予算特別委員会速記録第五号

   午後三時三十七分開議

○三宅副委員長 休憩前に引き続き委員会を開きます。
 質疑を続行いたします。
 増子博樹副委員長の発言を許します。

○増子委員 初めに、中小企業対策について伺います。
 中小企業支援を目的に設立された新銀行東京につきましては、後ほど田中理事から関連質問をさせていただき、私からは、制度融資について質問させていただきます。
 昨年の夏以降、アメリカ発の金融危機が一気に世界に波及しました。日本でも公共事業の前倒しや緊急保証制度あるいは金利の引き下げなどを行ってきましたが、それでも景気の先行きに対する不安はぬぐい切れず、最近では、伝統的な手法を超えて、日銀によるコマーシャルペーパーの買い取りなど、旧来型によらない対策が打ち出されています。
 東京都でも、このような認識のもと、今回の東京都と地域の金融機関とが連携して実施する、金融支援に関する条例の提案などに至ったのだと思います。
 いわゆる百年に一度といわれる経済状況の中で、石原知事の施政方針表明の後も、GDPの落ち込みなどさまざまな景気指標が出ていますが、まず、石原知事は現在の状況をどのように認識しているのか伺います。

○石原知事 この問題を論じます前に、私たちは、その前提となる世界全体の経済のトレンドというのをやっぱりきちっと認識して、反省する必要があると思います。世界全体のGDPの四倍もの金がフローしていれば、結局、その金を握っている連中が、金を使ったマネーゲームに走らざるを得ない。結局、サブプライムローンってやつで、虚構を構えたああいう派生商品が出てきて、世界じゅうがそれにひっかかって大損したわけですけれども、今日のこういう世界的な金融危機は、我が国の実体経済にまでも深刻な影響を及ぼしておりまして、小零細企業を取り巻く状況は、依然として極めて厳しいと思います。
 先ほど申しましたが、健全な会社でありながら、血液であるお金が回ってこないために、黒字倒産する会社が頻発しております。GDPの落ち込みや倒産件数の高水準での推移など、指標でもそれが改めて裏づけられておりますが、こうした状況認識に立ちまして、都は、平成二十一年度予算において、昨年二度の緊急対策から切れ目のない、一段と積極的な施策を講じております。金融支援策につきましても、緊急保証制度など制度融資を拡充するとともに、独自の取り組みとして、地域の金融機関と連携した新たな融資制度を創設しております。
 このように、時期を失することなくさまざまな施策を推進することによりまして、都内小零細企業が現下の厳しい状況を何とか乗り越えることができるように、全力を尽くしてまいりたいと思います。

○増子委員 知事がおっしゃるとおり、本当に厳しい、極めて厳しいという表現で、本当に適切な表現だと思います。代表質問でも申し上げましたけれども、中小企業にとっては、金利が低いにこしたことはありません。一方で、預託金は金融機関に預けるお金であって、決して戻ってこないお金ではありません。
 こうしたことを踏まえれば、例えばオリンピック基金にお金を積んだままにするのではなく、一時的にでも金融機関に預託することで、中小企業の円滑な資金供給に役立てるべきではないでしょうか。
 私は、預託金の積み増しなどによる中小企業への資金供給のさらなる円滑化を求めるものですが、見解を伺います。

○佐藤産業労働局長 来年度予算案におきましては、経営緊急の融資目標額の引き上げを中心に、預託金を三百九十億円増額しております。あわせまして、この間の短期プライムレートの引き下げに対応して、金融機関との協議を経て、本年四月から、経営緊急の最優遇金利を引き下げる考えでおります。
 なお、金利が低いにこしたことはないというご指摘がございましたけれども、制度融資の貸出金利は、市中の金利動向や金融機関の貸し出しに要するコスト等を考慮しまして、都と金融機関、また信用保証協会の三者協議により決定をしております。金利の引き下げ幅には、おのずと一定の限界が存在をいたします。

○増子委員 二十一年度予算案における制度融資の預託金は二千二百五十億円を計上し、前年度比三百九十億円の増としています。昨年十一月段階の局の要求の時点では、それよりも百八十九億円多い二千四百三十九億円を要求し、制度融資の貸出金利を〇・一%下げることなどを目的としていましたが、その後、短期プライムレートも下がったことなどから、予算額が二千二百五十億円に落ちついたと聞いています。
 答弁にもあったように、東京都は、本年四月から政策金利を引き下げると聞いていますが、それは単に短プラの引き下げに対応しただけではなく、東京都が低金利への誘導を行った結果といえるのか、見解を伺います。

○佐藤産業労働局長 制度融資は、発足以来半世紀にわたっておりますけれども、中小企業者を資金面から支え続けておりまして、預託金を毎年度金融機関に預け入れ、資金調達コストを引き下げることによりまして、貸出金利の低減を図ってきているところでございます。
 既に制度融資の最優遇金利は、金融機関が最も信用力のある企業に適用する最優遇の貸出金利であります短期プライムレートとほぼ同水準にまで引き下げられているなど、低利な貸出金利を実現しておりますが、これは、こうした預託金の効果によるものであるというふうに考えております。
 本年四月においても、この間の短期プライムレートの動向に合わせて、現行の最優遇金利をさらに引き下げる考えでおります。

○増子委員 さらに、経済対策では、真水ということがよく、最近盛んにいわれていますけれども、制度融資の枠を拡大することだけでは真水の拡大にはならないのですが、百年に一度といわれる経済状況の中で、また国においても、従来の枠にとらわれない新たな中小企業支援策を講じようとしています。
 東京都としても、例えば中小企業に対する利子補給など、具体的な財政出動なども含めた支援策を改めて検討していくべきであると考えますが、見解を伺います。

○佐藤産業労働局長 都では、制度融資の貸出原資の一部として預託金を無利子で預け入れまして、金融機関の資金調達コストを引き下げることによって、中小企業者に対する貸出金利の引き下げを図っているわけであります。
 また、昨年秋以降の中小企業者を取り巻く厳しい経営環境を考慮しまして、例えば、経営支援融資で小規模企業者に対する信用保証料の補助を二分の一に引き上げるなど、中小企業者の金利や保証料を含めたトータルの負担軽減を十分に図っているところでありまして、他の道府県と比べても手厚い措置を講じております。
 なお、利子補給についてのお話がございましたけれども、都の制度融資では、経営緊急の利用件数が、開始後この四カ月間で三万件を超えるなど、非常に多くの実績が上がっておりまして、一部自治体で利子補給が行われている都内の区市町村の融資制度とは、件数、また金額ともに、規模が大きく異なっているわけであります。
 仮に都の制度融資において利子補給を行うとした場合には、こうした数万件に及ぶ融資の返済状況を一件ごとに確認をして支払うなど、膨大な事務量が発生することになりますことから、都制度融資において利子補給を実施することは困難であるというふうに考えております。

○増子委員 バブルが崩壊した後、私も区議会議員でしたが、特別区などでは、預託金を積んだ上に利子補給を行っていたという時期もあるぐらい、本当に緊急な時期にはそういう施策も必要かなというふうに思います。百年に一度といわれる経済状況の中で、旧来型にとらわれない中小企業対策にぜひとも取り組んでいただきたいということを要望しておきます。
 次に、まちづくりについて伺います。
 まず、昨年の第四回定例会でも、我が会派の大塚たかあき議員が一般質問で取り上げていた、東京中央郵便局の建てかえを事例として議論をしていきたいと思います。
 二月二十六日の鳩山邦夫総務大臣の発言以降、東京中央郵便局の建てかえ問題に注目が集まりましたが、日本郵政が計画の見直しを行った結果、保存部分を当初計画の二倍強に拡大することで文化庁などと合意し、今後は、完成後の文化財登録を目指して文化庁と協議を継続することになり、事態はとりあえずのところ決着を見たようです。
 日本郵政は、保存部分を当初計画の二倍強に拡大するとしたわけですが、拡大された保存部分、建物の北東側は、もともと地中の連続壁を施工できないため、地下の躯体が更新できず、必要な耐力が確保できない、技術的に不可能だという理由で、一たん全部取り壊してから再現するという方法が採用されたはずです。
 建物の北東部分を保存することにしたことで、例えば都市計画の内容では、道路境界線から壁面を二メートル下げなければならないことになっているわけですが、ここからはみ出してしまう、つまり壁面位置の変更が必要になってしまう可能性が考えられるわけです。
 このように、さきの都市計画決定に整合しなくなってしまった場合の対応、必要な手続について伺います。

○只腰都市整備局長 東京中央郵便局の建てかえ計画でございますが、都市再生特別地区丸の内二丁目七地区といたしまして、昨年九月に日本郵政株式会社による都市計画の提案を受理いたしまして、その後、本年二月六日に東京都都市計画審議会の議決を経て、所管の国土交通大臣の同意を得た後、三月六日に東京都として都市計画決定を行い、告示をいたしたものでございます。
 この都市再生特別地区には、容積率、建ぺい率の最高限度、建築物の高さの最高限度、壁面の位置の制限などを定めることとなっておりまして、こうした内容を都市計画決定したものでございます。
 その後、三月十二日になりまして日本郵政株式会社から、北東側の外壁を再現することとしていた部分を引き家して保存し、当初からの北側部分とあわせまして登録有形文化財とすることで文化庁と合意したとの報告を受けたところでございます。
 その内容からいたしますと、都市計画の変更は必要ないのではないかと考えられますが、今後、詳細な報告を待って、適切に対応してまいります。

○増子委員 そこはわかりました。歴史的価値のある近代建築物では、一部を保存、復元し、上部に高層棟を配置する方法がとられることが見受けられます。例えば中央郵便局の周辺では、一九九三年竣工の銀行倶楽部、九四年の大手町野村ビル、二〇〇三年の日本工業倶楽部などの例があります。
 このような事例を見ますと、全体の三分の一を残して登録有形文化財であり続ける日本工業倶楽部のようなケースがある一方で、銀行倶楽部や大手町野村ビルのように外壁の一部だけを残し、高層ビルの下の方の層に薄い皮のように張りつけた、いわば腰巻き保存とかかさぶた保存とかいわれていますが、そういうケースもあります。
 これらのデザインをどのように評価するかはいろいろ意見が分かれると思いますが、私の個人的な意見としては、一部を残して異なるデザインで高層化する建築物には若干違和感がありますし、このように一部だけを残すという手法で文化財級の歴史的建築物が守れると本当にいえるのか、若干疑問を持っているところでもあります。
 歴史的建築物の保存、活用のためには、私は、むしろ動態的保存と呼ばれる、例えば、既存の建物を改修して用途転換するコンバージョンの手法や、ニューヨークなどで採用されているような、一つの地区全体として歴史的環境保全を行うヒストリック・ディストリクト制度の活用などが有効ではないかと考えています。
 そこで、動態的保全手法を用いた歴史的建造物の保全について見解を伺います。

○只腰都市整備局長 既存の歴史的建造物を保存し活用する、いわゆる動態的保存につきましては、都におきましても、特定街区制度を活用して、重要文化財である三井本館や明治生命館などにおいて行ってまいりました。
 また、歴史的な環境を面的に保全するため、東京のしゃれた街並みづくり推進条例に基づきまして、柴又帝釈天周辺地区を街並み景観重点地区として指定するなど、既に海外都市の施策と類似する取り組みを行っております。
 今後も、敷地の条件、建物の状態、周辺の開発動向等を勘案し、特定街区などの都市開発諸制度を活用するとともに、現行の面的な保存のための仕組みを運用しながら、歴史的建造物の保存や歴史的景観の形成を推進してまいります。

○増子委員 中央郵便局の歴史検討委員会は、事業採算性も勘案し、中央郵便局を全面保存する場合には、保存建物の床面積相当の容積も含め、街区以外に移転させられる仕組みが必要であるという指摘をしています。
 また、余った容積を特定容積率適用地区以外の他地区に移転させられるような新たな仕組みが考えられるのではないかと思います。例えばアメリカ、ロサンゼルスでは、図書館の模様がえ工事費を捻出するため、公園の未利用容積を譲渡して資金を捻出した例があると聞きますし、ニューヨークでは、TDR制度と呼ばれる開発権の移転制度があります。
 国の法改正も必要ではあると思いますが、文化財級の歴史的建造物を保存するために、このような事例を参考にしつつ、都から国に対して、新しい制度の提案や協議を働きかける余地があるのではないかと考えますが、所見を伺います。

○只腰都市整備局長 都といたしましては、主要幹線道路により道路網が形成された地区内で、適正な配置及び規模の公共施設を備えた土地の区域であることなどを特例容積率の適用地区制度の適用の条件としておりまして、この仕組みは、都市計画法によります容積制度のあくまで例外でございます。
 今後とも、歴史の継承や開発のバランスが図られますよう、現行の都市開発諸制度を的確に運用するとともに、必要に応じまして制度のあり方などを検討するなど、適切に対応してまいります。

○増子委員 そもそも文化財としての東京駅舎を守るための移転容積を文化財級の建物の上に乗せるという今回の事例は、法の趣旨にかんがみていかがなものかなと私も思いますが、とにかく歴史の継承が図られるような取り組みを求めておきたいと思います。
 次に、震災対策について伺います。
 都の防災都市づくり推進計画では、地域危険度のうち建物倒壊危険度が五及び火災危険度五に相当し、老朽木造建物棟数が一ヘクタール当たり三十棟以上の町丁目を含み、平均不燃領域率が六〇%未満である区域とその連檐する区域が、整備地域選定の基準となっています。
 地域危険度は、平成十四年に公表された、第五回の地震に関する地域危険度測定調査報告書のデータが採用されています。このデータを見ますと、整備地域の選定基準となっている建物倒壊危険度五に該当する地域は八十三あるのですが、このうち整備地域に含まれているのは五十一地域と、六割にとどまっています。
 さらに、建物倒壊危険度が五で、火災危険度も五となっている地域は二十四地域で、この四分の一に当たる六地域が整備地域に含まれていません。例えば私の地元の文京区でいえば、根津二丁目がこれに該当しています。
 都は、整備地域内における木造住宅の耐震化に対して助成を行っていますが、民主党はこれまで、都内全域で制度を適用するよう、範囲の拡大を求めてきました。実際、例えば整備地域のない三鷹市や狛江市などからは、自治体から耐震化促進制度創設の要望が出されています。
 現段階で耐震化促進制度の都内全域での適用が困難であるならば、まずは第一歩として、せめて建物倒壊危険度五の地域はすべて、あるいは建物倒壊危険度と火災危険度がともに五であるような地域に拡大してはどうかと考えるものですが、所見を伺います。

○只腰都市整備局長 都は、お話にもありましたとおり、木造住宅密集地域の中でも倒壊危険度や火災危険度が高く、かつ、特に老朽化した木造建築物が集積した区域が連檐するなど、震災時の大きな被害が想定される地域を整備地域として指定してございます。
 このような地域におきましては、地震発生時に住宅が倒壊した場合、道路閉塞や出火によりまして避難、応急活動が妨げられ、大規模な市街地火災につながるおそれがあるため、公的助成の対象としております。
 今後とも、こうした地域において重点的に取り組むことが、防災対策上は重要であると考えております。

○増子委員 一方、昨年二月、地域危険度の第六回の調査結果が既に公表されています。このデータと第五回調査のデータを比較すると、建物倒壊危険度五の地域は約四分の一が入れかわっており、火災危険度が五の地域では、約半分の地域が入れかわっています。地域危険度は相対評価ですので、危険度が改善した地域があって、その一方で危険度がよりクローズアップされてきた地域もあるように理解をしておりますが、このような新しい調査結果を防災都市づくり推進計画に反映させ、早急にリニューアルすべきと考えますが、所見を伺います。

○只腰都市整備局長 現行の防災都市づくり推進計画でございますが、平成十四年に公表した第五回の地域危険度の調査結果などを踏まえて、重点的に事業を進める地域を指定し、地区ごとの整備方策を示したものでございます。
 昨年公表いたしました地域危険度の調査結果や事業の進捗状況などを踏まえまして、現在、関係区市と連携して推進計画の見直しを進めております。今後とも一層効果的な事業の展開を図ってまいります。

○増子委員 建物倒壊危険度が五で整備地域に指定されていない町丁目というのは、別に私の地元の文京区だけではなくて、葛飾区、江東区、新宿区、足立区、大田区、北区、墨田区にも存在します。地震が起きてからでは遅いと思いますし、景気対策や中小企業対策の観点からも、真水の公共事業として大変大きな意味があると思いますので、強く要望しておきたいと思います。
 次に、医療について伺います。
 代表質問では、医療計画、NICUの整備目標一・五倍、三百床に、周産期の救急搬送先を都域で調整するコーディネート機能の設置、救急医や産科医への手当など、高度医療を中心として伺いました。こうした対策で、危機に瀕している急場を何とかしのいでいけるように、しっかりとした執行をしていただきたいと思います。
 その上で、さらに現場を疲弊させ、医師不足を生み出している原因そのものについてもきちんとした対策を打ち出していただきたいと思いますので、何点か伺ってまいります。
 昨年、そして一定の代表質問で、疲弊する二次医療機関への対策として、初期救急の充実を取り上げました。フリーアクセス、応招義務がセットになっている我が国の医療制度のもと、患者は軽症でも救急病院に行きたいと思えば行って診てもらうことができますから、コンビニ受診が問題となっています。
 都は、区市町村が実施する初期救急事業の支援、救急ルールなどの取り組みを進めてきたことは理解しますが、状況は改善されておらず、さらなる対策が必要です。
 例えば、夜間診療を行おうとする開業医への補助、医師数が特に不足している地域への開業誘導策などは、本来は国の診療報酬や補助制度で不足する医療を充足させるための誘導策が講じられるべきではあります。しかし、東京の医療を守るためには、都が率先して取り組んでいかなければならないと思いますが、見解を伺います。

○安藤福祉保健局長 初期救急医療体制は、既にすべての区市町村で休日夜間急患センターなどが整備をされております。これに加えまして、利用者が多い平日の夜間帯について小児初期救急医療体制を整備するため、独自に区市町村に支援し、既に三十一区市が取り組みを開始しております。
 その上で、都は独自に、救急医療の東京ルールを定め、地域の救急医療機関の連携協力による救急患者の迅速適切な受け入れ体制の整備や、都民の救急医療に対する理解と参画を促すためのさまざまな取り組みを進めることとしております。
 このような取り組みを通じて、地域の救急医療体制の強化を図ってまいります。

○増子委員 私は、昨年の一般質問で転院問題というのを取り上げまして、患者の転退院調整をするメディカルソーシャルワーカーのレベルを上げたり、あるいは必要な医療機関情報を容易に取得できるように都として後押ししていくことや、異なる機能を持った医療機関が患者の状態に応じた役割分担を行うため、診療の流れをあらかじめ提示し、連携して医療を提供する地域連携クリティカルパスの普及について都の見解を伺いました。
 特に高齢者の転退院問題は、自宅療養、再度悪化した場合に適切な医療が受けられるのかなどといった不安から、患者、家族にとっては相変わらず大きな悩みです。
 その後、平成二十年度の診療報酬改定でクリティカルパスが算定され、都内でもパスができていると聞いていますが、都としてどのように把握しているのか、伺います。

○安藤福祉保健局長 地域連携クリティカルパスは、患者の治療計画を関係医療機関が共有することで、病状に応じた、切れ目のない医療提供を確保するためのものでありまして、平成二十年の診療報酬改定で、脳卒中の地域連携パスについて新たに算定をされました。
 脳卒中に関するパスは、連携促進のために関係医療機関同士で独自に開発したものが、現在、都内で七方式ありまして、延べ約百五十の医療機関が活用して、多様な患者ニーズに対応している実態があります。

○増子委員 患者の安心、あるいは納得にも資する取り組みですが、医療崩壊が目の前の現実となる今、すべての人が必要な医療を受けられる体制を守っていくため、限られた資源を効率的に使い、病院の機能に応じた転院、退院後の在宅医療、在宅支援とのスムーズな接続はますます重要となっています。
 こうした取り組みの普及のため、事例の情報交換、ノウハウの標準化に取り組んでいただきたいと考えますが、都の見解を伺います。

○安藤福祉保健局長 急性期から回復期や在宅療養へと、切れ目のない適切な医療提供体制を構築する上で、地域連携パスは有効なツールの一つであります。
 都は、来年度、脳卒中の地域連携パスを活用する医療機関のすべてを対象に脳卒中地域連携パス合同会議を開催し、転院調整に加え、在宅医療への移行も含めたパスの活用事例など、情報の共有化を図っていくこととしております。
 こうした取り組みを通じて、より一層の円滑な医療連携に向けて、パスの標準化等についても検討を行ってまいります。

○増子委員 国の診療報酬の改定なんかで、どうしても三カ月するとほかの病院を探さなきゃいけないというようなことがたくさんあって、困っている方もたくさんいらっしゃいますので、そういう意味では、この地域連携クリティカルパスの普及、あるいは転退院調整の支援ということが大変いい取り組みでもございますので、ぜひ積極的に取り組んでいただきたいと思います。
 続いて、医師確保策について伺います。
 医師に限らず、働く女性のワークライフバランスの推進は、出産、育児、看護休暇、復職後の仕事確保、勤務時間の短縮などの柔軟な勤務形態といった職場環境の整備と保育所の確保とが車の両輪となって実現するものであり、都として取り組んでいかなければならない課題です。
 中でも、医師不足が顕著な今、国家試験合格者の三割以上を占める女性医師が、医師として修行を積む時期でもある二十代から三十代にかけて、キャリアを中断することなく医師として働き続けていける環境づくりは、喫緊の課題です。
 東京都医師会が女性医師に行ったアンケートでは、仕事と家庭の両立を図るために必要な支援策として、託児所、保育園等の整備拡充と答えた方が八二%です。保育所で悩む女性医師は非常に多くいらっしゃいます。
 そこで、院内保育所の整備状況はどのようになっているのか、また整備する上での課題を都として把握しているのか、伺います。

○安藤福祉保健局長 平成二十一年三月一日現在の院内保育施設の設置数は、届け出を受けているものが百四十六施設であります。
 院内保育施設の整備上の課題につきましては、職員数が一定規模以上の医療機関でないと利用者が少なく安定的な運営が見込めないことや、複数の医療機関が共同で設置する場合には医療機関同士の調整が難しいことなどがございます。

○増子委員 院内保育所については、若い医師は短いサイクルで勤務先が変わるですとか、あるいはラッシュの電車通勤とか車の渋滞の問題など、あるいは子どもへの影響などの不安で、常時の保育というよりは病児あるいは病後児、夜間保育など一時的な保育への期待が多く、限られたものとならざるを得ないのではないかという意見も聞きます。利用者側のニーズもしっかりと把握されるように求めておきたいと思います。
 厚生労働省の、平成十八年医師・歯科医師・薬剤師調査では、都内に働く女性医師は七千九百九十二人で、そのうち三十九歳以下の方は四千三百六十人と半分以上です。さらに、全国ベースの診療科目、年齢、性別の医師数を分析しますと、三十九歳以下の女性医師が多い上位十科目には、医師不足が顕著といわれる小児科四二・六%、産婦人科四九・五%、産科五六・二%、麻酔科四一・三%が入っており、半数近くが女性医師です。この女性医師たちが出産を機に退職してしまうと、将来にわたって医師不足が深刻化していくということにもなります。
 私は、先日、医師専用保育所というのを視察してきました。木を基調とした園内は大変明るく、保育内容も、病児保育、病後児保育、週二、三回の保育、あるいは出産前からの入園予約、朝七時から夜八時までの開園、突発ニーズへの対応など、医師の仕事に配慮した運営をされているということでございました。しかし、ここは無認可保育所であって、行政からの補助もないために、保育料が週六日、一日十三時間で二十万円と、医師といえども若い勤務医師にとっては高額です。私は、こうした保育所に対し、整備や運営、保護者負担に対して何らかの公的支援が必要だと思います。
 例えば都は、事業主が設置する事業所内保育所や院内保育所に補助していますが、これがない場合には、保育手当を支給する病院に対し補助する、あるいは院内保育、事業所内保育の補助対象を拡大して、医師の就業継続を支援するような保育所にも補助するなど、さまざまな方法が考えられると思います。
 都内の待機児童の状況、現在の医師不足、医師確保の重要性にかんがみれば、院内保育所など既存の制度に加えての取り組み、しかも即効性のある対策が必要です。こうしたことから、女性医師の保育について都としてさらなる支援方法を検討するべきではないかと考えますが、ご所見を伺います。

○安藤福祉保健局長 都は、女性医師の就労継続への支援を充実するため、ワークライフバランスを推進する事業所内保育施設支援事業について、来年度から、保育サービス事業者が設置主体となり、医療機関や企業等と契約して保育を行う場合も新たに補助対象といたします。この取り組みにより、小規模な医療機関でも、必要なときに事業所内保育を提供できる仕組みとなると考えております。
 また、夜勤や長時間労働などさまざまな課題への対応を図ることも重要でありまして、このため、短時間勤務の導入や当直体制の見直しなど、勤務環境改善を含めた総合的な取り組みを進めているところであります。
 今後とも、女性医師の働きやすい環境の整備を支援してまいります。

○増子委員 区によっても違いますけれども、認可保育所のゼロ歳児保育は、一月三十万円から六十万円かけて保育をしているわけです。ほかにも認証保育所、保育室、保育ママなど、さまざまな保育に公的支援が行われています。同じように保育を必要としていながら、保育所などに入れた方とそうでない方では大変大きな差があるわけですから、待機児童が本当にゼロになるまでは、必要な保育サービスを受けられない方への支援のあり方についてぜひ柔軟に考えていただきたいと思います。
 次に、学校の支援について伺います。
 昨年から始まった学校支援地域本部事業は、人材に恵まれると非常にうまくいきます。希望する区市町村が実施でき、都内全域に広まると、よい効果をもたらすと思いますが、現在の実施状況について伺います。

○大原教育長 学校支援地域本部事業は、地域全体で学校教育を支援する体制づくりを推進し、地域住民がボランティアとして学校の教育活動を支援することを目的に、平成二十年度から実施された国の三カ年の委託事業でございます。
 現在、都内十八区市の九十八カ所で学校支援を行う学校支援地域本部が設置をされておりまして、小学校百八十一校、中学校七十五校で、授業の補助、図書整理や読み聞かせ、登下校の安全確保など、学校のニーズに応じた学校支援活動を行っていただいております。

○増子委員 平成二十年度から取り組み始めている区市町村を見ますと、三年間という時限のある委託事業として始まったことから、四年目以降への継続性について不安があったようです。この事業を広げていくためには、安定して事業を実施していけるようにする必要があると考えますが、二十一年度以降の状況と都の対応を伺います。

○大原教育長 国は、これまでの委託事業方式に加えまして、事業の継続や普及拡大を図るために、平成二十一年度から地方公共団体に対する新たな補助事業を創設いたしました。現在、補助事業の詳細については示されておりませんけれども、委託事業終了後の受け皿となる事業でございますために、今後、区市町村の意向や国の動向等を見きわめまして、都として適切に対応してまいります。

○増子委員 国でもモデル的に実施してきた委託事業とあわせて二十一年度から補助事業化されるとのことで、都と区がこの事業を評価し、実施する意思があれば将来も継続できることというふうに思います。
 この事業は、地域に学校を応援しようという雰囲気ができる、いいきっかけになると思っています。都としても、この事業に取り組む区市町村をぜひ応援していっていただきたいと思います。
 特に、コーディネーターの確保については、その活動内容が、学校内の図書館の整理、あるいは授業の支援といった学校側のニーズと、学校外の人材が提供できるシーズとのコーディネートだが、必要なノウハウが全く異なる多様な役割が期待されるため、なかなか全体を調整できる適切な人材が見つかりにくいというふうにいわれています。
 教員OBや、あるいはPTA経験者など、学校の事情がわかる人、あるいは外との連絡交渉が柔軟にできる人などがチームとなってコーディネーターを担っているという例もあって、どのようにしたらうまくいくのか、それぞれの取り組みを互いに情報交換する場などが必要だと思います。
 こうしたことは、都だからこそできる、もっといえば都でなければできないことだと思います。都はどのように区市町村を支援していくのか、伺います。

○大原教育長 学校支援地域本部事業を推進するためには、学校と地域を効果的につなぐ重要な役割を担うコーディネーターの育成が大切でございます。
 そのため、都教育委員会では、地域のコーディネーターを対象に、その資質の向上を図る、学校教育理解やコミュニケーション能力などをテーマとした研修を実施いたしますとともに、それぞれが持つノウハウの人材情報の交換の場を提供するなど、各地域のリーダーとして活躍する人材の育成に努めてまいりました。
 さらに、区市町村に対して、円滑な事業実施に向けた先進的な活動事例や効率的な運営方法等の情報提供を行ってまいりました。
 今後とも、これらの取り組みを充実いたしまして、地域における学校支援活動の推進に向けて、区市町村を支援してまいります。

○増子委員 前向きなご答弁で、ぜひ頑張っていただきたいと思いますが、戦前は、学校には後援会というのがあって、それぞれ後援会長さんというのがいらっしゃって、私の地元の文京区でも、古い学校なんかは、地域のみんなが来て花壇をつくってあげたり、そういう写真が残っていたりするんですけれども、多分ですけれども、戦後、PTA制度導入によって、親と教師だけの組織ということになっちゃったこともあるんでしょうが、だんだん地域と距離ができてきて、その後、学校を評価するという、国が仕組みをつくりましたけれども、本来、学校は評価する対象というよりは応援すべきものだというふうに私は思っていますので、この事業を広めることで、いわば古きよき時代の学校と地域の関係が取り戻せるように期待をしていますので、ぜひ頑張っていただきたいと思います。
 次に、私立幼稚園の補助について伺います。
 幼児教育は、子どもの発達段階に応じた情操教育、またプレスクール、小学校就学前に集団行動など社会規範を身につける意味でも大変重要なものです。国政レベルでも、幼児教育の無償化が議論をされています。経常費補助金は、都道府県によってさまざまな補助方法となっているため、一概にはいえないとは思いますが、都の私立幼稚園に対する一人当たりの単価の全国的位置は余り高くないというふうに認識をしています。
 そこで伺いますが、幼稚園の経常費補助の考え方はどのようなものか、また、小中高等学校と異なる点は何か、伺います。

○秋山生活文化スポーツ局長 都における幼稚園への経常費補助は、学校法人立の幼稚園に対しまして、教育条件の維持向上、保護者負担の軽減、私立学校の経営の健全性の向上を目的として交付しているものでございまして、運営にかかる標準的な経費を算出し、その二分の一を補助する制度でございます。
 また、この標準的な経費につきましては、小中高等学校につきましては、公立学校における運営費の実績値をもとに算出をいたしますが、幼稚園に関しましては、標準となるべき公立幼稚園が私立に比べて少ないことに加え、公私の教員の在籍年数の大きな差に起因する給与格差があることなどから、私立幼稚園の実績値などをもとに算出しているところでございます。

○増子委員 小中高については、公立の運営費の実績値の二分の一ということで経常費補助を行っていますから、公私格差是正という効果が明らかであるというふうに私も思います。一方、幼稚園は、私立幼稚園の決算値から運営費を算出しているということでした。公立に比べて人件費等が低い私立の決算値を平均したのでは、補助金がなかなか上がっていかないのではないでしょうか。
 都全体では、私立幼稚園が八百六十八、公立幼稚園が二百十四、国立が二園です。私の地元の文京区では区立幼稚園が十園、国立が二園、私立が十六園と、大体半分ぐらいですが、こうした状況で公立と私立の財政格差を見ると、歴然としてしまいます。
 例えば平成十六年の数値ですが、国の調査では、公立の平均給与は月三十二万三千七百円、私立は二十万四百円と、全国平均では月十二万円余りの差があります。これが東京都になると、公立の平均が三十七万四千円であるのに対し、私立の平均は二十一万八千円と十五万円余りの差となってしまいます。この給与格差のもとでもありますが、平均勤続年数が公立は二十・五年であるのに対し、私立は八・二年と、なかなか教員が定着しづらいということも読み取れます。安定的補助金である経常費補助を充実させるべきではないかと考えますが、見解を伺います。

○秋山生活文化スポーツ局長 幼稚園児の九割以上が通う私立幼稚園は、その建学の精神に基づきまして、個性的で特色ある教育を展開して都民の期待にこたえておりまして、東京の幼児教育に大きな役割を果たしているところでございます。
 都は、こうした私立幼稚園の公教育に果たす役割の重要性にかんがみまして、これまでも、基幹的補助である経常費補助について、運営に必要な水準の確保に努めてきたところでございます。
 先ほど副委員長からのご質問にもございましたとおり、公立と私立の職員の給与費に一・六倍程度の差があることから、公立の給与をもとに私立幼稚園に対する経常費補助を算定いたしますと、かなり過大な水準になるということで、ここでは必要な水準を算定し、ただ、経常費補助の目的の一つでございます保護者負担の軽減につきましては、直接園児保護者へ補助する制度、これの充実に努めてもきたところでございます。
 引き続き、私立幼稚園の振興を総合的に図る観点から、適切な予算の確保に努めてまいります。

○増子委員 確かに、経常費補助以外にもさまざまな補助がありますから、単純な比較は難しいと思いますし、総体でいうと都は私学助成に大変頑張っていただいているというふうに理解をしています。
 ただ、公立幼稚園が少ないというお話がありましたけれども、都立高校より多いわけです。そういう意味でいうと、基準をつくることが不可能だというふうには思いませんし、在籍年数についてのお話もございましたけれども、逆にいうと、この仕組みであるがゆえにそうなっているということも考えられますので、幼稚園の経常費補助については、私は改善の余地が大きいというふうに思っています。幼稚園の安定的な財源確保を常に考え続けていくことが必要だというふうに思いますので、今後ともぜひ充実に努めていただくことを求めておきたいと思います。
 次に、築地市場の移転問題について伺います。
 築地市場の現在地再整備については、種地が場内または隣接地に約四・五ヘクタール必要だといわれています。もちろん、種地が場内または隣接地にあるにこしたことはありませんが、それが絶対条件だというのは若干疑問がございます。
 かつて東京都は、汐留国鉄跡地の一時利用なども検討していました。また、晴海地区の利用については、平成二年七月五日の第二回定例会において、自民党の立石晴康議員が、例えば荷さばき場、駐車場、資材置き場など市場施設を設け、船輸送により晴海と築地を有機的に結びつけ、再整備を円滑に進める必要があると質問したのに対して、東京都は、ご指摘の再整備工事中の晴海見本市会場跡地利用に関しては、今後、豊洲・晴海開発整備計画との調整が必要であり、関係機関と十分協議していくと答弁をしています。
 つまり、築地市場の現在地再整備のために晴海を一時的に活用することは、敷地が離れているからだめだというよりは、行政計画である豊洲・晴海開発整備計画との調整が課題であるということをいっていると思います。当時の答弁についてどのように考えておられるか、伺います。

○比留間中央卸売市場長 平成二年第二回定例会におきます答弁は、現在地再整備の困難性を踏まえ、工事を円滑に進めるために、晴海見本市会場跡地を市場機能に直接影響しない仮設駐車場や資材置き場として補完的に利用することの可能性について、関係機関と協議していくことを表明したものと認識をしております。
 その後、この方針に沿って関係局と調整の上、平成三年から晴海地区に用地を確保し、場内の通勤駐車場の一部を仮移転したことにより、正門仮設駐車場等の準備工事を行うことができました。こうした方策とあわせて、工事用と営業用の車両動線を分離するための仮設搬入路や仮設桟橋の整備など準備工事を進めましたが、平成八年、買い荷保管所の仮移転を伴う卸、仲卸売り場のローリング工事に着手する段階で工事が中断をいたしました。
 これは、工事用の種地が十分に確保できず、買い荷保管所の仮移転先が場内の各所に分散せざるを得なかったことから、物流動線のふくそうなど営業への深刻な影響が懸念され、業界調整が難航したことによるものでございます。

○増子委員 また、現在の築地市場の敷地は二十三ヘクタールですけれども、先日発表されたオリンピック立候補ファイルでは、晴海のメーンスタジアムの会場面積を三十八・一ヘクタールと定め、そのうち都有地は晴海五丁目だけでも約三十一ヘクタールを占めています。東京都は、晴海地区は面積が狭小で、交通のアクセスも非常に不便だといってきましたが、オリンピックのメーンスタジアムのためなら三十一ヘクタールが確保できるというのであっては、都民は納得できないと思います。
 また、立候補ファイルでは、晴海と隣の豊海町との運河の上に新たな橋をつくったり、大江戸線勝どき駅の駅を拡張するなど、新たなインフラを整備することも盛り込んでいます。
 市場移転先としては、まず豊洲への移転が大前提で、他の移転候補地については真剣に検討してこなかったようにも思われますが、見解を伺います。

○比留間中央卸売市場長 築地市場の移転につきましては、平成十二年から平成十三年にかけて、卸売市場審議会で具体的な移転先の条件も含めた検討が行われました。審議会では、四十ヘクタールの敷地の必要性に加え、買い出し人の利便性、良好な交通アクセス、築地の商圏との継続性等の条件のもとに、現地視察も行った上で、晴海、有明北など五地区を候補地として比較検討し、すべての条件を満たす豊洲地区が最適との結論が出されました。
 都は、この審議会答申を受け、業界団体との協議も踏まえ、平成十三年十二月の第七次東京都卸売市場整備計画において、豊洲地区への移転を決定したものでございます。
 また、この間、再度都内全域にわたり移転候補地となり得る用地を調べましたが、すべての条件を満たす場所は、豊洲新市場予定地以外にはございませんでした。

○増子委員 豊洲というのは、平成十年四月に市場業界団体が臨海部への移転可能性について調査検討をお願いした際に、具体的には豊洲を想定していると口頭で補足説明したというのがもとになっていると思われます。
 さて、現在地再整備の事業費については、平成二年の基本設計策定時にはおおむね二千三百八十億円と試算していましたが、平成七年十一月発表の「とうきょうプラン’ 95」策定時の試算では三千四百億円と、約一千億円の増額になりました。この三千四百億円の財源確保について、東京都は平成八年三月二十五日の予算特別委員会において、築地市場再整備に投入できる資金は相当厳しいとの認識を示しつつも、市場運営経費及び現行整備計画の合理的見直しなど、財源確保のため可能な限りの努力をすると述べていました。
 また、当時、東京都は、確かに国に対して、地方交付税不交付団体に対する中央卸売市場施設整備費国庫補助金の財源調整措置の廃止を重点事項として提案要求していました。しかし、平成十七年六月以降は重点事項から外されるなど、財源確保をあきらめたようにも思われます。
 財源不足を理由に現在地再整備が困難だというのであれば、三千四百億円が試算された平成七年の時点で、困難だという結論に達していてもおかしくなかったのではないかと思われますが、当時の財政状況とあわせて見解を伺います。

○比留間中央卸売市場長 築地市場再整備基本計画は、昭和六十三年に策定したものでございまして、事業費は二千四百億円と見込んでおりました。この計画に基づき、平成三年から再整備に着手したものの、業界調整が難航し、平成八年には工事が中断いたしましたが、その時点では、工期の長期化及び整備費の増大という課題が顕在化をしておりました。
 平成七年の試算によれば、事業費は工事費単価の上昇等により約三千四百億円に増加する一方、財源である建設改良積立金は二千八百億円であることから、バブル経済崩壊後、かつてのような市場の成長が見込めない中にあって、財政面からも整備計画を見直さざるを得ない状況にございました。
 このため、卸売市場審議会の答申を受け、工期の短縮及び建設コストの縮減のため、基本計画を見直す方向で業界団体と協議を行い、複数の再整備案を検討いたしましたが、いずれの案も合意に至らず、現在地再整備は困難であり、移転整備へと方向転換すべきと意見集約をされたものでございます。

○増子委員 ただ、平成七年当時には二千八百億円あった建設改良積立金が、平成十九年度末で千六百億円にまで減ってしまったことをもって、財政的に困難になったというのはいかがなものかと思います。
 平成十四年に作成された市場財政白書によると、神田市場跡地などの市場用地は、昭和三十九年の公営企業会計への移行に伴い、一般会計から現物出資されたものであり、市場の事業収入により取得したものではないとした上で、特殊な要因によって生じた利益であるので、経常的な収支から切り離し、施設整備等の事業など資産の維持拡大を図るための再投資の財源として活用すべきであるとしています。
 しかし、この論からすると、いずれ市場会計の留保資金が底をついた場合、またどこかの市場を移転、廃止するなどして用地を売却しなければ施設の整備ができなくなって、この構図はいずれ破綻するのではないかと思われますが、見解を伺います。

○比留間中央卸売市場長 中央卸売市場会計におきましては、これまで、神田市場跡地の売却収入などをもって、大田市場の建設を初め、世田谷市場や食肉市場など各市場の施設整備を進めてまいりました。豊洲新市場の整備に当たりましても、築地市場跡地の売却収入をもって財源不足を補てんすることとしており、この豊洲新市場の整備により、水産、青果の基幹市場の移転整備はおおむね終了をいたします。
 今後は、築地市場の売却収入の残額などによって、老朽化した既存市場の改修や品質管理の高度化などの新たなニーズに対応していくこととなりますが、大規模な基幹市場の整備がほぼ終了いたしますことから、この先相当期間にわたり、市場会計において必要な施設整備に対応していくことができるというふうに考えております。
 ただし、このように保有資金を活用し、将来にわたって必要な施設整備を実施していくためには、市場経営において収益面の収支が健全であることが不可欠でございます。このため、コストの縮減などの努力はもとより、財産の有効活用や適切な使用料水準の維持などに努めてまいります。

○増子委員 市場用地の売却収入を見込まなければ健全性が保てない市場会計のあり方にも問題はあるのではないでしょうか。
 築地に限らず市場用地は、そもそも一般会計から現物出資されたものです。であれば、出資を受けている市場会計は、出資者である都民に対して説明責任を果たすべきです。かつて市場財政白書というものが平成十年に発行され、その後、平成十四年五月までに計四回発行されましたが、それ以降、現在まで発行されていません。私は、こうした市場財政の現状について、改めて都民にわかりやすい形で明らかにすべきであると考えますが、見解を伺います。

○比留間中央卸売市場長 市場財政白書は、使用料の改定など市場の財政状況や課題を都民や市場関係者に正しく理解していただくため、平成十年度から平成十四年度まで計四回発行いたしましたが、平成十五年度以降は、財政収支の見通しに大きな影響を及ぼす豊洲新市場の整備計画が検討過程にあったことから、発行はしてまいりませんでした。
 今後、豊洲新市場の整備を推進し、使用料のあり方など市場財政に関する将来的な課題の整理をした段階で、白書などわかりやすい資料を作成し、都民や市場関係者の理解が得られるように努めてまいります。

○増子委員 できるだけ速やかに白書などの作成、発表を要望しておきたいと思います。
 また、築地市場の移転問題は、豊洲と築地だけの問題にとどまりません。市場関係者やその取引先、築地場外や地元住民、地元自治体などにとっても大きな影響があります。そして何よりも、日本の食文化の中心である築地が世界に冠たる存在であることに誇りを持つとともに、その築地市場が汚染された土地に移転してしまうことに不安を感じている多くの都民、国民に対して、東京都は真摯に説明すべきです。
 築地市場の移転問題に関して、東京都としてもシンポジウムや公開討論会を開催するとともに、関係団体からの出席要請があれば、積極的に説明責任を果たしていくべきと考えますが、見解を伺います。

○比留間中央卸売市場長 築地市場の移転を進めるに当たって、積極的な情報提供や説明を行うことにより、都民や市場関係者の十分な理解と協力を得ていくことが重要でございます。
 都としては、これまで、豊洲新市場の整備計画や土壌汚染対策に関する調査データ等を公表するとともに、専門家会議の審議を公開し、技術会議につきましても、開示できる会議録、会議資料等はすべて公表してまいりました。また、移転の必要性などについてわかりやすく説明したパンフレットを作成し配布するなど、さまざまな方法により、広く理解が得られるよう努めてきたところでございます。
 今後とも、ホームページやパンフレット等を活用し、一層の情報提供に努めるとともに、市場業界や地元自治体等に対し、豊洲新市場への移転や土壌汚染対策について十分に説明をしてまいります。また、移転問題全般に関し、より効果的な都民への周知の方法を検討してまいります。さらに、関係団体からの要請があった場合には積極的に対応し、説明責任を果たしていきます。

○増子委員 いろいろ伺いましたが、種地の問題でも財政の問題でも、時間の経過とともにみずから選択肢を狭めてきたのではないかなというふうにも思います。
 築地市場の移転問題については、いまだに多くの都民が疑問を抱いています。今の答弁にもありましたように、シンポジウムや公開討論会の開催、あるいは、関係団体からの要請があれば積極的に対応していただけるということなので、ぜひ東京都としての説明責任を果たしていただきたいということをお願いしておきたいと思います。
 次に、地域力の向上について伺います。
 安全で災害に強い地域コミュニティをつくっていくために、常備消防だけでなく、地域の住民で構成されている消防団の皆さんが大きな役割を担っています。しかし、社会環境の変化により、その基盤を支える団員数が年々減少し、昼間の地域防災力の低下など、機能の充実が課題となっています。
 そこで、消防庁は、消防団協力事業所表示制度を初め、入団を促進する取り組みを行っています。
 また、事業所が地域防災などの社会貢献を推進していくためには、その活動に効果をもたらす取り組みが重要だといわれています。それは、消防団活動に協力していることのPRや、資格取得の特例措置などが挙げられますが、長野県では、消防団活動に協力している事業所に応援減税を開始しました。
 都においても、低炭素型都市の実現に向け、事業者の自主的な省エネ努力へのインセンティブとして、東京版環境減税を実施します。そこで、事業者が、都が目指す災害に強い都市の一端を担うきっかけとして、減税を行うなどの手法が今後検討されてもよいのではないかと考えるものです。見解を伺います。

○熊野主税局長 いわゆる政策減税は、都政の重要課題の解決を支援する観点から、当該事業を効果的に遂行するための補完的役割を担うものでございます。
 長野県におきまして、消防団の活動を支援する事業者に対して事業税の減税が行われていることは承知しておりますが、長野県と東京都では地域特性がかなり異なっており、また、消防団に対しては既に歳出面でさまざまな支援を行っていることなどから、今後、事業税等の減税を行うかどうかにつきましては、租税原則なども踏まえながら、その必要性や効果などを十分に吟味する必要があると考えております。

○増子委員 また、都は、入札契約制度改革として、企業の社会貢献をどのように評価していくのかをことし夏ごろに向けて検討していると伺っています。
 都は既に、環境や福祉の観点からの優遇措置を取り入れています。最近は、他県や政令市においても、防災協力や消防団雇用、子育て支援、女性の働きやすさなど、多様な地域貢献を加味した評価を取り入れ始めています。
 私は、都においても、消防団員雇用やボランティア活動など、地域社会貢献に協力している事業所への入札契約制度における評価を検討、実施していくべきだと考えますが、見解を伺います。

○村山財務局長 公共契約におきましては、透明性、公平性、経済性、品質の確保などが求められるわけでございますが、これら契約本来の目的を損なわない範囲で、環境、福祉などの政策目的をサポートする手段の一つとして契約制度を活用していくことも有効と考えております。
 ただ、お尋ねの地域社会貢献活動につきましては、活動内容を評価する客観的な基準や指標をどのように設定するのか、あるいは、事業者の受注機会の確保についてどのような影響を与えるかなど、検討すべき課題もあることから、そうした点も含めまして、今後とも入札契約制度改革研究会において、幅広い視点から議論をしてまいります。

○増子委員 ぜひそれぞれ東京の地域力向上のために検討を進めていただくことをご要望させていただきたいと思います。
 引き続き田中理事から関連質疑をさせていただきます。ありがとうございました。(拍手)

三宅副委員長 計測をとめてください。
 ただいま、田中良理事より関連質疑の申し出がありました。
 本件は、予算特別委員会実施要領第七の規定に基づき、質疑委員の持ち時間の範囲内で認めることになっております。
 田中良理事の関連質疑を認めます。
 なお、田中良理事に申し上げます。
 発言は、増子副委員長の質疑の持ち時間の範囲内となっておりますので、あらかじめご了承願います。
 計測を始めてください。

○田中委員 外部調査報告書の関係でお尋ねをいたしますけれども、この外部調査報告書では、なぜかヒアリングの対象者を明らかにしておりません。個々人名は無理だとしても、延べ何人を対象に考えていて、実際に応じた人数と応じなかった人数、また、その理由を明らかにしていただきたいと思います。例えば、連絡がとれなかった、あるいはそれとも何かの条件をつけられた、どういう条件を提示されたか、こういった点を明らかにしていただきたいと思います。

○佐藤産業労働局長 ただいまのご質問の直接的なお答えに入る前に、まず今回の調査でありますけれども、今回の調査は、十一名の弁護士がスタートから八カ月間にわたって、関係者からのヒアリングのほか、千二百部に及ぶ関係書類やファイルの分析検討を行ったものでありまして、ヒアリングはその調査の一部という位置づけになるわけであります。
 それで、今回の外部調査報告書によりますと、調査対象期間中に取締役または執行役に在任していた者、調査対象期間中に新銀行東京の業務執行に関与した従業員等、新銀行の開業に関与した者及び新銀行東京調査委員会の調査に関与した者等の四十五人に対しヒアリングを行ったとしております。
 ただ、外部調査報告書では、調査対象者の人数等については明らかにされておりません。今回の関係者へのヒアリングは、あくまで任意でご協力をいただいたものでありまして、新銀行東京は、応じたか否かを含めまして、その内容については明らかにしておりません。

○田中委員 調査対象期間中の取締役、それから執行役というのは、取締役十人、執行役は十人、合計二十人だというふうに認識をしているわけですけれども、これらの、役員と呼びましょうか、役員へのヒアリングに対して、全員、これ、応じたんですか。仁司さん、丹治さんは応じなかったといっているけれども、それ以外の取締役、執行役は応じなかった人がいるんですか。いるんだとしたら、その理由とか、それから何か条件がつけられていたのならば、そういう内容を明らかにしていただきたい。

○佐藤産業労働局長 ただいまもご答弁申し上げましたとおり、今回の関係者へのヒアリングはあくまで任意でご協力をいただいたものであって、新銀行東京では、応じたか否かを含めて、その内容については明らかにしていないということで、ただし、今お話のありました仁司氏、丹治氏の両名につきましては、今後の訴訟の対象となることから、ヒアリングに応じなかった事実のみが明らかにされているということでございます。

○三宅副委員長 田中理事、委員長と呼びかけてください。着席願います。

○田中委員 銀行は明らかにしていないというふうにおっしゃいましたけれども、都として、それらのことについては関心を持たないわけですか。都としては、そういうことについては把握していないわけですか。

○佐藤産業労働局長 今回の調査は、あくまでも新銀行東京が外部の専門機関に対して、経営悪化の原因等についての法的な責任を追及する調査を行ったものでありまして、我々としましては、新銀行東京から発表されたその調査報告書を、専門的な見地から検証された内容であるということで、その部分については尊重していくという、そういうスタンスでおります。

○三宅副委員長 田中理事、着席してください。呼びかけてください。

○田中委員 はい。東京都は、大枠で、大枠の監視をすると。その大枠の監視をする方法としては、情報をとるということと、一番大事なのは人事を通じて大枠の監視をするというふうにかねがねいっているわけですよね。取締役は株主総会で、つまり事実上は東京都が選ぶわけですよね。東京都の意を体した取締役会で執行役を選ぶわけでしょう。実態上はみずから人事を行っているというふうにいってもいい過ぎではないというふうに思うんですよ。それについて念頭に置いたときに、東京都として、この取締役、執行役が調査にきちんとすべて協力していただいたかどうかということについて、把握することもない、関心も持たない、これは異常じゃないですか。

○佐藤産業労働局長 先ほど申し上げましたけれども、調査における関係者のヒアリングは、あくまで新銀行東京の経営悪化の原因を明らかにするための一つの手段であるわけであります。今回の調査にはそのほかにもさまざまな調査研究が行われて、その集大成として報告書が出されたわけであります。先ほどもお話ししましたとおり、関係者のヒアリングだけではなくて、関係書類、ファイル等の分析、検討、これを慎重に行った結果でありまして、仮にヒアリングに応じなかった人がいたとしても、それをもって我々が調査が不十分とかいうような認識には立つものではございませんので、そのようなことはいたしません。

○田中委員 つまりこの外部調査報告書というのが本当に客観的であるかどうかということに対して、我々は疑念を抱いているわけなんですね。というのは、内容を読みますと、例えば個名で、森取締役はこういうときにこういうことを指摘したということがある。ところが、執行役については、仁司さんと丹治さんの個名は出てきますけれども、証言としては元執行役、元監査委員とか、その他の人については個名はないんですよ。例えば議事録がこういうふうに添付をされていて、その中からこういう形で発言が抜粋されたとかいうような体裁にもなっていないわけですね。だから、客観的に本当にこの調査が信用--すべてうそだといっているわけじゃない。しかし、そこに本当に客観性があるかどうかということを検証することは、我々は非常に難しいということであります。
 外部調査報告書を見ますと、私は前回もお尋ねをしましたけれども、十八年の六月の株主総会というのが大変重要なポイントじゃないかというふうに思っています。この時点で執行役が大幅に交代をしております。その人事は銀行からの発議なのか。銀行からの発議だとすればそれはどういう理由なのか、都に事前の相談はあったのか、都の意思だとしたらどういう理由だったのか、そのあたりをお聞かせください。

○佐藤産業労働局長 ただいまのご質問に入る前に、先ほど理事が発言されましたけれども、すべてが明らかにされていないというところで、調査に対する信頼性の問題だというふうなお話がございましたけれども、当然訴訟を前提にした調査をやったわけでありまして、結果的に、その訴訟について、新銀行東京は今後訴訟を実行するということであります。そういう意味では、今後の訴訟をにらんだ中で、報告書として明らかにされる部分と、現段階ではされない部分と、そういうところの色分けというのは当然のこととしてあるものだと思いますので、出された内容だけをもって信頼性に足るか足らないかという議論をされるのは、ちょっと早計ではないかというふうに思います。
 ご質問でありますけれども、新銀行東京では、平成十八年六月の定時株主総会時に、坂田氏、武見氏の二名の執行役が退任をして、有吉氏、近藤氏、丹治氏の三名の執行役が取締役会の決議により新たに選任をされたわけであります。
 なお、これらの執行役の交代については新銀行東京から事前に説明を受けておりますが、その退任理由は任期満了に伴うものというふうに聞いております。

○田中委員 任期満了に伴うものというふうにお答えになられましたけれども、これは本人の意思ですか、おやめになった方は。

○佐藤産業労働局長 任期満了に伴うものというふうに聞いております。

○三宅副委員長 田中理事、着席してください。

○田中委員 はい。私は本人の意思かどうかということをお尋ねしたので、それについてお答えいただきたいんです。

○佐藤産業労働局長 退任された個々人の本人の意思については、つまびらかにしておりません。

○田中委員 人事を通じて大枠の監視をするということをおっしゃっていて、その執行役、つまり経営の中枢を担う人物について、本人の意思が確認されていないということは、どうやって監視の役を果たしていくんですか、責務を果たしていくんですか、これ。おかしいじゃないですか。

○佐藤産業労働局長 株主としては、個人レベルでどのような意思があったかどうかまでについては、当然つまびらかにしておりません。人事を通じて監視をするというのは、確かにそういう面があります。ただ、銀行にとっての経営上大きな問題がないという限りにおいては、株主としては、執行役の選任の権限を有する取締役会の決定でありますとか経営陣の判断、これを尊重していくというのが当然基本的なスタンスであるというふうに考えます。
 しかしながら、経営が悪化したような場合については、株主として当然のことながら人事権、いわゆる株主総会なり等々を通じて人事権の株主としての権限を有効に活用して、体制の刷新を図る等々のことをするわけでありまして、当時、十七年度決算について見れば、計画損益、計画上の損益の二百十九億円という十七年度決算が出た直後の時期でありますけれども、それについては、実績としては計画損益を上回る形で約十億円改善をされているというような経営状況にありましたから、その時点では人事に介入するまでの状況というような形では認識をされずに、先ほど申し上げました、株主としての基本スタンスである執行役選任の権限を有する取締役会等々の判断を尊重していたということになろうかと思います。

○田中委員 経営に大きな問題がない時期だったというご答弁ですよね。何をおっしゃっているんですかね。だって、外部調査報告書では、この時期、一二ページとか一三ページにかけて書いてありますけれども、執行役全員が出席する統合リスク管理委員会において、十八年の一月、二月の時点で重要な問題が指摘をされているわけですよ。
 一月二十日の統合リスク管理委員会では、デフォルトによる損失が利息収入等を上回る状況にあるんだ、収益を上げるための方策を考えることは喫緊の課題だ、こういう元執行役の証言もありますよね。二月十五日、現状の回復が見込めないならばポート型融資はやらない方が収益的には望ましいことだ、こういう元執行役の証言もここに書いてある。
 報告書には、新銀行においては利息収入等が主たる収益源であり、これによって預金利息等の資金調達費はもちろん、物件費や人件費等の経費を賄う必要があったことから、このような状況は想定されていなかったとされている。つまり想定外の事態に直面していたんですよ。開業して一年の時点でですよ。
 二月二十二日の取締役会においては、森取締役から、中期経営目標の見直しの必要性が提起されているじゃないですか。三月十五日の監査委員らが実施した執行役との意見交換会でも、執行役から、大変危惧している、今後の金融庁検査で問題となってくる気がすると。
 大変重要な局面にこの銀行の経営は立ち至っていたわけでしょう。そのときにこの人事を、ただ単に右から左に聞き流していた。これでどうやって大枠の監視を務めていたんだといえるんですか。

○佐藤産業労働局長 田中理事の今の銀行の当時の経営状態に関する状況の説明が調査報告書に基づいてされましたけれども、勘違いをされていらっしゃるとちょっと困るんですけれども、それは銀行内部の統合リスク管理委員会でありますとか、取締役会でありますとか、経営の内部の状態での当時の状況が今回の調査ではっきりした、そういう事実でありまして、我々東京都は株主の立場として、当然のことながら統合リスク管理委員会や取締役会の議事内容については知り得る立場にないわけですね。そういう立場にない者が、十八年の六月に決算状況が報告をされた。先ほど理事がおっしゃったような状況については、我々東京都としては知らない状態でもって決算が報告され、その決算の結果が計画数値より上回っていた。そういう状況認識が、当時都としてはする状況になかった。であれば、先ほど申し上げましたとおり、当然計画より上回ったという経営状態にある中での一定の判断がされたという意味で、私は説明を申し上げたつもりでございます。

○田中委員 二名の退任された執行役、これは二人とも退任と同時に会社と縁を切っているんですか。会社からやめたんですか。

○佐藤産業労働局長 一名については退社をされ、もう一名については、年内にまだ会社には、執行役からは外れましたけれども、在任をしたというふうにたしか記憶しております。

○田中委員 一名は退社をされ、一名は年末までいた、そういうようなご答弁ですよね。おかしいじゃないですか、これ。だって、退任されて、本人の意思でやめて、何も会社に残っている理由は普通はないですよね。つまりこの人事というのは事実上の、法的にいえば何ていっていいかわからないけれども、不再任でしょう。わかりやすくいえば更迭でしょう。解任でしょう。こういう事実について、今になってもどうして隠し通そうとするんですか。どういうことだったんですか、これは。

○佐藤産業労働局長 別段隠し通そうとするつもりもございませんけれども、申しわけございません、質問をもう一度していただけたらありがたいんですが。

○田中委員 十八年の六月の任期満了で二人執行役はおやめになった。本人の意思ですかと確認したら、つまびらかでないと。でも、一人は年末まで会社に残っているわけでしょう。この執行役というのはスタートのとき、つまり税務協会に集まったスタートのときのメンバーじゃないんですか。そのときに雇用した雇用の契約書というのは私は見たことないのでわかりませんけれども、当然執行役に就任をすることが前提で集められたメンバーですよね、初期の。それは去年の議会の中でも答弁をいただいたと記憶していますけれども、それが十八年の六月におやめになって、それで十二月まで一人が残っているわけでしょう。だから、事実上のこれは取締役会において解任されたということじゃないんですかといっているんですよ。

○佐藤産業労働局長 先ほどから申し上げますとおり、任期満了ということで、委員会設置会社の執行役の任期というのは一年ということで決められておりますので、執行役からはその時点で任期満了でもって退いたということだと思います。

○田中委員 では、任期満了だったらみんな退くんですか。任期満了でずっとその後続けている人とやめた人がいるわけでしょう。やめて、会社をやめるというならまだわかりますよ。執行役だけ不再任になって、ずっと会社に残っているわけでしょう。だから、これは解任じゃないんですか。不再任でしょう。本人の意思じゃないんじゃないんですか。

○佐藤産業労働局長 ちょっと、不再任かどうか、それは任期を満了して執行役からおりたわけですから、それは執行役としての再任をされなかったという意味では不再任でありますけれども、それがどういうことに波及するのか、ちょっと私はよく意図がわかりませんが、事実はそういうことであります。

○田中委員 平成十九年四月十三日、知事の定例会見録というのがあるんですよ。ここで新銀行のことを問われた石原知事が、いずれにしろ、システムを全部変える、変えなくちゃいかぬと思います、今何か、二つのボードがあって、それをつなぐのが頭取一人という形でやっているみたいですけれども、そこで十全な討論が行われたかどうか非常に疑問です、結果見ればわかることですし、それから意見の合わない、むしろバンキングに関しての専門家が私の知らぬうちに更迭されていた、そういう人事についても事前の相談もなかった、これはやっぱり大株主でありますからね、こちらから東京都を代表する役員を送ってなかったということも瑕瑾であったかもしれませんけれども、しかし、それにしてもやはり、そういう大事な人事についての報告一つが後になって伝わってくるというのは、透明感がありませんしねと、こういうふうに、これ、知事の言葉を起こしてあるので、知事の発言なんですけれどもね。これと、この十八年六月の役員の人事というのは関連していますか。

○佐藤産業労働局長 知事が、今、田中理事がおっしゃられたようなことを申し上げたのは、銀行の経営状況が極めて悪化をした、そういう時点からさかのぼって、銀行と東京都の間なり銀行内部での意思疎通の問題が非常に悪かったということ、それは人事だけではなくて、いろいろな意味で風通しが悪い状況にあったということの状態に対して、知事が人事に関してそういう話をしたのでありまして、とりたてて十八年六月云々かんぬんを特定してお話しになったのではないというふうに理解しております。

○田中委員 何で知事の発言について局長がそんなによくわかっているのか、よく私もわからないんですけれども、ただ、改めて前後の経過を調査報告書も見ながら検証してみると、人事を通じて大枠の監視を務めるというふうにいっていながら、このときの人事というのは、都の説明のような単なる任期満了ということではないんじゃないかということが十分推察できるわけなんですね。私はそういう意味で大枠の監視--つまり外部調査報告書というのは、旧経営陣がデフォルトによって経営難に立ち至った、その旧経営陣の法的責任を念頭に置いて旧経営陣を調べるということですね。東京都として、都民の税金一千億を毀損させて、これがどういうふうに、どうしてこうなったんだろうかということを都としてきちんと検証するという気がなぜないのかということがよく私は理解できませんし、多くの都民もそこは同じだろうというふうに思っております。
 時間の都合がありますので、次に行きたいと思いますけれども、再建計画を今進めておりますが、この再建計画というのは二十三年度終了ですよね。つまり二十四年の三月までの計画ということになっていると思うんですね。ところが、石原知事の任期はその一年前の二十三年の四月で、知事が四期目のご出馬をされるかどうか、これはわかりませんけれども、少なくともこの任期中に、私は、この銀行の再建計画後の道筋というのは、知事がつくった限り、知事のもとできちっとつけていくということがあるべき筋だというふうに思っています。
 この銀行の設立目的というのは、全く新しい銀行をつくる、無担保無保証、スピード融資ということを売りにつくったわけですけれども、今の再建計画が終わった後、その後一体知事はどういうふうにこの銀行をしようと思っているのか。無担保無保証、スピード融資という、これまでのマスタープランをもう一回基礎にして再構築しようとするのか、それとも、それよりもまた全く新しい銀行を何かイメージされているのか、その再建後の方向性についてお伺いしたいと思います。

○石原知事 この間、大沢理事の質問でも言及されておりましたけれども、私、かつて、セカンドステージを再建の途中で迎えるであろうということを申しました。
 ありていに申しますと、私は、この要するに銀行を提案したことは、決して間違ってないと思います。
 再三申しましたけど、本当に力がありながら、金融庁の規定の中で、末端の金融機関である信組は、いかに報告をごまかしてまで融資しようかという苦労をするように、非常に評価の高い、可能性のある企業がたくさんありますが、しかし、血液が回ってこない。特に、前任者の時代に信組の挫折がありまして、非常に厳しい基準というものが設けられました。それをあえてかいくぐっても、この企業を助けるため、ひいては日本の、東京の産業を助けるために、こういう融資をしようという苦労を信組の幹部たちがしている実態を知りまして、この銀行の提案をいたしました。
 ですから、これは絶対に間違ってないと思いますが、その後は、私は素人ですから、専門家と称する方々にお任せしたわけですけれども、これがこういう形で、思わず、破綻に近いものになった。
 その段階で、今、再建の努力をして、墜落せずに済んでおりますけれども、これだけではとても、最初の、当初の、小零細企業に思い切った融資をするということの力はつきませんから、セカンドステージとして、日本の在来のファンドであるとか金融機関より、もっと東京の可能性を信じて評価して、一緒に仕事をしたいという外国のセクターがありました、幾つも。それとの提携の話も、かなり進んでおりました。
 ところが、その後、このリセッションが来たわけですね、サブプライムローンの。それで、私たちが当てにしていた、これは業務協定があって、秘密協定があるそうですから、名前は明かせませんけど、かなり有力な銀行が、二つとも倒産いたしました。そういう挫折に、この銀行も巻き込まれているわけで、ですから、これから、日本の金融、世界の金融事情がどういうふうに進展していくか、うかがい知れませんけれども、その中でも私たちはやはり、プラスアルファという、東京の要するに可能性というものを信じて、見込んで、むしろ日本の在来の金融機関よりもそういったものを評価している相手を探し直して、そことの協力の中で体力をつけて、体力をつけた上で、やっぱり恵まれない小零細企業に、私たちは、従来の目的であります金融の業務というのを展開していこうと思っています。

○三宅副委員長 増子博樹副委員長及び田中良理事の発言は終わりました。(拍手)

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