予算特別委員会速記録第五号

○服部委員長 大西由紀子委員の発言を許します。

○大西委員 初めに、東京マラソンについて伺います。
 一昨日、二十二日の東京マラソンは、国内外から集まった市民ランナーと一流ランナー三万四千九百人が参加し開催されました。ことしで三回目ですが、市民参加型のスポーツとして年々盛会に行われています。都庁前から東京ビッグサイトまでの四十二・一九五キロを走るフルマラソンには三万百六十四人が、そして日比谷公園にゴールする十キロの部に臓器移植者や障害者を含む四千八百七人が参加したということです。
 あいにく強風の中のレースでしたが、リストラ後の再就職を目指す人や、病気の父親を勇気づけようと参加した女子大生など、参加者の一人一人がさまざまな思いでレースに挑んでいるということが新聞報道でも紹介されておりました。そこにスポーツが持つ魅力というものがあるんだなと改めて感じております。
 そこで、東京マラソンについて、大会委員長であります知事の感想を伺いたいと思います。

○石原知事 改めて、三度目でございますけれども、やってよかったなと思います。
 それから、やっぱり都民というものは捨てたものじゃないなと。あのボランティアの方々の献身的なご努力というのは本当に頭が下がりました。後のあいさつでボランティアの方々に申しましたけれども、世の中は、かごに乗る人、担ぐ人、そのまたわらじをつくる人ということがありますけれども、まさにわらじをつくる仕事を本当にみんな喜んでやった。これはやっぱり日本人、東京の都民は捨てたものじゃないなと改めていたしました。

○大西委員 この大会では、三十二人の車いすランナーも参加していました。その方たちは男女とも完走率一〇〇%です。ほかにも全盲の方や妊婦さんもいらしたそうです。スポーツを通じて、ある意味、体に障害があっても、障害がなくても共生する姿は非常にドラマチックなものとして映りました。
 生活者ネットワークは、これまでもともに生きるということで、今議会を通じて何度か障害者差別禁止条例の制定の提案を行っているところですが、二〇一六年にはオリンピック・パラリンピックを誘致する東京都です。そして、九月にはパラゲームスも行われることでもありますので、こうしたレースのときだけでなく、日常的に東京がユニバーサルデザインのまちになり、ハード、ソフト、特にソフト面でも思いやりに満ちたまちになるために、知事に再度、障害者差別のない東京に向けた決意というものを伺いたいと思います。

○石原知事 改めて申しわけございませんが、ワールドスタンダードを設けた、いかなる立場の人たちにも住みやすい、暮らしやすい、そういうまちにしていきたいと思っております。

○大西委員 もう一歩進んだ答弁が欲しかったんですが、本当にユニバーサルデザインという意味では、先日の総括質疑の中でもいいましたけれども、ある意味、時間がたてば進んでいきます。でも、ハードではやはり限界があります。そこにソフト面ということが重要になってくるんですが、意識改革というのは時間がかかるわけで、ぜひそういう意味では、当事者参加の中で条例制定に向けて進めていただきたいということを再度要望しておきたいと思います。
 次に、都民の健康危機について伺います。
 私たちの周りには、新型インフルエンザやさまざまながんなど、健康に大きな影響を及ぼす問題が次々に発生し、病との闘いは人類にとって永遠の課題です。しかし、中には対策さえ十分に行われれば感染の拡大を防ぎ、発症を抑えることが可能になってきているものも多く、その一つにエイズ問題があります。
 東京都は、平成二十年に新たに報告があったHIV感染者は四百四十七件で過去最多を更新したと発表しました。若い世代が全体の七割を占めていることから、本年一月に東京都エイズ専門家会議から受けた最終報告でも、HIV感染の拡大を防止するためには、性行動の活発化する若い世代に向けた多様な手法を用いた普及啓発を繰り返すことが必要といっております。
 若年層を対象としたHIV感染症の予防のための普及啓発に、都がさまざまな工夫で取り組んでいることはこれまでにも何回か質問しておりますので承知しております。健康危機を未然に防ぐという観点から、さらに学校教育の中でしっかり取り組んでいただきたいと思っております。
 そこで、エイズに関する教育を含む性教育について伺いますが、最近判決が出された七生養護学校の件では、一部都議による一方的な教員非難を教育への不当な支配として損害賠償を認めました。教育委員会は執拗な非難に対し、傍観者的な立場をとったことで公平性を欠いた対応であったと指摘されています。
 問題なのは、七生の性教育が正しかったかどうかということよりも、その結果、教育現場は萎縮し、性教育については失われた六年間になってしまったということです。何より、本当に必要な性教育を受けられなかった子どもたちこそ被害者だと思います。性教育の授業は教員の試行錯誤の上に工夫されてきたと聞いております。現場の創意工夫を生かしつつ、研修などでお互いに改善や向上をもっとオープンな場で議論し、よりよい手法を確立していくべきと考えます。
 東京都教育委員会において、これからの性教育にどのように取り組んでいくのか、改めて伺います。

○大原教育長 学校における性教育は、児童生徒が性に関する基礎的な学習内容を正しく理解した上で、適切な意思決定や行動選択ができるよう、学習指導要領に基づき、心身の発達段階に即して指導することが重要でございます。
 しかし、平成十五年当時の都立七生養護学校においては、学習指導要領や児童生徒の発達段階を踏まえない不適切な性教育が行われていたため、都教育委員会は、その権限と責任に基づき、教育課程の編成権を有する校長に対して、指導内容、方法の問題点を指摘し、年間指導計画を改善させるなどの指導を行いました。また、都教育委員会の調査によって明らかとなった、一部の学校における、いわゆる行き過ぎた性教育を是正するために、性教育に関する通知、通達を初め、「性教育の手引」を改訂したり、週ごとの指導計画を作成、提出させて、校長に事前に授業内容を確認させるなどいたしまして、都内公立学校における性教育の適正化に取り組んでまいりました。
 こうした取り組みの結果、各学校では、学習指導要領や児童生徒の心身の発達段階を踏まえた適正な性教育が行われてきております。したがいまして、失われた六年間という指摘は当たりません。今後とも、都教育委員会は各学校が適正な性教育を行うよう、引き続き指導をしてまいります。
 なお、お話の平成二十一年三月十二日の都立七生養護学校に係る東京地裁判決につきましては、判決内容の一部を不服といたしまして、昨日、控訴いたしました。

○大西委員 答弁の中の中学校の学習指導要領の解説によりますと、内容の取り扱いが非常に具体的に書いてありました。思春期には体が発達し、妊娠が可能になることを理解できるようにちゃんとやりなさいということや、それから、性に関する適切な態度や行動の選択が必要となることを理解できるようにしなさいということ、三番目に、東京都がよく、教育委員会の答弁にありますように、指導に当たっては、発達の段階を踏まえること、学校全体で共通理解を図ること、保護者の理解を得ることなどに配慮することが大切であるというような項目が具体的に出ていました。
 とありますが、私どもの印象ですと、やはり三ばかり、つまり配慮だけを強調しているように思えます。成長が著しい今の子どもたちの状況をしっかりと受けとめ、適切な性教育が受けられるよう、都教育委員会の、教育庁の柔軟な対応を求めておきます。
 開かれた都政について、最後に伺いたいと思います。
 開かれた都政を実現していくためには、情報公開や市民意見を聞く姿勢が重要であると思います。その一つにパブリックコメントの手法があります。二十年度の実施状況を調べてみますと、各局合わせて年間二十三件のパブコメが実施され、中でも福祉保健局が六件と一番多くなっています。福祉保健局ではパブコメを実施することについて、基本的にどのように考え、またその効果をどのように考えているのか、伺います。

○安藤福祉保健局長 福祉保健局では、計画づくりや政策形成に都民の意見を反映させるために、中間段階の案を情報提供するとともに、都民からの意見、提案を求めております。昨年度は九件、今年度におきましても高齢者保健福祉計画や障害者福祉計画、東京都福祉のまちづくり条例の改正など、六件について実施をしております。
 これまで都民からの提案を受けて、第三期高齢者保健福祉計画に感染症対策の事項を新たに盛り込んだ例などがありまして、政策等に都民の意見を反映する上で、いわゆるパブリックコメントは有効な一つの方策と考え、実施をしているところであります。

○大西委員 パブコメの実施状況を見ますと、局により、あるいはテーマにより、募集期間やその取り扱いに差があります。中でも先日の、繁華街における安全・安心の確保に関する考え方とか、豊洲の土壌汚染対策専門家会議報告はたったの八日間でしかありませんでした。産業労働局の有機農業推進計画などの三十八日間と比べると際立って短期間です。また、その結果についても、例えば福祉保健局のエイズ専門家会議中間報告は十人から意見が寄せられ、その意見一つ一つがどのように対応されたかが一覧となって見られるようになっています。ここまで丁寧にやってくれると、やはり都民との信頼関係は強まります。
 東京都という大きな自治体の中で市民参加というのはなかなか難しい問題ですが、であればなおのこと、しっかり意見を聞き、それに応答するパブリックコメント制度を条例化するなど、統一的な対応がもうそろそろ必要だと考えます。都としてパブリックコメント制度を確立すべきと思いますが、見解を伺います。

○中田総務局長 いわゆるパブリックコメントは、政策形成過程への民意反映という広聴手続の側面に加えまして、行政手続における公正の確保と透明性の向上という側面もございます。制度化につきましては、対象となる規則あるいは要綱など、こういったものの現状等を十分把握した上でとなりますが、総務局としても、今後検討すべき課題の一つと考えております。

○服部委員長 大西由紀子委員の発言は終わりました。
 以上をもちまして、付託議案に対する締めくくり総括質疑は終了いたしました。
 お諮りいたします。
 第一号議案から第二十九号議案までに対する質疑は、これをもって終了いたしたいと思います。これにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○服部委員長 異議なしと認めます。よって、本案に対する質疑はいずれも終了いたしました。
 なお、明日三月二十五日の午前十一時から理事会を控室一で、また、午後一時から委員会を本委員会室で開催いたしますので、よろしくお願いいたします。
 これをもちまして本日の委員会を閉会いたします。
   午後七時四十八分散会

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