予算特別委員会速記録第二号

   午後一時開議

○酒井委員長 休憩前に引き続き委員会を開きます。
 委員会の要求資料について申し上げます。
 先ほど委員会として要求いたしました資料は、お手元に配布してあります。
 これより総括質疑を行います。
 この際、一言申し上げます。
 質疑に当たりましては、さきにご決定をいただいております委員会実施要領等に従いまして運営してまいります。委員の皆様方には、円滑かつ充実した審議が行われますよう、ご協力をお願いいたします。
 なお、持ち時間につきましては、電光表示盤に残り時間を表示いたします。さらに、振鈴で五分前に一点、時間満了時に二点を打ち、お知らせいたします。質疑持ち時間はお守り願います。
 次に、理事者に申し上げます。
 答弁に際しましては、委員の質疑時間も限られておりますので、短時間で明快に答弁されるようお願いいたします。
 なお、各局長に申し上げます。
 発言の際には、必ず職名を告げ、委員長の許可を得た上で発言されるようお願いいたします。
 これより順次発言を許します。
 増子博樹理事の発言を許します。

○増子委員 まず初めに、築地市場の移転問題について伺います。
 私たちは、さきの都議選のマニフェストにおいて、築地市場の移転については、移転予定地から高濃度の汚染物質が検出されるなど、安全性が確認されていないこと、また関係者の合意も得られていないことから、強引な移転に反対しますと掲げました。しかし、私たちのマニフェストを批判した石原知事にとっても、豊洲の安全確認、関係者の合意といった条件は、移転の大前提であるものと考えます。
 私も民主党のマニフェスト作成の一員でございましたので、荒唐無稽なことを盛り込んだつもりはありません。
 石原知事にとっても、豊洲の安全確認、関係者の合意は、仮に移転する場合であっても大前提の条件であると考えますが、見解を伺います。

○石原知事 豊洲の関係者の合意なしに、移転など毛頭考えておりません。

○増子委員 今なお豊洲の安全性が確認されたとはいえないと思っております。また、築地市場最大の団体であります水産仲卸など関係者の合意が得られているとはいえません。
 そこでまず、豊洲の安全性について伺います。
 さきの代表質問で、石原知事も、豊洲移転は汚染が除去されることが前提であると述べられましたが、何をもって汚染が除去されたと確認するのでしょうか。
 東京都は、東京ガスが都と協議しながら当初計画を上回る対策を実施し、平成十九年に完了届を提出したことなどもあり、東京都は、みずからが調査をすることなく、豊洲は安全だなどと喧伝してきたのです。
 しかし、土壌汚染を心配する都民の声に押されて調査をしてみると、高濃度の汚染物質が検出されました。こうした一事をもってしても、市場当局は信頼されているとはいえません。
 東京都がかつて安全宣言したことについてどのように総括をしているのか、伺います。

○岡田中央卸売市場長 ご答弁申し上げます。
 東京ガス株式会社は、操業に由来する汚染物質につきまして、環境基準の十倍を超えます物質は深さにかかわらず除去するとともに、工場操業時の地盤面から深さ二メートルの範囲の環境基準を超える物質を除去しております。
 これに加えまして、都は、環境基準を超える自然的要因の物質の処理などによりまして、地盤面から深さ二メートルの範囲の土壌を入れかえ、全体を二・五メートル盛り土し、さらにその上を二十五センチから四十センチのアスファルト舗装で覆うなど、敷地全面にわたりまして、土壌汚染対策法ですとか東京都の土壌汚染対策指針と比べましても、二重、三重の対策を行うことから、安全性に問題はないとしたものでございます。
 しかしながら、都民や市場関係者などの一部に懸念の声がございまして、生鮮食料品を扱う市場用地であることから、専門家の科学的知見に基づく検証、提言を行うことを目的に専門家会議を設置いたしまして、人が生涯この地に住み続けても健康への影響がないとする、極めて安全性の高い対策を提言していただいたところでございます。
 さらに、この専門家会議の提言を確実に実現するために、技術会議におきましては、最高権威の学識経験者があらゆる角度から詳細に検討を行いまして、その結果、日本の最先端技術を活用した、安全性、信頼性の高い対策を提言していただいたところでございます。
 都は、この対策を確実に実行しますことで、豊洲新市場予定地の安全・安心を確保してまいります。

○増子委員 私たち都議会民主党は、この豊洲の土壌汚染問題を議論していく中で、当時の土壌汚染対策法附則第三条において経過措置が設けられていることが汚染の調査を不十分にしているのではないかと考えまして、平成十九年八月七日に、当時の民主党のネクスト環境大臣でありました末松義規議員に対して、同法の改正などを申し入れてまいりました。
 このような経緯などもあり、昨年四月に土壌汚染対策法が改正され、先日、その技術基準を定めた省令が公布されました。
 そこで、豊洲新市場予定地は、改正土壌汚染対策法においてどのような指定がなされるのか、また、指定された区域はどのような場合に解除されるのか、伺います。

○有留環境局長 豊洲新市場の建設に伴う土地改変は三千平方メートル以上の規模となり、当該土地におきましては、既に専門家会議による調査等により基準に適合しない土壌の存在が確認されていることから、改正された土壌汚染対策法に基づいて土壌汚染状況の調査結果の報告が必要となります。
 当該土地は、現状では、盛り土等により汚染土壌の直接摂取のおそれがなく、周辺に飲用井戸等がないことから、土壌汚染対策法上は健康被害のおそれのない土地に該当します。このため、直ちに対策をとる必要はありませんが、土地改変の際に届け出が必要な形質変更時要届け出区域に指定され、建設工事などの土地改変を行う際には形質変更の届け出が必要となります。
 市場の計画は、法律や条例が定める土壌汚染対策の水準を大きく上回っていて、食の安全・安心という要求にこたえるものとなっておりまして、この届け出を行えば、形質変更時要届け出区域で建設工事等を行うことができます。
 なお、当該土地において土壌汚染が除去され、かつ地下水汚染が生じていない状態が二年間継続して確認されれば、法律上の手続として、形質変更時要届け出区域の指定が解除されます。

○増子委員 今ご答弁にありましたように、この土地というのは形質変更時要届け出区域に指定をされる。そして、その区域指定が解除されるというのは、この土地において土壌汚染が除去されて、かつ地下水汚染が生じていない状態が二年間継続して確認されることだというご答弁がありました。
 学者の提言や、あるいは実験だけで、豊洲は安全とはいい切れないと思います。私たちは、少なくとも、当該土地において土壌汚染が除去され、かつ地下水汚染が生じていない状態が二年間継続して確認されることで初めて豊洲新市場予定地は安全だといえるのだと思っています。
 知事が移転の前提としている汚染の除去とは、どのような状況になって初めて安全が確認できると認識しておられるのか、見解を伺います。

○岡田中央卸売市場長 豊洲新市場予定地への移転につきましては、汚染物質を除去することがすべての前提でございます。そのために、我が国を代表する学識経験者によりまして構成された専門家会議、技術会議という二つの会議体を設置いたしまして、科学的見地から複合的、重層的に検討を行い、市場用地としての安全・安心を十分確保する万全な土壌汚染対策を取りまとめていただいたところでございます。
 現在は、この予定地で、実際の土壌汚染対策と同様に、汚染物質の種類に応じまして、都が採用する技術等を適用し、確実に無害化することが可能であることを具体的なデータにより確認する実験を行っているところでございます。
 昨日、発表させていただきましたけれども、汚染土量の大部分に対しまして用います、その技術、工法につきましての有効性が確認されているところでございます。
 この実験の最終結果は六月になるわけですけれども、その最終結果により、残りの処理技術の有効性が確認され、さらにこの土壌汚染対策を確実に実施をしていきます。そのことによりまして、人が生涯この地に住み続けても健康への影響はなく、生鮮食料品を取り扱います市場用地としての安全・安心が十分確保されることになると考えております。
 なお、地下水のモニタリングでございますけれども、地下水は、ご参考までに申し上げますと、あの豊洲については水たまりのようなものではございませんで、水と土とがまざり合った、いわゆる滞水帯でございます。極めて流れの少ない層でございまして、この地下水につきましても、土壌汚染対策の工事を行う際に、土壌と一緒に汚染の除去を行ってまいります。で、その後、地下水のモニタリングとして二年間実施してまいります。

○増子委員 今ご答弁がありましたけど、やはりその内容だと、私どもは確認だとは思えないんですね。
 私たちは、地下水のモニタリングなど、実際に汚染がない状況、これが確認だと思っていますし、この確認がない限りは安全・安心が確保されたとはいえないと思っております。
 石原知事が移転の前提としている汚染の除去とは、今、中央卸売市場長が答弁をされたことの内容で本当によろしいのか、知事自身の認識を確認させていただきたいと思います。

○石原知事 その前にちょっとお聞きしますけどね、あなた方、いろいろおっしゃるマニフェストというのは日本語では何というんですか。私、よくわからないんだけど。(発言する者あり)いやいや、聞かせてよ、座ったままでいいから。

○酒井委員長 知事は答弁してください。
   〔発言する者あり〕
〔増子委員「私たちの公約だと思います」と呼ぶ〕

○酒井委員長 知事、質問に対する答弁をお願いします。

○石原知事 いや、どうにもわからない、マニフェスト、マニフェストといわれてもね。私も昔、実存主義の勉強をしたことがありますからね、そこで使われた意味だと、宣言だとか声明とか、そういう意味でしょうね。要するに言葉でしょう。まあ、いいや。
 何でしたっけ、質問。(増子委員「今のご答弁でよろしいかどうか」と呼び、その他発言する者あり)
 安全性という……(発言する者あり)これからしゃべろうとしているんだから、黙って聞けよ。

○酒井委員長 ご静粛に願います。

○石原知事 安全というのは、今ある毒性、毒物というものが除去されれば安全になるわけでしょう。あの豊洲の、要するに汚染というのは、あそこで営業していた東京ガスが、いろんな作業をして、その汚物というものをあちこちに捨てた、それが場所によっては非常に堆積して現況になったわけでありまして、それが一回除去されて、その後、生鮮食品を扱う、要するに市場というのが運営されて、何で一回除去されたその土地に、それ以上毒物が堆積されていく可能性があるんですか。一回それが科学的に除去されれば、クリーンになったということじゃないですか。私はそう認識しております。

○増子委員 今、知事からご答弁がありましたけれど、かつて東ガスさんは一度処理をしたはずです。しかし、その後、汚染物質が出てきたんですよ。それは間違いないです。
 それと、私たちは別にこのことをマニフェストで初めて掲げたわけではありません。業界の同意とか汚染物質の除去などの問題は、その前からずっと議論してきたと思っておりますので、そこはちょっとご認識に間違いがあるかというふうに思っております。
 六月末の報告書で都民が安心するというのは認識不足ではないかと思っております。
 知事はこの間、専門家や技術者の知恵をかりながら困難な課題を克服しようとしていますが、例えば経済・港湾委員会における参考人質疑では、専門家の方と市場当局との説明とでは相違が見られ、市場当局が都合よく解釈していないかどうか懸念するものであります。
 例えば、不透水層の連続性について、一月十九日の参考人質疑では、平田先生は、有楽町層が連続しているかどうかということになると、部分的にはやはり切れているところがあるかもしれません、それは明確にどういう地層であれ、完全に連続というのは基本的に考えにくいと述べておられます。
 これは、市場当局が、豊洲地区の不透水層は二メートルから二十メートルの厚さで敷地全域にわたり連続して分布していると答弁した内容と違うと思いますが、ご見解をいただきたいと思います。

○岡田中央卸売市場長 豊洲新市場予定地内の有楽町層のうち、不透水層を形成しております粘性土質につきましては、これまで土壌の深さ方向の調査を実施いたしまして、一千四百七十五地点のうち、絞り込み調査で確認できなかった二地点を除くすべての地点で確認ができております。
 不透水層が確認できなかった二地点でございますけれども、この二地点の周囲につきましては、五メートル間隔でおのおの四地点、すなわち詳細調査では十メートルのメッシュでございますが、それを四分割して五メートルの区画にして調査をいたしました。で、計八地点で不透水層の上端の位置を調査した結果、すべての地点で不透水層を確認してございます。
 また、こういった調査に加えまして、数千年の長い年月をかけて河川で運ばれた粘土層が自然に堆積して形成されたという地層の成り立ちから考えますと、この二地点というのは特異な地点でございまして、敷地全体として見れば、不透水層は連続しているというふうに考えてございます。
 なお、先ほど、参考人招致のお話がございましたけれども、例えば、別の参考人招致ということでお呼びいたしました技術会議の安田先生からは、山地の土砂が川で運ばれ海に注ぐときには細かい粘土が堆積する、豊洲の新市場予定地の付近が海になった時代には、海底に粘土が広く厚く水平に堆積したと考えられるとの見解が示されておりまして、この見解は、都の認識と--妥当なものと考えております。
 また、不透水層の厚さでございますけれども、これまでに行いました八カ所の土壌ボーリング調査に加えまして、水道局の水道本管設置や「ゆりかもめ」の整備の際に行った百二カ所の地質調査から、約二メートルから二十メートルあることを確認しているわけでございます。
 先ほど、平田先生のところにつきまして、都側は都合のいい部分を使っているのではないかというご質問がございましたけれども、私どもとしては、この平田先生のところについては、全体をごらんいただければわかるのではないかというふうに思っております。
 確かに平田先生は、科学者として絶対はないという意味で、有楽町が部分的に切れているところがあるかもしれませんという発言はなさいましたが、その発言の後でございますが、地震による断層の可能性はあるかもしれないけど、対策時に底面管理を行って不透水層を確認し、もし亀裂があれば修復すればいいという趣旨の発言をなされておりまして、単に不透水層が連続しているか、連続していないかということを述べたものではなくて、たとえ断層があったとしても、修復すれば全く問題ないという見解を述べられたもので、私にも、対策については全く変える必要はないというようなご発言をいただいております。

○増子委員 今おっしゃったのは、その実態と対策の話で、我々は、実態がどうなっているかというのを質疑で皆さんにお聞きしているわけです。
 平田先生は、明確にどういう地層であれ、完全に連続というのは基本的には考えにくいと。基本的には考えにくいというのは、これは平田先生がおっしゃったことでございます。
 また、私たちは、不透水層より深いところの調査も必要なのではないかと、これまでも指摘をしてまいりました。例えば、私自身が平成十九年十一月の質疑において、粘土層内部の調査の必要性を質問させていただきましたけれど、市場当局は、粘土層は水を通しにくく汚染の可能性が低いため、必要はないと答弁をしていらっしゃいました。
 しかし、豊洲には不透水層内でも汚染されているところがあり、また、五街区のように不透水層が浅いところでは、汚染が検出されても、その下二深度で汚染がないことを確認できていない地点もあります。その結果、場合によっては、不透水層より深いところまでボーリングをして調査をする必要が出てくるのではないかと考えますが、確認をさせていただきたいと思います。

○岡田中央卸売市場長 不透水層より深いところまでの調査のお話でございますけれども、これにつきましては、汚染の土壌あるいは汚染の地下水を除去する前にボーリングで穴をあけると、不透水層を貫通することから、不透水層より上部にある汚染を不透水層の下の層に拡散させる可能性がある、そういうことがあるので実施すべきではないと、専門家会議及び技術会議は指摘してございます。都といたしましても、その専門家会議、技術会議の指摘に基づいて、実施することは考えておりません。
 不透水層が汚染されている箇所ですとか、今お話のございました二深度で汚染がないことが確認できていない箇所、こういったところにつきましては、実際の土壌汚染の対策工事を行いましたときに、深さにかかわりなく、汚染物質が下の方向に向かいまして二メートル続けて検出されなくなるまで、土壌や地下水の汚染物質を確認し、除去してまいります。

○増子委員 今、考えていらっしゃらないということでありますが、しかし、実際には、対策時にはもしかしたら現実に、結果として不透水層より深いところまでボーリング調査をしていく可能性があるというふうに聞き取れました。
 また、市場当局の情報公開のあり方に対しましては、ベンゾ(a)ピレンの問題を公表してこなかったことに象徴されるように、市場関係者や都民は信頼をしていないと思います。
 一月十九日の経港委の参考人質疑でも、平田先生は、ベンゾ(a)ピレンの存在について問われ、なぜ公表しなかったんだということにつきましては、これは東京都といいますか、市場の関係者の落ち度であろうというふうに私は思っていると明確に答えておられます。
 ベンゾ(a)ピレンや不透水層の欠落の問題発覚以降も、一万八千本のくいや埋設物などの問題が明らかになっています。これらの問題はいずれも情報公開請求により明らかになったものであり、豊洲関連の公文書の中には、市民団体や報道機関などから複数回開示請求を受けて、その都度、市場当局が開示をするといったものが少なくありません。
 情報公開条例三十一条第二項では、このような文書については公表するよう努めることとされています。市場当局としては、情報公開請求を受けて、その都度開示に応じるような消極的な姿勢は改めるべきです。いかがでしょうか。

○岡田中央卸売市場長 豊洲新市場予定地の土壌汚染の状況でございますとか、これから行います対策につきましては、情報を積極的に都民の皆様方に提供して理解と協力を得ていくこと、これが非常に重要であると考えてございます。
 都はこれまで、開示請求の有無にかかわらず、豊洲新市場予定地におけます土壌汚染の調査の結果などの情報につきましては、準備ができ次第、ホームページ上で公表してきているところでございまして、例えば昨日の中間のあれにつきましても、職員が本当に徹夜に近い状態で昨日やったところでございます。
 一方、事業の遂行に支障が生じるおそれがある、例えば協定とかいったような文書につきましては、これはその都度判断して、どこまでやればいいかということで対応してございます。ご指摘の複数回開示請求があるからといって、直ちに公表するというものではなく、文書の性格ですとか、内容とか、事業の進捗状況、こういったものによりまして、どこまで開示できるか、その範囲を判断し、開示あるいは積極的に公表していく、こういったものが必要だろうと考えてございます。
 東京都といたしましては、都民の利便あるいは行政運営の効率化に資するというふうに認められるかどうか、こういったことを観点にいたしまして適時適切に判断して、公表にふさわしいものは公表していくなど、なお一層の情報提供に努めてまいります。

○増子委員 なお一層の情報提供にぜひ努めていただきたいと思います。
 この土壌汚染対策では、情報公開だけでなく、クロスチェックもぜひ必要だというふうに思っています。
 既に東京都は、土壌汚染対策法で年四回以上とされている地下水の採取について、毎月実施していくと答弁をされていますが、クロスチェックについては否定的だったと私たちも感じています。
 そこで、二年間のモニタリングについては、関係団体や第三者とともに確認していくつもりがあるのか、見解を伺います。

○岡田中央卸売市場長 豊洲新市場予定地の土壌汚染対策につきまして、土壌、地下水の操業に由来する汚染物質を除去した後、浄化した後でございますが、先ほどご答弁しましたけれども、対策法の区域指定を解除するために、地下水のモニタリングを二年間行うこととしてございます。
 モニタリングにつきましては、リスクコミュニケーションが重要であるとは認識しております。しかし、先ほどございましたけれども、クロスチェックというようなことは考えておりませんけれども、それ以外の方法で何か具体的な方法について、できるかどうか検討してまいりたいと思います。

○増子委員 次に、関係者の合意について伺いたいと思います。
 昭和六十一年一月、当時の鈴木俊一知事は、東京都首脳部会議で、現在地再整備は揺るぎのない東京都の方針であることを決定いたしました。その後、紆余曲折がある中で、平成十年四月に、業界六団体が臨海部への移転の可能性について調査、検討を願いたいとする要望に対して、東京都が、現時点で移転の可能性を見きわめることは困難とした上で、業界各団体の一致した意思等が確認できる文書の提出をと求めました。こうした東京都の求めに応じて、水産仲卸は一票投票を行いましたが、現在地再整備を機関決定いたしました。
 そこで伺いますが、なぜ当時、東京都は業界各団体の一致した意思等が確認できる文書の提出を求めたのか。現在のように業界各団体の一致した意思がないまま移転を進めることは極めて強引と感じますが、見解を伺います。

○岡田中央卸売市場長 過去の経緯でございますけれども、都では、平成十年四月に、業界の六団体からお話のありました要望を受けまして、臨海部への移転の可能性について調査、検討を進めてまいりましたけれども、検討すべき課題が多く、調整を要する関係者も多岐にわたりますことから、移転の可能性を見きわめることは非常に困難な状況にございました。このため、最終的に判断するためには市場業界全体の一致した意思の確認が重要である、こういうことから各団体に文書の提出を求めたわけでございます。
 しかしながら、各業界団体の意思が一致しなかったために、移転の本格的な検討の開始には至りませず、その後、業界団体と都で構成いたします築地市場再整備推進協議会におきまして複数の再整備案を検討いたしました。しかし、この場合でも、いずれの案も、工事の長期化、営業活動への深刻な影響などの問題がございまして、業界委員から要望を受けて、再整備と移転整備の両方を視野に入れながら、さらに協議を進めることになったわけでございます。
 こうして比較検討を行った結果、再整備案はいずれも合意に至りませんで、平成十一年十一月でございますが、現在地再整備は困難であり、移転整備へ方向転換すべきとの意見集約がなされたわけでございます。
 現在ですが、お話の業界六団体のうち、水産の仲卸業者の組合は移転の可否について意見が分かれておりますが、それ以外の五団体、例えば水産の卸ですとか青果あるいは関連事業者、こういった五団体でございますけれども、豊洲への早期移転を切実に希望してございます。それぞれの団体は、構成する事業者、いわゆる組合員の意見を踏まえまして、団体として意思決定をしてございます。
 例えば、先月、水産の卸、青果の卸、仲卸、関連事業者及び買い出し人など業界団体の大多数から都議会に提出された声明文、これの中にも、現在地再整備の議論に立ち戻ることなく、豊洲新市場建設の一日も早い実現を強く望むと明確に述べられてございます。
 また、豊洲新市場の施設計画の策定などに当たりましては、水産仲卸組合も含めた業界団体と都で構成しております新市場建設協議会、ここにおきまして合意形成を図り、それぞれ了解を得ながら進めてきているところでございます。
 このように、都では、業界団体と幾度となく協議を重ねまして、その意向を踏まえた上で豊洲地区への移転整備の方針を定め、連携して計画を推進しているところでございます。

○増子委員 今、経緯のお話がございましたけれども、初めに六団体の合意を求めたのは東京都の側だったということは間違いなかろうというふうに思っております。だからこそ、私たちは各業界の意向調査ということをかねてから求めてきていますけれども、私たちが各業界団体の意向調査を求めたことに対して、東京都は、改めて意向調査を実施し、移転の是非を問う考えはないという答弁をこれまでもいただいています。
 また、東京都は、移転反対を機関決定している築地市場最大の団体である水産仲卸について、移転の可否が分かれていると今もご答弁がありましたけれども、私たちは、今、意向調査すれば、築地に残りたいと考えている仲卸の方の方が多いというふうに感じています。また、青果の仲卸もしかりで、現場からの声を聞く限り、東京都のおっしゃっていることと違うというふうに感じています。
 私たちは、改めて市場関係業者に対して意向調査を実施すべきと考えますが、見解を伺います。

○岡田中央卸売市場長 先生のご質問でございますが、私は残念ながらそういうような意見は余り聞いておりませんものですので、そこについてのコメントは差し控えさせていただきたいと思います。
 築地市場の豊洲への移転につきましては、先生もごらんいただいたと思いますが、さきの参考人招致におきまして、業界団体の代表が、新市場の実現に希望を託し、計画推進に一致協力して準備を進めてきました、業界の多くが意見を一つにしておりますと述べたように、現在、水産の仲卸の団体を除く五団体が一致して新市場建設推進協議会を結成し、そして、水産の仲卸の有志、これは役員でございますけれども、こうした方も含めまして、豊洲新市場建設の早期実現に向け、積極的に取り組んでおるところでございます。
 本年の二月には、現在地再整備の議論に立ち戻ることなく、豊洲新市場建設の一日も早い実現を強く望むとした声明が都議会に提出されておるところでございます。
 都といたしましては、大多数の団体がそれぞれ意思決定をした上で移転整備の意向を明らかにしておりますことから、代表質問でもご答弁申し上げましたとおり、個々の市場関係業者に対しまして改めて意向調査を実施し、移転の是非を問う必要はないものと考えてございます。

○増子委員 市場にかかわる幾つかの団体が、いろいろな形でアンケートをしたりというのは今までもしてきています。ただ、その数字がオーソライズされたものかどうか、私たちも軽々に出さない方がいいかなとも思っております。だから感じているといういい方をさせていただきましたが、意向調査をすれば、それはわかることだと思っておりますので、ぜひよろしくお願いを申し上げたいと思います。
   〔発言する者多し〕

○酒井委員長 ご静粛に願います。

○増子委員 次に、現在地再整備案について伺います。
 そもそも石原知事は、具体案が示されれば検討することもやぶさかではないと述べておられましたが、今回の私たちの代表質問に対して、突然、市場関係者の納得するものでなければ、どのような再整備案も机上の空論にすぎないとスタンスを変えました。市場関係者が納得しないということであれば、現在の移転案だって同じことではないでしょうか。
 知事の発言を聞いて現在地再整備案を記者発表した団体もあり、それを机上の空論と切り捨てるのはいかがなものでしょうか。
 もともと、具体案が示されれば検討することもやぶさかではないと述べていたのは石原知事です。なぜこのわずか数カ月でスタンスが変わったのか、見解を伺います。
   〔発言する者あり〕

○酒井委員長 ご静粛に願います。

○石原知事 この前申し上げたとおり、平成三年から八年まで随分かかって、四百億というべらぼうな金を使って再整備を検討したけれども、結局できないということになったんでしょう。そういう調査も、あなた方、賛成して共同もされたんでしょう。結果、結論が出たんじゃないですか。ですから、私はそういう事実を改めて認識しまして、つまりそれだけお金をかけてやった調査がむだだった、だめだという結論が出ているのに、今さら、じゃ、どういう再整備案が出てくる可能性があるんですか。
 何かあなた方のいい分は、十二年ですか、青島都政の時代に、とにかく豊洲に移行を決めるといって決めた、それからまた事情が変わったというけれども、何の事情がどう変わったんですか。それいってもらわなかったら、再生案なるものの……(発言する者あり)うるさいな。再生案なるものの裏づけってどこにあるんですか。

○増子委員 私たちに基本設計や実施設計を出せといっているのであれば、それは筋違いだと思います。私たちは執行機関ではありません。私たち議会の権能を具体的に示せば、それは条例案の提案や議案の賛否、修正だというふうに思っています。
 また、晴海の都有地について、柳ヶ瀬議員の一般質問に対して、オリンピック・パラリンピック招致本部は、敷地内の道路のつけかえや、オリンピック施設の一部でのふ頭用地、公園敷地の一部を使用することを想定して立候補ファイルを作成したと答えています。
 また、築地市場の移転整備疑問解消BOOKでも、都内の主な大規模用地の状況という資料が付されていて、晴海地区では、オリンピックメーンスタジアム予定地として約三十ヘクタールと記されています。
 こうした東京都の資料をもとに、晴海の三十ヘクタールを活用した再整備案が提示されていることは何ら不思議ではないし、むしろ十五ヘクタールしかないと強弁している東京都の姿勢こそ不誠実ではないでしょうか。見解を伺います。

○岡田中央卸売市場長 今お話の再整備案なるものでございますけれども、都は何ら説明を受けておりません。したがいまして、晴海の三十ヘクタールを活用した再整備案かどうかということについては存じておりません。
 疑問解消BOOKでございますけれども、ここに、晴海地区、約三十ヘクタールと記載があるんですが、この地区の都有地の面積をお示ししたものでございまして、市場移転先の条件である四十ヘクタールに満たないことを示すために参考として記載したものでございまして、この敷地がすべて利用できるといったことを示したものではございません。
 ご指摘の十五ヘクタールは、この都有地のうちに、現在、客船ターミナルですとか、ふ頭、公園、道路などに使用されている面積を除きまして、仮移転先として利用することが可能な用地として想定したものでございます。
 さきにありましたように、オリンピックスタジアムの建設に当たりましては、道路のつけかえ、ふ頭機能の縮小への対応、補助競技場を公園施設と位置づけることが必要となり、そのための詳細な設計ですとか関係機関との調整、都市計画などの変更を行うこととしております。しかしながら、現在地再整備に伴う仮移転では、同様の手続を行いまして都有地のすべてを利用することは実現性がないと考えてございます。

○増子委員 オリンピックでできて市場でできないというのは、私たちはちょっと理解ができません。
 それともう一つ……
   〔発言する者あり〕

○酒井委員長 ご静粛に願います。

○増子委員 現在地再整備を実現するために、今の築地市場から転配送的な機能を移転分散させることについても検討する必要があるのではないかと思っております。
 予特資料によりますと、築地市場の物流は、築地市場から他市場への通過物が全取扱量の約三分の一、卸売場から仲卸の売り場を経由してスーパー、買い出し人等に行くものが約三分の一、卸売り場から直接スーパー、買い出し人等に行くものが三分の一弱という構成になっています。
 また、現在の築地市場は首都圏の基幹市場という位置づけがなされていますが、一方で、築地市場の中には、都内のほかの市場のように、いわゆる地域の、つまり都民の台所としての機能を有しているように思われます。
 東京都は、今の市場機能から転配送的な機能を分散するということについてどのようにお考えか、伺います。

○岡田中央卸売市場長 転配送機能を移転するというようなお話でございますけれども、近年、流通形態といたしまして、生鮮食料品の産地からの出荷は、物流コストを削減する観点から、商品を一括して拠点市場に送りまして、そこから周辺の市場へ転送するという形態をとってございます。
 築地市場は首都圏の中核的な拠点市場でございまして、大都市東京を背景とした市場本来の購買力、これは先生がいわれたとおり東京の台所といったようなものに当たるのかもしれませんが、こうしたものに現在の流通事情も加わりまして、国の内外から大量で多品種の商品が集まってございます。築地市場における集荷量の大きさや品ぞろえの豊富さ、こういったものは、そこにおります仲買の業者ですとか売買参加者にとっての魅力となり、築地市場の活力の源泉となっているわけでございます。この結果、都民といたしましても豊富で多様な商品を手にすることができまして、築地市場の集荷力といったものが、現在、都民の豊かで安定的な食生活につながっているものといえます。
 しかしながら、ご指摘のように、現在の市場機能から転配送機能を分散いたしますと、出荷者にとりまして築地市場に出荷するメリットが少なくなるわけでございまして、築地市場の集荷力が低下し、ひいては築地市場の魅力や活力が減少するおそれがあるものと考えます。
 また、実態といたしまして、卸売市場で取引される商品と他市場への転送品というものは、産地から一つのトラックで運ばれてきているために、転送品を例えば別の場所で取り扱うことになりますと、新たに市場と転送品を扱います場所との間、例えば築地とどこかのところとの間で物流コストが発生いたしまして、築地市場のそれだけ競争力が損なわれる、こういったおそれもあろうかと考えてございます。
 このようなことから、転配送の機能を分散するという考え方につきましては、築地市場が首都圏の中核的な拠点市場として存在している現在の状況から考えれば現実的ではなくて、また、市場関係者からも受け入れられないものと考えてございます。

○増子委員 私は、機能の議論については、機能の分散の仕方次第、提案の内容次第でいろいろな議論ができるはずだというふうに思っております。
 平成十七年十一月に策定された東京都卸売市場整備計画では、取扱数量やそれぞれの市場の果たす役割、機能、立地条件などを考慮し、市場のあり方を検討していくとしていました。この中で、特に大田市場の水産部や足立の水産市場や葛西市場の青果部については、平成十七年十二月九日の経港委での松下玲子議員の質問に対して、それぞれの市場が果たしている役割や機能などを総合的に勘案し、各市場の機能強化、または再編統合など、必要な対策を検討していくと答えています。
 そこで確認ですが、豊洲新市場の建設によって影響を受ける市場、特に大田市場の水産部ですが、こうした市場については再編統合などが検討されることになるのか、見解を伺います。

○岡田中央卸売市場長 平成十七年十一月に策定いたしました第八次の東京都卸売市場整備計画では、豊洲新市場は二十一世紀の生鮮食料品流通の中核を担う拠点と位置づけられておりまして、今お話のございました大田市場水産物部、足立市場、葛西市場青果部につきましては、豊洲新市場の影響を評価し、あり方を検討するとなってございます。
 これは、水産物の市場であります大田市場の水産物部及び足立市場と、豊洲から比較的近い葛西市場の青果部につきましては、豊洲新市場が建設されると取引上の影響が考えられる、こうしたことから、新市場開場後に取引数量の変化ですとか市場関係者の取引動向などを調査して、それぞれの市場が果たす役割ですとか機能などを分析した上で、それぞれの市場のあり方を検討しようとしたものでございます。
 第八次の東京都の卸売市場整備計画は、ご指摘のような再編統合といったものを前提としているものではございません。

○増子委員 仮に豊洲新市場が建設されたとしますと、比較的近い場所にある大田市場の水産部などは極めて大きな影響を受けるものと考えます。このように、市場にとっての立地条件は大変重要であり、現在の築地市場における立地条件、すなわち、大消費地である都心部に存在するということが、他の市場には見られない大きな特性、特徴になっているのではないでしょうか。
 私は、施設整備に当たっては、このようにほかには見られない築地市場の特性、特徴を踏まえて、それを適正に評価していくべきと考えますが、見解を伺います。

○岡田中央卸売市場長 築地市場は、生鮮食料品流通の基幹市場として都民の食生活を支える役割を担ってきておりますが、老朽化や狭隘化が進み、衛生面や物流面で問題を抱えておりまして、施設の抜本的な改善に迫られているところは明らかでございます。このような状況は既に昭和六十年代に顕著になってございまして、このため、平成三年には現在地での再整備工事に着手したわけでございますが、平成八年、中断し、その後、業界団体と何度となく協議を尽くした結果、平成十一年に、現在地再整備は困難であり、移転整備へと方向転換すべきと意見集約がなされました。
 これを受けまして、平成十二年から十三年にかけまして、学識経験者、都議会議員、業界代表、区市長、消費者団体で構成されます東京都卸売市場審議会、ここにおきまして、築地市場が二十一世紀の中核を担う市場であるとともに、都心に集積する飲食店ですとか小売店の仕入れの場でもあることから、広い駐車場や荷さばきスペースを配置できる四十ヘクタールの敷地が確保できること、築地の商圏に近く、機能、経営面で継続性が保たれることなどの条件のもとに、複数の移転候補地を比較検討いたしました。この結果、すべての条件を満たす豊洲地区を候補地として移転整備に向けた検討を進めるべき、こうした答申がまとめられたわけでございます。
 このように、豊洲地区への移転といいますものは、築地市場の立地、特性などを踏まえまして、平成十三年十二月の東京都卸売市場整備計画において最終決定いたしたものでございます。

○増子委員 築地市場は、築地にあってこその築地市場だと思います。また、築地には、築地市場と一体となって発展してきた場外市場があります。新鮮で品数豊富な商品を提供している場外市場は、築地市場と一体となってにぎわいと食文化の拠点を形成しています。また、周辺には浜離宮や汐留シオサイト、銀座や歌舞伎座、新橋演舞場など多くの観光資源が集積し、日本有数の観光エリアを形成しています。
 築地市場の移転については地元中央区は断固反対しており、万が一、市場が移転してしまった場合の次善の策として、築地を継承するプロの小口買い出し人が利用する鮮魚マーケットの設置などを打ち出していますが、これは、食文化の拠点を失うことでこの地域が観光エリアとしての魅力を失うことを懸念しているからです。
 そこで、日本有数の観光エリアにおける築地市場と場外市場とが一体となって形成してきた食文化の拠点としての必要性について見解を伺います。

○岡田中央卸売市場長 築地市場でございますが、今日、新鮮な食材ですとか競りなどの市場の雰囲気を求めて多くの来場者が訪れるようになってございます。このことは、水産物で世界最大級の取扱量を誇りまして、首都圏三千三百万人の消費者に豊富で新鮮な生鮮食料品を安定供給するなど築地市場が持つ本来の活力、これに加えまして、場外市場と一体となったにぎわいなどが人々を引きつけているからと考えられます。
 しかしながら、現在の築地市場といいますものは、施設の老朽化、狭隘化が著しく高度な品質管理が困難など、深刻な課題を抱えておりまして、このままでは市場自体の活力が衰退し、お話の食文化の拠点としての地位も保てなくなるおそれがございます。そのために、一刻も早く豊洲に移転整備し、機能強化を図っていく必要があろうかと考えます。
 豊洲新市場には、築地の伝統と信頼を培ってまいりました卸、仲卸などの市場業者が移るとともに、移転を希望いたします場外市場の方々の要望も視野に入れ、千客万来施設を整備していくことで、築地の食文化の継承ですとかにぎわいを豊洲において創出してまいります。

○増子委員 築地移転によって生じる地域の犠牲や食文化への影響といった、お金では数えられない損失はだれが負担するのでしょうか。
 そして、そもそも市場会計はだれのものなのでしょうか。築地の市場用地はもともと一般会計から現物出資されたものです。これを簡単に現金化して市場の整備費に充てるということには疑問を感じます。
 また、地方から他の地方市場に荷物を転送したり、大手スーパーのために荷物を積みかえたりすることを否定はしませんが、その施設の整備のために、果たして本当に築地という都民の財産を売り払わなければならないのでしょうか。中央卸売市場の機能、役割を考えたときに、私は今の市場財政の枠組みに大きな疑問を感じます。
 昨年の予算特別委員会の私の質問に対して、東京都は、コストの縮減などの努力はもとより、財産の有効活用や適切な使用料水準の維持などに努めていくと答えていましたが、少なくとも私は、施設の機能に応じて国庫補助金の負担割合の引き上げを求めたり、空中権の活用を検討するなど、市場使用料に頼らないさまざまな方策を検討していくべきと考えますが、見解を伺います。

○岡田中央卸売市場長 中央卸売市場会計でございますが、営業収支が長期にわたり赤字体質となっておりますが、保有資金の運用益により経常収支の黒字を確保しているという不安定な状況にございます。今後、低金利の傾向や資金の減少が見込まれることから、運用益に依存する体質から脱却していく必要があると考えてございます。
 こうした状況を踏まえまして、学識経験者や業界団体で構成する、あり方検討委員会を設置し、収入の根幹をなします市場使用料の適正水準について、現在検討を進めておるところでございます。
 また、事業用借地権を活用した市場用地の貸付制度によりまして、大田市場ですとか葛西市場の空き地を荷さばき場として貸し付けるなど、資産の有効活用を現在図っておるところでございます。
 今後、さらなる収入向上を図っていくために、局内にプロジェクトチームを設置するなど組織体制を整えまして、実効性のある方策を検討してまいりたいと考えております。
 なお、お話のございました国庫補助金を取り巻く状況でございますが、市場施設の整備を対象とした農林水産省所管の、強い農業づくり交付金の二十二年度予算でございますが、これは百億円ほど削減されるなど、負担割合の引き上げというのは極めて厳しい状況にあるとは考えておりますが、引き続き、国に対して財政支援の充実を粘り強く求めてまいりたいと考えております。

○増子委員 石原知事は、民主党はもともと市場移転に賛成していたと述べられていますけれども、予算に賛成していたことをもって、もろ手を挙げて賛成したと思われるのは心外です。
 例えば、用地購入費が盛り込まれた二十年度市場会計予算に賛成していますが、採決に当たり、私たちは、豊洲新市場の用地取得について、少なくとも土壌汚染対策法と同等以上の調査を実施することや、土壌汚染問題の解決や関係者の理解がないまま強引な移転を行わないことなどの付帯決議を提案してきました。
 予算成立後、平成二十年五月には、豊洲地区から環境基準の四万三千倍を超えるベンゼンが検出され、都民の不安はますます高まりました。こうしたときに、やはり一度立ちどまって、あらゆる方策を検討すべきだったのではないでしょうか。
 都議選後、石原知事は、必要なら、専門家を入れてもう一回検討したらいいと述べていらっしゃいました。そして私たちは昨年の九月七日、石原知事に対して、検討機関を速やかに設置することを求め、その後も代表質問などにおいて再三求めてきました。
 また、二十二年度予算案についても、平成二十年度の決算委員会を初め、昨年十二月二十一日の二十二年度予算編成に対する要望に際しても、現在地再整備の再検討を求めるとともに、用地購入費など、豊洲移転を強引に進める予算について、安易に計上しないことを求めてまいりました。
 しかし、これら要望を一切聞き入れることなく、今日まで強引に事を運んできたのは石原知事です。
 ここは、立ちどまる最後のチャンスだと思います。私たちは、強引な移転に反対しています。このまま現在地再整備についての話し合いにすら応じようとしない姿勢を貫くのであれば、私たちは、話し合いのステージと時間を用意するためにも、豊洲関連予算については反対せざるを得ないということを申し上げ、次の質問に移ります。
 次に、新銀行東京について伺います。
 四百億円の追加出資の激論が交わされた予算議会から、早いもので三年目の予算審議となりました。
 この間の景気は低調が続き、中小企業は厳しい経営環境の中、真水を求めて、すがる思いで金融機関を駆けめぐっています。こういった経営者の最後のとりでとなるはずの新銀行東京は、今や全くその趣旨を果たすことなく、みずからの再建計画を履行するために苦慮している状況にあります。
 なぜ、こんなことになってしまったのでしょうか。東京都は、その責任の所在を明確にするためにも、今回の銀行からなされた訴訟を待ちに待っていたはずです。その訴訟内容の全容は明らかにされておらず、都民から信託を受け、真意を問うべき議会としても、じれったい限りであります。
 新銀行東京の失敗は、もちろん旧経営陣によるところも大きいとは思いますが、では、旧経営陣を任命した責任について、提訴に至ったこの段階において、改めてその認識を伺います。

○石原知事 あなたのね……
   〔発言する者多し〕

○酒井委員長 ご静粛に願います。

○石原知事 ご静粛に願います。
   〔発言する者あり〕

○酒井委員長 委員の皆さんにはご静粛に願います。ご静粛に願います。
 知事、答弁をお願いします。

○石原知事 委員も、この議会に割と新しい方のようなので、銀行を設置することを提案したときの議論といいましょうか、私の主張をもう一回申し上げますが、念のために。
 青島知事の時代でしたか、一番末端で非常に緻密な金融を担当している信用組合が一部破綻しました。これは、もともと地方自治体が管轄していたものですけれども、国が手を突っ込んできて、金融庁までがこれを掌握することになった。非常に厳しい通達を出しました。
 その特集を、たしかNHKだったと思いますが、やっているのを私、見まして愕然としたんですが、東京の板橋区だったと思いますけれども、そこで、要するに微細な金融で腐心している、ある信用組合の支店長、支店員を入れて三人です。その三人が鳩首して、金融庁が何をいってこようと、とにかくこの企業には融資せざるを得ないだろうという相談をしていた。
 その企業というのは二つありまして、一つは六十代の老夫婦がやっている。もう一つは、七十代の老夫婦と四十代の息子がやっている。しかも、それは非常に大事な、企業の大事な部品をつくっているんですが、機械が古くなってディフェクトが出だした、欠陥品が。ということで、数千万円の機械を購入して、新しい立派な製品をつくるようになった。
 ところが、せいぜい資本金二、三百の会社ですから、その機械のローンを払うだけで債務超過になるわけです。それはもう完全な、金融庁の今度のコードに触れてくるから、これは貸すなといわれても貸さないわけにいかぬだろうと。いかに金融庁をごまかそうかという相談をしていて、それで私、非常に強い印象を受けました。
 それで翻って、次のカットで、時の金融庁の長官が出てきて、その質問を受けたら、何であろうと、国が決めたことに従わない者は、貸す方も借りている方もこの世界から消えてもらうしかない。私は、本当に酷薄な物のいい方だと思った。
 その前に、あなたのご記憶じゃ、ないでしょうけれども、就任してすぐ、アメリカでやっているジャンクボンドのマーケットをつくろうと思って、社債担保証券と、もう一つローン担保証券をつくりまして、結局、随分反対があったけれども、やりましたら、これは一兆円のマーケットになって、八十近い会社が上場までこぎつけたんです。
 一方では制度融資もありましたが、この制度融資も議会の皆さんがいろいろ苦労してつくられたけれども、これだって、焦げつき一千億円を超えているんじゃないですか、今。
 しかし、それでも追いつかないところに銀行をつくろうということでつくりましたが、それぞれの組織には組織の性格に応じた、いろいろ規約があります。規律があります。中には、それが法律で決められている。銀行は特にそうでありますが、新銀行東京の開業時の代表執行役等の旧経営陣の選任については、これはその規則に沿って、当時の担当部署から役員候補者の報告を受け、結局、私がそれを了承しました、候補者について。
 そして最終的には、その取締役会が、新銀行東京の株主総会--執行役について、正規の手続を踏んで新しい役員を了承したわけです。
 去る一月、新銀行東京は、みずから主体的に旧経営陣に対して損害賠償訴訟を提起しました。新銀行東京の経営の悪化の責任の所在については、今後、司法の場において明らかにされることが重要でありまして、この裁判を刮目したいと思っております。
 いずれにしろ、新しい、要するにハイリスク、ハイリターンのマーケットでもカバーできない人たちをとにかく救おうということでつくった銀行で、当初の目的は今、外れていますけれども、しかしやっぱり、これを再生することで、そういう本当にミゼラブルな零細企業というものを救っていく、そういう銀行にこれを再生させていくことが私たちの責任であると思いますし、また力をつけるために、前から申し上げてきました、信用というものが回復されれば、単年度黒字だって回復されれば、これはセカンドステージとして、外国の金融資本などの兼ね合いでいろいろなことができると思いますので、それを期待しております。

○増子委員 今、最終的には、取締役会については、新銀行東京の株主総会だというお話がございました。旧経営陣の任命に際しては、株主総会の議案に対して東京都が機関決定して賛成したわけですから、当然、東京都にもその責任があるものと考えますが、いかがでしょうか。

○前田産業労働局長 株式会社における所有と経営の分離の原則、これに基づきまして、都は新銀行東京の株主として、株主総会において議決権を行使し、旧経営陣に経営のかじ取りをゆだねたものでございます。
 新銀行東京は、みずから主体的に旧経営陣に対して損害賠償請求訴訟を提起しておりまして、経営悪化の原因と責任の所在につきましては、今後、司法の場において明らかにされることが重要と、このように考えております。

○増子委員 石原知事はたびたび、新銀行の旧経営陣による情報の粉飾があった、執行役員と取締役との風通しが悪かった、これが失敗の原因の一つだということを述べていらっしゃいます。
 一昨年の三月二十五日の予算特別委員会で、私たちは、新銀行マスタープランに載っていた執行役候補の人たちについて、どのような契約を結んでいたのかと質問しました。
 それに対して産業労働局は、税務協会における検討の組織の中に、顧問という形でこれらの候補者が契約により採用されたと答弁していました。また、顧問としての契約をするときに、執行役の候補としての立場ということで顧問に就任していただいたとも答弁していたわけですが、改めてこの答弁について確認させていただきたいと思います。

○前田産業労働局長 平成二十年第一回定例会のこの予算特別委員会におきまして、東京税務協会と顧問となられました方々との契約について、税務協会におきます検討の組織の中に、顧問という形でこれらの候補者が契約により採用された、また、顧問としての契約をするときに、執行役の候補としての立場ということで顧問に就任をしていただいていると答弁しております。

○増子委員 また、産業労働局長は、税務協会で専門家たちに委託をした委託契約の書類の中身については、民民の契約なので明らかにはできない旨、答弁をしています。
 明らかにできるかどうかは別にして、顧問という形で執行役の候補者と交わした契約書は、産業労働局で引き継いでいると理解してよろしいのか、伺います。

○前田産業労働局長 今お話しをいただきました資料につきましては、財団法人東京税務協会と民間人との間の契約でございます。その文書については、都が管理すべき対象ではございません。したがって、引き継ぎは受けておりません。

○増子委員 今、引き継いでいないというお話がございましたが、では、どこにあるのでしょうか。
 税務協会が結んだ新銀行東京にかかわる契約書や協定書、覚書、その他一式などについては、産業労働局で引き継いでいないのか、伺います。

○前田産業労働局長 平成十五年六月に、東京都は新銀行の創設に係る調査研究等を東京税務協会に委託しました。
 東京都と東京税務協会との委託契約に関する書類のうち、当該契約に係る成果物、及びこれに付随して作成した参考資料等について、当時の所管局から産業労働局当局は引き継いでおります。

○増子委員 東京都と税務協会が結んだ契約ではなく、税務協会が旧経営陣などと結んだ契約はどうしたのでしょうか。税務協会が当事者となって、東京都以外、特に旧経営陣と締結された書類についてはどこが把握しているのか、伺います。

○熊野主税局長 お尋ねの文書の管理につきましては、当然のことながら、契約の当事者である東京税務協会で行っております。

○増子委員 先ほどの質問で産業労働局は、税務協会での検討組織の中に顧問という形で契約したとか、契約をするときに、執行役の候補としての立場ということで顧問に就任していただいたと答弁していたことを確認させていただきました。
 契約書などの書類一式がない中で、なぜこのような答弁ができたのでしょうか、伺います。

○前田産業労働局長 新銀行の設立が検討されておりました当時、金融の専門家、都や民間からの派遣者とともに、財団法人東京税務協会における検討組織の中に、顧問という形で役員候補者が加わっておりました。また、新銀行マスタープランには、役員候補者のお名前が掲載されておりました。
 こうした事実を踏まえまして、ご答弁申し上げたものでございます。

○増子委員 一昨年三月十一日の予算特別委員会で、山下太郎議員が、旧出納長室や新銀行設立本部、産業労働局、東京税務協会などにおいて、書類の改ざん、破棄はないと断言できるのかと質問したのに対し、産業労働局は、都においては文書管理規程に基づいて適切に管理されていると答弁をしています。
 そこで改めて伺いますが、税務協会においては、契約書なども含めた新銀行関連の書類について、破棄などがないと断言できるのか、伺います。

○熊野主税局長 東京税務協会におきましても、処務規程の中に文書管理に関する定めがございます。それに基づき、適正に処理をしてございます。

○増子委員 今、処務規程に基づいて処理をしておられるというお話を伺いましたが、今のようなこういった状況の中では、関連文書を確実に保管すべきと考えますが、いかがでしょうか。

○熊野主税局長 議会でご要請のあったことにつきましては、その趣旨につきまして東京税務協会にお伝えしたいと考えております。

○増子委員 また、新銀行設立にかかわる文書については、その責任が検証できるように適切な管理を求めるものですが、見解を伺います。

○前田産業労働局長 東京都が管理する文書につきましては、文書管理規程に基づき、適切に管理されております。

○増子委員 今、文書管理規則に基づいて管理しているというお話がございましたが、そうなると、保存年限が終了したものは破棄されるんじゃないか、そういう懸念があります。その責任が検証できるように、必要な保管をすべきだと思いますけれども、いかがでしょうか。

○前田産業労働局長 新銀行東京に関する文書につきましては、都が追加出資をして経営再建中であることや、新銀行東京が旧経営陣に対し損害賠償請求訴訟を提起していることなどを踏まえまして、当局におきまして必要なものは保管しております。

○増子委員 私たちは代表質問において、新銀行東京の失敗を招いた責任について、外部の専門家などを活用し、徹底的に検証すべきだと主張いたしましたが、産業労働局は、その責任については司法の場で明らかになることが重要であり、改めて都が外部の専門家などにより検証を行う必要はないと答弁しています。
 しかし、時間がたてばたつほど、設立当時の契約や書類は、破棄されたり、散逸してしまうおそれがないとも限りません。
 私は、改めて東京都として、早期に外部の専門家などを活用することで、都民の多額の税金を損失してしまった責任を徹底的に検証すべきと考えますが、見解を伺います。

○前田産業労働局長 新銀行東京は、経営悪化の責任について、外部の専門家に委託をしまして、開業前の状況も含め、これまでさまざまな調査、分析を十分に行い、その結果を踏まえて、このたび、旧経営陣に対し損害賠償請求訴訟を提起したものであります。
 新銀行東京の経営悪化の原因と責任につきましては、今後、司法の場で明らかになることが重要であり、都において、改めて外部の専門家などにより検証を行う必要はないものと考えております。

○増子委員 次に、オリンピック・パラリンピック招致について伺います。
 さて、平成十七年に石原知事がトップダウンで打ち出した二〇一六年招致は、残念な結果に終わりました。何が足りなかったのでしょうか。
 国内ムーブメントに関しては、IOCの世論調査で、東京の支持率が五五・五%にとどまって四都市中最下位となり、総会の投票行動にネガティブなイメージを与えたという反省があります。
 このとき、他の成熟国家であるアメリカ・シカゴの支持が六七・三%で一二%、スペイン・マドリードの支持が八四・九%で約三〇%、東京の支持率をいずれも上回っていたことから、招致委員会の報告書の、成熟国家日本の現状から、一つの事柄で圧倒的多数の賛成を得ることはまれであるとの成熟国家を理由とした分析は、トップダウンで始めたみずからの招致活動を棚に上げるものであり、理解に苦しみます。
 そして、知事が旗振りした招致機運の低迷は、招致委員会の分析、日本人の国民性から、招致を実現させようという能動的な行動に直ちに結びつかないことなどに課題があると都も認識しているのか、見解を伺います。

○荒川東京オリンピック・パラリンピック招致本部長 報告書には、確かに、日本人の国民性ですとか、あるいは成熟国家における国民の価値の多様性という記述はございますけれども、よく読んでいただければわかるんですが、これらは、招致機運に影響を及ぼす要因が幾つかありまして、その中の一つとして説明しているのでございまして、それが主たる要因であるかのような記述はしてございません。
 招致機運につきましては、それ以上に、なぜ東京が開催するのかという根本的な問いに対する明快な回答を用意する必要がある、こういうことですとか、あるいはまた今回の場合であれば、環境や平和という理念をより反映した取り組みを検討して、国民の賛同を一層得られるように工夫していくべきであるというふうに総括しております。
 今後は、地域におけるスポーツ振興や、スポーツ界みずからの働きかけを積み重ねることで、オリンピック・パラリンピック招致に対する都民、国民の期待も醸成されてくるものと思います。

○増子委員 国民性が影響を及ぼすといったような認識が、本当に日本独自のものなのか、多角的な視点で検証していただきたいということは申し上げておきます。
 国内ムーブメント推進経費の総額は八十三億八千八百万円、経費全体の五六・五%を占め、このうち都と区市町村によるオリンピックムーブメント共同推進事業は、二百五十六事業、総額九億四千二百万円、千二百七十万人に及ぶ都民が参加したと報告されています。この人数は、都民のほとんどが参加したこととなるわけですが、真夏の納涼花火大会なども含まれています。招致機運を本当に高めたのかどうか、判断がつかないものもあります。
 そして、招致に負けた後のオリンピックに関する都への提言、要望も、否定的と思われる意見が多く存在し続けていることから、都民にとって、事業がレガシーとなり得たかどうか不明です。
 そこで、これらの推進経費の効果を綿密に検証するべきと考えます。例えば、各区市町村などの事業実績報告書を公表して、都民の声などの情報を共有するなど、国内ムーブメント推進に関する総括を一層充実したものとしていくことが重要と考えますが、都の見解を伺います。

○荒川東京オリンピック・パラリンピック招致本部長 これまでも何回も申し上げておりますけれども、ムーブメント推進事業は、招致機運の醸成とオリンピズムの普及を目的として実施したものでございまして、区市町村との共同事業もその一つでございます。
 事業の実施に当たりましては、地元自治体の要望を踏まえまして、アスリートが参加したスポーツ事業や、花火大会などの集客力のある文化イベントと組み合わせをしまして、できるだけ多くの人々に二〇一六年大会の招致をPRするとともに、オリンピズムの普及を図ったものでございます。
 参加者や地元自治体からは、非常によかったという反応が多くございまして、参加した子どもたちからも、将来、オリンピックに出場したい、あこがれの選手に教えてもらってうれしかったと、こういったような喜びが寄せられております。
 こうした参加者の声は、招致活動報告書にも記載しておりますけれども、都のホームページなどでさらに広く都民に公開し、事業の成果を明らかにして、今後の地域スポーツの振興に役立てていきたいと思います。

○増子委員 ぜひ事業の成果の公開を期待しておきたいと思います。
 招致委員会は、二〇一六年招致において、寄附、協賛金が集まらず、電通から六億九千万円の借り入れを行うこととなりました。これは、招致機運の低迷も原因だと考えられます。
 都民からの支持や寄附を集めるためには、知事トップダウンの招致ではなく、都民、国民がみずから望む招致が必要であったと認識するべきだと思います。
 そして、招致委員会がスポーツ振興事業に取り組んでいくならば、既存の東京都スポーツ文化事業団とのすみ分けを考えるとともに、招致委員会が取り組むべきスポーツ振興とは何かを検討していく必要があります。
 都は、役割を終えた官製NPO法人、東京オリンピック・パラリンピック招致委員会を都政にどう位置づけているのか、都の見解を伺います。

○荒川東京オリンピック・パラリンピック招致本部長 招致委員会では、東京、日本のスポーツ振興のため、例えば東京の国際的なプレゼンス向上につながるイベントやシンポジウムの開催、国際スポーツ大会や国際スポーツ会議の招致支援などを民間主導で実施していくことを検討しておりまして、事業計画については、今後の理事会で最終的に決定してまいります。
 既にございます財団法人東京都スポーツ文化事業団は、都の監理団体の一つでございまして、都立のスポーツ施設の運営管理など、財団法人として公益性の高い事業を実施しているのに対しまして、招致委員会は、NPO法人としての特性を生かしまして、民間主導での自由度の高い立場から、東京、日本のスポーツ振興を国際的な視点にウエートを置いて事業を実施していく団体と考えております。
 なお、経済界からは多方面から賛同の意思表明をいただいておりますので、招致委員会の寄附金等が目標に届かなかったことについては、招致機運の低迷というよりは、やはり未曾有の金融危機の影響によるものと認識しています。

○増子委員 寄附金などの目標を達成できなかったことは、委員会の努力不足もあったと真摯に受けとめるべきだと思います。
 そして、金融危機は日本だけの問題じゃないですよ。原因の一つは、招致機運の低迷にあったと考えるべきだというふうに思います。
 次に、国際プロモーションについて聞きます。
 東京は、立候補都市に選定された後、招致に向けて国際プロモーション活動を推進してきました。その中で、海外コンサルタントたちがIOCの世論調査時期を見通すことができなかったことは、大きな失点だったのではないでしょうか。支持の低迷は、IOC評価委員会によって東京の課題とされ、招致における失敗の遠因となったと考えます。
 招致委員会は、コンサルタントに総額十億八千五百八十一万円を投じています。海外コンサルタントを活用しても招致を成功させることができなかった反省点について、都の見解を伺います。

○荒川東京オリンピック・パラリンピック招致本部長 少し海外コンサルタントの役割を述べさせていただきたいと思いますが、海外コンサルタントというのは、過去の招致を勝利に導いた経験を持ちまして、オリンピック招致に有益な情報やIOC委員につながるネットワークを有しておりまして、どの立候補都市も活用しているところでございます。
 特に東京の場合は、過去の招致活動のノウハウの蓄積や継承が必ずしも十分でないという中で、近年の大会招致を熟知している海外コンサルタントを国際プロモーション活動などに活用したものです。
 例えば、個々のIOC委員の行動や考え方などについて、コンサルタントから提供された情報をもとにしまして国際競技大会などの機会に面会するなど、効率的なロビー活動を実施することができました。
 加えて、プレゼンテーション制作に関するアドバイス、スピーチの技術的な指導、IOCから高く評価される英語、フランス語表現など、彼らのサポートにより、多くの成果が得られたと思っております。
 しかしながら、お話のありましたIOC世論調査の実施時期などにつきましては、経験あるコンサルタントをもちましても収集困難な情報でございました。
 今回の国際プロモーション活動は、海外コンサルタントに多くを頼らざるを得なかった部分もありますが、今回の活動の経験を生かしまして、次回の招致活動では、より低い経費で高い効果を上げることができると考えております。

○増子委員 また、IOC総会での投票結果、東京の第一回目の得票数が二十二票、二回目の得票が二十票に対する分析も不十分だと考えます。
 投票直前のIOC総会のプレゼンテーションにおいては、十分間の映像作成費が都議会で再三指摘されてきましたが、プレゼンテーション関係費用にも注目しました。都に聞いたところ、スピーチ原稿の助言や翻訳費用、三十五分間の背景スライド作成費、リハーサル関係費、そしてプレゼンテーション総合監修費などの総額は二億七百十四万円に上るということです。
 IOC総会のこれらの経費は、都が負担し、都民の負担となっていますが、これらの金額は妥当と考えているのか、都民への説明が必要です。都の見解を伺います。

○荒川東京オリンピック・パラリンピック招致本部長 コペンハーゲンでのIOC総会は、四都市が横並びの状況の中で、プレゼンテーションにより雌雄を決する最後の公式行事となったものでございます。このため、東京は、総力を挙げてプレゼンテーションの準備を行いまして、万全の体制でIOC総会に臨みました。
 ご指摘のスピーチにつきましては、ロンドンで招致をかち取った経験を持つ海外コンサルタントから、スピーチ原稿の作成を初め、ジェスチャーなどの表現力を含めて事細かにアドバイスを受けました。その費用については、今回の招致活動で登用した海外コンサルタントの契約実績を比較して、適正に積算したものでございます。
 また、リハーサルの実施につきましては、現地コペンハーゲンにおいて、本番さながらの環境を整えて、プレゼンターが昼夜を問わず訓練できるように独自に会場や必要機材などの舞台装置を用意しまして、万全の準備をしました。この費用については、現地での物価水準や評価委員会対応、それからローザンヌでのテクニカルプレゼンテーションなどの契約実績も踏まえて、適正に積算したものでございます。
 プレゼンテーションを含め、IOC総会の活動内容については、報告書で一章を設けまして詳しく述べて、都民の皆さんに理解をしていただけますように工夫をしております。
 なお、当該業務委託先業者と減額交渉を行いまして、当初予定から約五千万円減額をしております。

○増子委員 今、プレゼンテーション関係費、見積もりが妥当だと述べておられますが、都が電通に減額交渉を行った結果、五千万円も値引きされたというお話がございました。そうだとすると、もとの見積もりは何なのかと思いますが、この減額となったことの説明をお願いしたいと思います。

○荒川東京オリンピック・パラリンピック招致本部長 言葉が足りませんでした。
 減額となりましたのは、当初の見積もりは適正でございましたけれども、歳出を抑制する必要があったため、相手方と交渉しまして、状況を理解いただきまして、協力いただいた結果でございます。

○増子委員 IOC委員百六人のうち、知事は、ローザンヌでのテクニカルプレゼンテーションやシンガポールでのOCA総会、ベルリンでの世界陸上、そしてコペンハーゲンでのIOC総会などで六十一人のIOC委員に面会をされました。そして、他の約四十人も含めたIOC委員には、竹田JOC会長など招致関係者が手分けをして関係構築に当たったと聞いています。
 こうした国際プロモーション活動を行った結果、東京がIOC総会で獲得した得票数について、JOCはどう分析し、どう評価しているのかを把握しているのでしょうか。見解を伺います。

○荒川東京オリンピック・パラリンピック招致本部長 しっかり把握をしております。
 報告書作成委員会には、JOCから、会長、副会長、理事がメンバーとして参加しておりまして、報告書を作成する過程で、IOC総会において獲得した東京の得票数について分析を行っております。
 それによりますと、第一に、今回立候補の四都市は大陸ごとに分散しており、投票一回目の得票数も、各都市のIOC委員の勢力を反映しまして、例えば東京とリオデジャネイロの差が四票しかないなどの拮抗した結果となっております。
 第二に、東京が獲得した二十二票は、主にアジア、アフリカ票であったと想定しており、しかも、当初最大のライバルであったシカゴを敗ったことで、一定のロビー活動の成果が上がったものというふうに考えております。
 しかし、第三に、南米初のリオデジャネイロが得票数を大幅に伸ばし、またマドリードが一回目の基礎票を手がたくキープして、ともに決選投票まで進んだのに対しまして、東京が二回目でシカゴ票を取り込むことができなかったのは、IOC委員への招致活動の不足が原因であり、東京の反省点と見ております。
 なお、今回票を投じてくれた二十二人のIOC委員との関係は日本スポーツ界の財産であり、その関係を今後とも維持発展させていくべきと考えております。

○増子委員 知事は、招致失敗の総括として、IOCや国際競技連盟の要職に強力な人材を送り込まねば、日本の招致は不可能と答えました。
 しかし、知事自身、敗れた東京招致の責任者としての自省の言葉がありません。リオのヌズマン会長のように国際プロモーション活動に専念できず、国際スポーツ界に大きな人脈もなく、知事は最終選考に挑みました。
 一九九五年、ラグビーワールドカップで母国を優勝に導き、ロンドン・オリンピック招致にも尽力した南アフリカの元大統領、ネルソン・マンデラ氏は、スポーツには世界を変える力があります、人々を鼓舞し、団結させる力があります、それは何物にもかえがたいものですと語っています。
 今回の招致では、最高責任者である知事が、このスポーツの力を信じて招致を推進させてきたのか、また、国内外であらゆる努力を惜しまずに取り組んだのかどうかが問われています。招致に敗れた今、招致委員会会長としての役割は、改めてどうあるべきと認識しているのか。知事自身は、汗をかき、その役割を十分に果たしてきたと考えておられるのか、知事の見解を伺います。

○石原知事 東京招致の責任者としての自省の言葉がないといわれましたが、それはどういうことがあなたの満足する自省になるんでしょうかね。私が泣いて百回もごめんなさいということをしても、自省の言葉にならないと思いますね。
 先ほど招致本部長もいいましたけれども、私たちは、やはり得るべき情報を得ることができなかった。情報を得ずに戦った。太平洋戦争の末期の日本の軍隊みたいなところがちょっとありましたな。
 それでやっぱり、IOCなるものは非常に見えにくいメカニズムで動いているということを、実は終わった後です、いろんな情報を親身になって伝え、同情してくれる人から知ったことで、なるほどなということで悟りましたが、本来ならば、オリンピックに関する日本の権威であるJOCがそういったものを熟知していて、そういうものを私たちにも伝えて、東京は素人ですからね。とにかく、肝心な財政を補てんする東京にそういう情報を要するに熟知させることで私たちは十全の戦いができたと思いますけれども、残念ながら、そういう意味では、情報というものが枯渇していて、戦うべく戦えなかった。
 例えば、ロゲ会長は、ドーハその他幾つかの、まあマイナーな候補地が落ちたときに、もうここまで来たら東京とシカゴでいいじゃないかと最初いっていたそうですが、それが途中で変わった。なぜ変わったかというと、これはIOCの中の、ロゲ会長と、オリンピックを非常にコマーシャライズした、ある意味で成功させたサマランチという前会長の個人的な確執がありまして、こういった、要するにIOCの中での政治抗争というものが実はいろんな形ではね返ってきた。そんなものを後になって知らされても、私たちは何の役にも立たない。
 そういう情報を私たちは摂取して、要するに陰も陽も心得たことで全面的な戦いができるわけでありまして、そういう反省は私は十分しましたし、それをあなた方に伝えることが、私は自分の大きな自省だと思っております。
 それから、人の失敗をあげつらってじゅくじゅくいじめるのも、エクスタシーがあるかもしれぬが、余り後味のいいものじゃないと思うね。大体民主党は、これからいつか将来、日本のためにオリンピックを持ってこようという気持ちがあるんですか、ないんですか。

○増子委員 結果として、残念ながら知事は、東京の招致活動のシンボル……
   〔発言する者あり〕

○酒井委員長 ご静粛に願います。

○増子委員 結びのロゴのように、都民、国民、そして世界を結ぶことが残念ながらできませんでした。今後も総括の議論を行っていくことを述べて、次の質問に移ります。
 次に、医療について伺います。
 昨年もこの予算特別委員会で取り上げた女性医師の継続、復職支援についてであります。
 平成十八年の医師・歯科医師・薬剤師調査では、全国ベースで、三十九歳以下の女性医師が多い上位十科目に小児科、産婦人科、産科などが入っており、約四割から五割強を女性が占めています。この女性医師たちが出産を契機に退職してしまうと、近い将来から、当分は医師不足が進行していくことにもなりかねないと指摘をいたしました。
 平成二十年の同調査の結果が出ました。小児科、産婦人科、いずれも三十九歳以下の女性医師の割合がふえております。これが、さらに若くなって三十五歳以下で見ると、もう六割以上という診療科もあります。唯一下がっている産科も、男性医師が減り、女性医師はもっと減っているということでパーセンテージが下がっているという状況です。ますます女性医師の継続、復職支援が重要性を増しているといってよいかと思います。
 そこでまず、都内医療機関、特に小児科、産科、産婦人科における女性医師の状況について伺います。

○安藤福祉保健局長 都における医療施設従事医師のうち、女性医師の数と割合でありますが、平成二十年十二月末現在で、九千四十一人、二五%であります。
 平成十八年の数字になりますが、各診療科における女性医師の数と割合は、小児科は一千七十三人、二八%、産科は三十八人、三二%、産婦人科は三百九十八人、三一%となっております。

○増子委員 今、都内で医師不足がいわれている産科、産婦人科、小児科の年齢別数値を見ても、平成十八年度、三十九歳以下の年齢層で女性医師の割合が高くなっています。
 この統計は五歳刻みで年齢別の医師数をとっていますが、小児科が一番顕著です。三十九歳以下四〇・二%、三十四歳以下四六・二%、二十九歳以下五五・二%と、若くなればなるほど女性の占める割合が高くなってきます。このことは東京都としてもご承知のことと思います。そういう中でいうと、まさに待ったなしの状況であると思います。
 昨年は、事業所内保育所の設置主体が保育事業者であっても、医療機関と契約して保育を行う場合も補助対象とする、これで必要なときに事業所内保育を提供できるようになるとの答弁をいただきました。では、このような事業所内保育所はどのぐらいできたのか、伺います。

○安藤福祉保健局長 最初に全体状況を申し上げますと、都が補助をし、医療機関が設置しております事業所内保育施設は、平成十九年度の一施設から平成二十一年度は八施設に増加するなど、設置が進んできておりますが、いずれも医療機関がみずから設置するものであり、お話の保育事業者が設置主体となった実績は、今までのところございません。
 多様なメニューを用意すると効果があるものと思いますので、引き続き事業の積極的な推進に努めてまいります。

○増子委員 残念ながら、実績は今までのところまだないということでございます。
 また一方、夜勤や長時間労働などさまざまな課題への対応を図るために、短時間勤務の導入や当直体制の見直しなど、女性医師の働きやすい環境整備を支援するとのご答弁もいただいております。この制度の導入、利用実績はどうなっているのか、伺います。

○安藤福祉保健局長 都は、平成二十年度から、救命救急センターや周産期母子医療センターなどを対象に医師勤務環境改善事業を実施いたしまして、女性医師の定着、再就業に取り組んでおります。
 平成二十年度は、短時間勤務など勤務環境改善については十四病院、再就業支援については三病院で取り組みを行いました。
 平成二十一年度は、勤務環境改善については二十二病院、再就業支援については三病院で取り組みを行っているところであります。

○増子委員 今お聞きする限り、十分に足りているというような状況には至っていないようだと思いました。医師の仕事の特殊性、あるいは待機児童の増加ともあわせて考えますと、既存施策に加えて、もう一歩踏み込んだ支援策を検討していただきたいと思っております。
 例えば、医師専用保育所というものがあります。ここは、病児、病後児保育、月曜から土曜の朝七時から夜八時までの開園、突発的な延長保育への対応など、医師の仕事をサポートしようという女性医師がみずから園長となって開設をしている保育所であります。
 出産後の復職時や子育て中の研究職医師のニーズヘの対応として、週二、三回の契約や、出産前から入所予約を受け付け、仕事復帰の調整がしやすくなるように配慮をしています。
 事業所内保育所や院内保育所がない病院勤務の医師にとっては大変貴重であり、医師をサポートするような保育所をもっとふやしていくことが必要だと考えます。
 私も視察をさせていただいた施設がございますが、園長さんによると、都の認証保育所の基準もクリアするようにつくってあるとのお話でありました。非常口、非常階段を新たに設置を行って二方向避難路を確保したとのことで、厨房施設や病児保育室への二重扉の設置など、施設面も充実しています。
 この保育所は、週六日、十三時間で、食事、おやつ代込み二十万円の保育料です。この金額を聞いて、やはり医師はお金があるのだなと思われたでしょうか。しかし、若い医師にとっては、やはり大変な負担だということでした。
 では一方、保育所の運営費というのは、認可、認証、保育室でそれぞれどのようになっているのか、伺います。

○安藤福祉保健局長 保育所の運営費は、補助金と保護者が負担する保育料で賄われておりますので、これをベースに計算をいたしますと、例えば定員三十人程度の施設の場合、単純に平均いたしますと、児童一人当たりの概算で、認可保育所、認証保育所がともに十六万三千円、保育室が十一万四千円程度となります。

○増子委員 なかなかきれいに比較できる数字が出ませんでしたけれども、認可保育所について今お答えをいただいたのは、国の基本的なフレームでの運営費単価だけで、東京都では、ほかに都独自の補助金、子育て推進交付金を支出しています。さらに、各区市町村が法定外負担金として一般会計から補てんしている補助額、特別保育などの各種補助金は入っていない額かと思います。また、そのほかに、施設設備の整備費補助金は別に交付されています。
 また、実際の利用時間は人によって異なるのですが、紹介した保育所の保育時間は、フルに利用して月三百十二時間、認可保育所が延長保育一時間使っても二百四十時間くらいですから、結構長いと思います。
 認可保育所などは十六万三千円プラスアルファの公費が投入されていますが、この保育所はすべて保護者負担で賄っているわけです。月額二十万円の保育料をいただいても、設備投資にかかった資金は回収できないとのお話でした。
 都として、何らかの支援ができないということはないと思いますけれども、医師確保の観点から、事業所内保育所等がない病院勤務医師への保育所利用支援を求めるものですが、所見を伺います。

○安藤福祉保健局長 お話をいただきました保育施設は、医師という特定の職業に従事する方の子どものみを対象とするものでありまして、現行の、保育に欠ける、あるいは保育を必要とするとされますすべての児童を対象としております保育施策の中で対応することは困難だと思っております。
 なお、具体的な事例として引かれました施設は、保育サービスの提供にあわせまして、日々の日課の中で、専門家による英語、アート、リトミックなどの幼児教育も行っておりまして、保育料金についても、これらのサービスを含め設定されているものというふうに考えられるところであります。
 都は、一般の保育施策のほかにも、医療従事者の確保を目的といたしまして、事業所内保育施設や院内保育施設を設置する医療機関への補助を行っており、また、これらの施設におきましては、ご紹介のありました保育所で行っている幼児教育等のサービスをつけ加えることを否定するものではございませんので、こうした事業を積極的に活用していただければというふうに思います。
 都といたしましては、事業所内保育等への支援に加えまして、交代制勤務や短時間勤務の導入、女性医師の復職研修など、病院の取り組みを支援する医師勤務環境改善事業を引き続き実施いたしまして、総合的な医師確保策を進めてまいりたいというふうに思います。

○増子委員 今私が申し上げたような内容も含めて、ぜひ多様な、さまざまな角度から医師確保のために支援をしていただければありがたいと要望を申し上げておきたいと思います。
 続けて、チーム医療の推進について伺います。
 代表質問では、民主党も政策的に推進してきたチーム医療、ナースプラクティショナー、この後はNPとさせていただきますが、これを都の医療政策においても積極的に導入していただくことを求めました。
 本日は、都立病院における今日的な医療への取り組みの一環としてのチーム医療、その一員となる看護人材の育成推進という観点から伺います。
 医師の養成をふやしたといっても、全国で年間三百六十人、都内で三十五人です。しかも、その方たちが医師になり、その後、現場を担うまでには、あと十年以上かかるわけです。専門看護師、認定看護師、日本版NPなど、専門性を高めた人材の活用は、医療崩壊を食いとめていく上で重要な役割を果たすと考えられます。
 高齢化が進み、生活習慣病や合併症を持つ患者が増加する中で、都立病院においても、複雑高度化した疾病構造に対応していくことが求められます。そのため、各分野のスペシャリストが相互に連携しながら治療に当たるチーム医療がますます重要となってまいります。チーム医療の推進には、医療人材の中で多数を占める看護師の役割は特に重要であり、専門職として一人一人が質の高い看護サービスを提供できる能力を身につける必要があります。
 そこで、都立病院においては、チーム医療を進めるに当たり重要な役割を果たす看護師の養成にどのように取り組んできたのか、伺います。

○中井病院経営本部長 都立病院では、看護人材育成のための研修体系であるキャリアパスを策定し、一人一人の習熟度に応じた教育、指導を行っております。
 また、都立病院が持つ高度な医療機能を十分発揮していくためには、専門分野において卓越した看護実践や指導、コンサルテーション能力等を習得した看護師である専門看護師や認定看護師の存在が不可欠であります。
 このため、都立病院では、キャリアパスの一環として特別コースを設置し、研修生を大学院等に派遣することにより、専門分野においてリーダー的役割を果たす専門看護師及び認定看護師を積極的に養成してきております。

○増子委員 積極的に取り組んでいただいているということでございますが、チーム医療を進めていく上で、専門看護師や認定看護師など、核になる看護人材の育成が不可欠です。都立病院が組織を挙げて専門看護師及び認定看護師の養成をしていることは評価でき、今後、その能力を発揮し、ますます活躍していただきたいと思います。
 そこで、都立病院において、専門看護師や認定看護師はチーム医療の現場でどのように活躍しているのか、その具体例を伺います。

○中井病院経営本部長 駒込病院の緩和ケア医療を例に挙げますと、主治医を中心に、がん性疼痛看護認定看護師がコーディネーターとなって、緩和ケア医あるいは神経科の医師、また、がん薬物療法の認定薬剤師、その他専門家により緩和ケアチームを構成してまいります。こうした形で、患者さんによりよい高度な医療が提供できているわけでございます。
 また、このほかにも認定看護師は、病棟スタッフをサポートするコンサルテーションや、他施設からの緩和ケア医療相談にも対応しております。
 こうして、高度な知識を有する看護師がその専門性を生かしながらチーム医療のかなめとなり、都立病院の医療の質や患者サービスの向上、そして病院経営の改善に大きく貢献しております。

○増子委員 専門看護師や認定看護師の活躍によって、やはりチーム医療の効果が上がるということもわかってまいりました。都立病院でも、認定看護師など専門的能力の高いナースの育成、活用に取り組み、医療の質向上や病院経営の改善に結びついてきているということで、さらに一層の取り組みが必要だと思います。
 日本版NPは、医師の包括的指示のもと医療行為を行うことを前提に、既に全国各地の大学院に養成課程ができ、既に卒業生を輩出しているところもあるようです。
 都立病院は、過去、七対一看護の導入や臨床研修医制度の変更に多くの大病院が素早く対応したのに比べて出おくれ、深刻な医師、看護師不足に陥ったことがあります。都立病院においても、制度化に合わせて、NPの養成、活用、そして、その職務に見合った処遇についても迅速かつ積極的に対応していくよう強く求めておきます。
 次に、防災対策について伺います。
 都市整備局の実施する耐震改修促進事業では、昨年十一月の局要求では約三十四億二千万円が要求されていましたが、査定の結果、約二十四億四千万円もの大きな減額がされ、予算案では要求額の約三割弱に当たる約九億八千万円しか認められていません。
 減額となった根拠としては、建築物の耐震化助成制度の利用が進まないことから、予算の執行率が上がらず、予算だけ確保しても仕方ないというような判断があるのだろうと推測をしてはおります。
 そこでまず、耐震改修促進事業が大きく減額となったその理由について伺います。

○河島都市整備局長 平成二十二年度予算案の策定に際しましての局見積もりでは、耐震改修促進計画に定める達成目標を踏まえた年次計画に基づき行っております。
 今年度は、耐震改修促進事業の進捗を図るため、五月に総合相談窓口を開設するとともに、八月から緊急輸送道路沿道建物へのローラー作戦を始めるなど、新たな施策に精力的に取り組んだ結果、成果が出てきておりますが、開始後間もないため、顕著な実績を上げるには至っておりません。
 このような状況もございまして、平成二十二年度予算案は、二十一年度と比べて、予算総額は減額となったものの、木造住宅の耐震診断助成や、緊急輸送道路沿道建物を対象としたローラー作戦など、施策の重点化を図る観点から必要な予算は、件数の拡大あるいは増額を図っております。
 今後とも、限られた予算を効果的かつ効率的に活用し、耐震化の促進に取り組んでまいります。

○増子委員 耐震化助成制度の利用がなかなかうまく進まないということで、予算の執行率が低いことが一つの大きな理由とのことですけれども、緊急輸送道路沿道建築物と木造住宅の耐震化事業について、平成二十年度の耐震診断、補強設計、耐震改修の利用状況はどのようであったのか、予算で計画していた件数に対する利用件数と予算執行率をそれぞれ伺います。

○河島都市整備局長 緊急輸送道路沿道建物の助成につきましては、平成二十年度予算では、耐震診断、補強設計を百十五件、耐震改修を十六件としておりましたが、利用実績は耐震診断四件でございまして、予算執行率は約〇・五%でございました。
 同様に、木造住宅の助成につきましては、耐震診断、補強設計を一千五百件、耐震改修を五百件としておりましたが、利用実績は、耐震診断、補強設計が二百九十六件、耐震改修が五十五件でございまして、予算執行率は約一〇%でございました。

○増子委員 いずれも大変執行率が低いということですが、この耐震改修促進事業の中で、木造住宅の耐震化のための助成制度では、局要求では、耐震診断、補強設計が約二千戸分、耐震改修が約六百戸分が要求されていましたが、予算案では、耐震診断、補強設計が三千五百戸にふやされ、耐震改修は逆に三百戸に減らされています。このように予算案で計画戸数を変更した理由は何だったのか伺います。

○河島都市整備局長 平成二十二年度の木造住宅の耐震化助成につきましては、区による建物所有者への戸別訪問等に対する支援の強化など普及啓発策の充実により、耐震診断、補強設計の大幅な進捗を見込んで三千五百件といたしました。
 また、耐震改修につきましては、耐震診断の実施後、その結果を踏まえ行われるものでございまして、改修に至るまでには一定の時間が必要となります。このため、平成二十二年度は三百件といたしましたが、今後、計画の最終年度に向かって件数は伸びていくものと考えております。

○増子委員 要求段階では、さきの計画戸数に対して、補助上限額をそれぞれ掛け合わせた一億七千六百万円が要求されていましたが、これまでの耐震化助成の予算計上の仕方を踏襲するならば、耐震診断、補強設計三千五百戸、耐震改修三百戸にそれぞれ補助上限額の二万五千円、二十一万円を掛け合わせた合計一億五千万円となるはずだと思いますが、予算案の九千百万円との約六千万円の乖離はどのように生じたのか、予算案での見積もりの根拠について伺います。

○河島都市整備局長 平成二十一年度までは、都の助成制度における一件当たりの補助上限額を基準といたしまして予算を積み上げておりましたが、事業開始から三カ年が経過したことから、平成二十二年度予算案では、実績に合わせて予算見積もりの方法を変更しております。
 具体的には、平成十八年度からの過去三カ年間の助成実績から算出した一件当たりの都による補助の平均金額、すなわち、耐震診断で一万二千円、耐震改修で十六万三千円をもとに予算案を計上したものでございます。

○増子委員 ところで、木造住宅の耐震化助成の実施について、平成十九年十二月に策定された「十年後の東京」への実行プログラム二〇〇八や平成二十年十二月策定の「十年後の東京」への実行プログラム二〇〇九では、耐震診断や耐震改修を年度ごとに何件実施するのか、年次計画が示されていました。
 ところが、昨年十二月策定の「十年後の東京」への実行プログラム二〇一〇では、この数字が消えてしまっております。余りにも実績が上がらないために、目標の数値を示すのが恥ずかしくて消してしまったのではないかと思うくらい、非常に後ろ向きな印象を持ちます。
 実績は実績として示すとともに、目標についても、これまでどおり明示すべきであったと考えますが、所見を伺います。

○河島都市整備局長 「十年後の東京」への実行プログラム二〇〇九では、木造住宅、マンション及び耐震シェルターの三つの施策を項目立ていたしまして、それぞれの助成予定数を年次計画として定めておりました。
 一方、実行プログラム二〇一〇では、この三施策に加え、優遇税制なども含め、戸建て住宅やマンションの耐震化という一つのくくりに再構築しております。
 あわせて、年次計画を変更し、現状の耐震化率七六%と、三年後の目標耐震化率八四%を明示するとともに、それを達成する手段として、耐震診断、改修助成、優遇税制といった主な施策を明らかにいたしました。
 耐震化を進めるためには、これらの取り組みに加え、防災都市づくりなどのさまざまな施策を重層的に実施して目標達成を目指す必要がございます。
 今後とも、実行プログラム二〇一〇を踏まえ、耐震化に積極的に取り組んでまいります。

○増子委員 今、積極的に取り組むというご答弁がありましたので、ぜひ頑張っていただきたいと思います。
 先日の代表質問において、木造住宅の耐震化助成の対象が、防災都市づくり推進計画で指定された整備地域に限定されていますが、地震に関する地域危険度測定調査報告書で建物倒壊危険度が五である八十四地域のうち、二十三地域が整備地域に含まれていないことを指摘し、これらの地域も対象に含めてはどうかと提案しました。
 一方、火災危険度が五である八十四地域について見ると、整備地域に含まれていない地域は、建物倒壊危険度が五で整備地域の対象外となっている地域の約半分、十二地域となっています。
 これは、整備地域の選定基準が、地域危険度五や火災危険度五に相当していることに加え、地域での老朽木造建物の割合が高いこと、平均不燃領域率が低いことを加味していることから、どちらかというと火災に弱い地域の方が整備地域に含まれやすいという傾向があらわれているのではないかと考えています。
 しかし、一般都民の感覚からすれば、自分の家が建物倒壊危険度が高い地域にあるのに、あるいは火災危険度が高い地域にあるのに、なぜ耐震化助成の対象とならないのか、釈然としないのではないかと思っています。
 木造住宅の耐震化助成制度の対象の拡大は、こうした都民の素朴な疑念を払拭し、制度により理解が得られると同時に、本来の趣旨からは外れますけれども、予算の執行率の上昇にも寄与することが期待できるのではないかと考えます。
 そこで、木造住宅の耐震化助成制度の対象地域を、現在の整備地域に加え、整備地域に指定されていない建物倒壊危険度五の地域と火災危険度五の地域をすべて対象とするよう拡大してはどうかと考えるものですが、改めて見解を伺います。

○河島都市整備局長 都の木造住宅耐震化助成は、特に老朽化した木造建築物が集積した区域が連担するなど、震災時に大きな被害が想定される整備地域を対象としております。
 この地域は、震災時に住宅が倒壊した場合、道路閉塞や出火により避難、応急活動が妨げられるとともに、大規模な市街地火災につながるおそれがあるため、公的助成を行っているものでございます。
 こうした重点化の考え方は、平成十九年三月に定めた東京都耐震改修促進計画で定めているところでございまして、お話のように、整備地域外にも助成対象地域を拡大すると、限られた財源が薄く広く分散されることになると考えております。
 都としては、財源を効率的、効果的に活用する観点から、今後とも、重点的に取り組む必要のある整備地域に的を絞って木造住宅の耐震化助成を行ってまいります。

○増子委員 昨年の予算委員会では、建物倒壊危険度と火災危険度がともに五である地域の約四分の一が整備地域に指定されていないことを指摘させていただきました。
 これに対して、ことし一月に改定された防災都市づくり推進計画では、こうした地域はほぼすべてが整備地域に指定されました。この点については私たちも評価しています。
 財源を効率的、効果的に使いたい、そのためには的を絞る必要があるんだという説明は一定の理解をさせていただきますが、先ほども申し上げましたように、建物倒壊危険度が高い地域なのに、あるいは火災危険度が高い地域なのに、どうして耐震化助成の対象になっていないのかという都民の素朴な疑問に対して、一々、技術的な説明をしなければならないというのは不自然なようにも思います。
 仮に私たちの主張するように拡大するとしても、その対象は、都内の市街化区域全五千九十九地域の中のたった三十四地域だけの話でありますので、今後ぜひご検討いただきたいと要望をさせていただきます。
 次に、景観まちづくりについて伺います。
 「十年後の東京」への実行プログラム二〇一〇では、景観まちづくりに関連して幾つかの新規施策が盛り込まれており、その実現に向け、平成二十二年度予算案でも新規事業としての予算が計上されています。
 都市整備局予算では、歴史的建造物を中心とした景観形成事業が新規で五千万円計上されています。これにより、実行プログラムで示されている仮称歴史的景観形成ファンドの創設を進めていくものと理解しています。
 まず、この歴史的景観形成ファンドについて伺いますが、現段階ではどのような内容とすることを考えているのか伺います。

○河島都市整備局長 地域の魅力を特徴づける歴史的景観を形成していくためには、歴史的建造物の保存や修復を社会全体で応援することが重要でございます。
 こうした趣旨を踏まえ、このたび創設するファンドでは、都などの資金に加えまして、都民や企業から寄附を募ることとしております。
 このファンドを活用して、都が選定する歴史的建造物のうち、民間が所有するものを対象に修繕に要する費用の一部を助成し、建造物の保存を着実に進めてまいりたいと考えております。

○増子委員 また、建物の修繕費用に対して一部を助成するということですが、歴史的建造物に価値を認める一方で、建物所有者に対しては保存に協力を求めるとともに、建てかえの抑制になりかねないわけでありますから、ファンドの制度を検討するに当たっては、所有者にとって使いやすく利用しやすい制度とすべきだと考えますが、所見を伺います。

○河島都市整備局長 都による歴史的建造物の選定は、建造物の現状を保存するだけではなく、利用し続けることによって、建造物をまちに溶け込ませ、地域の顔として育てていくことに意義がございます。
 このため、ファンドの制度の検討に当たりましては、歴史的建造物としての価値を尊重しつつ、修繕の種類や方法に柔軟性を持たせた使いやすい仕組みとしていくことが重要でございます。
 こうした点を踏まえ、今後、他都市での事例なども参考にいたしまして、制度の詳細について十分な検討を行い、建物所有者にとって利用しやすい制度としてまいります。

○増子委員 私たちは、歴史的建造物の保存、活用を進めることに異論はありませんが、建物所有者の善意に頼るだけではなかなか進まないと思います。
 建物所有者の立場からすれば、修繕費用だけを助成してもらっても困る、修繕後の維持管理費用の負担や固定資産税、都市計画税の負担などを考えた場合に、建てかえた方が明らかに経済的に有利なケースが多いとも聞いており、今後の課題と考えますので、ぜひこれらの点についてもインセンティブが高まるような仕組みをご検討いただきたいと要望しておきます。
 ここまでは個別単体の歴史的建造物について伺ってまいりましたが、私たちは、せっかく保存した歴史的建造物をまちづくりの中で活用していくことも重要だと考えています。
 このことに関連して、産業労働局予算では、歴史的建造物等を生かした観光まちづくりが新規に一千八百万円計上されています。これは、実行プログラムでの、歴史的建造物を核にした地域の魅力向上を実現するためのものだと考えていますが、ここまで触れてきた都市整備局事業と連動した事業展開を期待しています。
 歴史的建造物等を生かした観光まちづくりの具体的事業内容と、都市整備局事業との連携方策について、所見を伺います。

○前田産業労働局長 歴史的建造物は、景観づくりにおいて重要であるとともに、この東京の歴史や文化を物語る貴重な観光資源でございます。
 歴史的建造物を中心に、その周辺地域を整備することは、国の内外の旅行者にとって魅力的な観光エリアを構築することになり、観光振興の観点から重要であります。
 こうしたことから、来年度より、ただいまご質疑いただきました都市整備局の支援事業と連携いたしまして、地域の観光まちづくり団体が主体的に行う、歴史的建造物を生かしたまち並み整備や観光ルートの創出などの取り組みを、区市町村とともに支援してまいります。

○増子委員 次に、観光振興について伺います。
 昨年十二月三十日、鳩山政権が示した新成長戦略では、環境、健康、観光で約百兆円の需要創造を目指すとして、観光振興にも大きな力を入れようとしているところです。
 しかし、その中身は、中国人に対するビザ取得の容易化や、休暇取得を分散化するローカルホリデー制度の検討などに現在のところはとどまっており、ことし六月に予定される最終的な成長戦略の中には、さらに具体的な施策が盛り込まれることを期待したいと思います。
 東京都としても、石原都政となって、観光施策については積極的な取り組みを見せており、私も、東京都の観光振興を応援する立場から、今後の施策について確認をいたしたいと思います。
 まず、アニメ情報の発信についてですが、東京では、東京国際アニメフェアやコミックマーケットなど、多くのポップカルチャー系イベントが開催されています。
 海外から訪れる観光客の中には、日本のポップカルチャーに魅力を感じ、秋葉原や中野の「まんだらけ」だけでなく、アニメや漫画の舞台となった聖地巡礼ツアーを行う人もいるそうで、埼玉県の鷲宮町や神奈川県の箱根町には、外国人観光客を含めた聖地巡礼者が押し寄せる現象も起きているとの報道もありました。ムーミン好きな日本人がフィンランドのムーミン村を訪ねるといったようなイメージなのでしょうか。
 東京都においても、こうしたアニメや漫画の舞台となっている地域も多いと聞いており、その情報を積極的に世界に発信していくべきだと思います。
 また、アニメの制作会社は、ほとんどが東京都内にあり、大手制作会社に近いJR中央線や西武新宿線の沿線に集積していますが、こうした制作会社と連携した観光振興にも取り組んでいくべきだと思います。
 そこで、アニメを活用した今後の観光振興策について見解を伺います。

○前田産業労働局長 アニメは海外におきましても人気が高く、関連イベントなどで多くのファンを集客できる重要な観光資源であります。
 これまで都は、東京国際アニメフェアなどによりましてアニメの情報を発信するとともに、国の内外から集客を図ってまいりました。
 東京には、アニメ作品ゆかりの地、あるいはアニメの制作過程を紹介する施設などが存在しておりまして、今後、観光資源としての活用が可能であります。
 このため、都では、都内にあるアニメ関連施設やイベントなど、観光に活用できる資源の調査を行い、得られた情報をもとに海外向けのパンフレットを作成し、イベントなどを通じて広く情報を発信いたしまして、アニメを観光資源として一層の活用を図ってまいります。

○増子委員 ぜひ頑張っていただきたいと思いますが、東京都はこれまで、水辺空間の魅力向上として運河ルネサンスに取り組んできましたが、「十年後の東京」への実行プログラム二〇一〇では、新たに隅田川ルネサンスを開始することとしています。
 運河ルネサンスからイメージするのであれば、テラスを利用したレストランやイベントなど、にぎわいの創出が考えられます。また、防災船着き場の利用拡大による新たな舟運ルートの開発も期待されるところです。
 こうした取り組みを進めるに当たっては、テラスの整備を行う建設局、イベント等への支援を行う産業労働局を初め、さまざまな局がかかわることになります。
 隅田川ルネサンス事業を成功させるためには、局の垣根を越えて進めていかなければなりませんが、今後どのように取り組んでいくのか、全庁的な視点で総合的な調整を行う立場にある知事本局長のご見解を伺います。

○吉川知事本局長 隅田川ルネサンスは、かつて全国の人々があこがれ、江戸の花であった隅田川のにぎわいを現代に生まれ変わらせようとする取り組みでございます。
 具体的には、水辺で遊ぶ、水辺でくつろぐ、水上を楽しむという三つの視点から、テラスの連続化や水辺の緑化、統一的なデザインのベンチの設置、オープンカフェや四季折々でのイベントの開催、防災船着き場を活用した新たな舟運ルートの開発など、ハードとソフトの両面からさまざまな事業を予定しております。
 事業の実施に当たりましては、地元の区や企業、観光団体などと一体となりまして、お話の、関係各局が相互に連携いたしまして積極的に取り組むことが必要でございまして、私ども知事本局におきましても、全庁的な視点から総合的な調整に努めてまいりたいと考えております。

○増子委員 また、水辺空間の魅力向上を図るためには、まちづくりを含めた景観誘導に取り組んでいく必要があると思います。
 水辺から見るまち並みは、ビルの向きが背中向きであったり、建物の高さや色彩などに統一感がなかったりという議論は、これまでもさんざんされてきたと思いますが、二十二年度予算案では、隅田川周辺の景観誘導のための調査費が計上されているところです。
 そこで、東京都は、こうした調査を含め、今後どのような景観誘導を進めていこうとしているのか伺います。

○河島都市整備局長 都はこれまでも、隅田川の周辺を景観基本軸に位置づけ、水辺と周辺のまち並みが調和するよう、一定規模以上の建物などを対象に景観への配慮を求めてまいりました。
 隅田川周辺を、東京を代表する美しい水辺空間として再生していくためには、隅田川ルネサンスなどの全庁的な取り組みと緊密に連携しつつ、さらなる景観施策の展開を図る必要がございます。
 このため、隅田川沿いの建物等の実態を把握する現況調査を進めるとともに、地元区などとも連携しながら、隅田川周辺地域を、新たに景観計画に基づく景観誘導区域に指定することについて検討を行ってまいります。
 このことにより、川からの見え方を意識した建築デザインの誘導やオープンスペースの創出を図るなど、隅田川周辺の魅力ある景観形成に取り組んでまいります。

○増子委員 また、隅田川を下っていけば、そこには築地市場があります。
 ここでは、移転の是非ではなく、純粋に築地市場の観光資源的な役割について質問しますが、昨年四月一日、旅行口コミサイトであるトリップアドバイザーが発表した、外国人が最も注目した日本の観光スポット二〇〇八によれば、築地市場がほかの観光スポットに倍以上のポイントをつけて断トツの一位だったそうです。
 昨年九月の新聞報道では、観光などの目的で訪れた客の数が、休日で三万三千百三十八人、平日で一万三千四百十七人と、上野動物園の一日の平均入場者数九千三百人を超えたということです。
 しかし、東京都の観光政策は、例えば平成十九年に策定された観光振興プランは、平成二十三年度までの計画であるにもかかわらず、築地市場の活用に一切触れていません。
 観光資源の注目度が極めて高い築地市場については、短期になるか長期になるかは別にして、東京都の観光振興策の中にしっかりと位置づけるべきだと考えますが、見解を伺います。

○前田産業労働局長 築地市場に多くの見学者が訪れていることは事実でありまして、これは、競りを初め、生き生きとした市場活動そのものに魅力があることからと考えられます。
 一般に、市場を観光資源として考える場合には、本来の市場機能を妨げることがあってはならないのは当然と考えます。
 現在の築地市場は、施設が狭隘、老朽化しておりまして、本来業務に支障なく観光資源と位置づけるのは困難であると考えます。むしろ、本来業務の今後についても、このままでは維持が困難と見込まれているのではないかと思います。
 豊洲に移転が予定されております新市場においては、市場機能が高度に発揮されることとあわせて、観光客が生鮮食料品の魅力に触れられるような見学者通路の整備の計画があり、既に観光産業振興プランにおいて観光資源化を図ることとしております。

○増子委員 今、豊洲の新市場では観光資源化を図るというようなお話ですが、昨年十二月の一般質問では、築地は観光地ではない、あくまでも生鮮食品の流通の市場だとの答弁がありました。
 また、豊洲に築地が移転して、新しい観光地になったら結構じゃないですかとも知事の答弁がありましたが、浜離宮や汐留あるいは歌舞伎座、銀座などの立地特性を踏まえれば、現在地再整備によって、そしてさらに観光的な位置づけがなされた方が、東京にとっても、日本にとっても、極めて有益であるように思いますが、見解を伺います。

○前田産業労働局長 先ほどもお答えしましたとおり、市場を観光資源として考える場合、本来の市場機能が妨げられることがない、また、本来の市場機能が生き生きと果たされるということが大事だと思います。
 老朽化、狭隘化した築地市場が市場本来の役割を十分果たすために、豊洲新市場への移転が予定されていると理解しております。

○増子委員 次に、上野動物園について伺います。
 石原知事は、二月十二日の定例記者会見において、上野動物園へのジャイアントパンダの受け入れを発表しました。平成二十三年の早期に、つがい一組をというお話でしたので、大いに期待しつつ、今後の結果を待ちたいと思います。
 一方で、パンダがいない北海道の旭山動物園が、行動展示によって全国から観光客を動員し、今や上野に迫る入場者数となっていることなどもあり、パンダだけに頼らない展示の工夫をすべきだという議論も聞かれました。
 既に、上野動物園では、「Visit Zoo キャンペーン」を実施するとして、北極にすむホッキョクグマやアザラシの水中での行動を見せる水生動物展示施設を整備していますが、それこそパンダに負けない集客力を期待いたしたいと思います。
 水生動物展示施設の施設整備の取り組み状況について伺います。

○道家東京都技監 恩賜上野動物園は、さまざまな役割を持っておりますが、その中で東京の観光資源の一つであることは間違いございません。魅力的な施設を整備することは重要でございます。
 これまで、クマたちの丘やアイアイのすむ森などにおいて、動物本来の行動を引き出し、来園者に見て楽しんでいただけるよう、展示施設の改善に取り組んでまいりました。
 お尋ねの水生動物展示施設につきましては、平成二十一年度から整備を進めております。
 整備に当たりましては、ホッキョクグマやアザラシなどの動物舎を拡張し、動物の飼育環境を改善するとともに、隣接した施設に一体感を持たせ、北極海の海中の雰囲気を再現いたします。
 こうしたことによりまして、ホッキョクグマがダイナミックに水中に飛び込む様子や、広い水面をアザラシが泳ぐ姿をさまざまな角度から観察できるようになります。
 あわせて、当該施設周辺の園路の勾配を緩和するなど、バリアフリー化いたします。
 平成二十二年度末の完成を目指し、整備に取り組んでまいります。

○増子委員 期待をしておりますので、よろしくお願いします。
 次に、雇用対策について伺います。
 まず、非正規労働者の雇用環境の改善について伺います。
 近年、経済のグローバル化や労働法制の規制緩和等により、労働市場の流動化が進み、パートや派遣など、いわゆる非正規労働で働く方の割合が増加し、平成十五年以降、全労働者の三割を超え、一千七百万人前後で推移をしています。
 有期契約で働く非正規労働者に関する国の調査では、生活を賄う主な収入源はみずからの賃金とする回答が七割、職務は正社員と同等、同等以上の回答が五割以上であるなど、非正規労働者の多くは正社員並みの職務につき、みずからの生活を支えています。
 このように、非正規労働者は正社員と同等に働く一方で、賃金が低く、研修の機会にも恵まれないなど、正社員と大きな格差があるばかりか、不安定な雇用により、将来の見通しも立てにくいといった状況に置かれています。
 本来であれば、正規、非正規にかかわらず、均等、均衡処遇が確立していれば、このような事態はもっと軽減されるのですが、現状は一つの身分格差の様相を呈しています。
 多岐にわたる非正規労働の課題の解決に向けて、企業、労働組合、そして行政、それぞれの立場から積極的に取り組んでいかなければなりません。
 しかし、とりわけ経営環境の厳しい中小企業では、非正規労働者の処遇改善が進んでおらず、こうした状況を改善していくためには、企業の自主的な取り組みに期待するだけでは不十分であり、都として積極的に支援していく必要があります。
 そこで、都は、非正規労働者の雇用環境の改善にどのように取り組んでいくのか伺います。

○前田産業労働局長 正規、非正規を問わず、労働者がその能力を発揮して活躍できる働きやすい雇用環境をつくることは、企業が取り組むべき重要な課題であります。
 しかしながら、ご指摘のとおり、多くの中小企業では、非正規労働者の処遇改善への取り組みにおくれが見られるため、都では、労働相談情報センターのアドバイザーが直接企業を巡回して、パートタイム労働法が求める正規労働者との均衡処遇を図るための措置などについて周知を図っております。
 また、法令知識が不足しがちな非正規労働者の方々に対しては、セミナーや資料の発行、配布を通じて、労働基準法や派遣法など関係法令の普及を図っております。
 さらに、非正規労働者の雇用環境改善に意欲的に取り組みます中小企業には、専門家を無料で派遣して、人事制度や賃金制度の改善について助言を行っております。
 来年度は、これらの取り組みのレベルアップを図ろうとする企業に対しまして、専門家の派遣回数をふやすなど、支援を強化いたします。また、使用者を対象に、非正規労働者の処遇改善の取り組みを含むe-ラーニングを開始いたします。
 今後とも、こうした取り組みを通じて、非正規労働者の雇用環境の改善を推進してまいります。

○増子委員 次に、職場のメンタルヘルス対策について伺います。
 非正規労働者に対する処遇改善への支援とともに、職場におけるメンタルヘルス対策も重要です。
 多くの企業において、企業間競争の激化や経営環境の悪化等を背景に、成果主義の導入や人員削減が進められる中、長時間労働者が増加し、さらに仕事の高密度化や責任の増大など、仕事におけるストレス要因は大きくなっています。
 また、精神疾患による労災の申請状況を見ると、この五年間でほぼ倍増しています。
 このように、仕事や職業生活に強いストレスや不安を感じ、メンタルヘルス不調に陥る労働者が増加しています。
 都は、こうした現状についてどう認識しているのか伺います。

○前田産業労働局長 メンタルヘルスの問題を抱える労働者につきましては、専門研究機関が行った企業調査の結果を見ましても、回答企業の過半数が増加傾向にあるとしております。
 また、その背景としては、職場に余裕がないことや、組織、職場とのつながりが弱いことなどが挙げられております。
 都では、労働相談情報センターにおいて、労働相談のほか、臨床心理士等の専門家による心の健康相談を設けて、職場のメンタルヘルスにかかわる相談に対応しておりますが、その相談件数は、平成二十年度、五千七百件と、相談全体の一割を超え、この五年間では三倍強と急激に増加しております。

○増子委員 メンタルヘルス不調者への対応はもちろん必要なんですが、発生させないための予防策が何よりも大切であると思っています。
 一度心の健康が損なわれると、労働者本人は長期にわたり苦しむことになり、それを理由に解雇に追い込まれ、生活に深刻な影響を及ぼします。また、支える家族の苦労も大変大きなものとなっています。
 企業にとっても、組織の活力やモチベーションの低下を招き、さらに医療費などのコストの増加にもつながります。その社会的逸失利益は一兆円になるとの専門家の試算もあります。
 そこで、都は、職場のメンタルヘルス対策にどのように取り組むのか伺います。

○前田産業労働局長 労働者の心の健康を保持し、安心して働ける職場環境をつくることは、労働者にとりましても、企業にとりましても重要でございます。
 また、メンタルヘルス不調ということによる労働者の休業は、経営上の不利益ももたらすことになりまして、企業は、みずからの職場状況に応じた予防策など、メンタルヘルス対策に取り組む必要があります。
 都はこれまでも、企業の取り組みを促すために、働く人の心の健康づくり講座を実施し、過重労働の防止を初めとする企業の安全配慮義務や、問題が発生した場合のリスクや対応策などについて周知を図ってまいりました。
 また、本年度は、メンタルヘルス推進リーダー養成講座を開始し、職場のメンタルヘルス対策を推進する人材の育成にも努めております。
 さらに、来年度は、新たにホームページを開設して、メンタルヘルスに関する法制度や専門窓口、相談事例などの情報を広く提供してまいります。
 今後とも、こうした取り組みを通じて、企業のメンタルヘルス対策を促進してまいります。

○増子委員 次に、年末年始対策について伺います。
 都は、国の緊急雇用対策の一環として、昨年十二月二十八日から本年一月十八日まで、年末年始の生活総合相談を実施しました。
 初の試みであり、東京都並びに区市町村の関係者の皆様には多大なるご労苦があったと伺っており、尽力に感謝いたしたいと思います。
 中には、残念ながら、約十日分の食費や、就職活動の交通費として支給された二万円を持って所在不明になった者もいました。
 特に若年層の失業者が多い現在、こうした支援を今行わなければ将来にツケを残すことになるという重要性にかんがみると、今後、今回の損失を補って余りある成果を上げるようにしていかなければなりません。
 今回の実施状況を伺い、今後の施策につなげるために幾つか伺います。
 一度失業しますと、その期間が長くなればなるほど、再就職は困難となります。特に、もともと低所得で生活に余裕がなく、単純労働などを行っていた派遣労働や日雇いなどの方は、製造業の不振とも相まって、新たな仕事も見つからず、住居を喪失してしまった方も多いようです。
 こうした方などを対象に、国の大規模施設で、生活総合相談として職業相談、健康相談、住宅相談等のほか、宿泊、食事等の提供を実施したわけですが、今回、年末年始の相談事業に訪れた方々の人数、相談件数、置かれた状況や特徴、属性はどうだったのか伺います。

○安藤福祉保健局長 国の施設における入所者は八百六十名であり、相談件数は延べ一千二百四十四件でありました。
 入所者の状況等でありますが、性別では男性が九八%、年齢構成は最年少十八歳から最年長八十歳までで、平均年齢は四十七歳。
 入所前一週間の主な宿泊地は、区部が約七一%、住居喪失時期は、半年以内が約四〇%、一年以上が約二七%を占めました。
 主な生活形態は、ネットカフェ等の店舗等で寝泊まりしている方が約四七%、公園等の路上生活が約三一%となっております。

○増子委員 都は、通常業務が開始された平成二十二年一月五日以降一月十八日まで、都の臨時宿泊施設において、宿泊と食事の提供とともに、生活相談、住宅相談、健康相談を継続しましたが、本事業を通じて、生活安定に向けて当事者が活用した支援内容について、また、退所者の就労状況はどうなっているのか、あわせて伺います。

○安藤福祉保健局長 都の臨時宿泊施設の入居者は五百七十三名でありましたが、事業終了時の一月十八日時点で、生活保護の申請者が四百九十七名と最も多く、そのほか、住宅手当の申請者が二十九人、臨時特例つなぎ資金貸付決定者が十三人、総合支援資金の貸付決定者が一名、そのほか、人材育成等の事業を利用した者が約十名でありました。
 また、年末年始の生活総合相談を利用した八百六十名は、いずれも都内のハローワーク等で求職登録の手続を行った方々でありますが、このうちハローワーク等を通じて就職を確認しておりますのは、現時点で二十三名であります。

○増子委員 就職につながった方は、どんな職歴や能力をお持ちだったのか、関連性を分析して今後の施策に生かすためには、ハローワークとの情報共有が課題として残ります。
 しかし、そもそも従来従事していた職種、業種が不況のため、仕事、住居を失った方ですから、極めて限られた時間だけでは、異なる職種、業種に新たな仕事を得るのが難しいことはわかります。このときの就労支援は、ハローワーク主体で行われましたが、東京都も含めたさまざまな指摘を踏まえ、機能する第二のセーフティーネット構築に向けた検討が進んでいます。
 年末年始に集まった人に限らず、こうした方々が、新たな仕事につき、安定した生活を送るためには、新規成長や雇用吸収の見込める分野や基本的なPC操作など、就労に結びつく訓練、そして、未経験の職種、業種へと転換するための前提となる丁寧な職業カウンセリングが必要であります。
 何よりも重要なのは、これらさまざまな支援が点在するのではなく、必要とするその人に対して継続性を持って実施されることです。都の見解を伺います。

○前田産業労働局長 東京都はこれまでも、失業者の就業を促進するため、個々の方々の状況に応じたきめ細かな支援を実施してまいりました。
 しごとセンターにおきましては、相談により就業を希望する本人のそれぞれの希望や適性を把握し、キャリアカウンセリングや各種セミナー、職業紹介を実施しております。
 また、そうした相談等によりまして、必要に応じて職業能力開発センターが実施する多様な職業訓練の紹介なども行っております。
 さらに、支援を必要とする方々を適切な支援策に結びつけていくため、都は来年度、求人情報紙への広告、コンビニエンスストアを活用したパンフレットの配布など、多くの方々の目に触れやすい方法により、事業の周知を図ってまいります。

○増子委員 一方、生活を支えていく方策である就職安定資金融資はハローワーク、住宅手当や生活保護は区市など、総合支援資金貸付及び臨時特例つなぎ資金貸付は社会福祉協議会と、実施主体が異なっています。
 必要な支援が切れ目なく、かつ一体的に行われ、就業、自立に結びつけていくことが必要です。そのための課題に係る認識について伺います。

○安藤福祉保健局長 住居、生活に困窮する離職者が、安定的な就労を確保して円滑に生活再建できるよう支援するためには、ハローワークや自治体、社会福祉協議会などが密接に連携して各種支援を行う体制づくりが不可欠であるというふうに考えております。

○増子委員 リーマンショックが吹き荒れた一昨年、民間団体が行った年越し派遣村は、従来、日雇い仕事がなくなる年末に設けられてきた年越し拠点でした。
 しかし、このとき、貧困、困窮者への支援において、早期介入、自立支援のためのシステムが脆弱であったこと、また、就労、生活など複数分野にまたがる支援を総合的に行うことが必要であるにもかかわらず、いわゆる縦割り行政によって適切な支援ができていなかったことなど、従来からの課題を可視化させました。
 今回の事業でも、先ほどご答弁いただいたような、さまざまな属性を持つ方々が集まりました。
 この方たちの多くは、何も年末に急に住居を失ったわけでも、失業したわけでもありません。当事者のさまざまな属性に合わせた支援の入り口を一本化し、ワンストップ体制を整備することは、年末の風物詩にするのではなく、通年での課題です。都の取り組みを伺います。

○安藤福祉保健局長 お尋ねのような体制づくりは、基本的には国の責任において実施すべきでありまして、都は既に先月、ワンストップの体制づくりなど、通年でのセーフティーネットの強化に向け、国に対して緊急に提案を行ったところであります。
 現在、国からは、雇用部門と福祉部門の各機関が密接な連携を図るため、都道府県及び地域を単位とした協議会を設置する方針が示されておりまして、厚生労働省東京労働局を事務局として設置に向けた準備を進めております。
 今後とも、住宅手当などの第二のセーフティーネットがより有効に機能するよう、必要に応じ国に対し提案を行いますとともに、関係機関との連携の強化を図ってまいります。

○増子委員 今まで、福祉が必要な時期を過ぎてからの自立支援というのがずっといわれてきて、東京都も試案を発表したり、いろいろ努力されてきました。従来の枠を超えて、労働部門と福祉部門とが本当の意味で連携して機能する、今、再検討されている第二のセーフティーネットというのはしっかりと磨きをかけていかなければならないと思います。これがまさに大きな転換点になると思います。
 新しいことですから、さまざまな課題、試行錯誤があるとは思いますが、福祉的施策と就労への支援を同時並行で投入し、早期自立を図る新しい生活就労支援を、都においても、福祉保健局と産業労働局とがしっかりと連携して構築していっていただきたいと思います。
 次に、福祉施策について伺います。
 三月二日の毎日新聞に、路上生活者、いわゆるホームレスの三四%に知的障害の疑いがあるという調査結果が掲載されました。
 早速、調査結果を送っていただき拝見したところ、いわゆるボーダー層といわれるIQ七〇から七九に該当する方が一八・九%、五〇から六九に該当する方が二八・一%、四〇から四九に該当する方が六・一%という結果です。このほかに、測定不能の方もいるということです。一般に、知的障害者は人口の数%と聞きますので、かなり高い割合だとの印象を持ちます。
 そこでまず、ホームレスの自立支援等を行うに当たって、知的や、あるいは精神障害を持つ方を把握し、対応しているのか伺います。

○安藤福祉保健局長 二十三区の路上生活者を対象とした健康状態に関する調査は、平成十一年度に都が実施をいたしました路上生活者実態調査と、平成十九年一月に国が実施をしましたホームレスの実態に関する全国調査がございます。
 都の調査では、本人への聞き取り調査で、愛の手帳などを今持っている、以前持っていたがなくした、障害はあるが持っていないという方が合わせて約四%、障害はないので持っていないという方が約九六%となっており、国の調査においてもほぼ同じ値となっております。
 都は、知的障害や精神障害の可能性が見込まれるホームレスについては、福祉事務所等と密接な連携を図りながら医療機関への受診につなげるとともに、巡回相談などにおいて継続的な相談及び支援を実施しているところでございます。

○増子委員 今、九六%が障害者ではないという都と国の調査結果があるというお話がございましたが、先日の調査は、臨床心理士が中心になって、医療機関、大学等の研究機関に勤める医師が行ったということで、全くいいかげんなものではないと思いますが、確かにアプローチの仕方によって数値が異なることはあると思います。
 ただ、これらの調査は本人に聞いているため、客観的に見てどのような状況になっているのかがわかりません。
 では、都がホームレスの自立支援を行う中で、実際にどれだけの方が障害判定を受け、手帳の発行を受けたのか伺います。

○安藤福祉保健局長 福祉事務所が、障害などの理由により就労自立が困難と判断した場合は、都のホームレスの自立支援システムであります緊急一時保護センターでの受け入れ前に関係機関に直接つないでおりますために、都としては、障害判定や手帳の発行を受けた方の数については把握をしておりません。

○増子委員 今、把握されていないとのお話がございましたが、この事業自体がホームレスの自立支援を目的とするものであります。確かに、現場でやりとりをする中で障害が疑われた場合には障害福祉部門へとつなぐ、これは通常の役割分担であります。そのこと自体に問題があるといいたいわけではありません。
 しかし、福祉的サービスを受けずに社会の中で生きてきた方の中には、履歴書の記入など、生きていく知恵の部分を相当に身につけている方もいます。ただ、だからといって実際の仕事にはついていけない、自立できない、結果ドロップアウトしてしまったということもあると思います。
 実際にそうした方の支援を行っている人の話をお聞きしますと、障害福祉の専門家でも最初はわかりにくいとのことです。
 そういうことでありますから、ホームレス支援においても、従来の視点では、知的障害がありながら生育過程で支援を受けられないまま過ごし、結果として苦境に陥った方を見落とし、適切な支援につなげられない可能性があるのではないでしょうか。
 今後、こうした判断が難しい方もいるということに十分留意してホームレス事業を実施していただきたいと考えますが、見解を伺って、私の質問を終わります。

○安藤福祉保健局長 知的や精神の障害があるかどうかというのは、専門的な知見に基づき判断するものでありまして、短時間で行うことは困難が伴います。
 その一方で、都の調査におきましても、路上生活者の中に障害のある方がいることも事実でありまして、適切な支援が必要と考えております。
 都は、こうした障害の可能性が見込まれるホームレスにつきましては、引き続き、現場における福祉事務所との連携などにより、必要な対応を図ってまいります。

○酒井委員長 増子博樹理事の発言は終わりました。(拍手)
 この際、議事の都合により、おおむね十五分間休憩をいたします。
   午後三時四十一分休憩

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