予算特別委員会速記録第三号

○服部副委員長 松下玲子委員の発言を許します。
   〔服部副委員長退席、委員長着席〕

○松下委員 今から四年前の平成十八年度の予算特別委員会におきまして、私は、鉄道自殺防止の観点からホームドアの整備促進について質問をし、さまざまな提言を行いました。その後の平成十八年十二月に都が策定した「十年後の東京」計画では、ホームドア、ホームさく、転落探知マット等を都内すべての駅に設置し、ホームからの転落事故を防止すると取り上げられました。
 私は、公共交通の安全対策として、また、だれもが安全で安心して鉄道を利用するために、ホームからの転落事故を防止することは非常に重要であると考えますが、私の地元を東西に走るJR中央線ではまだ実現されておらず、安全対策は不十分です。
 そこで、都内の地下鉄駅とJR及び私鉄の駅でのホームドア等の整備状況と今後の整備予定について伺います。

○河島都市整備局長 現在、都営地下鉄及び東京地下鉄におきましては、六路線八十駅でホームドア等が整備され、総駅数に占める割合は約三五%でございます。
 また、JR東日本及び私鉄では、総駅数の約一三%に当たる五路線六十一駅で整備されております。
 今後、東京地下鉄では平成二十四年度までに有楽町線の二十二駅、都営地下鉄では平成二十五年度までに大江戸線の全三十八駅に可動式ホームさくを整備するとのことでございます。
 また、JR東日本では、山手線の全二十九駅におきまして可動式ホームさくの整備を進めていくというふうに聞いております。

○松下委員 地下鉄で先行して整備が進んでいるようですが、JRや私鉄ではホームドア等の整備が余り進んでいません。
 今後、JR及び私鉄のホームドア等の整備を進めさせるべきと考えますが、都の認識を伺います。

○河島都市整備局長 鉄道のホームドア等は、ホームからの転落や列車との接触などの事故を防止するため設置される施設でございます。
 既存駅への設置に当たっては、車両扉の位置の異なる列車への対応や、ホーム幅の減少、停車時間の増大による輸送力の低下などのさまざまな課題がございまして、整備が進んでいないのが現状であります。
 地下鉄事業につきましては、公共交通ネットワークの充実の観点から都や国が関与して進めてきた鉄道整備の一環として、ホームドア等を含めた施設整備の促進について、国と連携して取り組んでおります。
 一方、JR及び私鉄におきましては、ホームドア等の整備は、自社の駅施設の安全対策としてみずから整備に取り組むことが基本であることから、これら鉄道事業者に対し整備促進を働きかけてまいります。

○松下委員 ぜひ都民の命と移動を守る安全対策として、積極的に、たとえ民間事業者であっても、整備促進を働きかけていただきたいと思います。
 ホームドア等の整備には多くの技術的な課題もあると、四年前の答弁からも明らかになっています。しかし、例えば都と鉄道事業者による安全対策協議会をつくるなど、さまざまな課題の解決策を検討し、ホームドア等の整備を促進させるような積極的な取り組みをお願いいたします。
 連続立体交差事業が渋滞対策も目的として道路事業として行っているように、一たび人身事故が起きた場合は、大切な命が失われます。かつ都民生活に与える損害は甚大です。通勤に鉄道を利用している人たちは、東京及び大都市特有の問題、満員電車にも苦しんでいるんです。さらに、人身事故には我慢が限界であると思います。
 今後、補助の仕組みもぜひ検討し、「十年後の東京」で掲げた目標、都内すべての駅、ホームに安全対策を実現していただきたいと要望し、次に外環ノ2についての質問に移ります。
 外かく環状道路、地上部街路、外環ノ2について伺います。
 これまでも質問してきましたが、その時点で明らかにならなかった部分、今後の方向性や、今現在どの位置にあるのかを確認したいと思います。
 以前、都市整備委員会で質疑した際には、外環ノ2について調査を行うという答弁がありました。そして、その成果を示して地元に説明をするといった答弁でした。外環ノ2に関してこれまでどのような調査を行ったのか、そして調査結果はどうだったのか、お答えください。

○河島都市整備局長 外環ノ2は、昭和四十一年に、目白通りから東八道路までの区間が外環の地上部街路として都市計画決定された道路でございます。外環の都市計画変更に際しましては、平成十八年十月に、沿線の区市から外環ノ2の検討に必要なデータを提示するよう要請を受けました。
 現在、これを踏まえ、環境、防災、交通、暮らしという四つの視点から、沿線地域の交通量や狭隘道路の状況など現況を把握するとともに、外環ノ2が整備された場合の周辺道路への影響や延焼防止効果等について調査を行っているところでございます。

○松下委員 まだ調査の結果が出ていないということかと思いますが、ぜひ調査の成果、データの裏づけをきちんと沿線市や都民に対して示していただきたいと思います。
 外環ノ2に関しては、地元武蔵野市では話し合いの会が開催されていますが、この会の位置づけ、目的、現在の状況についてお答えください。

○河島都市整備局長 外環ノ2につきましては、昨年の四月に公表した地域の課題に対する対応の方針におきまして、話し合いの場を設けることとしております。これを踏まえ、外環ノ2の必要性やあり方などにつきまして広く意見を聞くことを目的として、武蔵野市におきましては、昨年の八月に、公募による地域住民やコミュニティ協議会の代表者などで構成する話し合いの会を設置いたしました。これまで公開で三回開催し、会の運営や外環ノ2の計画の経緯等を説明し、意見交換を行っております。

○松下委員 話し合いの会の運営をめぐってもいろいろと課題があるようですが、今後、話し合いの会の意見をどのように外環ノ2に反映させるのか、お伺いいたします。

○河島都市整備局長 話し合いの会におきましては、外環ノ2の必要性やあり方等について意見を聞き、その内容をホームページ等で広く公表しております。また、広く地域住民の方々の意見を聞く場を設けることを予定しております。
 これらの取り組みによりいただいた意見を踏まえ、外環ノ2の検討を行い、都市計画に関する都の方針を取りまとめてまいります。

○松下委員 外環道路の計画のたたき台が平成十三年四月に発表された時点では、外環ノ2に関しては、地上部の利用として、大きく分けて三つ、細かく分けると五つの案が示されました。そのうちの外環ノ2の廃止を意味する案は、現状の市街地を維持することができますと明確に示されているのですが、その後、平成十七年一月に発表された外環の地上部街路についてでは、外環ノ2として三案が示された後、代替機能を確保して外環ノ2の都市計画を廃止するということが唐突に示されました。外環本線が地下化となり、地上部には道路はできないものだと思っていた地元の人たちは、これを見て非常に驚きました。
 外環ノ2は、代替機能を確保しなければ廃止することはできないのでしょうか。もしそうであるならば、代替機能を確保しなければならない法的根拠をお示しください。

○河島都市整備局長 外環ノ2は、環境、防災、交通などさまざまな機能を有し、地域の利便性や沿線のまちづくりに寄与する道路であります。東京の都市計画道路のネットワークを構成する一部として都市計画決定されております。
 沿線地域には、生活道路へ通過交通が流入することや、延焼遮断帯が未形成であることなど、さまざまな課題があると認識しております。
 将来に向けて、地域の望ましいまちづくりを進めるためには、これらの課題を解決することが必要であり、外環ノ2を廃止する場合は、この都市計画道路が果たす役割の代替機能が確保されることが必要であると考えております。
 また、都市計画法には、代替機能の確保に係る明文の規定はございませんが、法第十三条の都市計画基準におきましては、道路等の都市施設は、土地利用、交通等の現状及び将来の見通しを勘案して、適切な規模で必要な位置に配置することにより、円滑な都市活動を確保し、良好な都市環境を保持するように定めることと規定されております。
 このため、都市計画をつかさどる立場から、外環ノ2が現計画で果たすべき機能を有している場合に、それを無視して単純に廃止することはできないと考えております。

○松下委員 さまざまな課題があることは、もちろん私も認識をしております。だからこそ、地元の人たちは道路に関する勉強会を頻繁に開くなど、地域の望ましいまちづくりを進めたいと必死に活動しているんです。
 代替機能を確保しなければならない法的根拠を私はお聞きしました。規定がないというお答えでしたので、法的根拠はないというふうに私は解釈いたします。
 そうであれば、代替機能を確保して廃止ということは、あくまで都の方針です。これは都の方針です。絶対ではないと考えます。外環の本線が、長い長い歴史的な経緯を経て、大深度地下方式に計画が変更されたという経緯と、その事実の重みをしっかりと考えた上で、外環ノ2について、廃止も含めて検討していただきたいと強く要望して、次の質問に移ります。
 次に、八ッ場ダムについてお伺いいたします。
 これまで何度も八ッ場ダムについて質問してきました。平成二十年の基本計画変更後、完成予定は平成二十七年度となり、この二十二年度には供用開始の、つけかえ県道、国道も供用開始が始まると聞いております。
 そこで、事業全体の金額と、都がこれまで八ッ場ダムに関連して支出してきた金額は幾らになるか、これまでの進捗率、事業費ベース、工事進捗ベース両方でお答えください。

○河島都市整備局長 八ッ場ダムの全体事業費は約四千六百億円でありまして、平成二十年度末までに約三千二百十億円が支出され、進捗率は約七〇%でございます。このうち、都は、平成二十年度末までに、国庫補助金を除き約四百五十七億円を支出しております。
 また、平成二十一年十二月末における各工事の進捗率につきましては、用地取得は面積で約八四%、家屋移転は世帯数で約八〇%、つけかえ鉄道は延長で約八八%、つけかえ道路は延長で約八三%となっております。さらに、道路工事の内訳では、県道は約七八%、国道は約八九%まで進捗しております。

○松下委員 二十年度末までの執行状況でしたので、具体的に今現在の場所についてお伺いしたい部分があります。
 つけかえ国道の暫定供用開始はことしの四月、来月からだったはずですが、どうやら間に合いそうもなさそうです。なぜ間に合わないのか私が調べてみたところ、川原畑地区のつけかえ国道ののり面が崩落していて、対策を講じているが改善していないのではないかという地元の方の指摘があります。
 写真をお見せいたします。(パネルを示す)こののり面が動いていると地元の方はおっしゃっていたようでありまして、その後、これは対策工事を施してアンカーボルトを打っている、アンカーボルトを打って崩落を食いとめている。しかし、その後さびが非常に見える。赤茶けている、さびているようにも見えるのですが、これは一体何なのでしょうか、お伺いいたします。

○河島都市整備局長 東京都は、ご指摘の国道の工事発注者あるいは道路管理者の立場にはございませんで、工事の詳細について把握しているわけではございませんので、国に問い合わせをするしかなく、その状況を把握させていただきました。
 お示しの写真は、川原畑地区におけるつけかえ国道一四五号の施工区間において、お話のあったのり面の対策工事を行った箇所を写したものだと思われます。
 国は、当該箇所につきましては、斜面の崩落した部分やその周辺に対してグランドアンカー等を打ち込むことにより、一般的なのり面保護工と比較して安全性の高い崩落防止策を行っており、既に平成二十年度に工事を完了しております。
 なお、今、写真でご指摘のあった赤茶けてさびのように見える部分は、国のお話では、あそこの地域にございます土の中に含まれる鉄分が表面に溶け出したものと考えられております。国からは、斜面の安全性について全く問題ないというふうに聞いております。

○松下委員 仕方なく国に聞いたように、私、今の答弁聞こえたんですけれども、この八ッ場ダム事業というのは……
   〔発言する者多し〕

○酒井委員長 ご静粛に願います。

○松下委員 事業主体……(発言する者多し)ちょっと静かにさせてください。

○酒井委員長 ご静粛に願います。

○松下委員 この八ッ場ダム事業というのは、事業主体は国であっても……
   〔発言する者多し〕

○酒井委員長 ご静粛に願います。

○松下委員 都も参画している事業なんですよ。税金を払っているのは都民なんですよ。都民に対して、東京都は説明責任を負っています。こうした工事の進捗管理がずさんだったからこそ、前も工期が延びたんじゃないですか。そういった今のお答えは、非常に誠実さを欠いていると思います。
 では、二枚目の……(発言する者多し)ちょっと時計をとめて。ちょっと静かにさせてください。

○酒井委員長 ご静粛に願います。質問を続けてください。

○松下委員 では、二枚目のパネル。こちらは茶色い土、のり面がむき出しになっている部分であり、さきのパネルと連続した部分、山の斜面が崩落した箇所であると答えていただいた部分と連続した部分であります。これは一体--この部分、つけかえ国道ができるところなんです、ここ。本当は、来月から供用開始しているはずの国道ができるところの最近の写真です。ここの土の部分は一体何なのでしょうか。お答えください。

○河島都市整備局長 お示しの写真にございますのり面の部分につきましては、国によれば、国道の工事中に斜面の一部に緩みが確認され、現在現地調査を実施中でございまして、今後適切な対応を行っていくというふうに聞いております。
 それから、先ほどご指摘がございました東京都に説明責任があるんじゃないかというお話でございますが、工事につきましては、私どもそれを発注する立場にございませんので、管理をする責任はございません。また、管理をする権限もございません。工事については国が発注している。国が発注したその工事は国が管理しなければ、ほかの自治体が、負担金を払っているからといって管理をしに行くわけにはこれはいきません。そういう意味で、私は立場にないというふうに申し上げました。

○松下委員 結果的に、どちらも問題が発見され、対策工事が必要だったんですよ。先ほどから指摘しているこの川原畑地区という場所は、つけかえ国道を整備している場所であり……
   〔発言する者多し〕

○酒井委員長 ご静粛に願います。委員はご静粛に願います。

○松下委員 かつ、国道を挟んで代替地がある場所なんです。地元住民の方が、のり面が動いていると不安に思われている場所なんですよ。
 滝沢ダムでも、本体工事完了後、試験湛水後に地すべりが起きて、五年たった今も対策工事を行っているんです。まだ水がたまってもいないのに、緩んだり、崩落したり、本当に大丈夫なのか非常に疑問が残ると思うんです。これは、都としてやはり私は調査をすべきだと思いますし、コスト面に関してコスト管理協議会で議論をしているから大丈夫だと、これ以上事業費がふえることはないんだと以前答弁がありましたけれども、本当にこうした新たな状況に対応し、対策を講じていく中でコスト面が大丈夫なのか、コスト管理協議会は、こうした対策工事が追加となる事実も把握しているのでしょうか、伺います。

○河島都市整備局長 やっぱり、工事の細かい管理は、それをやる立場にはないと、これは申し上げたいと思います。
 しかし、負担金を東京都はちゃんと払っておるわけでございますので、その負担金を払っている立場から、工期がちゃんと約束どおり進んでいるかどうか、できているのかということと、それから、コストが適正に出されてオーバーすることはないのか、そういうことはやっぱりやっていかなければいけないと思います。
 しかし、個々の工事の、実際の工事の現場において、それが正しく行われているかとか安全であるかというところまでは、やっぱり口を出すべきではないというふうに考えております。
 今ご質問の点でございますが、国道のつけかえ工事に伴うのり面の崩落と対策工事につきましては、昨年六月に、国と関係都県等から成るコスト管理等に関する連絡協議会において既に報告されております。
 また、こうした対策工事によるコスト増が生じても、これまで橋梁の施工計画の見直しや仮排水トンネルの延長縮小など、さまざまな工夫による工事費の圧縮が図られておりますので、事業全体のコスト縮減の中で吸収することが十分可能であることを確認しております。
 引き続き、国との連絡協議会も活用しつつ、コスト管理の徹底に努めながら事業を推進するように、国に強く求めてまいります。

○松下委員 工期が約束どおりできるかどうかというのは、全体の工期ができるかというのは、個別の、例えば国道のつけかえ工事がその都度--来月なんですよ、もう完成予定だったのが。そういう管理をする必要があるのではないかといっています、私は。(発言する者あり)違います。ちょっと待ってください、口を出せとはいっておりません。しっかり都として管理をして、国から報告を受けて管理をして把握をするのが重要ではないかと指摘をさせていただいております。
 こうした工期のおくれ、例えば来月完成予定のはずのつけかえ工事、このバイパス工事というのは本当に供用開始できるのですか、お伺いいたします。

○河島都市整備局長 事実誤認があるのじゃないかと思うんですが、先ほどご指摘の一四五号につきましては、まだ来月完成ではございません。二十二年度末までかかります。暫定供用ということで予定をしていたわけです。暫定供用というのは、ある程度できたところを供用していこうという、そういうことでやっているわけでございますので、それが、国の方にお聞きしましたところ、いろいろ用地買収の問題などもございまして、若干のおくれが生じている。そのことが全体の工程に決定的な影響を与えるというふうには、私ども理解しておりません。

○松下委員 暫定供用開始が来月というのは存じておりました。言葉の中で発言に暫定が抜けたことは、私が申しわけございませんでした。でも、実際に一つ一つの工期のおくれというのが、全体の工期のおくれにつながってくるんです。これまでも工期の延長をしてきた。国は工期の延長をこれまでもしてきたんですよ。
 前回、基本計画を変更して工期を五年延長する際に、知事は意見を付しております。議決に際して付帯決議がつきました。この知事の意見、付帯決議は非常に重い、重要なものだと私は考えます。だからこそ、付帯決議に反して、もし仮に事業費がふえて工期も延長した場合、八ッ場ダム事業から都として撤退せざるを得なくなると思うのですが、いかがでしょうか。知事にお伺いいたします。

○石原知事 余り恨めしそうな目で見ないでよね。お答えいたします。
 一昨年、国からの意見照会に対して、さらなる工期延長がないように万全を期すこと、事業費が増額しないようコスト縮減を徹底することの二点の意見を付して、八ッ場ダムの計画変更を認めました。
 もし事業がおくれることがあるとすれば、その原因はダムの中止宣言にありまして、責任をとるべきは国だと思います。その混乱が延期をもたらすのではないかと懸念しております。
 国が策定した八ッ場ダムの建設計画は、現在も存続しております。政策転換に伴うダムの見直しが、首都圏における洪水や渇水のリスクを放置することにならないよう、国は、計画どおり平成二十七年度までに八ッ場ダムを完成させる責任があります。
 八ッ場ダムの必要性については、これまでも繰り返し説明しております。事業からの撤退は全く考えておりません。

○松下委員 私は今回、小さな工事、一部の工事かもしれませんが、関連工事のおくれについて調査を行い、事実を明らかにするためにも質問をいたしました。都も、できればもっと危機意識を持って、事業の進捗や事業費の管理、付帯決議に反することがないように事業の経緯を把握していただきたいと思いますし、私が一番いいたいのは、空港建設や道路建設においても、過大な需要予測の誤りが、JAL問題初め大きな問題となっている現実があるんです。将来に、未来の子どもたち、未来の都民に負の遺産を残し、借金を残すべきではないと申し上げ、次に、青少年の健全育成についてお伺いをいたします。
 新年度予算案には、年齢に応じた携帯電話を推奨するための制度が新規事業として取り上げられています。携帯電話を推奨する制度ができた場合に、携帯を持つことを推奨することにつながらないでしょうか。携帯を持つ、持たない、何歳から持つかは、各家庭での取り決めなのではないかと考えます。推奨する制度ができることで、学校での取り組み状況は変わるのかどうか、お伺いいたします。
 また、あわせて、東京都が推奨する携帯電話であれば持ち込んでもいいのではないかといわれたときの対応についてお伺いいたします。

○大原教育長 都教育委員会では、平成二十年十月の子供の携帯電話利用についてのアピールにおきまして、必要のない限り携帯電話は持たないようにすることを児童生徒に伝えますとともに、保護者に対しては、携帯電話を持たせる場合でも、必要最小限の機能のものやフィルタリング機能のついたものを持たせるよう依頼をしております。
 東京都が推奨する携帯電話等は、子どもに持たせる場合にも、青少年の健全な育成に配慮した機能のみを備えた携帯電話等を推奨するものでございまして、学校以外で使用する場合を想定しているために、都教育委員会のこれまでの取り組み状況が変わることはございません。

○松下委員 携帯電話やインターネットを通じた情報が危険なこともあることから、携帯電話の危険性から青少年を守るための取り組みは、機種を推奨するのではなく、教育こそ重要であると考えます。情報モラル、情報リテラシーの取り組みを早い段階から行うべきと考えますが、都教育委員会の取り組みについて伺います。

○大原教育長 携帯電話やインターネットを利用する子どもたちが、小学校の段階から、被害者にも加害者にもなることなく安全に生活するための能力を身につけることは、極めて重要であると認識しております。
 都教育委員会はこれまでも、非行防止、犯罪被害防止教育指導資料や子どものインターネット、携帯電話利用に係る指導資料を都内すべての公立学校に配布し、各学校における携帯電話やインターネットによる被害防止に関する指導の充実を支援してまいりました。
 また、携帯電話を使うときの約束などについて、都内公立学校全校で行う安全教育プログラムに位置づけまして、小学校の段階から体系的に指導するようにしております。さらに、都内小中学校及び教員や保護者を対象としたハイテク犯罪対策シンポジウムを毎年開催いたしまして、児童生徒への指導の改善や保護者への啓発を図ってまいりました。
 今後とも、警視庁、青少年・治安対策本部及び区市町村教育委員会と連携して、こうした取り組みを通して、子どもたちが被害者にも加害者にもならないよう、児童生徒の情報モラルと情報リテラシーの向上に向けた取り組みを一層充実してまいります。

○松下委員 文部科学省がネット安全安心全国推進会議というものを開催しています。この会議のメンバーでもあり、メディアリテラシーやネット、携帯と子どもの問題に取り組んでいらっしゃる千葉大学教育学部准教授、藤川大祐先生から、今回の条例改正案、携帯電話に関してご意見をいただきました。
 ここ数年の子どもの携帯電話をめぐる問題での成果、そして現在の対策、また進行中のもの、検討中の課題も例示していただき、さらには、東京都は首都にふさわしく、全国で進むこうした取り組みにさまざまな関係者とともに取り組むべきであり、的外れの保護策や不当な利用者への介入を進めるべきではないということであります。東京都による子どもの携帯電話に関する取り組みについては、抜本的な再検討をお願いしなければならないとご指摘をいただきました。
 つまり、現在の児童生徒の携帯やインターネットをめぐる問題を解決することに、端末推奨がつながるとは考えにくいというご指摘でした。問題は、端末の機能ではなく、通話、メール限定、フィルタリング、迷惑メール防止等、オプションが適切に活用されていないことにあるのではないでしょうか。
 民間が積極的に取り組んでいる問題に都が条例改正で介入することは、インターネット環境整備法において、民間における自主的かつ主体的な取り組みが大きな役割を担い、国及び地方公共団体はこれを尊重すると規定されていることに反するのではないでしょうか、お伺いいたします。

○倉田青少年・治安対策本部長 携帯電話の推奨制度は、青少年に携帯電話を持たせることを推奨するのではなく、保護者が子どもに携帯電話を持たせる必要がある場合において、保護者が携帯電話を選ぶ際の目安としていただくためのものでございます。
 当本部が本年一月二十九日から二月三日にかけて、都内の小中学生の保護者三百人を対象に行いましたフィルタリングに関する実態調査におきましても、携帯電話の機能の一部を年齢に応じて制限することにつきましては八四・三%が賛成をしております。
 一方、携帯電話事業者におきましても、既に通話、メール機能等に限定した子ども用携帯を発売しておりますが、多機能のものに比べると売れ行きが劣ると聞いております。携帯電話の推奨制度につきましては、携帯電話事業者も、推奨制度によりこれらの子ども用携帯の普及が図られることを期待し、その創設に好意的であると承知をしております。
 このように、本制度は、保護者の要望や民間の自主的取り組みを尊重し、これを後押しするものであり、法の趣旨に沿うものであると考えております。

○松下委員 今のお答え、三百という少ないサンプルですぐ条例改正に取り入れるのでしょうか。今のお答えでは、民間が独自の工夫で取り組んでいるこの問題に、都が条例改正してまで推奨制度をつくる理由には当たらないと考えます。法の趣旨にのっとると、民間が先に自主的な取り組みをするんです。それを尊重するのが地方公共団体なので、都が制度を創出するというのは、やはり都が先に来ると思います。自主的、主体的なのは、この場合、都になります。法の趣旨に沿うものではないと私は考えます。
 民間で、よりわかりやすい取り組みを行い--わかりにくいのであればわかりやすい取り組みを行い、普及十分なら、なぜ普及が十分じゃないか検証するところから始めるべきではないでしょうか。民間事業者と一緒になって問題解決に向けて取り組んでいる、まさに今、さなかだと思います。東京都だけが独自路線を歩むのではなく、携帯やインターネットは自治体の境界を越えて広がります。全国規模で取り組まなければならない課題だと考えます。
 法の趣旨に沿うものだと都はお考えのようですが、推奨制度を含む条例改正案に関して、私は東京大学大学院憲法学の長谷部恭男教授からもご意見をいただきました。
 現在審議されている東京都青少年健全育成条例改正案には、大きく二つの点で違和感があります。まず一つ目は、国全体として民間的な取り組みを推進する法律が存在するにもかかわらず、インターネットという世界規模で展開するネットワークについて、単なる一地方公共団体としてそれを上回る努力義務を課すことは問題がある。すなわち、憲法九十四条のいう法律の範囲内での条例制定とはいえず、法秩序の統一性を損なうおそれがあるということです。さらに、法律の規制を越えたあいまいな文言による努力義務を民間事業者に課すことで、民間の取り組みの自主性を阻害し、萎縮効果を及ぼしかねない。インターネット上の民間事業者の自由な表現活動、営業活動を過剰に制約する事態となりかねず、それは我が国の将来を考えたとき、大きな禍根となるだろうというものです。
 憲法学者のご意見を、ぜひ重く受けとめていただきたいと思います。
 法の趣旨に沿っているのか、引き続き確認していきますが、インターネット利用にかかわる保護者等の責務規定が設けられました。その中では、青少年がインターネットを利用して自己もしくは他人の尊厳を傷つけ、違法もしくは有害な行為をし、または犯罪もしくは被害を誘発することを防ぐため、青少年のインターネットの利用状況を適切に把握し、インターネットの利用を的確に管理するよう努めなければならないとされています。舌をかみそうであります。
 このような行為を認めたときは、行政機関は知事に通報ができ、知事は、保護者に対し再発防止に必要な措置をとり、インターネットの利用に関し適切に監督するよう、指導または助言ができるとあります。
 全体にあいまいで、条例に明記することはなじまないのではないかと考えます。自己の尊厳を傷つけるとは、具体的にどのようなことなのでしょうか。条例に明記すべきものなのか、伺います。

○倉田青少年・治安対策本部長 まず、条例につきましては、法に反する規定を置くことができないのは当然でございますが、本条例改正案は、環境整備法施行後も都内におけるインターネットを介した青少年の福祉犯罪被害が増加しているという状況等を踏まえて、その規定の実効性を向上させるために必要な規定を設けるものでございます。
 それから、自己の尊厳を傷つけるの典型例でございますが、自分の裸の写真を掲示板に掲載することなどを想定しております。このような行為は、ほとんどが保護者の関知しないところで行われていると思われますが、このような行為は青少年の健全育成を著しく阻害するものであり、本来は保護者の適切な監督により回避されることが望ましいものでございます。
 いわゆる青少年インターネット環境整備法第六条においては、保護者がフィルタリングの活用等により青少年のインターネット利用を適切に管理する努力義務が規定をされています。
 今回の条例改正では、この法の規定を踏まえつつ、保護者に対し、インターネットを通じて行われ得る青少年の被害や健全育成の阻害につながる行為に関する視点を提示し、青少年が被害者、加害者にならないよう、保護者による適切な保護監督を促すことを目的として条例に明示したものでございます。

○松下委員 なぜ青少年が自分の裸の写真を公開してはいけないのかということは、それこそ主に家庭教育の中で行われることであり、条例に明記し、知事に指導されることではないと考えます。
 青少年の健全育成を著しく阻害するものとのお答えですが、法の趣旨に沿えば、都が条例に明記しようとしている部分は、法律でいうところの青少年有害情報の説明かと考えますが、法律にも青少年有害情報は第二条で例示されています。それにもかかわらず具体的な視点を提示していることは、理解がしがたいです。
 そもそも、青少年の健全な育成を阻害するもの、有害情報の具体的な視点は何かを法律に先行して条例が規定するのは理解しがたく、また、法律の附帯決議に反していると考えます。総務省のインターネット上の違法・有害情報への対応に関する検討会中間取りまとめにも、特に行政は、有害情報の基準の策定や、個々のサイトに関する評価については立ち入らないことが原則であるとあります。
 こうした条文をつけることは、家庭への過剰な行政の介入ではないでしょうか。時間がかかっても、法律の基本理念にある民間における自主的かつ主体的な取り組みを尊重していくことの方が、結果として青少年の健全育成、家庭の機能を高めることにつながると思うのですが、いかがでしょうか。

○倉田青少年・治安対策本部長 青少年インターネット環境整備法におきます青少年有害情報は、公衆の閲覧に供されている情報であって、青少年の健全な成長を著しく阻害するものと規定されております。議員のご指摘は、あくまで例示でございます。
 それから、青少年の健全な育成における家庭の機能を高める必要があり、そのための自主的かつ主体的な取り組みの尊重が必要であるということはご指摘のとおりでございます。
 しかし、現に、青少年のインターネット利用に関する関心や保護監督が不十分な保護者は存在します。そして、現に、保護者の関知しないところでのインターネット等への書き込み等により、青少年が自他に加害、被害をもたらしている事例も多く、保護者の自覚を待つだけでは青少年を十分に守ることはできない実態にあります。
 したがいまして、特定の者に対するいじめを呼びかける書き込みを行ったようなケースなど、現実に青少年の健全な育成を阻害する行為が明らかに行われた場合において、その再発を防止するため、行政が保護者に対し適切に監督するよう指導、助言をすることは、青少年の健全育成を実現する上でやむを得ないことであり、過剰な介入ではないと考えております。

○松下委員 実害が生じた場合に限ってとお答えになるのであれば、そうした部分を条例に明記すべきではないでしょうか。今のままの条文では、実害がなくても保護者に責務が求められています。
 例えば、思春期の青年がテストの成績が悪く、私なんか生きている価値がないというような、そうした書き込みを青少年がしたとします。これは、条文をそのまま読むと、自己の尊厳を傷つけることを防ぐため、インターネットの利用に関して適切な監督につながるんです。自己の尊厳を傷つけるということ自体があいまいであり、条文をそのまま読むと、実害がなくてもわざわざ保護者に責務を求め、場合によっては知事に指導させることにつながるんです。
 お答えの中で、やむを得ず保護者に対してこうした条例で規定をするというお答えがありましたが、例えばそういう親がいたら、幾ら条例で規制をしても、知事に指導されても、聞かないんじゃないでしょうか。条例で明記をするのではなく、時間がかかっても親と子の関係をよくする、そして子どもが被害者にも加害者にもならない、そうした取り組みを現行法の中で取り組んでいくべきだと私は考えております。
 いろんな議論があり、いろんな意見がある中で青少年インターネット環境整備法ができ、昨年四月に施行されています。この法律の基本理念、子どもたちがインターネットを適切に活用する能力を育成していく考え方、これを何よりも前提とすべきです。
 どんな無害な情報であっても、受け手によっては結果として有害な情報となることもあるはずです。つまり、フィルタリングは絶対ではありません。どんなにフィルタリングをかけても、情報が有害か無害かは、受け手の情報の扱いになるのではないかということです。フィルタリングを過信するのは危険であり、条例改正でフィルタリングが強化される、推奨携帯もつくられると、逆に情報の判断能力を怠り、フィルタリングや推奨携帯に過信するのではないかという懸念が残ります。
 犯罪はどのような状況でも起こり得ます。どんなに無害な情報でも、受け手によって結果的に有害にもなり得るんです。犯罪につながりかねない有害な情報から青少年を守らなければいけないという思いは一緒です。でも、有害な情報から青少年を守るのは、フィルタリングの強化や推奨携帯ではないのではないかと考えます。健全な育成のためには、情報ツールであるネットや携帯をいかに使いこなすか、情報教育を高める部分と有害な情報から保護をする部分、この両方がバランスをとれていなければいけないと私は考えます。条例改正案は、行き過ぎた保護を強化するばかりではないかと考えます。
 創作物の表現の自由がなくなるのではないか、自由な表現ができなくなるのか、パブリックコメントではこうした懸念の声も寄せられているようであります。作家の自由な創作活動や芸術文化の振興と表現の自由、青少年の健全育成は相反するものなのか。どこまでが行き過ぎた表現で、どこならいいと行政が規制をすることは芸術文化の振興に多大な影響を及ぼすのではないか、お伺いいたします。

○倉田青少年・治安対策本部長 創作物を含めまして、青少年の健全な育成を著しく阻害する図書類について青少年への閲覧を制限する制度は、昭和三十九年の青少年健全育成条例制定時から存在をしており、長野県を除くすべての県で制度化をされています。また、このような制度は、岐阜県条例に係る最高裁判例におきまして、表現の自由を保障する憲法二十一条に違反するものではなく、合憲であると判示されています。
 また、今回新たに不健全図書指定の基準に追加することにより青少年への閲覧制限の対象とされるのは、図書類等のうち、青少年に係る性交または性交類似行為に係る視覚的描写物に限定され、さらに、これらのうち、青少年を強姦するなど著しく社会規範に反する行為をみだりに性的対象として肯定的に表現したものに限定をしております。さらに、そのような図書類等の創作や出版、成人への流通を禁じるものでもございません。
 したがいまして、このような作品の青少年への閲覧を規制することで、作家の自由な創作活動や芸術文化の振興への影響が生ずることはないものと考えております。

○松下委員 肯定的か否定的か、これは新たにつけ加えられた概念ですが、これは行政が判断できるものなのでしょうか。私は、この審議会のメンバーでもありましたので発言をいたしました。例えば、小説の中に目を覆いたくなるような性犯罪が描かれている作品もあります。しかし、全部を読むと性犯罪撲滅というメッセージがあり、そのためにその部分が必要である。こうした作品も、青少年健全育成の名のもとに、これでは排除されかねません。でも、これはあくまで私の主観であり、ほかの人の意見もあると思います。
 第三章の三には、青少年性的視覚描写物の蔓延防止に向けた機運の醸成及び環境の整備が加えられていますが、この蔓延防止とは、青少年への閲覧を規制することに限らないのではないでしょうか。この条文はどのように解釈すればよいか、お伺いいたします。

○倉田青少年・治安対策本部長 第十八条の六の二の規定における蔓延抑止とは、同規定が定義をする青少年性的視覚描写物が、青少年が容易に閲覧できる状態に置かれていることにかんがみ、これを抑止するという意味でございます。
 同条の規定は、このような状態が継続することにより、青少年をみだりに性的対象として扱う風潮を助長すべきでないことについての機運の醸成に努めるとともに、青少年が容易に閲覧または観覧することのないよう環境の整備に努める都の責務を規定するものであり、これらの図書類に関する青少年の閲覧機会の抑制を目的とするものであります。
 具体的には、不健全図書指定制度や自主規制に基づく表示図書制度の運用のほか、これらに該当する広告物等について、青少年の閲覧機会の多い場所等における掲示を差し控えるなどの自主的な取り組みを呼びかけることなどを想定しております。
 なお、事業者、都民の責務につきましても、青少年が容易にこれを閲覧または観覧することのないようにと規定しているところであり、この種の図書類について青少年が容易に閲覧することのないよう大人として努めていこうという趣旨の規定でございます。

○松下委員 都が条例で規制をかける影響の大きさを、ぜひかんがみていただきたいと思います。パブリックコメント、答申にはたくさん寄せられているようです。そのパブリックコメント、私たち民主党の西沢議員が情報開示請求を行い開示を求めましたが、黒塗りでもよいから開示をしてほしいと求めました。この条例審査に必要だといいました。開示ができないということで答えが出ました。この条例審査中に開示ができないということであれば……

○酒井委員長 質問者は質問をまとめてください。

○松下委員 条例改正案についても、私は同様に、より慎重を期する必要があると思いますが、いかがですか。

○酒井委員長 質問者は……(「委員長」と呼び、その他発言する者多し)ご静粛に願います。
 答弁者は簡潔に答弁をお願いいたします。

○倉田青少年・治安対策本部長 青少年問題協議会答申素案に対する都民意見の開示につきましては、対象物がおよそ二千八百枚と大量にわたり、そのすべてにつきまして、情報公開条例の規定に照らし、提出者の氏名はもとより、意見中にある特定の個人を識別することができる記述などにつきまして非開示情報として区分する等の手続が必要であり、現在、鋭意作業を進めているところでございます。
 なお、この都民の意見につきましては、その主な論点を整理したものを、協議会の見解を付して既に公表しております。
 また、その都民の意見につきましては適切に答申に反映されており、条例改正案はその答申を踏まえて策定したものでございます。

○酒井委員長 松下玲子委員の発言は終わりました。(拍手)
 この際、議事の都合により、おおむね三十分間休憩いたします。
   午後五時四十分休憩

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