆肥に加工するに当たりまして、近隣に専門業者が少なく、需要のあります農村部へ運ぶ必要があることから、輸送コストが高くなることが挙げられております。
 また、果物のくずには酸が含まれておりまして、このため、再生利用に当たりましては成分調整を要するなど、処理コストが高くなることも原因の一つでございます。
 こうした理由によりまして、青果部では、再生利用が水産物部ほど進んでいません。
 都は、青果部での食品廃棄物の再生利用を高めるために業界と話し合いを進めてきておりまして、その結果、平成二十一年度では、これまでの四市場に加えまして、北足立市場や葛西市場におきましても再生利用が開始されます。
 また、業界と連携して、市場から発生する廃棄物も減らす努力をしておりまして、今お話のございました板橋市場では、平成二十年度は、食品リサイクル法の改正の前年度でございます平成十八年度と比べまして約一二%減少してございます。

○くまき委員 平成十九年に改正されました、いわゆる食品リサイクル法では、事業者が食品廃棄物等の発生の抑制と再生利用の促進に努めることとしています。
 この趣旨に沿って策定された基本方針では、業種ごとに再生利用等を実施すべき目標が示されていますが、食品卸業では、平成二十四年までに再生利用等実施率七〇%を達成するとしています。
 この七〇%という目標を達成するために、食品関連事業者の再生利用等実施率が、毎年ごと、食品関連事業者ごとに設定されました。七〇%という業種別の目標値は、個々の事業者の取り組みが計画どおり進んだ場合に達成されるという水準であります。
 そこで、廃棄物の処理は事業者責任であるとはいえ、都は開設者として事業者任せにせず、個々の事業者がそれぞれ設定された目標に応じた取り組みを進められるよう努めるべきと考えますが、見解を伺います。

○岡田中央卸売市場長 食品リサイクル法に基づきます基本方針に示されました再生利用等実施率の目標といいますものは、食品廃棄物の発生抑制と再生利用の双方の要素によって算出するものでございます。
 都はこれまで、各市場におきまして、業界と連携して有料ごみ袋を導入したほか、荷の傷みを防ぐために、温度管理施設の整備ですとか取り扱い方を工夫するよう指導するなど、廃棄物の発生抑制に取り組んでまいりました。その結果、先ほどの平成十八年度から平成二十年度で比較いたしますと、食品廃棄物は約二千五百トン、率にして約一四%減量したところでございます。
 これに対しまして、再生利用は、各市場の業界ですとか個々の事業者に対する指導にもかかわらず、依然として市場間または業種間での達成状況に差があります。
 今後は、事業者に対しましてごみの分別指導を徹底することで再生利用のための環境を整えていくとともに、各市場の環境衛生担当者に対しまして、他県における先進事例ですとか、すぐれた技術を持つ処理業者を紹介するなど、情報の提供ですとか情報交換を行いまして、食品廃棄物の発生抑制あるいは再生利用が一層進められるよう努力してまいります。

○くまき委員 ぜひよろしくお願いいたします。
 次の質問です。健康食品は、年齢を問わず、子どもから高齢者まで、幅広く多くの都民の間で利用されています。しかし、健康食品には明確な定義がなく、有効性や安全性に関して国の審査が行われている特定保健用食品、特保から、法律に定義のない、いわゆる健康食品まで幅広く含まれています。
 平成二十年度の市場規模が約二兆円ともいわれる中、十分な法律の知識を持たない事業者も参入してきたため、表示に誤りがあるなど、各種の法令に違反するものが後を絶ちません。
 さらに、飲むだけでやせるとか、がんに効くなど、過大な広告で売られている健康食品も多くあるなど、健康食品にはさまざまな問題点があると考えられます。健康食品にとって、今、一番の問題は広告なのではないでしょうか。
 消費者にとって、食品は、実物を手にとって確かめながら買うことが一般的でしたが、最近では、流通経路の多様化に伴い、通信販売で購入されることもふえてきました。
 中でも健康食品は、インターネット、雑誌、テレビ等による通信販売で購入されることが多いように思われます。健康食品の広告はちまたにあふれており、消費者はこれらに踊らされて安易に製品を購入しがちです。先日、インターネット広告について消費者庁が問題点を指摘していましたが、ネット上では信じがたいような広告も見られます。
 都は、健康食品の不適切な広告に対してどのように取り組んでいるのか、伺います。

○安藤福祉保健局長 都は、健康食品の広告について、医薬品であるかのような誤解を与える表示や虚偽、誇大な表示などを対象として、薬事法や健康増進法などに基づき監視指導を行っております。
 健康食品は、特にインターネットによる販売が多いことから、ネット上の広告の監視を強化しており、今年度は、医薬品的な効能、効果をうたった製品など、計二千百十四件の広告に対し、改善指導を行っております。
 また、今年度から、最近増加している携帯専用サイトでの広告も監視対象に加えており、これまでに千四百十三件の改善指導を行いました。
 このほか、事業者を対象とした広告の規制に関する講習会を毎年開催しているところであります。

○くまき委員 もう一つの問題として、今まで余りなじみのない成分が配合されていたり、特定の成分が過剰に配合されたことによる健康被害が懸念されています。
 健康食品と医薬品の飲み合わせにより、予期せぬ健康被害が起こることもあります。食品だから安全であるとか、健康によいという認識のもとに長期間使用され、健康を害する可能性も否定できません。
 都は、このような健康食品による健康被害を防止するため、どのような対策を講じているのか伺います。

○安藤福祉保健局長 健康食品による健康被害を防止するため、毎年、医薬品成分の含有が疑われる製品について成分検査を行っております。
 過去五年間では、医薬品成分が含まれ、薬事法違反となったものが二十五製品あり、これらについて販売中止と回収を指示するとともに、速やかに都民に公表し、注意喚起を行ったところであります。
 また、医師会、薬剤師会と連携し、健康食品との関連が疑われる健康被害事例を収集、分析するなど、過剰摂取や医薬品との相互作用などによる健康被害を早期に探知し、適切な情報提供を行うよう努めているところであります。

○くまき委員 健康的な生活を送るためには、バランスのとれた食生活が基本であり、健康食品はあくまで補助的なものであると考えるべきです。
 しかし、健康食品に過剰な期待を持ち、本来の食生活をおろそかにしてしまう人も少なくありません。市場がこれだけ拡大し、さまざまな製品が流通している状況において、健康食品による健康被害から身を守るためには、我々消費者が虚偽、誇大広告に惑わされず、適切に商品を選択し、正しく利用することが最も重要であると考えます。
 都は、都民に健康食品に関する普及啓発を充実するべきと考えますが、いかがでしょうか。

○安藤福祉保健局長 健康食品による健康被害を防止するためには、都民の方が正しい知識を持つことが重要であります。
 都は、健康食品を安全に利用するためのポイントをまとめた冊子を作成し、美容室やフィットネスクラブ等に配布し、正しい知識の普及に努めております。
 また、ダイエットに興味を持ち始める年齢層向けのリーフレットを、都内のすべての中学生に配布いたしました。
 今後とも、さまざまな世代に合わせ、講習会やDVDなどの教材を通じて、健康食品の安全で適正な利用方法について普及啓発を図ってまいります。

○くまき委員 どうぞよろしくお願いいたします。
 次の質問に移ります。暮らしの安全という観点から、子どもの事故防止について伺います。
 厚生労働省の調査によれば、一歳から四歳までの子どもの死亡原因では、毎年、不慮の事故がトップに上がっています。重大事故の背景には、大事に至らないで済んだ同じような事故がたくさんあったと考えられます。こうした事故に関するデータを積極的に収集、分析していれば、大きな事故は防ぐことができるのではないでしょうか。
 子どもが被害に遭った事故としては、児童がプールの排水口に引き込まれて死亡した事故や、シュレッダーで幼児の指が切断された事故が記憶にあります。こうした事故も、情報の収集が的確にできていれば防げたのではないでしょうか。
 多くの製品や施設は、今日でも大人用の規格や目線でつくられています。本来子どもを守るべき大人が、子どもの視点を忘れて設計することも多いと考える中で、子どもの事故を防止していくという姿勢が今、大変重要であります。
 そこで、子どもの事故防止対策に関する都のこれまでの取り組みを伺います。

○秋山生活文化スポーツ局長 都は、子どもの事故防止を危害防止対策の最も重要な課題と位置づけ、ここ数年来、子どもの身近にある商品の安全性に関するテストを行いますとともに、小児科医などの専門家も加えました東京都商品等安全対策協議会におきまして、広く海外の事例を分析することも含め、子どもの事故防止に関する安全対策を検討してきたところでございます。
 具体的には、これまで問題視されることのなかった子ども用衣類のひもやファスナーなどによるけがや、ベビー用おやつによる窒息事故の防止対策、自転車用幼児ヘルメットの安全性などについて取り組み、今年度は、子どもに対するライターの安全対策を取りまとめたところでございます。
 これらの成果をもとに、国や事業者団体等へ提案、要望を行った結果、新たな安全規格が策定されるなど、商品の安全性向上や事故の未然防止につながってきております。
 また、取りまとめた安全対策につきまして、わかりやすいリーフレットを作成し、都内のすべての幼稚園、保育所の園児の保護者に届くよう配布するなど、広く都民へ注意を喚起しているところでございます。

○くまき委員 ただいまのご答弁で、さまざまな安全対策に取り組んだことはわかりました。中でもライターは、家庭の中で子どもの目につく場所に多くあり、しかも大人の使いやすさの視点でつくられている製品の典型的なものといえます。
 このようなライターによる火遊びで、幼い子どもが火災を起こすケースが多発しています。マスコミの報道でも、ここ数年、ライターによる火遊びが原因で幼児が犠牲となった火災が相次いで伝えられ、痛ましい事故は後を絶ちません。
 報道によれば、都では、法律による規制を国に要望したと聞いていますが、その具体的内容と、その後の国の動きについて伺います。

○秋山生活文化スポーツ局長 国内には、年間約六億個のライターが流通しているといわれておりまして、その大半は幼い子どもでも簡単に点火することができます、いわゆる使い捨てライターであり、東京消防庁によりますと、十二歳以下の子どもの火遊びによる火災の七割以上はライターを使用したもので、一度に複数の子どもが犠牲となるような悲惨なケースも発生しているということでございます。
 海外では、子どもが簡単に操作できないようにする、いわゆるチャイルドレジスタンスに関する法的規制を行っている国もございますが、国内では、子どもに対するそうした安全対策がとられておりませんでした。
 そのため、都は、ライターによる火遊びの実態や海外の規制状況などを調査するとともに、関係者と検討を重ね、昨年十一月、国に対し、法律による安全対策の実施を要望したところでございます。
 こうした都の取り組みが国を動かし、国は昨年十二月より、直ちに法規制について検討を開始しておりまして、本年夏ごろには方向性を取りまとめる予定だというふうに聞いております。

○くまき委員 今回の都の取り組みが具体的な国の法規制の動きにつながったことは、高く評価できるものです。
 こうしたライターの火遊びによる死亡事故を初め、子どもが巻き込まれる不慮の事故が起きる前には、同じようなことで危ないと感じたり、けがをしそうになったという経験のある人が潜在的にたくさんいるのではないでしょうか。
 子どもを危害、危険から守るためには、事故が起きてから慌てて対応を検討するのではなく、埋もれた情報を早目にキャッチしていくことが大切だと考えます。そのための都の具体的な取り組みを伺います。

○秋山生活文化スポーツ局長 一つの重大な事故の背後には、何十倍もの軽微な事故があり、何百倍ものヒヤリ・ハットが埋もれているというふうにいわれております。
 事故の未然防止のためには、こうした情報を積極的に収集することが重要であると考えておりまして、本年度、一万二千人を対象としたインターネットアンケートによりましてヒヤリ・ハット体験調査を開始いたしました。
 幼児の身の回りの危険につきましては、保護者六千人を対象に調査をし、九千件以上に上る情報を収集することができましたことから、収集した情報の分析を行い、さまざまな商品の危害防止対策のために活用していくとともに、事故防止のポイントをまとめたヒヤリ・ハットレポートを作成し、都内保育所等に配布することによりまして、保護者に注意を呼びかけているところでございます。
 今後とも、日常生活のさまざまな場面に潜んでおりますヒヤリ・ハット体験の発掘に努め、引き続き事故の未然防止に取り組んでまいります。

○くまき委員 子どもの安全は、保護者や地域に広く注意を呼びかけて、社会全体で取り組んでいくことが重要です。このため、今後も一層、身近に埋もれている新たな情報の収集に努め、子どもを見守る人に役立つ情報が行き渡るよう、さらに工夫に取り組んでいただくことをお願いいたします。
 次の質問に移ります。
 平成二十二年四月一日から、住宅用火災警報器の設置が義務づけられます。
 消防庁のパンフレットを見ると、共同住宅への設置義務があるのは、所有者や管理者、占有者となっていますが、高齢者や障害者も多く居住する都営住宅については、都が管理者として設置を進めるべきと考えます。
 都は三年前から、既存の都営住宅へ住宅用火災警報器を設置していると聞いていますが、これまでどの程度設置が進んでおり、今後の見通しはいかがなのか、所見を伺います。

○河島都市整備局長 既存の都営住宅への住宅用火災警報器の設置につきましては、平成十八年三月の火災予防条例の改正に基づきまして、都営住宅を適正に維持管理する立場から、平成十九年度から計画的に進めております。
 平成二十年度末までに約十九万三千戸設置しておりまして、今年度末の設置期限までに都営住宅における設置を完了する予定でございます。

○くまき委員 都営住宅を適正に管理する立場から、都は設置をしてきたということですが、それでは、住宅用火災警報器の普及を進めていく上で、民間の賃貸住宅についても、所有者や管理者に対して住宅用火災警報器の設置を働きかけていくことが効果的だと考えます。
 そこで、東京消防庁では、民間の賃貸住宅に対する設置促進への取り組みをどのように行ってきたのか、また今後どのように行っていくのか伺います。

○新井消防総監 当庁では、民間賃貸住宅の所有者や管理者の業界団体であります社団法人東京共同住宅協会、東京都宅地建物取引業協会や財団法人日本賃貸住宅管理協会などを通じまして、それぞれの傘下会員に住宅用火災警報器の設置を依頼してまいりました。
 今後は、共同住宅の所有者や管理者に対し、さらに積極的に住宅用火災警報器の設置に関する講習会の実施や個別対応などにより、直接、早期設置を指導してまいります。

○くまき委員 本年四月、住宅用火災警報器設置の義務化後においては、義務化を逆手にとるような悪質な販売行為も予想されます。
 義務化後も引き続き住宅用火災警報器の普及を図るためには、火災から身を守る手段の一つとして、都民みずからが積極的に設置する動機を高めていけるよう、住宅用火災警報器の効果を知ってもらうことが肝要だと考えます。
 これらを踏まえて、さらに設置促進していくため、今後、具体的にどのような広報を行っていくのか伺います。

○新井消防総監 今後、未設置住宅に普及を図るためには、住宅用火災警報器の有効性をご理解いただくことが重要でありますことから、警報音により早期に火災を発見し、避難や初期消火を行うことができた多数の奏功事例や、住宅火災の分析結果などをもとに、より具体的でわかりやすい内容の広報を行ってまいります。
 特に、義務化に便乗した悪質販売に対する被害防止につきましては、広報紙はもとより、プロモーションビデオの制作やホームページなどを活用し、注意喚起を図ってまいります。

○くまき委員 よろしくお願いいたします。
 昨年末のメキシコに端を発した新型インフルエンザは、短期間に世界じゅうに伝播し、これまで、まだ先のことと思いがちであった新型インフルエンザが、目の前の脅威であることを改めて思い知らされました。
 また、海外で流行すれば、我が国の水際で食いとめることは非常に難しく、国内で感染が拡大することは避けられないこともわかりました。
 都はこれまで、強毒型のウイルスを想定した新型インフルエンザ対策に取り組んできましたが、実際に、今回、新型インフルエンザの流行を経験すると、さまざまな課題が浮き彫りになりました。都においては、医師会や初期医療を担う区市町村などと連携し、混乱がなかったとはいえないものの、その時点でのでき得る限りの手は尽くせたのではないかと考えます。
 しかし、より毒性の強い新型インフルエンザが発生した場合には、予想をはるかに超えるさまざまな事態に迅速かつ適切に対応することが求められます。蔓延期に備え、すべての医療機関が新型インフルエンザ患者を受け入れる体制をとるよう、準備を進める必要があります。
 都は、蔓延期に新型インフルエンザの患者を受け入れる病院に対し、人工呼吸器など医療資器材の補助を行っていますが、単に器材を整えるだけでなく、診療体制が整っていなければ宝の持ち腐れとなりかねません。
 都は、どのような点を考慮して補助を行っているのか伺います。

○安藤福祉保健局長 都は、今年度から三年間を期間として、入院医療機関における人工呼吸器等の医療資器材や施設の整備を支援する補助事業を実施しております。
 補助に当たりましては、各医療機関ごとに、流行期において受け入れが可能であることや、診療体制、院内感染防止対策がとられていることなどを確認しております。
 なお、お話の人工呼吸器については、今年度、三十四医療機関に対し、七十五台の補助を実施いたしました。

○くまき委員 補助事業は三カ年限定ということですが、この制度を活用する医療機関をふやすためには、蔓延期に新型インフルエンザの診療を行うことをすべての医療機関において徹底する必要があります。そのための普及啓発にぜひ努めていただきたいと思います。
 また、施設、設備の整備に加えて、マンパワーの確保も重要な課題となります。今回の新型インフルエンザでは、小児患者が多数発生するという特徴があり、人工呼吸器が必要な重症肺炎についても、全国で四百人以上の小児患者が発生したという報告もあります。
 一方で、小児科医師の不足は大変深刻な状況であり、かねてより都議会民主党も対策の推進を求め、都もさまざまな対策を講じてきたところですが、一朝一夕に解決するものではありません。
 このように小児科医師が不足する中、多数の小児入院患者に対応できる体制を構築することは容易ではなく、工夫が必要だと思いますが、今回はどのように対応したのか伺います。

○安藤福祉保健局長 新型インフルエンザの流行が始まりました昨年八月、都内の全病院に対し、今後の本格的な流行に備えて医療体制の確保を要請いたしました。
 また、今回の新型インフルエンザは小児患者が多いという特徴がありましたため、流行注意報の発令後、直ちに小児病床を有する全医療機関を集め、病院を挙げて小児患者の入院医療体制を整備するように強く要請いたしました。
 具体的には、小児科病棟への医師、看護師等の医療スタッフの応援体制を整備し、小児科病床を最大限活用することや、小児科病棟が満床の場合には、中学生以上を内科医師が診察して内科病棟に入院させるなどの例を挙げまして、病院ができる限りの入院受け入れ体制の確保を図るように求めたところであります。

○くまき委員 新型インフルエンザ発生時には、限られた医療資源、限られたマンパワーで増大する医療需要に対応することは大変困難だと考えます。
 今回の新型インフルエンザでは、幸いにして、医療機関の受け入れ能力を大幅に上回る入院患者が発生することはありませんでしたが、幸運にあぐらをかかず、より感染力の強い新型インフルエンザへの備えを進めていただきますようお願いいたします。
 今後は、今回の対応から得た教訓を生かして万全の備えを目指していくと同時に、予想をはるかに上回る事態に対しても、迅速かつ適切な対応がとれるよう、危機管理体制の構築に取り組んでいただくことを要望いたします。
 新型インフルエンザなど、新たな感染症対策は、見えない敵との未知の戦いであり、対症療法的な対策だけでなく、新たな検査手法や治療法の開発も重要になります。
 そこで、東京都医学研究機構では、新型インフルエンザウイルスについて、新たな検査方法を開発したと聞いていますが、具体的にどのようなものか伺います。

○安藤福祉保健局長 東京都医学研究機構では、昨年九月、これまで四、五時間かかっておりました新型インフルエンザ遺伝子の検出が三十分以内でできる超高速PCR測定システムを開発いたしました。
 このシステムは、新型インフルエンザと季節性インフルエンザの識別や、弱毒型、強毒型遺伝子の検出などを一回の検査で行えるため、治療方針の決定や有効な感染防止対策の実行など、迅速な対応が可能であります。
 現在、システムの実用化を目指し、臨床試験の実施に向けた準備を進めているところであります。

○くまき委員 東京都医学研究機構においては、新型インフルエンザ研究のほか、がん、認知症対策の研究を進めていますが、その進捗状況についてお聞かせください。

○安藤福祉保健局長 がんにつきましては、血液などを使った早期診断法や、痛みを和らげる治療法の研究などを行っておりますが、中でも大腸がんについては、尿から検出される特定の物質を活用し、簡単で、体への負担が少ない検査法の開発を進めており、実用化に向けて臨床試験を実施しております。
 また、認知症の予防、治療法については、アルツハイマー病の原因となる脳に異常蓄積するたんぱく質を除去し、治療に効果のあるワクチンの研究に取り組んでいるところであります。

○くまき委員 ところで、都は、東京都医学研究機構における神経科学総合研究所、精神医学総合研究所、臨床医学総合研究所の三つの研究所を平成二十三年度に統合整備することとしています。
 各研究所では、隣接する都立病院などとの共同研究を行っており、特に神経科学総合研究所と神経病院は、強力な連携体制のもと、ALSやパーキンソン病など、神経難病に関する研究に力を入れています。
 今後、研究所が移転することにより、研究の進展に支障が生じないのか伺います。

○安藤福祉保健局長 神経科学総合研究所は、都立神経病院を初め、府中キャンパス内にある医療施設との連携、協力のもと、脳、神経疾患の原因解明に取り組み、診断法、治療法の開発を進めております。
 研究と臨床の連携は、医学の進展にとって不可欠であり、三つの研究所の統合整備後も、共同研究や積極的な情報交換など、相互連携体制を確保し、難病を初めとするさまざまな医療課題について研究を進めてまいります。

○くまき委員 早い実用化、あるいは研究を進めていくことをお願いいたします。
 次の質問に移ります。
 知的障害特別支援学校の普通教室は、平成十二年あたりから特別教室の普通教室への転用化が目立ってきたと聞いています。こうした状況を踏まえて、都教育委員会は、児童生徒の今後の推計値を出し、平成十六年に東京都特別支援教育推進計画第一次実施計画を策定しました。しかし、その後も知的障害の児童生徒数は増加し、知的障害特別支援学校の教室不足は今もなお続いています。
 平成十九年四月の改正学校教育法の施行以降、知的障害の児童生徒の増加傾向はさらに著しくなってきました。これは、特別支援学校に対する保護者の期待が大きくなってきたことによるものと考えられます。
 都教育委員会は、平成十九年十一月に特別支援教育推進計画第二次実施計画を策定しましたが、この計画の推計を大きく上回って、知的障害の児童生徒は今も増加をしています。
 都教育委員会は、この知的障害の児童生徒の著しい増加に対し、これまでどのような対策を講じてきたのか、また現在に至るまで教室不足が続いているのは、何が要因であると認識しているのか、伺います。

○大原教育長 都教育委員会は、東京都特別支援教育推進計画第一次実施計画に引き続きまして、平成十九年十一月に策定した第二次実施計画におきましても、知的障害のある児童生徒数の増加に対応するために、学校施設の改修や増築及び新設などにより、教室の確保対策を進めてまいりました。
 一方、第一次実施計画を策定した後、発達障害者支援法や障害者自立支援法、改正学校教育法などが施行されまして、特別支援学校に対する保護者の期待が高まり、推計値を上回る児童生徒が知的障害特別支援学校に就学または入学してきております。
 こうした想定を超える児童生徒の増加が、計画数を上回る教室整備が必要となった要因でありますが、普通教室につきましては、特別教室の転用などの工夫によりまして必要数を確保しているところでございます。

○くまき委員 特別支援学校については、都教委は学級編制基準に基づいて決定した学級に応じて教室を確保しているとしていますが、しかし、実際には、普通教室を確保するために、カーテンなどで間仕切りしたり、転用したりしている教室はあるものの、授業は発達段階に応じたグループで行っている場面が多いため、授業中には空き教室が目立つということであり、要するに学級編制基準による教室数としては不足しているが、実情としては足りているという認識を持っておられるように伺います。
 こうした実態を見ると、そもそもの教室整備のあり方が実態に合っていないのではないかと考えます。
 そこで、現在の実態に応じて学級のあり方を変えることについて、第三次実施計画の策定に向けて検討できないものか、見解を伺います。

○大原教育長 学級は、学校の教育活動が継続的、日常的に行われる基礎的な単位集団でありまして、学校における児童生徒の毎日の学習と生活のよりどころとなる場でございます。
 この学級の編制基準について、都教育委員会は、公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律及び公立高等学校の適正配置及び教職員定数の標準等に関する法律に基づきまして、普通学級は小中学部で六人、高等部八人、重度重複学級は三人としております。
 この学級編制基準に基づき決定した学級数に応じて教室を整備する原則は維持すべきものと考えておりますが、教育活動の実態に応じた施設の柔軟な運用などにつきましては、第三次実施計画の策定に向けて、さまざまな検討を加えてまいります。

○くまき委員 ぜひお願いいたします。
 知的障害特別支援学校の児童生徒の増加は、今後もさらに続くものと推測されます。保護者は、第三次実施計画に一日千秋の思いで大きな期待を寄せています。第三次実施計画が期待を裏切るものにならないよう、知的障害がある児童生徒の教育環境を画期的に確保していくためには、新たな推計値を踏まえ、ニーズに適した具体的な対応策を講じる必要があると考えますが、見解を伺います。

○大原教育長 第三次実施計画の策定に当たりましては、各学校の現況や今年度実施の児童生徒数の推計調査などを踏まえまして、増改築が可能な学校施設の精査や通学区域の適正化及び就学、入学相談のあり方などを検討し、計画に反映させてまいります。

○くまき委員 ぜひよろしくお願いいたします。
 次の質問に移ります。
 先日、板橋区の福祉関係者の方々と話をする機会がありました。障害者の施設では、牛乳パックのリサイクルや、ジャムやパンをつくるといった活動を通して、障害者が地域での自立した生活を目指していることを改めて認識いたしました。
 彼らにとっては、障害の重い軽いにかかわらず、施設でのこれらの活動が生活の基盤であり、就労の場であり、あるいは企業での就職に向けた重要な訓練の場となっています。
 社会全体として、これら障害者の活動への理解を深め、企業や自治体がこれらの製品を購入するなど、施設の活動を支援していくことが必要であります。しかしながら、どこの施設がどんな製品をつくっているのかなど、余り全体像が明らかになっていません。
 そこで、東京都が率先して各施設ごとの業務内容を把握し、企業や自治体が施設の製品の購入を初め、施設に業務を発注できるように、障害者施設の業務内容をPRするべきであると考えますが、都の見解を伺います。

○安藤福祉保健局長 都ではこれまで、地方自治法に基づく政策目的随意契約制度を活用し、障害者施設の受注機会の拡大を図ってまいりました。近年、施設の業務内容が広がってきていることを踏まえ、現在、より具体的に施設の提供可能な品目や納品価格、受注実績などを調査し、取りまとめているところであります。
 今後、こうした情報を区市町村や経営者団体等に提供するとともに、都のホームページも活用して、障害者施設への発注の拡大を図ってまいりたいと思います。

○くまき委員 ぜひ福祉施設の業務内容の取りまとめと、それらのホームページへの掲載をお願いいたします。また、企業や自治体と施設が取引するには、繰り返しの購入に耐え得る一定水準以上のものを安定的につくっていく必要があり、施設自身も、業務内容や作業の進め方など改善の努力が必要であります。
 来年度、都も、区市町村が施設へ経営コンサルタントを派遣する事業を包括補助のメニューに加えて支援することとしています。こうした事業を区市町村や事業者が活用するには、その前提として、工賃アップなど施設の事業改善に向けた意識改革を進めるための取り組みが必要だと思われます。
 また、都民が施設の製品を直接手にとって見るなど、障害者施設の事業活動を都民や企業に目に見える形でPRしていくことが必要であると考えますが、あわせて見解を伺います。

○安藤福祉保健局長 都では来年度、障害者施設の経営者、職員等を対象に工賃アップセミナーを実施します。このセミナーでは、工賃アップを実現した事業所の成功事例を紹介し、商品開発、市場開拓、作業効率の向上など、事業所経営のノウハウの習得や職員の意識改革などを図ってまいります。
 また、一般の都民や企業の方々にも広く施設の製品等に触れる機会を提供するため、障害者の施設でつくられたすぐれた製品の販売会や、提供できる役務のパネル展示などを実施していく予定であります。

○くまき委員 ぜひ販売会などのPRもお願いいたします。
 次の質問に移ります。
 教育管理職不足について伺います。
 教育管理職である校長、副校長は、学校における組織運営や人材育成、外部折衝などに関する学校経営の責任者であり、優秀な人材を持続的に輩出していくことが重要です。
 しかしながら、近年、教育管理職のなり手が不足していると聞きます。この点に関し、まず現状と都教育委員会の認識について伺います。

○大原教育長 教育管理職選考の受験者数は、現行制度となった平成十二年度には千九百十七名でありましたが、平成二十一年度は六百三名と減少しております。これは、教育管理職選考の有資格者の中心となる四十代が、採用が少ない時期に教員となった世代に当たること、そして、有資格者を原則として主幹教諭にしたことなどによるものでございます。
 これを有資格者数に対する受験者の割合である受験率で見ますと、平成十二年度五・三%であったものが、平成二十一年度は四・二%と、一ポイントの低下にとどまっております。
 教育管理職である校長、副校長は、学校経営の責任者として、学校が都民の学校教育に対する期待にこたえるとともに、都及び区市町村が教育改革を推進していく上で大きな役割を担っております。
 都教育委員会としては、教育管理職選考の受験率を高めていく必要があると認識しております。

○くまき委員 教育管理職選考の受験者が減少していることはわかりました。
 近年、学校を取り巻く環境が変わり、教員の多忙感や負担感が深まっているなど、さまざまな要因が考えられると思います。
 都は、この受験者数減少の原因を何であると考えているのか、伺います。

○大原教育長 平成十九年度に実施した教員へのアンケート調査によりますと、管理職として責任ある立場を担うという当事者意識や、みずからの経験や能力をさらに向上させ、学校組織の中で職責を高めていこうという意識が希薄になっていることがうかがわれます。
 また、女性教員の受験率が男性教員と比べて低くなっておりますが、これは管理職を担い得る資質や能力がありながら、管理職の職務と家事や子育てとの両立が難しいとして、管理職選考を敬遠する傾向があるためと考えられます。
 特に小学校におきましては、女性教員の占める割合が高いことから、よりすぐれた管理職を確保していくためには、女性教員の受験を促す取り組みを進めていく必要があると考えております。

○くまき委員 管理職を目指さない教員が増加している傾向にあると、このことが原因の一つとのことですが、こうした状況を放置すれば、学校組織が成り立たなくなるのは明らかではないでしょうか。
 都教育委員会として、今後どのように対応されていくのか伺いまして、私の質問を終わります。

○大原教育長 教育管理職の候補者を安定的に確保していくためには、優秀な人材を主任教諭、主幹教諭へ積極的に任用し、学校組織の中で責任のある重要な職務を経験させることが必要でございます。
 このために、校長、副校長が、自己申告における面接や日常の職務を通じて個々の教員にキャリア形成の中長期的な展望を意識させ、教員を、採用段階から将来の管理職を視野に入れ、主任教諭、主幹教諭へと計画的に育成してまいります。
 また、仕事と子育ての両立を図るために、これまでも出産後の育児時間、部分休業などの制度を整えてまいりました。
 今定例都議会には、介護休暇制度の改正案を提出いたしますほか、子どもの看護休暇制度の見直しを図るなど、今後とも教員が働きやすく管理職を目指しやすい環境整備に努めてまいります。

○酒井委員長 くまき美奈子委員の発言は終わりました。(拍手)

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