予算特別委員会速記録第三号

○酒井委員長 鈴木隆道委員の発言を許します。
   〔委員長退席、服部副委員長着席〕

○鈴木(隆)委員 それでは、私から、少し現実を踏まえた建設的な議論をさせていただきたいというふうに思います。
 それでは、まず最初に、アジアにおける都市間交流についてであります。
 オリンピックの招致活動では、私自身、各国を訪れ、東京開催に関する理解と協力を求めてまいりました。その中で特に強く感じたことは、日本の首都東京がいかに世界で尊敬をされているかということであります。
 例えば、天然資源に恵まれた中東の産油国であるオマーンは、国王みずからが、いずれ資源がなくなったときにどうするかを日本、東京にならえと提唱し、すばらしい教育システムをつくって人材を育成しているといいます。このように、東京に学びたいと思っている国は、世界じゅうにあるのが現実であります。
 都はこれまでも、姉妹友好都市を含めた世界の各都市と交流を進めてきました。その中でも一番の成果は、石原知事が提唱したアジア大都市ネットワーク21ではないでしょうか。二十一世紀はアジアの世紀といわれています。アジアに世界の注目が集まっています。アジア大都市ネットワーク21は、共通の課題の解決に向けて、アジアの大都市が相互に知恵と経験を分かち合う場になっており、ネットワークを提唱した石原知事には、実に先見の明があったといわざるを得ません。
 世界の中でも、とりわけアジア諸国は、日本に対して強い憧憬の念を持っており、アジアの大都市は、経済面での交流を含め、東京との交流をより一層促進したいと強く望んでおります。
 一方で、成長著しいアジアとの交流は、東京に集積する企業にとっても大きなメリットがあります。東京の企業の持つすぐれた技術や製品がアジア市場で活用されることがアジアの発展につながり、国内産業の活性化にもつながるといった、相互交流を通してのウイン・ウインの関係を構築していくことが非常に重要であります。
 そのような折、本年、九年ぶりに東京でアジア大都市ネットワーク21の総会が開催されることになります。東京で再び総会を開催することは、アジアのさらなる発展に向けて大いなる意義があります。本総会は、参加都市から期待を持たれるだけではなく、都民や都内企業からの注目も高まるような会議にしていかなくてはならないと私は考えます。
 このためにも、参加都市に対して、都による先進的な施策に加え、東京に集積するすぐれた産業や技術をPRするなど、東京総会をより意義のあるものとすべきと考えますが、見解を伺います。

○吉川知事本局長 本年秋に開催を予定しております東京総会では、成長を続けるアジア諸都市にとって早急な対策が迫られております環境問題に加えまして、各都市が高い関心を寄せております東京の企業との連携や先端技術の開発をテーマに取り上げまして、議論してまいりたいと考えております。
 さらに、アジア諸都市が抱える課題の解決に役立ちます都内企業のすぐれた技術を展示、紹介する場を設けたり、東京の経済団体の役員を総会に招きまして、参加各都市の代表との意見交換の機会を設定するなど、東京の産業や技術を発信するための新たな取り組みを検討してまいります。

○鈴木(隆)委員 答弁にありましたように、意義ある東京総会が開催できるよう、私も期待したいと思います。
 次に、省エネ効果が期待されるLEDランプの技術の件でありますが、先ほど少し出ておりましたが、実は韓国、台湾がもう既に日本の技術をかなりリードしているというのが一般の常識であります。これは、CO2の削減量、電気量、それから価格に関しても、既に韓国、台湾、日本の製品の二分の一になっているというのが、もう情報でも流れているところでありますので、都でも調べていただくとわかると思いますが、そのようなことが実際に今の社会の中で起こっているということも現実にあるわけであります。
 しかし、東京には、まだまだ他の国の企業が及ばないすぐれた技術を持つ企業が数多く存在しています。
 一方、アジア地域の経済に目を転じれば、中国、韓国を初めアジアの国々は、世界的な不況を乗り越え、活況を呈しているのも事実であります。アジアの経済が世界に占める比重が高まっている現状を踏まえれば、都内中小企業にとってもアジア市場は無視できないものとなっている現実があります。
 このような現状にかんがみれば、私がかねてから主張しているように、もう技術交流だけではなく、経済分野での協力関係を強力に推進することが肝要であります。ベンチャー技術大賞の受賞企業など都内の中小企業のすぐれた技術と製品がアジア市場で認知され、活用されることは、国内産業の活性化につながるとともに、アジア地域の一層の発展に貢献できるのではないかと考えます。
 ベンチャー技術大賞の受賞企業の技術を知事みずから海外で紹介していただくなど、東京が誇るすぐれた技術を持つ企業を海外に積極的に紹介していただいておりますが、経済分野での協力関係の推進には、やはり企業同士がフェース・ツー・フェースでまず交流することから始まるのではないでしょうか。
 そこで、アジア大都市ネットワーク21東京総会の開催を機に、ベンチャー技術大賞受賞企業を初めとする東京が誇るすぐれた技術を持つ企業と、アジア諸都市の企業との交流の場を設けるなどを私は検討すべきと考えますが、改めて見解を伺います。

○前田産業労働局長 都内には、ベンチャー技術大賞の受賞企業を初めとします、すぐれた技術を持つ中小企業が数多く存在します。こうした都内中小企業のすぐれた技術や製品が、発展著しいアジア諸国で広く活用されますことは、お話のとおり意義あることと認識しております。
 都はこれまで、アジア大都市ネットワーク21の参加諸都市等に、ベンチャー技術大賞の受賞企業のすぐれた技術や製品の紹介などを行ってまいりました。加えて、企業等の交流を促進し、企業同士の理解を深めていくことが有効と考えております。
 このため、本年十一月の産業交流展の場において、東京のすぐれた技術を持つ企業と、アジアの諸都市やそのアジアの企業との交流の場を設けることを前向きに検討してまいります。

○鈴木(隆)委員 非常にいい答弁をいただいたと思い、感謝したいと思います。
 さて、都内の中小企業は、需要の回復が見出せない国内市場よりも、アジア市場を巨大なマーケットとしてとらえ始めているという現状があります。
 都内のすぐれた技術や製品を広くアジアの人々が活用し、高品質で高性能で、しかも安心・安全なメード・イン・ジャパンの製品を通して、東京、ひいては日本のファンを世界じゅうにふやしていくことも経済交流の一つであると私は考えます。
 都内には、すぐれた技術や製品でしっかりと国内で取り引きできるが、何とかこの閉塞感を打ち破るためにも、海外に活路を見出し販路を広げようとする企業もあります。しかし、海外への進出に当たっては、知的財産の保護や海外でのパートナー発掘など、さまざまな課題があります。これらの多くの課題解決に向け、都が積極的に支援していくことが不可欠であると私は思います。
 中国を初めとしたアジア市場へ進出しようとする都内中小企業を積極的に支援すべきと考えますが、見解を伺います。

○前田産業労働局長 都はこれまでも、ベトナムを中心として、都内中小企業の海外事業展開を支援してまいりました。来年度からは、成長著しいアジア市場での販路開拓を目指す中小企業を後押しするため、機械、金属、生活産業などの分野別に商社OBを専門家として配置し、商材の目ききや貿易に関する相談に対応するとともに、取引候補企業の発掘などを行うことといたしました。
 また、海外販路開拓に伴って当然生じます中小企業の知的財産を保護するため、東京都知的財産総合センターと連携を図り、各種助言を行ってまいります。
 これらによりまして、すぐれた技術、製品を持つ都内中小企業のアジアにおける販路開拓を強力に支援してまいります。

○鈴木(隆)委員 こうした課題解決に向けた都市間の交流や協力を東京が率先して行うということは、アジア諸都市の東京への共感、尊敬の念を、より一層強めることになるというふうに思います。将来、日本が、東京が再びオリンピックを招致する上においても、非常に意味のあることだと私は考えています。
 しかし、現実にオリンピックを開催しようとするためには、アジアだけにとどまらず、世界各国からも共感や尊敬を集める地道な取り組みが必要であることも忘れてはなりません。
 一昨年の北京オリンピックを成功させた中国は、初めての五輪招致に失敗した十三年前から、国家戦略として、アフリカを含む世界各地に華人や華僑を進出させ、国際貢献の名のもとに協力関係を築き、政治や経済に影響を与えてきたのは事実でありましょう。その結果、多くの国々の支持を集め、記憶に新しい二〇〇八年北京オリンピックを成功に導いたともいえるのであります。
 東京都はこれまで、ニューヨークを初め北京、パリ、世界各大陸の大都市と姉妹友好都市関係を締結し、さまざまな交流活動を行ってきました。石原知事は、アジア大都市ネットワーク21を立ち上げ、従来の友好だけではない現実的な課題解決のための取り組みを進め、アジア各都市の信頼を得てまいりました。今後は、世界の多くの都市や地域との結びつきがますます重要となってきます。世界には、まだまだ東京のすぐれた技術とノウハウを必要とする国や地域が存在しており、それらの地域へのアプローチは、単に東京の理解者をふやすだけではなく、東京の中小企業にとっても、また日本経済の活性化にも資する意義があることと考えています。
 現在、日本の経済は、長引く不況から脱却できずに閉塞感が漂っています。私は、今日の国政、特にこの外交政策を見ていますと、世界から孤立化しつつあると感じています。このことを感じているのは、私だけではないと思うんです。世界からの信頼と信用、そして、ともに尊敬できる国際関係の構築こそが、日本が世界の中で生き残っていく唯一の道であることは、海外を知る人間にとってごく当たり前なことといわざるを得ません。
 このような今こそ、日本のダイナモとしての東京が、国に成りかわってでも都市間交流を通じて貢献する道を示し、日本の未来を切り開く先導的な役割を果たしていくべきだと私は思います。
 そこで、アジア大都市ネットワーク21参加都市はもとより、世界の各都市に東京のすぐれた技術を提供していくなど多面的な都市外交を展開し、東京のプレゼンスを高めていくべきと考えますが、知事の見解を伺います。

○石原知事 おっしゃるとおり、まさに世界はアジアの時代になりつつあると思います。これをいち早く予測したのが、実は日本ではなくてアメリカでありました。何年前になりますか、日本が手厚く手がけてきて繁栄に導いていた東南アジア、特にASEANをねらって、アメリカはソロスなどという強力なヘッジファンドを使って、為替のレートを踏まえて、壊滅的な打撃を与えましたね。
 あのとき、とにかく生き延びたのは台湾とマレーシアだけでありましたが、とにかくそういったものを踏まえても、まさにアメリカがいかにそれを阻もう、自分で独占しようと思っても、アジアの主体性のもとにアジアの繁栄が来つつあるわけでありまして、都は、アジア大都市ネットワーク21を初め、C40の東京会議の開催や、北京市との水及び環境分野における技術交流など、単なる儀礼的な友好親善にとどまらない実質的な都市外交を展開し、多くの成果を上げてまいりました。
 例えば、新しい、三菱がつくります日本のジェット旅客機のパーツに対する参入であるとか、東南アジアの、あるいは国際的なインフルエンザの流行に対する防止対策とか、あるいは大きな災害に対する共同援助とか、幾つか成果を上げてまいりました。
 二十一世紀は、まさしく都市の時代でありまして、世界の大都市が知恵と経験を合わせて、分かち合いながら、さまざまなその問題の解決に当たることが重要であると思います。そのためには、東京に蓄積されてきました技術やノウハウの活用が有効となります。
 東京の中小企業には、まだまだ知られておりませんが、世界の発展に貢献し得る独創的な技術やアイデアがたくさん存在しております。今後ともこれらを世界に発信し、世界の都市と手を携えて都市問題の解決に当たることにより、東京の存在感や国際的評価を一段と高めていきたいと思います。
 先ほど局長が申しましたが、ことしの冬に行われます大都市ネットワークの会議でも、やはり思い切った日本の中小企業の技術の展示をしたいと思います。
 例えば、日本ではそんな必要ございませんが、ベンチャーテクノロジーとして表彰しているものの一つに、川の流れを利用して、両岸からつないでフロート、浮かせながら、川の流れを表面の一番強い海流を、流れを利用してする発電機などは、これはもう電気の及んでいない開発途上の僻地にはまさにうってつけのものでありまして、そういったものはたくさんありますので、これを披瀝することで大きな協力体制ができていくと思っております。

○鈴木(隆)委員 まさに今知事がいわれたとおりでございまして、今いったような隠れたすばらしい技術が日本にはまだまだ潜在しています。それをやっぱり発掘して、またお互いの国同士が都市間を越えて、都市同士が協力をして、お互いがお互いの国に貢献できていくことが、やはり私はこれからの未来を開いていくことだというふうに思いますので、よろしくお願いしたいと思います。
 続きまして、道路と共生するまちづくりについてお伺いしたいと思います。
 (資料を示す)目黒区の大橋地区で進められている大橋ジャンクション、今回、都議会の定例会の案内に使われています。実は、私、衆議院の小坂徳三郎の秘書をして--もう三十数年になるわけですが、ちょうどこのジャンクションの斜め前が私の会社である事務所なんですね。もう三十年前からこの地元で、地元の多くの方とともにお互いに議論し、苦労してきたというのが現実でありまして、今月の二十八日にいよいよ開通するということがありますので、そろそろ本当のことをいってもいいときが来たのだろうというような思いで、きょうは質問の中に入れさせてもらいました。
 特に、三十年という年月は、一言ではいいあらわせない地元の紆余曲折がありました。都の職員、区の職員の人に聞けばわかりますが、頭から水をかけられた人もいるでしょう。塩をまかれた方もいます。そういう中で、何十回という、お宅を訪ねながら話し合いをして、そしてお互いに協力関係をつくり、実は信頼関係をつくってきたからこそ、今見ていただいてもわかりますが、どこにも反対運動がないんです。この周辺の人々もそうです。まちの人たちもそうです。それから中の人たちも含めて、地元の人たちが本当にお互いにすばらしい人間関係をつくってきた。そして都と区と、それから首都高も初め、すばらしい信頼関係のもとにこの三十年間続いてきたそれの集大成が、実はこの大橋ジャンクションであるということを、ぜひ皆様にはご理解をちょうだいしたいというふうに思います。
 そして、実は、そうはいっても三回の大きな危機がありました。その第一回目の危機というのは、今から二十年以上前になりますか、二十二、三年前、四、五年前ですか、まず、地元の協議会をつくるということです。まちが分断されて、二年半有余、大激論が交わされて誹謗中傷が飛び、協議会ができるまでに二年半有余かかりました。しかし、反対派にいた町会長さんが理解をしてくれて、多くの会の中で話し合いをして、理解をして、わかった、やろうということの決断をして、その協議会が立ち上がり、それから一回もぶれることなくまちと道路の共生ということに向かって、むしろ我々日本人の心を今示そうということで、道路と共生、そして、すばらしい誇れる大橋というまちをつくろうということで、今日まで来たという事実があるわけであります。
 そして、二つ目の危機です。これは、実は私が区議会の議長をやっている前後ですが、道路が東大のところから駒場を抜けて住宅街を抜けたコースで、大橋ジャンクションに入ってくるというコースだったんです。今みたいに環六から入ってくるコースではありません。私は、そのときに公団の人にもいったんですが、環六から入るコースはできないんですかと。それは議会でも聞きました。そのときに答えたのは、これは首都高の人がいたらかわいそうですが、今後、将来にわたって、物理的にも科学的にも、技術がどんなに進歩しようと環六からは入れませんというふうな答えだったわけです。
 ただ、それが、それから五、六年して、科学技術または物理的にできるようになりましたということで区議会に来たわけでありますが、ただ私は、ここで何をいいたいかというと、そのときに地元の方々がとった態度のすばらしさです。それは、何万回にも及ぶ会議があったかもしれない。家族の中でも非常に厳しい現実を突きつけられて、その中で議論があったでしょう。でも、それを乗り越えて、やっぱり行政側とつくった信頼関係を信じようと。そして、その中でよりすばらしいものを求めていこうといって、結束をして今日まで来ています。ですから、反対はなかったんです。その上で、地元の説明会等も、まずは意見を聞いて、その後、真摯に、これはもう何千回という話し合いをしていく中で、実は今いった環六の方向から入るということが決まっていったと。これも現実であります。
 そして、なお厳しかったのは、これはもう知事はご存じでありますが、実は首都高が再開発事業ができないと。これでいよいよ大橋ジャンクションはとんざするという段階がありました。そのときに、国交省、それから石原知事の英断によって、また東京都の職員の皆様に都市計画審議会で相当のご努力をいただいて、東京で最初で最後かもしれないという再開発を決断いただいたと。これはもう地元でも、そのときに私もかなり責められたりいろいろありましたが、それが決まった瞬間には、大変地元の方々が皆さん、東京都、それから行政の皆さんに心から、知事にも感謝を申し上げたいと。このことは皆さんにも伝わっているところであります。
 そういう紆余曲折を経て、みんなでその心をつないでつくってきたのが、この大橋のジャンクションであるということを先に申し述べさせていただいて、以下、質問に入っていきたいと思います。
 先ほど申し上げました、当初検討されていた首都高速道路公団による再開発の実施が困難になりました。ジャンクションの建設そのものが崩壊しそうな危機がありました。石原知事の英断と都当局の大変な努力により、新たな事業の実施が困難であった東京都施行による再開発事業の実施が表明され、そのことによって大橋地区のまちづくりは一気に動き出し、今日のジャンクション開発を迎えるに至ったのであります。これは、地元の住民、私もその一人でありますが、代表させていただいてでも結構ですが、この決断に対しては本当に心から感謝申し上げたいと思います。
 そこで、まず伺いますが、都は、道路整備と一体のまちづくりとして再開発事業の実施を表明するまでには、地元からどのような要望があったのかを改めてお伺いしたいと思います。

○河島都市整備局長 ただいま鈴木委員の方から、長年にわたる地元の皆さんのご労苦だとかご協力の歴史をお聞かせいただきました。
 大橋ジャンクションは、首都高速三号線、国道二四六号や環状六号線などの幹線道路が集中する地域に、地上十階建てビルに相当する大規模な構造物として計画されたものです。
 これに対しまして、住民の皆さんからは、地元に住み続けたいという要望に加えまして、大気汚染等について環境対策を講じてほしいとの意見が数多く寄せられました。
 地元目黒区からは、こうした地域住民のご意向も踏まえ、大橋ジャンクションの整備を単なる道路建設としてとらえるのではなく、周辺のまちづくりと一体となった整備を行うことが必要であるとして、都に対して再開発事業の実施を求める要望がございました。

○鈴木(隆)委員 今の答弁にありましたが、特に環境問題に対しては多くの懸念が示されて、この大橋地区の大気汚染に関して、実は、東京の中で五番目に悪いというような地区でありましたので、この問題が解決されなければ話が前に進まないという状態がありました。この問題を解決するためにはどれだけ長い年数がかかったか、また議論が費やされたかわからないぐらい、真剣な議論がまちの中で、町会会館、神社を使って、周辺の町会、皆さんが集まって、どのくらいしたかわからない。
 しかし、それが決着したんですよ。その決着を見たときに、私はもう感動しました。また、ジャンクションの建設によるコミュニティの分断も、長年住みなれた地域の人々にとっては死活問題であったんです。でも、まちづくりには時間がかかるものですが、大事なことは、住民の声を真摯に聞き、誠意を持って話し合うということです。そのための努力は政治も行政も惜しんではならないものであるということを私に教えてくれました。
 大橋地区は、地元との、今いいました数万回にも及ぶ話し合いを通して、合意形成に基づき、ジャンクションの建設と再開発事業が一体に実施されるような方向になったわけであります。
 道路整備と再開発事業を一体に実施することで、道路整備とまちづくりにどのような効果があったのかを伺います。

○河島都市整備局長 道路整備と再開発事業を一体的に実施することの効果は、まず一点目といたしまして、大橋ジャンクション完成までの工期の短縮が図られたことでございます。
 当初、首都高速道路公団による事業では、地元住民の合意がなかなか得られない中、都みずからが再開発事業を実施することで、用地折衝が急速に進み、再開発事業の実施の表明からわずか七年余りでジャンクションが完成し、今度の開通を迎えるわけです。
 二点目に、立体道路制度を活用することにより、道路と建築敷地を重複して利用することが可能となったことでございます。これによって、用地取得のコストの縮減と土地の有効利用を図ることができました。
 三点目といたしまして、地元目黒区が、再開発ビルの一部やジャンクションの屋上などをまちづくりのために有効活用することができたことでございます。
 このように、道路整備と再開発事業を一体的に進めることによる相乗効果は、私どもが実施した試算では約一千億円、それぞれ、仮にもし個別に整備をしたというような場合と比較して、一・五倍の便益が生じたというふうに試算をしております。

○鈴木(隆)委員 私は、今答弁を受けたように聞いていますし、それは地元の方もよく知っているところであります。
 目黒区などと連携することによって、地元が望むよいまちづくりが実現されるということは、住民も大いに期待をしているところでもあります。また、それが結果として、あれだけ広大なジャンクション建設用地の用地取得も、円滑に進むことにつながっているということでもあります。
 そこで、この再開発事業の実施とあわせて、目黒区や首都高、国土交通省などとも連携をして進める大橋地区の周辺のまちづくり、今後どのようになっていくのかを伺いたい。
 このことは、実は、僕らは大橋ジャンクションができて終わりじゃありません。これから始まるんです。これから大橋のすばらしい誇れるまちづくりを始めるということですから、そこのところを踏まえて、ご答弁をお願いしたいと思います。

○河島都市整備局長 目黒区は、再開発区域を含む大橋一丁目周辺地区を、住宅、業務、商業などの機能が集積する複合拠点として位置づけ、地域住民とともにまちづくりに精力的に取り組んでおられます。
 このため、再開発事業に合わせて、ジャンクションの屋上を利用した公園やジャンクションの内部を利用した広場、再開発ビルの中の図書館など、公益施設の整備を進めることとしております。
 また、再開発区域の周辺では、目黒川沿いの側道の拡幅や遊歩道化、さらには国道を横断する歩行者デッキなどを整備することとしまして、地区全体として、にぎわいと活力にあふれ、景観や環境に配慮したまちを目指しております。
 都はこうした地元の取り組みを、首都高速道路株式会社、国土交通省などと連携して、その実現に向けて、今後も引き続き支援してまいりたいと考えております。

○鈴木(隆)委員 ぜひとも、地元住民が待ちわびているまちづくりを確実になし遂げる方向での努力をしていただきたいと思います。
 地域に夢を語ることが、私は政治の課題であると思っています。今後も誇りを持って住み続けられることが、三十年にわたり努力をしてきた人たちに対する恩返しになると私は考えています。都も、ぜひそうあってほしいと思います。
 現政権にあっては、コンクリートから人へなどといって、新たな道路整備には否定的であります。しかし、道路ネットワークの構築は都市活動には欠かせないものであります。コンクリートの中には、今申し上げましたように、さまざまな人々の人間模様があり、人としての心があります。その心を理解して、感じて、生かしてこそ政治ではないでしょうか。私はそう思います。そこには、人の心を結ぶ信頼という、人間が生きていく上で一番大切なことがあることを忘れてはならないということであります。まさに大橋ジャンクションは、このアーチは人の心をつなぐアーチであります。
 つくるべきものはつくる。大事なことは、そこに生活する人々の声を聞き、道路があっても、ともに住み続けられるような、ぬくもりのある、心温まる、触れ合いのあるまちづくりをきちんと進めていくということであります。私は、八ッ場ダムに関しても全く同じことがいえるような気がしています。
 大橋地区ではまさにそのようなまちづくりが、地元住民との協働により、三十年間かけて進められてきました。ジャンクションという重要な道路と共生しながら、持続可能なまちづくりが実現されようとしているのであります。一つのまちをすべて塗りかえてでも新たなまちづくりに踏み出した、その決意をした住民の皆様の心は、まさに日本を思う心であったのであります。私は、大橋において再開発事業と一体に建設されたあのジャンクションは、大都市東京における今後の道路づくりやまちづくりの方向を示す、新しいレガシーと考えています。
 そこで、最後に伺います。大橋地区で取り組んだ道路と共生したまちづくりは、首都圏あるいは全国の範となるべき基盤整備のあり方であり、全国に発信して、道路と共生のあり方と必要性を説くべきものと考えます。国際都市としてさらなる進化を目指している東京において、このような道路整備と一体となったまちづくりを積極的に推し進めていくことが必要と考えます。知事の所見を伺います。

○石原知事 私も先月、大橋の現場を見てまいりました。あそこに至るまでの鈴木委員の政治家としての長いご苦労というのを今改めて聞きまして、非常に感動を受けました。
 あれは本当にローマの円形劇場、コロシアムに似た巨大なジャンクションでありまして、中央環状線と高速三号線を結ぶ、重要で、非常にまた不思議な建物ですね、いろんな機能を備えておりまして。
 あれが再開発事業と道路事業の連携によって実現したわけでありますが、こうした大規模かつ特殊な構造物であるがために、地元の合意を得られるまでに時間がかかったと思いますけれども、都も努力しまして、皆さんと力を合わせて、この建設が動き出したわけであります。
 いずれにしろ、東京の環状道路は、本来はもっともっと早くつくっておくべきものだったと思います。本来、そう思うんですけれども、いろんな事情で遅滞をいたしましたが、過去にもコンクリートより人へというような主張を、同じようなことをして公共事業をすべてとめてしまった知事もいましたが、整備がおくれたがゆえに、また障害がふえまして、さらにそれを乗り越えて、稠密な市街地に大規模な施設をようやく整備することになりました。このためには、やっぱり大胆な発想が必要だと思います。まちづくりと一体となって、重層的、複合的にそれを進めることが必要だと思います。大橋のあのインフラの整備は、それを大都市において検証してくれたと思っております。
 今後も、この一つの大事な経験を範として、あちこちに適用することで、合理的なインフラの整備がむだを省いて行われていくんじゃないかということで期待をしております。いずれにしろ、こういったものを範として、これからも東京の都市再生を着実に進めていきたいと思っております。

○鈴木(隆)委員 ありがとうございました。
 私は、行政がまちづくりをしていくときに一番大切にしなきゃいけないのは、今いったように話し合うことと、決断したらぶれないこと、お互いに信頼した人間関係を絶対に裏切らない、それで、お互いにありがとうというようなことがいえるような、そういう関係がすべてだったなというような気がしています。ですから、政治は国民のものでありますので、民主党の諸君にはいいたいですが、誤りを改むるに恥ずることはないですから、どうぞ、それは皆さんにひとつお贈りをしたいというように思います。
 それでは、次の質問に移りたいと思います。スポーツの国際事業の推進についてであります。
 先日、バンクーバーの冬季五輪が閉幕をいたしました。恐らく感動を覚えたのは私一人ではないと思います。あの感動を、多くの日本の若者たちが目の当たりにできれば、すばらしい財産を日本の若者たち一人一人の心に贈ることができたのではないかなと考えているのは私一人ではないというふうに思います。
 二〇一六年のオリンピック・パラリンピック東京招致が、都民、国民が一体となって取り組んだ結果、一回目の投票でありましたが、二十二票を獲得しましたが、大変残念な結果でありました。
 しかし、私はこのことに関して、私たちは日本人として誇りを持つべきだというふうに考えています。世界の日本に対する評価は非常に高いものがあると認識すべきでありますし、私も海外との関係を持っている会社を経営しておりますので、私の会社には、そういういろんな連絡が各国から入っていることは事実であります。
 この結果を踏まえて、今後、日本がオリンピック・パラリンピック招致という夢を実現するためには、二十数名のIOC委員を有するアジア大陸での獲得数を確実に固めた上で、世界各国へプロモーション活動を展開し、今回獲得した票をさらに伸ばしていくことが最も効果的ではないかというふうに思います。
 そのためには、まず、さまざまな国際競技大会を日本に誘致することが有効であると考えます。これにより、日本の魅力を多くの関係者に直接知っていただくとともに、スポーツに対する積極的な取り組み姿勢がアピールできるというようなことになると思います。
 まさにこのような中、世界柔道選手権大会や世界体操競技選手権大会などが東京で開催されます。実に心強いことだなというふうに私は思います。トップアスリートによる国際競技大会の開催は、次の世代の子どもたちに大きな夢を与え、スポーツに取り組むきっかけとなるという側面を有しています。
 さらに、子どもを対象とする国際交流大会も、世界各都市と東京のジュニア層が技術を磨き合うことなどにより、将来のオリンピックメダリストを輩出するきっかけとなれば、大変うれしいことであるなというふうに思います。
 今こそ、ジュニア選手の育成に国を挙げて取り組むべきでありましょう。また、その先陣を東京が切るべきであろうと私は思います。
 スポーツを通じたジュニアの国際交流は、競技力の向上だけではありません。平和や友情といったオリンピックの持つ普遍的な精神、国際的な相互理解を図るといった観点からも、非常に有意義な取り組みであるというふうに考えます。
 都は、ジュニア選手を対象としたスポーツの国際交流事業をさらに推進していくべきと考えますが、所見を伺います。

○秋山生活文化スポーツ局長 スポーツの国際交流事業は、ご指摘ございましたとおり、ジュニア選手が競技を通じて技術的、精神的に向上しますとともに、国を越えた相互理解を深めるために大変有効と考えておりまして、平成十九年度から実施をしているところでございます。
 昨年のジュニアスポーツアジア交流大会では、アジア全体の競技水準が高いバドミントンと、日本が指導力を発揮できる柔道を競技種目としてアジア十六都市が、また、東京国際ユースサッカー大会では世界十都市がそれぞれ参加し、将来有望なジュニア選手による白熱した試合が行われたほか、合同練習や指導者フォーラム等の交流事業もあわせて実施をいたしました。こうした取り組みに対して、昨年バンコクで開催されたアジア大都市ネットワーク21総会等におきまして、ジュニア選手の競技力向上や都市間の関係強化などの面で高い評価を得たところでございます。
 来年度も、関係各都市に広く参加を呼びかけ、両大会を実施していくことによりまして、スポーツの国際交流事業を着実に推進し、世界のジュニア選手の競技力向上と次世代育成に貢献してまいります。

○鈴木(隆)委員 次に、オリンピズムの教育の推進に関してであります。
 日本を訪れるアジアの人たちに日本の歴史や文化を知ってもらうためには、まず日本の若者こそが、道徳や日本人のよさなどの基本をしっかり学ぶべきと考えます。そのためには、スポーツに親しみ、その精神性を身につけることが非常に有益であるというふうに思います。
 このたびの学習指導要領改訂により、中学校では、オリンピックが果たす役割等を学ぶことになったと聞いています。オリンピックの持つ崇高な精神は、人種、宗教、そして国境を越えて世界じゅうに支持を得ており、オリンピックスピリッツを学習することは、世界の価値観や哲学を学ぶことでもあります。世界の常識を学ぶことでもあります。このことは、我が国の歴史や文化の価値を再認識することにもつながり、日本人の原点となる日本人の心に気がつくこととなります。日本の未来を切り開くことにつながっていくと確信するところでもあります。
 今後、東京都教育委員会としてオリンピック教育を積極的に推進していくべきと考えますが、見解を伺います。

○大原教育長 現在、学校教育では、小学校から高等学校段階まで、児童生徒が、体育を初め社会科や道徳などの授業において、フェアプレーの精神や、昭和三十九年東京オリンピックの歴史的意義などを学習しております。
 さらに、このたびの学習指導要領改訂により、今後、中学校や高等学校の体育理論の授業においては、オリンピックが国際親善や世界平和に大きな役割を果たしていることや、勇気、友情、挑戦といった崇高なオリンピック精神を世界じゅうに広めるための活動、すなわちオリンピックムーブメントについて必ず学習することとなりました。
 お話のように、オリンピック精神には、国を越え、時代を超えた普遍的な教育価値があると認識しており、今後とも都教育委員会は、児童生徒がオリンピック精神とオリンピックムーブメントの意義を正しく理解し、スポーツを通して心身ともに調和のとれた発達を遂げられるよう、オリンピック教育を推進してまいります。

○鈴木(隆)委員 最後でありますが、スポーツの施設の整備に関してお伺いしたいと思います。
 ソフト面ばかりではなく、ハードにも触れておきたいと思います。駒沢オリンピック公園の総合グラウンド場に関して、さきの我が党の代表質問でお伺いをしておりますが、改めてお伺いをしたいと思います。
 ただ、私は、日本がこれから、世界じゅうの多くのIOC委員も注目する競技をやるべきだと思っています。例えばテニスの四大大会にかわる五番目の大会をやるとか、スポーツ都市東京としてのアピールを最大にこれからしていくチャンスが、僕は今、来ているというふうに思います。
 また、スポーツ基本法を制定したり、スポーツ省の設置を含めた、そういうことも考えていくべきだと思いますので、改めて駒沢オリンピック公園の総合運動場の改修計画も含めた検討経緯と方向性についてお伺いをしたいと思います。

○秋山生活文化スポーツ局長 駒沢オリンピック公園総合運動場の改修計画の策定に当たりましては、既に実施した施設の劣化度診断の結果や、利用団体等の改善意向を踏まえまして、地元区や競技団体等とも検討を重ねるなど、利用しやすい施設への改修を目指しているところでございます。
 特に老朽化が著しい屋内球技場や弓道場を初め、平成二十五年東京国体の会場となりますテニスコートなどは、改築を含めた早期の対応が必要になっておりまして、ユニバーサルデザイン等、時代のニーズに即した機能を備えた施設を目指し、整備していく予定でございます。
 ご指摘いただきましたように、東京オリンピックのレガシーを守り、引き続きスポーツ振興の拠点となるよう、駒沢オリンピック公園総合運動場の整備を進め、大規模大会の招致に取り組んでまいります。

○鈴木(隆)委員 どうもありがとうございました。(拍手)

○服部副委員長 鈴木隆道委員の発言は終わりました。

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