予算特別委員会速記録第三号

   午後六時四十分開議

○酒井委員長 休憩前に引き続き委員会を開きます。
 質疑を続行いたします。
 山口拓委員の発言を許します。

○山口委員 それではまず、築地市場の移転問題についてお伺いをさせていただきます。
 本題に入る前に、論点を少し整理させていただきたいと思います。
 一、土地取引で土壌汚染は瑕疵として扱われる。瑕疵には程度があるが、土壌汚染の場合は土壌に含まれる有害物質の量と性質で決まる。三、ただし、汚染を明らかにするためには大がかりな調査をしなければならないので、調査の仕方が重要になる。四、つまり、調査をどれだけ厳しく行うかで、結果として瑕疵の程度が決まる。五、実際の取引では、買い主が優位なときは厳しい調査が行われ、売り主の方が優位な場合は甘い基準で調査がされる。
 以上のことを意見として表明させていただいた上で、今回計上されている豊洲用地の取得について幾つか質問をさせていただきたいと思います。
 初めに、平成十七年五月三十一日に都と東京ガスで交わされた豊洲地区用地の土壌処理に関する確認書についてお伺いをいたします。
 この確認書を読みますと、東京ガスによる土壌汚染対策は、環境確保条例第百十七条に規定された調査に基づき計画され、実行されるとありますが、ここでいわれている環境確保条例における東京都土壌汚染対策指針は何年度の指針に準拠したものでありますでしょうか、お伺いしたいと思います。

○有留環境局長 豊洲地区における東京ガスの調査は、国が定めた平成十一年指針及びそれに準拠して都が平成十三年九月に策定した土壌汚染対策指針に沿って行われ、また、対策は、都の平成十三年策定の同指針に従って行われました。

○山口委員 この確認書の調印者には、環境局長は含まれておりましたでしょうか、お伺いします。

○有留環境局長 ご指摘の確認書は、環境局長を含め都の関係局長、東京ガス株式会社及び東京ガス豊洲開発株式会社の社長との間で取り交わされたものであります。

○山口委員 丁寧なご答弁をありがとうございました。
 では、環境局にお伺いをいたしますが、この確認書が準拠する平成十三年に改定をされた都の土壌汚染対策指針と平成十七年の確認書の調印の間に、都の土壌対策指針は改定をされているでしょうか。また、土壌対策にかかわる法律について、国も含めて何らかの変化があったでしょうか、確認をいたしたいと思います。

○有留環境局長 平成十三年十月一日に環境確保条例が施行されました。その後、平成十五年二月十五日に土壌汚染対策法が施行されました。この法施行に合わせまして、法と条例における土壌汚染の調査及び対策の方法の整合を図り、円滑な土壌汚染対策が講じられるよう、都の土壌汚染対策指針を改正したものであります。

○山口委員 すると、なぜ、平成十七年に環境局長も調印に加わったこの確認書が、平成十五年の指針ではなくて、それよりも平成十三年の指針によって準拠されているのか、お伺いをしたいと思います。

○有留環境局長 都の土壌汚染対策指針の適用については、平成十五年二月十四日の告示において、この告示の施行の際、現に環境確保条例に規定する調査に着手しているものにかかわるこの告示の適用については、なお従前の例による旨を規定していることから、平成十五年二月十四日時点で既に条例の調査に着手しているものについては、従前の指針に従って調査、対策を行うことになります。したがいまして、東京ガスによる調査、対策についても、当然に従前の指針である平成十三年指針に従って行うことになります。
 ちなみに、平成十三年と平成十五年の土壌汚染対策指針の主な違いは、汚染範囲の把握の方法でございます。具体的には、平成十三年指針は、まず、汚染濃度の相対的に高い部分を見つけ、そこから汚染の広がりを把握する方法であるのに対し、平成十五年指針では、土地を機械的に格子状に区画し、それぞれの区画について汚染の有無を把握する方法となっております。
 どちらの指針に基づく方法であっても、人の健康被害を防止するために必要な対策の範囲を適切に設定でき、平成十三年指針が平成十五年指針に比べ劣っているものではございません。

○山口委員 局長がご丁寧にご説明をしていただいたとおり、この十三年の指針と十五年の指針は全く性質が異なるものでございます。
 土地の売買契約において必要なのは、損をしないか、どうではないかと聞いているわけでありますが、さらにいえば、都は納税者の利益を守る責務があるわけであります。その意識が欠落しているんじゃないかと確認をしたいわけなのでありますが、経費の負担を今ごろ協議しなければならない契約実務の稚拙さにご教訓を求めるべきではないかと考えるわけでありますが、いかがでございましょうか。

○岡田中央卸売市場長 先ほど環境局長が答弁を申し上げましたとおり、東京ガスのその当時の対策というものは、十五年の指針の改正時におきましては、東京ガスは既に十三年指針に基づき調査、対策に着手していたことから、従前の指針によるものという形になっているわけでございまして、十三年の指針に基づきまして東京ガスは計画を立て、これは汚染防止計画でございますけれども、それに基づき対策を講じてきたということでございまして、東京ガスとしては、条例上の対策については完了しているという形になっているわけでございます。
 一方、平成二十年におきまして都が行いました詳細な土壌調査、これをやりまして高濃度の汚染が出てきたということがあるわけでございますので、これにつきましては、都として市場用地としての安全性を十分確保するという観点から、専門家会議あるいは技術会議というところに日本を代表する各専門家にお集まりいただいて、市場用地としての万全の安全性を確保できる対策を講じていただいて、その対策を実施しようというところでございます。
 それの対策につきましては、東ガスの負担を一部求めるということで今話し合いをしている、こういうところだろうと思っております。

○山口委員 後から万全の対策を講じたから、このときが正しかったと。そんなことは全く私は聞いていないわけでありまして、そのときできることできることをきちっとしてこなかったことが、まず一つの要因になっているのではないかという確認をさせていただいているわけであります。
 さらに、土対法が施行されて以降、民間では土対法を基準にして取引がなされているわけであります。買い主である都とすれば、最も厳しい基準を採用することが最も土壌汚染のリスクを回避できる契約実務のあり方ではなかったのでしょうか。
 冒頭整理をさせていただいたように、土地取引において土壌汚染は瑕疵なわけであります。その瑕疵を事前に認識をしていながら、あえて十三年の指針を採用したとなると、これも冒頭述べさせていただいたわけでありますが、この取引においては、買い主である都の立場は著しく弱く、売り主である東ガスの立場が極めて優位であったということになるのではないでしょうか。私は、考えてみると、これは自然なことではないかと思うのですが、いかがでしょうか。

○岡田中央卸売市場長 繰り返しご答弁申し上げますが、十五年指針の改正時におきまして、既に東京ガス株式会社は、十三年指針に基づき調査、対策を実施していたということから、従前の指針によるものといたしました。
 また、どちらの指針に基づく方法でございましても、人の健康被害を防止するために必要な対策の範囲を適切に設定できまして、十三年指針が十五年指針に比べて劣っていたものではない、こういうことから十三年指針を適用したわけでございまして、今、委員ご指摘の、買い主である都の立場が著しく弱いとか、あるいは売り主である東京ガス株式会社の立場が極めて優位であった、こういったことはないと考えております。

○山口委員 買い主である立場と、また、条例の施行者である立場を、そこを上手に使い分けるのではなくて、しっかり買い主である立場から、その土地の状況がどういうものであるのか、最善の策を尽くすべきではなかったかと申し上げているわけであります。
 ことし一月五日の朝日新聞で「築地市場移転 汚染処理、都だけ負担も 東ガス義務規定なし」という見出しの記事が掲載されました。その内容は、都は二〇〇四年から五年、土地を購入する前の〇三年、土壌汚染対策に関する都条例の指針が改正されたにもかかわらず、同社に旧指針のままの調査を認めて土地を買ったことに疑問の声が上がっているというものでありましたが、都は、翌一月六日には、豊洲新市場予定地の土壌汚染に関する朝日新聞記事についてという反論ペーパーを作成されています。
 その中で、都は、この記事の十三年指針を適用しているのはおかしいという主張に対して、東ガスの調査は平成十三年度当時の指針に基づくものであるが、その後、平成十九年度から二十年度に詳細調査を実施済みである、先ほどもお話をいただきました。十五年指針が作成されたときは、既に東ガスは十三年の指針に基づく調査、対策に着手していたため、指針を遡及して適用することはできないと反論しています。
 しかし、ここからが大事です。詳細調査を実施したのは、合意書や確認書に基づく調査ではありません。つまり後々の結果であって、指摘されている確認書の内容の不備とは関係ないのではないでしょうか。
 また、既に東ガスが十五年の時点で調査、対策に着手していたので遡及して適用できないということですが、それは東京ガス、つまり売り主の都合であって、買い主の都としては、最新の指針に基づいて調査を主張するべきではなかったのでしょうか、これをあわせて伺いたいと思います。

○岡田中央卸売市場長 朝日新聞の記事についてでございますので、どういう記事であったかということについて、ちょっと披瀝させていただきたいと思います。
 本年一月五日付で朝日新聞に載りました記事と内容というものは、東京ガス株式会社が平成十四年十月に報告いたしました表層土壌ガス調査で、ベンゼンガスが八十八地点で検出されました、しかしながら、詳細調査は九地点にとどまり、残りの七十九地点が未実施だったということ。
 もう一つは、土壌汚染対策に関する都の条例の指針が改正されたにもかかわらず、旧指針のまま調査を認めたということ。
 三つ目は、十四年七月に東京ガス株式会社などと締結した汚染処理をめぐる合意書、これは先ほどもご説明しました合意書でございますが、この合意書には、処理完了後、新たな汚染が見つかった場合の処理や費用負担を同社に義務づける規定がないといったような内容の報道がなされたわけでございます。
 これにつきまして都といたしましては、いわゆる見解ということで、まず、十三年指針と十五年指針の調査、対策方法が異なるため、七十九地点が未実施だという指摘は当たらないということ。また、十五年指針が施行されたときには、十三年指針に基づく調査、対策に着手していたため、従前の指針を適用したということ。さらには、都と東京ガス株式会社がこれまでに締結した土壌汚染対策に対する合意ですとか十七年の確認書では、例えば疑義が生まれた場合、あるいは社会情勢の変化により合意内容を見直す場合には、双方が誠意を持って協議することになっていること、こうしたことを都の見解としてお示ししたものでございます。
 なお、今お話にございました表現でございますけれども、十三年指針に基づく調査の方法を説明した上で、都は、専門家会議の提言に基づきまして新市場予定地全面において詳細調査を実施し、土壌汚染の実態を把握しているということを説明したものでございまして、直接の結びつきではないということでございます。
 それから、最新の指針に基づいて調査をすべきであったというご主張でございますけれども、何度もご説明していますけれども、従前の指針に基づき調査に着手しているものにつきましては従前の指針によるものとされること、あるいは、十三年指針が十五年指針に比べて劣っているものではないため、十五年指針に基づく調査を改めて主張する理由がなかったということでございます。

○山口委員 さらに、平成十四年に結んだ、豊洲地区開発整備に係る合意についての確認では、各地権者は、条例に基づき、従前の所有地に対して責任を持って土壌汚染にかかわる調査を行うとありますが、いつの条例に基づいて調査を行うのかという規定はされていないわけであります。
 ならば、買い主としては、そのときの直近の基準をもって文章を交わさなければ、これはおかしいのではないですか。まして、この条例改正の当事者である環境局長が調印されているのですよ。明らかに寛容過ぎる売り主に対しての配慮ではないかと考えますが、お伺いをしたいと思います。

○岡田中央卸売市場長 今お話しの、十四年七月の都と民間地権者で締結いたしました豊洲地区開発整備に係る合意に当たっての確認、いわゆる合意書の確認でございますけれども、この中では土壌汚染対策につきまして、各地権者が、環境確保条例に基づきまして、従前の所有地に対して責任を持って土壌汚染にかかわる調査を行い、汚染が判明した場合には、必要な処理対策を実施することを取り決めているものでございます。
 本合意の締結時には、既に東京ガス株式会社は、調査、対策に着手しております。その当時、十四年でございますので、十五年指針はまだ施行されていないために、この合意におきまして十三年指針を適用するということは当然のことであった、こういうふうに思っております。

○山口委員 東京都は、その土地の経緯や背景を知りながら、買い主としての立場を貫くのであれば、しっかりと調査を求めることが適切だったのではないかということを申し上げているわけでありますが、再三同じ答弁なわけであります。
 都は、平成十四年の土対法公布の時点で土壌汚染対策指針が大きく変わることは、その翌年に実際指針を改定されているわけでありますから、当然認識をされていたはずです。ならば、その時点で調査、対策の変更を東京ガスに要請をしておけば済んだ話ではないのですか。そのことは、同文章に、この中に書いてある。社会的、経済的状況等の大幅な変化により本確認内容を見直すという規定もわざわざ設けられているわけですから、これは普通に要請できたわけであります。
 つまり、適用できなかったわけではなくて、むしろ積極的に旧指針を適用することで、東京ガスの経費負担を軽くしたと見られても仕方がないのではないかと私はいいたいわけであります。
 仮にこのことが、同基本合意にある、土地区画整理事業の事業費については、全地権者間の最終合意時までに一層の縮減に努めるという条項の履行を指すものとしたら、公的な立場からすれば、都民の安全・安心を犠牲にした私企業への不適切な便宜供与となりかねませんし、買い主という立場からすれば、その支払いをする納税者に対する明らかな背任行為になるとは思いませんか。お伺いをしたいと思います。

○岡田中央卸売市場長 繰り返しになりますけれども、十五年指針の改正時におきまして、既に東京ガス株式会社は、十三年指針に基づきまして調査、対策に着手しているところから、従前の指針によったものでございます。
 また、環境局長が答弁しておりますとおり、十三年指針及び十五年指針につきましても、どちらの指針に基づく方法でございましても、人の健康被害を防止するために必要な対策の範囲を適切に設定でき、十三年指針が十五年指針に比べて劣っているというものではございません。
 また、十四年の七月でございますけれども、先ほどの合意の基づきを締結いたしまして、土壌汚染対策ということを環境確保条例に基づき行うことを合意したわけでございますが、これを受けて東京ガスは、汚染拡散防止計画書を提出し、対策を行ってございます。
 さらにでございますが、都は東京ガスと協議をいたしまして、十七年五月には、東京ガスを含みます民間地権者との間で、いわゆる豊洲地区用地の土壌処理に関する確認書、これを締結いたしまして、処理基準の十倍を超える汚染物質を深さにかかわらず除去するというのが当初の十四年の合意の内容でございますけれども、これに加えまして、工場操業時の地盤面から深さ二メートルの範囲の処理基準を超える汚染物質を基準以下にするという追加の対策を実施することを取り決めてございます。
 このように、東京都は、東京ガス株式会社と協議を行いまして、追加の対策を上乗せするなど、市場用地を考慮した十分な土壌汚染対策となるように求めてきたわけでございます。
 したがいまして、東京ガス株式会社の経費負担を軽くしたというただいまのご指摘、あるいは都民の安全・安心を犠牲にした私企業への不適切な便宜供与であるというご指摘、さらに、納税者に対する明らかな背任行為になるというご指摘、こうしたご指摘は、全く根拠のない指摘だろうと考えております。

○山口委員 さらにこの記事では、〇一年の指針による汚染の調査や処理の手法は、〇三年に改定された指針に劣らないため、新指針で評価する必要もなく、汚染の見落としに当たらないとコメントが付されているわけでありますが、ここで確認をさせていただきますが、〇一年指針は〇三年指針に劣らないのか、これらの指針は、何がどのように違うのか、お伺いしたいと思います。

○有留環境局長 先ほどの答弁の繰り返しになりますが、十三年と十五年の土壌汚染対策指針の主な違いは、汚染範囲の把握の方法でございます。具体的には、十三年指針は、まず汚染濃度の相対的に高い部分を見つけ、そこから汚染の広がりを把握する方法であるのに対しまして、十五年指針では、土地を機械的に格子状に区画し、それぞれの区画について汚染の有無を把握する方法となっております。
 どちらの指針に基づく方法でありましても、人の健康被害を防止するために必要な対策の範囲を適切に設定でき、十三年指針が十五年指針に比べて劣っているものではありません。
 なお、この指針の改正は、平成十五年に新たに土壌汚染対策法が施行されたことに伴いまして、法と条例との整合を図るために行ったものでございます。

○山口委員 東ガスの調査によって、地表でベンゼンが検出をされていた八十八カ所については、平成十五年の指針では、すべてのポイントでボーリング調査が義務づけられていたのに対して、十三年の指針では十カ所の調査にとどまってしまい、結果として、土壌汚染の実態解明を大きくおくらせてしまったという指摘があります。
 土地の買い主としての中央卸売市場長にお聞きしたいわけでありますが、その後行われた専門家会議による詳細調査の結果を踏まえてなお、記事にあるように、十五年指針で調査をしても十三年指針と同じ結果になったと断言できるでしょうか、お伺いしたいと思います。

○岡田中央卸売市場長 平成十三年と十五年指針の調査区画につきましては、ただいま環境局長からご説明がありましたので、繰り返すことになりますので省かせていただきますが、調査手法についてちょっとご説明させていただきたいと思います。
 ベンゼンなどの揮発性物質につきまして、地表近くの土壌ガス、あるいは地下水を分析し、その結果、基準を超えた場合には、深さ方向に土壌ボーリング調査を行う、また、シアン化合物及び重金属については、地表近くの土壌を分析することとされている、これが十五年指針の調査手法でございます。
 これに対しまして、専門家会議の提言に基づき行った調査でございますけれども、これは、土地の利用状況などにかかわらず敷地全部を十メートルメッシュに区分した上で、東京ガス株式会社の操業に由来する汚染物質すべてにつきまして、操業時の地盤面、ここから地盤面近くの土壌を採取するとともに、汚染物質が、程度の差はありますが地下水に溶け出すことから、地下水もあわせて採取し、分析しているものでございます。
 これらの調査の結果、土壌または地下水で環境基準を超えた場合に、土壌ボーリング調査をさらに追加で実施したものでございます。
 このように、十五年の指針と都が行ったいわゆる詳細調査とは全然中身が違うものでございまして、平成十五年指針に基づく調査--もう一度申し上げますと、都が行った詳細調査というものは、平成十五年指針に基づく調査に加えまして、地下水を採取、分析していることなど、こちらの方は非常に手厚いものでございますので、単純に十三年や十五年指針における調査と比較することは適切ではないものと考えます。

○山口委員 確認書の調印者には当時の環境局長も含まれていたことは、先ほども指摘をしたとおりでありますが、そのときの局長とは違う環境局長が後の予算特別委員会において、中央卸売市場の土壌汚染対策計画が確実に実行された暁には、法律や条例が求める安全を十分に確保できると宣言できる状況にあると考えていると答弁されました。
 環境局にお伺いをしたいと思います。専門家会議を経て、結果として中央卸売市場の計画していたものとは全く異なった対策がされることとなった現時点においても、当時を振り返り、同様な安全宣言ともいえる答弁ができますでしょうか、お伺いしたいと思います。

○有留環境局長 平成十九年の予算特別委員会におけるご指摘の答弁は、土壌汚染対策法や環境確保条例を所管している立場から、中央卸売市場による豊洲新市場予定地の土壌汚染対策に関する当時の計画は、現行の法律や条例が求める対策の水準を大きく上回るレベルの安全対策を講じる内容であり、この計画が確実に実行された暁には、法律や条例が求める安全を十分確保できていると宣言できる状況になるとの見解を示したもので、この見解は、現在においてもいささかも変わるものではありません。
 その後、専門家会議の提言や技術会議を経て作成された現在の計画は、さらに、例えばAP二メートル以下の操業由来の汚染土壌をすべて基準以下にする、あるいは敷地全体の地下水を環境基準以下まで処理するとの対策が上乗せされておりまして、土壌汚染による健康被害の防止という法律や条例が求める土壌汚染対策の水準を大きく上回る、食の安全・安心という要求にこたえるものとなっており、当時の計画と比較して、それをはるかに上回るレベルのものでございます。

○山口委員 都は先日、実証実験の結果を公表して、豊洲の土壌汚染除去可能と胸を張られたわけであります。しかし、私としては、このこと自体に強い違和感を覚えました。都は買い主であります。繰り返しになりますが、買い主であれば、普通は厳しい調査を求めていく立場にあるはずであります。にもかかわらず、まだ購入さえしていない土地にみずから進んで実証実験を行い、安全のお墨つきを与えることはいかがなものでしょうか。
 都は、今、東ガスと、土壌汚染対策費の費用負担を売り主に求める協議をしている最中ではなかったのでしょうか。根本的に買い主の自覚が足りないのではないかと、そのようにすら感じますが、いかがでしょうか。

○岡田中央卸売市場長 築地市場は、施設の老朽化、狭隘化が著しく、一刻も早い移転整備が必要でございます。もとより豊洲地区への築地市場の移転は、予定地の土壌の汚染がきれいになることが前提でございまして、そのために専門家会議の提言に基づく詳細調査を実施するとともに、各分野の最高権威の学者の方々で構成される技術会議で、日本の最先端技術を活用し、安全、衛生に不安がなく、信頼性の高い土壌汚染対策を取りまとめていただいたところでございます。
 現在、現地で行っている実験によりまして、この対策の有効性を確認した後、速やかに事業を推進することとしております。
 また、都が行いました詳細な土壌汚染調査により、操業に由来する高濃度の汚染物質の存在が確認されましたことから、都が行う土壌汚染対策の経費の一部負担につきましては、現在、東京ガス株式会社に協議の申し入れを行い、詳細調査ですとか、昨年九月に公表いたしました百十七条調査に基づく調査結果などにつきまして話し合いを行っておりまして、今後もさらに協議を進めてまいります。
 都はこれまで、東京ガス株式会社と協議を行いまして、十四年の当初の土壌汚染対策に加えまして、十七年には追加の対策を上乗せし、二度にわたる対策を講じるなど、市場用地としての十分な対策を実施してまいりました。
 また、都の土壌汚染対策は、多くの成功事例もある、信頼性が高い技術として確立されたものでございます。この対策を進め、予定地の汚染を除去してまいる、こういう覚悟でございます。これらはすべて、買い主としての自覚から来ているものと考えております。

○山口委員 瑕疵担保責任を初め、他の契約でも見られるような項目が東京ガスとの間で結べないのは、東京都が買い手であるにもかかわらず、買わざるを得ないという弱い立場にあるからと私は主張してまいりました。こうした無理を重ねなければならない豊洲の移転こそ、今、改めて立ちどまって考え直すべきであり、今が立ちどまる最後のチャンスなわけであります。石原知事が強引な姿勢を貫くのであれば、私たちは、豊洲関連予算については反対せざるを得ないということを改めて申し上げ、次の質問に移りたいと思います。
 それでは、新銀行東京についてお伺いをしたいと思います。
 平成二十年の第一回定例会でも、知事の発言によるもろもろの責任とは、もろもろであるとお認めをいただきました。知事の考える今現在のご自身の責任について、どこに、どのようにお感じになられているのでしょうか、お伺いをしたいと思います。

○石原知事 新銀行東京を発案したのは、まさしく私でありますが、その動機については、昨日の民主党の代表質問でも、るるお答えいたしました。その銀行が経営危機に陥ったのは、その責任は、銀行経営の機能からして、まずは直接経営に当たった旧経営陣にあると思います。次に、それを任命し監督する取締役会、そして株主としての東京都など、つかさつかさにあるでしょう。
 あなたも最高学府の経済関係の研究所にいらしたようですからご存じでしょうが、株式会社新銀行東京は民間銀行でありまして、銀行法上、株主の関与は、例えば銀行法の二十三条あるいは十三条に厳しく制限されております。それゆえに、実際の経営のかじ取りに当たった旧経営陣の責任は極めて重いと思います。
 新銀行東京は、新たな経営陣のもとに懸命に努力を重ねた結果、平成二十一年度中間決算においては、開業以来初の黒字を計上するなど、再建は順調に進んでおります。
 今、私がなすべき責任は、小零細企業を支援するという役割を再び十全に果たせるように、新銀行東京の再建をさまざまにてこ入れして進めることだと思っております。

○山口委員 今、旧経営陣のお話が出ましたが、かじ取りという言葉を使われましたが、そのレールであるマスタープランをつくったのは、これは極めて危険な下り坂でもあったレールかもしれません、これをつくった責任というものがそもそも伺えないというのは、大変残念なことであります。
 しかも、足かけ四年、都にとっても今回の訴訟というのは、待ちに待ったものであったでしょう。ようやく責任の所在の一部が明らかになる訴訟でありますから、知事、これを機に、ぜひこの訴訟についてのご見解、ご所見をしっかりと明らかにしていただきたい。都民は、強い姿勢の知事をぜひ待っていらっしゃると思います。お伺いをしたいと思います。

○石原知事 あなたが言及したいマスタープランというのは、これは、つくった者はつくったという責任があるでしょう。ただ、これは、何もだれかが盲信している日本の憲法と違うのですよ。それをいかに運用するかは経営者の能力の問題なのです。
 新銀行東京は、みずから主体的に、旧経営陣に対する損害賠償請求を起こしました。経営悪化の原因と責任については、今後、公正かつ中立的な司法の場において明らかにされることが重要でありまして、この裁判を都としては刮目してまいります。

○山口委員 さて、その自主返還を求められた旧経営陣の七名の方について、その動向に注目が集まっているところでありますが、いまだその返納額や時期、そして未返還かについては示されていないわけであります。
 知事、先日の特別委員会で、東京都は、返還されていない方がいることを把握している事実をようやく明らかにしてくださいました。都民からすれば、これの方がよっぽど銀行にとって不良債権に近いのではないかと、そうも思うわけでありますが、都は、これを明らかにする責任があり、これは経営には何ら悪影響がなく、むしろ都の姿勢を明確に示せるものと考えますが、見解を伺いたいと思います。

○前田産業労働局長 株式会社新銀行東京は、訴訟を提起した旧経営陣以外の社外取締役に対しましても、一定の責任があるとして報酬の自主返納を求めておりますが、これは、新銀行東京がみずから主体的に決めたことでございます。
 やや詳しくなりますが、新銀行東京が平成二十一年二月に公表した外部調査報告書によれば、これらの元取締役は、業務執行を担当しない社外取締役であったことなどから、その責任について一定の限度がある、そういうことで、まず自主返納を求めるべきであるとされております。
 新銀行東京は、このみずからの決定に基づいて、引き続き、全員の自主返納に向け取り組んでおり、都としては、こうした銀行の取り組みを見守ってまいります。

○山口委員 銀行の最大の業務は、融資をしっかりすること、そして回収をすることも、これは大切な仕事であります。その回収を身内からできないというのはいかがなものかと思いますが、次の質問に移らせていただきたいと思います。
 万が一、返納されていない方が、裁判の推移を見て判断をしようとしていたり、様子をうかがっているとしたのだったら、これはとんでもない話なのです。そうでないと信じたいところであります。
 さて、四百億の追加出資から二年がたちました。四百億はどうなったのかというのは、これは大きな都民の関心事です。そもそも四百億円は、中小企業のために、そして都民のためになったのでしょうか。
 そこで、新銀行東京の経営状況から資本を見てみると、自己資本比率は三一・六一%と、他行と比べて極めて高く、しかしながら、再建計画で規模は縮小していきます。再建のために必要とはいえ、ここまで自己資本の確保が本来の目的であったのでしょうか、お伺いをしたいと思います。

○前田産業労働局長 新銀行東京に対して行いました追加出資は、中小零細企業の支援を継続するために行ったものでございます。この四百億円の追加出資があればこそ、新銀行東京は、中小零細企業に対する支援を継続することが可能になり、また、再建を進めることができたものでございます。
 新銀行東京の再建は、計画にありますように、平成二十三年度までの期間を通じて行うものであり、計画二年目のある一部の指標だけをとらえたご主張は、適切であるとはいえないと思います。
 また、追加出資による自己資本の充実は、経営が悪化した新銀行東京の信用の保持という観点からも有効であったと考えます。

○山口委員 それでは、三年たった今、その検証はどうなされたのでしょうか。監理室としては、適切に使われ、そして四百億円が必要だったと、折り返しの今でもいえるのか、お伺いをしたいと思います。

○前田産業労働局長 新銀行東京に対する追加出資の四百億円は、ただいま答弁したように有効に使われております。
 繰り返しになりますが、新銀行東京の再建は、平成二十三年度までの期間を通じて行うものでありまして、追加出資の四百億円は、その期間すべてを見通した上で、必要なものとして算定されたものでございます。まだ計画は進行中でございます。計画の半分にも満たない二年目の時点で、ああだこうだ検証できるようなものではないと考えます。

○山口委員 さて、知事にとって最後の予算提案となる今議会においても、まだ新銀行の将来性についても、また、将来設計の取り組みがなされているような気配すら感じられない予算であります。
 また、知事がいらっしゃるうちに計画策定に入り、おやめになられるまでの将来像と計画をお示しになられなければ、一体だれが引き継ぐというのでしょうか。局や、まさか新しい知事にほうっていくわけではないと思いますが、その所信についてお伺いしたいと思います。

○石原知事 私がいつやめるか、まだわかりませんぞ。
 新銀行東京の再建計画は、小零細企業への継続支援のために、もともと平成二十三年度までに目標を定めて取り組んできたものでありまして、経営再建は着実に進んでおります。
 大事なことは、今後とも、こうした小零細企業の支援をどのように継続していくかでありまして、取引先の従業員やその家族を含め、多くの関係者のために新銀行東京の再建を果たすことこそ知事としての役割であると思います。
 新銀行東京は、単年度黒字を達成していけば信用度も回復し、それを主体として、外国の資本も含むいろいろなオファーも期待されるなど、セカンドステージがこれから開かれていきます。
 再三申してきましたように、過去にも、ドイツやフランスの有力な銀行が東京の可能性というものを見込んで、いろいろアプローチをしてきました。こちらも期待をして、ある程度めどがついて、大きな提携をしようと思ったら、例のサブプライムローンのごたごたで、向こうの方がつぶれちゃったんですよ。これは一つの事例でありまして、現に幾つかのオファーがもう来ております。
 これを、とにかく信用を回復することで活用して、これは再建のセカンドステージとしていろんな展開をしていこうと思っております。

○山口委員 知事から大変興味深い言葉をお伺いいたしました。もうオファーが既に来ていると。銀行からは何ら示されないのに知事のお耳に入るというのは、さすがは知事だと思います。どういった今オファーが来ているのか、ぜひ都民の皆さんにお聞かせいただきたいと思います。

○石原知事 あなたも政治家なら、政治の常識で考えて。こういったビジネスというものは、やっぱり守秘義務があるんですよ。

○山口委員 都はどこに軸足を置かれているのかということが、再三、不思議でなりません。旧経営陣をしっかりと追及しようという立場になるならば、しっかりとこの七人にもその責任を問うべきでありましょうし、都民の税金を大切に使うんだというのであれば、早目早目に計画をしっかりと示して都民に安心感を与えるのも、これも一つでしょうし、一つ一つがしっかりと示されない今、なおこれは、特別委員会を設けてでもしっかり質疑がされていかなければいけない。このように申し上げておきたいと思います。
   〔発言する者多し〕

○酒井委員長 ご静粛に願います。

○山口委員 京王線についてもお伺いさせていただきたいと思います。
 昨年十一月、東京都は、京王線の笹塚駅からつつじヶ丘駅間の連続立体交差と複々線化の都市計画素案に関する地元説明会を行いました。この計画に関して、幾つか伺います。
 計画区間である京王線の笹塚駅付近から仙川駅付近には二十五カ所の踏切があり、そのすべてが、ピーク一時間当たりの遮断時間が四十分以上の、いわゆるあかずの踏切となっており、交通渋滞や地域分断が極めて深刻な状況にあります。このため、連続立体化の早期実現が地域の喫緊の課題であることは、私も十分理解しております。
 しかし、複々線化については、運輸政策審議会答申第十八号において、今後整備について検討すべき路線として位置づけられているものの、高齢者人口の増加など今後の人口動向を踏まえると、かつてのように旅客需要の大幅な増加が見込めない状況にあります。地元住民の中には、混雑緩和の観点から、複々線化の必要性について疑問を持ち、複々線化を前提とした連続立体交差事業の検討を行うことは、不適切ではないかと感じていらっしゃる方もいます。
 そこで、都として、今回、複々線化を前提とした都市計画変更を行う必要性について伺います。

○河島都市整備局長 京王線の笹塚駅からつつじヶ丘駅間は、昭和四十四年に高架複々線化の都市計画が定められております。京王線は、現在、最混雑区間の混雑率が約一七〇%でございまして、また、朝のラッシュ時のダイヤが過密であることから、著しく速達性が低下しております。
 都としては、朝のラッシュ時の混雑緩和のみならず、速達性の向上や多摩地域と都心との連携強化など、東京圏の鉄道ネットワークの充実を図る上で、複々線化が必要と考えております。京王電鉄としても、輸送サービス向上の観点から複々線化が必要であるとしております。
 こうしたことから、連続立体交差化にあわせて、複々線化の都市計画についても見直しを行い、都市計画素案として取りまとめたものでございます。

○山口委員 この京王線の問題については、まだまだ地域住民の方々が心配されている点が多々あります。今後も、質問をしっかり重ねてまいりたいと思います。
 以上で質問を終わります。(拍手)

○酒井委員長 山口拓委員の発言は終わりました。

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