予算特別委員会速記録第三号

○酒井委員長 きたしろ勝彦委員の発言を許します。
   〔委員長退席、服部副委員長着席〕

○きたしろ委員 私は、都議会議員になりましてから、水と緑の都、環境に優しいガーデンシティー東京をつくる、これが一つの大きなテーマ、そしてあと一つは、日本人としての誇り、伝統と文化の継承、こうした教育、日本人の問題に携わってまいりました。
 しかし、きょうはそのことから外れまして、まず質問をさせていただきたいと思います。それは教育関係の質問です。
 先般、北海道教職員組合の幹部らが、民主党の小林千代美衆議院議員の選挙対策委員会へ違法に選挙資金を提供したとして逮捕された事件。労組ぐるみ選挙に安住し、反省を置き去りにしてきた民主党の体質を改めて浮き彫りにしたといっても過言ではありません。
 また、過去に、山梨県教職員組合が、民主党輿石参議院会長の議員支援のために組合員から集めた寄附金を収支報告書に記載しなかった政治資金規正法違反事件も起きています。この事件では、政治資金規正法違反で、山梨県教職員組合幹部ら二人が罰金三十万円の略式命令を受け、山梨県教職員組合の組合員二十四人が山梨県教育委員会から停職などの懲戒処分を受けたのです。
 教育公務員特例法は政治的行為を制限しています。十八条第一項では、国家公務員並みに教育公務員も政治的行為の制限がなされております。しかし、公務員の第二項には罰則があるわけですけれども、教育公務員特例法第十八条第二項には罰則がないわけでございます。
 この違反者に対して罰則規定を設けていないということは、教育公務員は本来そういうことはしないだろうという善意で、こういう法律ができ上がっていると私は思っております。そうしてまた、それを悪用して、こういう形で罰則を取ってしまったというふうになっております。
 これらは氷山の一角にすぎません。これ以外にも、教員の政治的中立はあり得ないといった、教育基本法や教育公務員特例法を無視する問題発言が輿石議員からありました。
 このような民主党と労組とのなれ合いと労組依存体質が、政権与党となって改めて問われているわけであります。これは、これまでも、そして現在もなお、民主党内部における自浄作用が働かないことをまさに浮き彫りにしているわけであります。
 報道情報ではありますが、北海道では、現場で教壇に立つ組合員の中にも、こうした現実に疑問を持つ人もおり、元組合員は、それでもお金を出さざるを得ない前近代的な人間関係が北海道にはあると打ち明けております。
 日本教職員組合の加盟団体の中でも御三家といわれ、屈指の組織率の高さを誇る北海道教職員組合は、かつてはほとんどの教員が加入していたとまでいわれていましたが、現在の加入率は三四・二%とのことであります。
 そこで、まず初めに、同じ教職員組合である都の教職員の職員団体への加入率についてお伺いいたします。

○大原教育長 教職員の職員団体への加入率は、平成二十一年十月時点で二六・〇%でございます。平成二十年十月時点での加入率は二八・五%でございましたので、加入率は減少する傾向にございます。
 また、学校種別の加入率は、小学校が二〇・三%、中学校が二〇・六%、高等学校が四六・四%、特別支援学校が三一・〇%でございます。

○きたしろ委員 小学校、中学校では二〇%台、高等学校では四六%台と倍近くなっている。
 いろんな種類の組合があるとは聞いておりますけれども、ここに都教組の新聞があります。(資料を示す)職員団体のビラです。これは、六月九日、去年の都議会議員の選挙の前の新聞です。その中では、都議選で示そう都政への厳しい審判、この声を都議選の争点になどと書かれております。
 私は、よもや、学校現場では適正な範囲の中で組合活動が行われているものと信じておりますが、万が一にも、学校という神聖な教育現場から、例えば教育公務員特例法にいう政治的行為の制限に反するような内容のビラが地域へ流出し、保護者の信頼を損なうようなことなどが決してあってはならない。私は危惧しております。
 これまでも、東京都教育委員会は、職員団体が過ちを犯さないように指導をしていただいておりますが、今後もより一層の指導をよろしくお願いしたいと思います。
 話を国政に戻しますが、民主党が政権を担ってからは、学力向上を図る施策としてようやく定着してきた学力テストを、保護者の声を聞くことなく、全員参加から抽出方式に切りかえてしまいました。また、始まったばかりの免許更新制も、参加した多くの教員から有意義であったとの声が聞こえてくるのに見直しの対象となってしまい、現場からは戸惑いの声も漏れ聞こえてきます。
 教育の効果は一日にしては成り得ないもので、それなりの時間を要するものです。まさに国家百年の計であります。
 そこで、教育長は、学力テストが抽出方式に切りかわったことについてどのように考えているのか、お伺いをいたします。

○大原教育長 東京都教育委員会は、文部科学省に対し、平成二十二年度文教予算に関する提案要求の中で、現行どおりの悉皆による学力調査の継続を求めております。
 その理由は、二つございます。
 第一は、抽出方式に切りかわりますと、調査結果の活用としては、児童生徒の学力の全体傾向を把握するにとどまることになりまして、これまでのような、児童生徒一人一人に対し調査結果を還元し、個々の学力向上を図ることができなくなってしまうからでございます。
 第二は、都内各小中学校では、文部科学省が実施する悉皆の全国学力・学習状況調査の結果の分析を通して指導計画を見直すなど、それぞれの学校で児童生徒の実態に応じて授業改善を行っておりますが、これができなくなるからでございます。
 ちなみに、東京都教育委員会では、平成十五年度から実施してまいりました東京都独自の悉皆の学力調査を、二十二年度も継続して実施いたします。

○きたしろ委員 ぜひ東京都では全員が学力テストを受けられるように、これからも努力をしていっていただきたいと思います。
 教育関係の最後に、知事にお伺いをいたしたいと思います。
 敗戦直後から、戦後の日本を立ち直らせるため、教育には特に力を入れてきたと思います。教育は、国家にとっても、日本人一人一人にとっても、極めて重要で身近な問題であることは、だれしもが疑いを持ちません。そのために、東京都ではこれまで、知事、教育長が先頭に立って教育のあるべき姿を追求してこられたわけで、そのたまものとして、都民の多様な教育ニーズにもしっかりと対応した教育行政を推し進めることができているのだと、私は評価しております。
 しかしながら、最近は、個人の思想、信条を振りかざし、未来を託す子どもたちに国旗・国歌の意義を正しく指導しない教員たちが、みずからの職務命令違反に対する処分の取り消し訴訟を数多く提訴しております。これは基本的人権の尊重と個人主義を履き違えた利己主義の傾向が強まっているからではないでしょうか。
 私は、教育行政を推進するに当たっては、日本人の心を大切にするという原点を忘れずに取り組んでほしいと考えております。そのためには、日本の伝統と文化を継承することが重要であると私は考えております。知事の所見をお伺いいたします。

○石原知事 おっしゃるとおり、日本の心の伝統、心の文化というものを継承することが肝要だと思います。
 かつての日本は、現在にばっこしている拝金主義や即物主義とはおよそ無縁でありまして、みずから今をもって足るを知る心豊かな社会でもありました。
 日本のも書きました社会学者のスーザン・ハンレーは、自分がもし十九世紀に生まれたならば、当時まだありました特権階級や、あるいは新興の財閥などよりも、江戸の庶民として生まれて住みたいということをいっているほど、当時の江戸の心の成熟というものを評価しておりました。これは非常に印象的な挿話であると思います。謙虚、自己犠牲、真の勇気といった、まさに武士道に象徴されていたさまざまな美徳は、確固として過去の日本にはありました。これらは、身分、立場を超えて、価値観も超えて、子どもたちに教えていかなくてはならない、人間の一番重要な美徳であると思います。
 しかし、どうも現代に至るによって、履き違えられた自由と権利が日本全体を損ない、非常に自己中心的な生き方が蔓延して、これらの美徳は今日希薄になってしまいました。
 いつの時代にも、どんな社会にも、いかにして子どもたちをたくましく、美しく育てることができるかということに、その社会の行く末がかかっていると思います。
 日本人の特質を現代から未来にかけて子弟につないでいくことは我々大人の責任でありまして、家庭でのしつけや教育の中でしっかりと伝達していきたいと思っております。

○きたしろ委員 次に、京浜港の国際競争力の強化についてお伺いをいたします。
 アジア諸港が躍進する中で、欧米の主要港と直行便で結ぶ、いわゆる国際基幹航路の寄港数が、京浜港においても減少しつつあります。このまま京浜港に基幹航路の船が寄港しなくなれば、物流コストの増加などにより、首都圏の経済活動や住民生活に大きな影響を及ぼすと危惧されております。京浜港の国際競争力の強化は待ったなしの課題であります。
 知事もおっしゃっておりましたけれども、苫小牧港と北米の間で輸出入する場合、荷主の支払う運賃は、釜山港経由よりも京浜港経由の方が約七万円、これは率にして二割以上高いわけです。
 さらに、この運賃の構成要素の一つであり、船会社が港を利用するときに支払う港湾利用コストに限れば、釜山港との差はさらに広がると聞いております。特に、二十四時間フルオープンを目指すとしながら、日本の港における荷役経費などの夜間、休日割り増し料金は、海外諸港と比較して割高であり、これは日本での夜間等の港湾利用が拡大しない要因の一つとも仄聞をしております。
 船会社が寄港地を選択する上で、港湾利用コストは重要な条件の一つです。ましてや百年に一度ともいわれる経済不況の中で、世界の海運事業者は、コスト縮減に極めて敏感になっております。港湾利用コストの削減は待ったなしの状況にあるのではないでしょうか。
 まず、確認の意味から、我が国港湾での港湾利用のコスト面における現状をどのように認識しているのか、お伺いをいたします。

○比留間港湾局長 港湾利用コストは、国ごとの人件費や物価の水準、港の立地などを反映しており、単純に比較はできませんが、例えば、京浜港のコンテナ一個当たりのコストを比べると、釜山港の二倍程度と推定をされます。
 港湾利用コストは固定費が占める割合が高く、貨物が多くなれば規模の利益が働き、貨物一個当たりのコストは下がることになります。コンテナ貨物取扱量の比較において、釜山港は京浜港の約二倍を取り扱っておりまして、この差が港湾利用コストの開きの主な原因となってございます。
 このため、まず、船会社などの港湾関係事業者とともに、港湾管理者としても、京浜港の貨物量の増加に努める必要があると考えてございます。
 また、水先料金や港湾施設料金などの港湾諸料金そのものの見直しも必要であると認識をしてございます。

○きたしろ委員 ただいま、貨物取扱量の増加と港湾諸料金の見直しという二面からお話がございました。確かに国際港湾間では人件費や物件費の差は大きく、港湾利用コストを単純に比較できないことは理解できます。だからといって、港湾利用コストの改善に手をこまねいていれば、アジア諸港との競争に敗れてしまいかねないと思います。
 先ほど、貨物が多ければ規模の利益が働いて、貨物の一個当たりコストが下がるとの答弁がありました。京浜港にさらに多くの貨物を集めていくことは、港湾利用コストを下げる上で有効ということです。
 多くの貨物を集めるためには、船舶やトラック、鉄道など、京浜港と地方港、もしくは内陸部を結ぶ国内輸送網をしっかり構築していくことが大切だと私は思います。
 そこで、船舶などの国内輸送網の充実強化に向けてどのように取り組んでいくのか、所見をお伺いいたします。

○比留間港湾局長 国内輸送網の充実強化に向け、まず、船舶輸送につきましては、北海道や東北地方などからの貨物の集荷を強化していくため、地方港との連携に基づく入港料の相互免除を行って輸送コストの低減を図ってまいります。
 トラック輸送につきましては、三環状道路など広域幹線道路の整備促進を国に働きかけ、内陸部と京浜港とを結ぶ貨物輸送時間の短縮を進めるとともに、京浜港内の臨港道路の整備促進にも努めてまいります。
 鉄道輸送につきましては、これまで都は、鉄道利用促進に向けた支援を国に対して働きかけてまいりました。その結果として、JR貨物では、あすの三月十三日にダイヤ改正を行い、海上コンテナ列車で大井ふ頭の貨物ターミナルと盛岡を結ぶ新たな輸送サービスを実施する運びとなったところでございます。
 今後とも、国内輸送網の充実強化を図り、貨物誘致に取り組んでまいります。

○きたしろ委員 答弁にもありましたけれども、国内輸送網の充実を図る上で、国の役割も少なくないと思いますが、有効な施策を構築していくには、港の実情をつぶさに知っている港湾管理者の役割こそ大きいと思います。国は、港湾管理者の意見を十分取り入れ、港湾施策を進めるべきであると思います。
 次に、港湾諸料金についてですけれども、港湾間の競争がここまで熾烈になれば、港湾諸料金を低減していくことも避けて通ることのできない課題と考えます。港湾諸料金には、入港料など港湾管理者が受け取るものだけでなく、東京港埠頭株式会社が受け取るターミナル費用、水先料金など民間諸料金があると聞いております。
 そこで、港湾諸料金の見直しに向けてどのように取り組んでいくのか、所見をお伺いいたします。

○比留間港湾局長 港湾諸料金のうちコンテナターミナル使用料につきましては、貨物集荷を進める船会社を支援するインセンティブ制度の拡充などによる低減が必要でございます。
 こうした取り組みを東京港埠頭株式会社に働きかけていくとともに、都といたしましては、官民一体となった航路誘致などを一層強化してまいります。
 また、大型船の離着岸に必要なタグボートの料金見直しのため、タグボート基地の改善に取り組んでまいります。
 船の進路を誘導する水先案内の料金につきましては、現在、料金決定に利用者が参画する仕組みの検討を行っておりまして、港湾管理者としても、この取り組みを支援してまいります。

○きたしろ委員 京浜港は、これまで我が国港湾の中でも特に目覚ましい発展を遂げてきました。これは、港湾関連事業者の皆さんの努力のたまものであると思います。
 しかし、世界は激動しており、過去の成功体験があすの繁栄を保証するとは限りません。港湾関係の民間料金の見直しには痛みを伴うこともありましょうが、京浜港が、ひいては我が国の港が国際間競争に勝ち抜くため、関連事業者の皆さんが互いに切磋琢磨するなど、より一層の努力をお願いしたいと思います。
 また、港湾管理者は、民間事業者への働きかけも含め、港湾利用コストの低減に鋭意取り組み、京浜港の国際競争力の強化に大いに汗を流してほしいとお願いをしておきます。
 次に、都営地下鉄の安全対策についてお伺いをいたします。
 ホームさくの整備を初めとする鉄道施設の安全対策には、長い時間と、さらに多額の費用が必要です。安全への投資は直接利益に結びつきませんが、安全対策は鉄道事業者にとっては欠かすことはできません。安心して鉄道を利用できるようにすることは、最も基本的で、かつ究極のサービスでもあります。
 これまで都営地下鉄は長い間赤字でしたが、経営改善の努力もあり、平成十八年度に黒字に転換をいたしました。交通局の新しい経営計画で、安全を最優先に必要な設備投資を重点的に行っていく方向が示されているのも、こういう状況を踏まえてのことであると考えております。
 交通局では、この経営計画の中で、大江戸線の全三十八駅にホームさくを設置することとし、これまでも順調に準備が進んでいる旨の報告をいただいております。しかし、三十八駅同時に設置はできないでしょうから、工事には相当な時間が必要と思われます。
 平成二十年第四回定例会において、一日も早く稼働させるべきという我が党の指摘に対して、交通局からは、二十三年度から順次ホームさくを稼働するよう準備を進めていくとの答弁がありました。
 私も、平成二十年度決算特別委員会において、乗降客の多い大門駅や六本木駅を含む区間を、安全のために優先して設置するよう要望したところですが、ホームさくの設置は具体的にどのように進めていくのか、お伺いをいたします。

○金子交通局長 営業中の路線であります大江戸線にホームさくを設置する場合、夜間の限られた時間内に効率的に作業を行う必要があります。そこで、あらかじめ車両基地でホームさくを電車に積み込み、終電後に駅まで運搬して設置する手法をとることといたしました。
 最初に、車両基地への引き込み線がある清澄白河駅に設置し、それ以降、順次隣接する駅に設置して、試験、調整などを行った上で使用を開始してまいります。
 ご指摘のように、乗降客の多い駅に早期に設置する必要があることから、清澄白河駅から、まず、勝どき、大門、六本木を経由して都庁前駅まで、時計回りに進めてまいります。続いて、清澄白河駅から飯田橋方向に反時計回りに進めていき、平成二十五年度末までに全三十八駅への整備を完了させる予定でございます。

○きたしろ委員 設置の進め方については確認できました。
 大江戸線のホームさくが完成すると、都営地下鉄では三田線に続きホームさくが整備されることとなります。そうなりますと、残る浅草線と新宿線についてということになります。二路線とも営業中の路線であることに加えて、いずれも民間鉄道会社と相互乗り入れを実施していることから、ハードルが高いことは十分承知しております。しかし、都営地下鉄の安全性を向上させるため、今から一歩でも半歩でも、設置に向けて検討を進めていただきたいと考えております。
 そこで、浅草線及び新宿線へのホームさく設置について、交通局の所見をお伺いいたします。

○金子交通局長 浅草線及び新宿線へのホームさくの設置につきましては、相互直通運転を実施していることから、車両のドア位置や、列車を所定の位置に停止させる装置など、規格や設備の統一が必要になること、また、駅で停車時間が延びることに対しまして輸送面での対応が必要になることなど、乗り入れ他社と協議の上で解決していかなければならない課題が多々ございます。
 このため、大江戸線と比べて、実現にはより一層の困難を伴うと考えておりますが、交通局といたしましては、地下鉄のホームの安全性を向上させていくため、技術面や輸送面などの課題について、今後、乗り入れ他社とも相談しながら、整備に向けた検討を進めてまいります。

○きたしろ委員 長い道のりかもしれませんけれども、ぜひ真摯に検討して、実現に向かって努力をしていっていただきたいと思います。
 次に、地域生活定着支援センターの設置についてお伺いをいたします。
 地域生活定着支援センターは、刑務所出所者等の社会復帰を支援し、再発防止を目的として設置するものです。国は、二十一年七月、本センターをすべての都道府県に設置する方針を打ち出しましたが、現在、全国で十一県が設置するのみであり、都はまだ設置しておりません。
 事業の理念、目的には賛同できますが、これまで分断されていた更生保護と福祉サービスという二つの制度をつなぐ事業を立ち上げるには、解決すべき問題が山積しているのではないかと懸念しております。
 そこで、地域生活定着支援センターの設置に当たっての課題と、課題解決に向けた都の取り組みについてお伺いをいたします。

○安藤福祉保健局長 地域生活定着支援センターの設置に当たりましては、福祉サービスを必要とする刑務所出所者を受け入れる区市町村の決定方法、費用負担等の課題に十分配慮する必要がございます。
 現在、国が示しております仕組みによれば、刑務所出所者の受け入れは大都市圏及び刑務所所在地の自治体に集中することが懸念され、都内自治体の理解、協力が得られていない状況にあります。このため、都は、この課題への対応を、繰り返し国に要求しております。
 引き続き、受け入れ先となる区市町村の理解、協力が得られる仕組みとなるよう、国との協議を行うなど、適切に対応してまいります。

○きたしろ委員 この事業の実施に当たっては、まず国が、受刑者への矯正教育や刑務所出所後の更生保護の適正な実施について十分な責任を果たす必要がありますが、都としても、国へ精力的に働きかけるとともに、区市町村や関係機関との調整、協議を十分に行うなど、慎重な対応が必要です。
 特に保護司は、本事業の対象者への支援に直接かかわることも想定されていますので、東京都保護司会連合会の意見も十分に踏まえて対応されるよう要望しておきたいと思います。
 次に、周産期医療に関してお伺いをいたします。
 去る一月、国の周産期医療体制整備指針が改定され、都道府県において周産期医療体制整備計画を策定することが盛り込まれました。これを受けて、さきの我が党の本会議代表質問に対し、都は、本計画を本年夏ごろを目途に策定していくことを表明したところであります。
 国の改定指針では、リスクに応じた機能分担と連携を図るため、周産期医療のオープンシステム、セミオープンシステムを有効に活用していくよう明記しているところです。
 このシステムは、産科オープン病院を中心とした病院や診療所等との連携を構築し、安全・安心な周産期医療体制の確保を目的としたものであります。分娩を受け持つ中核病院と連携する一次医療機関との相互の紹介を通して、妊婦健診と分娩、正常分娩とハイリスク分娩などリスクを踏まえ、医療機能に応じた役割分担を進める仕組みであります。
 愛育病院が中核となりまして先駆的に実施したオープンシステムのモデル事業の成果と、周産期医療における連携強化の取り組み状況についてお伺いをいたします。

○安藤福祉保健局長 このモデルは、平成十七年度から三年間、妊婦健診を身近な地域の診療所で行い、分娩を診療所医師の立ち会いのもと愛育病院で行うというオープンシステムを試行したものであります。妊産婦の利便性を保ちながら安心なお産が確保できること、また、病院、診療所ともに負担が軽減されることが実証されました。
 こうした結果も踏まえ、都は、一次から三次までの医療機関がリスクに応じた役割分担と連携を進める周産期医療ネットワークグループの構築に取り組んでいるところであります。

○きたしろ委員 現在、港区では、田町駅東口北地区のまちづくりの中で医療機関誘致を進めております。愛育病院を誘致候補として、移転協議を進めていると聞いております。先月、港区より東京都へ要望書が提出されたと聞きました。周産期医療の一層の充実に向けて、このプロジェクトがスムーズに進むよう、心からお願いをしておきたいと思います。
 産科や新生児科といった周産期医療を担う医師不足により、過酷な長時間勤務による過重負担が問題となっております。診療科偏在の是正は、国が取り組むべき課題といえます。
 産科医師に対する施策として、今年度から、地域でお産を支える産科医師等に対する産科医師確保事業、いわゆる分娩手当を創設したところでありますが、周産期医療は、産科と新生児科医が車の両輪であります。新生児科不足も深刻な状況にあります。
 産科医への施策に加えて、新生児科医に対する施策の充実を図るべきと考えますが、都の取り組みについてお伺いをいたします。

○安藤福祉保健局長 都は、来年度、NICUにおいて新生児医療を担当する医師に手当を給付する新生児医療担当医確保事業を開始いたします。
 また、周産期医療に必要な人材を確保し、安定的な運営が図れるよう、周産期母子医療センターに対する運営費補助を大幅に拡充いたします。
 加えて、周産期医療等に従事する意思を有する医学生に対して、今年度から奨学金を貸与しており、中長期的な視点からの医師の養成にも取り組んでおります。
 今後とも、周産期医療体制の充実に努めてまいります。

○きたしろ委員 よろしくお願いをいたします。
 次に、都市整備についてお伺いをいたします。
 環状二号線は、東京の重要な都市基盤として都心部の幹線道路ネットワークを構成し、緑豊かな都市環境を創造するための環境軸としても重要な役割を果たす都市計画道路でもあります。
 道路を都市計画で定めることは、広域的な視点から道路の計画を立てることと、私権の制限を伴う道路整備を将来に向かって担保するという両面があります。その決定に際しては、住民との合意形成を図りつつ、都市計画審議会や環境アセスなどの手続を経て定めるものであり、その時々の都合で簡単に変更することはあってはならないと思います。
 さて、環状二号線のうち新橋-虎ノ門間については、立体道路制度を活用し、再開発事業と街路事業をあわせて行うことで地元との合意がまとまり、当初の都市計画決定から五十年を経て、今、準備が進められております。
 現地を見ると、環状二号線の道路予定地は、既に建物の移転、除却がほとんど完了して、グリーンロードネットワークを形成する、緑豊かな地上部道路となる四十メートル幅の空間が確保されております。一方、地元も、この地上部道路について大きな期待をしており、沿道周辺では住民によるまちづくりの検討が始まっております。
 そこでまず、この新橋・虎ノ門地区の地上部道路の整備予定についてお伺いをいたします。

○河島都市整備局長 新橋・虎ノ門地区の環状二号線は、広域交通を担う地下本線と地域内交通を担う地上部道路の二層構造となっております。
 お話の地上部道路は計画幅員が四十メートルでございまして、このうち車道部分として必要な空間は二車線でございます。残りは歩道空間に充てることができます。このゆとりある広い空間を生かして、地域の交流やにぎわいを創出するとともに、お話のございましたグリーンロードネットワークにふさわしい、緑豊かで魅力ある道路として整備していく考えでございます。
 このため、都は現在、地元港区や地権者、沿道町会等を交えた地上部道路計画検討会を設置いたしまして、植樹帯の配置や道路の横断構成、歩道のデザインなど具体の検討を進めております。
 今後、検討会におけます地元の意見なども踏まえ、平成二十二年度に詳細設計を行い、二十三年度に工事着手を予定しておりまして、二十五年度の完成を目指して整備を進めてまいります。

○きたしろ委員 地上部道路については、緑豊かでゆとりのある歩行者空間も整備されると聞いており、その早期整備が待ちわびられるところであります。
 ところで、都心の新たなシンボルともなる超高層ビルが整備されるⅢ街区についても、従前の建物の解体が進み、再開発ビルを建設する特定建築者が決定され、いよいよ着工に向けて準備が進められているとのことであります。
 そこで、このⅢ街区の整備内容と今後の事業予定についてお伺いをいたします。

○河島都市整備局長 当地区の核となるⅢ街区は、業務機能、文化交流機能、居住機能など多様な機能を備えた国際性豊かで緑にあふれ、潤いある街区として整備していく考えでございます。
 具体的には、国際的ニーズに対応可能なオフィスや会議場、ホテル、住宅などが機能的に複合した再開発ビルを建設するとともに、敷地内には約六千平方メートルに及ぶ緑豊かな交流広場も整備する予定でございます。さらに、再開発ビルの地下部分に、立体道路制度を活用して環状二号線の本線を整備することになっております。
 この再開発ビルの建設に当たりましては、民間ノウハウの活用や都のリスク回避のため、特定建築者制度の活用を図ることといたしまして、昨年九月に特定建築者を決定いたしました。
 今後は、本年十一月に建築工事の着手を予定しており、平成二十六年の完成を目指して整備を進めてまいります。

○きたしろ委員 地元住民はもちろん、私としても、地上部道路やⅢ街区の再開発ビルの整備が計画どおり着実に推進されていくことを強く期待しているところであります。
 そこで大変気になるのが、昨日、我が党の代表質問で鈴木委員からも質問のあった、現政権下における来年度の公共事業関係費の対前年度比一八%の大幅な削減、さらには、これまで都市基盤整備やまちづくりに大きな役割を果たしてきたさまざまな補助金や交付金を、社会資本整備総合交付金という名のもとに一元化したことであります。この新橋・虎ノ門地区の市街地再開発事業も、国の補助金の導入を前提として進めていると聞いております。補助金等の削減がこの事業の実施に多大な影響を与えるのではないかと危惧しております。
 そこで、平成二十二年度以降、補助金等の一八%削減が継続的に行われた場合、当地区の市街地再開発事業にどのような影響が出るのか、具体的にお伺いをいたします。

○河島都市整備局長 当地区の市街地再開発事業におけます平成二十二年度以降の国費の必要額は、Ⅲ街区の再開発ビルの権利床整備費や入居権利者の仮移転補償費、地上部道路の整備費など、全体で百八十九億円でございます。仮に一八%削減が継続された場合には、約三十四億円の国費の不足が生じることになります。
 権利床整備費や仮移転補償費は、施行者である都が、特定建築者や入居権利者に対して、契約に基づき期限までに支払わなければならず、国費分が不足することになると事業収支の悪化につながります。また、地上部道路の整備についても、同様に、財源不足によって整備期間の延伸が避けられなくなります。
 このように、国費の削減は、当地区の再開発事業に深刻な影響を及ぼし、ひいては事業の中断も懸念されるところでございます。

○きたしろ委員 先ほどの答弁にあったように、特定建築者制度は、民間ノウハウの活用や都のリスク回避という点で大変メリットのある制度であります。しかし、今の答弁を聞くと、補助金等が削減されると、都が重いリスクを負いかねないことがわかりました。
 権利者の早期生活再建のためにも、再開発ビルの完成をおくらせるわけにはいきません。また、地上部道路の整備が遅延することになれば、現在、新橋地区や虎ノ門地区周辺の地元が中心になって進めているまちづくりの動きに水を差すことにもなります。当地区の再開発事業のように、継続中の事業に対し補助金等を削減することは、大変ゆゆしき問題といわざるを得ません。
 そこで、補助金等の確保について国に積極的に働きかけるべきと考えるが、都の考え方はいかがでしょうか。

○河島都市整備局長 ご指摘のように、国費の導入を前提として権利者の合意のもとで進められている継続中の事業に対して国費が削減されるということは、事業収支の悪化を招くばかりか、権利者との信頼関係を損ねることにもつながりかねません。
 このため、都は、これまでも国に対して財源確保の要望を行ってまいりましたが、今後も、市街地再開発事業の財源となる社会資本整備総合交付金の確保を、より一層強く国に求めてまいります。

○きたしろ委員 新橋・虎ノ門地区の市街地再開発事業は、東京の都市再生の象徴ともいうべき重要な事業であります。長年にわたる住民との合意形成などの経過を経て、いよいよ事業が目に見える形で進捗をしているところであります。
 この段になって、現場の実情を無視した公共事業費の大幅削減など、民主党の政策には、将来の国づくり、都市づくりに対する強い意志が全く感じられないと思います。
 現場あっての政治、現場を見て政策を実現していく、このことが民主党政権には欠けているのではないかと思っております。八ッ場ダムしかり、築地市場しかりであります。私は、この国の行く先に危機感さえ感じております。
 いずれにしても、こうした状況下にあっても、都は、東京の都市再生に不退転の覚悟を持って臨み、当地区の再開発事業を計画どおり推進することを強く求めて質問を終わります。(拍手)

○服部副委員長 きたしろ勝彦委員の発言は終わりました。

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