予算特別委員会速記録第三号

○服部副委員長 橘正剛委員の発言を許します。
   〔服部副委員長退席、藤井副委員長着席〕

○橘委員 初めに、医療サービスの充実と医療連携について質問いたします。
 医療に対する安心は、暮らしの安心の基本であります。医療行政はここに視点を据えて、都民の生命、健康を守るために、質の高い医療とサービスを提供していく使命を担っていると思います。したがいまして、都民の医療ニーズ、そしてまた、都民の声には常に敏感でなければならないと思います。
 この観点から、よく耳にするのは、例えば入院している病院から退院を打診されたけれども、転院先がなかなか見つからない、あるいは退院後に入所できる高齢者施設がなかなか見つからない、今受けている治療に医療助成制度は適用されるのか、さまざまな都民の不安や悩みが、この入院等に付き添ってあります。
 医療機関でこうした相談に対応し、解決の道筋をつける役割を担っているのが、医療ソーシャルワーカーであります。医療制度上、このソーシャルワーカーの配置や資格には法的な規定がないために、その配置は医療機関の任意となっております。したがって、都内でも、全国的にも、配置しているところもあれば、ないところもあって、ばらばらであります。
 こうした中で、東京都は、都立病院そして公社病院に配置をしておりまして、直近のことし二月一日現在で、常勤の医療ソーシャルワーカーは都立病院で四十七人、財団法人の東京都保健医療公社の六つの病院の合計で十八人、合計しますと六十五人が配置されております。これは比較的重層的な配置であると思います。
 事前に病院経営本部からいただいた資料によりますと、都立病院、そして公社病院における医療ソーシャルワーカーの方々が受け付けた相談は、どういうものがあるのか。十二項目に分けてありますけれども、主なものは療養上の問題、経済の問題、つまり入院費用とかそういった問題ですね。それから退院の問題、転院先をどうするのか、そういったものがたくさん寄せられております。
 直近の集計の平成二十年度の相談件数は、都立病院と公社病院合計しまして、何と三十七万四千三百七十二件にも上っております。単純計算しますと、一人当たり五千七百件以上の相談件数となるわけですけれども、これは事実上無理であります。なぜかといいますと、一人の方が何回も同じことを、わからないからもう一回教えてくださいと、それもカウントされております。また同じ項目、一人の方が相談した項目の中に五件、六件と別々の問題を相談される方もあります。そうしますと、件数は加算されていきますけれども、この数字が実は非常に大事なんです。これほど何回も聞かなきゃならない、一人の人が五項目も六項目も聞かなきゃならない、これが今の現状だということなんです。この数字は如実に今の現状をあらわしていると思います。
 そして、この医療ソーシャルワーカーを、しっかり今、組み立てよう、そういう姿勢で整備してきたのは病院経営本部でございますけれども、現在、都立病院、公社病院における整備の状況、今まで取り組んできて大変な苦労があったとも聞いております。その苦労を踏まえて、ソーシャルワーカーの位置づけはどうなのか。それからこれの重要性について、病院経営本部長はどういう認識を持っているのか、まずお聞きいたします。

○中井病院経営本部長 都立病院及び公社病院は、それぞれ患者中心の医療、患者中心の温かい医療を経営理念の重要な柱として、患者サービスの向上に常に努めております。
 また、いずれの病院も、急性期病院として地域の医療需要に十全にこたえるため、患者さんの状況、意向を踏まえた円滑な転退院に、日々、意を尽くして取り組まなければならない状況にございます。
 こうした中にあって、医療ソーシャルワーカーの果たす役割は極めて重要であり、今日の都立病院及び公社病院の運営において、その存在は不可欠なものと認識しております。

○橘委員 今、病院経営本部長から、極めて重要であるということと、それから、存在は不可欠であるという重い言葉がございました。これがまさに、病院経営本部長がしっかり先頭を切って整備を進めてきた原動力であろうかと思います。こういう認識が私は大事だと思います。
 もう一点、私が注目している数字がございます。それは、十八年度から二十年度までの三年間で相談件数がどれくらいふえたかといいますと、二万七千件ほどふえております。相談業務がもうずうっと増加傾向をたどっているんですね。そのふえた中でも、特に目立って急激にふえているのが、転院に関する相談なんです。つまり、次の病院、どこに転院したらいいかわからない、何とか探してくれ、そういった相談が非常にふえているということ、これが今の数字の上にあらわれているわけです。
 そして、今、医療行政に求められているのは、こうした状況に迅速に対応するんだ、それを率先して示すことよって、民間病院もそうしていかなきゃならない、そういった姿勢になってくる、その役割を担っているんだと思います。
 そこで、病院経営本部長にまたお聞きしますけれども、都民に対する質の高い医療、充実した医療サービスの提供を使命とする都立病院、公社病院、大変な状況にあることはよく知っていますけれども、率先して相談業務の充実に取り組んでいくという姿勢、またどういうふうに取り組んでいくのか、見解を伺いたいと思います。

○中井病院経営本部長 ご指摘のとおり、医療ソーシャルワーカーが対応する相談件数は年々ふえており、相談内容も、退院、転院を中心として、非常に多岐にわたっております。
 こうした状況を踏まえ、より患者さんの立場に立ったきめ細やかな相談支援ができるよう、都立病院では、医療ソーシャルワーカーを平成二十年度、二十一年度の二カ年で八名増員し、体制の強化を図ってまいりました。また、緩和ケアやリハビリテーションなど、近年の医療動向に応じた個別、専門的な相談にも対応できる体制づくりを進めているところでございます。
 今後とも、患者さんやご家族のニーズに的確に対応できるよう、さまざまな工夫を図り、サービスの向上に努めてまいります。

○橘委員 一方、民間病院における医療ソーシャルワーカーの整備、相談業務、この充実も非常に今、求められているんです。というのは、公的病院それから大きな病院では、ある程度医療ソーシャルワーカーを整備しているんです。けれども、その受け手である民間病院の方でなかなか進んでいないということは、せっかく退院先を紹介しても、それを受ける側がメディカルソーシャルワーカーがいないという、そういったケースもあるわけです。
 したがいまして、公的病院、大学病院も整備します、それから民間病院も整備していく、そうすることによって、すごく流れがよくなっていく、結果的に患者の皆さんに安心感を与えるという医療体制ができていくわけであります。
 そして、民間の整備、進めればいいじゃないかといいますけれども、これは医療制度上、なかなかそれを一挙に持っていくことができないのが実態であります。なぜならば、この医療ソーシャルワーカーというのは、正式な、法的に規定された資格もありません。そして、やらなきゃならないという義務規定もございません。したがって、国に、明確な位置づけをするようにということで、国がまず制度化をして、病院が整備できるような体制をとっていく、これが大事なんです。
 したがって、今の段階では、都独自でやっても、まだ法の壁、制度の壁というのがございますけれども、東京都としてまずやるべきことは、国に対して、これを制度化してくれと制度要求すべきです。これを今までやっていたかどうか、ちょっとわかりませんけれども、命がかかっているんですと、命がかかっているんだから、この制度化をしっかりやってくれという制度要求を、もう一回やるべきであります。
 同時に、都独自でできる範囲で、民間の病院の皆さんに、この制度は大事なんだということをもう一回訴えていただきたい。訴えることによって、やはり医療の良心というものがある病院というのは、負担はかかるけれども、これをやっていこう、そういった姿勢になってくると思います。そういった働きかけを東京都に求めるものでありますが、いかがでございましょうか。

○安藤福祉保健局長 今回の診療報酬改定におきまして、退院調整の相談業務に関する評価が引き上げられましたことから、医療機関が医療連携機能を充実強化することが期待できます。
 都におきましても、こうした機会をとらえ、医療ソーシャルワーカーによる相談体制の強化について、病院管理者を集めた会議やシンポジウムなどを活用して積極的に働きかけてまいります。
 あわせて、医療ソーシャルワーカーなどによる相談機能の充実について、国に提案を要求してまいりたいと思います。

○橘委員 局長、二点伺います。続けて伺います。
 この医療ソーシャルワーカーの皆さん、非常に勉強熱心でありました。いずれもそうだと思います。それで、研修会等を東京都でも主催してやっていらっしゃいますけれども、研修会はあるんだけれども、情報交換の場がないという声もお聞きしました。
 なぜ情報交換の場が必要なのかといいますと、医療ソーシャルワーカーの方たちは、病院から出て、自分で取材して、この病院はうちの患者さんのこういう症状の方を受け入れる可能性があるとか、こういう設備があるとか、日々更新される病院の施設を取材しておかなければなかなか情報がつかめない。その情報をつかむのは、研修会に参加したときにたまたま隣り合わせた人がそれを教えてくれたとか、そういった状況が今なんです。
 けれども、これを、研修会のときに意見交換の場を設ける、意見交換研修会みたいなもの、こういったものをやれば、情報がだんだん集まってくるようになります。顔の見える交流ができるようになります。そうしますと、いざというときには患者さんの立場になって、あそこの病院がこういう施設があるから大丈夫という自信を持って勧めることができる、そういう体制ができますので、この研修と同時に、また別でもどうでも結構ですけれども、情報交換をする場をつくっていただきたいのが一点であります。
 そしてもう一点は、今、医療ソーシャルワーカーの方たちが利用している情報源としては、医療機関情報案内サービスである「ひまわり」というのがあります。これはデータベースですけれども、この「ひまわり」があるじゃないですかといいますと、実際は、情報が古いものが結構あるものですから、使えない場合が結構多いそうでございます。直接私、見せてもらおうと思ったけれども、外部の方には見せられませんといいましたので、これは見ることはできませんでした。確かめることができませんでしたので、そういうお話を伺いましたということをいっておきます。そして、これを迅速に更新することによって、これも情報源として大いに使うことができる。
 したがいまして、ここで大事なことは、このソーシャルワーカー等の意見を反映して、このシステムの充実に取り組んでみてはどうかと思いますが、この二点について見解を伺います。

○安藤福祉保健局長 お話のように、医療ソーシャルワーカーが日ごろから多くの病院の情報を把握しまして、相互に病院間の実情を理解している関係を築いていくことは非常に大切なことだと思います。
 来年度、医療ソーシャルワーカーが、医療連携の現状の課題や転院調整の実践例に基づき意見交換を行うグループワークなどの研修を実施してまいりたいと思います。
 また、現在、医療機関情報案内サービス「ひまわり」におきまして、各医療機関の入院受け入れに関する参考情報を提供しておりまして、より多くの病院で活用されるよう、医療関係者に対する周知に努めておりますが、来年度はさらに、全病院にアンケート調査を行い、医療ソーシャルワーカーなど実務担当者の要望を把握いたしまして、「ひまわり」の情報項目の改善、充実を図っていきたいと思います。

○橘委員 二つとも大きく前進をさせていただく答弁をいただきまして、感謝申し上げます。これにて大きく医療ソーシャルワーカーの存在意義というのも発揮できていくのではないかと思います。
 次に、同じく地域医療の連携強化、それから転院の円滑化、話題は継続しますけれども、この方策の一つとして活用されているのが、地域連携クリティカルパスというものであります。
 これはご存じの方、多いと思いますけれども、簡単に説明しますと、急性期から回復期、そして維持期、在宅療養、このそれぞれの段階に移行するときに、患者に対するそれぞれの段階のときに、最初の治療から完治するまでの全体的な治療の計画、スケジュール、内容、これを最初に書面で全部あらわすんです。
 そうしますと、患者さんも家族の方も、スケジュールが全部決まっていますから、非常に安心できます。それから、医療側も連携ができますから、これもまたスムーズに流れていきます。こういうものが連携パスなのでありますけれども、一つの安心の医療の継続、それから、地域でそれを使っていける安心のツールともいわれております。
 現在、東京都内では、肺がん、胃がん、肝がん、大腸がん、乳がんの五大がん、これが一つです。それから、脳卒中、糖尿病、この三つの疾病にこの連携パスが活用されております。
 例えば、五大がんの連携パスは都内で統一をされていまして、東京都医療連携手帳の名前で先月から試行版の運用が始まっております。これがその手帳であります。(実物を示す)がんの患者が手術を行った後にこの手帳が使用されることになりますけれども、患者さんの五年後、十年後にわたってどういう治療をやっていくのか、その診療計画、これが最初から全部書かれるわけです。そうしますと、将来的にどういうものをどういう治療をしていったらいいのかというのがすぐわかるようになっています。これを別の医療機関に持っていっても、お医者さんが見ればすぐわかるという、すばらしいものだと私は内容を見て思いました。
 糖尿病については、手帳形式のパスが全国的に普及しております。東京都では若干これを改良するというふうに聞いておりますけれども、この二つはまず定着しております。
 ところが、脳卒中の連携パス、これについては、今使用するところが広がりつつあるんですけれども、活用する医療機関、延べ約六百の医療機関で連携パスが活用されているんですけれども、活用していない医療機関もまだまだ多々ございます。
 そしてまた、連携パスの有効性、広がりを持つことによって、それを使えるところ、すぐわかるところ、これがいっぱいふえてくることによって、このパスの意義が大きく生かされるわけですけれども、まず一点目は、急性期の医療機関を中心にこの普及をさせていく、これから始めるべきではないかと思いますが、局長のお考えをお聞かせください。

○安藤福祉保健局長 地域連携パスがより多くの患者さんに活用されるためには、急性期の医療機関への普及が効果的であり、これまで多くの脳卒中急性期医療機関で活用が進んでまいりました。
 パスを導入していない医療機関に対しましては、地域連携パス合同会議というものを設けておりますので、ここへの参加を呼びかけ、その活用を促してまいります。
 さらに、今回の診療報酬改定におきまして、在宅医療などを担う診療所がパスを活用する場合も評価の対象となりましたことから、東京都医師会の協力を得て、診療所に対してもパスの一層の活用を働きかけてまいります。

○橘委員 これも前進していただく前向きの答弁をいただきました。
 それから、二つ目の脳卒中のパスですけれども、課題、もう一つございまして、まずは標準化の問題なんです。私、いろいろ調べましたら、現在都内では、脳卒中の連携パスが少なくとも十種類あるといわれております。脳卒中の医療機関グループで使われているというふうに聞いておりますけれども、これが十種類だとします。十種類があると、その医療グループごとで使う分には全然問題ないんです。けれども、このグループのお医者さんからこちらの別のグループのお医者さんに行ったときに、これはどういう書式ですかというふうにしていわれた場合、患者さんはちょっとショックを受けるようでございます。
 そうしますと、事務も扱うときも、特に回復期のリハビリテーション病院であるとか療養病床を持っている病院、ここには都内全域から集まってくるんです。そうしますと、その方たちが持っている連携パス、中身はそんなに違わないようですけれども、種類が違っていると、事務的にやっぱり煩雑です。そしてまた、これを整理するために患者さんと向き合う時間が減っていきます。
 そういったデメリットがございますので、これは、できれば標準化して、統一化していった方がいいかなと私は思っております。
 ただし、これをつくるまでには、それぞれのお医者さんであるとか看護師さんであるとか、知恵を集中させて、寄せ集めて、これでいいものができたというふうにして自信を持ってやってきたのが十種類なわけですから、どれがいいとかどれが悪いとかいいにくいわけですね。
 けれども、その中でも患者さんという立場に立ったならば、これを標準化していくのがこれからの方向性ではないのかなと思いますけれども、局長、いかがでございましょうか。

○安藤福祉保健局長 医療機関が共通の脳卒中地域連携パスを活用いたしますことは、患者の転院や在宅への移行の円滑化に有効であると考えております。
 お話のように、がんにつきましては、五大がんにつきまして、先月から全都共通のものということで試行を始めましたが、脳卒中についてはそうはなっておりません。
 したがいまして、来年度、都内で活用されております十のパスについて、代表者を集めた専門部会を設置し、様式の標準化について検討してまいりたいと思います。

○橘委員 知事に伺いますけれども、今、医療問題について、さまざま私が調べ、そしてまたお聞きして勉強したことを、ここの辺は、都民の側から立ったらこれは改善した方がいいのかなということをテーマにして取り上げてみました。これから高齢化が進みますと、ますます高齢社会になりますと、退院を迫られる一つの例をとりましても、例えば、ご主人が入院されている、高齢の奥さんしかいない、いろいろ転院先を見つけなきゃならないけれども、福祉制度とかいろんなものがある、もう判断つかないというケースがたくさんございます。また、経済的な問題もたくさんございます。
 そういうときには、この医療ソーシャルワーカーという役割の人がしっかりしている、それから、地域連携パス、こういったものがしっかりしている、そしてどこへ行っても全部共通する、こういった体制があって、都民の皆さん、また家族の皆さん、患者の皆さんが安心できる医療だというふうになると思います。
 そうした体制を今後の東京は築いていかなければならないなと私は思っておりますし、限られた医療資源を生かすためには、とかく医療といいますと、医師の不足、看護師の不足、そちらに目が行きがちですけれども、この患者さんの流れ、治療の流れ、この要所、要所で大事な役目をしている部門、方たち、これに力を入れることによって、東京の医療は、少ない限られた医療資源をもっともっと有効に効果的に活用していくことができると私は思います。
 そうした将来の東京の医療という観点から、知事の決意、またご認識をいただけたらと思います。よろしくお願いします。

○石原知事 率直に申しまして、橘委員の質問に対する答弁のブリーフィングを、私、要するにまだ受けていないというか、これはこの書かれたままを読めばいいのかもしれませんけど、そうもいきませんので、逆にお伺いしたいんですが、連携パスのパスというのは、いわゆるサッカーのパスと同じような意味ですね。(橘委員「つながりがあるんです。それを受け継いでいる。」と呼ぶ)つながりですね。
 それからもう一つ、医療ソーシャルワーカーという職掌があるというのも私初めて質問で知りまして、初めて知ったことで、余り責任のある答弁ができないんですが、要するに、ご主張を聞いていて、まことにむべなるかなという気がいたしますね。これだけ医術が複雑化しながら、同時に進歩しているときに、昔みたいに、何もかも医者が、耳鼻科の医者が内臓の話を聞いても、知ったかぶりして患者が安心するという時代じゃないと思いますね。
 ですから、やっぱり医療の治療というものの正確を期するためには、こういう仕事は絶対必要だと思いますし、現に、例の周産期の主婦の事故があったときにも、あのとき改めて、地域の医師会と大病院との連携というものを強化するように、こちらが持ちかけて体制ができましたが、特に医療ソーシャルワーカーに関しては、これはもうお聞きする限り、一つのやっぱり国家の基準を設けて資格づけをしませんと、相談を受ける方も自信を持って答えられないし、する方も、一体どういう資格でどういう能力で答えてくれるのかわからぬと思いますので、これはやっぱり、そういう職業がこれからますます必要になってくるのはむべなるかなと思いますから、これは国に諮って、国が責任を持って、これをきちっとした水準を設けて資格づけるということが絶対に必要だと思います。
 そういったものをコーディネートしながら、都としては、医療を万全に敷衍させる努力をしていきたいと思っております。

○橘委員 ありがとうございました。今後もまた、これが東京にとっては非常にいい医療体制ができるように私たちも取り組んでいきたいと決意しております。
 次に、中小企業の資金繰り支援について質問いたします。
 私は、四年前の平成十八年三月の予算特別委員会で、不動産担保に依存しない新しい融資手法の整備が必要であるということを訴えました。その当時、私は質問したけれども、それはまだまだちょっと難しいという答弁でがっかりした記憶がございますけれども、その後、東京都の方で、これはやはり必要だと判断されたと思うんですけれども、そのときは私は、製品在庫とか製造機械、トラック、これも担保として認めて、それを融資にすべきだという主張をしたんです。ところが、そんな例は今までないということもありまして、だめだったんですけれども、その後、東京都が取り組んでくれまして、製品在庫などの棚卸資産、これを担保にした新たな流動資産担保融資というのが実施されました。これは実現しました。
 我が党はその後、平成二十年の第四回の定例会の代表質問におきまして、機械や設備も担保とする融資を実施すべきだという主張をしたんです。こうした提案を受けて、今回、都は小規模企業を対象に、機械や設備も担保に加えた新しい融資を今月中に開始するということになりました。
 この融資制度の具体的な内容はまだ明らかになっておりませんけれども、この場で、可能な範囲で結構ですので、内容を明らかにしていただきたいのと、それから、小規模企業の資金繰りにもたらす今回の新しい制度の効果について、見解を伺います。

○前田産業労働局長 中小企業の資金調達の支援としては、これからご説明いたします機械設備担保融資を初めとして、さまざまな取り組みを行っております。ローン担保証券、制度融資、それから、いろんな政策の中に新銀行東京も位置づけられております。
 さて、機械設備担保融資は、企業が保有する工作機械や車両等の動産を担保とする保証つき融資を都独自に実施するものであります。
 本融資制度は、従業員数が製造業では三十人以下、卸、小売り、サービス業では十人以下の小規模企業を対象といたしまして、保証機関が担保となる動産の評価、管理等を担い、取扱金融機関に対する保証を行うことにより、小規模企業に対する融資の促進を図るものであります。
 また、保証料を都が全額補助し、利用者の負担軽減を図るとともに、さらに保証機関に損失が生じた場合には、都がその一部を補助することによりまして、小規模企業の信用リスクをより積極的にとった保証審査を促してまいります。
 こうした取り組みによりまして、資金調達力が弱い小規模企業の資金繰り手段の多様化を図っていくものであります。

○橘委員 わかりました。随分、本当に細かい内容まで配慮された内容だと私は思っております。
 ただし、これは小規模企業を対象にした流動資産担保融資、動産担保融資でありますけれども、これはある程度担保能力として認められるものは、今回の新しい制度で大体リストアップされたのかなと、そんな感じを私は受けております。
 そうしますと、担保価値のあるものを、制度にほかに入れようと思うと、もう余り残っていないのかなという気がいたします。そうしますと、今後大事なのは、この制度が、小規模事業所の皆さんに非常に使いやすいんですよということをPRしていく、これがこれから非常に大事かと思います。
 実際に聞いてみますと、そういった自分の工場にある製造機械が担保価値があるとは思わなかったとか、そういった声も多々聞くわけでございますので、そうしたものを大丈夫ですよということをPRしていただきたい。これは要望にとどめておきますけれども、しっかり取り組んでいただきたいと思います。
 それからもう一点は、ものづくり産業支援について、これは板橋の関係なんですけれども、これについて質問を一点だけしておきます。
 これは北区にあった、板橋の境目にあった産業技術研究センター、これは今度、湾岸部の臨海部の青海の方に移転することになりました。産業の拠点となっていた北区西が丘にあったこの産技研というのが移転してしまう。そうすると、地元の産業にとっては打撃が非常に大きいものがあるんです。というのは、つくった製品を検査する、それをどういう性能を発揮するか、精密機械で全部実験していく。それから相談事業もやる。そういった拠点というのは非常に大きい存在だったんですけれども、これが臨海部に移転することに伴いまして、板橋区では独自に新産業育成プラザというものをつくることになりました。
 そこには精密機器、検査機械等を入れるんですけれども、それが東京都の助成制度によりまして、そこの機械の購入費に関するものが助成されることになりました。これで非常に前進できたかなと思ったんですけど、課題が一つあったんです。
 なぜかといいますと、それを操作する優秀な技能者、技術者がいなければ、厳密な、本当の微細な検査結果というのはなかなか難しいというのがあるらしいんです。
 ということは、この人材育成、または人材確保という観点でも、これは東京都に支援をしていただきたいと私は思うんですけれども、この辺も含めて、板橋区の要望もございますので、どうか東京都の方で配慮いただく、また支援していただく、そういった体制をつくっていただけないかと思います。見解を伺います。

○前田産業労働局長 東京都立産業技術研究センターには、長年の研究開発や中小企業への技術支援を通じて培った多くの技術やノウハウが蓄積されております。当センターではこれらを生かし、これまで区市町村等からの求めに応じて技術的な指導助言を行ってまいりました。
 お話の現在板橋区が進めております新産業育成プラザの整備に関しましても、区からの要請を受け、検討会に参画し、技術的な面から助言を行っております。
 ただいまお話をいただきました人材の面でございますが、今後、同プラザにおいて技術相談や機器の操作に対応する人材を確保、育成する際には、産業技術研究センターが持っております情報やノウハウを提供するなど、円滑な施設運営に向けて協力してまいります。

○橘委員 ありがとうございました。前向きな姿勢で取り組んでいただければと思います。
 次に、話題を変えまして、地域防災力の向上について質問いたします。
 私は、以前、議員にならせていただいてから、神戸市にございます防災未来館を視察したことがございます。これは阪神大震災と防災をテーマにした科学館でございますけれども、そこを視察したときに、大震災を経験し、自分も被災者になって、そして、視察に行った私たちに対して、ボランティアで説明をしてくれる方が何名かいらっしゃいました。
 その中のお一人が案内してくださったんですけれども、そのお話の中に、私は非常に印象に残ることがございました。何かといいますと、だれかが助けに来てくれるだろうと思ったけれども、時間がたつにつれてだれも助けに来てくれないなと。自分たちでお互いに救い合うしか、助け合うしかないなという状況になったときに、地域の人たちがおのずから倒壊した民家のところに集まってきたというんです。
 そして、屋根に上がって、かわらを割って、ここに穴をあけてくれと、そう叫ぶ人もいた。なぜそうなのかと、私は、最初わからなかったけれども、地域の人たちは、ここのうちのおじいちゃんはいつも大体ここに座っている、ここのうちのおばあちゃんはいつも大体この辺にいる。つき合いがあると大体わかるそうなんです。そして、実際にそこの屋根に穴をあけて掘り下げていったら、そこからおじいちゃんを助けたという、そういった話を紹介してくれました。私、非常に印象に残っております。
 そして、これがこれからは大事だなと。いざとなったら、地域の住民同士で守り合うしかないんだ、命はこうして守るんだということを私はそこで学びました。
 そして、いろいろ調べましたら、実はこのやり方を東京消防庁が既にもうやっているんです。地域の中にある福祉施設、高齢者施設、こういったところと、その地域に住んでいる住民の方が、いざとなったら私たちが助けますという協定を結んでいるんです。こういったやり方というのが大事。
 そしてまた、もう一方では、地域の町会、自治会とそのエリア内に存在する事業所、従業員二人のところもある、三人のところもある。そういった事業所が、いざとなったら助け合うという協定を締結している。これを東京消防庁が推進しているということがわかりました。
 私は気づくのがちょっと遅かったなと思いましたけれども、こういうすばらしい取り組みを消防庁さんがなさっていたということに驚きましたし、これを進めていかなきゃならないと思いました。
 そこで、消防総監にお聞きしたいんですが、現在どういう状況になっていて、そして締結を結んだ後の住民、企業の反応はどうなのか、それをお聞きしたいと思います。

○新井消防総監 応援協定は、本年二月末日現在で七百七十件締結されており、その内訳は、町会、自治会と福祉施設との協定が六百六十一件、町会、自治会と事業所との協定が百九件であります。
 協定に基づく訓練では、近隣の住民が福祉施設の入所者を救護する訓練や、事業所の従業員が町会の可搬消防ポンプを使用して放水する訓練、事業所の資器材等を活用して住民を救出する訓練などが実施されております。
 協定締結後は、このような訓練を重ねることで、住民と福祉施設や事業所との間でより連帯感が強まるなどの効果があらわれてきております。

○橘委員 町会、自治会と福祉施設の締結が六百六十一件、そして町会、自治会と事業所の締結が百九件ということでございますけれども、これで事業所と町会、自治会がまだ数が少ない。これは今後、一番大事な部門になってくると思います。助けられる方は高齢化しているんですね。だから、ここを十分にやっていくということが大事だと思います。
 今回進めている締結、具体的にさらに強化していく、こういった取り組みが必要だと思いますけれども、ご説明なり認識を伺いたいと思います。

○新井消防総監 防災力の向上には、地域の中で連携体制を強化することが重要であると認識しております。
 町会、自治会と事業所が応援協定を締結し、人材や資器材の提供などについて事前に定め、救出、救護などの訓練を実施することは、地震等による被害の軽減につながるものと考えております。
 東京消防庁では、今後も区市町村と連携し、事業者に対しては、東京都震災対策条例に定める事業者の責務を意識づけるとともに、地域住民に対しては、震災時における共助の意識を啓発し、応援協定の締結を働きかけてまいります。

○橘委員 今後、この取り組みを東京全体に広げていったならば、どれほど住民の皆さんにとって安心になるか、はかり知れないと思います。
 事業所の方は事業所の方で、私たちは地域に貢献したいんだけれども、どうしたらいいかわからないというのがやっぱり現状あるんです。地域は地域で、自分たちで防災力を高めなきゃならないという意識はあるんだけれども、高齢化していって、もう気力がわかない、そういう実態もあります。
 それぞれがそれぞれで悩みを抱えて課題を抱えている、そんな中で進めなきゃならないという難しさはある。したがって、ここでは消防庁の方々が強力な推進力となっていったら、随分違ってくると思いますので、また、強力に進めていただきたいことを要望しておきます。
 最後に、総務局にお聞きしますけれども、応援協定を結んでいますけれども、地域の防災力向上の取り組みを幅広く進めるに当たりまして、これは今後必要でありますけれども、東京都全域における町会、自治会と事業所との連携推進のための環境を整えるべき、これが総務局の、また防災関係の取り組みの重要性であろうかと思います。
 そこで、東京都の防災行政を包括的に担当する立場から、総務局長に今後の取り組みについて見解を伺います。

○中田総務局長 地震などの災害が発生した場合、自助、共助の考えに基づきまして、地域の住民と事業所が協力しまして被害の拡大を防ぐことが、委員ご指摘のとおり重要でございます。
 都はこれまでも、総合防災訓練や駅前滞留者対策訓練などを通じまして、災害時における町会、自治会や事業所などの地域の連携を図る取り組みを行っております。
 今後、こうした連携を一層推進するため、東京商工会議所が主催しますBCP講座などにおきまして、事業所に対する意識づけが行われるよう働きかけるとともに、住民に対しましては、地域防災リーダー研修を活用しまして先進事例などを紹介する、こういったことを通しまして、連携の機運を高めてまいります。
 さらに、区市町村と協力しまして、広報紙や防災展等で、連携の重要性につきまして広く啓発に努めてまいります。

○橘委員 強力な推進力となっていくことを望みます。
 そしてまた、防災というのは、自助、共助、公助とありますけれども、共助、お互いに守るということを認識してまいりたいと思いますので、今後ともどうかよろしくお願いします。ありがとうございました。(拍手)

○藤井副委員長 橘正剛委員の発言は終わりました。
   〔藤井副委員長退席、委員長着席〕

○酒井委員長 以上で、本日の予定いたしました質疑はすべて終了いたしました。
 なお、十五日は、午前十一時から理事会を控室一で、また、午後一時から委員会を本委員会室で開催いたしますので、よろしくお願いいたします。
 これをもちまして本日の委員会を閉会いたします。
   午後八時四十八分散会

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